| 【発明の名称】 |
電波吸収体 |
| 【発明者】 |
【氏名】畠山 賢一
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| 【要約】 |
【課題】導電短繊維を誘電体に分散した短繊維分散層を用いると、安価で透明性のある電波吸収体を構成できる可能性があったが、そのためには短繊維分散層のアドミタンスに含まれるサセプタンス成分を除去する必要があった。
【解決手段】 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 長さ0.5mm〜100mm、アスペクト比10以上の導電短繊維を誘電体中に分散した短繊維分散層の表面に、太さ1mm以下の導電線を設計周波数における1/2波長以下の間隔で平行、あるいは格子状に配列して装着することを特徴とする導電層。 【請求項2】 長さ0.5mm〜100mm、アスペクト比10以上の導電短繊維を、1枚のフィルム状誘電体表面に付着させるかあるいは2枚のフィルム状誘電体で挟み込んで構成する短繊維分散層に、太さ1mm以下の導電線を設計周波数における1/2波長以下の間隔で平行、あるいは格子状に配列して装着することを特徴とする導電層。 【請求項3】 太さ1mm以下の導電線を設計周波数における1/2波長以下の間隔で誘電体薄板内部に平行、あるいは格子状に配列してなる層を、請求項1,2のいずれかに記載の短繊維分散層に積層することを特徴とする導電層。 【請求項4】 1/4波長厚みの誘電体の片側面あるいは両側面に請求項1、2、3のいずれかに記載の導電層を装着することを特徴とする電波吸収体。 【請求項5】 1/4波長厚みの誘電体の片側面に請求項1、2、3のいずれかに記載の導電層を装着し、該誘電体のもう一方の面に反射板を装着することを特徴とする電波吸収体。 【請求項6】 導電短繊維を分散する誘電体、導電短繊維を付着させるフィルム状誘電体、導電線を内部に配列する誘電体、および1/4波長厚みの誘電体は光学的に透明な材料であることを特徴とする請求項4、5に記載の電波吸収体。
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【発明の詳細な説明】【発明の詳細な説明】 【技術分野】 【0001】 本発明は電波吸収体に関するものである。 【背景技術】 【0002】 電波吸収体を構成する損失材は各種知られており、例えばカーボン粉や金属粉の粒状、箔状の導電物質を種々の誘電体に分散した材料、あるいは金属線などの導電短繊維を誘電体に分散した導電短繊維分散材(以下、短繊維分散材と称する)が既に実用に供せられている(特許文献1、2)。 【特許文献1】 特公昭64−4677号公報 【特許文献2】 特公平2−18597号公報 【0003】 電波吸収体の構成法は幾つか知られており、その中でも1/4波長形電波吸収体は構成法が簡単なためよく用いられている。 【0004】 採光が必要な窓等を電波吸収体で構成するには透明な電波吸収体が必要である。これまで、透明な1/4波長厚みの誘電体を用い、電磁波入射側面に装着する導電層、もう一方の面に装着する反射板の両方にITO(酸化インジウムチタン)の針状結晶を分散した透明導電薄膜を用いる1/4波長形電波吸収体が提案されている(特許文献3)。 【特許文献3】 特開平5−335832号公報 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本発明の目的は安価な材料を用いた電波吸収体用の導電層、およびこれを用いた電波吸収体、さらに透明な導電層を用いた透明電波吸収体を提供することにある。金属粉やカーボン粉などの導電粒子を分散した導電層は、該導電粒子の分散量が多いために透明性は得られない。一方上記ITOを分散した透明導電薄膜は透明性に優れるが高価であるという問題があった。これに対し、短繊維分散材は導電短繊維として例えば銅、黄銅、ステンレスなど通常よく用いられる素材の導電短繊維を使用するために安価な電波吸収材料であり、かつ該導電短繊維の分散量は母材となる誘電体に対し重量比で数%以下という微量で済む特徴があるので該導電短繊維同士の間の隙間が広く、透明な誘電体を母材として用いれば透明性のよい導電層が得られる可能性がある。 