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【発明の名称】 核酸ラベル化法およびそれに用いるカルボジイミド誘導体
【発明者】 【氏名】竹中 繁織

【氏名】野島 高彦

【氏名】椋本 晃介

【氏名】田畑 栄一

【要約】 【課題】新たな一本鎖核酸および二本鎖核酸レベル化法およびそれに用いる新たなカルボジイミド誘導体を提供することを課題とする。

【解決手段】カルボジイミド基および電気化学活性基などのシグナル基を有するカルボジイミド誘導体と二本鎖核酸とを単に混合して反応させることにより、二本鎖核酸のミスマッチ部位もしくはその付近に存在するチミン、ウラシルおよびグアニン塩基の少なくとも一つと、あるいは二本鎖核酸上の水素結合の不安定な部位に存在するチミン、ウラシルおよびグアニン塩基の少なくとも一つとカルボジイミド誘導体とが反応して、二本鎖核酸をラベル化できる。また、カルボジイミド誘導体と一本鎖核酸とを単に混合して反応させることにより、一本鎖核酸上のチミン、ウラシルおよびグアニン塩基の少なくとも一つとが反応して、一本鎖核酸をラベル化できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式I

置換基A―N=C=N―置換基B―シグナル基 I

(式中、シグナル基は電気化学活性基、蛍光色素基またはビオチン残基を表し、置換基Aは水素原子または1価の有機基を表し、置換基Bは、単結合または2価の有機基を表す。)で表されるカルボジイミド誘導体を用いて、二本鎖核酸のミスマッチ部位もしくはその付近に存在するチミン、ウラシルおよびグアニン塩基の少なくとも一つをラベル化する、あるいは二本鎖核酸上の水素結合の不安定な部位に存在するチミン、ウラシルおよびグアニン塩基の少なくとも一つをラベル化することを特徴とする、二本鎖核酸ラベル化法。
【請求項2】
一般式Iで表されるカルボジイミド誘導体と、二本鎖核酸とを混合させてラベル化する、請求項1の二本鎖核酸ラベル化法。
【請求項3】
二本鎖核酸のミスマッチ部位に存在するチミン、ウラシルおよびグアニン塩基の少なくとも一つをラベル化する、請求項1または2の二本鎖核酸ラベル化法。
【請求項4】
一般式Iにおいて、置換基Aおよび置換基Bの少なくともいずれかは、当該カルボジイミド誘導体に水溶性を付与する有機基あるいは該基を含む有機基である、請求項1から3のいずれかの二本鎖核酸ラベル化法。
【請求項5】
水溶性を付与する有機基が、二級、三級もしくは四級アミノ基である、請求項4の二本鎖核酸ラベル化法。
【請求項6】
シグナル基は電気化学活性基である、請求項1から5のいずれかの二本鎖核酸ラベル化法。
【請求項7】
電気化学活性基がフェロセン基もしくはフェロセン誘導体基である、請求項6の二本鎖核酸ラベル化法。
【請求項8】
一塩基多型(SNP)の検出に用いるための、請求項1から7のいずれかの二本鎖核酸ラベル化法。
【請求項9】
一般式Iにおいて、シグナル基が電気化学活性基または蛍光色素基であるカルボジイミド誘導体を用いて、一本鎖核酸中のチミン、ウラシルおよびグアニン塩基の少なくとも一つをラベル化することを特徴とする、一本鎖核酸ラベル化法。
【請求項10】
カルボジイミド誘導体と、一本鎖核酸とを混合させてラベル化する、請求項9の一本鎖核酸ラベル化法。
【請求項11】
カルボジイミド誘導体における置換基Aおよび置換基Bの少なくともいずれかは、当該カルボジイミド誘導体に水溶性を付与する有機基あるいは該基を含む有機基である、請求項9または10の一本鎖核酸ラベル化法。
【請求項12】
水溶性を付与する有機基が、二級、三級もしくは四級アミノ基である、請求項11の一本鎖核酸ラベル化法。
【請求項13】
カルボジイミド誘導体におけるシグナル基は電気化学活性基である、請求項9から12のいずれかの一本鎖核酸ラベル化法。
【請求項14】
電気化学活性基がフェロセン基もしくはフェロセン誘導体基である、請求項13の一本鎖核酸ラベル化法。
【請求項15】
一般式Iにおいて、シグナル基が電気化学活性基または蛍光色素基であるカルボジイミド誘導体。
【請求項16】
カルボジイミド誘導体における置換基Aおよび置換基Bの少なくともいずれかは、当該カルボジイミド誘導体に水溶性を付与する有機基あるいは該基を含む有機基である、請求項15のカルボジイミド誘導体。
【請求項17】
水溶性を付与する有機基が、二級、三級もしくは四級アミノ基である、請求項16のカルボジイミド誘導体。
【請求項18】
シグナル基は電気化学活性基である、請求項15から17のいずれかのカルボジイミド誘導体。
【請求項19】
