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【発明の名称】 多層回路基板の製造方法
【発明者】 【氏名】山口 哲也
【住所又は居所】神奈川県綾瀬市大上5丁目14番15号 株式会社メイコー内

【要約】 【課題】粗面化処理時に確実に粗化面を形成する工程を含む多層回路基板の製造方法を提供する。

【解決手段】ビルドアップ工法による多層回路基板の製造方法であって、下層回路基板1の表面にエポキシ系樹脂を塗布して形成された樹脂塗布層を熱硬化することにより、その樹脂塗布層を上層回路基板用の硬化絶縁層2’に転化する工程が、形成直後の樹脂塗布層2に対して、20分から40分の時間をかけて温度90℃から温度120℃に加熱したのち、温度120℃で10〜20分間保持して樹脂塗布層2を半硬化する工程を含んでいる多層回路基板の製造方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビルドアップ工法による多層回路基板の製造方法であって、
下層回路基板の表面にエポキシ系樹脂を塗布して形成された樹脂塗布層を熱硬化することにより、前記樹脂塗布層を上層回路基板用の硬化絶縁層に転化する工程が、
形成直後の前記樹脂塗布層に対して、20分から40分の時間をかけて温度90℃から温度120℃に加熱したのち、温度120℃で10〜20分間保持して前記樹脂塗布層を半硬化する工程を含んでいることを特徴とする多層回路基板の製造方法。
【請求項2】
前記半硬化する工程の終了後に、70分から90分の時間をかけて温度110℃から温度150℃に加熱したのち、温度150℃で20〜30分間保持して前記半硬化した樹脂塗布層を前記硬化絶縁層にする完全硬化の工程が配置される請求項1の多層回路基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明はビルドアップ工法による多層回路基板の製造方法に関し、更に詳しくは、ビルドアップされる上層回路基板における硬化絶縁層とその表面に形成される銅めっき層との密着性が優れている多層回路基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
多層回路基板は、現在、主としてビルドアップ工法で製造されている。このビルドアップ工法は、所定パターンの導体回路が既に表面に形成されている回路基板の当該表面(上面または下面)に、次の層の回路基板を順次積層していく工法である。
この次層の回路基板の形成に関しては、Bステージのプリプレグ材や樹脂付き銅箔を使用する方法と絶縁性樹脂から成るインクを使用する方法に大別されるが、絶縁インクを使用する場合の1例を以下に説明する。
【0003】
まず、既に導体回路が表面に配線されている回路基板を用意する。なお、この回路基板は、表面に次層の回路基板が積層されることにより下層に位置することになるので、以後、この回路基板のことを下層回路基板といい、そしてこれに積層される次層の回路基板のことを上層回路基板という。
次に、下層回路基板の表面に絶縁インクを塗布して、導体回路を埋設する均一な厚みの樹脂塗布層を形成する(工程1)。
【0004】
上記した絶縁インクとしては様々なものが使用されているが、エポキシ系樹脂を主体とするものが多い。そして最近では、後述する粗面化処理時に凹凸状の粗化面の形成を目的とする樹脂組成物も開発されている(特許文献1を参照)。
なお、この樹脂塗布層は、後工程の熱処理により熱硬化して上層回路基板用の硬化絶縁層に転化する。その際、この硬化絶縁層の目標厚みは、通常、60〜70μm程度となるように設計される。
【0005】
したがって、樹脂塗布層は、熱処理後の厚みが上記した目標厚みを保障できるように当該目標厚みよりも厚く形成される。しかしながら、一般に、絶縁インクの1回の塗布では、上記したような厚みを得ることが困難であるため、通常は2回または3回塗布することにより、樹脂塗布層に必要な厚みが確保されている。
ついで、全体に熱処理を施し、樹脂塗布層の絶縁インクを熱硬化して硬化絶縁層を形成する(工程2)。
【0006】
