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【発明の名称】 セラミック多層基板
【発明者】 【氏名】浦川 淳
【住所又は居所】京都府長岡京市天神二丁目26番10号 株式会社村田製作所内

【要約】 【課題】従来のセラミック多層基板のように機能性材料層を部分的に内蔵する場合には、絶縁体シート等の基材層と機能性材料層とを積層、圧着して積層体を形成した後、この積層体を焼成してセラミック多層基板を作製しているが、圧着時に機能性材料層2の周囲2Aが図10の(b)に一点鎖線で示すように膨らみ、機能性材料層が所望のパターンにならないことがあった。また、焼成時には機能性材料層2と基材層1との間の収縮差(焼成収縮率の差)によって反り、うねり等の基板変形やデラミネーションが発生し易い。

【解決手段】本発明のセラミック多層基板10は、複数の基材セラミック層11Aを積層してなる基材層11と、この基材層11とは異なる機能を有し且つ基材セラミック層11Aの間に配置された誘電体セラミック層12とを備え、誘電体セラミック層12のうち、基材層11内に位置する端部全長に渡って凹凸12Aを設けたことを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の基材セラミック層を積層してなる基材層と、この基材層とは異なる機能を有し且つ上記基材セラミック層の間に配置された機能性材料層とを備え、上記機能性材料層のうち、上記基材層内に位置する端部全長に渡って凹凸を設けたことを特徴とするセラミック多層基板。
【請求項2】
上記機能性材料層全体を上記基材層内に配置したことを特徴とする請求項1に記載のセラミック多層基板。
【請求項3】
上記凹凸の深さの平均値を、10〜500μmに設定したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のセラミック多層基板。
【請求項4】
上記基材層に導体を設け、且つ、上記導体をAgまたはCuを主成分とする導電性金属によって形成したことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のセラミック多層基板。
【請求項5】
上記機能性材料層を、誘電体セラミック層として形成したことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のセラミック多層基板。
【請求項6】
上記誘電体セラミック層を挟む第1、第2の電極を設け、少なくともいずれが一方の電極の面積を上記誘電体セラミック層の面積より小さく設定したことを特徴とする請求項5に記載のセラミック多層基板。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック多層基板に関し、更に詳しくは、内部構造に欠陥がなく信頼性の高いセラミック多層基板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種のセラミック多層基板としては、例えば特許文献1に記載の多層複合セラミック基板や、特許文献2に記載の複合積層セラミック部品が知られている。
【0003】
特許文献1に記載の多層複合セラミック基板は、ヴィアホール、導電パターンおよび抵抗パターンが形成された複数の絶縁体シートと、ヴィアホールおよび導電パターンが形成された誘電体シートとが積層された積層体を焼成してコンデンサ、抵抗および配線パターンを前記積層体が焼成された焼成体に内蔵した多層複合セラミック基板において、前記コンデンサの電極パターンと電気的に接続され、かつ前記焼成体の外面に形成されたヴィアホールと電気的に接続されるすべての内層配線パターンの少なくとも一部をそれぞれ覆う状態に、ガラス、またはガラスを含む複合セラミックスによりなるオーバーコート層が前記絶縁体シートを焼成して形成した絶縁体層上に形成されているものである。この多層複合セラミック基板を製造する場合には、絶縁体シートより小さい誘電体シートを絶縁体シート内に挟んでコンデンサ等を絶縁体シート内に埋め込んでいる。
【0004】
また、特許文献2に記載の複合積層セラミック部品は、鉛系ペロブスカイト高誘電材料と酸化アルミニウムを40〜60wt%、酸化鉛を1〜40wt%、酸化ケイ素を2〜40wt%、酸化ホウ素を1〜30wt%、II族元素酸化物を0.05〜25wt%、IV族元素(ただし、ケイ素、鉛は除く)の酸化物を0.01〜10wt%、で合計100wt%となるような組成のガラスセラミックスを主成分とする絶縁体と導体とが一体に積層、焼成されてなる積層焼結体であって、その内部に配線用導体層と前記高誘電率材料と導体によって構成される1以上のコンデンサ素子とを備えてなるものである。この複合積層セラミック部品を製造する場合には、高誘電率材料をペースト化し、これをスクリーン印刷によって絶縁体グリーンシート上に印刷し、このシートを積層して任意の位置にコンデンサ素子を形成している。
