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【発明の名称】 多層配線板、多層配線板用基材およびその製造方法
【発明者】 【氏名】伊藤 彰二
【住所又は居所】千葉県佐倉市六崎1440 株式会社フジクラ佐倉事業所内

【氏名】岸原 亮一
【住所又は居所】千葉県佐倉市六崎1440 株式会社フジクラ佐倉事業所内

【氏名】橋場 浩樹
【住所又は居所】千葉県佐倉市六崎1440 株式会社フジクラ佐倉事業所内

【氏名】中尾 知
【住所又は居所】千葉県佐倉市六崎1440 株式会社フジクラ佐倉事業所内

【要約】 【課題】層間導通に用いる導電性物質と絶縁層との材料特性の違いに起因する現象を緩和し、絶縁層の境界部分におけるイオンマイグレーションの発生を抑制する。

【解決手段】多層配線板用基材(1)は、配線パターンをなす導電層(3)を片面に備えた絶縁層(2)に貫通孔(4)が形成され、この貫通孔(4)の周面に保護絶縁層(5)が形成される。そして、この保護絶縁層(5)の内側において貫通孔(4)内に、導電層(3)の層間導通を得るための導電性物質(6)が配置される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配線パターンをなす導電層を片面に備えた絶縁層に貫通孔を形成し、この貫通孔内に前記導電層の層間導通を得るための導電性物質が配置される多層配線板用基材において、
前記貫通孔の周面に保護絶縁層を形成したことを特徴とする多層配線板用基材。
【請求項2】
前記絶縁層は、前記導電層が一側面に設けられた絶縁性基材と、この絶縁性基材の他側面に設けられた層間接着層とで構成されることを特徴とする請求項1記載の多層配線板用基材。
【請求項3】
前記保護絶縁層は前記絶縁性基材と前記層間接着層との境界を覆うように形成されることを特徴とする請求項2記載の多層配線板用基材。
【請求項4】
前記保護絶縁層は前記絶縁層または前記絶縁性基材に比べてヤング率の小さい材料で構成されることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の多層配線板用基材。
【請求項5】
前記保護絶縁層は前記絶縁層または前記絶縁性基材に比べて誘電率の低い材料で構成されることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の多層配線板用基材。
【請求項6】
前記絶縁層または前記絶縁性基材はポリイミド等の可撓性樹脂で構成されることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の多層配線板用基材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の多層配線板用基材を複数枚用意し、任意の多層配線板用基材の前記導電性物質が、当該多層配線板用基材の前記導電層と、当該導電性物質が接する他の多層配線板用基材の導電層との層間導通をとるように位置決めして相互に接合したことを特徴とする多層配線板。
【請求項8】
配線パターンをなす導電層を片面に備えた絶縁層に貫通孔が形成され、この貫通孔内に前記導電層の層間導通を得るための導電性物質が配置されるとともに、この貫通孔の周面に保護絶縁層が形成される多層配線板用基材の製造方法であって、
前記絶縁層に前記貫通孔を形成する工程と、
前記貫通孔の周面に前記保護絶縁層を形成する工程と、
前記保護絶縁層の内側において前記貫通孔内に前記導電性物質を充填する工程と、
を含むことを特徴とする多層配線板用基材の製造方法。
【請求項9】
前記保護絶縁層を形成する工程は、
加熱により体積収縮して硬化する性質を有する保護絶縁層形成材料を前記貫通孔内に充填する工程と、
前記保護絶縁層形成材料を加熱して体積収縮硬化させることで前記貫通孔の周面に保護絶縁層をコーティングする工程と、
を含むことを特徴とする請求項8記載の多層配線板用基材の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、多層配線板、多層配線板用基材およびその製造方法に関し、とくに、フレキシブル多層配線板、フレキシブル多層配線板用基材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器は、高周波信号、デジタル化等に加え、小型・軽量化が進み、それにともない、搭載されるプリント配線板においても、小型、高密度実装化が要求され、これらの要求に応えるプリント配線板として、多層配線板が数多く発表されている。
【0003】