このときの熱処理条件は、用いる絶縁インクの種類などにより適切に選択されるが、基本的には、絶縁インクが完全に硬化する条件が採用される。
ついで、この硬化絶縁層の表面、または穿設したスルーホールの壁面に対する粗面化処理が行われる(工程3)。
具体的には、まず、硬化絶縁層の表面を目標厚みにまで機械研削し、ついで例えば過マンガン酸カリウム溶液のような粗化剤に浸漬して研削面に微小凹凸をつけて表面を粗化面にする。
【0007】
ついで、硬化絶縁層の前記粗化面に無電解銅めっきと電解銅めっきを順次行い、硬化絶縁層の表面に導体回路用の銅めっき層を形成する(工程4)。
この銅めっき層は、硬化絶縁層の粗化面によるアンカー効果により、剥離することなく硬化絶縁層の表面に密着する。
そして最後に、この銅めっき層を所定パターンの導体回路に加工する(工程5)。その結果、下層回路基板の上に上層回路基板がビルドアップされる。
【0008】
なお、更に多層化を行う場合には、上記した上層回路基板を下層回路基板として位置づけ、これに対して工程1〜工程5を行えばよい。
【特許文献1】特許第3290295号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、用いる絶縁インクの種類にもよるが、前記した工程3において、機械研削で表出させた表面に粗面化処理を施しても、その表面には粗化剤の作用が及ばない箇所が存在して、その部分では粗化面が形成されない場合がある。このような表面状態の硬化樹脂層に銅めっきを行っても、形成された銅めっき層と硬化樹脂層との間には有効なアンカー効果が発揮されず、銅めっき層が剥離しやすくなる。したがって、この銅めっき層を加工した導体回路も剥離しやすく、得られた多層回路基板の動作信頼性は著しく低下する。
【0010】
本発明は、上記した問題を解決し、工程3において、硬化樹脂層の粗面化を確実に実現することができるビルドアップ工法による多層回路基板の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、絶縁インクとしてエポキシ系樹脂を用いた場合につき、工程3で発生する上記した現象の要因について調査したところ、工程2における樹脂塗布層の熱処理条件によっては上記現象が発生しないことがあるとの事実を見出した。
そこで、工程2における熱処理条件を様々に変化させて上記現象が発生するか否かを調査したところ、後述する条件を採用した場合は機械研削後の硬化絶縁層の表面を確実に粗化面にすることができることを見出し、本発明方法を開発するに至った。
【0012】
すなわち、本発明の多層回路基板の製造方法は、ビルドアップ工法による多層回路基板の製造方法であって、
下層回路基板の表面にエポキシ系樹脂を塗布して形成された樹脂塗布層を熱硬化することにより、前記樹脂塗布層を上層回路基板用の硬化絶縁層に転化する工程が、
形成直後の前記樹脂塗布層に対して、20分から40分の時間をかけて温度90℃から温度120℃に加熱したのち、温度120℃で10〜20分間保持して前記樹脂塗布層を半硬化する工程(以下、工程Aという)を含んでいることを特徴とする。
【0013】
そして、上記工程Aの終了後に、70分から90分の時間をかけて温度110℃から温度150℃に加熱したのち、温度150℃で20〜30分間保持して前記半硬化した樹脂塗布層を前記硬化絶縁層にする完全硬化の工程(以下、工程Bという)が配置される多層回路基板の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、絶縁インクの樹脂塗布層に対して工程Aとして示した上記した条件で熱硬化しているので、当該樹脂塗布層は一旦、半硬化状態になり、その後、工程Bの条件適用により完全硬化して硬化絶縁層が形成される。このようにして形成された硬化絶縁層には、粗化剤の作用効果が及ばない箇所は存在していない。
