| 【発明の名称】 |
回路モジュール用多層基板及び回路モジュール |
| 【発明者】 |
【氏名】高原 誠志 【住所又は居所】東京都中央区日本橋一丁目13番1号 TDK株式会社内
【氏名】長瀬 健司 【住所又は居所】東京都中央区日本橋一丁目13番1号 TDK株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】小型化し得、かつ、電力付加効率を向上させ得る回路モジュール用多層基板を提供する。
【解決手段】回路モジュール用多層基板7は、直流バイアス回路216を有し、複数の機能層71〜77を積層して構成される。直流バイアス回路216は、インダクタL5とキャパシタC10との並列回路218を含み、回路モジュールに含まれる能動素子212のバイアス回路を構成しており、インダクタL5を構成する導体パターンは、機能層75に備えられ、絶縁層752を挟んで他の導体パターンGND3と対向している。インダクタL5を構成する導体パターンの厚みt1、及び、絶縁層752の厚みt2について、t1>t2を満たす。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 直流バイアス回路を有し、複数の機能層を積層して構成された回路モジュール用多層基板であって、 前記直流バイアス回路は、インダクタとキャパシタとの並列回路を含み、回路モジュールに含まれる能動素子のバイアス回路を構成しており、前記インダクタを構成する導体パターンは、機能層に備えられ、絶縁層を挟んで他の導体パターンと対向しており、 前記インダクタを構成する導体パターンの厚みをt1とし、前記絶縁層の厚みをt2としたとき、 t1>t2を満たす 回路モジュール用多層基板。 【請求項2】 直流バイアス回路を有し、複数の機能層を積層して構成された回路モジュール用多層基板であって、 前記直流バイアス回路は、インダクタとキャパシタとの並列回路を含み、回路モジュールに含まれる能動素子のバイアス回路を構成しており、前記インダクタを構成する導体パターンは、機能層に備えられ、絶縁層を挟んで他の導体パターンと対向しており、 前記インダクタを構成する導体パターンの厚みをt1とし、前記他の導体パターンの厚みをt4としたとき、 t1>t4を満たす 回路モジュール用多層基板。 【請求項3】 直流バイアス回路を有し、複数の機能層を積層して構成された回路モジュール用多層基板であって、 前記直流バイアス回路は、インダクタとキャパシタとの並列回路を含み、回路モジュールに含まれる能動素子のバイアス回路を構成しており、前記インダクタを構成する導体パターンは、機能層に備えられ、絶縁層を挟んで他の導体パターンと対向しており、 前記インダクタを構成する導体パターンと、前記他の導体パターンとに挟まれた絶縁層の厚みをt2とし、他の機能層に備えられた絶縁層の厚みをt3としたとき、 t2<t3を満たす 回路モジュール用多層基板。 【請求項4】 請求項1乃至3の何れかに記載された回路モジュール用多層基板であって、 前記キャパシタを構成するキャパシタ電極の少なくとも1つは、前記インダクタを構成する導体パターンと同一の機能層に備えられ、キャパシタ電極の他の1つは、前記他の導体パターンと同一の機能層に備えられている 回路モジュール用多層基板。 【請求項5】 請求項1乃至4の何れかに記載された回路モジュール用多層基板であって、 前記複数の機能層の少なくとも一部は、有機樹脂材料と機能材料粉末との混合材料でなる 回路モジュール用多層基板。 【請求項6】 請求項5に記載された回路モジュール用多層基板であって、 前記有機樹脂材料は、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリフェニレンエーテル樹脂、フマレート樹脂、ポリブタジエン樹脂、ビニルベンジル樹脂、芳香族ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリアリレート樹脂またはグラフト樹脂の少なくとも一種でなり、 前記機能材料粉末は、BaO−TiO2−Nd2O3系セラミックス、BaO−TiO2−SnO2系セラミックス、PbO−CaO系セラミックス、BaTiO3系セラミックス、PbTiO3系セラミックス、SrTiO3系セラミックス、CaTiO3系セラミックス、Al2O3系セラミックス、BiTiO4系セラミックス、MgTiO3系セラミックス、(Ba,Sr)TiO3系セラミックス、Ba(Ti,Zr)O3系セラミックス、BaTiO3−SiO2系セラミックス、BaO−SiO2系セラミックス、CaWO4系セラミックス、Ba(Mg,Nb)O3系セラミックス、Ba(Mg,Ta)O3系セラミックス、Ba(Co,Mg,Nb)O3系セラミックス、Ba(Co,Mg,Ta)O3系セラミックス、Mg2SiO4系セラミックス、ZnTiO3系セラミックス、SrZrO3系セラミックス、ZrTiO4系セラミックス、(Zr,Sn)TiO4系セラミックス、BaO−TiO2−Sm2O3系セラミックス、PbO−BaO−Nd2O3−TiO2系セラミックス、(Bi2O3,PbO)−(BaO)−TiO2系セラミックス、La2Ti2O7系セラミックス、Nd2Ti2O7系セラミックス、(Li,Sm)TiO3系セラミックス、Ba(Zn,Ta)O3系セラミックス、Ba(Zn,Nb)O3系セラミックスまたはSr(Zn,Nb)O3系セラミックスの少なくとも一種でなる 回路モジュール用多層基板。 【請求項7】 請求項5に記載された回路モジュール用多層基板であって、 前記混合材料は、比誘電率が7〜14の範囲にあり、誘電正接が0.01〜0.002の範囲にあり、前記機能材料粉末の含有量が40〜60vol%の範囲にある 回路モジュール用多層基板。 【請求項8】 請求項5乃至7の何れかに記載された回路モジュール用多層基板であって、 前記有機樹脂材料は、ビニルベンジル樹脂でなり、 前記機能材料粉末は、BaO−TiO2−Nd2O3系セラミックスでなる 回路モジュール用多層基板。 【請求項9】 請求項1乃至8の何れかに記載された回路モジュール用多層基板であって、パワーアンプモジュール用である回路モジュール用多層基板。 【請求項10】 多層基板と、能動素子とを含む回路モジュールであって、 前記多層基板は、請求項1乃至9の何れかに記載されたものでなり、 前記能動素子は、前記多層基板に搭載されている 回路モジュール。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、主として、マイクロ波帯を利用した通信機器等に用いられる回路モジュール及びその構成要素たる多層基板に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、携帯電話などのデジタル移動体通信機器の普及によりマイクロ波帯の送信部に用いられる回路モジュール、例えば、パワーアンプモジュールや、VCO(電圧制御発振器)等への需要が高まっている。