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【発明の名称】 電磁接触器の可動接触子の製造方法
【発明者】 【氏名】浅井 竜彦
【住所又は居所】神奈川県横須賀市長坂二丁目2番1号 富士電機アドバンストテクノロジー株式会社内
【課題】ロウ付けの接合不良発生を抑止して良品率の向上が図れるように改良した電磁接触器の可動接触子の製造方法を提供する。

【解決手段】両端に一対の接点2を設けた銅製になる短冊形導電板1の背面に鋼製(例えばSPCC製)の補強台金3を重ね合わせてロウ付けした電磁接触器の可動接触子を次記のような方法で製造する。すなわち、あらかじめ補強台金3の板面二箇所に台形状の位置決め用ダボ3a,導電板1には前記ダボが嵌合するダボ穴1aを形成するとともに、ロウ材として厚さtが前記ダボの高さhよりも薄く、かつ導電板の外形に対応したサイズに裁断して所定位置にダボ嵌挿穴4aを穿孔したシート状のロウ材4を用意し、ロウ付け工程では導電板1の上にシート状のロウ材4を挟んで補強台金のダボ3aの先端部が導電板のボス穴1aに嵌入した状態に重ね合わせトレー状の治具7に炉組し、この状態で真空加熱炉に通炉して炉中ロウ付けを行う。これにより、ロウ材が導電板1と補強台金3との重なり面全域の隅々まで流動して隙間を残さないよう接合した良品の可動接触子が得られる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に一対の接点を設けた銅製になる短冊形導電板の背面に鋼製の補強台板を重ね合わせてロウ付けした電磁接触器の可動接触子の製造方法であって、
あらかじめ補強台金の板面に位置決め用のダボ,導電板には前記ダボが嵌合するダボ穴を形成するとともに、ロウ材として厚さが前記ダボの高さよりも薄く、かつ導電板の外形に対応したサイズに裁断して所定位置にダボ嵌挿穴を形成したシート状のロウ材を用意し、ロウ付け工程では導電板の上に前記シート状のロウ材を挟んで補強台金を定位置に重ね合わせ、炉中にてロウ付けを行うことを特徴とする可動接触子の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の可動接触子の製造方法において、補強台金の長手方向に沿った板面二箇所に台形状のダボを形成したことを特徴とする可動接触子の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁接触器の接点機構に備えた橋絡形可動接触子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、電磁接触器では接点機構の可動接触子として、導電板の両端に一対の可動接点を備えた橋絡形の可動接触子を接触子ホルダに搭載し、操作用電磁石と復帰バネにより可動接触子を開極,閉成位置に駆動操作するようにしており、かつ接点の閉成位置ではさらに可動接触子をバネ付勢して可動接点を固定接点に押圧し、主回路電流の通電に必要な接触圧を接点間に加えるようにしている。
前記の可動接触子は閉極動作時に大きな操作力が加わることから、必要な機械的強度(剛性)を確保するために、銅材の導体板の背面にSPCC(普通鋼冷延鋼板)などの銅に比べて剛性の高い鋼板で作られた補強用の台板を重ね合わせて両者の間をロウ付けした積層形の接触子構造が知られている(例えば、特許文献1参照)。
図2は前記した積層形可動接触子の構造図であり、1は銅製になる短冊形の導電板、2は導電板1の下面両端にロウ付けした可動接点、3は導電板1の背面に重ね合わせてロウ付けした肉厚が1mm程度であるSPCCなどの鋼製補強台金、4は導電板1と補強台金3とを接合するロウ材(銀ロウ)、5は導電板1に接点2を接合するロウ材(銀ロウ)であり、これらで橋絡形の可動接触子6を構成している。
【0003】
次に、前記可動接触子6の従来における製造方法を図3〜図5により説明する。すなわち、補強台金3には長手方向に沿った二箇所に図示のように二段形状の台形突起になるダボ3aをプレス加工により形成し、導電板1には前記ダボ3aに対応するダボ穴1aを加工しておき、二段形状のダボ3aをダボ穴1aに嵌合して位置決めを行うようにしている。ここで、ダボ3aの突き出し高さは補強台金3の肉厚(1mm)の同程度としてその二段形状によりダボ穴1aに嵌入し易くしている。また、ロウ材4には板状のロウ材(市販品)を所定の大きさに裁断して使用している。また、ロウ材5は、例えば圧延処理などにより、あらかじめ接点2の導電板1側の面に被着しておく。
