トップ :: H 電気 :: H05 他に分類されない電気技術




【発明の名称】 金属配線形成方法および金属配線形成装置
【発明者】 【氏名】杉岡 幸次

【氏名】緑川 克美

【要約】 【課題】簡単な工程で、かつ、少ない工程数により絶縁体の表面に高解像度に金属の配線を形成する。

【解決手段】絶縁体の表面に金属配線を形成する金属配線形成方法であって、レーザー光としてパルス幅がピコ秒オーダーのピコ秒レーザー光またはパルス幅がフェムト秒オーダーのフェムト秒レーザー光を、上記レーザー光の波長に対して透明な絶縁体の無電解メッキ液に浸された表面に照射して集光し、上記レーザー光を照射された上記絶縁体の表面の照射領域に金属を析出させることにより金属膜を堆積して金属配線を形成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁体の表面に金属配線を形成する金属配線形成方法において、
レーザー光としてパルス幅がピコ秒オーダーのピコ秒レーザー光またはパルス幅がフェムト秒オーダーのフェムト秒レーザー光を、前記レーザー光の波長に対して透明な絶縁体の無電解メッキ液に浸された表面に照射して集光し、
前記レーザー光を照射された前記絶縁体の表面の照射領域に金属を析出させることにより金属膜を堆積して金属配線を形成する
ことを特徴とする金属配線形成方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属配線形成方法において、
前記絶縁体の表面における前記レーザー光の集光位置を任意に変化する
ことを特徴とする金属配線形成方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の金属配線形成方法において、
前記絶縁体の表面は、外部から前記無電解メッキ液が浸入可能に形成された前記絶縁体の内部における中空構造の表面である
ことを特徴とする金属配線形成方法。
【請求項4】
絶縁体の表面に金属配線を形成する金属配線形成装置において、
レーザー光としてパルス幅がピコ秒オーダーのピコ秒レーザー光またはパルス幅がフェムト秒オーダーのフェムト秒レーザー光を照射するレーザーと、
前記レーザーから出射されたレーザー光の波長に対して透明な材料により形成されるとともに内部に無電解メッキ液を充填したセルと、
前記無電解メッキ液に浸されて前記セル内に配置された前記レーザー光の波長に対して透明な絶縁体の表面に前記レーザー光を集光する集光手段と
を有することを特徴とする金属配線形成装置。
【請求項5】
請求項4に記載の金属配線形成装置において、さらに、
前記絶縁体の表面における前記レーザー光を集光位置を変化する集光位置変化手段と
を有することを特徴とする金属配線形成装置。
【請求項6】
請求項4または請求項5のいずれか1項に記載の金属配線形成装置において、
前記絶縁体の表面は、外部から前記無電解メッキ液が浸入可能に形成された前記絶縁体の内部における中空構造の表面である
ことを特徴とする金属配線形成装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、金属配線形成方法および金属配線形成装置に関し、さらに詳細には、集積回路のプリント基板などの電子回路用の基板に金属配線を形成する際などに用いて好適な金属配線形成方法および金属配線形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ポリイミドに代表されるポリマー材料などの高分子やガラスなどの絶縁体に対して金属配線を形成する場合には、まず、真空蒸着、スパッタリングあるいはイオン化プレーティングなどによって絶縁体表面の全面にわたって金属膜を堆積させ、その後に、フォトリソグラフィの技術を用いて金属膜をパターン化して金属配線を形成している。
【0003】
より詳細には、絶縁体表面の全面にわたって金属膜を堆積させた後に、金属膜の表面にフォトレジストを塗布し、さらに、塗布したフォトレジストをパターン化する。それから、主に酸を用いたウェットエッチングを行って金属膜のパターン化を行い、最後に残留しているフォトレジストを除去することにより、絶縁体の表面に金属配線を形成していた。
【0004】
また、上記した手法(以下、「第1の手法」と称する。)とは異なる手法として、無電解メッキ法を用いて絶縁体に対して金属配線を形成する手法(以下、「第2の手法」と称する。)も知られている(非特許文献1参照。)
無電解メッキ法とは、センシタイジングとアクチベーティングという2つの前処理を順次経た後に、メッキ反応を行うという手法である。センシタイジングは、絶縁体の表面にスズイオンを付着させるという処理であり、また、アクチベーティングは、スズイオンとの還元によってパラジウムイオンを絶縁体の表面に吸着させる処理である。そして、アクチベーティングを行った後に、絶縁体を無電解メッキ液に浸けると、パラジウムを触媒としたメッキ反応によって絶縁体の表面に金属が析出し、絶縁体の表面に金属膜が形成される。
【0005】
ここで、上記した無電解メッキを行う前あるいは無電解メッキ中に絶縁体に対してレーザー光を照射すると、光化学反応による付着力の増強や熱効果によって、絶縁体のレーザー光照射領域に選択的に金属膜を堆積することができ、絶縁体の表面に金属配線を形成できるものであった。
【0006】