電気化学活性基がフェロセン基もしくはフェロセン誘導体基である、請求項18のカルボジイミド誘導体。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸ラベル化法およびそれに用いるカルボジイミド誘導体に関する。更に詳細には、シグナル基およびカルボジイミド基を有するカルボジイミド誘導体を用いて、二本鎖核酸のミスマッチ部位もしくは水素結合の不安定な部位に存在するチミン、ウラシルおよびグアニン塩基の少なくとも一つをラベル化する二本鎖核酸ラベル化法、あるいは一本鎖核酸中のチミン、ウラシルおよびグアニン塩基の少なくとも一つをラベル化する一本鎖核酸ラベル化法、およびそれらのラベル化法に用いるカルボジイミド誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子の検出においては、核酸への蛍光色素や電気化学活性基などのシグナル部位による修飾などのラベル化法が一般に行われている。それらの手法としては、1)ラベル基を導入した核酸塩基を有するモノヌクレオチドを合成し、DNA 合成機のモノマーユニットであるアミダイト試薬へ誘導体化して DNA 合成機によってオリゴヌクレオチドの合成段階に組み込む方法(非特許文献1)、2)アミノ基を有するアルキル末端を導入したオリゴヌクレオチドまたはそれをプライマーとして調製された PCR 産物のアミノ基部位を修飾する方法(非特許文献2)、3)5'-OH をトリリン酸化して酵素的に天然核酸へ取り込む方法(非特許文献3)などが知られている。しかしながら、これらの手法は、アミダイト試薬やトリリン酸体への多段階の合成が要求され、また、その合成収率や酵素による取り込み効率は十分とはいえない。
【0003】
また、二本鎖核酸中のミスマッチ部位の検出は重要である。例えば、一塩基多型(SNP)の検出においては SNP 付近の DNA 配列を DNA プローブとすると SNP 型の異なる DNA サンプルに対しては、ミスマッチを形成する。従って、フルマッチとミスマッチを識別することができれば SNP 型の異なる DNA プローブをいくつか組み合わせることによって SNP 検出が可能となる。二本鎖核酸中のミスマッチ部位へのカルボジイミドの反応とその複合体のゲル電気泳動による分離はすでに報告がある(非特許文献4)。また、ビオチン化カルボジイミドはすでに知られているが、一本鎖 DNA へのビオチンラベル化試薬としてだけの利用法である(非特許文献5)。このように、二本鎖核酸中のミスマッチ部位へシグナル部位を導入する方法はいまだ知られていない。
【0004】
また、DNA二重らせん構造における水素結合は、水溶液中では切断と形成が繰り返されてダイナミックな変化が起こっており、これは breathing と呼ばれている。これは、温度や水溶液の組成に依存しているが、核酸の塩基配列にも大きく依存している。特に、breathing の頻度の高い部位は二重らせんの不安定部位と呼ばれ、遺伝子発現や DNA 結合性タンパクによる DNA 配列識別において重要である。従って、そのような不安定部位をラベル化し検出することは重要である。しかしながら、そのようなラベル化方法はいまだ知られてない。
【非特許文献1】Yu, G. J. et al., J. Org. Chem., 2001, 66, 2937-2942
【非特許文献2】Takenak, S. et al., Anal. Biochem., 1994, 218, 436-443
【非特許文献3】Brazill, S. A. et al., Anal. Chem., 2002, 74, 3421-3428
【非特許文献4】David F. Novack, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 83, 586-590(1986)
【非特許文献5】G. Masuda et al. Nucleic Acids Symposium Series, 34, 69, 1995
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の課題は、二本鎖核酸のミスマッチ部位もしくは水素結合の不安定な部位をラベル化する二本鎖核酸ラベル化法、あるいは一本鎖核酸中のチミン、ウラシルおよびグアニン塩基の少なくとも一つをラベル化する一本鎖核酸ラベル化法を提供することにある。
更に本発明の課題は、これらのラベル化法に用いるカルボジイミド誘導体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決することを目的として鋭意研究し、カルボジイミド基および電気化学活性基などのシグナル基を有するカルボジイミド誘導体と二本鎖核酸との反応性を検討した結果、カルボジイミド誘導体と二本鎖核酸とを単に混合して反応させることにより、二本鎖核酸のミスマッチ部位もしくはその付近に存在するチミン、ウラシルおよびグアニン塩基の少なくとも一つと、あるいは二本鎖核酸上の水素結合の不安定な部位に存在するチミン、ウラシルおよびグアニン塩基の少なくとも一つとカルボジイミド誘導体とが反応して、二本鎖核酸をラベル化できることを見出した。また、カルボジイミド誘導体と一本鎖核酸とを単に混合して反応させることにより、一本鎖核酸上のチミン、ウラシルおよびグアニン塩基の少なくとも一つとが反応して、一本鎖核酸をラベル化できることを見出した。本発明は、このような知見に基づいて完成されたものである。
【0007】
即ち、本発明は、下記一般式I

