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【発明の名称】 多層セラミック基板の製造方法
【発明者】 【氏名】上田 到
【住所又は居所】埼玉県熊谷市三ヶ尻5200番地 日立金属株式会社先端エレクトロニクス研究所内

【氏名】種井 平吉
【住所又は居所】埼玉県熊谷市三ヶ尻5200番地 日立金属株式会社先端エレクトロニクス研究所内

【氏名】市川 耕司
【住所又は居所】埼玉県熊谷市三ヶ尻5200番地 日立金属株式会社先端エレクトロニクス研究所内

【要約】 【課題】X-Y面内の収縮ばらつきを抑制したキャビティ部を有する多層セラミック基板の製造方法を提供する。

【解決手段】低温焼結セラミック材料からなる基体用グリーンシートに適宜内部電極、ビア電極、外部電極、キャビティ部を形成し、これらを積層してキャビティ部を有する未焼成多層セラミック基板を作製する。他方、低温焼結セラミック材料の焼結温度では焼結しない無機材料を主体とする顆粒状拘束材、ペースト、スラリーを作製する。前記未焼成多層セラミック基板のキャビティ部に顆粒状拘束材を充填し、加圧成形し、前記キャビティ部及び外部電極を含む未焼成多層セラミック基板の上面および/または下面に前記ペーストあるいはスラリーを50μm以上の厚さに塗布または重ね合わせて拘束層を形成し、この未焼成多層セラミック基板を800℃〜1000℃で焼結する。その後、拘束層及び顆粒状拘束材を除去する多層セラミック基板の製造方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
低温焼結セラミック材料と有機バインダ、可塑剤、溶剤からなるスラリーを用いて基体用グリーンシートを作製する工程と、
前記基体用グリーンシートに適宜内部電極、ビア電極、外部電極、キャビティ部を形成し、これらを積層してキャビティ部を有する未焼成多層セラミック基板を作製する工程と、
前記低温焼結セラミック材料の焼結温度では焼結しない無機材料に有機バインダと溶剤を加えた無機組成物を作製する工程と、
前記未焼成多層セラミック基板のキャビティ部に前記無機組成物からなる顆粒状拘束材を充填し、加圧する工程と、
前記顆粒状拘束材を充填、加圧した後のキャビティ部及び外部電極を含む未焼成多層セラミック基板の上面および/または下面に密着するように前記無機組成物を50μm以上、の厚さに塗布および/または重ね合わせて拘束層を形成する工程と、それを圧着する工程と、
前記拘束層を備えた未焼成多層セラミック基板を800℃〜1000℃で焼結する工程と、
前記拘束層及び顆粒状拘束材を多層セラミック基板から除去する工程と、
を有することを特徴とする多層セラミック基板の製造方法。
【請求項2】
前記未焼成多層セラミック基板のキャビティ部内に充填する顆粒状拘束材は、スプレードライヤーにより平均粒径5〜50μmの顆粒状としたものであることを特徴とする請求項1記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項3】
前記無機組成物のペーストを構成する無機材料は平均粒径0.3〜4μmの無機材料からなり、当該ペーストを印刷塗布して厚み50μm以上、500μm以下の拘束層を形成することを特徴とする請求項1又は2記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項4】
前記無機組成物のペーストを印刷塗布することにより厚み10μm以上の第1の拘束層を形成し、その上に前記無機組成物のスラリーによるグリーンシートを重ね合わせることにより第2の拘束層を形成し、合わせて50μm以上の拘束層を形成することを特徴とする請求項1又は2に記載の多層セラミック基板の製造方法。
【請求項5】
前記低温焼結セラミック材料は、主成分であるAl,Si,Sr,TiをそれぞれAl、SiO、SrO、TiOに換算したとき、Al換算で10〜60質量%、SiO換算で25〜60質量%、SrO換算で7.5〜50質量%、TiO換算で20質量%以下(0を含む)であり、その主成分100質量%に対して
副成分として、Bi、Na、K、Coの群のうちの少なくとも1種をBi換算で0.1〜10質量%、NaO換算で0.1〜5質量%、KO換算で0.1〜5質量%、CoO換算で0.1〜5質量%含有し、
更に、Cu、Mn、Agの群のうちの少なくとも1種をCuO換算で0.01〜5質量%、MnO換算で0.01〜5質量%、Agを0.01〜5質量%含有し、その他不可避不純物を含有している混合物を700℃〜900℃で仮焼し、これを粉砕して0.6〜2μmの微粉砕粒子の仮焼複合物からなることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の多層セラミック基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は多層セラミック基板の製造方法に関わり、特にキャビティ部を有する基板表面の焼結収縮率がゼロに近く、その表面に形成する導体パターンあるいははんだパターン、導電性接着剤の形成パターンと高精度に整合する多層セラミック基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日、多層セラミック基板は、携帯電話等の移動体通信端末機器の分野などにおいて、アンテナスイッチモジュール、PAモジュール基板、フィルタ、チップアンテナ、各種パッケージ部品等の種々の電子部品を構成するために広く用いられている。
多層セラミック基板は、電子部品、半導体集積回路等を高密度に搭載すべく、セラミックグリーンシートにビアホールを開け、その穴に導体を印刷充填し、シート表面には配線パターンを印刷し、それらのシートを複数枚積層して接着し、グリーンシート積層体を形成した後、それを焼成することにより製造されている。グリーンシートはセラミック粉末と有機バインダ及び可塑剤からなり、セラミック粉末の多くはガラスとアルミナ、ムライト、コージェライト等のセラミックスとの混合物、所謂ガラスセラミックスからなる。グリーンシート積層体の焼成温度はグリーンシートを構成する上記セラミック材料の焼結温度に依存する。