【0005】
ところで、上記各特許文献に記載のセラミック多層基板のように、絶縁体等の基材層1とは機能が異なる高誘電率材料等の機能性材料層2を、基材層内部に部分的に所定形状に形成する場合には、機能性材料層2の平面形状を例えば図10の(a)に示すように四角形に形成し、その端部2Aの形状が直線になっているのが一般的である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述した従来のセラミック多層基板のように機能性材料層を部分的に内蔵する場合には、絶縁体シート等の基材層と機能性材料層とを積層、圧着して積層体を形成した後、この積層体を焼成してセラミック多層基板を作製しているが、圧着時に機能性材料層2の周囲2Aが図10の(b)に一点鎖線で示すように膨らみ、機能性材料層が所望のパターンにならないことがあった。また、焼成時には機能性材料層2と基材層1との間の収縮差(焼成収縮率の差)によって反り、うねり等の基板変形やデラミネーションが発生し易く、特にデラミネーションは機能性材料層2の端部2Aで発生し易いという課題があった。
【0007】
【特許文献1】特開平1−117392号公報
【特許文献2】特公平2−053951号公報
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、基板変形やデラミネーション等による内部構造欠陥がなく、パターン精度の高い機能性材料層を内蔵したセラミック多層基板を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、焼成時の機能性材料層と基材層との間の収縮差による基板変形や内部の構造欠陥について種々検討した結果、これら現象は基材層と機能性材料層との収縮差によって発生する応力がこれら両者の境界に集中することに起因していることが判った。そこで、本発明者は、機能性材料層の端部に特定の処理を施すことによってデラミネーション等の内部の構造欠陥を抑制し、更に、圧着による機能性材料層のパターン変形をも防止することができることを知見した。
【0010】
本発明は、上記知見に基づいてなされたもので、本発明の請求項1に記載のセラミック多層基板は、複数の基材セラミック層を積層してなる基材層と、この基材層とは異なる機能を有し且つ上記基材セラミック層の間に配置された機能性材料層とを備え、上記機能性材料層のうち、上記基材層内に位置する端部全長に渡って凹凸を設けたことを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の請求項2に記載のセラミック多層基板は、請求項1に記載の発明において、上記機能性材料層を上記基材層内に配置したことを特徴とするものである。
【0012】
また、本発明の請求項3に記載のセラミック多層基板は、請求項1または請求項2に記載の発明において、上記凹凸の深さの平均値を、10〜500μmに設定したことを特徴とするものである。
【0013】
また、本発明の請求項4に記載のセラミック多層基板は、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の発明において、上記基材層に導体を設け、且つ、上記導体をAgまたはCuを主成分とする導電性金属によって形成したことを特徴とするものである。
【0014】
また、本発明の請求項5に記載のセラミック多層基板は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の発明において、上記機能性材料層を、誘電体セラミック層として形成したことを特徴とするものである。
【0015】
また、本発明の請求項6に記載のセラミック多層基板は、請求項5に記載の発明において、上記誘電体セラミック層を挟む第1、第2の電極を設け、少なくともいずれが一方の電極の面積を上記誘電体セラミック層の面積より小さく設定したことを特徴とするものである。
【0016】
而して、本発明のセラミック多層基板を構成する基材セラミック層は、セラミック材料によって形成されたものであれば特に制限されないが、低抵抗の金属を内部導体等として用いることを勘案すれば、基材セラミック層は例えば低温焼結セラミック材料によって形成することが好ましい。低温焼結セラミック材料とは、1000℃以下の温度で、Ag、Au、Cu、Ni、Ag/Pd、Ag/Pt等の低融点金属と共焼成することができるセラミック材料のことを云う。低温焼結セラミック材料としては、例えば、アルミナやフォルステライト、コージライト等のセラミック粉末にホウ珪酸系ガラスを混合したガラス複合系材料、ZnO−MgO−Al−SiO系の結晶化ガラスを用いた結晶化ガラス系材料、BaO−Al−SiO系セラミック粉末やAl−CaO−SiO−MgO−B系セラミック粉末等を用いた非ガラス系材料等を挙げることができる。
【0017】