置換基A―N=C=N―置換基B―シグナル基 I

(式中、シグナル基は電気化学活性基、蛍光色素基またはビオチン残基を表し、置換基Aは水素原子または1価の有機基を表し、置換基Bは、単結合または2価の有機基を表す。)で表されるカルボジイミド誘導体を用いて、二本鎖核酸のミスマッチ部位もしくはその付近に存在するチミン、ウラシルおよびグアニン塩基の少なくとも一つをラベル化する、あるいは二本鎖核酸上の水素結合の不安定な部位に存在するチミン、ウラシルおよびグアニン塩基の少なくとも一つをラベル化することを特徴とする、二本鎖核酸ラベル化法に関する。
更に本発明は、一般式Iにおいて、シグナル基が電気化学活性基または蛍光色素基であるカルボジイミド誘導体を用いて、一本鎖核酸中のチミン、ウラシルおよびグアニン塩基の少なくとも一つをラベル化することを特徴とする、一本鎖核酸ラベル化法に関する。
更に本発明は、一般式Iにおいて、シグナル基が電気化学活性基または蛍光色素基であるカルボジイミド誘導体に関する。
【発明の効果】
【0008】
カルボジイミド基および電気化学活性基などのシグナル基を有する本発明のカルボジイミド誘導体と二本鎖核酸とを単に混合して反応させることにより、二本鎖核酸のミスマッチ部位あるいは水素結合の不安定部位を簡単にラベル化することが出来る。また、本発明のカルボジイミド誘導体と一本鎖核酸とを単に混合して反応させることにより、一本鎖核酸をラベル化することができる。このような本発明のラベル化を利用することにより、SNP の検出が可能となり、DNA または RNA の高次構識別が可能となる。また、一本鎖 DNA および RNA の検出が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明で用いる一般式Iで表されるカルボジイミド誘導体において、1価の置換基Aの有機基としては、例えば、置換もしくは非置換の脂肪族炭化水素基、置換もしくは非置換の芳香族基、置換もしくは非置換の複素環基などが挙げられる。脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、2−プロピル、ブチル、ペンチルなどの直鎖または分枝した炭素原子数1から10個のアルキル基;ビニル、アリル、プロペニル、2−プロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニル等の炭素原子数2から10のアルケニル基;エチニル、プロパルギル、ブチニル、ペンチニル等の炭素原子数2から10のアルキニル基;シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどの3〜8員環シクロアルキル基;1−シクロペンテニル、2−シクロペンテニル、2−シクロヘキセニル、3−シクロヘキセニルなどの3〜8員環の二重結合を1つ有するシクロアルケニル基などが挙げられる。芳香族基としては、例えば、フェニル、ナフチルなどが挙げられる。複素環基としては、例えば、ピペリジン、モルホリン、ニコチンなどの窒素原子、酸素原子、硫黄原子から選ばれる複素原子1〜2個を含む5又は6員の飽和もしくは芳香族複素環などが挙げられる。これらの脂肪族炭化水素基、芳香族基および複素環基の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シアノ基、カルボキシ基、アシル基などが挙げられる。また、芳香族基および複素環基の置換基としては、更にアルキル基、アレケニル基、アルキニル基などが挙げられる。
【0010】
2価の置換基Bの有機基としては、置換もしくは非置換の2価の脂肪族炭化水素基、置換もしくは非置換の2価の芳香族基、置換もしくは非置換の2価の複素環基などが挙げられる。具体的には、1価の置換基Aの有機基として上に例示したものに対応する2価の有機基をそのまま例示することができる。
置換基AおよびBが、置換もしくは非置換の1価または2価の脂肪族炭化水素基の場合には、その基中に、−O−、−S−、−NH−、−N(アルキル基)−、−N+(アルキル基)2−、−N(C=O)−、−N−C(=O)−、−C(=O)−、−NH−C(=S)−NH−で表される基が存在していてもよい。
置換基AおよびBの少なくともいずれかは、当該カルボジイミド誘導体に水溶性を付与する有機基あるいは該基を含む有機基であることが好ましい。水溶性の有機基としては、−NH−、−N(アルキル基)−、−N+(アルキル基)2−などの二級、三級もしくは四級アミノ基が好ましい。特に、二級、三級もしくは四級アミノ基を含む、置換もしくは非置換の1価もしくは2価のアルキル基が好ましい。
【0011】
一般式Iにおけるシグナル基の電気化学活性基としては、フェロセン基、あるいはメチルフェロセン、アセチルフェロセン、ビニルフェロセンなどのフェロセン誘導体基などが挙げられる。また、ビオローゲン誘導体基、金属錯体基、アントラキノン誘導体基、ポリフィリン誘導体基なども電気活性基として用いることができる。より具体的には、ビオローゲン誘導体基としては、以下に示されるものが挙げられる。
【化1】