【0003】
例えば、グリーンシートが主にアルミナ、ムライト等の高温焼結材料からなる場合、グリーンシート積層体は約1600℃の高温で焼成され、グリーンシートが主にガラス、ガラスセラミックス等の低温焼結材料からなる場合、グリーンシート積層体は800℃〜1050℃の低温で焼成される。グリーンシートに印刷される導体材料も上記温度で焼成されるので、その温度以上に融点をもつ低抵抗の金属導体材料が用いられる。例えば導体としては上記高温焼結材料の場合、タングステン、モリブテン等が、上記低温焼結材料の場合、銀、銀―パラジウム、銅、金等が用いられる。
【0004】
グリーンシート積層体を焼成することにより、その体積が減少し、緻密化する。すなわちグリーンシート積層体はその密度とセラミック体の理論密度との比、すなわち相対密度が通常45〜65%であるのに対し、焼成によりその相対密度が約95%以上になるからである。グリーンシート積層体は通常セラミック敷板に載せて電気炉で焼成される。焼成によるグリーンシート積層体の焼結収縮率は一般的に線収縮率で10〜25%の範囲にあるが、各方向の線収縮率に相違・ばらつきがあるのが通常で、それが問題になる場合がある。
【0005】
すなわち、グリーンシート積層体において、その表面にX-Y座標を取り、厚さ方向にZ座標を取ると、X-Y方向の収縮率とZ方向との収縮率に相違を生じるが、その相違はほとんどの場合問題にならないが、X-Y面内の収縮率の相違・ばらつきが例えば0.5%あるとすると、それがないと設計した場合と比べると、基準点から50mm離れたところで250μmの位置ずれを起こしており、その上に形成する配線パターンや搭載する部品接続のためのはんだパターンの設計位置と整合しないという問題が生じる。
【0006】
また、基体の外面にキャビティ部を形成したグリーンシート積層体の必要性は少なくない。即ち、キャビティ部内に半導体素子等を配置し、配線接続することにより省スペース且つ低背化を図ることができる点で多用されている。しかしながら、このような構造では通常のX-Y面内の収縮率の相違以上にキャビティ部がある分、複雑な挙動を示す。従って、収縮率のばらつきは大きくなるし、反りや歪も大きくなるという問題がある。
【0007】
上記した問題点を解決する手段として例えば、以下の特許文献がある。
特許文献1(特許第2554415号公報)では、有機バインダ中に分散させたセラミック粉末と焼結性無機バインダとの混合物からなる基体用グリーンシートと、この基体用グリーンシートの焼結温度では焼結しない無機材料(アルミナ等)を有機バインダ中に分散させた混合物からなる拘束用グリーンシートを用意し、前記基体用グリーンシートを複数枚積層して形成した未焼成の多層セラミック基板を得て、その上面及び下面に前記拘束用グリーンシートを密着させた上で焼成する。すると焼成工程において、基体用グリーンシートに含まれる焼結性無機バインダ、即ち、ガラス成分が拘束用グリーンシート層に50μm以下浸透し結合力を発揮する。このとき拘束グリーンシートに含まれる無機材料は実質的に焼結しないため収縮を拘束し、拘束グリーンシートが密接していたX-Y平面においては収縮が抑制される。
【0008】
特許文献2(特許第2803421号公報)では、無収縮プロセスの中でもキャビティ部のある場合に対応した方法であって、ガラスセラミックスのグリーンシート積層体の上下両面もしくは片面に焼成温度では焼結しない無機組成物をキャビティ部を覆うように充填し、これを加圧成形した後、燒結処理を行い、その後、前記キャビティ部内及び上下面に堆積している無機組成物を取り除くものである。これにより、キャビティ部のある基体にも対応できて、燒結時の収縮が平面方向で起こらないガラスセラミックス基板を得ることが出来る。
【0009】
【特許文献1】特許第2554415号公報
【特許文献2】特許第2803421号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献によれば平面内(X-Y面内)の焼結収縮、またキャビティ部を含む燒結収縮を抑制することが出来る。しかしながら、キャビティ部を有するガラスセラミックスのグリーンシート積層体の場合、従来の製造方法では、汎用性また生産性について特には考慮されていない。すなわち、図9に示すように従来、焼成温度では焼結しない無機組成物を加圧成形する方法として、金型を用いてガラスセラミックスのグリーンシート積層体の両面もしくは片面に、焼成温度では焼結しない無機組成物を加圧成形しており、この加圧成形のために、専用の金型を用意しなければならない。特に、ガラスセラミックスのグリーンシート積層体のサイズが複数ある場合には、グリーンシート積層体のサイズごとに金型を用意しなければならない。また、前記特許文献では金型内への無機組成物の敷き詰め方法は明記されていないが、無機組成物を金型内に均一に敷き詰めることは、容易ではない。均一に敷き詰める簡便な方法としては、散布した無機組成物をすり切る方法が考えられるが、敷き詰め方法が煩雑になってしまう問題がある。すなわち、図9において、まず、金型50a、50bを用いて、無機組成物30aをすり切って敷き詰めた後、無機組成物30a上に未焼成多層セラミック基板10を置き、さらに金型50a、50b、50dを用いて無機組成物30bをすり切り、さらに金型50c、50eを用いて蓋をする手順となる。このように無機組成物30bをすり切るために、金型50bの上端の位置を金型50dで調整し変えると言う煩雑さがあります。
【0011】