本発明のセラミック多層基板を構成する機能性材料層は、基材セラミック層と異なる機能(物理特性等の材料特性)を有する材料によって形成されたものであれば特に制限されない。機能性材料層は、例えば誘電体材料、抵抗体材料、磁性体材料または絶縁体材料等によって形成することができる。基材層内にコンデンサを形成する場合には機能性材料層に誘電体セラミック材料が用いられる。そして、基材層内にコンデンサを形成するに当たり、BaO−Al−SiO系セラミック粉末を低温焼結セラミック材料として用いて基材セラミック層を形成する場合には、誘電体セラミック材料として、例えば、特開2000−211967号公報、特開2000−226255号公報、特開2000−226256号公報、特開2000−264722号公報、特開2000−264723号公報、特開2000−264724号公報及び特開2000−281436号公報に記載の誘電体セラミック材料を用いることが好ましい。
【0018】
特開2000−211967号公報に記載の誘電体セラミック材料は、BaTiOを89.0〜91.5モル%、BaSnOを8.0〜10.5モル%、Pb(Sn1/3Bi2/3)Oを0.5〜2.0モル%をそれぞれ含有してなる誘電体セラミック成分に、10.0〜55.0モル%の酸化バリウム、1.0〜50.0モル%の酸化ケイ素、及び30.0〜60.0モル%の酸化ホウ素からなるガラス成分を5.0〜35.0重量%混合してなる誘電体セラミック組成物である。
【0019】
特開2000−226255号公報に記載の誘電体セラミック材料は、〔(Ba1−x−yCaSr)O〕・(Ti1−zZr)Oで表され、m、x、y、及びzが、それぞれ1.005≦m≦1.03、0.02≦x≦0.22、0.05≦y≦0.35、0.00<z≦0.20の関係を満たしてなる誘電体セラミック成分に、20.0〜60.0モル%の酸化バリウム、10.0〜55.0モル%の酸化ケイ素、及び10.0〜40.0モル%の酸化ホウ素からなるガラス成分を3.0〜35.0重量%混合してなる誘電体セラミック組成物である。
【0020】
特開2000−226256号公報に記載の誘電体セラミック材料は、2.5〜17.5モル%のBaO、50.0〜75.0モル%のTiO、15.0〜47.5モル%のNdO3/2からなる主組成物と、この主組成物に対して2.0〜20.0重量%のPbTiOと、10.0〜65.0モル%のBaO、1.0〜50.0モル%のSiO、10.0〜60.0モル%のBを混合してなるガラス成分3.0〜30.0重量%と、からなる誘電体セラミック組成物である。
【0021】
特開2000−264722号公報に記載の誘電体セラミック材料は、xBaO−yTiO−zMe(但し、x+y+z=1、Meはランタノイド系元素の酸化物である。)で表される主成分に酸化ビスマスを3〜17重量%、酸化鉛を0.5〜10重量%それぞれ添加してなる誘電体セラミック成分に、低温焼結セラミック材料に含まれるガラス成分と同一組成のガラス成分を混合してなる誘電体セラミック組成物である。
【0022】
特開2000−264723号公報に記載の誘電体セラミック材料は、チタン酸ストロンチウムを32.0〜46.0重量%、チタン酸鉛を28.0〜46.0重量%、チタン酸カルシウムを8.0〜16.0重量%、酸化ビスマスを5.0〜16.0重量%、酸化チタンを3.0〜10.0重量%、をそれぞれ含有してなる誘電体セラミック成分に、酸化バリウムを10.0〜65.0モル%、酸化ケイ素を1.0〜55.0モル%、酸化ホウ素を10.0〜75.0モル%をそれぞれ混合してなるガラス成分を混合してなる誘電体セラミック組成物である。
【0023】
特開2000−264724号公報に記載の誘電体セラミック材料は、チタン酸バリウムを85.0〜90.0重量%、ジルコニウム酸カルシウムを8.5〜12.0重量%、チタン酸マグネシウムを0.5重量%以下、酸化セリウムを0.5重量%以下、酸化ビスマスを0.1〜1.0重量%、酸化スズを0.1〜1.0重量%、をそれぞれ含有してなる誘電体セラミック成分に、酸化バリウムを10.0〜65.0モル%、酸化ケイ素を1.0〜55.0モル%、酸化ホウ素を10.0〜75.0モル%をそれぞれ混合してなるガラス成分を混合してなる誘電体セラミック組成物である。
【0024】
特開2000−281436号公報に記載の誘電体セラミック材料は、BaO−TiO−(Nd1−mMe)O3/2(但し、Meはランタノイド系元素を示し、0≦m≦1.0である。)で表される誘電体セラミック成分に、20.0〜65.0モル%の酸化バリウム、5.0〜50.0モル%の酸化ケイ素、10.0〜50.0モル%の酸化ホウ素からなるガラス成分を3.0〜35.0重量%混合してなる誘電体セラミック組成物である。
【0025】