したがって、ここに適正な粗化面を形成することができ、そのことによって密着度の高い銅めっき層を形成することができるので、製造された多層回路基板の動作信頼性は高くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、前記した工程2において、下層回路基板の表面に形成した樹脂塗布層を熱硬化して硬化絶縁層に転化する際に、1度の熱処理で樹脂塗布層を完全硬化するのではなく、熱硬化を、樹脂塗布層を半硬化する工程(工程A)とその後の完全硬化の工程(工程B)の2段階に区分して実施する。そして、それぞれの工程における熱処理は前記した条件下で進められる。
【0016】
以後、絶縁インクとしてエポキシ系樹脂を用い、かつ、それを2回塗布して目標厚みの硬化樹脂層を形成し、下層回路基板の両面に次層の回路基板をビルドアップする場合を例にして、本発明を説明する。
まず、図1で示したように、既に導体回路が形成されている下層回路基板1の一方の表面1aに、絶縁インクを塗布して所定厚みの樹脂塗布層2を形成して中間材C1とする。
【0017】
ここで、形成すべき硬化絶縁層の目標厚みを60〜70μmとする。その場合、絶縁インクの1回の塗布で形成される塗布層2の厚みは40μm程度に設定すればよい。
ついで、この中間材C1を加熱炉内にセットし、形成直後の樹脂塗布層を下記の条件で熱処理して絶縁インクを半硬化状態にする。
すなわち、加熱炉を運転して120℃まで昇温する。そして、その場合、90℃から120℃までの昇温は20〜40分の時間をかけて行い、炉温が120℃に達したならば、その温度で中間材C1を10〜20分保持する。
【0018】
ここで、加熱時の最高温度を120℃より高くすると、絶縁インクは完全硬化に近い状態になるため、熱処理後の樹脂塗布層に塗布される2回目の絶縁インクが当該樹脂塗布層の表面となじまなくなる。
90℃から120℃までの昇温を短時間で行う、すなわち昇温速度を大きくしすぎると、硬化反応は樹脂塗布層2の表面部から進行して行く。そして、理由は明確ではないが、機械研削後の粗面化処理時に粗化剤の作用が及ばない箇所が表層部に近い箇所に層状に発生する。
【0019】
また、昇温速度が小さすぎると、絶縁インクの硬化反応が進行して樹脂塗布層2は半硬化状態でとどまらず過度に硬化してしまい、2回目の絶縁インクの塗布が円滑に行えなくなる。
このようなことから、90℃から120℃までの昇温は、20〜40分かけて行うことが必要である。すなわち、昇温速度は0.75〜1.5℃/分に設定することが必要である。
【0020】
また、温度120℃における保持時間を20分より長くすると、やはり絶縁インクの硬化反応が進みすぎ、逆に10分より短くすると、樹脂塗布層2の中心部まで充分に半硬化状態にならないので、後述する工程Bで中心部に組織不良がある硬化絶縁層になってしまう。
このような工程Aを経由して加熱炉から取出された時点で、中間材C1の塗布層は半硬化状態になる。
【0021】
ついで、図2で示したように、熱処理後の中間材C1の他方の表面1bに、絶縁インクを塗布して、同じく樹脂塗布層2を形成して中間材C2にする。この中間材C2にあっては、中間材C1の樹脂塗布層は熱処理された半硬化状態の樹脂塗布層2’になっている。
ついで、この中間材C2に対して、前記した条件で工程Aを行う。その結果、図3で示したように、下層回路基板1の両面に、半硬化状態にある樹脂塗布層2’,2’が形成された中間材C3が得られる。
【0022】
ついで、この中間材C3の一方の樹脂塗布層に絶縁インクを塗布して樹脂塗布層を形成したのち、それに対して工程Aを行って半硬化状態の樹脂塗布層に転化する操作を行い、その後、中間材C3の他方の樹脂塗布層に対しても同様の操作を行うことにより、図4で示したような中間材C4を得る。
この中間材C4の場合、樹脂塗布層2’は全て工程Aを経由しているので半硬化状態にあり、しかも、各樹脂塗布層の接触界面は相互になじんだ状態になっている。そして、全体の厚みは、2層の合計で80μm程度になっているので、形成すべき硬化絶縁層の目標厚みを保障するに充分である。
【0023】
本発明では、このようにして製造された中間材C4に対して、次の条件で工程Bが実施される。
すなわち、加熱炉内に中間材C4をセットし、温度150℃まで加熱して半硬化状態の樹脂塗布層2’を完全硬化してそれを硬化絶縁層に転化する。