そして、ロウ付け工程では、先ず図3のようにトレー状の組立治具(カーボン製)7にロウ材5が着地された接点2,導電板1,ロウ材4,補強台金3を順に積み重ねて定位置にセット(炉組)した上で、これを真空加熱炉に通炉して導電板1/接点2,および導電板1/補強台金3の間を同時にロウ付けして図2の可動接触子6を得る。
【特許文献1】特開平11−232980号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前記した従来の製造方法で製作した可動接触子のうち、接合不良が生じた可動接触子を調べて見ると、図5で示すように可動接触子の先端側で導電板1と補強台金3との間の広範囲な領域Gで隙間gが残ったままとなっている。
そこで、発明者等は前記した接合不良の発生要因について究明したところ、導電板1,補強台金3の反り,治具上でのセット位置のずれなどのほか、次のことが接合不良の発生原因に関与していることか判明した。すなわち、炉中でのロウ付け工程の加熱昇温により導電板1の中央部位に集中して載置した肉厚のシート状ロウ材4(図3参照)が溶融すると、理想的にはロウ材の溶融に伴い補強台金3が自重により沈み込んでタブ3aがタブ穴1aに嵌入するとともに、溶融したロウ材は表面張力により導電板1と補強台金3との間の縮小した隙間に流動,拡散し接触子の先端まで殆ど隙間を残さずにロウ付けされる。
【0005】
ところが、銅製の導電板1とSPCCなどの鋼製の補強台金3とは熱膨張係数が異なる(銅の膨張係数はSPCCの略1.6倍)ことから、図5で表すように導電板1の熱膨張(矢印A)と補強台金3の熱膨張(矢印B)との差によって可動接触子の長手方向に相対的なずれが生じる。このために、炉中ロウ付け工程の途中で二段形状のダボ3aの中間段部がダボ穴1aの縁に接触してその上に掛止したまま、矢印Cで表す台板3の沈み込みがストップしてダボ3a全体が正しくボス穴1aに嵌入しなくなる。この結果、導電板1と補強台金3との間の隙間は広がったまま、溶融したロウ材4の表面張力による流動,拡散も途中で止まったまま凝固し、当初にロウ材4を載せた導電板1の中央位置から離れている可動接触子の先端側領域Gでは、導電板1と補強台金3の間に大きな隙間gが残ったまま未接合となる(図5参照)。
【0006】
そこで、本発明はロウ付けの接合不良発生を防止して良品率の向上が図れるように改良した可動接触子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によれば、両端に一対の接点を設けた銅製になる短冊形導電板の背面に鋼製の補強台金を重ね合わせてロウ付けした電磁接触器の可動接触子を次記のような方法で製造するものとする。すなわち、あらかじめ補強台金の板面に位置決め用のダボ,導電板には前記ダボが嵌合するダボ穴を形成するとともに、ロウ材として厚さが前記ダボの高さよりも薄く、かつ導電板の外形に対応したサイズに裁断して所定位置にダボ嵌挿穴を形成したシート状のロウ材を用意し、ロウ付け工程では導電板の上に前記シート状のロウ材を挟んで補強台金を定位置に重ね合わせ、この状態で通炉して炉中ロウ付けを行うものとする(請求項1)。
また、補強台金にはその長手方向に沿った板面二箇所に台形状のダボを形成しておき、ロウ付け工程で補強台金をシート状のロウ材を挟んで導電板の上に重ね合わせてセットする際に、ダボの先端部が導電板のダボ穴の中に嵌入して導電板と台金が定位置に重なり合うようにする(請求項2)。
【発明の効果】
【0008】
