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【発明の名称】 ビルドアップ工法で製造される多層回路基板の層間絶縁層用樹脂組成物
【発明者】 【氏名】山口 哲也
【住所又は居所】神奈川県綾瀬市大上5丁目14番15号 株式会社メイコー内

【要約】 【課題】多層回路基板において、絶縁層と導体回路との良好な密着性を保障し、同時に耐マイグレーション性を向上さえる絶縁層用の樹脂組成物を提供する。

【解決手段】エポキシ樹脂、フェノール・キシリレン樹脂硬化剤、および硫酸バリウムを必須成分として含み、エポキシ樹脂100質量部に対し、フェノール・キシリレン樹脂硬化剤5〜15質量部、硫酸バリウム20〜50質量部が含有されている、ビルドアップ工法で製造される多層回路基板の層間絶縁層用樹脂組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂、フェノール・キシリレン樹脂硬化剤、および硫酸バリウムを必須成分として含むことを特徴とする、ビルドアップ工法で製造される多層回路基板の層間絶縁層用樹脂組成物。
【請求項2】
前記エポキシ樹脂100質量部に対し、前記フェノール・キシリレン樹脂硬化剤5〜15質量部、前記硫酸バリウム20〜50質量部が含有されている請求項1のビルドアップ工法で製造される多層回路基板の層間絶縁層用樹脂組成物。
【請求項3】
前記フェノール・キシリレン樹脂硬化剤の構造式が、次式:
【化1】


で示される請求項1または2のビルドアップ工法で製造される多層回路基板の層間絶縁層用樹脂組成物。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はビルドアップ工法で製造される多層回路基板の層間絶縁層用樹脂組成物に関し、更に詳しくは、製造された多層回路基板に対し、各回路基板における絶縁層と導体回路との高い密着性を保障するとともに、優れた耐マイグレーション特性の実現を可能にする樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
多層回路基板は、現在、主としてビルドアップ工法で製造されている。このビルドアップ工法は、所定パターンの導体回路が既に表面に形成されている回路基板の当該表面(上面または下面)に、次の層として機能する回路基板を順次形成していく工法である。
次層の回路基板の形成に関しては、Bステージのプリプレグ材や樹脂付き銅箔(RCC)箔を使用する方法と絶縁インキを使用する方法とに大別されるが、最近では、コストの点で安価であること、形成する絶縁層の厚み設定の自由度が高いこと、導体回路のファインパターン化にとって有利であることなどの点で絶縁インキの使用が一般的となっている。
【0003】
この絶縁インキを使用した場合、次層の回路基板は概ね次のようにして形成されている。
まず、既に導体回路が所定のパターンで表面に配線されている回路基板を下層回路基板として用意する。
そして、この下層回路基板の表面に、導体回路を埋設して所定の厚みで絶縁インキを塗布して塗布層を形成する(工程1)。
【0004】
ついで、全体に熱処理を施し、塗布層の絶縁インキを熱硬化して次の回路基板用の絶縁層を形成する(工程2)。
ついで、この絶縁層の表面に粗面化処理が行われる(工程3)。具体的には、絶縁層の表面を一旦機械研削して当該絶縁層を目標厚に調整したのち、全体を例えば過マンガン酸カリウム溶液のような粗化剤に浸漬して研削面に微小凹凸をつけ、粗化面にする。
【0005】
この工程は、形成した表面凹凸のアンカー効果により、次工程で形成される銅めっき層、ひいては導体回路と絶縁層との密着性を高めて、回路基板として動作信頼性を確保するために行われる。
そして、最後に上記粗化面に無電解銅めっきと電解銅めっきを順次行って所定厚みの銅めっき層を形成したのち、これを所定パターンの導体回路に加工する(工程4)。このようにして、下層回路基板の上に上層回路基板がビルドアップされる。
【0006】
なお、更に多層化を行う場合には、上記した上層回路基板を下層回路基板として位置づけ、これに対して工程1〜工程4を行えばよい。
ここで、工程1で用いられる絶縁インキは、例えばエポキシ樹脂を主体とする樹脂組成物を溶剤で希釈して粘度調整された液状物であるが、その樹脂組成物には、通常、所定量の炭酸カルシウムがフィラーとして配合されている(特許文献1を参照)。その理由は以下のとおりである。
【0007】
この絶縁インキの塗布層を工程2で熱硬化して形成された絶縁層の層内には、硬化樹脂で抱持された状態で、前記した炭酸カルシウムが分散している。
工程3において絶縁層表面を機械研削すると、その研削面の全面には、炭酸カルシウムが硬化樹脂で抱持された状態で表出し、分布する。
そして、ここに過マンガン酸カリウムが作用することにより、表出している炭酸カルシウムの溶解または分解が進み、最終的には研削面から除去される。
【0008】
その結果、研削面には、炭酸カルシウムを抱持していた箇所が凹部として残るので、全体の表面は凹凸になる。
【特許文献1】特許第3290295号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
炭酸カルシウムは絶縁層における粗化面の形成にとっては効果的なフィラーである。しかし、他方では、製造された多層回路基板にとっては、次の理由で耐マイグレーション性を劣化させるフィラーでもある。
すなわち、炭酸カルシウムは弱アルカリ性(pH=10.0〜10.3)であるため吸湿性を有し、高温高湿雰囲気下では解離する。そして、この炭酸カルシウムは絶縁層層内で、平面的にだけではなくその厚み方向にも分散している。
【0010】
したがって、製造した多層回路基板を作動した場合、例えばある絶縁層に形成されている導体回路のパターン間では、炭酸カルシウムの解離を媒介にして絶縁性が劣化しているので、回路パターン間に微少電流の流れることがある。すなわち、絶縁負荷特性(耐マイグレーション性)の劣化が起こる。
本発明は、上記した問題を解決し、製造した多層回路基板における導体回路と絶縁層との密着性を確保できることは当然のこととし、従来に比べて高温高湿下における耐マイグレーション性を大幅に向上させることができる、ビルドアップ工法で製造される多層回路基板の新規な層間絶縁層用樹脂組成物の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記した目的を達成するために、本発明においては、
エポキシ樹脂、フェノール・キシリレン樹脂硬化剤、および硫酸バリウムを必須成分として含むことを特徴とする、ビルドアップ工法で製造される多層回路基板の層間絶縁層用樹脂組成物、具体的には、
前記エポキシ樹脂100質量部に対し、前記フェノール・キシリレン樹脂硬化剤5〜15質量部、前記硫酸バリウム20〜50質量部が含有されている樹脂組成物が提供される。
【0012】
その場合、 前記フェノール・キシリレン樹脂硬化剤の構造式が、次式:
【0013】
【化1】


