| 【発明の名称】 |
電波吸収体 |
| 【発明者】 |
【氏名】畠山 賢一
【氏名】坂井 康彦
【氏名】岡室 智行
|
| 【要約】 |
【課題】本発明の目的は、周波数帯域幅の広い平板状の電波吸収体を提供することにある。
【解決手段】樹脂中にカーボン粉や金属粉などの導電粒子、およびフェライト粉などの磁性粒子のいずれか一方、又は両方を含む複合材を用いて損失層1および損失層3を構成し、該損失層1と該損失層3の間に、長さ1mm〜100mm、アスペクト比10以上の線状導体6を樹脂シート5の表面、又は内部にランダム、あるいは方向を揃えて配列した共振層2を挟んで積層し、損失層1を金属板4に装着する構造とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 樹脂中にカーボン粉や金属粉などの導電粒子、およびフェライト粉などの磁性粒子のいずれか一方、又は両方を含む複合材を用いて損失層1および損失層3を構成し、該損失層1と該損失層3の間に長さ1mm〜100mm、アスペクト比10以上の線状導体を樹脂シートの表面又は内部にランダムに配列した共振層2を挟んで積層し、損失層1を金属面に装着することを特徴とする電波吸収体。 【請求項2】 共振層2は、長さ1mm〜100mm、アスペクト比10以上の線状導体を樹脂シートの表面又は内部に方向を揃えて配列したものであることを特徴とする請求項1に記載の電波吸収体。 【請求項3】 共振層2は、樹脂シートの表面又は内部に十字形導体を配列したものであり、該十字形導体の直線部の長さは1mm〜100mmであり、該十字形導体の直線部の幅は該直線部の長さの1/10以下であることを特徴とする請求項1に記載の電波吸収体。 【請求項4】 共振層2は、樹脂シートの表面又は内部に線状導体よりなる円形、或いは多角形状の導体パターンを配列したものであり、該円形,或いは該多角形状パターンの周辺長が2mm〜200mmであることを特徴とする請求項1に記載の電波吸収体。
|
【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は平板状の電波吸収体に関する。 【背景技術】 【0002】 電波吸収体の構成方法は各種知られており、例えばカーボン粉や金属粉等の導電粒子、あるいはフェライト粉等の磁性粒子のいずれか一方、または両方を含む損失材の層を金属板上に設ける単層形吸収体(例えば特許文献1)、あるいは金属板上に設けた1/4波長厚みの誘電体層の表面に導電材の薄い層を設ける1/4波長形吸収体(例えば特許文献2)、あるいは金属線などの導電短繊維を分散した損失材を用い、これにインピーダンス変成のための層を積層する2層形吸収体(例えば特許文献3)などの構成法がある。 【特許文献1】 特開昭58−71698号公報(第1図) 【特許文献2】 特開平5−335832号公報(図1) 【特許文献3】 特公平2−18597号公報(第2図) 【0003】 上記の単層形吸収体、および1/4波長形吸収体は構成が簡単であり、また厚みが薄い等の利点を有するのでよく用いられるが、一方良好な吸収特性を示す周波数幅が狭いという欠点を有している。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 本発明の目的は、帯域幅の広い平板状の薄形電波吸収体を提供することにある。 【発明が解決するための手段】 【0005】 図1に示すように、樹脂中にカーボン粉や金属粉などの導電粒子、およびフェライト粉などの磁性粒子のいずれかを含む複合材を用いて構成した損失層1および損失層3の間に共振層2を挟んで積層し、損失層1を金属板4に装着する構造の電波吸収体とする。共振層2は、図2に示すように長さ1mm〜100mm、アスペクト比10以上の線状導体6を樹脂シート5の表面、又は内部にランダムに配列したものである。 【0006】 上記共振層2は電界の強い部分に位置することが必要である。金属板4に近いと電界が弱く、電磁波入射側面に近いほど電界が強い。損失層1、および損失層3の厚みを各々d1、d3とするとき、d1≧d3≧0となる位置に共振層2を挟みこむことが望ましい。 