(n は整数、Rはニトロ基、アミノ基などの置換基、X-はCl-、I-などの陰イオンを示す)

金属錯体基としては、例えば、Mn+3(ここで、Mn+は、Fe2+、Co3+、Cu2+、Os2+などの金属イオン、Lは2,2−ビピリジル、1,10−フェナントロリンなどのリガンドを示す)で表されるものが挙げられ、より具体的には、例えば、以下のものが挙げられる。
【化2】



(n は整数を示す)

アントラキノン誘導体基としては、例えば、以下のものが挙げられる。
【化3】



(Rは、ニトロ、アミノなどの置換基を示す)
ポリフィリン誘導体基としては、以下のものが挙げられる。
【化4】



(nは整数、Rはアルキル基、ニトロ基、アミノ基などの置換基を示す)
シグナル基の蛍光色素基としては、置換基を有していてもよいアクリジン骨格を有する基、置換基を有していてもよいアントラセン骨格を有する基、置換基を有していてもよいナフタレンイミド骨格を有する基、置換基を有していてもよいピレン骨格を有する基、置換基を有していてもよいキサンテン骨格を有する基、置換基を有していてもよいインドール骨格を有する基、置換基を有していてもよい含ホウ素および窒素インダセン骨格を有する基などが挙げられる。これらの置換基としては、置換基Aおよび置換基Bで例示したものと同様の置換基が挙げられる。これらの蛍光色素基としては、具体的には以下のものが挙げられる。
【0012】
置換基を有していてもよいアクリジン骨格を有する基
【化5】