一般に、多層配線板における層間接続の手段は、スルーホールとバイアホールの2つに大別される。
【0004】
スルーホールは、多層積層後の基板に一括で孔あけを施し、この孔(基板貫通孔)にメッキによって、または導電性組成物を充填することによって層間導通部を形成するものである。積層後に一括で孔あけを施すため、工数は少なくて済むが、層間導通部が基板の深さ方向に一直線状になければならないため、配線の自由度が小さく、高密度配線に適しているとはいえない。
【0005】
一方、バイアホールは、1層1層ごとに層間導通部分を作り込んでいくものであり、とくに、IVH(Interstitial Via Hole)タイプの多層配線板は、配線の高密度化、および配線の自由度の大きさの点で優位性があることから、携帯電話等の小型の電気製品に広く利用されている。その代表的な工法として、松下電子部品社のALIVH工法(非特許文献1参照)や、DTサーキットテクノロジー社のBit工法(非特許文献2参照)などが挙げられる。
【0006】
これらの工法に共通するのはビルドアップ法であるという点である。ビルドアップ法の場合、コア層からビルドアップ層を1層ずつ逐次積層し、作り上げていく工法であり、層間の位置合わせが容易であるため、IVH多層配線板のほとんどに利用されている。こうした理由から、IVH多層配線板をビルドアップ基板と呼ぶことも多い。
【0007】
しかし、ビルドアップ工法の場合、1層1層逐次積層していくため、回路形成工程は層数分だけ必要となる。このことは、試作納期の遅延、製造工程数の増加によるコストアップという問題を引き起こしている。
【0008】
そこで、最近、回路形成済みの基材複数枚を重ね合わせ、一括で積層貼り合わせを行う一括積層法によるIVH多層配線板の開発が盛んになってきている。その例として、デンソー社による商標名PALAP(非特許文献3参照)などが挙げられる。この工法の場合、製造工程を大きく簡略化できるばかりでなく、不良層はあらかじめ交換除去して、良層だけを積層することができるため、歩留まり向上に大きく貢献する。
【非特許文献1】「電子材料」1995年10月号、p52−58、中谷誠一等「全層IVH構造を有する樹脂多層基板「ALIVH」」
【非特許文献2】「エレクトロニクス実装学会誌」Vol.3、No.7(2000)、p563−568、福岡義孝「厚膜・薄膜混成高密度ビルドアップ配線板技術」
【非特許文献3】「第16回エレクトロニクス実装学術講演大会講演論文集」p67−68、上村力也等「PALAP基板を用いたプリント基板リサイクルシステムの検討」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような多層配線板は各種材料の複合体であるため、各材料の熱的特性、機械的特性をある程度合わせることによって信頼性を確保する必要がある。とくに、絶縁層の材料と層間導通部分の材料との特性を合わせることが重要となるが、実際にはこれらを完全に一致させることは難しい。
【0010】
例えば、バイアホールまたはスルーホールを構成する絶縁層の材料と、バイアホールまたはスルーホール内の層間導通材料との線膨張係数の違いによって、熱衝撃試験時に層間導通部分にクラックが入ったり、または、電気抵抗が大きく上昇したりする問題が発生する。
【0011】
また、多層配線板の場合、絶縁層を多数重ね合わせた構造をとることになる。そのため、絶縁層の境界部分は、境界以外の絶縁層内部に比べて機械的強度が弱く、そこからイオンマイグレーションが進行しやすいという問題がある。
【0012】
この発明の課題は、上記従来のもののもつ問題点を排除して、層間導通に用いる導電性物質と絶縁層との材料特性の違いに起因する現象を緩和するとともに、絶縁層の境界部分におけるイオンマイグレーションの発生を抑制することのできる多層配線板、多層配線板用基材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
この発明は上記課題を解決するものであって、請求項1に係る発明は、配線パターンをなす導電層を片面に備えた絶縁層に貫通孔を形成し、この貫通孔内に前記導電層の層間導通を得るための導電性物質が配置される多層配線板用基材において、前記貫通孔の周面に保護絶縁層を形成した多層配線板用基材である。
【0014】
この多層配線板用基材によれば、導電性物質と絶縁層との間に保護絶縁層が形成されるため、導電性物質と絶縁層との材料特性の違いに起因する現象を保護絶縁層によって緩和することができる。
【0015】
