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【発明の名称】 電子部品用銅合金線材
【発明者】 【氏名】黒田 洋光
【住所又は居所】東京都千代田区大手町一丁目6番1号 日立電線株式会社内
【氏名】紀本 国明
【住所又は居所】茨城県日立市川尻町4丁目10番1号 日立電線ファインテック株式会社内
【氏名】沢畠 勝憲
【住所又は居所】茨城県日立市川尻町4丁目10番1号 日立電線ファインテック株式会社内
【氏名】加藤 博行
【住所又は居所】東京都千代田区内神田3丁目11番7号 日立アロイ株式会社内
【課題】電子部品用、特にコネクタ用として強度と導電率をバランス良く両立した銅合金線材を提供する。

【解決手段】銅または銅合金からなる心材の外周に銅亜鉛合金からなる被覆層を形成し、線材の断面積(A)に対する心材の断面積(B)の比率(B/A)を0.15〜0.6とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅または銅合金からなる心材の外周に銅亜鉛合金からなる被覆層が形成され、線材の断面積(A)に対する心材の断面積(B)の比率(B/A)が0.15〜0.6であることを特徴とする電子部品用銅合金線材。
【請求項2】
線材表面に、更に錫あるいは錫−鉛合金めっきが施されていることを特徴とする請求項1記載の電子部品用銅合金線材。
【請求項3】
前記銅亜鉛合金の亜鉛濃度が20〜40重量%であることを特徴とする請求項1又は2記載の電子部品用銅合金線材。
【請求項4】
前記心材は、Cu、Cu−0.02〜0.2重量%Zr、Cu−0.15〜0.25重量%Sn−0.15〜0.25重量%In、Cu−0.15〜0.70重量%Sn、Cu−0.15〜0.70重量%In、Cu−5〜30重量%Zn、Cu−5〜30重量%Zn合金にZr、Cr、Si、Mg、Al、Fe、P、Ni、Ag、Snのいずれか少なくとも1種または1種以上を添加した合金、Cu−0.2〜20重量%Ag、Cu−Fe系、銅被鋼線、銅合金被鋼線、及び、銅/銅合金被複合線からなる群から選ばれたものであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の電子部品用銅合金線材。
【請求項5】
線材の引張強さが600〜800MPa、線材の導電率が30〜65%IACSであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の電子部品用銅合金線材。
【請求項6】
線材の形状が角線であり、コネクタに用いられることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項記載の電子部品用銅合金線材。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品、特に、コネクタに使用される銅合金線材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子部品用に使用されている線材として、各種銅および銅合金線があるが、強度など点から黄銅(Cu−Zn合金)線が主に用いられている。また、一部にりん青銅(Cu−Sn合金)線が用いられている。
【0003】
また、電子部品の中でもコネクタに関しては、黄銅線が主であり、形状としては角線が多用されている。さらに、コネクタ用の材料として、強度と導電率が高く、はんだ付け性にも優れたものが要求されており、それらを改善するものとして特許文献1に提案されている銅合金線がある。
【特許文献1】特開平6−17168号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の黄銅線やりん青銅線、あるいは特許文献1に提案されている銅合金線にはそれぞれ以下のような問題点があった。
【0005】
まず、黄銅線は、強度と導電率が比較的良好なものの、銅線と比較すると導電率が低いといった問題点があり、りん青銅線は導電率が著しく低い。また、特許文献1に記載されている銅合金線は、導電率を黄銅線のそれ以上に設計すると強度が黄銅線のそれ以下になってしまい、強度を同等に設計した場合の導電率の増加はわずかであり優位性は認められない。
【0006】
したがって、電子部品用、特にコネクタ用線材として、強度と導電率をバランス良く両立する材料は未だ提供されていない。
【0007】
従って、本発明の目的は、上記課題を解決し、電子部品用、特にコネクタ用として強度と導電率をバランス良く両立した銅合金線材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の電子部品用銅合金線材は、銅または銅合金からなる心材の外周に銅亜鉛合金からなる被覆層が形成され、線材の断面積(A)に対する心材の断面積(B)の比率(B/A)が0.15〜0.6であることを特徴とする。
【0009】
線材表面に、更に錫あるいは錫−鉛合金めっきを施すこともできる。
【0010】
前記銅亜鉛合金の亜鉛濃度を20〜40重量%とすることができる。
【0011】
前記心材は、Cu、Cu−0.02〜0.2重量%Zr、Cu−0.15〜0.25重量%Sn−0.15〜0.25重量%In、Cu−0.15〜0.70重量%Sn、Cu−0.15〜0.70重量%In、Cu−5〜30重量%Zn、Cu−5〜30重量%Zn合金にZr、Cr、Si、Mg、Al、Fe、P、Ni、Ag、Snのいずれか少なくとも1種または1種以上を添加した合金、Cu−0.2〜20重量%Ag、Cu−Fe系、銅被鋼線、銅合金被鋼線、及び、銅/銅合金被複合線からなる群から選ばれたものとすることができる。
【0012】
線材の引張強さを600〜800MPa、線材の導電率を30〜65%IACSとすることができる。
【0013】
線材の形状が角線であり、コネクタに用いられるものとすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明の電子部品用銅合金線材によれば、電子部品用、特にコネクタ用として強度と導電率が従来の黄銅線材の特性を大きく上回る特性を有する線材を提供することができる。このため、今後の電子部品の性能向上に大きく寄与することができ、その実用的効果は極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の電子部品用銅合金線材の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1は、本実施形態の電子部品用銅合金線材の構造を示す横断面図である。この銅合金線材1は、銅または銅合金からなる心材3の外周に、銅亜鉛合金からなる被覆層5が設けられ、全体として断面形状が0.635mm×0.635mmの角線に形成されている。心材3に銅および銅合金を用い、その外周に銅亜鉛合金からなる被覆層5を形成したのは、線材の強度と導電率を両立させるためである。すなわち、心材3の銅および銅合金で導電率を増加させ、外周の銅亜鉛合金で強度の増加を図るためである。ここで、銅合金線材1の断面積(A)に対する心材3の断面積(B)の比率(B/A)が0.15〜0.6とする必要がある。かかる範囲に規定したのは、0.15未満では心材3を構成する銅または銅合金の断面積が小さくなり過ぎ電子部品用線材としての導電率の向上が期待できず、0.6を超えると被覆層5の面積が少なくなり過ぎて十分な強度が確保できなくなるためである。
【0017】
また、被覆層5を構成する銅亜鉛合金の亜鉛濃度は、20〜40重量%であることが好ましい。銅亜鉛合金の亜鉛濃度が20重量%未満では被覆層5による強度向上の効果が乏しく、40重量%を超えると伸線加工性能が低下してしまうとともに、導電率が低下してしまうためである。
【0018】
本実施形態の銅合金線材1は、直径が4.0mmの銅合金線を、肉厚1.4mmの銅亜鉛合金製パイプに挿入し、伸線加工と熱処理を繰り返すことにより形成することができる。
【0019】
本実施形態の銅合金線材1は、心材3と被覆層5との断面積が所定の割合に形成されているので、後述する実施例からも明らかなように、線材の引張強さが600〜800MPa、好ましくは650〜750MPa、かつ、線材の導電率が30〜65%IACS、好ましくは45〜55%IACSとすることができ、主にコネクタ用銅合金線として、強度と導電率をバランス良く両立させた電子部品用線材の提供が可能になる。
【0020】
また、銅合金線材1表面に、錫あるいは錫−鉛合金めっきを施すこともできる。これより、はんだ付け作業を容易に行うことができる。
【実施例1】
【0021】
図1に示す銅合金線材1の心材3としてCu−0.19Sn−0.2In合金、被覆層5としてCu−30Zn合金を用い、直径が4.0mmのCu−0.19Sn−0.2In合金線を、肉厚1.4mmのCu−30Zn合金製パイプに挿入し、伸線加工と熱処理を繰り返して0.635mm×0.635mmの角線を作製した。なお、合金組成の単位は全て、重量%である。
【実施例2】
【0022】
心材3及び被覆層5として実施例1と同様の組成の合金とし、直径が4.0mmのCu−0.19Sn−0.2In合金線を、肉厚1.0mmのCu−30Znパイプに挿入し、伸線加工と熱処理を繰り返して0.635mm×0.635mmの角線を作製した。
【実施例3】
【0023】
心材3及び被覆層5として実施例1と同様の組成の合金とし、直径が4.0mmのCu−0.19Sn−0.2In合金線を、肉厚0.6mmのCu−30Znパイプに挿入し、伸線加工と熱処理を繰り返して0.635mm×0.635mmの角線を作製した。
【比較例1】
【0024】
心材3及び被覆層5として実施例1と同様の組成の合金とし、直径が4.0mmのCu−0.19Sn−0.2In合金線を、肉厚4.0mmのCu−30Znパイプに挿入し、伸線加工と熱処理を繰り返して0.635mm×0.635mmの角線を作製した。
【比較例2】
【0025】
心材3及び被覆層5として実施例1と同様の組成の合金とし、直径が4.0mmのCu−0.19Sn−0.2In合金線を、肉厚0.5mmのCu−30Znパイプに挿入し、伸線加工と熱処理を繰り返して0.635mm×0.635mmの角線を作製した。
【0026】
Cu‐30Zn合金(黄銅)に伸線加工と熱処理を繰り返して0.635mm×0.635mmの角線を作製した。
【0027】
実施例1〜3、比較例1、2、従来例における銅合金線材の組成と、全断面積(A)に対する心材の断面積(B)の比率(B/A)、引張強さ、導電率の測定結果を表1に併せて示す。
【0028】
【表1】