また、従来技術では、焼結性無機バインダ(ガラス)とセラミック粉末の混合物からなるガラスセラミックスグリーンシートと無機組成物よりなる拘束用グリーンシートとの結合力をいかに高めるかに注意が払われてきている。焼結後の拘束用グリーンシートは、有機バインダが揮発された多孔質な粉体様シートとなっているので比較的簡単に除去されるとあるが、実際には深く埋没したアルミナ質もあり完全には除去できない場合もある。即ち、ガラス粉末とセラミック粉末の混合物からなるガラスセラミックスグリーンシートでは、ガラス粉末の高温での軟化・流動によりガラス粉末同士が焼結し、緻密化する。従って、ガラス粉末同士の距離が離れていると、より顕著な軟化・流動性が必要になる。ガラスとセラミック粉末の混合物ではガラス粉末同士の間にセラミック粒子が介在するので、ガラス粉末同士の距離が比較的離れており、焼結のためには、ガラス粉末が溶融するような流動性が必要になる。よって、拘束用グリーンシートとの界面はガラス成分の液状化状態となり、アルミナがグリーンシート側に浸入し、埋没し易くなる。また、同様に積層体の上面に形成した電極パターン(以下、外部電極と言う)にも悪影響がある。例えば、ガラス成分が外部電極表面にまで付着することがある。これは後に電極上に施すNiめっき、Auめっき等のメタライズ表層導体膜形成不良の原因となる。
【0012】
そこで本発明の目的は、キャビティ部を有する多層セラミック基板であって、その表面及びキャビティ部の焼結収縮が抑制され、X-Y面内の収縮ばらつきや反り、歪が小さくなり、また、表面に形成した外部電極及び表層導体膜に及ぼす影響を少なくした多層セラミック基板の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
従来、キャビティ部を有する多層セラミック基板の製造方法ではキャビティ部と積層体表面とを区別せず、その全体に無機組成物を充填することを行っていた。これに対し、本発明はキャビティ部と積層体表面との拘束手段を区別して行うもので、これにより収縮率のばらつきや反り、歪を個別に抑制できること、また製造金型を簡略できて生産性とコストを向上できることを見出した。尚、本発明で言う多層セラミック基板は、例えば製品基板を多数個取りした100〜200mmの集合基板の多層セラミック基板を製造する過程で用いるが、この集合基板から分割した個片の多層セラミック基板に対しても範囲が及ぶものである。
【0014】
即ち、本発明の多層セラミック基板の製造方法は、低温焼結セラミック材料と有機バインダ、可塑剤、溶剤からなるスラリーを用いて基体用グリーンシートを作製する工程と、前記基体用グリーンシートに適宜内部電極、ビア電極、外部電極、キャビティ部を形成し、これらを積層してキャビティ部を有する未焼成多層セラミック基板を作製する工程と、前記低温焼結セラミック材料の焼結温度では焼結しない無機材料に有機バインダと溶剤を加えた無機組成物を作製する工程と、前記未焼成多層セラミック基板のキャビティ部に前記無機組成物からなる顆粒状拘束材を充填し、加圧する工程と、前記顆粒状拘束材を充填、加圧した後のキャビティ部及び外部電極を含む未焼成多層セラミック基板の上面および/または下面に密着するように前記無機組成物を50μm以上の厚さに塗布および/または重ね合わせて拘束層を形成する工程と、それを圧着する工程と、前記拘束層を備えた未焼成多層セラミック基板を800℃〜1000℃で焼結する工程と、前記拘束層及び顆粒状拘束材を多層セラミック基板から除去する工程とを有することを特徴とする。
【0015】
本発明は、先ず、キャビティ部を設けた未焼成多層セラミック基板のキャビティ部に低温焼結セラミック材料の焼結温度では焼結しない無機組成物からなる顆粒状拘束材を、充填し、加圧成形を加える。この段階がキャビティ部に対する拘束手段の付与である。その後、前記無機組成物、具体的には無機組成物を主成分とするペーストを、未焼成多層セラミック基板の表面に印刷塗布し、乾燥させ、圧着し、50μm以上、500μm以下の厚さの表面拘束層を形成する。あるいは、前記無機組成物を主成分とするスラリーから拘束用グリーンシートを作製し、この拘束用グリーンシートを重ね合わせて、圧着し、50μm以上の厚さの拘束層を形成する。また或いは前記ペーストを印刷塗布して形成した厚さ10μm以上の第1の拘束層と、その上に前記拘束用グリーンシートを重ねて形成した第2の拘束層を設け、圧着し、合計50μm以上の拘束層を形成する。この段階が積層体表面に対する拘束手段の付与である。このように拘束手段を部位に応じて2段階で形成することを特徴としている。尚、このとき無機組成物を加圧成形する際に使用する治具は、グリーンシート積層体の圧着時に使用する従来の治具をそのまま転用できる。このような構成にすることにより、キャビティ内にも顆粒状の無機組成物を充填することができる。また、充填物が顆粒であるため、キャビティ内の充填率が低く、充填後の加圧成形時に充填物の体積減少が起こることも考えられるが、その後、表面の拘束層を形成し圧着することで、この減少による無機組成物層の凹みを緩和することができる。このように形成することにより、キャビティ内も含めて、焼成時の収縮が厚さ方向のみに起こり、平面方向の収縮は起こらない。この後、焼結しない無機組成物を除去すれば、所望の多層セラミック基板が得られる。
【0016】
また、本発明の多層セラミック基板の製造方法では、前記未焼成多層セラミック基板のキャビティ部内に充填する顆粒状拘束材は、スプレードライヤーにより平均粒径5〜50μmの顆粒状としたものが望ましい。5μm未満では顆粒の作製が困難であり、50μmを超えるとキャビティ底部の縁部の充填性悪化、拘束層の均一性悪化の問題がある。さらに望ましくは5〜20μmである。
また、本発明の多層セラミック基板の製造方法では、無機組成物を構成する無機材料、例えばアルミナは平均粒径0.3〜4μmであり、ペーストにして印刷塗布した場合は、厚み50μm以上、500μm以下の拘束層を形成することが望ましい。0.3μm未満では、印刷に必要な粘度特性を得るために必要なバインダ量が多くなり、無機材料粉末の充填率が小さくなって平面と分割溝と共に拘束力を発揮できない。4μmを超えると、特に分割溝部分での拘束力が弱くなる。また、無機組成物のペーストによる拘束層の厚みが50μm未満であると、拘束力を発揮できず、500μmを超えると膜形成が困難になる。
