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【発明の名称】 多層配線板およびその製造方法
【発明者】 【氏名】伊藤 彰二
【住所又は居所】千葉県佐倉市六崎1440 株式会社フジクラ佐倉事業所内

【氏名】岸原 亮一
【住所又は居所】千葉県佐倉市六崎1440 株式会社フジクラ佐倉事業所内

【氏名】橋場 浩樹
【住所又は居所】千葉県佐倉市六崎1440 株式会社フジクラ佐倉事業所内

【氏名】中尾 知
【住所又は居所】千葉県佐倉市六崎1440 株式会社フジクラ佐倉事業所内

【要約】 【課題】穴埋め用途には不適な導電性物質を層間導通に使用可能で、層間導通に用いる導電性物質と絶縁層との材料特性の違いに起因する現象を緩和し、絶縁層の境界部分におけるイオンマイグレーションの発生を抑制する。

【解決手段】多層配線板(8)は、絶縁性基材(21)の一側面に配線パターンをなす導電層(3)が設けられ、他側面に層間接着層(22)が設けられた多層配線板用基材(1)に、層間接着層(22)および絶縁性基材(21)を貫通する貫通孔(4)が形成され、この貫通孔(4)内に導電層(3)の層間導通を得るための導電性物質(6)を配置して積層される。導電性物質(6)として加熱により体積収縮・硬化する導電性組成物を用いて、多層積層時に加熱加圧されることで、導電性物質(6)と貫通孔(4)の側面との間に層間接着層(22)をなす材料による保護絶縁層(5)を形成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンをなす導電層を片面に備えた絶縁層に層間接着層とともに貫通孔が形成され、この貫通孔内に前記導電層の層間導通を得るための導電性物質が配置される多層配線板において、
加熱により体積収縮・硬化する導電性組成物を前記導電性物質として用いることで、前記導電性物質と前記貫通孔の側面との間に前記層間接着層をなす材料による保護絶縁層を形成したことを特徴とする多層配線板。
【請求項2】
絶縁性基材の一側面に配線パターンをなす導電層が設けられ、かつ、他側面に層間接着層が設けられた多層配線板用基材に、前記層間接着層および前記絶縁性基材を貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔内に前記導電層の層間導通を得るための導電性物質を配置して積層される多層配線板において、
前記導電性物質として加熱により体積収縮・硬化する導電性組成物を用いて、多層積層時に加熱加圧されることで、前記導電性物質と前記貫通孔の側面との間に前記層間接着層をなす材料による保護絶縁層を形成したことを特徴とする多層配線板。
【請求項3】
前記保護絶縁層は前記絶縁層または前記絶縁性基材と前記層間接着層との境界を覆うように形成されることを特徴とする請求項1または2記載の多層配線板。
【請求項4】
前記保護絶縁層は前記絶縁層または前記絶縁性基材に比べてヤング率の小さい材料で構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多層配線板。
【請求項5】
前記保護絶縁層は前記絶縁層または前記絶縁性基材に比べて誘電率の低い材料で構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多層配線板。
【請求項6】
前記絶縁層または前記絶縁性基材はポリイミド等の可撓性樹脂で構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多層配線板。
【請求項7】
前記導電性物質は、ナノサイズ酸化銀、有機銀化合物、有機溶剤からなる導電性組成物であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の多層配線板。
【請求項8】
配線パターンをなす導電層を片面に備えた絶縁層に層間接着層とともに貫通孔が形成され、この貫通孔内に前記導電層の層間導通を得るための導電性物質として加熱により体積収縮・硬化する導電性組成物が配置されることで、前記導電性物質と前記貫通孔の側面との間に前記層間接着層をなす材料による保護絶縁層が形成される多層配線板の製造方法であって、
前記絶縁層に前記層間接着層とともに前記貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔内に前記導電性物質を充填する工程と、
多層配線板を加熱加圧することで、充填した前記導電性物質を体積収縮・硬化させるとともに、前記層間接着層をなす材料を前記導電性物質と前記貫通孔の側面との間に浸入させて前記保護絶縁層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする多層配線板の製造方法。
【請求項9】