表1より明らかなように、実施例1〜3の銅合金線材は、引張強さが従来例の黄銅線とほぼ同等以上であり、かつ導電率が60〜100%増加していることがわかる。一方、比較例1の銅合金線材は、全断面積に対する心材の断面積比が小さすぎるため、従来の黄銅線と比較して導電率の増加が認められない。また、比較例2の銅合金線材は全断面積に対する心材の断面積比が大きいため、導電率は増加するものの強度が黄銅線を大きく下回ってしまう。以上のことより、全断面積(A)に対する心材の断面積(B)の比率(B/A)を0.15〜0.6の範囲とすることにより、電子部品用線材として、従来にはない強度と導電率の双方がバランス良く兼ね備わった材料を見出すことができた。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本実施形態の電子部品用銅合金線材の構造を示す横断面図である。
【符号の説明】
【0030】
1 銅合金線材
3 心材
5 被覆層
【出願人】 【識別番号】000005120
【氏名又は名称】日立電線株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区大手町一丁目6番1号
【出願日】 平成15年10月10日(2003.10.10)
【代理人】 【識別番号】100071526
【弁理士】
【氏名又は名称】平田 忠雄

【公開番号】 特開2005−116486(P2005−116486A)
【公開日】 平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願番号】 特願2003−352835(P2003−352835)