上記のロウ付け方法によれば、シート状のロウ材は補強台金のダボ高さよりも薄く設定されているので、導電板の上にロウ材を挟んで補強台金を定位置に重ね合わせたセット状態では、ロウ材の穴を貫通してその裏面側に突き出した一対のダボ先端部が導電板のダボ穴に嵌入して正しく位置決めされる。これにより、続く通炉の加熱昇温過程で導電板と補強台金との間に長手方向の熱膨張差が生じても、補強台金のダボが導電板のダボ穴から抜け出てダボ穴の縁に乗って掛止するようなことがない。その結果、ロウ材の溶融に伴う補強台金の沈み込みが阻害されず、かつロウ材は表面張力により導電板と補強台金との重なり面全域の隅々まで流動して隙間を残すことなくロウ付けされる。これにより接合不良の発生がなくなって可動接触子の良品率が大幅に向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態を図1(a),(b)に示す実施例に基づいて説明する。なお、(a)図は可動接触子の構成部材をトレー状治具の上にセットした炉組状態、(b)図は(a)図における導電板,シート状のロウ材,補強台金の各部材を下面側から見た斜視図であり、図2〜図4に対応する部材には同じ符号を付している。
ここで、補強台金3は、その長手方向に沿った二箇所に導電板1に向けて突出する一段形状の台形状ダボ3aがプレス加工により形成されており、このダボ3aに対応して導電板1にはダボ3aの外径よりも大きな穴径に設定して熱膨張差の逃げ用クリアランスを設定したダボ穴1aが開口している。また、シート状のロウ材4はその肉厚tが前記ダボ3aの高さhよりも薄い0.2mm程度の厚さに展延し、かつ幅,長さが導電板1の外形サイズに略対応した短冊形に裁断した上で、その面上には前記ダボ3aに対応するダボ嵌挿穴4aを開口しておく。
【0010】
そして、ロウ付け工程では図3で述べたと同様にトレー状治具7の上に各部材を順に積み重ねて炉組セット上で、真空加熱炉に通炉してロウ付けを行う。ここで、図1(a)の炉組セットの状態では、ロウ材4の厚みtが補強台金3のダボ3aの高さhよりも薄く(t<h)設定されているので、ダボ3aはロウ材4の穴4aを貫通してその裏面側に突き出たダボ先端部が導電板1のダボ穴1aに嵌入して噛み合った積層状態に保持される。
これにより、続く通炉での加熱昇温過程で導電板1と補強台金3との間に長手方向の熱膨張差が生じても、補強台金3のダボ3aが導電板1のダボ穴1aから抜け出たり、ダボ穴1aの縁に乗って掛止されることがない。その結果、ロウ材4の溶融に伴う補強台金3の沈み込みが阻害され iことがなく、溶融したロウ材4はその表面張力により導電板1と補強台金3との重なり面全域の隅々まで流動して図5に示したような隙間gを残すことなくロウ付けされ、図2のように導電板1と補強台金3との重なり面全域がロウ付けされた接合不良のない可動接触子6が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例による可動接触子のロウ付け方法の説明図で、(a)は可動接触子の各部材およびロウ材をトレー状の治具にセットした炉組状態を表す断面図、(b)は(a)における導電板,シート状ロウ材,および補強台金の裏面側からみた外形斜視図
【図2】本発明の実施対象となる積層形可動接触子の側面図
【図3】図2に示した可動接触子の従来における製造方法の説明図で、可動接触子の各部材およびロウ材をトレー状の治具にセットする際の炉組手順を表す図
【図4】図3における導電板,シート状ロウ材,および補強台金の裏面側からみた外形斜視図
【図5】従来の製造方法により可動接触子に生じた接合不良箇所の拡大断面図
【符号の説明】
【0012】
1 導電板
1a ダボ穴
2 接点
3 補強台金
3a ダボ
4 シート状のロウ材
4a ダボ嵌挿穴
【出願人】 【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機ホールディングス株式会社
【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区田辺新田1番1号
【出願日】 平成16年6月14日(2004.6.14)
【代理人】 【識別番号】100088339
【弁理士】
【氏名又は名称】篠部 正治

【公開番号】 特開2005−353529(P2005−353529A)
【公開日】 平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願番号】 特願2004−175483(P2004−175483)