上記機能性材料層は、基材層内に位置する端部全長に渡って凹凸が設けられている。この凹凸は、凸部と凹部を繰り返して波状、ギザギザ状等の種々の形態を呈し、機能性材料層の各辺を直線より長くする形態であれば良い。基材層内に位置する端部全長とは、機能性材料層全体が基材層内に位置してその端部全周囲が全て基材層内に含まれている場合は勿論のこと、機能性材料層の端部の一部が基材層の端面に露呈している場合も含むことを意味する。このように基材層内に位置する機能性材料層の端部全長に渡って凹凸を設けることにより、焼成時に機能性材料層と基材セラミック層との間に収縮差があって機能性材料層の端部に応力が集中しても、この応力を端部全長に渡る個々の凹凸に分散させ、機能性材料層端部の基材セラミック層からのデラミネーションを抑制し、防止することができる。更に、圧着による機能性材料層の変形を端部の凹凸の変形として吸収するため、機能性材料層の変形を直線状の端部と比較して格段に抑制することができ、延いては機能性材料層のパターン精度を大きく向上させることができる。
【0026】
上記凹凸の深さの平均値は10〜500μmの範囲に設定することが好ましく、30〜300μmの範囲に設定することがより好ましい。凹凸の深さが10μm未満では凹凸の効果を発現しない虞があり、500μmを超えると凹凸が大きすぎて凹凸が基材セラミック層に設けられるビアホール導体やライン導体等の内部導体に邪魔になる虞があって好ましくない。
【0027】
上記機能性材料層の厚さは、5〜100μmの範囲に形成されていることが好ましく、7〜50μm厚の範囲がより好ましい。機能性材料層の厚さが5μm未満では機能性材料層の収縮による変形が小さいため、基材セラミック層との収縮差による影響がなく、100μmを超えるとデラミネーションを抑制できない虞があって好ましくない。但し、機能性材料層として誘電体セラミック材料を用いてコンデンサを形成する場合には、その厚さが薄い方が大容量を得ることができる。
【0028】
本発明のセラミック多層基板は、内部導体や外部導体等の導体パターンを備えるものであっても良いが、これらの導体パターンは、いずれも上記低温焼結セラミック材料と共焼成することができる低融点金属を主成分とする金属によって形成することができる。低融点金属としては、例えば上述のAg、Cuを用いることが好ましい。
【0029】
上記導体パターンが第1、第2のコンデンサ用電極として形成される場合には、第1、第2のコンデンサ用電極のいずれか一方の電極がコンデンサを構成する誘電体セラミック層より小さな面積を有し、端部の凹凸に達しないことが好ましい。両方のコンデンサ用電極の面積が誘電体セラミック層の面積より大きいとコンデンサとして所望の容量値を得られず、好ましくない。換言すれば、誘電体セラミック層より小さな面積のコンデンサ用電極によって所望の容量値を設定することができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の請求項1〜請求項6に記載の発明によれば、基板変形やデラミネーション等による内部構造欠陥がなく、パターン精度の高い機能性材料層を内蔵したセラミック多層基板を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
以下、図1〜図9に示す実施形態に基づいて本発明を説明する。尚、各図中、図1は本発明のセラミック多層基板の一実施形態を示す断面図、図2は図1の要部を示す図で、(a)はその平面図、(b)は(a)の断面図、図3〜図7はそれぞれ図1に示すセラミック多層基板の製造工程を示す図、図8は本発明のセラミック多層基板の他の実施形態を示す図、図9は本発明のセラミック多層基板を同時に複数個作製する場合のキャリアフィルムと誘電体グリーンシート層を示す平面図である。
【0032】
本実施形態のセラミック多層基板10は、例えば図1に示すように、複数の基材セラミック層11Aを積層してなる基材層11と、この基材層11とは異なる機能を有し且つ基材セラミック層11Aの間に配置された機能性材料層12と、適宜の基材セラミック層11Aに所定のパターンで形成された内部ライン導体13と、上下の内部ライン導体13、13を接続するビアホール導体14とを備えている。基材層11上面には所定のパターンで第1の外部導体15が形成され、この外部導体15にはチップ型セラミックコンデンサや半導体デバイス等の実装部品16が図示しないはんだを介して接続されている。基材層11下面には第2の外部導体17が形成され、この外部導体17を介してセラミック多層基板10がプリント配線基板(図示せず)に実装される。
【0033】
上記機能性材料層12は、全体が基材層11内に内蔵され、基材層11内に封止されている。本実施形態では機能性材料層12が誘電体セラミック材料によって形成され、コンデンサの誘電体セラミック層として構成されている。従って、以下では機能性材料層12を誘電体セラミック層12として説明する。この誘電体セラミック層12の上下両面には図1に示すように第1、第2のコンデンサ用電極18、19が形成されている。
【0034】