この種の回路モジュールは移動体通信機器の1部品であり、近年、通信機器、特に携帯電話の形状の小型化、高機能化と共に、低電圧動作化、高効率化及び軽量化の要望が強くなっている。 【0003】 デジタル移動体通信機器では、例えば、パワーアンプモジュールの場合を例に採ると、アンテナで受信された信号は、ローノイズアンプ部へ伝達され、ローノイズアンプ部からミキサ部へ供給されて、変調され、更にIF部を経てベースバンド部へ送られる。また、ベースバンド部で生成された送信信号は、ミキサ部で変調され、電力増幅素子部へ伝えられ、電力増幅素子部にて増幅された信号が、デュプレクサを経てアンテナヘ伝えられる。 【0004】 電力増幅素子部では、ミキサ部から供給された信号を、必要な電力レベルまで増幅する。電力増幅素子部で増幅された信号は、非可逆回路部に出力される。非可逆回路部は、アイソレータとして動作するものであって、電力増幅素子部の出力からみたインピーダンスを、常に一定の値に保つ役割と、アンテナから反射してきた信号が電力増幅素子部に戻らないようにカットする役割とを担う。この非可逆回路部の働きにより、出力側負荷インピーダンスの変化等に起因する電力の反射、それによる信号品質劣化(ノイズレベルの増加)、効率劣化、及び、電力増幅素子部内部の回路の破壊等が回避される。 【0005】 非可逆回路部から出力された信号は、通常、電力検出部を通過させ、その電力レベルが検出される。そして、電力制御部から電力増幅素子部に、送信される電力が常に一定となるように、自動電力制御(Auto Power Control、以下APCと称する)が加わる。このため、電力増幅素子部からの出力信号が、必要以上に増加したり、必要以下に減少したりすることなく、必要とされる電力レベルに常に制御される。 【0006】 電力検出部を通過した信号は、ローパスフィルタにより、高次高調波成分が除去され、デュプレクサ(Duplexer)へ伝えられ、更にアンテナに伝達される。 【0007】 パワーアンプやVCOなどに用いられる回路モジュールは、一般に、多層基板を含んでいる。多層基板は、複数の機能層を積層して構成され、回路モジュールを構成するのに必要な能動素子,及び、受働素子が搭載される。更に多層基板には、能動素子のための直流バイアス回路が備えられる。 【0008】 直流バイアス回路は、たとえば、パワーアンプモジュールを例に採ると、電力増幅素子を動作させるための直流バイアスを印加するとともに、増幅電力を外部に漏洩させるのを防ぐ役割をもち、電力増幅素子から電源供給端子に導かれるラインには、インダクタが挿入接続される。インダクタは、多層基板内に形成されたストリップラインとして構成することができる。 【0009】 ところで、直流バイアス回路のインダクタには、電力増幅素子で増幅された信号を電源供給端子へ漏洩させないよう、動作周波数におけるインピーダンスを無限大にすることが求められる。このため、インダクタを構成するストリップラインとして、動作周波数の波長λに応じた線路長のストリップラインが必要となり、多層基板の大型化を招いていた。 【0010】 更に、動作周波数の波長λに応じた線路長のストリップラインは、導体損失の増大を招く。特に、直流バイアス回路のインダクタの場合、電力増幅素子から電源供給端子に導かれるラインに挿入接続されるため、ストリップラインに直流損失を生じる。直流損失の増大は、大きな問題となり、回路モジュールとしてみた電力付加効率の低下をも招いてしまう。 【0011】 ストリップラインにおける損失を低減させるためには、その線路長を短縮するとともに、断面積を増大させることが有効である。特許文献1には、インダクタを構成するストリップラインに並列にキャパシタを接続することにより、ストリップラインの線路長を短縮する技術が開示されている。 【0012】 しかし、特許文献1には、ストリップラインの断面積に関する記載はなく、ストリップラインの断面積を増大させる技術は開示されていない。 【0013】 従来の多層基板では、直流バイアス回路のインダクタを構成するストリップラインは機能層に形成され、絶縁層を挟んで他の導体パターンと対向し、ストリップラインの厚みが当該絶縁層と同じかそれ以下となっている。かかる構造においてストリップラインの厚みを増大させた場合、機能層の厚みが必然的に増大し、要求される制限厚みを超えてしまう。このため、ストリップラインの断面積を増大させることは困難である。 【0014】 特に、最近は、多層基板の小型化、薄型化の要求に応えるため、多層基板を構成する各機能層の層厚が薄型化されており、ストリップラインの断面積を増大させることは一層困難となっている。ストリップラインの断面積を増大させることができないと、導体損失を低減させることが難しくなり、回路モジュールの電力付加効率を向上させることも難しくなってしまう。 【特許文献1】特開平9−289421号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0015】 本発明の課題は、小型化し得る回路モジュール用多層基板及び回路モジュールを提供することである。 【0016】 本発明のもう一つの課題は、電力付加効率を向上させ得る回路モジュール用多層基板及び回路モジュールを提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0017】 上述した課題を解決するため、本発明に係る回路モジュール用多層基板は、直流バイアス回路を有し、複数の機能層を積層して構成される。 【0018】 前記直流バイアス回路は、インダクタとキャパシタとの並列回路を含み、回路モジュールに含まれる能動素子のバイアス回路を構成しており、前記インダクタを構成する導体パターンは、機能層に備えられ、絶縁層を挟んで他の導体パターンと対向している。 【0019】 前記インダクタを構成する導体パターンの厚みをt1とし、前記絶縁層の厚みをt2としたとき、t1>t2を満たす。 【0020】 上述した本発明に係る回路モジュール用多層基板において、直流バイアス回路は、インダクタとキャパシタとの並列回路を含み、回路モジュールに含まれる能動素子のバイアス回路を構成している。並列回路について、インダクタのインダクタンス値L及びキャパシタのキャパシタンス値Cは、所定の動作周波数finで並列回路のインピーダンスが無限大となるように設定すればよく、そのための条件は次の式で定められる。 fin=1/[2π√(LC)] 【0021】 従って、キャパシタのキャパシタンス値Cを大きな値に設定することにより、インダクタのインダクタンス値Lを小さな値に設定することが可能となる。これは、インダクタを構成する導体パターンの線路長が短縮されることを意味し、よって、回路モジュール用多層基板の小型化が可能となる。 【0022】 しかも、インダクタを構成する導体パターンについて、線路長が短縮されるから、直流抵抗が低減され、導体損失も低減される。従って、能動素子に供給される電流を低減することが可能となり、これにより、回路モジュールとしてみた電力付加効率を向上させることができる。 