請求項2に係る発明は、請求項1記載の発明において、前記絶縁層は、前記導電層が一側面に設けられた絶縁性基材と、この絶縁性基材の他側面に設けられた層間接着層とで構成される多層配線板用基材である。
【0016】
この多層配線板用基材によれば、層間接着層を利用して複数枚の多層配線板用基材を容易に接合することができる。
【0017】
請求項3に係る発明は、請求項2記載の発明において、前記保護絶縁層は前記絶縁性基材と前記層間接着層との境界を覆うように形成される多層配線板用基材である。
【0018】
この多層配線板用基材によれば、絶縁性基材と層間接着層との境界が、保護絶縁層に覆われることで導電性物質と直接接触せず、保護絶縁層により導電性物質からバリヤされているため、イオンマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0019】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の発明において、前記保護絶縁層は前記絶縁層または前記絶縁性基材に比べてヤング率の小さい材料で構成される多層配線板用基材である。
【0020】
この多層配線板用基材によれば、絶縁層または絶縁性基材に比べてヤング率の小さい材料で構成される保護絶縁層が、導電性物質と絶縁層または絶縁性基材との線膨張係数の違いにより発生する応力を緩和し、熱衝撃試験における耐性を向上させることができる。
【0021】
また、この多層配線板用基材によれば、絶縁性基材に比べてヤング率の小さい材料で構成される保護絶縁層が、絶縁性基材と層間接着層との境界を覆うように形成されることで、イオンマイグレーションの発生の抑制と、導電性物質と絶縁性基材との線膨張係数の違いにより発生する応力の緩和とを両立することができる。
【0022】
請求項5に係る発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の発明において、前記保護絶縁層は前記絶縁層または前記絶縁性基材に比べて誘電率の低い材料で構成される多層配線板用基材である。
【0023】
この多層配線板用基材によれば、絶縁層または絶縁性基材に比べて誘電率の低い材料で構成される保護絶縁層が、伝送速度の遅延を回避させることができる。
【0024】
また、この多層配線板用基材によれば、保護絶縁層が、絶縁層または絶縁性基材に比べてヤング率が小さく、かつ誘電率の低い材料で構成されることで、導電性物質と絶縁層または絶縁性基材との線膨張係数の違いにより発生する応力の緩和と、伝送速度の遅延の回避とを両立することができる。
【0025】
また、この多層配線板用基材によれば、絶縁層または絶縁性基材に比べて誘電率の低い材料で構成される保護絶縁層が、絶縁層または絶縁性基材と層間接着層との境界を覆うように形成されることで、イオンマイグレーションの発生の抑制と、伝送速度の遅延の回避とを両立することができる。
【0026】
さらに、この多層配線板用基材によれば、絶縁層または絶縁性基材に比べてヤング率が小さく、かつ誘電率の低い材料で構成される保護絶縁層が、絶縁層または絶縁性基材と層間接着層との境界を覆うように形成されることで、イオンマイグレーションの発生の抑制と、導電性物質と絶縁層または絶縁性基材との線膨張係数の違いにより発生する応力の緩和と、伝送速度の遅延の回避とを共に実現することができる。
【0027】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5のいずれかに記載の発明において、前記絶縁層または前記絶縁性基材はポリイミド等の可撓性樹脂で構成される多層配線板用基材である。
【0028】
この多層配線板用基材によれば、ポリイミド等の可撓性樹脂で構成される絶縁層または絶縁性基材は、屈曲が容易に行える。とくに、保護絶縁層を絶縁層または絶縁性基材に比べてヤング率の小さい材料で構成することで、屈曲した場合の絶縁層または絶縁性基材からの導電性物質の剥離、および導電性物質の破壊を抑制することができる。
【0029】
請求項7に係る発明は、請求項1〜6のいずれかに記載の多層配線板用基材を複数枚用意し、任意の多層配線板用基材の前記導電性物質が、当該多層配線板用基材の前記導電層と、当該導電性物質が接する他の多層配線板用基材の導電層との層間導通をとるように位置決めして相互に接合した多層配線板である。
【0030】
この多層配線板によれば、貫通孔の周面に保護絶縁層を形成することで、イオンマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0031】