絶縁性基材の一側面に配線パターンをなす導電層が設けられ、かつ、他側面に層間接着層が設けられた多層配線板用基材に、前記層間接着層および前記絶縁性基材を貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔内に前記導電層の層間導通を得るための導電性物質として加熱により体積収縮・硬化する導電性組成物が配置され、多層積層時に加熱加圧されることで、前記導電性物質と前記貫通孔の側面との間に前記層間接着層をなす材料による保護絶縁層が形成される多層配線板の製造方法であって、
前記層間接着層および前記絶縁性基材に前記貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔内に前記導電性物質を充填する工程と、
多層積層時に加熱加圧することで、充填した前記導電性物質を体積収縮・硬化させるとともに、前記層間接着層をなす材料を前記導電性物質と前記貫通孔の側面との間に浸入させて前記保護絶縁層を形成する工程と、
を含むことを特徴とする多層配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、多層配線板およびその製造方法に関し、とくに、フレキシブル多層配線板およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器は、高周波信号、デジタル化等に加え、小型・軽量化が進み、それにともない、搭載されるプリント配線板においても、小型、高密度実装化が要求され、これらの要求に応えるプリント配線板として、多層配線板が数多く発表されている。
【0003】
一般に、多層配線板における層間接続の手段は、スルーホールとバイアホールの2つに大別される。
【0004】
スルーホールは、多層積層後の基板に一括で孔あけを施し、この孔(基板貫通孔)にメッキによって、または導電性組成物を充填することによって層間導通部を形成するものである。積層後に一括で孔あけを施すため、工数は少なくて済むが、層間導通部が基板の深さ方向に一直線状になければならないため、配線の自由度が小さく、高密度配線に適しているとはいえない。
【0005】
一方、バイアホールは、1層1層ごとに層間導通部分を作り込んでいくものであり、とくに、IVH(Interstitial Via Hole)タイプの多層配線板は、配線の高密度化、および配線の自由度の大きさの点で優位性があることから、携帯電話等の小型の電気製品に広く利用されている。その代表的な工法として、松下電子部品社のALIVH工法(非特許文献1参照)や、DTサーキットテクノロジー社のBit工法(非特許文献2参照)などが挙げられる。
【0006】
これらの工法に共通するのはビルドアップ法であるという点である。ビルドアップ法の場合、コア層からビルドアップ層を1層ずつ逐次積層し、作り上げていく工法であり、層間の位置合わせが容易であるため、IVH多層配線板のほとんどに利用されている。こうした理由から、IVH多層配線板をビルドアップ基板と呼ぶことも多い。
【0007】
しかし、ビルドアップ工法の場合、1層1層逐次積層していくため、回路形成工程は層数分だけ必要となる。このことは、試作納期の遅延、製造工程数の増加によるコストアップという問題を引き起こしている。
【0008】
そこで、最近、回路形成済みの基材複数枚を重ね合わせ、一括で積層貼り合わせを行う一括積層法によるIVH多層配線板の開発が盛んになってきている。その例として、デンソー社による商標名PALAP(非特許文献3参照)などが挙げられる。この工法の場合、製造工程を大きく簡略化できるばかりでなく、不良層はあらかじめ交換除去して、良層だけを積層することができるため、歩留まり向上に大きく貢献する。
【非特許文献1】「電子材料」1995年10月号、p52−58、中谷誠一等「全層IVH構造を有する樹脂多層基板「ALIVH」」
【非特許文献2】「エレクトロニクス実装学会誌」Vol.3、No.7(2000)、p563−568、福岡義孝「厚膜・薄膜混成高密度ビルドアップ配線板技術」
【非特許文献3】「第16回エレクトロニクス実装学術講演大会講演論文集」p67−68、上村力也等「PALAP基板を用いたプリント基板リサイクルシステムの検討」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような多層配線板は各種材料の複合体であるため、各材料の熱的特性、機械的特性をある程度合わせることによって信頼性を確保する必要がある。とくに、絶縁層の材料と層間導通部分の材料との特性を合わせることが重要となるが、実際にはこれらを完全に一致させることは難しい。
【0010】
例えば、バイアホールまたはスルーホールを構成する絶縁層の材料と、バイアホールまたはスルーホール内の層間導通材料との線膨張係数の違いによって、熱衝撃試験時に層間導通部分にクラックが入ったり、または、電気抵抗が大きく上昇したりする問題が発生する。
【0011】