【0023】 更に、本発明に係る回路モジュール用多層基板において、並列回路のインダクタを構成する導体パターンは、機能層に備えられ、絶縁層を挟んで他の導体パターンと対向している。ここで、インダクタを構成する導体パターンの厚みt1、及び、絶縁層の厚みt2について、 t1>t2 を満たす。即ち、インダクタを構成する導体パターンの厚みt1が絶縁層の厚みt2よりも大きい。かかる厚み設定によれば、各機能層の層厚が制約されていても、インダクタを構成する導体パターンは、断面積の増大により直流抵抗が更に低減され、導体損失も更に低減される。従って、回路モジュールの電力付加効率を更に向上させることができる。 【0024】 本発明に係るもう一つの回路モジュール用多層基板では、インダクタを構成する導体パターンの厚みt1、及び、絶縁層を挟んでインダクタの導体パターンと対向する他の導体パターンの厚みt4について、 t1>t4 を満たす。即ち、インダクタを構成する導体パターンの厚みt1が、絶縁層を挟んでインダクタの導体パターンと対向する他の導体パターンの厚みt4よりも大きい。かかる厚み設定によれば、各機能層の層厚が制約されていても、インダクタを構成する導体パターンは、断面積の増大により直流抵抗が低減され、導体損失も低減される。従って、回路モジュールの電力付加効率を更に向上させることができる。 【0025】 本発明に係る更にもう一つの回路モジュール用多層基板では、インダクタを構成する導体パターンと、他の導体パターンとに挟まれた絶縁層の厚みt2、及び、他の機能層に備えられた絶縁層の厚みt3について、 t2<t3 を満たす。即ち、インダクタを構成する導体パターンと、他の導体パターンとに挟まれた絶縁層の厚みt2が、他の機能層に備えられた絶縁層の厚みt3よりも小さい。かかる厚み設定によれば、各機能層の層厚が制約されていても、インダクタを構成する導体パターンの厚みt1が増大する。従って、回路モジュールの電力付加効率を更に向上させることができる。 【0026】 本発明に係る多層基板は、能動素子と組み合わされ、回路モジュールを構成する。能動素子は多層基板に搭載される。 【0027】 本発明に係る回路モジュールは、上述した本発明に係る多層基板を用いるので、多層基板による作用効果をそのまま得ることができる。 【発明の効果】 【0028】 以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。 (a)小型化し得る回路モジュール用多層基板及び回路モジュールを提供することができる。 (b)電力付加効率を向上させ得る回路モジュール用多層基板及び回路モジュールを提供することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0029】 図1はデジタル移動体通信機器における高周波回路部の構成を示すブロック図である。送受信用アンテナANT1で受信された信号は、ローノイズアンプ部AMPへ伝達され、ミキサ部MIXRで変調され、更にIF部を経由してベースバンド部BSBへ送られる。 【0030】 また、ベースバンド部BSBで生成された送信信号は、ミキサ部MIXTで変調される。ミキサ部MIXTによる変調は、フェーズロックループPLLからミキサ部MIXTに供給される信号に基づいて行われる。送信信号は、ミキサ部MIXTで変調された後、電力増幅回路部PWAへ供給される。電力増幅回路部PWAは、アンテナANT1から出力される送信信号を、受信者に届く電力になるまで増幅する役割を担う。電力増幅回路部PWAにて増幅された信号は、デュプレクサDUPを経てアンテナANT1ヘ伝えられ、アンテナANT1から空中に放射される。 【0031】 図2は電力増幅回路部PWAの詳細を示すブロック図である。図示された電力増幅回路部PWAは、バンドパスフィルタ1、パワーアンプモジュール部2、電力検出部31、ローパスフィルタ32、及び、非可逆回路部22を含んでいる。ミキサ部MIXTから電力増幅回路部PWAへ供給された変調信号は、バンドパスフィルタ1により、必要な周波数成分のみが抽出され、パワーアンプモジュール部2ヘ伝えられる。 【0032】 パワーアンプモジュール部2は、本発明に係る回路モジュールの一実施の形態であって、電力増幅部21及び非可逆回路部22を含む。バンドパスフィルタ1を通過した信号は、電力増幅部21において、送信に必要な電力レベルまで増幅され、非可逆回路部22に出力される。 【0033】 非可逆回路部22は、アイソレータを構成し、電力増幅部21の出力からみたインピーダンスを、常に一定の値(通常は50Ω)に保つ役割と、アンテナANT1から反射してきた信号が電力増幅部21に戻らないようにカットする役割とを担う。非可逆回路部22がないと、動作環境等に起因して出力側負荷インピーダンスが変化した場合、電力増幅部21で増幅された電力が反射され、電力増幅部21ヘ戻り、電力増幅部21から出力される信号の品質劣化(ノイズレベルの増加)、効率劣化、電力増幅部21の内部回路の破壊等を招く。非可逆回路部22は、このような反射による不具合を防止するために備えられている。 【0034】 非可逆回路部22から出力された信号は、電力検出部31に供給される。そして、電力検出部31を通過するとき、信号の電力レベルが検出される。電力検出信号は、電力制御部34に供給される。電力制御部34は電力検出部31から供給される電力検出信号に基づき、電力増幅部21にAPC制御を加え、出力電力を一定化する。 【0035】 電力検出部31を通過した信号は、ローパスフィルタ32により、高次高調波成分が除去される。ローパスフィルタ32を通過した信号は、デュプレクサDUPへ伝えられ、更に、アンテナANT1に伝達される。そして、アンテナANT1から、空中へ信号が放射される。 【0036】 パワーアンプモジュールに要求される主な特性の一例は、以下の通りである。 入力信号周波数(fin)=1.95GHz 出力電力(Pout)=26.5dBm 電力付加効率(PAE)=40%以上 隣接チャンネル漏洩電力比(ACPR) ACPR1=−40dBc以下(at 5MHz) ACPR2=−50dBc以下(at 10MHz) 隣接チャンネル漏洩電力比(ACPR)とは、送信信号の中心周波数から5.0MHz、または、10.0MHz離れた周波数におけるノイズレベルを、中心周波数の電力レベルに対する相対比で表した値である。 【0037】 電力付加効率(PAE)とは、出力電力と消費電力との割合をパーセントで表示したもので、高いほど好ましい。PAEは次の式で与えられる。 PAE(%)={(出力電力−入力電力)/(動作電圧×入力電流)}×100 【0038】 図3はパワーアンプモジュールの主要部をなす電力増幅部21のブロック図を示している。図示実施例において、電力増幅部21は、入力インピーダンス整合回路211、前段の電力増幅素子(能動素子)212、後段の電力増幅素子(能動素子)214、出力インピーダンス整合回路215及び直流バイアス回路216を含んでいる。