置換基を有していてもよいアントラセン骨格を有する基
【化6】



置換基を有していてもよいナフタレンイミド骨格を有する基
【化7】



置換基を有していてもよいピレン骨格を有する基

【化8】


【0013】
置換基を有していてもよいキサンテン骨格を有する基
【化9】



置換基を有していてもよいインドール骨格を有する基

【化10】



置換基を有していてもよい含ホウ素および窒素インダセン骨格を有する基
【化11】


【0014】
一般式Iで表される本発明のカルボジイミド誘導体の好ましい具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
【化12】


【0015】
一般式Iのカルボジイミド誘導体において、シグナル基が電気化学活性基または蛍光色素基であるカルボジイミド誘導体は、新規化合物である。
一般式Iのカルボジイミド誘導体は、周知の合成法によって合成することができる。例えば、本明細書の実施例1に示すように、まず置換基Aと置換基Bとがウレア基(−HN(C=O)−NH−)を介して結合された化合物を合成し、これに、反応性官能基を有するシグナル基を反応させて該化合物に結合させ、最後に、ウレア基を通常の方法、例えば、トリエチルアミンおよびパラトルエンスルホン酸により処理してカルボジイミド基に変換することにより合成することができる。置換基Aと置換基Bとをカルボジイミド基を介して結合させた化合物を合成し、これに反応性官能基を有するシグナル基を反応させて合成することもできる。また、ウレア基に置換基B、更にシグナル基が結合した化合物を合成し、最後のウレア基をカルボジイミド基に変換して合成することもできる。
上記したように、置換基A、置換基B、シグナル基をそれぞれ結合するには、それらの反応性誘導体を利用して結合することができる。反応性誘導体としては、酸ハロゲン化物、酸無水物、混合酸無水物、エステル誘導体などの周知の反応性誘導体が挙げられる。
【0016】
本発明の一般式Iで表されるカルボジイミド誘導体により、一本鎖核酸中のチミン、ウラシルおよびグアニン塩基の少なくとも一つをラベル化することができる。また、本発明の一般式Iで表されるカルボジイミド誘導体により、二本鎖核酸のミスマッチ部位もしくはその付近に存在するチミン、ウラシルおよびグアニン塩基の少なくとも一つをラベル化することができ、更に、二本鎖核酸上の水素結合の不安定な部位に存在するチミン、ウラシルおよびグアニン塩基の少なくとも一つをラベル化することができる。
本発明のラベル化法の対象となる核酸サンプルとしては、例えば、生体から抽出された真核生物の mRNA から誘導されるチミンやウラシルの連続配列を有する cDNA や cRNA などの一本鎖核酸サンプル、あるいは、生体から採取される染色体 DNA、染色体 DNA を適当な制限酵素などで切断して得られる二本鎖 DNA 断片、PCR により得られる 二本鎖 DNA 断片などの二本鎖核酸などが挙げられる。
本発明のカルボジイミド誘導体によるラベル化は、対象とする一本鎖核酸あるいは二本鎖核酸と単に反応させるだけで行うことができる。例えば、対象とする一本鎖核酸あるいは二本鎖核酸とカルボジイミド誘導体とを、炭酸緩衝液、メタノール含有炭酸緩衝液などの通常の緩衝液中で、中性からやや塩基性の条件下で、室温から約50℃の温度範囲で数時間から1昼夜程度放置させて反応を行うだでけの簡便な方法によりラベル化することができる。
本発明のカルボジイミド誘導体によるラベル化は、以下に詳細に説明するように種々の方面で利用可能である。
本発明の応用例について、図19に概略的に示した。以下に、これらの応用例について具体的に説明する。
【0017】
I.一本鎖核酸のラベル化について