また、前記無機組成物を用いたスラリーから拘束用グリーンシートを作製し、これを重ね合わせて拘束層を形成するグリーンシート積層法によっても良い。さらに、上記した印刷法による第1の拘束層を設け、その上に拘束用グリーンシートを重ねたグリーンシート積層法による第2の拘束層を設けることにより、合計50μm以上の拘束層を形成することでも良い。この場合、印刷法で形成した拘束層はペーストの流動性が高いため、未焼成セラミック体の凹凸、電極の微小な段差部等にもペーストが行き届き、高い拘束効果が得られる。そして、グリーンシート積層法によれば厚い拘束層を容易に短時間に形成することが出来る。グリーンシート積層法を用いる場合は、表面拘束層の厚みの上限を考慮する必要が無くなる。
【0017】
本発明の多層セラミック基板の製造方法では、前記低温焼結セラミック材料は、主成分であるAl,Si,Sr,TiをそれぞれAl、SiO、SrO、TiOに換算したとき、Al換算で10〜60質量%、SiO換算で25〜60質量%、SrO換算で7.5〜50質量%、TiO換算で20質量%以下(0を含む)であり、その主成分100質量%に対して、副成分として、Bi、Na、K、Coの群のうちの少なくとも1種をBi換算で0.1〜10質量%、NaO換算で0.1〜5質量%、KO換算で0.1〜5質量%、CoO換算で0.1〜5質量%含有し、更に、Cu、Mn、Agの群のうちの少なくとも1種をCuO換算で0.01〜5質量%、MnO換算で0.01〜5質量%、Agを0.01〜5質量%含有し、その他不可避不純物を含有している混合物を700℃〜900℃で仮焼し、これを粉砕して0.6〜2μmの微粉砕粒子からなる仮焼複合物を用いることが望ましい。尚、副成分にZrO換算で0.01〜2質量%のZrを含有していても良い。
【0018】
上記主成分及び副成分の混合物は、仮焼きされることにより、AlとTiOを除いてガラス化が進行する。AlとTiOの若干量はガラス中に入り得る。SiOを主成分とする均一で完璧なガラス化のためには1300℃以上の焼成温度で組成物を溶融させる必要があり、700℃〜850℃での仮焼物ではX線回折分析でガラス相として認識されるが、SiO相がまだ残っており、不均一なガラス相と見なされる。セラミックス粒子と部分的ガラス相の固化物となっている仮焼物を微粉砕化した粒子はセラミックス粒子にガラスが部分的あるいは全体的に被覆された粒子となっている。従来の一般に溶融されて製造されたガラス粒子とセラミックス粒子が混合された原料に比べると、本発明の仮焼複合物のガラス成分はガラス化反応が不十分で流動し難い状態にある。このような特性をもった仮焼複合物を用いるので本焼結においてもガラス成分の反応性は低く、未焼成多層セラミック基体と拘束層との界面もガラス成分が不活性な粘性の高い状態にある。つまり、従来のガラス単体粒子とセラミック粒子の混合物における焼結挙動と比較すると、ガラスの流動は抑えられてガラス成分の浸透はし難い状態にある。よって、ガラス成分が外部電極に付着するようなことがなく安定した状態にある。また、アルミナなどの無機組成物が基体用グリーンシート側に埋没することも防止される。
【0019】
また、ガラス粉末とセラミック粉末の混合物からなるガラスセラミックスグリーンシートでは、ガラス粉末の高温での軟化・流動によりガラス粉末同士が焼結し、緻密化する。ガラス粉末同士の距離が離れていると、より顕著な軟化・流動性が必要になるが、本発明の仮焼複合物はセラミックス粒子にガラスが部分的、全体的に被覆された粒子となっていて、ガラス部分同士の接触度合いが大きい。すなわち、ガラス粉末同士の距離が短く、比較的小さな軟化・流動性を付与する熱処理で緻密に焼結することができる。
尚、仮焼きの温度は、700℃未満であると、ガラス化の度合いが不足し、900℃を超えると仮焼物の微粉砕が困難になる。また、微粉砕粒子の平均粒径は、0.6μm未満であるとグリーンシート成形が困難になり、2μmを超えると薄いグリーンシート、特に20μm以下の厚さのシート作製が困難となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、金型を用いて積層体のキャビティ部を含む表面に無機組成物を加圧成形する方法と比較して、拘束層厚さがばらつきにくく収縮による寸法のばらつきも低減できる。また、このとき専用の金型を用意する必要がなく、作業性がよくて短時間で製造できるという効果がある。
また、低温焼結セラミックス材料の混合物を一旦仮焼きし粉砕した仮焼き複合物を用いた場合、ガラス成分が不活性な粘性の低い状態に保てるので、電極にガラス成分が付着することがなく外部電極の品質が安定する。また、アルミナなどの無機組成物が基板側に侵入することもなく、拘束層の除去を完全に行うことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の多層セラミック基板について製造方法を追いながら図面を参照して説明する。図1は未焼成多層セラミック基板のキャビティ部内に顆粒状拘束材を充填した状況を示す金型内部の断面図である。図2は無機組成物よりなるペーストを用いて拘束層を形成した時の金型内部の断面図である。図3は本発明の製造プロセスを示すフローチャートである。図4は無収縮プロセスを実施する前の大型の未焼成多層セラミック基板を示す断面図、図5は拘束層を設ける前の未焼成多層セラミック基板の上面図である。図6は搭載部品を載せ分割した小片の多層セラミック基板を示す断面図である。図7は混合粉、仮焼複合粉、焼結体それぞれのX線回折パターン図である。図8は仮焼複合物の(a)粉砕前と(b)粉砕後のSEM像である。
【0022】
[基体用グリーンシートの材料]
基体用グリーンシートは、低温焼結セラミック材料からなる。その組成は本発明特有のものでもあるので、ここで説明を加えておく。