しかしながら、上記した第1の手法においてはリソグラフィのプロセスが必要であり、また、上記した第2の手法においては無電解メッキ法によるセンシタイジングやアクチベーティングを含む複数工程および処理が必要であるため、処理工程が複雑であるとともに工程数が多いという問題点があった。
【非特許文献1】レーザー学会編、「レーザープロセシング」、第1版、日経技術図書株式会社、1990年3月10日、p.462−467
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、従来の技術の有する上記したような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、簡単な工程で、かつ、少ない工程数により絶縁体の表面に高解像度に金属の配線を形成することができるようにした金属配線形成方法および金属配線形成装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、レーザー光としてパルス幅がピコ秒(10−1秒)オーダーのピコ秒レーザーから出射されたレーザー光たるピコ秒レーザー光(本明細書においては、「ピコ秒レーザーから出射されたレーザー光」を「ピコ秒レーザー光」と適宜に称することとする。)やパルス幅がフェムト秒(10−15秒)オーダーのフェムト秒レーザーから出射されたレーザー光たるフェムト秒レーザー光(本明細書においては、「フェムト秒レーザーから出射されたレーザー光」を「フェムト秒レーザー光」と適宜に称することとする。)を当該レーザー光の波長に対して透明な絶縁体に照射して集光すると、集光点のみに多光子吸収を生じさせ、電子励起によって多量の自由電子を発生することができるという知見に基づいてなされたものである。
【0009】
即ち、本発明は、レーザー光としてパルス幅がピコ秒オーダーのピコ秒レーザー光やパルス幅がフェムト秒オーダーのフェムト秒レーザー光を、無電解メッキ液中に浸けられた当該レーザー光の波長に対して透明なガラスなどの絶縁体に照射して集光することによって、当該レーザー光の照射領域のみに選択的に金属膜を堆積する手法を提供するものである。
【0010】
換言すれば、本発明は、レーザー光としてパルス幅がピコ秒オーダーのピコ秒レーザー光やパルス幅がフェムト秒オーダーのフェムト秒レーザー光を当該レーザー光の波長に対して透明な絶縁体に照射して当該絶縁体の表面に集光し、当該絶縁体の表面における集光点のみに多光子吸収を生じさせて電子励起によって多量の自由電子を発生させた状態下において、当該絶縁体を無電解メッキ液に浸けておくというものであり、このようにすると、当該絶縁体の表面における集光点に金属を堆積することができる。
【0011】
こうした本発明は、絶縁体の表面の自由電子による還元反応によって、無電解メッキ液中の金属イオンが当該絶縁体の表面に析出するという現象を利用したものである。
【0012】
従って、本発明によれば、絶縁体であっても、パルス幅がピコ秒オーダーのピコ秒レーザー光やパルス幅がフェムト秒オーダーのフェムト秒レーザー光の照射領域のみに金属を堆積させて、メッキにより選択的に金属配線を形成することができるものである。
【0013】
つまり、本発明においては、金属膜をパターン化するためのリソグラフィプロセスが不要であり、また、公知の無電解メッキ法において用いられるセンシタイジングとアクチベーティングという2つの前処理も必要ないので、簡単な工程で、かつ、少ない工程数により絶縁体の表面に高解像度に金属の配線を形成することが可能となる。
【0014】
さらに、本発明によれば、外部から無電解メッキ液が浸入可能に形成された絶縁体の内部における中空構造の表面に、レーザー光としてパルス幅がピコ秒オーダーのピコ秒レーザー光やパルス幅がフェムト秒オーダーのフェムト秒レーザー光を照射して集光することにより、無電解メッキ液で浸された絶縁体の内部に形成された中空構造の表面にメッキにより選択的に金属配線を形成することができる。
【0015】