【0007】 共振層2の厚みは、電波吸収体を薄く構成するためにはできる限り薄い方が望ましく、実用的には共振層2の厚みをd2とすると、d2<(d1+d3)/5であるのが望ましい。 【0008】 線状導体6の方向がランダムであることにより、共振層2の特性は入射波の偏波(電界の振動方向)に依存しない。電波吸収体の用途によっては入射波の偏波が定まっていることがあり、この場合には図3に示すように線状導体6を一方向に揃えて配列してもよい。 【0009】 共振層2に含まれる線状導体6はダイポールアンテナとして作用し、その長さが媒質内波長のおよそ1/2となる周波数f0で共振する。この共振現象を含む線状導体6の効果を等価的な誘電率で表す。等価的な誘電率とは、共振層2を均一な媒質と仮定するときの誘電率である。共振層2の等価的な比誘電率εr2(=εr2’−jεr2”)は図6に示す周波数変化を示す。比誘電率の虚数部εr2”はf0において最大値を示す。 【0010】 上記媒質内波長について詳しく述べる。本発明に於いては入射波は平面波を仮定しているが、線状導体6を配列した共振層2は均一媒質ではないために、共振層2、およびその両側に存在する損失層1、損失層3の内部では電磁界分布に乱れが生じて平面波とは異なった電磁界分布になる。この結果、上記媒質内波長は、樹脂シート5とともに損失層1および損失層3も含めて決定されるある平均的な値になる。以下により具体的に述べると、樹脂シート5の比誘電率、比透磁率を各々εr5(=εr5’−jεr5”)、μr5(=μr5’−jμr5”)、損失層1の比誘電率、比透磁率を各々εr1(=εr1’−jεr1”)、μr1(=μr1’−jμr1”)、損失層3の比誘電率、比透磁率を各々εr3(=εr3’−jεr3”)、μr3(=μr3’−jμr3”)とするとき、波長短縮率nの近似値はn=1/(εr1’εr3’εr5’μr1’μr3’μr5’)1/3で与えられ、自由空間波長とnの積により媒質内波長の近似値が見積もられる。 【0011】 線状導体6の長さとf0の関係は、波長短縮率nを用いて求めることができる。例えば、εr1’=5、εr3’=5、εr5’=2.2、μr1’=1、μr3’=1、μr5’=1、であるときはn=1/3.8である。f0を400MHz(f0に対応する自由空間波長をλ0とすると、λ0は75cm)とするための線状導体6の長さは、媒質内波長nλ0は200mmであるのでその半分の値、すなわち100mmである。f0を高く設定するほど線状導体6の長さは短くなり、例えばf0=40GHz(λ0は7.5mm)とする為の線状導体6の長さは1mmとなる。 【0012】 本発明による電波吸収体はf0付近で吸収特性が大きくなるように設計する。電波吸収体の設計周波数によって線状導体6の長さを変えることが必要であり、設計周波数の範囲を1GHzから40GHz程度とすると線状導体6の長さは1mm〜100mmの範囲にある。 【0013】 線状導体6の太さは理論的には細いほど上記共振現象を得るには望ましく、実用的にはアスペクト比が10以上であることが望ましい。 【0014】 図6に示される等価的な比誘電率を持つ共振層2を損失層1と損失層3の間に挟んで積層したときの効果を図7の反射係数チャート、および図8を用いて示す。図7に破線で示すa、および実線で示すbの特性は各々単層形電波吸収体の反射係数、損失層1と損失層3のみを金属板上に重ねたときの反射係数であり、またcの特性は損失層1、損失層3及び共振層2を図1に示すように構成したときの反射係数である。周波数f1、f2(f1<f2)での反射係数を図7の○印、および●印で示す。 【0015】 先ず比較の為に、従来より用いられている単層形吸収体の特性について述べる。単層形吸収体は図1の構成において共振層2がなく、且つ損失層1と損失層3の組成が同じである場合に相当する。図7のaに示すように、f1からf2に至る過程で反射係数は整合(無反射)を表すチャートの中心に近づく。このとき、反射係数はf1から周波数が高くなるにつれてチャートの中心に単調に近づき、また、最もチャートの中心に近づいた点からは周波数が高くなるにつれて単調に離れるように変化する。