本発明のカルボジイミド誘導体の場合には、合成オリゴヌクレオチドや天然核酸などの種類に無関係にカルボジイミド誘導体と混ぜるだけで核酸のラベル化が達成される。特にカルボジイミド誘導体は、チミン、ウラシルに対して高い反応性を有するので、図19の一番上に示すように、一本鎖核酸をラベル化することができる。また、以下に詳述するように、生体から抽出された真核生物の mRNA(ポリアデニンテールを有する)から誘導されるチミンやウラシルの連続配列を有する cDNA や cRNA へのシグナル基によるラベル化が可能となる。例えば、シグナル基として蛍光色素基を用いれば DNA マイクロアレイの蛍光画像化への応用やキャピラリィー電気泳動やマイクロ流路を利用した核酸分離の際の蛍光検出に利用できる。また、シグナル基として電気化学活性基を用いた場合には、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)やマイクロ流路を利用した核酸の分離の際の電気化学的検出に利用できる。さらに、DNA 修飾電極を利用すれば電気化学的遺伝子検出が可能となる。
【0018】
I−1.mRNAのフェロセン化と遺伝子の発現解析への応用
真核生物の mRNA はポリ A テールと呼ばれる A の繰り返し配列を有する。これを cDNA とする場合ポリ T テールを導入することができるが、本発明のカルボジイミド誘導体は、このチミンに共有結合するので、図19の上から2番目に示すように、シグナル基としてフェロセン基を有するカルボジイミド誘導体を用いることにより、cDNA の末端にフェロセン基を導入することができる。これを電極に固定化された DNA プローブを利用すれば、電気化学的に cDNA 量の定量化を行うことができる。電気化学的検出法の模式図を図17および図20に示した。
【0019】
I−2.遺伝子検出への応用
一本鎖 DNA サンプルを、シグナル基としてフェロセン基を有する本発明のカルボジイミド誘導体と処理してランダムにフェロセン基を導入する。これを DNAプローブ修飾電極にて検出することができる。認識部位にフェロセン基が導入された場合、二本鎖形成の認識能が低下する可能性はあるが、長い配列を利用して、かつ、SNP のような厳密な識別が必要でない場合には、フェロセン基を有する本発明のカルボジイミド誘導体が利用可能である。このような応用例の模式図を図21に示した。
【0020】
II.二本鎖核酸のミスマッチ部位へのラベル化
二本鎖核酸のミスマッチ部位の検出は重要である。例えば、一塩基多型(SNP)の検出においては SNP 付近の DNA 配列を DNA プローブとすると SNP 型の異なる DNA サンプルに対しては、ミスマッチを形成する。従って、フルマッチとミスマッチを識別することができれば SNP 型の異なる DNA プローブをいくつか組み合わせることによって SNP 検出が可能となる。この場合、A-T 対のチミンとG-C 対のグアニンが、図19の上から3番目に示すように、本発明のカルボジイミド誘導体によって修飾可能であるので DNA を選択することによってすべてのミスマッチの検出が可能となる。
二本鎖核酸のミスマッチ部位へのシグナル基の導入は新規である。本発明のカルボジイミド誘導体においてシグナル基として蛍光色素基を有するものを利用すればミスマッチ部位の蛍光検出が可能となる。また、電気化学活性基を利用すれば電気化学検出器を有する HPLC やマイクロ流路によって分離検出が可能となる。特に、本発明の蛍光色素基を有するカルボジイミド誘導体はミスマッチ部位へ反応することによってその蛍光特性が変化するので、これを利用すると未反応物を分離することなくミスマッチの検出が可能となる。
【0021】
II−1.SNP 検出への応用
本発明のカルボジイミド誘導体は、核酸の二本鎖を形成している(水素結合に関与している)塩基には反応しないが、ミスマッチ塩基などの二本鎖核酸上に飛び出しているチミン、ウラシルおよびグアニジン塩基と反応する。従って、シグナル基としてフェロセン基を有する本発明のカルボジイミド誘導体を利用すれば、一塩基多型(SNP)を含むミスマッチ部位にフェロセン基が導入されることになる。電気化学的シグナルを指標にしてこれを検出することができる。検出法としては図22に示した方法が考えられる。しかし、これに限られるものではない。
図23には、シグナル基としてフェロセン基を有する本発明のカルボジイミド誘導体を利用して、例えばヒト全ゲノムを制限酵素で切断してそのまま変性とアニールを行うことによりヘテロ接合体の SNP の検出が可能となることが示されている。また、図24には、シグナル基としてフェロセン基を有する本発明のカルボジイミド誘導体を用いた、酵素による塩基伸長反応を利用した SNP の検出が示されている。
【0022】
II−2.ミスマッチ部位を有するDNA断片の濃縮