パワーアンプモジュールは電力増幅部21の他にも、追加的、または、付加的な回路部分を有する。 【0039】 電力増幅素子212、214は例えばHBT(ヘテロジャンクション・バイポーラ・トランジスタ)やFET(電界効果型トランジスタ)から構成される。 【0040】 バンドパスフィルタ1(図2参照)に接続されたPin端子から、入力インピーダンス整合回路211を経て、電力増幅素子212に供給された信号は、電力増幅素子212によって電力増幅される。電力増幅素子212によって電力増幅された信号は、電力増幅素子214に供給され、電力増幅作用を受ける。 【0041】 電力増幅素子214によって電力増幅を受けた信号は、電力増幅素子214を経て、出力インピーダンス整合回路215に供給される。電力増幅素子212、214には、Vreg端子に入力された基準信号が、キャパシタC7、及び、インダクタL4を介して供給される。 【0042】 図3に示された回路において、電力増幅素子212及び電力増幅素子214は、1パッケージ化されたMMIC(Micro wave Monolithic IC)20を構成する。実施例では、2つの電力増幅素子212、214を用いているが、1つの場合もあるし、3つ以上の場合もある。MMIC20の出力インピーダンスは、出力インピーダンス整合回路215及び非可逆回路部22によって、負荷インピーダンスである50Ωに変換される。 【0043】 入力インピーダンス整合回路211は、Pin端子からバンドパスフィルタ1(図2参照)の側を見たときのインピーダンス50Ωを、MMIC20の入力インピーダンスに整合させるもので、インダクタL1及びキャパシタC1、C2を含むLC回路より構成される。Pin端子に供給された信号は、理想的には、無反射にてMMIC20に入力される。 【0044】 MMIC20に入力された信号は、電力増幅素子212及び電力増幅素子214により、所望の電力まで増幅される。 【0045】 MMIC20の出力側に備えられた出力インピーダンス整合回路215は、インダクタL2と、キャパシタC4、インダクタL3及びキャパシタC5のπ型回路と、直流阻止用キャパシタC6とを含んでいる。 【0046】 直流バイアス回路216は、インダクタL5とキャパシタC10との並列回路218を含み、パワーアンプモジュール2に含まれる電力増幅素子212のバイアス回路を構成している。具体的には、インダクタL5とキャパシタC10との並列回路218は、電力増幅素子212からVcc端子に導かれるラインに直列に挿入接続されている。この並列回路218は、電力増幅素子212で増幅された信号がVcc端子に漏洩するのを防ぐ役割を担っており、理想的には、所定の動作周波数finで並列回路218のインピーダンスを無限大にすることが求められる。更に直流バイアス回路216はキャパシタC8を備えており、このキャパシタC8は、一端が並列回路218とVcc端子との間に接続され、他端が接地されている。 【0047】 直流バイアス回路216は、パワーアンプモジュール2に含まれるもう一つの電力増幅素子214についても同様な構成を備える。すなわち、直流バイアス回路216は、インダクタL6とキャパシタC11との並列回路219を含み、電力増幅素子214のバイアス回路を構成している。具体的には、インダクタL6とキャパシタC11との並列回路219は、電力増幅素子214からVcc端子に導かれるラインに直列に挿入接続されている。 【0048】 図4は本発明に係るパワーアンプモジュールの層構成の一例を示す部分断面図である。図示されたパワーアンプモジュールは、パワーアンプモジュールであって、多層基板7と、MMIC20を含んでいる。MMIC20は、既に述べたように、電力増幅素子212及び電力増幅素子214を含んでいる(図2、図3参照)。 【0049】 多層基板7は、7つの機能層71〜77を積層した構造となっている。これらの機能層71〜77は、シート積層法(スタック法)、ビルドアップ法または塗布法によって形成される。 【0050】 機能層74はコア層である。コア層を構成する機能層74は、ガラス繊維を含有する有機質層である。機能層74は、具体的には、ガラス繊維入りであり、選択された有機樹脂材料と機能材料粉末との混合材料層で構成される。 【0051】 機能層74の上層に位置する機能層71〜73、及び、機能層74の下層に位置する機能層75〜77は、有機樹脂材料と機能材料粉末とを混合した混合材料からなり、電力増幅部21に含まれる回路要素の一部を構成している。機能層71〜73、75〜77は、機能層74と異なって、ガラス繊維を含んでおらず、選択された有機樹脂材料と機能材料粉末との混合材料層で構成されている。 【0052】 更に図示の多層基板7には、サーマルビア91の群が形成されている。サーマルビア91は、多層基板7の機能層71〜77を連続して貫通するように備えられ、MMIC20の熱を放熱する役割を担う。 【0053】 図5〜図12は機能層71〜機能層77と、各機能層の間に配置されるパターンとを示す図である。但し、これらの図は、パターンを備えた機能層を示すものではなく、機能層とパターンとの配置関係を、上面より順に示したものである。図5は、多層基板71の最上層を構成する機能層71を表面からみた平面図である。機能層71の表面には、入力インピーダンス整合回路211のキャパシタC2が備えられると共に、インダクタL1を構成する導体パターン、及び、キャパシタC1のキャパシタ電極C11が備えられている。 【0054】 また、直流バイアス回路216については、Vreg端子と電力増幅素子212、214との間に接続され、かつ、接地されたキャパシタC7が備えられると共に、インダクタL4を構成する導体パターンが備えられている。 【0055】 更に、出力インピーダンス整合回路215については、キャパシタC5、C6が備えられると共に、インダクタL2、L3を構成する導体パターン、及び、キャパシタC4のキャパシタ電極C41が備えられている。図示のキャパシタC2、C5、C6、C7は、何れもチップタイプである。 【0056】 図6は機能層71と隣接する機能層72の表面を示す平面図である。機能層71と機能層72との間には、接地電極GND1が形成されている。この接地電極GND1と、機能層71の表面に形成されたキャパシタ電極C11、C41(図5参照)とにより、機能層71を容量層とするキャパシタが構成される。 【0057】 図7は機能層72と隣接する機能層73の表面を示す平面図である。機能層72と機能層73との間には、入力インピーダンス整合回路211のキャパシタC1に備えられるもう一つのキャパシタ電極C12と、出力インピーダンス整合回路215のキャパシタC4に備えられるもう一つのキャパシタ電極C42とが形成されている。これらのキャパシタ電極C12、C42と、機能層72の表面に形成された接地電極GND1とにより、機能層72を容量層とするキャパシタが構成される。