反射係数を「とし、その絶対値を|「|とする。単層形吸収体の|「|は図8に破線で示すaのように単峰性の特性となり、反射係数がある値以下になる周波数帯域幅は狭い。 【0016】 本発明は、従来の単層形電波吸収体の層を損失層1と損失層3の2つに分離し、この2枚の損失層の間に共振層2を挟んで積層した構成であると考えられる。ただし、損失層1と損失層3のみを積層した状態では整合はさせず、図7のbに示すように、チャート実軸の値rは、0<r<1であるように設定する。 【0017】 損失層1と損失層3の間に共振層2を挟み込んで積層したときの反射係数を図7のcに示す。図6に示す共振層2の等価的な比誘電率の影響は図7のbからcへの変化として現れる。図7のcに示す特性はf0付近の周波数でチャート中心を取り巻くように変化しており、広い帯域で整合点に近づいている。この場合の|「|は図8のcに示すように双峰性の特性を示し、広帯域吸収体が可能であることを示している。 【0018】 rの値は損失層1と損失層3の比誘電率、および比透磁率により調整できる。良好な吸収特性を得るには、共振層2の等価的な誘電率をrの値によって変える必要があり、rを大きい値に設定するほど共振層2のf0での等価的な誘電率の虚数部εr2”は大きい値が必要である。εr2”の値は共振層2に含まれる線状導体6の密度が高くなるほど大きい値になる。共振層2に含まれる線状導体6の密度を一辺がλ0の正方形の面積あたりの本数で表し、これをMとする。実験的な検討より、図3に示すように線状導体6を一方向に揃えて配列するときは、0.2<r<0.8、かつ2.0<M<6.5に設定し、図2のように線状導体6の方向をランダムに配列するときは、0.2<r<0.8、および3.0<M<9.0に設定すれば良好な吸収特性が得られるという結果を得た。 【0019】 図4は樹脂シート5の表面に十字形導体7を配列した共振層2を示す。十字形導体7は、線状導体6と同様な作用をする2本の直線状導体を直角に組み合わせたものであるので偏波が90°異なる入射波に対して等価的な誘電率が同じ値になり、共振層2の特性は入射波偏波の方向に依存しない。すなわち、図2に示すように線状導体6をランダムな方向を向くように配列することと同じ効果が得られる。十字形導体7の直線部の作用は線状導体6と同様であるので、該直線部の長さは1mm〜100mm、その幅は長さの1/10以下に設定すればよい。また、十字形導体を配列した共振層2でのr、および一辺がλ0の正方形の面積あたりの十字形導体7の個数をMとしたときのMは、0.2<r<0.8、および2.0<M<6.5に設定すればよい。 【0020】 線状導体で円形や正方形、あるいは長方形などの多角形導体を構成すれば、該導体の周辺長がおよそ媒質内波長となる周波数で共振する。したがって、線状導体で構成された円形、或いは多角形の導体を配列しても共振層2を構成できる。該円形,あるいは多角形の線状導体の周辺長は2mm〜200mmであり、線状導体の幅は長さの1/10以下であることが望ましい。 【0021】 図5は円形の線状導体8を配列した共振層2を示す。この場合は、共振層2の効果は入射波偏波には依存しない。一辺がλ0の正方形の面積あたりの円形線状導体8の個数をMとするとき、r、Mの設定は0.2<r<0.8、および3.0<M<9.0と設定すればよい。円形線状導体8を配列するとき、M<π2であれば該円形線状導体を重ね合わせずに配列できる。したがって、Mの最大値が9.0であればこのような配列が可能である。 【0022】 共振層2の構成要素である線状導体6、十字形導体7、円形線状導体8、あるいは上記の多角形線状導体の材質は良電導体であればよく、例えば金属、金属をメッキした線状樹脂、或いはカーボン繊維などが使用できる。 【発明の効果】 本発明により、良好な吸収特性を示す周波数帯域幅が広い平板状電波吸収体を構成することが可能になった。 【発明を実施するための最良の形態】 【0023】 図1に示すように樹脂中にカーボン粉や金属粉などの導電粒子、およびフェライト粉などの磁性粒子のいずれか一方、又は両方を含む複合材を用いた損失層1と損失層3の間に、長さ1mm〜100mm、アスペクト比10以上の線状導体を樹脂シート5の表面、又は内部にランダム、あるいは方向を揃えて配列した共振層2を挟んで積層し、損失層1を金属板4に装着する構造とする。 