図2は、図1に示す誘電体セラミック層12及び第1、第2のコンデンサ用電極18、19を取り出して示した図である。誘電体セラミック層12には、例えば図2の(a)に示すように、その端部全長に渡って凹部12Aが連続して形成され、誘電体セラミック層12の端部全長に渡って凹凸形状を呈している。この凹部12Aの深さ(凹凸の深さ)の平均値は、前述した理由から10〜500μmの範囲に形成されている。また、誘電体セラミック層12は、前述した理由から5〜100μm厚の範囲に形成されている。
【0035】
本実施形態のセラミック多層基板10は、図3に示す生の積層体20を焼成することによって作製することができる。この生の積層体20は、セラミック多層基板10の実装部品16を除く各構成要素を全て備えている。即ち、生の積層体20は、基材セラミック層11Aに対応する基材セラミックグリーンシート21A、基材層11に対応する基材グリーンシート層21、誘電体セラミック層12に対応する誘電体グリーンシート層22、内部ライン導体13に対応する導電性ペースト層(内部ライン導体層)23、ビアホール導体14に対応する導電性ペースト層(ビアホール層)24、第1、第2の外部導体15、17にそれぞれ対応する導電性ペースト層(第1、第2の外部導体層)25、27、及び第1、第2のコンデンサ用電極18、19に対応する導電性ペースト層(第1、第2の電極層)28、29を備えている。基材セラミックグリーンシート21A及び誘電体グリーンシート層22はそれぞれ前述した組成物によって形成することができる。また、各導電性ペースト層は、前述した低融点金属を主成分として含む導電性ペーストによって形成することができる。そして、誘電体グリーンシート層22の端部全周には凹凸22B(図5参照)が形成されている。この凹凸22Bを形成する方法については後述する。
【0036】
上述のように誘電体グリーンシート層22の端部全長に渡って凹凸22Bを設けることにより、誘電体グリーンシート層22の焼成による収縮時に、基材セラミックグリーンシート21Aとの境界である誘電体グリーンシート層22の端部に応力が集中しても、この応力を誘電体グリーンシート層22の凹凸22Bに分散させ、端部全周での収縮変形を抑制することができ、もって焼成後の誘電体セラミック層12と基材セラミック層11Aとの間の層間剥離を防止し、誘電体セラミック層12の端部全周の基材セラミック層11Aからの反り、即ちデラミネーションや基板の変形を抑制しあるいは防止することができる。
【0037】
また、上記誘電体セラミック層12の端部全周は外側ほど薄肉になる楔状に形成されている。全周の端部が楔状に形成されているため、他の素子に対する影響やうねり等を抑制することができる。また、誘電体セラミック層12の上面にはその面積よりも小さな面積を有する第1のコンデンサ用電極18が形成され、このコンデンサ用電極18は誘電体セラミック層12の外周縁の凹部12Aに達しない大きさに形成されている。第1のコンデンサ用電極18によってコンデンサの所望の容量値を得ることができる。
【0038】
また、生の積層体20として圧着形成する際に、誘電体グリーンシート層22の端部が膨らむ場合にも膨らみが個々の凹凸に分散し、外周端部の変形を抑制することができ、延いては図2の(b)に示すように隣接するビアホール導体14や内部ライン導体13を変形させて損傷(断線)する虞がない。
【0039】
次に、本実施形態のセラミック多層基板10の製造方法について図3〜図9を参照しながら説明する。セラミック多層基板10を得るためにはまず、図3に示すような生の積層体20を次の工程を経て作製する。
【0040】
まず、例えば酸化ケイ素、アルミナ及び酸化バリウム等を含む低温焼結セラミック材料からなるセラミック粉末に、バインダ、可塑剤及び有機溶剤を加えて混合して基材セラミックスラリーを調製する。この基材セラミックスラリーを、ドクターブレード法を用いて例えばポリエチレンテレフタレートからなるキャリアフィルム(図示せず。)上に塗布して基材セラミックグリーンシート21Aを所定枚数成形する。
【0041】
次いで、上記基材セラミックグリーンシート21Aそれぞれに対して、必要に応じてAgまたはCuを主成分とする導電性粉末及び有機ビヒクル等を含む導電性ペーストをスクリーン印刷することにより、内部ライン導体層23、第1、第2の外部導体層25、27及び第1の電極層28を形成して乾燥させる。また、各基材セラミックグリーンシート21Aに所定のパターンで貫通孔を設け、それぞれの貫通孔内にビアホール導体用の導電性ペーストを充填してビアホール層24を形成する。尚、第1、第2の外部導体層25、27の少なくとも一方については、生の積層体20を得た後に形成しても良い。
【0042】