そして、本発明のうち請求項1に記載の発明は、絶縁体の表面に金属配線を形成する金属配線形成方法において、レーザー光としてパルス幅がピコ秒オーダーのピコ秒レーザー光またはパルス幅がフェムト秒オーダーのフェムト秒レーザー光を、上記レーザー光の波長に対して透明な絶縁体の無電解メッキ液に浸された表面に照射して集光し、上記レーザー光を照射された上記絶縁体の表面の照射領域に金属を析出させることにより金属膜を堆積して金属配線を形成するようにしたものである。
【0016】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、本発明のうち請求項1に記載の発明において、上記絶縁体の表面における上記レーザー光の集光位置を任意に変化するようにしたものである。
【0017】
また、本発明のうち請求項3に記載の発明は、本発明のうち請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の発明において、上記絶縁体の表面は、外部から上記無電解メッキ液が浸入可能に形成された上記絶縁体の内部における中空構造の表面であるようにしたものである。
【0018】
また、本発明のうち請求項4に記載の発明は、絶縁体の表面に金属配線を形成する金属配線形成装置において、レーザー光としてパルス幅がピコ秒オーダーのピコ秒レーザー光またはパルス幅がフェムト秒オーダーのフェムト秒レーザー光を照射するレーザーと、上記レーザーから出射されたレーザー光の波長に対して透明な材料により形成されるとともに内部に無電解メッキ液を充填したセルと、上記無電解メッキ液に浸されて上記セル内に配置された上記レーザー光の波長に対して透明な絶縁体の表面に上記レーザー光を集光する集光手段とを有するようにしたものである。
【0019】
また、本発明のうち請求項5に記載の発明は、本発明のうち請求項4に記載の発明において、さらに、上記絶縁体の表面における上記レーザー光を集光位置を変化する集光位置変化手段とを有するようにしたものである。
【0020】
また、本発明のうち請求項6に記載の発明は、本発明のうち請求項4または請求項5のいずれか1項に記載の発明において、上記絶縁体の表面は、外部から上記無電解メッキ液が浸入可能に形成された上記絶縁体の内部における中空構造の表面であるようにしたものである。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上説明したように構成されているので、簡単な工程で、かつ、少ない工程数により絶縁体の表面に高解像度に金属の配線を形成することができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、添付の図面に基づいて、本発明による金属配線形成方法および金属配線形成装置の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0023】
なお、以下の各図ならびにその説明において、それぞれ同一あるいは相当する構成については同一の符号をもって示し、その詳細な説明は省略する。
【0024】

図1には、本発明による金属配線形成装置の実施の形態の一例を示す概念構成図が示されている。
【0025】
図1に示す金属配線形成装置は、試料22(後述する。)の表面に多光子吸収を生じさせるレーザー光としてフェムト秒オーダーのパルス幅を有するフェムト秒レーザー光、例えば、パルス幅が100〜150フェムト秒ほどのフェムト秒レーザー光を照射するフェムト秒レーザー10と、フェムト秒レーザー10から出射されたフェムト秒レーザー光のビーム径を制御して切り出すためのアパーチャー(開口)12aを備えたアパチャー部材12と、アパチャー部材12のアパーチャー12aから出射されたフェムト秒レーザー光のパルスエネルギーを調節するためのNDフィルター14と、NDフィルター14から出射されたフェムト秒レーザー光を試料22(後述する。)の表面に集光するためのレンズ16と、フェムト秒レーザー10から出射されたフェムト秒レーザー光の波長に対して透明な材料により形成されるとともに内部に無電解メッキ液18を充填したセル20と、セル20を直交座標系のx軸方向、y軸方向ならびにz軸方向に任意に移動可能はx−y−zステージ24とを有して構成されている。
【0026】
そして、金属の配線を形成する対象となる絶縁体たる試料22は、フェムト秒レーザー10から出射されたフェムト秒レーザー光の波長に対して透明であり、セル20に充填された無電解メッキ液18内に浸けられている。なお、無電解メッキ液18の温度は、室温で保持すればよい。
【0027】
また、この実施の形態においては、フェムト秒レーザー光の入射側におけるセル20の壁20aと試料22とが密着するようにして配置されている。即ち、試料22の無電解メッキ液18に浸けられた表面における集光位置にフェムト秒レーザー光が到達するまでは、フェムト秒レーザー光が無電解メッキ液18に入射されることがないように、セル20内に試料22が配置されている。
【0028】