更に、キャパシタ電極C12、C42は、それぞれ、機能層71、72のスルーホール導体81、82を介して、機能層71の表面に形成されたキャパシタ電極C11、C41に接続されている。 【0058】 図8は機能層73と隣接する機能層74の表面を示す平面図である。機能層73と機能層74との間には、第2の接地電極GND2が形成されている。第2の接地電極GND2と、キャパシタ電極C12、C42によっても、機能層73を容量層とするキャパシタが構成される。 【0059】 図9は機能層74と隣接する機能層75の表面を示す平面図である。機能層74と機能層75との間には、直流バイアス回路216のインダクタL5、L6を構成する導体パターンと、キャパシタC10、C11のキャパシタ電極C101、C111とが形成されている。インダクタL5、L6は、機能層74の表面に形成された第2の接地電極GND2と共に、ストリップラインとして機能する構成とすることができる。インダクタL5、L6の一端は、キャパシタC10、C11のキャパシタ電極C101、C111に接続されている。インダクタL5、L6の他端は、それぞれ、機能層71〜74のスルーホール導体83、84を介してMMIC20に導かれている。 【0060】 更に機能層74と機能層75との間には、キャパシタC8、C9のキャパシタ電極C81、C91が形成されている。 【0061】 図10は機能層75と隣接する機能層76の表面を示す平面図である。機能層75と機能層76との間には、キャパシタC10のもう一つのキャパシタ電極C102が形成されている。このキャパシタ電極C102と、機能層75の表面に形成されたキャパシタ電極C101とは機能層75を介して対向するので、キャパシタ電極C101、C102の間で機能層75を容量層とするキャパシタC10が構成される。キャパシタC10のキャパシタ電極C101はインダクタL5の一端に接続され(図9参照)、もう一つのキャパシタ電極C102は、機能層75のスルーホール導体(図示せず)を介してインダクタL5の他端に接続されているので、キャパシタC10と、インダクタL5との並列回路が構成されていることとなる。 【0062】 キャパシタC11についても同様であり、キャパシタ電極C112と、機能層75の表面に形成されたキャパシタ電極C111とが機能層75を介して対向し、キャパシタ電極C111、C112の間で機能層75を容量層とするキャパシタC11が構成される。キャパシタC11のキャパシタ電極C111はインダクタL6の一端に接続され(図9参照)、もう一つのキャパシタ電極C112は、スルーホール導体を介してインダクタL6の他端に接続されているので、キャパシタC11と、インダクタL6との並列回路が構成されていることとなる。 【0063】 更に機能層75と機能層76との間には、キャパシタC8、C9のもう一つのキャパシタ電極C82、C92が形成されている。これらのキャパシタ電極C82、C92と、機能層75の表面に形成されたキャパシタ電極C81、C91とにより、機能層75を容量層とするキャパシタC8、C9が構成される。図示実施例において、キャパシタC8、C9のキャパシタ電極C82、C92は第3の接地電極GND3として一体化されている。インダクタL5、L6は、この接地電極GND3と共に、ストリップラインとして機能する構成とすることができる。 【0064】 図11は機能層76と隣接する機能層77の表面を示す平面図、図12は機能層77の裏面図である。機能層77の裏面には、Pin端子、Pout端子、Vdd端子、Vreg端子、GND端子及び第4の接地電極GND4が形成されている。 【0065】 図4〜図12に示したパワーアンプモジュール用多層基板7において、一例ではあるが、導体パターン及び絶縁層の数値例は次の通りである。 【0066】 機能層75に形成され、インダクタL5、L6を構成する導体パターンについて、その厚みt1を40μmに選定する。更に、当該機能層75に形成された他の導体パターン、例えば、キャパシタC10、C11のキャパシタ電極C101、C111についても、その厚みは、インダクタL5、L6の導体パターンの厚みt1と同じとする。 【0067】 また、絶縁層752(図4参照)を挟んでインダクタL5、L6の導体パターンと対向する他の導体パターンGND3について、その厚みt4を18μmに選定する。更に、機能層71〜74、76、77に形成された導体パターンについても、何れも厚みを18μmとする。 【0068】 インダクタL5、L6の導体パターンと、他の導体パターンGND3とに挟まれた絶縁層752については、その厚みt2を2.0μmに選定する。他の機能層76に備えられた絶縁層762については、その厚みt3を22μmに選定する。 【0069】 図3を参照して説明したように、本発明に係るパワーアンプモジュール用多層基板7では、直流バイアス回路216は、インダクタL5とキャパシタC10との並列回路218を含み、パワーアンプモジュールに含まれる電力増幅素子212のバイアス回路を構成している。並列回路218について、インダクタL5のインダクタンス値L及びキャパシタC10のキャパシタンス値Cは、所定の動作周波数finで並列回路のインピーダンスが無限大となるように設定すればよく、そのための条件は次の式で定められる。 fin=1/[2π√(LC)] 【0070】 従って、キャパシタC10のキャパシタンス値Cを大きな値に設定することにより、インダクタL5のインダクタンス値Lを小さな値に設定することが可能となる。これは、図9に示すように、インダクタL5を構成する導体パターンの線路長が短縮されることを意味し、よって、パワーアンプモジュール用多層基板7の小型化が可能となる。 【0071】 図示の直流バイアス回路216は、パワーアンプモジュールに含まれるもう一つの電力増幅素子214についても同様な構成を備える。すなわち、直流バイアス回路216は、インダクタL6とキャパシタC11との並列回路219を含み、電力増幅素子214のバイアス回路を構成している。従って、インダクタL6を構成する導体パターンの線路長も短縮できることとなる。実施例では、インダクタL5を構成する導体パターン、及び、インダクタL6を構成する導体パターンについて、線路長が約2mmに短縮されている。 【0072】 しかも、インダクタL5、L6を構成する導体パターンについて、線路長が短縮されるから、直流抵抗が低減され、導体損失も低減される。従って、電力増幅素子212、214に供給される電流を低減することが可能となり、これにより、パワーアンプモジュールとしてみた電力付加効率(PAE)を向上させることができる。 【0073】 更に図4、図9、図10を参照すると、並列回路218、219のインダクタL5、L6を構成する導体パターンは、機能層75に備えられ、絶縁層752を挟んで他の導体パターンGND3と対向している。本発明では、インダクタL5、L6を構成する導体パターンの厚みt1、及び、絶縁層752の厚みt2について、 t1>t2 (1) を満たす。