シグナル基としてビオチン残基を有する本発明のカルボジイミド誘導体を利用することによりミスマッチ部位へのビオチン化が達成できる。ビオチン化カルボジイミドはすでに知られているが、一本鎖 DNA へのビオチンラベル化試薬としてだけの利用法である。ミスマッチ部位を含む二本鎖核酸断片を、シグナル基としてビオチン残基を有する本発明のカルボジイミド誘導体で処理した後、未反応の試薬を除き、アビジン化カラムで捕捉する。捕捉されたミスマッチを含む二重らせん核酸断片はアルカリによって可逆的にはずすことができる。はずれてきた核酸の溶液を中和がアニールすることにより二本鎖核酸を形成させプラスミドに組み込んだ後、種類の異なる断片を純化、増幅してシークエンシングによって配列を決定する。これによってミスマッチ部位付近の配列が明らかとなる。本手法ではミスマッチ付近の配列が明らかになるのみであるが、未知のミスマッチの探索も行えるので従来にない画期的な手法となり得る。すなわち、図23に示したように、ヒト全ゲノムを制限酵素で切断してそのまま変性とアニールを行うことにより、ヘテロ接合体の SNP の検出が可能となると期待される。また、SNP 型の異なる染色体サンプルを等量混合して同様の実験を行えばホモ接合体の検出も可能となる。従来、既存の SNP 検出法としては、PCR-RFLP 法、TaqMan 法、DNAチップ(マイクロアレイ)法、Invader 法が知られており、未知の SNP 検出法としては WAVE 法、SSCP 法、TOF-MS 法が知られている。しかし、いずれの手法も特定断片内の SNP 解析であって、ヒト全ゲノムからの SNP 検索は不可能である。本発明で提案する手法はこれを可能にする。
【0023】
III.二重らせん上の水素結合の不安定部位のラベル化
DNA 二重らせんの水素結合は、水溶液中では切断と形成が繰り返されているダイナミックな変化が起こっている(breathingと呼ばれている)。これは、温度や水溶液の組成に依存しているが、核酸の塩基配列にも大きく依存している。特に、breathing の頻度の高い部位は二重らせんの不安定部位と呼ばれ、遺伝子発現や DNA 結合性タンパクによる DNA 配列識別において重要である。従って、そのような不安定部位をラベル化し検出することは重要である。図19の一番下に示すように、種々の異なった条件下、本発明のカルボジイミド誘導体で二本鎖核酸断片を処理するとそのような部位へのラベル化反応が起こる。これにより二重らせん上の不安定部位をラベル化と検出が可能となる。また、高次構造を有する RNA へ本発明のカルボジイミド誘導体を適用すれば高次構造に反映した反応様式が得られるので RNA の高次構造識別試薬としての利用も可能である。
【0024】
III−1.SSCPへの応用
二本鎖がゆるい条件下(低い塩濃度、高めの温度)で本発明のカルボジイミド誘導体と反応させる。配列の違い(含むSNPの違い)によってカルボジイミド誘導体の反応する場所や個数が異なる。この反応性の違いによって修飾のされ方の違ったDNA断片を分離・検出を行う。単にカルボジイミド誘導体だけでも変性ゲル電気泳動やHPLC(高速液体クロマトグラフィー)によって分離できる。その際は、核酸染色試薬やそのものの吸収スペクトルにて検出できる。シグナル基としてフェロセン基を有する本発明のカルボジイミド誘導体を利用すれば電気化学的に検出できる。
【0025】
以下、本発明を参考例および実施例により更に詳細に説明するが本発明はこれら実施例よって何ら限定さるものではない。
参考例1
従来知られている下記カルボジイミド化合物1を利用してミスマッチ DNA 二重らせんに対する反応性を調べた。この結果は、以後の実施例に示す本発明のカルボジイミド誘導体を用いた場合の結果に反映されると考えられる。ここでは、カルボジイミド化合物1が一本鎖 DNA のチミン残基に結合しているどうかについて、また二本鎖 DNA 上のミスマッチ部位への反応性について検討した。種々の合成オリゴヌクレオチドを用いて配列に依存した反応性について検討した。未反応体と反応体の分離分析はマイクロチップによる電気泳動装置(2100Bioanalyzer)を利用して行った。
【0026】
I.二重らせん核酸上のミスマッチ塩基のカルボジイミド化合物1による化学修飾
【化13】