また、多層配線板の場合、絶縁層を多数重ね合わせた構造をとることになる。そのため、絶縁層の境界部分は、境界以外の絶縁層内部に比べて機械的強度が弱く、そこからイオンマイグレーションが進行しやすいという問題がある。
【0012】
また、導電性組成物をバイアホールまたはスルーホールに充填することで層間導通を得る場合、導電性組成物の中には、硬化する際体積収縮するため穴埋め用途には使用できないものが数多くあり、このような導電性組成物は層間導通に使用することができないという問題がある。
【0013】
この発明の課題は、上記従来のもののもつ問題点を排除して、穴埋め用途には不適な導電性物質を層間導通に使用可能で、層間導通に用いる導電性物質と絶縁層との材料特性の違いに起因する現象を緩和するとともに、絶縁層の境界部分におけるイオンマイグレーションの発生を抑制することのできる多層配線板およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は上記課題を解決するものであって、請求項1に係る発明は、配線パターンをなす導電層を片面に備えた絶縁層に層間接着層とともに貫通孔が形成され、この貫通孔内に前記導電層の層間導通を得るための導電性物質が配置される多層配線板において、加熱により体積収縮・硬化する導電性組成物を前記導電性物質として用いることで、前記導電性物質と前記貫通孔の側面との間に前記層間接着層をなす材料による保護絶縁層を形成した多層配線板である。
【0015】
この多層配線板によれば、加熱により体積収縮・硬化する導電性組成物を前記導電性物質として使用することができ、また、導電性物質と絶縁層との間に層間接着層をなす材料による保護絶縁層が形成されるため、導電性物質と絶縁層との材料特性の違いに起因する現象を保護絶縁層によって緩和することができる。
【0016】
請求項2に係る発明は、絶縁性基材の一側面に配線パターンをなす導電層が設けられ、かつ、他側面に層間接着層が設けられた多層配線板用基材に、前記層間接着層および前記絶縁性基材を貫通する貫通孔を形成し、この貫通孔内に前記導電層の層間導通を得るための導電性物質を配置して積層される多層配線板において、前記導電性物質として加熱により体積収縮・硬化する導電性組成物を用いて、多層積層時に加熱加圧されることで、前記導電性物質と前記貫通孔の側面との間に前記層間接着層をなす材料による保護絶縁層を形成した多層配線板である。
【0017】
この多層配線板によれば、加熱により体積収縮・硬化する導電性組成物を前記導電性物質として使用することができ、また、導電性物質と絶縁性基材および層間接着層との間に、層間接着層をなす材料による保護絶縁層が形成されるため、導電性物質と絶縁性基材との材料特性の違いに起因する現象を保護絶縁層によって緩和することができる。
【0018】
請求項3に係る発明は、請求項1または2記載の発明において、前記保護絶縁層は前記絶縁層または前記絶縁性基材と前記層間接着層との境界を覆うように形成される多層配線板である。
【0019】
この多層配線板によれば、絶縁層または絶縁性基材と層間接着層との境界が、保護絶縁層に覆われることで導電性物質と直接接触せず、保護絶縁層により導電性物質からバリヤされているため、イオンマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0020】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記保護絶縁層は前記絶縁層または前記絶縁性基材に比べてヤング率の小さい材料で構成される多層配線板である。
【0021】
この多層配線板によれば、絶縁層または絶縁性基材に比べてヤング率の小さい材料で構成される保護絶縁層が、導電性物質と絶縁層または絶縁性基材との線膨張係数の違いにより発生する応力を緩和し、熱衝撃試験における耐性を向上させることができる。
【0022】
また、この多層配線板によれば、絶縁層または絶縁性基材に比べてヤング率の小さい材料で構成される保護絶縁層が、絶縁層または絶縁性基材と層間接着層との境界を覆うように形成されることで、イオンマイグレーションの発生の抑制と、導電性物質と絶縁層または絶縁性基材との線膨張係数の違いにより発生する応力の緩和とを両立することができる。
【0023】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記保護絶縁層は前記絶縁層または前記絶縁性基材に比べて誘電率の低い材料で構成される多層配線板である。
【0024】
この多層配線板によれば、絶縁層または絶縁性基材に比べて誘電率の低い材料で構成される保護絶縁層が、伝送速度の遅延を回避させることができる。
【0025】
また、この多層配線板によれば、保護絶縁層が、絶縁層または絶縁性基材に比べてヤング率が小さく、かつ誘電率の低い材料で構成されることで、導電性物質と絶縁層または絶縁性基材との線膨張係数の違いにより発生する応力の緩和と、伝送速度の遅延の回避とを両立することができる。