【0006】 しかし、短繊維分散材の誘電率はその虚数部だけでなく実数部も大きい。このことが原因で短繊維分散材を波長に比べて薄い層に成形したときの等価的なアドミタンスはその実数部であるコンダクタンスだけでなく虚数部であるサセプタンスも大きくなってしまう。電波吸収体用の導電層としてはサセプタンスが0、あるいはサセプタンスがコンダクタンスよりも非常に小さく、実質的にコンダクタンスのみとして扱えることが必要であり、もしサセプタンスを考慮しなければならないとすると電波吸収体の設計が複雑になってしまう。すなわち、短繊維分散材はこのままでは電波吸収体用の導電層材料としては適切ではなく、何らかの方法でサセプタンスを消去する必要があった。 【課題を解決するための手段】 【0007】 発明者は短繊維分散材を波長に比べて薄く成形した層(以下、短繊維分散層と称する)の表面に導電線を一定間隔で平行に配列すれば安価で特性の安定な導電層が得られ、かつ透明な導電層が得られるとの着想に至った。さらに、透明な導電層を使用すれば透明な電波吸収体の構成が可能である。以下に図を用いて詳しく説明する。 【0008】 図1は導電短繊維をランダムな方向を向くように分散した短繊維分散層1の表面に、導電線2を等間隔dで平行に配列してなる導電層である。等間隔で導電線2を配列した部分を該導電線の太さを厚みとする均一な層と見なし、以下、導電線配列層と称する。入射波はその電界振動面が導電線2に平行であり、短繊維分散層1に垂直に入射するものとする。 【0009】 図1に示す短繊維分散層1、導電線配列層それぞれのアドミタンスを図2のアドミタンスチャートに示す。アドミタンスチャートの中心点は空間のアドミタンスY0(=1/376 1/Ω)である。ある周波数における短繊維分散層1、および導電線配列層各々のアドミタンスを測定すると図2に示すYs(=Gs+jBs)、Yd(=jBd)である。発明者は、Ysはチャートの下側領域(Bs>0)にあり、一方Ydはチャートの上側領域(Bd<0)にあることに着目した。 【0010】 図2に示すアドミタンス特性を等価回路で説明する。短繊維分散層1の厚さが自由空間波長よりも十分に薄ければ、その電波的特性は伝送線路に並列に挿入されたアドミタンスで近似的に表わすことができる。図3に示すのは短繊維分散層1の等価回路であり、コンダクタンスGsとサセプタンスBsの並列接続で表わされる。GsBsと短繊維分散層1の比誘電率εs(=εs’−jεs”)との関係は、 Gs=Y0(2πds/λ0)εs” (1) Bs=Y0(2πds/λ0)εs’ (2) である。ここでλ0は自由空間波長、dsは短繊維分散層1の厚さである。 【0011】 εs(=εs’−jεs”)は、短繊維分散層1を均一な媒質と見なしたときの比誘電率である。電磁波が入射したとき、短繊維分散層1内部の各導電短繊維に電流が誘導され、さらにこのことによって導電短繊維両端に電荷が生じ、その結果、導電短繊維に分極が生じる。電流は導電短繊維に流れるのであるが、短繊維分散層1全体に平均的に電流が流れると見なすことができ、電流による損失分を表す比誘電率虚数部εs”を大きくする。また、導電短繊維に生じる分極は母材となる誘電体自身の分極と足し合わされて、短繊維分散層1の比誘電率実数部εs’を大きくする。 【0012】 以上述べたように、導電短繊維に電流が誘導されることによって短繊維分散層1のεs’、εs”の双方の値が大きくなる。このとき、εs’<<εs”の関係が成立せず、したがって(l)、(2)式からわかるように、Bs<<Gsではないためにこのままでは電波吸収体用の導電層としては適切ではない。 【0013】 なお、導電短繊維と比誘電率の関係については以下のことが知られている。導電短繊維の密度(単位体積あたりの本数)が大きくなるにつれて、短繊維分散層1全体に平均的に流れる電流、分極とも大きくなるのでεs’、εs”とも大きくなる傾向を有する。 【0014】 図4に示すのは導電線配列層の等価回路であり、そのアドミタンスYdはサセプタンスBdのみで表わされる。導電線配列間隔dを変えてdとBdの関係を実験的に検討した結果では、導電線配列間隔dがλ0/2>dである塲合はBd<0であった。 【0015】 Bd<0である現象を図5を用いて説明する。説明のために、座標軸を図に示すようにとり、2軸方向に電磁波が入射するものとする。