即ち、インダクタL5、L6を構成する導体パターンの厚みt1が絶縁層752の厚みt2よりも大きい。実施例の場合、厚みt1、t2は、それぞれ、40μm、2.0μmである。 【0074】 かかる厚み設定によれば、各機能層71〜77の層厚が制約されていても、インダクタL5、L6を構成する導体パターンについて断面積を増大させることが容易となり、この断面積増大により、直流抵抗を更に低減でき、導体損失も更に低減できる。従って、パワーアンプモジュールの電力付加効率を更に向上させることができる。 【0075】 また、本発明では、上記式(1)と選択的にまたは追加的に、インダクタL5、L6を構成する導体パターンの厚みt1、及び、絶縁層752を挟んでインダクタL5、L6の導体パターンと対向する他の導体パターンGND3の厚みt4について、 t1>t4 (2) を満たしていてもよい。即ち、インダクタL5、L6を構成する導体パターンの厚みt1が、インダクタL5、L6の導体パターンと対向する他の導体パターンGND3の厚みt4よりも大きい。実施例の場合、厚みt1、t4は、それぞれ、40μm、18μmである。 【0076】 かかる厚み設定によれば、各機能層71〜77の層厚が制約されていても、インダクタL5、L6を構成する導体パターンについて断面積を増大させることが容易となる。従って、パワーアンプモジュールの電力付加効率を更に向上させることができる。 【0077】 また、本発明では、インダクタL5、L6を構成する導体パターンと、他の導体パターンGND3とに挟まれた絶縁層752の厚みt2、及び、他の機能層76に備えられた絶縁層762の厚みt3について、 t2<t3 を満たす。即ち、インダクタL5、L6の導体パターンと、他の導体パターンGND3とに挟まれた絶縁層752の厚みt2が、他の機能層76に備えられた絶縁層762の厚みt3よりも小さい。実施例の場合、厚みt2、t3は、それぞれ、2.0μm、22μmである。 【0078】 かかる厚み設定によれば、各機能層71〜77の層厚が制約されていても、インダクタL5、L6を構成する導体パターンについて厚みt1を増大させることが容易となるから、断面積を増大させることも容易となる。従って、パワーアンプモジュールの電力付加効率を更に向上させることができる。 以下、データを挙げて具体的に説明する。 【0079】 <比較例> インダクタL5、L6を構成する導体パターンについて、厚みを18μmとすると、断面積は 断面積=100×10-6×18×10-6 =1.8×10-9(m2) となり、これにより、抵抗値は 抵抗値=1.74×10-8×2.0×10-3/(1.8×10-9) =19.3mΩ となった。但し、インダクタL5、L6を構成する導体パターンの抵抗率(Cu)を、1.74×10-8Ω・m、線路長を2.0mm、線路幅を100μmとした。 【0080】 得られたパワーアンプモジュールの特性は次の通りである。 入力信号周波数(fin)=1.95GHz 出力電力(Pout)=26.5dBm 電力付加効率(PAE)=40% 隣接チャンネル漏洩電力比(ACPR) ACPR1=−40dBc以下(at 5MHz) ACPR2=−50dBc以下(at 10MHz) 【0081】 <実施例> これに対し、インダクタL5、L6を構成する導体パターンについて、厚みt1を40μmに増大させると、断面積は 断面積=100×10-6×40×10-6 =4.0×10-9(m2) に増大し、これにより、抵抗値は 抵抗値=1.74×10-8×2.0×10-3/(4.0×10-9) =8.7mΩ に低減した。 【0082】 得られたパワーアンプモジュールの特性は次の通りである。 入力信号周波数(fin)=1.95GHz 出力電力(Pout)=26.5dBm 電力付加効率(PAE)=43% 隣接チャンネル漏洩電力比(ACPR) ACPR1=−40dBc以下(at 5MHz) ACPR2=−50dBc以下(at 10MHz) 【0083】 <考察> 比較例との対比において、実施例では、インダクタL5、L6を構成する導体パターンの直流抵抗が1/2に低減された。この結果、同じ出力電力を得るのに、電力増幅素子212、214に供給される直流電流が低減され、これにより、パワーアンプモジュールの電力付加効率が3%向上した。 【0084】 更に図3を参照し、パワーアンプモジュールにおけるアイソレーションについて説明する。MMIC20を構成する電力増幅素子212、214について、インダクタL6が後段の電力増幅素子214の出力に接続され、インダクタL5が前段の電力増幅素子212に接続されるので、後段の電力増幅素子214に帰還ループが生じ、発振する。このため、MMIC20の最大増幅度A(dB)に対し、−A(dB)未満のアイソレーションが必要となる。通常、MMICの増幅度は35dB(max)なので、−35dB未満のアイソレーションが必要となる。 【0085】 そこで、図4〜図12に示した多層基板7では、機能層74−73間に第2の接地電極GND2を配置し、これにより、機能層71〜73に形成された導体パターン、例えば、キャパシタC1、C4のキャパシタ電極C12、C42との間で、インダクタL5、L6の導体パターンにアイソレーションを施してある。更に、機能層77の裏面に第4の接地電極GND4を配置し、これにより、機能層77の下側に位置するマザーボード上の導体パターンとの間で、インダクタL5、L6の導体パターンにアイソレーションを施してある。 【0086】 実施例において、多層基板7は、機能層71〜77を含んでおり、機能層71〜77は、有機樹脂材料と機能材料粉末との混合材料からなるから、セラミック多層基板と異なって、反りを発生することがなく、曲げ強度が大きく、破損、割れ等を生じにくい。 【0087】 機能層71〜73及び機能層75〜77は、有機樹脂材料と機能材料粉末との混合材料からなり、ガラス繊維等の補強成分を含まないから、例えば、一層当り、40μm以下まで、著しく薄くすることができる。従って、薄型化が可能であると共に、信頼性向上にも寄与し得る。機能層71〜73及び機能層75〜77は、機能材料粉末を含むから、電気的特性に優れた機能材料粉末を選択し、有機樹脂多層基板に比較して、優れた電気的特性を確保することができる。 【0088】 また、多層基板7は、ガラス繊維を含有する有機質層である機能層74を、コア層として有しており、機能層74の一面に機能層71〜73を順次に隣接させ、機能層74の他面に機能層75〜77を順次に隣接させ、ビルドアップ層として構成してあるから、機能層71〜73及び機能層75〜77の層厚を薄くして薄型化を図りつつ、機能層74により機械的強度を確保し、全体として、薄型で、機械的強度の大きな高信頼度のパワーアンプモジュールを得ることができる。 【0089】 有機樹脂材料は、成形性、加工性、積層接着性、及び電気的特性に優れた材料の中から適宜選択される。