【0026】
また、この多層配線板によれば、絶縁層または絶縁性基材に比べて誘電率の低い材料で構成される保護絶縁層が、絶縁層または絶縁性基材と層間接着層との境界を覆うように形成されることで、イオンマイグレーションの発生の抑制と、伝送速度の遅延の回避とを両立することができる。
【0027】
さらに、この多層配線板によれば、絶縁層または絶縁性基材に比べてヤング率が小さく、かつ誘電率の低い材料で構成される保護絶縁層が、絶縁層または絶縁性基材と層間接着層との境界を覆うように形成されることで、イオンマイグレーションの発生の抑制と、導電性物質と絶縁層または絶縁性基材との線膨張係数の違いにより発生する応力の緩和と、伝送速度の遅延の回避とを共に実現することができる。
【0028】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記絶縁層または前記絶縁性基材はポリイミド等の可撓性樹脂で構成される多層配線板である。
【0029】
この多層配線板によれば、ポリイミド等の可撓性樹脂で構成される絶縁層または絶縁性基材は、屈曲が容易に行える。とくに、保護絶縁層を絶縁層または絶縁性基材に比べてヤング率の小さい材料で構成することで、屈曲した場合の絶縁層または絶縁性基材からの導電性物質の剥離、および導電性物質の破壊を抑制することができる。
【0030】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の発明において、前記導電性物質は、ナノサイズ酸化銀、有機銀化合物、有機溶剤からなる導電性組成物である多層配線板である。
【0031】
この多層配線板によれば、所要の温度に加熱し、かつ、所要の圧力に加圧することで、酸化銀ナノ粒子の還元と有機銀化合物の分解により、銀粒子間どうしが溶着した構造を得て導電性組成物の体積が半分程度に収縮し、それによって生成される実質的な大きさの間隙に、層間接着層をなす材料による保護絶縁層を形成することができる。
【0032】
請求項8に係る発明は、配線パターンをなす導電層を片面に備えた絶縁層に層間接着層とともに貫通孔が形成され、この貫通孔内に前記導電層の層間導通を得るための導電性物質として加熱により体積収縮・硬化する導電性組成物が配置されることで、前記導電性物質と前記貫通孔の側面との間に前記層間接着層をなす材料による保護絶縁層が形成される多層配線板の製造方法であって、前記絶縁層に前記層間接着層とともに前記貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔内に前記導電性物質を充填する工程と、多層配線板を加熱加圧することで、充填した前記導電性物質を体積収縮・硬化させるとともに、前記層間接着層をなす材料を前記導電性物質と前記貫通孔の側面との間に浸入させて前記保護絶縁層を形成する工程と、を含む多層配線板の製造方法である。
【0033】
この多層配線板の製造方法によれば、導電性物質として、1μm以上の金属フィラーを用いた導電性組成物や、ナノ金属粒子を用いて加熱により金属結合が得られるような導電性ペーストなど、あらゆる種類の導電性物質を使用することが可能となる。
【0034】
また、充填した導電性物質を体積収縮・硬化させる工程と、層間接着層をなす材料を導電性物質と貫通孔の側面との間に浸入させて保護絶縁層を形成する工程とを、1工程で行うことができる。
【0035】
請求項9に係る発明は、絶縁性基材の一側面に配線パターンをなす導電層が設けられ、かつ、他側面に層間接着層が設けられた多層配線板用基材に、前記層間接着層および前記絶縁性基材を貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔内に前記導電層の層間導通を得るための導電性物質として加熱により体積収縮・硬化する導電性組成物が配置され、多層積層時に加熱加圧されることで、前記導電性物質と前記貫通孔の側面との間に前記層間接着層をなす材料による保護絶縁層が形成される多層配線板の製造方法であって、前記層間接着層および前記絶縁性基材に前記貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔内に前記導電性物質を充填する工程と、多層積層時に加熱加圧することで、充填した前記導電性物質を体積収縮・硬化させるとともに、前記層間接着層をなす材料を前記導電性物質と前記貫通孔の側面との間に浸入させて前記保護絶縁層を形成する工程と、を含む多層配線板の製造方法である。
【0036】
この多層配線板の製造方法によれば、導電性物質として、1μm以上の金属フィラーを用いた導電性組成物や、ナノ金属粒子を用いて加熱により金属結合が得られるような導電性ペーストなど、あらゆる種類の導電性物質を使用することが可能となる。
【0037】