【0014】
で示されることを好適とする。
【発明の効果】
【0015】
この樹脂組成物で絶縁層を形成して粗面化処理を行っても、従来の場合と同等のアンカー効果を発揮する凹凸表面を形成することができるとともに、含有されている硫酸バリウムは微弱アルカリ性で吸湿性をほとんどもたないので、製造された多層回路基板の耐マイグレーション性は非常に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明の樹脂組成物は、エポキシ樹脂、フェノール・キシリレン樹脂硬化剤、およびフィラーである硫酸バリウムを必須成分として含む。
最初に、これら必須成分について説明する。
主成分であるエポキシ樹脂としては、格別限定されることなく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂などをあげることができる。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、また両者を一緒に用いてもよい。
【0017】
硬化剤であるフェノール・キシリレン樹脂としては、(1)式で示した構造式(ただし、nは1〜100の数である)のものをあげることができる。
エポキシ樹脂に硫酸バリウムをフィラーとして混合した状態で、この硬化剤を用いて当該エポキシ樹脂を熱硬化したのち機械研削して表出させた表面に対して、過マンガン酸カリウム溶液で粗面化処理を行うと、フィラーとして炭酸カルシウムを用いた場合と異なり、これら硫酸バリウムの分解や溶解が起こっていないにもかかわらず、当該硫酸バリウムが硬化樹脂から脱離してその痕跡が凹部として残り、研削面の凹凸化が達成される。
【0018】
この現象は、この硬化剤を用いてエポキシ樹脂を硬化させると、その硬化樹脂が硫酸バリウムを抱持する力が弱くなり、強力な酸化剤である過マンガン酸カリウムの酸化力により、硬化樹脂と硫酸バリウムとの界面における密着性が破壊されることに基づいて起こるのではないかと考えられる。
このような作用効果を示す(1)式の樹脂としては、例えば、三井化学(株)製のミレックスXLC−LL、ミレックスXLC−3L、ミレックスXLC−4X(いずれも商品名)をあげることができる。
【0019】
次にフィラーとしては、硫酸バリウムが用いられる。
硫酸バリウムは、いずれも、従来の炭酸カルシウムに比べて、過マンガン酸カリウムとの反応性は低い。そして、中性に近い微弱アルカリ性であり、高温高湿下にあっても炭酸カルシウムに比べて解離度が小さい。
したがって、硫酸バリウムを用いることにより、製造された多層回路基板の耐マイグレーション性は、炭酸カルシウムを用いた場合に比べて向上することになる。
【0020】
しかしながら、硫酸バリウムは過マンガン酸カリウムとの反応性が低いので、粗面化処理時に形成される凹凸表面が発揮するアンカー効果は、炭酸カルシウムを用いた場合に比べると小さいという問題がある。
そのため、本発明では、樹脂組成物における硫酸バリウムの配合量を、後述するように規定することにより、製造された多層回路基板における他の特性を極度に劣化させることなく、耐マイグレーション性の向上が実現される。
【0021】
すなわち、まず、前記した硬化剤は、主体であるエポキシ樹脂100質量部に対し、5〜15質量部配合される。
この配合量が、5質量部より少ない場合は、エポキシ樹脂の熱硬化に要する時間が長大となって生産性の大幅な低下を招き、また15質量部より多くすると、硬化反応が急激に生起して形成された絶縁層の内部に気泡や組織欠陥が多発するようになる。
【0022】
硫酸バリウムの配合量は、エポキシ樹脂100質量部に対し、20〜50質量部に設定される。
この配合量が20質量部より少ない場合は、絶縁層内での分散量が少なすぎて、形成された表面凹凸の分布量が少なくなり、良好なアンカー効果を発揮させることができない。逆に50質量部より多くすると、アンカー効果の向上は達成されるが、他方では、絶縁性が低下するような問題が発生して不都合である。
【0023】
本発明の樹脂組成物は、上記した成分を必須とするが、更に必要に応じては、例えばイミダゾール系の硬化促進剤、粘度調整剤、消泡剤などを適量配合してもよい。
この樹脂組成物の使用に際しては、これを、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテートのような溶剤に溶解した絶縁インキとして用いる。その場合、溶剤の使用量が多すぎても少なすぎても、工程1における塗布層の形成が困難になるので、両者の割合は、樹脂組成物のエポキシ樹脂100質量部に対し、溶剤50〜80質量部に設定することが好ましい。
【0024】
実施例1〜4、比較例1〜4
(1)樹脂組成物
まず、エピコート1001(商品名:油化シエル(株)製のビスフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量450〜500)と、D.E.N.43I(商品名:ダウ・ケミカル社製のフェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、エポキシ当量172〜179)を用意し、前者70質量%、後者30質量%の割合で混合し、用いるエポキシ樹脂とした。
【0025】
上記したエポキシ樹脂100質量部に対し、表1で示した成分を表示の割合(質量部)で混合して、各種の樹脂組成物から成る絶縁インキを調製した。
【0026】
【表1】