図5においてEは電界、Hは磁界を表す。導電線配列層を比誘電率εdの均一な層と近似して考えるとき、媒質内波長はλ0/(εd)1/2で与えられるので導電線配列層内部でのz方向伝搬定数βzは、 βz=(2π/λ0)(εd)1/2 (3) である。 【0016】 次に導電線の影響を考慮してβzを導く。一般に、自由空間でのz方向伝搬定数βzは、X方向、y方向への伝搬定数βx、βyと、 βz2+βx2+βy2=(2π/λ0)2 (4) の関係にある。図5に示すように導電線2が配列されている状態では、導体表面では電界の接線成分が0になるという電磁波の境界条件により、導電線2の表面では電界は0になる。これにより、電界は図5に模擬的に示すようにy方向に周期的に分布するようになる。図5に示す電界分布はあたかもyの正方向、および負方向に伝搬する2つの伝搬成分が存在してその合成としての定在波が発生していると見ることができる。その波長λyは、導電線2の太さが配列間隔dに比べて無視できるくらいに細いとすると、λy=2dであるのでβy=π/dである。X方向には電磁界の変化がないのでβx=0であるから、(4)式よりβzを求めると、 βz=(2π/λ0){1−(λ0/2d)2}1/2 (5) となる、(3)、(5)式を比較することで導電線配列層を均質な媒質と見なしたときの等価的な比誘電率εdが次のように得られる。 εd=1−(λ0/2d)2 (6) これより、導電線配列間隔dがλ0の1/2未満であればεdは負の値になる。εdは実数であり、(2)式から類推されるようにεdが負であればサセプタンスBdも負になる。 【0017】 以上説明したように、短繊維分散層1ではそのサセプタンスBsは正であり、一方導電線配列層のサセプタンスBdはd<λ0/2であれば負であることに着目する。この2つの層を積層し、導電層とする。そのときの等価回路である図6より、 Bs+Bd=0 (7) の条件を満たすようにすれば、図7に示すようにコンダクタンスGsのみが残り、サセプタンス成分のない導電層が得られる。 【0018】 電波吸収体を構成するためにはGsを所望の値に調整しなければならない。Gsの値は短繊維分散層1の導電短繊維の分散量を調整することで可能である。このとき、サセプタンスBs同時に変化するが、導電線配列層の配列間隔dを調整することで比誘電率εdを調整することができ、Bdを所望の値に設定でき、(7)式の条件を満たすことが可能である。 【発明を実施するための最良の形態】 【0019】 以下、本発明の実施の形態を説明する。導電線配列層は図8に示すように導電線2を誘電体薄板3内部に埋め込んで配列した構造でもよい。この場合、導電線配列層の厚さは導電線2の太さではなく誘電体薄板3の厚さである。また、導電線2を配列する媒質は空気ではなく誘電体薄板3であるから、誘電体薄板3の比誘電率をεfとすると(5)式において{1−(λ0/2d)2}1/2を{εf−(λ0/2d)2}1/2と置き換えればβzが求められ、その結果、導電線配列層の等価的な比誘電率εdはεd=εf−(λ0/2d)2となる。したがって、この場合はεfは通常1よりも大きいので、導電線配列間隔dをλ0の1/2よりもさらに短くし、εf<(λ0/2d)2を満たすとき、εdは負の値になる。 【0020】 図1,図8に示す導電線配列層は入射電磁波の電界振動方向、すなわち偏波面が導電線2と平行な場合のみに影響し、負の誘電率が得られる。もし、導電線2と電界振動面が垂直であれば、導電線配列層は入射電磁波に影響を及ぼさない。実用的には導電線配列層の特性は入射波偏波依存性が無いことが必要であり、そのためには導電線2を直交させて格子状に配列すればよい。図9は短繊維分散層1に導電線を格子状に配列して装着した状態を、図10は誘電体薄板3内部に格子状に配列した導電線2を埋め込んで導電線配列層とする構造を示す。 【0021】 短繊維分散層1において導電短繊維を分散する母材となる誘電体は、損失の小さい誘電体ならば使用可能であり、例えばゴム、あるいはペイントなどを使用することができる。あるいは透明なポリエステル、アクリル、ポリカーボネイト、塩化ビニール、ガラスなどを導電短繊維を分散する母材として用いれば、導電短繊維を分散しても該導電短繊維の隙間が広いので透明性を確保することができる。