本発明で用いる材料組成は、主成分がAl,Si,Sr,Tiの酸化物で構成され、それぞれAl換算で10〜60質量%、SiO換算で25〜60質量%、SrO換算で10〜50質量%、TiO換算で20質量%以下(0を含む)からなり、900℃以下の温度でも焼成できる材料である。これにより、銀や銅、金といった高い導電率を有する金属材料を電極用導体として用いて一体焼結を行うことができる。
【0023】
さらに主成分100質量%に対して、副成分として、Bi、Na、K、Coの群のうち、Bi換算で0.1〜10質量%、NaO換算で0.1〜5質量%、KO換算で0.1〜5質量%、CoO換算で0.1〜5質量%の少なくとも1種以上を含有させることが好ましい。これらの副成分は、仮焼工程においてAl、TiO以外の成分がガラス化する際、燒結助剤として働き、ガラスの軟化点を低下させる効果があり、より低温で収縮を開始する材料が得られる。
また、更に副成分としてCu、Mn、Agのうち、CuO換算で0.01〜5質量%、MnO換算で0.01〜5質量%、Agを0.01〜5質量%のうち少なくとも1種以上を含有させることが好ましい。これらの副成分は、主に焼成工程において結晶化を促進する効果があり、焼成工程において1000℃以下の焼成温度でQの高い誘電特性を得ることを可能とするものである。
【0024】
各成分範囲を特定した理由は以下のとおりである。この材料はマイクロ波用誘電体材料として特長があるのでその辺の特性についても併記する。
SiがSiO換算で25質量%より少ない場合、SrがSrO換算で10質量%より少ない場合、いずれも1000℃以下の低温焼成では、焼結密度が十分上昇しないために、磁器が多孔質となり、吸湿等により良好な特性が得られない。AlがAl換算で10質量%より少ない場合、良好な高強度が得られない。また、AlがAl換算で60質量%より多い場合、SiがSiO換算で60質量%より多い場合、SrがSrO換算で50質量%より多い場合、やはり1000℃以下の低温焼成では、焼結密度が十分上昇しないために、磁器が多孔質となり、吸湿等により良好な特性が得られない。
また、TiがTiO換算で20質量%より多いと、1000℃以下の低温焼成では、焼結密度が十分上昇しないために、磁器が多孔質となり、吸湿等により良好な特性が得られない。同時に、磁器の共振周波数の温度係数がTiの含有量増加と共に大きくなり良好な特性が得られない。Tiが含有してない場合の磁器の共振周波数の温度係数τfは−20〜−40ppm/℃に対し、Tiの配合量を多くしていくにつれて増加し、τfを0ppm/℃に調整することも容易である。
【0025】
Biは、低温焼結を達成するために添加される。つまり、このBiを添加することにより、仮焼工程においてAl、TiO以外の成分がガラス化しようとする際、このガラスの軟化点を低下させる効果があり、より低温で収縮を開始する材料が得られること、および、焼成工程において、1000℃以下の焼成温度でQの高い誘電特性を得ることを可能とするものである。しかしながら、Bi換算で10質量%より多いと、Q値が小さくなる。このため、10質量%以下が望ましい。更に好ましくは5質量%以下である。一方、0.1質量%より少ないと添加効果が少なく、より低温での結晶化が困難になるため、0.1質量%以上が好ましい。更に好ましくは0.2質量%以上である。
【0026】
Na、K及びCoは、NaO換算で0.1質量%未満の場合、KO換算で0.1質量%未満の場合、CoO換算で0.1質量%未満の場合、共にガラスの軟化点が高くなり低温での焼結が困難となる。このため、1000℃以下の焼成では緻密な材料が得られない。また、5質量%を超えると誘電損失が大きくなり過ぎ、実用性が無くなる。このため、NaO換算で0.1〜5質量%、KO換算で0.1〜5質量%、CoO換算で0.1〜5質量%が好ましい。
【0027】
CuとMnは、焼成工程において誘電体磁器組成物の結晶化を促進する効果があり、低温焼結を達成するために添加されるが、CuO換算で0.01質量%未満の場合、MnO換算で0.01質量%未満の場合、その添加効果は小さく、900℃以下での焼成ではQの高い材料を得ることが困難になる。また、5質量%を超えると低温焼結性が損なわれるため、CuO換算で0.01〜5質量%が好ましい。
Agは、ガラスの軟化点を低下させると同時に、結晶化を促進する効果があり、低温焼結を達成するために添加されるが、5質量%を超えると誘電損失が大きくなり過ぎ、実用性がない。このため、Agは5質量%以下の添加が好ましい。さらに好ましくは2質量%以下である。
【0028】
尚、さらに、ZrO換算で0.01〜2質量%のZrを含有していると機械的強度の向上が見られるので望ましい。また、この低温焼結セラミック材料には、従来の材料に含まれているPbとBを含んでいない。PbOは有害物質であり、製造工程中で生じる廃棄物等の処理に費用がかかり、また製造工程中でのPbOの取り扱いにも注意が必要である。また、Bは、製造工程中で水、アルコールに溶解し、乾燥時に偏析したり、焼成時に電極材料と反応したり、使用する有機バインダと反応しバインダの性能を劣化させる等の問題がある。このような有害な元素を含んでいないので環境面でも有用である。
【0029】
[基体用グリーンシートの作製]
以上の主成分及び副成分から出発原料を選択し、原材料となる酸化物粉あるいは炭酸塩化合物粉をそれぞれ秤量する。これらの粉末をアルミナ製のボールミルやビーズミルに投入し、更に酸化ジルコニウム製のメディアボールと純水を投入して20時間湿式混合を行う。混合スラリーを加熱乾燥し水分を蒸発させた後ライカイ機で解砕し、アルミナ製のるつぼに入れて、700〜900℃、例えば800℃で2時間仮焼する。仮焼固形物を前述のボールミルやビーズミルに投入し20〜40時間湿式粉砕を行い、乾燥させ平均粒径0.6〜2μmの範囲に、例えば1μmの微粉砕粒子とする。仮焼物を微粉砕化した粒子はセラミックス粒子にガラスが部分的、全体的に被覆された粒子となっている。得られた仮焼粉末に、エタノール、ブタノール、有機バインダとしてポリビニルブチラール樹脂、可塑剤としてブチルフタリルグリコール酸ブチル(略称:BPBG)をボールミルで混合してスラリーを作製した。尚、有機バインダとしては、例えばポリメタクリル樹脂等を、可塑剤としては、例えばジ−n−ブチルフタレートを、溶剤としては、例えばトルエン、イソプロピルアルコールのようなアルコール類を用いることもできる。