請求項8に係る発明は、配線パターンをなす導電層を片面に備えた絶縁層に貫通孔が形成され、この貫通孔内に前記導電層の層間導通を得るための導電性物質が配置されるとともに、この貫通孔の周面に保護絶縁層が形成される多層配線板用基材の製造方法であって、前記絶縁層に前記貫通孔を形成する工程と、前記貫通孔の周面に前記保護絶縁層を形成する工程と、前記保護絶縁層の内側において前記貫通孔内に前記導電性物質を充填する工程と、を含む多層配線板用基材の製造方法である。
【0032】
この多層配線板用基材の製造方法によれば、絶縁層に貫通孔を形成したのち、貫通孔の周面に保護絶縁層を形成し、つぎに保護絶縁層の内側において貫通孔内に導電性物質を充填することで、多層配線板用基材を製造することができる。
【0033】
請求項9に係る発明は、請求項8記載の発明において、前記保護絶縁層を形成する工程は、加熱により体積収縮して硬化する性質を有する保護絶縁層形成材料を前記貫通孔内に充填する工程と、前記保護絶縁層形成材料を加熱して体積収縮硬化させることで前記貫通孔の周面に保護絶縁層をコーティングする工程と、を含む多層配線板用基材の製造方法である。
【0034】
この多層配線板用基材の製造方法によれば、印刷法を用いて容易に多層配線板用基材を製造することができる。
【発明の効果】
【0035】
この発明は以上のように、配線パターンをなす導電層を片面に備えた絶縁層に貫通孔を形成し、この貫通孔内に前記導電層の層間導通を得るための導電性物質を配置するとともに、この貫通孔の周面に保護絶縁層を形成したので、層間導通に用いる導電性物質と絶縁層との材料特性の違いに起因する現象を緩和することができ、また、絶縁層の境界部分におけるイオンマイグレーションの発生を抑制することができる効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
この発明の実施の形態を、図面を参照して説明する。
図1は、この発明による多層配線板用基材の一実施形態を示す説明図であり、この多層配線板用基材1をその製造方法とともに説明する。
【0037】
まず、図1(a)に示すように、ポリイミド基材21の片面に銅箔31が接着された片面銅箔付きポリイミド基材11を、出発材料として用意する。
【0038】
つぎに、この片面銅箔付きポリイミド基材11に対し、サブトラクティブ法を用いて銅箔31をエッチングすることで、図1(b)に示すように、配線パターンをなす導電層3を片面に備えた回路形成済み配線板12を作製する。
【0039】
この方法に代えて、例えば、両面に銅箔の付かないポリイミド基材を出発材料とし、このポリイミド基材に対してアディティブ法、セミアディティブ法を用いて回路を形成することも可能である。
【0040】
つぎに、図1(c)に示すように、回路形成済み配線板12におけるポリイミド基材21の配線パターンをなす導電層3とは反対側の面に層間接着層22を形成する。この層間接着層22としては、熱可塑性ポリイミドに熱硬化性機能を付与したものを使用することができる。これ以外にも、例えば、エポキシ等に代表される熱硬化性の樹脂や、熱可塑性ポリイミド等の熱可塑性樹脂を層間接着層として使用することも可能である。
【0041】
そして、ポリイミド基材21と層間接着層22とを合わせたものが、この多層配線板用基材1の絶縁層2を構成する。すなわち、図1(c)には、配線パターンをなす導電層3を片面に備えた絶縁層2が示されている。
【0042】
つぎに、図1(d)に示すように、この絶縁層2の導電層3に対応する位置に、層間接着層22およびポリイミド基材21を貫通する貫通孔4を形成する。この貫通孔4はバイアホールであり、UV−YAGレーザによる穴開け加工ののち、プラズマ照射によるソフトエッチを施すことでデスミアを行って形成することができる。
【0043】
UV−YAGレーザに代えて、例えば、炭酸ガスレーザやエキシマレーザ等によって、より高速で加工することも可能である。また、デスミアの方法として、過マンガン酸塩を使用した湿式デスミアもごく一般的であり、使用可能である。
【0044】
図1(d)から、バイアホール4は、ポリイミド基材21および層間接着層22によって形成されていて、バイアホール4内には異種材料(ポリイミド基材21と層間接着層22)の境界23が存在していることがわかる。
【0045】
つぎに、図1(e)に示すように、このバイアホール4の周面に保護絶縁層5を形成する。すなわち、まず、必要なマスキングを施したうえ、熱可塑性ポリイミドのTHF(テトラヒドロフラン)溶液を印刷法によりスクイジングすることで、バイアホール4内に充填する。
【0046】