また、充填した導電性物質を体積収縮・硬化させる工程と、層間接着層をなす材料を導電性物質と貫通孔の側面との間に浸入させて保護絶縁層を形成する工程とを、1工程で行うことができる。しかも、この工程を多層積層時の加熱加圧工程により実現することで、多層積層時の加熱加圧工程とは別に行う導電性物質の体積収縮・硬化工程および保護絶縁層の浸入・形成工程を省略することができる。
【発明の効果】
【0038】
この発明は以上のように、配線パターンをなす導電層を片面に備えた絶縁層に層間接着層とともに貫通孔が形成され、この貫通孔内に前記導電層の層間導通を得るための導電性物質が配置される多層配線板において、加熱により体積収縮・硬化する導電性組成物を前記導電性物質として用いることで、前記導電性物質と前記貫通孔の側面との間に前記層間接着層をなす材料による保護絶縁層を形成したので、穴埋め用途には不適な導電性物質を層間導通に使用可能で、層間導通に用いる導電性物質と絶縁層との材料特性の違いに起因する現象を緩和することができ、また、絶縁層の境界部分におけるイオンマイグレーションの発生を抑制することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0039】
この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1、図2は、この発明による多層配線板の一実施形態を示す説明図であり、この多層配線板1をその製造方法とともに説明する。
【0040】
まず、図1(a)に示すように、ポリイミド基材(絶縁層)21の片面に銅箔31が接着された片面銅箔付きポリイミド基材11を、出発材料として用意する。
【0041】
つぎに、この片面銅箔付きポリイミド基材11に対し、サブトラクティブ法を用いて銅箔31をエッチングすることで、図1(b)に示すように、配線パターンをなす導電層3を片面に備えた回路形成済み配線板12を作製する。
【0042】
この方法に代えて、例えば、両面に銅箔の付かないポリイミド基材を出発材料とし、このポリイミド基材に対してアディティブ法、セミアディティブ法を用いて回路を形成することも可能である。
【0043】
つぎに、図1(c)に示すように、回路形成済み配線板12におけるポリイミド基材21の配線パターンをなす導電層3とは反対側の面に層間接着層22を形成することで、多層配線板用基材1を作製する。
【0044】
この層間接着層22としては、熱可塑性ポリイミドに熱硬化性機能を付与したものを使用することができる。これ以外にも、例えば、エポキシ等に代表される熱硬化性の樹脂や、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂を層間接着層として使用することも可能である。
【0045】
但し、層間接着層22は、ポリイミド基材21に比べてヤング率の小さい材料で構成されることが好ましく、また、ポリイミド基材21に比べて誘電率の低い材料で構成されることが好ましい。
【0046】
つぎに、図1(d)に示すように、多層配線板用基材1の導電層3に対応する位置に、層間接着層22およびポリイミド基材21を貫通する貫通孔4を形成する。この貫通孔4はバイアホールであり、UV−YAGレーザによる穴開け加工ののち、プラズマ照射によるソフトエッチを施すことでデスミアを行って形成することができる。
【0047】
UV−YAGレーザに代えて、例えば、炭酸ガスレーザやエキシマレーザ等によって、より高速で加工することも可能である。また、デスミアの方法として、過マンガン酸塩を使用した湿式デスミアもごく一般的であり、使用可能である。
【0048】
図1(d)から、バイアホール4は、ポリイミド基材21および層間接着層22によって形成されていて、バイアホール4内には異種材料(ポリイミド基材21と層間接着層22)の境界23が存在していることがわかる。
【0049】
つぎに、図1(e)に示すように、多層配線板用基材1のバイアホール4の穴内に導電性物質6を充填する。導電性物質6としては、加熱により体積収縮・硬化する導電性組成物を用いることができる。
【0050】
例えば、導電性物質6として、ナノサイズ酸化銀、有機銀化合物、有機溶剤からなる導電性組成物を使用することが可能である。このような導電性組成物の場合、所要の温度、所要の圧力に加熱加圧することで、酸化銀ナノ粒子の還元と有機銀化合物の分解により、銀粒子間どうしが溶着した構造を得て導電性組成物の体積が半分程度に収縮する。
【0051】
その他、導電性物質6として、1μm以上の金属フィラーを用いた導電性組成物や、ナノ金属粒子を用いて加熱により金属結合が得られるような導電性ペーストなど、あらゆる種類の導電性物質を使用することが可能である。
【0052】
つぎに、図2(f)に示すように、多層配線板用基材1を複数枚(図では2枚)と最下層に回路形成済み配線板12を位置合わせする。すなわち、2枚の多層配線板用基材1a,1bの導電性物質6a,6bが、互いの導電層3a,3bどうしの層間導通をとるとともに、回路形成済み配線板12の導電層3との層間導通もとるように位置合わせする。