次いで、このスラリーをドクターブレード法によって有機フィルム(ポリエチレンテレフタレートPET)上でシート状に成形し、乾燥させて、0.15mm厚みのセラミックグリーンシートを得た。セラミックグリーンシートは有機フィルムごと180mm角に切断した。
【0030】
[未焼成多層セラミック基板の作製]
上記のセラミックグリーンシートにビアホール3を設け、Agを主体とする導体ペーストでビアホール3を充填し、さらにAgを主体とする導体ペーストを用いて内部電極パターン2を印刷形成し乾燥させて回路を構成する電極パターンを形成する。キャビティ部9についてグリーンシートの所定位置に穴を設け、これを積層して形成することも可能であるが、キャビティ部9となる貫通孔を設けた積層体と貫通孔の無い積層体を圧着することにより形成する方法が比較的簡便である。これらのグリーンシートそれぞれを1枚ずつ仮圧着しながら複数枚、例えば10枚重ねた。仮圧着条件は、温度が60℃、圧力は30kg/cm2で行い、さらにこの後、熱圧着して未焼成多層セラミック基板を得た。このときの熱圧着条件は、温度が85℃、圧力は110kg/cm2で行った。その後、製品の個片1A〜4A、1B〜4B、1C〜4C(全ての符号は図示していない。)の基板サイズである10×15mm角に分割溝5を入れた。セラミックグリーンシートは大型基板で作製し、最終工程で個片に分割して多層セラミック基板の製品を得る。基板の分割法としては、焼結後にダイヤモンドブレード、ダイヤモンドペン、レーザー等で分割溝を形成し破断する方法あるいは焼結前の生状態で分割溝を形成し、焼成後に個々の基板に分割する場合とがある。ここでは、前者の未焼成のグリーンシートに製品の個片基板サイズである10×15mm角に分割溝を入れた。分割溝入れはグリーン体にナイフ刃を押し当て、深さを0.11mmとした。なお、ナイフ刃の厚さは0.15mmを用いた。分割溝の断面形状は底辺約0.15mm、深さ約0.1mmのほぼ二等辺三角形となっていた。
【0031】
[拘束層用ペーストの作製]
拘束層は、上述した低温焼結セラミック材料の焼結温度では焼結しない無機材料からなるものである。この無機材料としては、例えばアルミナ粉末またはジルコニア粉末等を用いることができる。この無機材料粉末の平均粒径は、0.3〜4μmであることが望ましい。この理由は、粒径により拘束力を制御することがある程度可能であるからである。即ち、無機材料(アルミナ)の平均粒径が0.3μm未満であると、塗布印刷に必要な粘度特性を得るために必要なバインダ量が多くなり、無機材料粉末の充填率が小さくなって平面と分割溝と共に拘束力を発揮できず、4μmを超えると、特に分割溝部分での拘束力が弱くなる。
難焼結性の無機材料粉末として上記粒径としたアルミナを準備し、別途有機バインダとしてのエチルセルロースを有機溶剤としてのαテルピネオールに溶かしたビヒクルを準備する。アルミナとビヒクルを乳鉢と乳棒で予備混合した後、3本ロールで混錬することによりペーストを作製する。このときのビヒクルはエチルセルロースをαテルピネオールに5wt%溶解したものを用いた。ここで、印刷ペーストに使用する有機バインダは印刷に必要な粘度特性とペーストを構成する粉末同士の密着性及び基板への密着性を有する程度であればよいので4体積%以上、10体積%未満で良い。より多くの有機バインダは印刷膜単体の強さを増大し、基板との密着性を高めることができるが、無機材料粉末の充填率が減少する。無機材料粒子の充填率が高い方が収縮率低減とそのばらつき低減に有効である。
【0032】
[拘束層用グリーンシートの作製]
拘束層は、上述したペーストの他にグリーンシートの形態でも使用される。上記と同様に、難焼結性の無機材料粉末として平均粒径は、0.3〜4μmアルミナを準備し、その粉末とエタノール、ブタノール、有機バインダとしてポリビニルブチラール樹脂、可塑剤としてブチルフタリルグリコール酸ブチル(略称:BPBG)を酸化ジルコニウム製のメディアボールとともにポリエチレン製のボールミルで混合してスラリーを作製した。尚、有機バインダとしては、例えばポリメタクリル樹脂等を、可塑剤としては、例えばジ−n−ブチルフタレートを、溶剤としては、例えばトルエン、イソプロピルアルコールのようなアルコール類を用いることもできる。次いで、このスラリーをドクターブレード法によって有機フィルム(ポリエチレンテレフタレートPET)上でシート状に成形し、乾燥させて、セラミックグリーンシートを得た。グリーンシートはドクターブレードのギャップを変えることにより厚さ0.04mm、0.10mm、0.20mmの3種類作製した。セラミックグリーンシートは有機フィルムごと180mm角に切断した。
【0033】
[キャビティ部用顆粒状拘束材の作製と充填]
スプレードライヤーを用いることで、アルミナと有機バインダからなる顆粒を作製した。
顆粒作製は、上記粒径のアルミナ、有機溶剤、有機バインダ、可塑剤からなるスラリーを用意して、スプレードライヤーに投入し、熱風入口温度が80℃、排風出口温度が60℃、ディスク回転数が35000rpmの条件で行った。さらに、得られた顆粒をふるいにかけて、5〜50μm、例えば粒径15μmの顆粒を得た。次に、グリーンシート積層体のキャビティに対応した位置に開口部のあるマスク上に無機組成物を散布し、これをすり切ることで、キャビティ部に焼成温度では焼結しない顆粒状拘束材を、充填し、加圧成形した。加圧成形は、温度が85℃、圧力は110kg/cm2で行った。なお、キャビティの充填は、マスクを用いずに直接グリーンシート積層体上に散布した後に、これをすり切ることでも可能である。