さらに、透明な誘電体を用いて構成した短繊維分散層1に導電線2を配列しても、該導電線の隙間が広いので透明な導電層を得ることができる。導電線2を内部に埋め込む誘電体薄板3として例えば上記の透明な誘電体材料による薄板を用いれば、透明な導電線配列層が構成でき、これと透明な短繊維分散層1を積層することで透明な導電層を得ることができる。 【0022】 導電層は電磁波入射側から、短繊維分散層1、導電線配列層の順に積層する場合と導電線配列層、短繊維分散層1の順に積層する場合があるが、両者とも同じコンダクタンスが得られるのでどちらの順に積層してもよい。なお、短繊維分散層1の導電短繊維と導電線配列層の導電線2は電気的に接触してはならない。 【0023】 また、短繊維分散層1に分散する導電短繊維は導電性のよい繊維状材料であれば使用可能であって、例えば金属繊維、カーボン繊維、あるいは金属をコーティングした樹脂繊維などが使用可能である。透明性のよい短繊維分散層1を構成するためには導電短繊維分散量をできる限り少なくすることが必要である。導電短繊維の長さが設計周波数での波長のおよそ半分であるときに共振現象が生じ、該導電短繊維によって生じる誘電率虚数部εs”がもっとも大きくなり、導電短繊維分散量が少なくても所望のコンダクタンスを得ることができる。この理由により、導電短繊維長は導電短繊維を分散する誘電体内部での設計周波数における媒質内波長のおよそ1/2とすることが望ましい。 【0024】 導電短繊維を分散する母材として既に述べたように種々の誘電体が使用可能であるが、その比誘電率は2〜10の範囲であることが多い。設計周波数を1GHzとして導電短繊維の長さを見積もると、λ0は300mmであるから、媒質内での1/2波長はおおよそのところ50mmから100mmである。また、設計周波数を100GHzとするとλ0は3mmであるから、媒質内での1/2波長はおよそ0.5mmから1mmである。したがって、本発明において短繊維分散層1に分散する導電短繊維の長さは0.5mmから100mmである。また、導電短繊維が波長のおよそ1/2の長さで共振する現象は理論的には導電短繊維が波長に比べて十分細い場合に生じるとされており、実用的には該導電短繊維のアスペクト比(長さ/太さ)は10以上であればよい。短繊維分散層1の導電短繊維は層平面内でランダ厶な方向を向くように分散することが、入射電磁波の偏波面によってGs、Bsが変わらないので望ましい。 【0025】 短繊維分散層1をアドミタンスで表現し、(1)、(2)式で比誘電率と関連づける近似法は層厚みが波長に比べて薄いほど精度がよく、層厚みは波長の1/10以下であることが望ましい。薄い短繊維分散層1を得るためには、フィルム状誘電体の表面に導電短繊維を接着剤等で付着させる方法、あるいは2枚のフィルム状誘電体の間に導電短繊維を挟み込んで短繊維分散層1を構成する方法もあり、いずれも上記の導電短繊維を誘電体内部に分散してなる短繊維分散層1と同様の特性が得られる。 【0026】 導電線配列層に用いる導電線2は導電性のよい線状物質であればよい。例えば金属線、カーボン繊維、あるいは金属をコーティングした樹脂繊維などが使用可能である。導電線配列層の透明性を確保するためには導電線2はできる限り細いことが望ましく、少なくとも導電線配列間隔dの1/10以下の太さにすることが望ましい。 【0027】 第1の実施の形態 上記導電層を用いた電波吸収体の構成法を以下に示す。図11は1/4波長形電波吸収体の構成であって、1/4波長厚みの誘電体層4の電磁波入射側面に導電層5を装着し、背面に反射板6を装着した構造である。導電層5は実際は短繊維分散層1と導電線配列層の積層であるが、図11では導電層5として単一の層で示してある。図中の矢印は電磁波入射方向を示す。誘電体層4の厚みをde、比誘電率をεeとする。伝送線路理論より、導電層5のコンダクタンスGsを空気層のアドミタンスY0(=1/376 1/Ω)に等しくすれば整合することが導かれる。すなわち、 de=λ0/{4(εe)1/2} (8) Gs/Y0=1 (9) を満たせば整合する。 【0028】 反射板6は通常は金属板を用いることが多いが、金属板と同等な反射特性を持つ材料ならば使用可能である。例えば格子間隔が波長のおよそ1/50以下の金網やあるいは金属細線を縦横に織り込んだ布などは金属板と同等な反射であることが実験的に確認されているので使用できる。