熱可塑性ポリイミドのTHF(テトラヒドロフラン)溶液は、加熱によりTHF(テトラヒドロフラン)溶液が除去され体積収縮して硬化する性質を有しているため、バイアホール4に充填後加熱することで、体積収縮して硬化した熱可塑性ポリイミドがバイアホール4の周面にコーティングされることとなる。
【0047】
保護絶縁層5を構成する樹脂としては、熱可塑性ポリイミド以外にも、例えば、エポキシ樹脂やエポキシ樹脂の混合物など、液状の樹脂であれば適宜のものを使用することが可能である。
【0048】
但し、保護絶縁層5は、ポリイミド基材21に比べてヤング率の小さい材料で構成されることが好ましく、また、接着後の層間接着層22に比べてヤング率の小さい材料で構成されることが好ましい。
【0049】
また、保護絶縁層5は、ポリイミド基材21に比べて誘電率の低い材料で構成されることが好ましく、また、接着後の層間接着層22に比べて誘電率の低い材料で構成されることが好ましい。
【0050】
つぎに、図1(f)に示すように、この保護絶縁層5の内側の穴に、導電性物質6として銀または銀ペーストを充填し、加熱して硬化させる。穴埋めに用いる導電性物質6としては、各種の導電性組成物を使用することができる。例えば、銅ペースト、カーボンペースト、ニッケルペーストなど種々の金属ペーストを使用することが可能である。
【0051】
このようにしてできあがったものが多層配線板用基材1である。この多層配線板用基材1は、図1(f)に示すように、導電性物質6と絶縁層2(ポリイミド基材21および層間接着層22)との間に保護絶縁層5が形成されるため、導電性物質6と絶縁層2との材料特性の違いに起因する現象を保護絶縁層5によって緩和することができる。
【0052】
また、この多層配線板用基材1は、ポリイミド基材21と層間接着層22との境界23が、保護絶縁層5に覆われることで導電性物質6と直接接触せず、保護絶縁層5により導電性物質6からバリヤされているため、イオンマイグレーションの発生を抑制することができる。
【0053】
また、この多層配線板用基材1は、ポリイミド基材21に比べてヤング率の小さい材料で構成される保護絶縁層5が、導電性物質6とポリイミド基材21との線膨張係数の違いにより発生する応力を緩和し、熱衝撃試験における耐性を向上させることができる。
【0054】
同様に、接着後の層間接着層22に比べてヤング率の小さい材料で構成される保護絶縁層5が、導電性物質6と接着後の層間接着層22との線膨張係数の違いにより発生する応力を緩和し、熱衝撃試験における耐性を向上させることができる。
【0055】
また、この多層配線板用基材1は、ポリイミド基材21に比べて誘電率の低い材料で構成される保護絶縁層5が、伝送速度の遅延を回避させることができる。
【0056】
同様に、接着後の層間接着層22に比べて誘電率の低い材料で構成される保護絶縁層5が、伝送速度の遅延を回避させることができる。
【0057】
図2は、図1のようにして作製した多層配線板用基材1を複数枚(図では2枚)と最下層に回路形成済み配線板12を積層することで構成される多層配線板を示す説明図である。
【0058】
この多層配線板8は、2枚の多層配線板用基材1a,1bの導電性物質6a,6bが、互いの導電層3a,3bどうしの層間導通をとるとともに、回路形成済み配線板12の導電層3との層間導通もとるように位置合わせを施した後に重ね合わせ、真空熱プレス機によって真空度1kPa以下の条件で加熱・加圧して接合・形成したものである。
【0059】
この位置合わせには、ピンアラインメント方式を採用することも可能であるが、その場合はピン用の穴を開けるスペースが必要になるため、好ましいとはいえない。そのため、画像認識による位置合わせを採用することが好ましい。
【0060】
このようにして作製された多層配線板8を、85℃、85RH%、30Vの条件でマイグレーション試験を実施したところ、バイアピッチが500μmの場合で、1000時間以上経過後も絶縁抵抗が1GΩ以上を維持した。
【0061】
これに対し、バイアホール周面に保護絶縁層が形成されていない従来の多層配線板用基材を用いて作製した多層配線板を、比較のため同様のマイグレーション試験を実施したところ、バイアピッチが500μmの場合で、500時間程度で絶縁抵抗が1GΩ以下まで低下した。
【0062】
また、バイアホール4周面に絶縁層2よりもヤング率の小さい材料の保護絶縁層5が形成されている多層配線板用基材1からなる多層配線板8と、そのような保護絶縁層が形成されていない従来の多層配線板用基材からなる多層配線板について、有限要素法により、バイアホール周面に発生する応力を比較したところ、保護絶縁層5が形成されている多層配線板用基材1からなる多層配線板8に優位性が認められた。