この金属配線形成装置においては、x−y−zステージ24によりセル20を任意の位置に移動することにより、セル20内において無電解メッキ液18に浸けられた試料22におけるフェムト秒レーザー光の集光位置を任意の位置に移動することができる。
【0029】
即ち、上記した金属配線装置においては、フェムト秒レーザー光の照射方向は位置決めされて固定されているが、試料22を無電解メッキ液18に浸けらるように配置したセル20をx−y−zステージ24によりx軸方向、y軸方向ならびにz軸方向に任意に移動することにより、試料22の無電解メッキ液18に浸けられた表面に集光されるフェムト秒レーザー光の集光位置を試料22に対して相対的にx軸方向、y軸方向ならびにz軸方向に任意に移動し、試料22の無電解メッキ液18に浸けられた表面および内部でフェムト秒レーザー光をx軸方向、y軸方向ならびにz軸方向に任意に走査することができるように構成されている。
【0030】
なお、上記したx−y−zステージ24の移動は、例えば、コンピューターを用いて制御することができる。
【0031】

以上の構成において、フェムト秒レーザー10から出射されたフェムト秒レーザー光は、アパチャー部材12のアパチャー12aによってビームを切り出され、NDフィルター14によってパルスエネルギーを調整された後にレンズ16に入射する。
【0032】
レンズ16に入射したフェムト秒レーザー光は、セル20を介して試料22に向けて照射される。この際に、セル20ならびに試料22はフェムト秒レーザー光の波長に対して透明であるので、レンズ16から出射されたフェムト秒レーザー光はセル20ならびに試料22を透過し、セル20ならびに試料22を透過したフェムト秒レーザー光は試料22の無電解メッキ液18に浸けられた表面に集光される。
【0033】
ここで、試料22の無電解メッキ液18に浸けられた表面におけるフェムト秒レーザー光の集光位置において、照射面積が最小となるようにレンズ16と試料22との距離をx−y−zステージ24のx方向ステージでの位置を調整すると、試料22の無電解メッキ液18に浸けられた表面における単位面積当たりのフェムト秒レーザー光の強度は最大になる。
【0034】
このときに、フェムト秒レーザー光の照射エネルギーを適切な値に設定すると、試料22の無電解メッキ液18に浸けられた表面における集光位置においてのみ多光子吸収が生じ、集光位置に自由電子を生成することができる。
【0035】
こうして生成された自由電子と無電解メッキ液18中の金属イオンとの還元反応およびフェムト秒レーザー光の照射による加熱効果によって、上記集光位置のみに金属が析出されて選択的に金属膜が堆積し、試料22の表面に金属配線を形成することができる。
【0036】
従って、試料22の無電解メッキ液18に浸けられた表面における集光位置を任意に移動することにより、試料22の表面に任意の配線パターンの金属配線を形成することができる。
【0037】