反射板6として透明性のある金網等を用い、さらに導電層5として上記の透明導電層を使用し、かつ誘電体層4に同じくアクリル、ポリカーボネイト、ガラス等の透明材料を用いれば透明性を保持した1/4波長形電波吸収体が構成できる。尚、本実施形態では反射板6を使用するために光透過量は少なくなるが、採光の点では窓ガラスの代わりに使用するのに十分である。 【0029】 第2の実施の形態 図12は、導電層5と誘電体層4を用いた電波吸収体を示す。第1の実施の形態に示したように通常、電波吸収体は反射板を背面に用いるのであるが、室内側を電磁波入射面とする場合は該電波吸収体の裏面には屋外に無限に広がる空気層が存在すると仮定できる。この場合、反射板を使用しない設計も可能であり、反射板を使用しない分だけ透明性が増す。 【0030】 図12に示すように電磁波入射面に1/4波長の誘電体層4を設け、背面に導電層5を装着する構造とする。すなわち、等価回路的には誘電体層4の背面には導電層5のコンダクタンスGsと空気層の無限厚み媒質のアドミタンスY0とが並列に接続されていると考えることができる。1/4波長線路による整合理論により誘電体層4の入射側面での整合条件を求めると、その比誘電率εeは、 εe=1+Gs/Y0 (10) であることが必要である。誘電体層4の厚みdeは(8)式で与えられる。(10)式を満たすようにεeとGsを設定すれば(8)式を満たす周波数に於いて電波吸収体を構成することができる。 【0031】 Gs/Y0を設定するとき、(10)式を満たせばよいが、Gsを大きい値にするほど短繊維分散層1に分散する導電短繊維量が増え、透明性を確保する点では不利であるのでGsはできる限り小さい値であるのが望ましい。逆に誘電体層4の厚みの点では、Gsを大きい値にするほどεeは大きい値になり、(8)式からわかるように誘電体層4の厚みdeは薄くなるので、Gsは大きい値であるのが望ましい。誘電体層4としては既に第1の実施の形態に述べたように、各種の誘電体が使用可能であるが、その比誘電率εeはおよそ2<εe<10であることが多く、これよりGs/Y0は1<GsY0<9の範囲にある。 【0032】 第3の実施の形態 図13は1/4波長厚みの誘電体層4の電磁波入射側面に導電層5aを、背面に導電層5bを装着した構造の電波吸収体である。等価回路的には誘電体層4の入射側面には導電層5aのコンダクタンスGsaが、背面には導電層5bのコンダクタンスGsbと空気層のアドミタンスY0が並列に接続されている。伝送線路理論より、導電層5a表面での整合条件を求めると、 εe=(1−Gsa/Y0)(1+Gsb/Y0) (11) であることが導かれる。誘電体層4の厚みdeは(8)式で与えられる。εeは正の値なので、(11)式よりGsa/Y0<1でなければならない。したがって、Gsa/Y0<1であり、かつ(11)式を満たすようにεe、Gsa、Gsbを設定すれば(8)式を満たす周波数に於いて電波吸収体を構成することができる。本実施の形態の電波吸収体は、Gsaを0に設定すれば第2の実施の形態と同じ構成になる。 【0033】 Gsa/Y0、Gsb/Y0をいくらに設定するかはGsa/Y0<1であり、かつ(11)式を満たす範囲で任意である。Gsa/Y0を1に近い値に設定するとGsbを非常に大きい値に設定しなければならず、Gsbを大きい値にするほど導電層5bの短繊維分散層に分散する導電短繊維量が増えるので、透明な導電層とする場合には透明性を確保する点で不利である。また、Gsa/Y0を0に近い値に設定すると、第2の実施の形態と実質上同じ構成になってしまう。さらに、誘電体層4の比誘電率εeは第2の実施の形態で述べたようにおよそ2<εe<10であることが多いことを考慮すると、0.2<Gsa/Y0<0.8であり、かつ1<Gsb/Y0<9の範囲に設定するのが望ましく、この範囲より(11)式を満たす組み合わせを選べばよい。 【実施例】 【0034】 太さ70μmのポリエステル繊維に銀をコーティングした長さ25mmの導電短繊維を、厚み100μmの2枚の透明なポリエステルフィルムの間に分散して短繊維分散層1とした。このときの短繊維分散量は重量比で0.4%である。アドミタンスの測定により、4.7GHzでは、Ys/Y0=(Gs+jBs)/Y0=0.71+j0.52であった。