また、本実施形態では、誘電体セラミック材料として、例えばチタン酸バリウムを主成分とする誘電体セラミック粉末に、ガラス粉末、バインダ、可塑剤および有機溶剤を加えて混合して誘電体セラミック材料を含むペーストを調製する。そして、図4の(a)に示すように、例えばドクターブレード法を用いて誘電体セラミック材料を含むペーストをポリエチレンテレフタレートからなるキャリアフィルム30上に誘電体セラミックグリーンシート22Aを形成する。誘電体セラミックグリーンシート22Aは、その一部が焼成後に誘電体セラミック層12となるものである。
【0043】
次に、図4の(b)に示すように、誘電体セラミックグリーンシート22A上に、導電性ペーストをスクリーン印刷することにより、第2の電極層29を形成する。更に、図4の(c)に示すように、キャリアフィルム30上の誘電体セラミックグリーンシート22Aに炭酸ガスレーザ発振器を用いてレーザ光Lを照射し、誘電体セラミックグリーンシート22Aのみを貫通するようにレーザ出力を制御して、図5の(a)に示すように誘電体セラミック層12の形状に沿って連続する穴を開けて誘電体グリーンシート層22を誘電体セラミックグリーンシート22Aから切り離すと共に誘電体グリーンシート層22端部全周に凹凸22Bを形成する。この際、加工穴径及び穴のピッチを調節して任意の大きさの凹凸を形成することができる。
【0044】
然る後、図4の(c)に示す誘電体セラミックグリーンシート22Aのうち、誘電体グリーンシート層22以外の部分をキャリアフィルム30から除去し、図4の(d)及び図5の(b)に示すように誘電体グリーンシート層22を残す。この時、誘電体グリーンシート層22はキャリアフィルム30上で所定の位置に位置決めされた状態になっている。本実施形態では、誘電体セラミックグリーンシート22Aに円形状の穴を連続して開けて凹部22Bを形成したが、この凹部22Bは必要に応じて例えば四角形等の他の任意の形状に形成することができる。
【0045】
本実施形態において、レーザ光Lはキャリアフィルム30を貫通しないように実施することが好ましいが、実際には誘電体グリーンシート層22のみを切断するようにレーザ出力を制御することは困難である。そのため、図6に示すように、キャリアフィルム30にも穴30Aが形成されることが多い。尚、図6において、(a)は図4の要部を示す部分断面図であり、(b)は図4の要部を示す上方からの平面図であり、(c)は図4の要部を示す下方からの平面図である。
【0046】
図6に示すようにキャリアフィルム30に穴30Aが形成されたとしても、この穴30Aは、図6の(c)に示すように、キャリアフィルム30において間欠的に貫通した部分が分布するに過ぎず、誘電体グリーンシート22の部分をキャリアフィルム30から切り落とすことはない。従って、誘電体グリーンシート層22をキャリアフィルム30によって所定位置に保持することができる。
【0047】
レーザ光17の照射によってキャリアフィルム30に穴30Aを形成する際に、誘電体グリーンシート22の部分をキャリアフィルム30から切り落とすことなく、また以後のキャリアフィルム30の取り扱いを容易にするために、キャリアフィルム30は5μm以上の厚さを有することが好ましい。キャリアフィルム30の厚さが5μm未満では強度が不足してキャリアフィルム30としての取り扱いが難しく、また、穴30Aの形成によってキャリアフィルム30を切断する虞がある。キャリアフィルム30の強度が不足するとフィルムの変形し易く、キャリアフィルム30上で誘電体グリーンシート層22を高い位置精度で保持することができなくなる虞がある。従って、キャリアフィルム30は、フィルム強度を確保する点からも20〜250μm程度の厚さが好ましい。
【0048】
また、誘電体グリーンシート層22の厚さは、焼成後に5〜100μmの厚の誘電体セラミック層12を形成できる厚さが好ましい。この厚さであれば、キャリアフィルム30を切断することなくレーザ出力を制御することができる。レーザとしては、例えば、炭酸ガスレーザの他に、He−Neレーザ、エキシマレーザ、YAGレーザ等を用いることができる。
【0049】
本実施形態でのレーザ加工は、スポット的な加工を行うことができ、加工精度が高く、工程が複雑にならず、また、安価に加工することができる。しかし、レーザ加工以外にも、例えばフォトリソグラフィ技術またはフォトエッチング技術等も用いることができ、また、打ち抜き刃を用いてハーフカット態様でパンチング加工を用いることもできる。また、キャリアフィルム30上に誘電体グリーンシート層22のみを残す場合には、誘電体グリーンシート層22以外の部分にレーザ光を照射してその部分を除去しても良い。
【0050】
次に、キャリアフィルム30上に形成された誘電グリーンシート層22を所定の基材セラミックグリーンシート21A上に転写する。この場合には図7の(a)に示すようにキャリアフィルム30の外形寸法と実質的に等しい寸法の開口を有する金型40を用いる。まず、金型40内に基材セラミックグリーンシート21Aを収納し、次いで、誘電グリーンシート層22を下向きにしてキャリアフィルム30を基材セラミックグリーンシート21A上に積層した後、キャリアフィルム30上面から例えば10〜2000kg/cm