次に、本願発明者が図1に示す金属配線形成装置を用いて行った実験の結果について、詳細に説明する。
【0038】
まず、この実験において用いた装置の構成の詳細について説明すると、フェムト秒レーザー10としては、波長が775nmであり、パルス幅が150fs(フェムト秒)であり、繰り返し周波数1kHzであるフェムト秒レーザーを用いた。なお、具体的には、フェムト秒レーザー10としては、clark−MXR CPA2000(商品名)を用いた。
【0039】
また、アパチャー部材12のアパーチャー12aは直径3mmの円形開口として形成し、レンズ16としては20倍の対物レンズ(開口数 NA:0.46)を用いた。なお、試料22の無電解メッキ液18に浸けられた表面におけるフェムト秒レーザー光の集光位置のスポット径は、約20μmとなる。
【0040】
さらに、無電解メッキ液18としては銅の無電解メッキ液を用いており、銅の無電解メッキ液の温度は室温で保持した。なお、こうした室温で保持する銅の無電解メッキ液としては、具体的には、高純度化学製(Cu)C−200LT(商品名)を用いた。
【0041】
ここで、この実験においては、絶縁体の試料22として感光性ガラスを用いた。一般に、感光性ガラスとは、Au、Ag、Cuなどの金属イオンと増感材とを含んでいる。なお、こうした感光性ガラスとしては、具体的には、リチウムアルミノ珪酸塩ガラスにCeイオン、Agイオン、Sbイオンがドープされた感光性ガラスであるショットガラス製フォーチュランガラス(Forturan Glass)(商品名)を用いた。
【0042】
図2には、上記したような条件の下で、フェムト秒レーザー10のレーザーパワーを6mWとし、試料22の無電解メッキ液18に浸けられた表面におけるフェムト秒レーザー光の集光位置を走査する際の走査速度を10μm/sとして、フェムト秒レーザー光を試料22に照射したときの光学顕微鏡写真が示されている。なお、図2(a)は倍率を20倍とし、図2(b)は倍率を50倍としたものである。
【0043】
図2(a)(b)に示す光学顕微鏡写真の中央において水平方向に延長するライン状のものが、フェムト秒レーザー光の走査によって試料22の表面に堆積した金属薄膜である。この金属薄膜の線幅は20μmであり、試料22の表面におけるフェムト秒レーザー光の集光位置のスポット径と一致している。
【0044】
従って、試料22の表面におけるフェムト秒レーザー光の集光位置のスポット径の大きさを制御することにより、試料22の表面にスポット径の大きさに応じた任意の線幅の金属薄膜を堆積することができる。
【0045】

上記した実験によれば、この金属配線形成装置によれば、絶縁体の表面におけるフェムト秒レーザー光の照射領域のみに金属薄膜を堆積させて金属配線を形成することができるが、金属薄膜の堆積後に、例えば、400℃で1時間加熱するなどの熱処理を行うことにより、絶縁体22の表面と当該表面に堆積する金属薄膜との付着力を増大することができる。
【0046】
また、上記した実験においては、無電解メッキ液18に浸けられた試料22にフェムト秒レーザー光を照射する際に、無電解メッキ液18の温度は室温としたが、無電解メッキ液18の温度を通常のメッキ温度(50〜60℃程度である。)に昇温すると、さらに効率良く絶縁体22の表面に金属薄膜を堆積することができる可能性がある。
【0047】

また、図3には、絶縁体たる試料22の内部に形成された中空構造22aの表面に金属配線を形成する例を示しており、図3に示す各構成は図1に示す構成に対応している。
【0048】
即ち、図1に示す金属配線形成装置を用いることにより、試料22の内部に形成された中空構造22aの表面に選択的に金属配線を形成することができる。
【0049】
例えば、Appl.Phys.A76,857(2003)に開示した本願発明者が開発した手法などを用いて、試料22の内部において、外部から無電解メッキ液18が浸入可能な開口部を備えた中空構造22aを作成した場合には、開口部から浸入した無電解メッキ液18に浸された中空構造22aの表面にフェムト秒レーザ光を集光すると、上記したと同様な作用により、フェムト秒レーザ光の集光位置に金属薄膜を堆積することができる。
【0050】

なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(10)に示すように変形することができるものである。
【0051】
(1)上記した実施の形態においては、試料22の表面に多光子吸収を生じさせるのにレーザー光としてフェムト秒レーザー光を用いたが、これに限られるものではないことは勿論であり、試料22の表面にダメージを生じさせないのであれば、試料22の表面に多光子吸収を生じさせるレーザー光としてピコ秒レーザー光を用いることができる。
【0052】
(2)上記した実施の形態においては、無電解メッキ液18を充填したセル20内に試料22を配置する際には、フェムト秒レーザー光の入射側におけるセル20の壁面20aと試料22とが密着するようにして、試料22の無電解メッキ液18に浸けられた表面における集光位置にフェムト秒レーザー光が到達するまでは、フェムト秒レーザー光が無電解メッキ液18に入射されることがないようにした。
【0053】
しかしながら、これに限られるものではないことは勿論であり、無電解メッキ液18がフェムト秒レーザー光の波長に対して透明であるならば、フェムト秒レーザー光が無電解メッキ液18を通過してから試料22の表面に集光されるように、無電解メッキ液18を充填したセル20中に試料22を配置するようにしてもよい。
【0054】
(3)上記した実施の形態において、試料22の表面に膜厚の厚い金属配線を形成したい場合には、上記した実施の形態に示す手法により、図2に示すように試料22の表面にフェムト秒レーザー光の照射により金属薄膜を堆積させた後に、通常の無電解メッキを行えばよい。即ち、フェムト秒レーザー光の照射により表面に金属薄膜を堆積させた試料22をメッキ温度に昇温した無電解メッキ液に浸すだけで、フェムト秒レーザー光の照射により堆積した金属薄膜上に選択的に厚い金属膜を堆積することができる。
【0055】
(4)上記した実施の形態において、表面に金属配線を形成される絶縁体として感光性ガラスを用いたが、これに限られるものではないことは勿論であり、表面に金属配線を形成される絶縁体としては、照射されるフェムト秒レーザー光やピコ秒レーザー光が当該絶縁体に対して透明となる材料、即ち、照射されるフェムト秒レーザー光やピコ秒レーザー光を吸収しない材料よりなる絶縁体であれば、任意のものを選択することができる。例えば、石英ガラス、金属ドープガラス、サファイアあるいはポリイミドに代表されるポリマー材料などの高分子を用いることができる。
【0056】
(5)上記した実施の形態においては、無電解メッキ液18として銅の無電解メッキ液を用いたが、これに限られるものではないことは勿論であり、各種金属の無電解メッキ液を用いることができる。
【0057】
(6)上記した実施の形態においては、試料22上においてフェムト秒レーザー光やピコ秒レーザー光を集光する際に、フェムト秒レーザー光やピコ秒レーザー光が照射される方向とは反対の方向の表面に集光されるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、無電解メッキ液18に浸けられているならば、フェムト秒レーザー光やピコ秒レーザー光が照射される方向と同一の方向の表面に集光されるようにしてもよい。
【0058】
(7)上記した実施の形態においては、試料22の表面に堆積される金属薄膜の膜厚は、フェムト秒レーザー光やピコ秒レーザー光の照射時間や照射強度に応じて、任意のサイズに調整可能なものである。
【0059】
(8)上記した実施の形態においては、実験条件としてフェムト秒レーザーのパラメータ(波長、パルス幅、繰り返し周波数など)の具体的な数値を示したが、これらの数値は一例に過ぎないものであり、フェムト秒レーザーのパラメータは、絶縁体の種類や作成すべき金属配線などの大きさに応じて適宜に選択すればよい。
【0060】
(9)上記した実施の形態においては、x−y−zステージ24により試料22に照射されるフェムト秒レーザー光の集光位置を移動するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、フェムト秒レーザー10の光路自体を変化させて、試料22に照射されるフェムト秒レーザー光の集光位置を移動するようにしてもよい。
【0061】
(10)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(9)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、集積回路のプリント基板などの電子回路用の基板に金属配線を形成する際や、微量化学・生物分析を行うマイクロ総合分析システム(μ−TAS:Micro Total Analysis System)の作製などに利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明による金属配線形成装置の実施の形態の一例を示す概念構成図である。
【図2】本願発明者による実験結果を示す光学顕微鏡写真であり、(a)は倍率を20倍とし、(b)は倍率を50倍としたものである。
【図3】絶縁体の内部に形成された中空構造の表面に金属配線を形成する例を示す図1に対応する説明図である。
【符号の説明】
【0064】
10 フェムト秒レーザー
12 アパチャー部材
12a アパチャー(開口)
14 NDフィルター
16 レンズ
18 無電解メッキ液
20 セル
22 試料
24 x−y−zステージ
【出願人】 【識別番号】503359821
【氏名又は名称】独立行政法人理化学研究所
【出願日】 平成16年1月21日(2004.1.21)
【代理人】 【識別番号】100087000
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 淳一

【公開番号】 特開2005−209817(P2005−209817A)
【公開日】 平成17年8月4日(2005.8.4)
【出願番号】 特願2004−13634(P2004−13634)