このとき、温度110℃から温度150℃までの昇温は、70分から90分かけて行い、ついで温度150℃で20〜30分保持する。すなわち、工程Aの場合に比べて、緩徐な昇温速度(0.4〜0.6℃/分)で、より高い温度まで加熱する。
【0024】
この昇温速度が大きすぎると、半硬化状態にある樹脂塗布層2’に組織欠陥が発生することがあり、また昇温速度が小さすぎると完全硬化に要する時間は長大となり生産性の低下を招く。
また、加熱時の最高温度を150℃より高くすると、例えば下層回路基板1の熱損傷も起こりはじめ、更には保持時間を長くしすぎると上記した熱損傷は一層進み、逆に短くしすぎると、半硬化状態から完全硬化への反応が充分に進まず良好な硬化絶縁層が形成されない。
【0025】
このようにして製造された中間材の硬化絶縁層の表面を機械研削し、表出した表面に粗面化処理を施し、更にそこに銅めっき層を形成したのち導体回路を加工して、上層回路基板が形成される。
その場合、樹脂塗布層には工程Aと工程Bが施されているので、形成された硬化絶縁層には粗化剤の作用効果が及ばない箇所は存在せず、そのため、粗化面には確実に微小凹凸が形成され、銅めっき層との間では効果的にアンカー効果が発揮される。
【実施例】
【0026】
実施例1〜3、比較例1〜3
絶縁インクとしてHBI−200BK1(太陽インキ製造(株)製の市販品、エポキシ系樹脂が主体)を用いて、図4で示した中間材C4を6個製造した。
このとき、工程A,工程Bの条件は、それぞれ、表1で示したように設定した。また、1回の塗布で得られる各樹脂塗布層の厚みは、いずれも、40μmとした。
【0027】
得られた各中間材C4の硬化絶縁層の表面を約10μm機械研削したのち、過マンガン酸カリウムを主体とする粗化剤に浸漬して同一条件下で粗面化処理を行った。処理後の粗化面を顕微鏡観察した。
得られた中間材の表面に厚み25μmの銅めっき層を形成し、そのピール強度を測定し、最大値と最小値を求めた。以上の結果を一括して表1に示した。
【0028】
【表1】


【0029】
表1から次のことが明らかである。
(1)比較例1から明らかなように、工程Aで加熱した最高温度が120℃より低い場合は、粗化後の微小凹凸にムラが生じ、結局、ピール強度は低下する。
(2)比較例2から明らかなように、工程Aで加熱した最高温度が120℃であっても、90℃から120℃までの昇温速度が大きすぎる(昇温時間が短い)と、やはり、粗化後の微小凹凸にムラが生じ、ピール強度は低下する。
【0030】
比較例3から明らかなように、逆に120℃までの昇温速度が小さい(昇温時間が長い)と、硬化絶縁層の表面は過度に硬化され、そのため粗化されにくくなり、微小凹凸は非常に小さくなる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、硬化絶縁層の表面を確実に粗化面にすることができる。したがって、そこに形成される銅めっき層の密着度は高くなり、動作信頼性の高い多層回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明における中間材C1を示す断面図である。
【図2】本発明における中間材C2を示す断面図である。
【図3】本発明における中間材C3を示す断面図である。
【図4】本発明における中間材C4を示す断面図である。
【符号の説明】
【0033】
1 下層回路基板
2 樹脂塗布層
2’ 半硬化状態の樹脂塗布層
【出願人】 【識別番号】000243906
【氏名又は名称】株式会社メイコー
【住所又は居所】神奈川県綾瀬市大上5丁目14番15号
【出願日】 平成16年1月22日(2004.1.22)
【代理人】 【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二

【公開番号】 特開2005−209877(P2005−209877A)
【公開日】 平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願番号】 特願2004−14669(P2004−14669)