具体的には、有機樹脂材料として熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂等の少なくとも一種を用いることができる。熱硬化性樹脂の具体例としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ビスマレイミドトリアジン(シアネートエステル)樹脂、ポリフェニレンエーテル(オキサイド)樹脂、フマレート樹脂、ポリブタジエン樹脂またはビニルベンジル樹脂などが挙げられる。 【0090】 熱可塑性樹脂の具体例としては、芳香族ポリエステル樹脂、ポリフェニレンサルファイド樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンサルファイド樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリアリレート樹脂またはグラフト樹脂などが挙げられる。 【0091】 以上列挙された樹脂は、単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。2種以上を混合して用いる場合、混合比は任意である。 【0092】 次に、機能材料粉末としては、誘電体粉末または磁性体粉末の少なくとも一種を用いることができる。誘電体粉末または磁性体粉末については、各機能層71〜77に要求される特性に応じて適宜選択すればよい。誘電体粉末としては、下記のセラミックス粉末が挙げられる。 【0093】 BaO−TiO2−Nd2O3系セラミックス、BaO−TiO2−SnO2系セラミックス、PbO−CaO系セラミックス、BaTiO3系セラミックス、PbTiO3系セラミックス、SrTiO3系セラミックス、CaTiO3系セラミックス、Al2O3系セラミックス、BiTiO4系セラミックス、MgTiO3系セラミックス、(Ba,Sr)TiO3系セラミックス、Ba(Ti,Zr)O3系セラミックス、BaTiO3−SiO2系セラミックス、BaO−SiO2系セラミックス、CaWO4系セラミックス、Ba(Mg,Nb)O3系セラミックス、Ba(Mg,Ta)O3系セラミックス、Ba(Co,Mg,Nb)O3系セラミックス、Ba(Co,Mg,Ta)O3系セラミックス、Mg2SiO4系セラミックス、ZnTiO3系セラミックス、SrZrO3系セラミックス、ZrTiO4系セラミックス、(Zr,Sn)TiO4系セラミックス、BaO−TiO2−Sm2O3系セラミックス、PbO−BaO−Nd2O3−TiO2系セラミックス、(Bi2O3,PbO)−(BaO)−TiO2系セラミックス、La2Ti2O7系セラミックス、Nd2Ti2O7系セラミックス、(Li,Sm)TiO3系セラミックス、Ba(Zn,Ta)O3系セラミックス、Ba(Zn,Nb)O3系セラミックス、Sr(Zn,Nb)O3系セラミックス。 【0094】 磁性体粉末としては、フェライト粉末や金属磁性体粉末を用いることができる。 【0095】 好ましくは、有機樹脂材料と機能材料粉末とを混合するにあたり、機能材料粉末の含有量が40〜60vol%の範囲を満たすようにする。この混合材料によれば、比誘電率7〜14及び誘電正接0.01〜0.002を実現することができる。 【0096】 混合材料の好ましい一例としては、有機樹脂材料としてビニルベンジル樹脂を、機能材料粉末としてBaO−TiO2−Nd2O3系セラミックス粉末を用いた混合材料が挙げられる。セラミック粉末は、高周波領域(f=1〜5GHz)においてビニルベンジル樹脂よりも大きい比誘電率及びQを示すものであればよく、2種類以上のセラミック粉末を含有していてもよい。セラミック粉末の含有量により、基板材料の特性(比誘電率εr、誘電正接tanδ)が下記のように制御される。 【0097】 <制御の一例> 比誘電率εr=7.0〜14.0、Q=100〜500(誘電正接tanδ=1/Q)を実現したい場合、BaO−TiO2−Nd2O3系セラミックスの含有率a(wt%)、及び、ポリビニルベンジルエーテル化合物の含有率b(wt%)について、 a:b=70wt%:30wt%〜40wt%:60wt% を満たすように混合すればよい。 【0098】 機能層71〜73、75〜77において、更に、難燃剤を添加してもよい。難燃剤の具体例としては、テトラブロモジフェノールA変形ポリビニルベンジルエーテル化合物を挙げることができる。 【0099】 次に、機能層74に用いられるガラスクロス材料は、SiO2を主成分とするもので、多層基板7の骨格を形成する役割を担う。機能層74は、このガラスクロス材を核とし、これに上述した有機樹脂材料または混合材料を含浸させて構成することができる。利用できるガラスクロスの組成例を下に示す。 【0100】 <ガラスクロスの組成例> SiO2:56wt% MgB2O3:10wt% Al2O3:17wt% CaO:17wt% 機能層74においても、難燃剤を添加することができる。難燃剤の具体例としては、上述したテトラブロモジフェノールA変形ポリビニルベンジルエーテル化合物を挙げることができる。 【0101】 本発明は、パワーアンプモジュールに限らず、多層基板を用いた回路モジュールに広く適用できる。上述したパワーアンプモジュールとは異なる他の適用例として、以下にVCO(電圧制御発振器)を示す。 【0102】 図13は、VCOの回路図である。VCOの回路構成自体は周知のものである。図示されたVCOは、バリキャップダイオードD1と、キャパシタC13〜C21と、インダクタL11〜L13と、抵抗R11〜R14と、トランジスタ(能動素子)TR1、TR2とを含んでいる。 【0103】 入力端子T11に供給された電圧制御信号Vtは、インダクタL11を介して、バリキャップダイオードD1に供給される。バリキャップダイオードD1の後段には、インダクタL12及びキャパシタC16による共振回路が接続されており、共振回路の後段には、キャパシタC15を介して、負性抵抗回路が接続されている。負性抵抗回路は、トランジスタTR1、TR2、キャパシタC17〜C20と、インダクタL13と、抵抗R11〜R14とを含む発振回路である。発振回路は、共振回路の回路定数、バリキャップダイオードD1の有する容量値、キャパシタC12、C17〜C20を発振定数として発振動作をし、キャパシタC21を介して、出力端子T13から発振信号を出力する。端子T12には、直流電圧Vccが供給されている。 【0104】 図14は、図13に示したVCOモジュールの層構成の一例を示す部分断面図である。図示されたVCOモジュールは、多層基板7が、7つの機能層71〜77を積層した構造となっている。これらの機能層71〜77は、シート積層法(スタック法)、ビルドアップ法または塗布法によって形成される。 【0105】 機能層74はコア層である。コア層を構成する機能層74は、ガラス繊維を含有する有機質層である。機能層74は、具体的には、ガラス繊維入りであり、選択された有機樹脂材料と機能材料粉末との混合材料層で構成される。 