【0034】
[積層体表面の拘束層の形成]
次に、上記したキャビティ部を含む未焼成多層セラミック基板の上面及び/又は下面に拘束層を形成する。拘束層の形成は、上記スラリーを用いて厚さ100μmのグリーンシートを作製し、この拘束層用グリーンシートを未焼成多層セラミック基板上に重ね合わせ、圧着し所定厚さに形成する方法、あるいは上記ペーストを用いて印刷法により未焼成多層セラミック基板上に直接塗布し、所望厚さになるまで印刷と乾燥を繰り返して行う方法、またこれらを組み合わせて、印刷法により10〜50μm程度の厚みの第1の拘束層を形成し、その上にグリーンシート積層法により第2の拘束層を積み重ねて所定厚みに形成する方法がある。
尚、印刷手段の場合は、1回の印刷で可能な印刷厚以上にペースト層を形成する際には、印刷したペーストが乾燥した後に、重ねて印刷する方法を採る。ここで、拘束層の厚みは片面で50μm以上であることが必要である。この理由は、厚みにより拘束力を制御できるもので、50μm未満の場合は、拘束力が不足し、ガラスセラミックス材料のXY収縮を抑制しがたい。50μm以上ある場合はガラスセラミックス材料のXY収縮を1%以下に抑制できる。しかし500μmを超える厚さの印刷層には、クラックが発生し、収縮抑制効果は看られなくなる。適当な範囲は50μm〜500μmである。
印刷層及び/又はグリーンシート層による拘束層を形成し80℃で2時間乾燥した後に、熱圧着した。熱圧着条件は、温度が85℃、圧力は110kg/cm2で行った。また、乾燥手段については、高周波あるいはマイクロ波による加熱で乾燥させても良い。
【0035】
[拘束層を備えた未焼成多層セラミック基板の本焼結]
焼成はバッチ炉において大気中で行い、500℃で4時間保持して脱バインダを行った後、800〜1000℃、例えば900℃で2時間保持し、焼結を行った。昇温速度は3℃/分で、冷却は炉内自然冷却とした。800℃未満であると緻密化が困難になる問題があり、1000℃を超えるとAg系電極材の形成が困難となり、また好ましい誘電特性を得ることが出来ない。
【0036】
[拘束層の除去]
焼結後、表面に付着しているアルミナ粒子を除去する。これは焼成後の基板を超音波洗浄槽の水の中に入れて超音波を駆動することにより行う。このとき、ほとんどのアルミナ粒子が除去されるが、外部電極上例えばAgパッド上のアルミナ粒子は超音波洗浄では取り除かれがたく、サンドブラストで取り除く。サンド材料はアルミナ、ガラス、ジルコン粒子等が使用できる。それによりAgパッドの上にNiめっき、Auめっき等のメタライズが高品質に成膜できる。メタライズは公知の無電解めっきが適用できる。
【0037】
[多層セラミック基板の分割]
基板上面のメタライズ電極の上にスクリーン印刷ではんだパターンを形成する。そして、個々の半導体素子、チッブ素子等の部品を搭載し、リフローにより接続する。ワイヤボンディング用半導体素子はその後ワイヤボンディング接続を行う。その後、大型基板から分割溝に沿って破断することにより小片の多層セラミック基板が得られる。
【実施例1】
【0038】
上述した低温焼結セラミック材料の主成分及び副成分について表1に示す出発原料を作製した。この際、純度99.9%、平均粒径0.5μmのAl粉末、純度99.9%以上、平均粒径0.5μm以下のSiO粉末、純度99.9%、平均粒径0.5μmのSrCO粉末、純度99.9%、平均粒径0.5μmのTiO粉末、純度99.9%、平均粒径0.5〜5μmのBi粉末、NaCO粉末、KCO粉末、CuO粉末、Ag粉末、MnO粉末、Co粉末を用いてそれぞれ秤量した。
次に、上記した多層セラミック基板の製造方法に沿って試験基板の製造を行った。尚、表1の試料Noに*を付したのは比較例であることを示す。ここで、仮焼きの温度は800℃×2時間、微粉砕粒子の平均粒径は1μmとし、未焼成多層セラミック基板のシート積層数を10とし、拘束層用のアルミナ粒子の平均粒径は0、4〜0、5μm、拘束層はグリーンシート積層法を用いて厚み約300μm、本焼結の温度は表1に各試料毎に示した。その他の条件は上記した例に沿って行った。また、分割溝は上記と同様に形成した。焼結後、表面の拘束層のアルミナ層を超音波洗浄によって除去し、最上層に形成されているパターンより、収縮率を評価した。緻密化度合いは、Z方向収縮率により、高周波特性は電気特性により、外部電極の良否はめっき付け性により評価した。その結果を表1に併記する。
【0039】
【表1】


【0040】
表1より、本発明による多層セラミック基板は、X-Y方向収縮率が1%以下、収縮率ばらつき3σが0.07%以下に収めることが出来ている。また、緻密性、高周波特性および外部電極の状態についても共に良好な結果を得ることが出来ている。
【実施例2】
【0041】
上述した低温焼結セラミック材料の代表組成として主成分がAl,Si,Sr、Tiの酸化物で構成され、それぞれAl換算で48質量%、SiO換算で38質量%、SrO換算で10質量%、TiO換算で4質量%であり、さらに主成分100質量%に対して、副成分として、Bi、Na、K、がBi換算で2.5質量%、NaO換算で2質量%、KO換算で0.5質量%、更に、CuがCuO換算で0.3質量%、MnがMnO換算で0.5質量%となる組成(表1の試料No29相当)に出発原料を秤量した。この際、純度99.9%、平均粒径0.5μmのAl粉末、純度99.9%以上、平均粒径0.5μm以下のSiO粉末、純度99.9%、平均粒径0.5μmのSrCO粉末、純度99.9%、平均粒径0.5〜5μmのBi粉末、NaCO粉末、KCO粉末、CuO粉末、MnO粉末を用いた。
次に、上記した多層セラミック基板の製造方法に沿って製造を行った。ここで、仮焼きの条件を800℃×2時間とし、仮焼固形物の微粉砕粒子の平均粒径は1.0μmとし、基体用セラミックグリーンシートを作製した。