【0063】
図3〜5は、この発明による多層配線板の他の実施形態を示す説明図であり、この多層配線板100をその製造方法とともに説明する。
【0064】
まず、図3(a)に示すように、片面回路形成済み両面銅箔付きガラスエポキシ基材111を出発材料とし、これを2枚用意し、位置合わせを施した後、層間接着材122を挟んで重ね合わせ、加熱加圧することで、図3(b)に示すように貼り合わせて多層配線板用基材101を形成する。
【0065】
層間接着材122には、エポキシ系のシート状接着材を使用することができる。このほかにも、オレフィン系、シリコン系等、任意の接着材を使用することが可能である。
【0066】
つぎに、図3(c)に示すように、多層配線板用基材101の所定の位置にドリルによって貫通孔104を形成する。この貫通孔104はスルーホールである。
【0067】
つぎに、図4(d)に示すように、このスルーホール104の周面に、エポキシ樹脂を塗布し、加熱することで硬化させて保護絶縁層105を形成する。
【0068】
保護絶縁層105に用いる樹脂としては、他にも、有機溶剤に分散させた熱可塑性ポリイミドや、ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸、または、エポキシの混合物等、液状の樹脂組成物であれば適宜のものを使用することが可能である。
【0069】
つぎに、図4(e)に示すように、この保護絶縁層105の内側の穴に、導電性組成物106として銀ペーストを印刷法によって充填し、加熱して硬化させる。穴埋めに用いる導電性組成物106としては、例えば、銅ペースト、カーボンペースト、ニッケルペーストなど種々の金属ペーストを使用することが可能である。
【0070】
導電性組成物106が多層配線板用基材101の表面まではみ出している場合は、はみ出した導電性組成物106をバフ研磨することで、図4(f)に示すように、多層配線板用基材101の表面を平らにする。
【0071】
つぎに、図5(g)に示すように、多層配線板用基材101の表面に電解メッキによって銅メッキ層107を析出させる。これにより、銅箔131と導電性組成物106との密着はより強固なものとなる。
【0072】
最後に、図5(h)に示すように、表面の銅箔131をエッチングによって回路形成を施すことで、多層配線板100が作製される。
【0073】
この多層配線板100についても、図2に示す多層配線板8と同様に、有限要素法により、スルーホール104の周面に絶縁層(2枚のポリイミド基材121およびそれに挟まれた層間接着材122)よりもヤング率の小さい保護絶縁層105がある場合とない場合とでスルーホール104の周面に発生する応力を比較したところ、保護絶縁層105がある場合に優位性が認められた。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】この発明による多層配線板用基材の一実施形態を示す説明図である。
【図2】この発明による多層配線板の一実施形態を示す説明図である。
【図3】この発明による多層配線板の他の実施形態を示す説明図である。
【図4】この発明による多層配線板の他の実施形態を示す説明図である。
【図5】この発明による多層配線板の他の実施形態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0075】
1,101 多層配線板用基材
2,122 絶縁層
3,103 導電層
4 貫通孔(バイアホール)
5,105 保護絶縁層
6 導電性物質
8,100 多層配線板
104 貫通孔(スルーホール)
106 導電性組成物
【出願人】 【識別番号】000005186
【氏名又は名称】株式会社フジクラ
【住所又は居所】東京都江東区木場1丁目5番1号
【出願日】 平成15年9月2日(2003.9.2)
【代理人】 【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和

【識別番号】100100712
【弁理士】
【氏名又は名称】岩▲崎▼ 幸邦

【識別番号】100100929
【弁理士】
【氏名又は名称】川又 澄雄

【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一

【公開番号】 特開2005−79474(P2005−79474A)
【公開日】 平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願番号】 特願2003−310621(P2003−310621)