【実施例】 【0024】 実施例1 共振層2はd1≧d3≧0なる条件で損失層1と損失層3の間に挟み込めば良い。実施例1ではd3=0とし、共振層2を損失層1に重ねた構成とした。損失層1はフェライト粉とクロロプレンゴムとの複合材であり、フェライト粉混合量は重量比で40%、厚さは3.6mmである。この損失層1の反射係数を6GHzから12GHzまで260MHz毎に測定した結果を図10のbに示す。図10のbに示すように、このときのrは約0.5である。 【0025】 金属メッキを施した太さ約100μmの樹脂繊維を線状導体6として用いた。線状導体6の長さは8.5mmとし、厚み235μmのポリエチレンシート上に方向を揃えて配列した。線状導体6の密度はM=3.5とした。この共振層2を損失層1に重ねたときの、共振層2の等価的な誘電率を図9に示す。εr2”の最大値より、f0は約8.6GHzであった。 【0026】 損失層1に共振層2を積層したときの反射係数を6GHzから12GHzまで250MHz毎に測定した結果を図10のcに示す。図9に示す共振層2の等価的な比誘電率の影響は図10のbからcへの変化として現れ、図10のcに示す特性においてf0(8.6GHz)付近の周波数でチャートの中心を取り巻くような変化は、広い周波数帯域で整合点に近づいていることを示している。図11は図10のcに示す反射係数の絶対値|「|をdBの単位で示したものであり、双峰性の吸収特性であることが示されている。図11より7GHz〜10.9GHzで−10dB以下、7.5GHz〜10.2GHzで−15dB以下、8GHz〜9.7GHzで−20dB以下の反射係数となっており、広い帯域で良好な吸収特性が得られることが確認できた。 【0027】 実施例2 次に、実施例1の損失層1を2つの層に分け、厚みがそれぞれ2.2mm、1.4mmの損失層1および損失層3とし、これらの損失層1と損失層3の間に実施例1で用いた共振層2を挟んで積層し、損失層1を金属板4に装着した。この構成での反射係数|「|を、6GHzから12GHzまで250MHz毎に測定した。測定結果を、|「|をdBの単位で表し、図12に示す。図12に示すように、実施例2においては6GHz〜10GHzで−10dB以下の反射係数となっており、実施例1よりも低い周波数帯において広帯域で良好な吸収特性を示すことが確認できた。 【図面の簡単な説明】 【図1】本発明の電波吸収体の断面図。 【図2】本発明に使用される共振層2の一例を示す図。 【図3】本発明に使用される共振層2の一例を示す図。 【図4】本発明に使用される共振層2の一例を示す図。 【図5】本発明に使用される共振層2の一例を示す図。 【図6】共振層2の等価的な比誘電率εr2を示す図。 【図7】単層形吸収体の反射係数、損失層1と損失層3を積層したときの反射係数、および損失層1と損失層3の間に共振層2を挟んで積層したときの反射係数を示す図。 【図8】単層形吸収体の反射係数の絶対値、および共振層2を損失層1と3の間に挟んで積層したときの反射係数の絶対値を示す図。 【図9】実施例1の共振層2が示す等価的な比誘電率εr2の図。 【図10】実施例1の構成の電波吸収体の反射係数を示す図。 【図11】実施例1の構成の電波吸収体の反射係数の絶対値を示す図。 【図12】実施例2の構成の電波吸収体の反射係数の絶対値を示す図。 【符号の説明】 1: 損失層 2: 共振層 3: 損失層 4: 金属板 5: 樹脂シート 6: 線状導体 7: 十字形導体 8: 円形線状導体
|
| 【出願人】 |
【識別番号】503005180 【氏名又は名称】畠山 賢一
|
| 【出願日】 |
平成16年1月14日(2004.1.14) |
| 【代理人】 |
|
| 【公開番号】 |
特開2005−203717(P2005−203717A) |
| 【公開日】 |
平成17年7月28日(2005.7.28) |
| 【出願番号】 |
特願2004−37487(P2004−37487) |
|