また、拘束用無機組成物としてのアルミナ粒子は平均粒径を0.2〜5μm、キャビティ部側の拘束層の片側厚みを30〜600μmとした。また、裏面の拘束層は表面の厚さと同じとした。そして、顆粒状拘束材の平均粒径を5〜100μmと変え、分割溝形成有無についても評価した。本焼結の温度は900℃×2時間と一定とした。他の製造条件は上記した条件を用いた。焼結後、表面の拘束層のアルミナ層を超音波洗浄によって除去し、最上層に形成されている電極パターンの特定の位置間距離を3次元座標測定器により測定したX-Y座標から算出し、拘束層印刷前に測定した同じ位置間の距離から収縮率とそのばらつきを評価した。1基板試料につき16方向の収縮率を評価した。またZ座標の高低差を反りとし、小個片当たりの反り量を評価した。評価結果を表2に併記する。尚、試料番号に*印のないものが本発明の実施例であり、試料番号に*の付記したものは本発明の範囲外の比較例である。
【0042】
【表2】


【0043】
表2の結果より、平均粒径0.3〜4μmのアルミナからなる拘束層用ペーストを片側膜厚50μm以上、500μm以下印刷形成することで、低温焼成セラミックグリーンシート積層体に分割溝が形成された場合にも、X-Y方向収縮率が1%以下に抑制され、収縮率ばらつき3σが0.07%以下と小さい高精度な基板が製造される。また、平均粒径が5〜50μmの顆粒状拘束材をキャビティに充填することで、キャビティ底面にクラックがなく、キャビティ底面の平坦性が良好な基板が製造されることが確認された。また、印刷による第1の拘束層とグリーンシート積層法による第2の拘束層を組み合わせた場合にも上記した良好な結果が得られた。尚、表2には記載していないが、グリーンシート積層法のみによる拘束層を形成した場合でも、ほぼ良好な結果が得られることが分かった。
また、表2の試料番号に*印のないものについて、基板の表裏面をジルコンのサンドを用い、0.4Mpaの投射圧でブラスト処理を行い、その後、表面のAg導体上に平均膜厚5μmのNiめっき膜と平均膜厚0.4μmのAuめっき膜を無電解法で形成した。その結果めっき膜の成膜不良は認められず、良好であった。
上記セラミック粒子としてアルミナの代わりにマグネシア、ジルコニア、チタニア、ムライトの内少なくとも1種以上の材料を用いても同様の結果が得られた。
【0044】
次に、上記低温焼成セラミック材料の結晶相をX線回折分析法で調べた。ターゲットはCuとし、そのKα線を回折X線源に用いた。混合粉、仮焼複合粉、焼結体それぞれの粉末X線回折パターン図を図7に示す。混合粉では原料の結晶相が見られ、仮焼複合粉ではAlとTiOとSiOの結晶相及び20度から30度にかけてのハローパターンからガラス相の存在が認められる。また、焼結体では新たにSrAlSi(ストロンチウム長石)が析出していることが確認された。
【0045】
さらに、上記仮焼複合物とその粉砕物の走査型電子顕微鏡による観察写真を図8に示す。図8(a)は仮焼複合物で白く粒子状に見えるのがAlである。黒い箇所は気孔である。また連続相となっている部分がガラス相である。これは液相が固化した様相である。仮焼複合物ではこのようにAl粒子を部分的にあるいは全体的にガラス相が被覆している様子が認められる。図8(b)は仮焼物を粉砕した粒子で、同様にAl粒子を部分的にあるいは全体的にガラス相が被覆している様子が見られる。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明はキャビティ部を備えた多層セラミック基板表面の焼結収縮率がゼロに近く、そのパターンばらつきが小さいので、その上に形成する導体パターンあるいははんだパターン、導電性接着剤の形成パターンと高精度に整合する多層セラミック基板の製造方法であり、高密度なセラミック基板が必要な携帯電話、自動車電子制御回路基板、半導体パッケージ、光―電気回路基板に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の未焼成多層セラミック基板のキャビティ部内に顆粒状拘束材を充填した状況を示す断面図である。
【図2】図1の未焼成多層セラミック基板に拘束層を形成した状況を示す断面図である。
【図3】本発明の多層セラミック基板の製造プロセスを示すフロー図である。
【図4】本発明の大型基板による未焼成多層セラミック基板(拘束層形成前)を示す断面構造図である。
【図5】図4の上面斜視図である。
【図6】多層セラミック基板に半導体素子等のチップ部品を搭載したモジュール基板を示す断面構造図である。
【図7】本発明の低温焼成セラミック材料の混合粉、仮焼粉、焼結体それぞれの粉末X線回折パターン図である。
【図8】本発明の低温焼成セラミック材料の仮焼物及びその粉砕された粉末の走査型電子顕微鏡による観察写真である。
【図9】従来例のキャビティ部を有する未焼成多層セラミック基板を金型内に配置した状況を示す断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1(1A〜4A,1B〜4B,1C〜4C):多層セラミック基板
2:内部電極
3:ビア電極
4:外部電極
5:分割溝
7:搭載部品(コンデンサ7a、ダイオード7b、半導体素子7c)
8:基体用グリーンシート
9:キャビティ部
10:未焼成多層セラミック基板
30:顆粒状拘束材
40:拘束層
50:金型

【出願人】 【識別番号】000005083
【氏名又は名称】日立金属株式会社
【住所又は居所】東京都港区芝浦一丁目2番1号
【出願日】 平成15年10月31日(2003.10.31)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−136303(P2005−136303A)
【公開日】 平成17年5月26日(2005.5.26)
【出願番号】 特願2003−372348(P2003−372348)