の圧力でプレスしてキャリアフィルム30を基材セラミックグリーンシート21A上に圧着する。次いで、この圧着体からキャリアフィルム30を剥離して誘電体グリーンシート層22及び第2の電極層29を基材セラミックグリーンシート21Aに転写して一体化する。
【0051】
この際、誘電体グリーンシート層22はキャリアフィルム30上で予め位置決めされた状態になっており、しかもキャリアフィルム30の外形を基準に誘電体グリーンシート層22と基材セラミックグリーンシート21Aとを位置決めすることができるため、誘電体グリーンシート層22を基材セラミックグリーンシート21Aの所定位置に精度良く転写することができる。
【0052】
次いで、図7の(b)に示すように、誘電体グリーンシート層22及び第2の電極層29が転写された基材セラミックグリーンシート21A上に、第1の電極層28が形成された基材セラミックグリーンシート21Aを第1の電極層28を下向きにして金型20内で積層して圧着する。引き続き、所定枚数の基材セラミックグリーンシート21Aを繰り返し積層し、最終的に100〜2000kg/cmの圧力で圧着して生の積層体20を得る。
【0053】
然る後、生の積層体20を焼成して多層セラミック基板10を得る。この際、基材セラミックグリーンシート21Aが低温焼結セラミック材料を含み、誘電体グリーンシート層22がガラス粉末を含む場合には、例えば、800〜1000℃の温度で生の積層体20を焼成する。また、内部ライン導体層23、ビアホール層24、第1、第2の外部導体層25、27及び第1、第2の電極層28、29がAgまたはCuを主成分として含む場合には還元性雰囲気中で焼成してこれらの金属の酸化を防止する。
【0054】
尚、基材セラミックグリーンシート21Aと誘電体グリーンシート層22との間、及び基材セラミックグリーンシート21A間の位置合わせのため、基材セラミックグリーンシート21A等に位置決め用のマーク(例えば、穴または印刷図形)を予め形成し、このマークの位置をカメラによって認識しながら、転写及び積層作業を行っても良い。
【0055】
以上説明したように本実施形態によれば、誘電体セラミック層12のうち、基材層11内に位置する端部全長に渡って凹凸12Bを設けたため、基板変形やデラミネーション等の内部構造欠陥がなく、パターン精度の高い誘電体セラミック層12を内蔵したセラミック多層基板10を得ることができる。また、この凹凸12Bの深さの平均値を、10〜500μmに設定したため、より確実にセラミック多層基板10の内部構造欠陥を防止することができる。また、内部ライン導体13等をAgまたはCuを主成分とする導電性金属によって形成したため、内部ライン導体13等の抵抗値を低減することができる。また、誘電体セラミック層12によってセラミック多層基板10内にコンデンサを形成することができる。更に、第1のコンデンサ用電極18を誘電体セラミック層12よりも小さな面積に設定したため、所望の容量値を確実に得ることができる。
【0056】
また、図8は本発明の他の実施形態を示す図である。本実施形態においても上記実施形態と同一部分または相当部分には同一符号を付して本発明を説明する。本実施形態では、機能性材料層(例えば、誘電体セラミック層)12を上記実施形態の場合よりも厚く形成する。誘電体セラミック層12は基材セラミック層11A間に部分的に介在しているため、誘電体セラミック層12が厚いと基材層11の平坦性を損ない、均一な厚さのセラミック多層基板を得られない虞がある。誘電体グリーンシート層22の厚さが例えば300μm以内であること好ましいが、その厚さを超えるとその厚みによって生の積層体20内で基材セラミックグリーンシート21Aの平坦性を損なわれる。そこで、図8に示すように誘電体セラミック層12による段差を調整するための段差調整用セラミックグリーンシート21Bを介在させ、この段差調整用セラミックグリーンシート21Bによって基材セラミックグリーンシート21Aの平坦性を保つようにしてある。この段差調整用セラミックグリーンシート21Bは、基材セラミックグリーンシート21Aと同じ材料によって形成されている。
【0057】
本実施形態のセラミック多層基板10は、段差調整用セラミックグリーンシート21Bが介在している以外は、上記実施形態と同様の手順で作製することができる。そこで、本実施形態の特徴について図8を参照しながら説明する。
【0058】