この度の短繊維分散量では十分な透明性が得られることを確認した。次に、太さ70μmのポリエステル繊維に銀をコーティングした繊維を導電線2とし、d=15mmの間隔で上記短繊維分散層1に配列して接着し、図1に示す構造の導電層とした。導電線配列層のみのアドミタンスを測定したところ、4.7GHzでのYd/Y0、すなわちjBd/Y0は−j0.55であった。したがって、47GHzでは(Ys+Yd)/Y0は0.71−j0.03であり、コンダクタンスに比べてサセプタンスが非常に小さい透明な導電層が得られ、近似的にコンダクタンス成分のみを有する導電層として扱えることを確認した。 【0035】 1/4波長の誘電体層としてεe=2.7、厚みが10.0mmの透明なアクリル板を用いた。4.7GHzでの波長λ0は63.8mmであり、(8)式によって計算した誘電体層の厚みは9.7mmであるのでほぼ(8)式を満たす誘電体層になっている。 【0036】 この誘電体層の片側面に上記導電層を装着し、もう一方の面から電磁波を照射して反射係数を測定した。すなわち、第2の実施の形態の構成の電波吸収体とした。測定結果を図14に示す。同図に示すように4.7GHzでは反射係数が0.1以下となっており、所望の電波吸収特性が得られ、透明性も確保されていることを確認した。 【発明の効果】 以上述べたように、短繊維分散層に導電線配列層を積層することにより、サセプタンス成分がなくコンダクタンス成分のみの導電層が可能であり、さらに透明な導電層が可能である。これを利用して透明な電波吸収体が可能である。 【図面の簡単な説明】 【図1】 短繊維分散層に導電線配列層を装着した図である。 【図2】 短繊維分散層、および導電線配列層のアドミタンスをアドミタンスチャートに示した図である。 【図3】 短繊維分散層の等価回路である。 【図4】 導電線配列層の等価回路である。 【図5】 導電線配列層において導電線間に定在波が生じることを示す図である。 【図6】 短繊維分散層と導電線配列層を積層したときの等価回路である。 【図7】 短繊維分散層と導電線配列層のサセプタンス成分が打ち消しあったときの等価回路である。 【図8】 導電線を誘電体薄板内部に配列することを示す図である。 【図9】 導電線を格子状に配列して構成した導電線配列層を短繊維分散層に装着することを示す図である。 【図10】 誘電体薄板内部に導電線を格子状に配列して構成した導電線配列層の図である。 【図11】 l/4波長厚みの誘電体層の電磁波入射側面に本発明の導電層を装着し、もう一方の面に反射板を用いた電波吸収体の構成図である。 【図12】 1/4波長厚みの誘電体層の片面に本発明の導電層を装着し、もう一方の面から電磁波を入射する電波吸収体の構成図である。 【図13】 1/4波長厚みの誘電体層の両面に本発明の導電層を装着する電波吸収体の構成図である。 【図14】 実施例の電波吸収体の反射係数である。 【符号の説明】 1:短繊維分散層 2:導電線配列層の導電線 3:導電線を配列する誘電体薄板 4:1/4波長厚みの誘電体層 5、5a、5b:導電層 6:反射板 d:導電線の配列間隔 Y0:空間のアドミタンス Ys:短繊維分散層のアドミタンス Yd:導電線配列層のアドミタンス Gs:短繊維分散層のコンダクタンス Bs:短繊維分散層のサセプタンス Bd:導電線配列層のサセプタンス
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| 【出願人】 |
【識別番号】503005180 【氏名又は名称】畠山 賢一
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| 【出願日】 |
平成15年7月10日(2003.7.10) |
| 【代理人】 |
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| 【公開番号】 |
特開2005−33151(P2005−33151A) |
| 【公開日】 |
平成17年2月3日(2005.2.3) |
| 【出願番号】 |
特願2003−293979(P2003−293979) |
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