【0106】 機能層74の上層に位置する機能層71〜73、及び、機能層74の下層に位置する機能層75〜77は、有機樹脂材料と機能材料粉末とを混合した混合材料からなる。機能層71〜73、75〜77は、機能層74と異なって、ガラス繊維を含んでおらず、選択された有機樹脂材料と機能材料粉末との混合材料層で構成されている。 【0107】 機能層71の表面には、図13に図示されたバリキャップダイオードD1、キャパシタC12〜C15、抵抗R11〜R14及びトランジスタTR1、TR2が搭載されている。 【0108】 キャパシタC16〜C21及びインダクタL11〜L13は、多層基板7の内部に埋設されている。図13では、内部埋設を明らかにするため、これらの素子を、点線包枠で表示してある。より具体的に説明すると、機能層71と機能層72との間には、インダクタL11、L13が形成されている。機能層72と機能層73との間、及び、機能層73と機能層74との間には、図13に図示されたキャパシタC16〜C21が形成されている。機能層74と機能層75との間には接地電極GND5が形成されている。更に、機能層76と機能層77との間には、インダクタL12が形成され、機能層77の底面には接地電極GND6、及び、端子T11〜T13が形成されている。 【0109】 図15は、図14に示したVCOモジュールの一部を拡大して示す図である。図15を参照すると、インダクタL11(又はL13)を構成する導体パターンの厚みt1、及び、絶縁層711の厚みt2について、 t1>t2 を満たす。即ち、インダクタL11(又はL13)を構成する導体パターンの厚みt1が絶縁層711の厚みt2よりも大きい。実施例の場合、厚みt1、t2は、それぞれ、40μm、2.0μmである。 【0110】 かかる厚み設定によれば、各機能層71〜77の層厚が制約されていても、インダクタL11(又はL13)を構成する導体パターンについて断面積を増大させることが容易となり、この断面積増大により、直流抵抗を更に低減でき、導体損失も更に低減できる。従って、Q値を向上させるとともに、電力付加効率を更に向上させることができる。 【0111】 また、本発明では、上記式と選択的にまたは追加的に、インダクタL11(又はL13)を構成する導体パターンの厚みt1、及び、絶縁層711を挟んでインダクタL11(又はL13)の導体パターンと対向する他の導体パターンP4の厚みt4について、 t1>t4 を満たしていてもよい。即ち、インダクタL11(又はL13)を構成する導体パターンの厚みt1が、インダクタL11(又はL13)の導体パターンと対向する他の導体パターンP1の厚みt4よりも大きい。実施例の場合、厚みt1、t4は、それぞれ、40μm、18μmである。 【0112】 かかる厚み設定によれば、各機能層71〜77の層厚が制約されていても、インダクタL11(又はL13)を構成する導体パターンについて断面積を増大させることが容易となる。従って、Q値を向上させるとともに、電力付加効率を更に向上させることができる。 【0113】 また、本発明では、インダクタL11(又はL13)を構成する導体パターンと、他の導体パターンとに挟まれた絶縁層711の厚みt2、及び、他の機能層72に備えられた絶縁層721の厚みt3について、 t2<t3 を満たす。即ち、インダクタL11(又はL13)の導体パターンと、他の導体パターン、即ち、キャパシタC16〜C21の電極を構成する導体パターンとに挟まれた絶縁層721の厚みt2が、他の機能層72に備えられた絶縁層721の厚みt3よりも小さい。実施例の場合、厚みt2、t3は、それぞれ、2.0μm、22μmである。 【0114】 かかる厚み設定によれば、各機能層71〜77の層厚が制約されていても、インダクタL11(又はL13)を構成する導体パターンについて厚みt1を増大させることが容易となるから、断面積を増大させることも容易となる。従って、Q値を向上させるとともに、電力付加効率を更に向上させることができる。 【0115】 以上、実施の形態について説明してきたが、本発明は、これに限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載内において、種々の変形、変更が可能である。 【図面の簡単な説明】 【0116】 【図1】本発明に係る回路モジュールの一形態であるパワーアンプモジュールが用いられるデジタル移動体通信機器における高周波回路部の構成を示すブロック図である。 【図2】本発明に係る回路モジュールの一形態であるパワーアンプモジュールが用いられる電力増幅回路部PWAの詳細を示すブロック図である。 【図3】本発明に係る回路モジュールの一形態であるパワーアンプモジュールの具体的な回路構成を示す回路図である。 【図4】図2、3に示したパワーアンプモジュールの構成を示す部分断面図である。 【図5】図4に示したパワーアンプモジュールにおいて、多層基板の最上層を表面からみた平面図である。 【図6】図5に示した層と隣接する次の機能層の表面を示す平面図である。 【図7】図6に示した層と隣接する次の機能層の表面を示す平面図である。 【図8】図7に示した層と隣接する次の機能層の表面を示す平面図である。 【図9】図8に示した層と隣接する次の機能層の表面を示す平面図である。 【図10】図9に示した層と隣接する次の機能層の表面を示す平面図である。 【図11】図10に示した層と隣接する最下層の表面を示す平面図である。 【図12】図11に示した最下層の裏面を示す平面図である。 【図13】VCOの回路図である。 【図14】図13に示した回路構成を持つVCOモジュールの層構成の一例を示す部分断面図である。 【図15】図14に示したVCOモジュールの一部を拡大して示す図である。 【符号の説明】 【0117】 71〜77 機能層 216 直流バイアス回路 L11、L13 インダクタ 212、214 能動素子
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003067 【氏名又は名称】TDK株式会社 【住所又は居所】東京都中央区日本橋1丁目13番1号
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| 【出願日】 |
平成16年6月30日(2004.6.30) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100081606 【弁理士】 【氏名又は名称】阿部 美次郎
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| 【公開番号】 |
特開2005−39263(P2005−39263A) |
| 【公開日】 |
平成17年2月10日(2005.2.10) |
| 【出願番号】 |
特願2004−194497(P2004−194497) |
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