例えば、図8の(a)に示すように、誘電体グリーンシート層22に対応する領域をパンチングまたはレーザを用いて予め開口した開口部21Cを有する段差調整用セラミックグリーンシート21Bを用意し、この段差調整用セラミックグリーンシート21Bを基材セラミックグリーンシート21A上に積層すると、誘電体グリーンシート層22が段差調整用セラミックグリーンシート21Bの開口部21Cを埋めて段差調整用セラミックグリーンシート21B上面が平坦になる。段差調整用グリーンシート21Bは基材セラミックグリーンシート21Aのビアホール層23に対応するビアホール層23Aを有している。その後、上記実施形態と同様の工程を実施することによって図8の(b)に示す多層セラミック基板10を得ることができる。尚、図8の(b)において、11Bは段差調整用セラミック層である。本実施形態においても上記実施形態と同様の作用効果を期することができる。
【0059】
尚、誘電体グリーンシート層22を基材セラミックグリーンシート21A上に転写する工程と段差調整用グリーン層21Bを基材セラミックグリーンシート21A上に積層する工程は、いずれを先に実施しても良い。
【0060】
上記各実施形態では、1個のセラミック多層基板10を作製ための工程を図示していたが、通常、図9に示すように複数個のセラミック多層基板10を同時に作製する。即ち、図9に示すようにキャリアフィルム30上に複数の誘電体グリーンシート層22をマトリックス状に形成し、マザー状態で生の積層体を得た後、一点鎖線で示す分割線に沿って分割することにより、個々の多層セラミック基板10のための生の積層体20が作製することができる。
【0061】
尚、本発明は、上記各実施形態に何等制限されるものでない。また、上記各実施形態では誘電体セラミック層12にはビアホール導体を設けてないが、機能性材料層にビアホール導体を設ける必要のある場合にはレーザ加工の前後でビアホール導体のための貫通孔を設け、この貫通孔に導電性ペーストを充填しても良い。要は、セラミック多層基板の機能性材料層の端部全長に渡って凹凸を形成したものであれば、本発明に包含される。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、コンデンサ、インダクタ、抵抗等の素子を内蔵するセラミック多層基板に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明のセラミック多層基板の一実施形態を示す断面図である。
【図2】図1に示すセラミック多層基板の要部を示す図で、(a)はその平面図、(b)はその断面図である。
【図3】図1に示すセラミック多層基板を製造するための生の積層体を示す断面図である。
【図4】(a)〜(d)はそれぞれ図2に示した誘電体セラミックグリーンシート部を形成する工程を示す図である。
【図5】(a)はキャリアフィルム上の誘電体セラミックグリーンシートから誘電体セラミックグリーンシート部を切断して凹部を形成した状態を示す平面図、(b)は誘電体セラミックグリーンシートの不要部分を除去した状態を示す平面図である。
【図6】図4の(c)に示す工程でレーザ光を照射した時の誘電体セラミックグリーンシート部とキャリアフィルムの状態を示す図で、(a)はその断面図、(b)は誘電体セラミックグリーンシート部側からの平面図、(c)はキャリアフィルム側からの平面図である。
【図7】(a)は誘電体セラミックグリーンシート部を基材セラミックグリーンシート上に転写する工程を示す断面図で、(b)は転写後の基材セラミックグリーンシート上に他の基材セラミックグリーンシートを積層した状態を示す断面図である。
【図8】誘電体セラミック層が厚い場合のセラミック多層基板の製造工程を示す図で、(a)は誘電体セラミックグリーンシート部に段差調整用グリーンシートを積層する工程を示す断面図、(b)は(a)の工程を経て作製されたセラミック多層基板を示す断面図である。
【図9】マザー状態で生の積層体を作製するために用いられる、誘電体セラミックグリーンシート部が形成されたキャリアフィルムを示す平面図である。
【図10】(a)は従来のセラミック多層基板を構成する基材セラミックグリーンシートと誘電体セラミックグリーンシート部を示す平面図、(b)は生の積層体を圧着した時及び焼成した時の誘電体セラミックグリーンシート部の変形を模式的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0064】
10 セラミック多層基板
11 基材層
11A 基材セラミック層
12 誘電体セラミック層(機能性材料層)
12A 凹凸
13 内部導体(導体)
14 ビアホール導体(導体)
15、17 外部導体
18、19 コンデンサ用電極
【出願人】 【識別番号】000006231
【氏名又は名称】株式会社村田製作所
【住所又は居所】京都府長岡京市東神足1丁目10番1号
【出願日】 平成16年1月21日(2004.1.21)
【代理人】 【識別番号】100096910
【弁理士】
【氏名又は名称】小原 肇

【公開番号】 特開2005−209820(P2005−209820A)
【公開日】 平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願番号】 特願2004−13665(P2004−13665)