【0027】
これらの絶縁インキを用いて下層回路基板に塗布層を形成したのち、最高温度150℃で熱処理して厚み70μmの絶縁層を形成し、その表面を20μm程度機械研削した。
ついで、研削面を、濃度55g/Lの過マンガン酸カリウム溶液で粗面化処理を行ったのち、その上に銅めっき層を形成して性能評価用の基板を製造した。製造枚数は、それぞれの場合につき100枚とした。
【0028】
これらの基板につき、JIS C6481に基づく方法でピール強度を測定した。また、温度85℃、相対湿度85%の高温高湿下において、端子間に電圧50Vを印加した状態で1000時間放置したのち、基板の絶縁抵抗値を測定した。
更に、はんだ浴中に基板を10秒間浸漬することを3回行って、はんだふくれが生ずるか否かを調べた。以上の結果を一括して表2に示した。
【0029】
【表2】


【0030】
表1、表2からつぎのことが明らかである。
(1)本発明の樹脂組成物を用いて製造した基板の場合、いずれも、ピール強度は適正な値であり、しかも高温高湿下において優れた耐マイグレーション性を示している。
(2)実施例1と比較例3を対比すると、両者はフィラーとして同じ硫酸バリウムを使用しているが、硬化剤が異なっている。そして、実施例1の耐マイグレーション性は比較例3のそれに比べて2桁程度大きい値を示している。このことから、フェノール・キシリレン樹脂を硬化剤として用いることの有用性が明らかである。また、フィラーとして硫酸バリウムを用いている実施例1とフィラーとして炭酸カルシウムを用いている比較例4を対比すると、耐マイグレーション性は実施例1の場合の方が優れている。
【0031】
このようなことから、フィラーとして硫酸バリウムを用い、硬化剤としてフェノール・キシリレン樹脂を用いる本発明の樹脂組成物の有用性は明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0032】
以上の説明で明らかなように、本発明の樹脂組成物を用いてビルトアップ工法を実施することにより、導体回路と絶縁層との密着性が確保され、かつ耐マイグレーション性に優れる多層回路基板を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000243906
【氏名又は名称】株式会社メイコー
【住所又は居所】神奈川県綾瀬市大上5丁目14番15号
【出願日】 平成16年1月22日(2004.1.22)
【代理人】 【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二

【公開番号】 特開2005−209878(P2005−209878A)
【公開日】 平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願番号】 特願2004−14670(P2004−14670)