【0053】
この位置合わせには、ピンアラインメント方式を採用することも可能であるが、その場合はピン用の穴を開けるスペースが必要になるため、好ましいとはいえない。そのため、画像認識による位置合わせを採用することが好ましい。
【0054】
つぎに、図2(g)に示すように、これらの多層配線板用基材1a,1bおよび回路形成済み配線板12を重ね合わせ、真空熱プレス機によって、真空度1kPa以下、温度200℃、圧力40kgf/cmの条件で加熱・加圧して接合することで多層配線板8を作製する。
【0055】
ナノサイズ酸化銀、有機銀化合物、有機溶剤からなる導電性組成物で構成される導電性物質6は、このときの加熱・加圧により、酸化銀ナノ粒子の還元と有機銀化合物の分解が生じ、銀粒子間どうしが溶着した構造を得て導電性組成物の体積が半分以下にまで収縮して硬化する。
【0056】
これと同時に、導電性物質6の体積収縮・硬化によって導電性物質6と貫通孔4の側面との間に生成される実質的な大きさの間隙に、このときの加熱・加圧により、層間接着層22をなす材料が浸入して保護絶縁層5が形成される。
【0057】
このようにしてできあがった多層配線板8は、図2(g)に示すように、導電性物質6とポリイミド基材21との間に保護絶縁層5が形成されるため、導電性物質6とポリイミド基材21との材料特性の違いに起因する現象を保護絶縁層5によって緩和することができる。
【0058】
また、この多層配線板8は、ポリイミド基材21と層間接着層22との境界23が、保護絶縁層5に覆われることで導電性物質6と直接接触せず、保護絶縁層5により導電性物質6からバリヤされているため、イオンマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0059】
また、この多層配線板8は、ポリイミド基材21に比べてヤング率の小さい材料で構成される保護絶縁層5が、導電性物質6とポリイミド基材21との線膨張係数の違いにより発生する応力を緩和し、熱衝撃試験における耐性を向上させることができる。
【0060】
また、この多層配線板8は、ポリイミド基材21に比べて誘電率の低い材料で構成される保護絶縁層5が、伝送速度の遅延を回避させることができる。
【0061】
このようにして作製された多層配線板8を、85℃、85RH%、30Vの条件でマイグレーション試験を実施したところ、バイアピッチが500μmの場合で、1000時間以上経過後も絶縁抵抗が1GΩ以上を維持した。
【0062】
これに対し、バイアホール側面に保護絶縁層が形成されていない従来の多層配線板用基材を用いて作製した多層配線板を、比較のため同様のマイグレーション試験を実施したところ、バイアピッチが500μmの場合で、500時間程度で絶縁抵抗が1GΩ以下まで低下した。
【0063】
また、バイアホール4側面にポリイミド基材21よりもヤング率の小さい材料の保護絶縁層5が形成されている多層配線板8と、そのような保護絶縁層が形成されていない従来の多層配線板について、有限要素法により、バイアホール側面に発生する応力を比較したところ、保護絶縁層5が形成されている多層配線板8に優位性が認められた。
【0064】
なお、上記の実施形態では、貫通孔4としてバイアホールを例示したが、これに限定するものでなく、例えば、スルーホールにも適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】この発明による多層配線板の一実施形態を示す説明図である。
【図2】この発明による多層配線板の一実施形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0066】
1 多層配線板用基材
3 導電層
4 貫通孔(バイアホール)
5 保護絶縁層
6 導電性物質
8 多層配線板
21 ポリイミド基材
22 層間接着層
【出願人】 【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
【住所又は居所】東京都江東区木場1丁目5番1号
【出願日】 平成15年9月2日(2003.9.2)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和

【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦

【識別番号】100100929
【弁理士】
【氏名又は名称】川又 澄雄

【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一

【公開番号】 特開2005−79475(P2005−79475A)
【公開日】 平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願番号】 特願2003−310623(P2003−310623)