市販されているカルボジイミド化合物1を用いてラベル化条件の検討を行なった。反応性の評価については、一本鎖 DNA は HPLC で、二本鎖 DNA はマイクロチップ型電気泳動装置(2100Bioanalyzer,Agilent社)によって行った。
【0027】
I−1 チミン塩基に対する反応性の確認
まず、チミン塩基に対する特異的な反応性を確認するために以下の配列のオリゴヌクレオチドとカルボジイミド化合物1の反応をおこない、HPLC にて反応物を分取し、MALDI-TOF-MS にて同定を行なった。
MALDI-TOF-MSにて同定を行なった。



実験操作
上記の一本鎖オリゴヌクレオチドを TE 緩衝液(0.1 M、pH7.0、NaCl 0.1 M)に溶かして 2 mM の溶液を調製した。また、カルボジイミド化合物1を炭酸緩衝液(0.1 M、pH8.5、NaCl 0.1 M)に溶かして 100 mM の溶液を調製した。オリゴヌクレオチド溶液 2.5 μl と、カルボジイミド化合物1溶液 5 μl 混合し、さらに炭酸緩衝液 42.5 μl を加えて体積を 50 μl とした。これを 37 ℃で 4 時間インキュベートした後、NAP-10 カラムにてオリゴヌクレオチドのみを回収し、HPLC にてオリゴヌクレオチド由来の成分を分取、MALDI-TOF-MS 測定にて目的物の同定を行なった。
【0028】
反応条件
DNA 濃度:50 μM カルボジイミド化合物1濃度:10 mM
NaCl 濃度:0.1 M 反応温度:37 ℃ 反応体積:50 μl
反応時間:4 時間
HPLCの条件
カラム:Mightysil RP-18 流速:1 ml/min 検出波長:255 nm
試料注入溶媒:純水
溶離液A:0.1 M TEAA緩衝液(pH7.0)90 % / CHCN 10 %
溶離液B:0.1 M TEAA緩衝液(pH7.0)60 % / CHCN 40 %
【0029】
【表1】



HPLC の結果
HPLC の結果を図1に示した。図1において、RT=12 minとRT=16 minの成分を分取し、次に MALDI-TOF-MS 測定にて目的化合物の同定を行なった。
MALDI-TOF-MS の結果
MALDI-TOF-MS 測定の結果の MS スペクトルを図2に示した。この MS スペクトルから、以下のことが明らかとなった。
Matrix:3-Hidroxypicolinic acid Polarity:Negative
オリゴヌクレオチド Mw:4627.14
カルボジイミド修飾オリゴヌクレオチド Mw:4879.52
【0030】
考察
HPLC の結果より、オリゴヌクレオチド由来成分は2種類しかなく、しかも MALDI-TOF-MS の結果から一方は未反応物、もう一方はカルボジイミド化合物1(Mw:252.38)が一分子付加した複合体であると考えられる。よってカルボジイミド化合物1はアデニン塩基に対しては反応せず、チミン塩基とのみ複合体を形成したと考えられる。なお、反応率はクロマトグラムのピークの高さから算出したところ、26 %であった。
【0031】
II.末端配列の非特異的反応に対する影響
以下の二つのフルマッチ二本鎖オリゴヌクレオチドに対するカルボジイミド化合物1の反応性を比較した。ともにフルマッチの 30 merで、両端の配列(下線部)が異なる。
比較した配列


実験操作
1 mM の二本鎖オリゴヌクレオチドの溶液を TE 緩衝液(0.1 M、pH7.0、NaCl 0.1 M)調製し、次いで、100 mM のカルボジイミド化合物1溶液を炭酸緩衝液(0.1 M、pH8.5、NaCl 0.1 M)にて調製した。オリゴヌクレオチド溶液 10 μl とカルボジイミド化合物1溶液 25 μl を混合し、さらに炭酸緩衝液を加えて 100 μl とした。これを 37 ℃で 4 時間インキュベートし、TE 緩衝液で 250 倍に希釈してマイクロチップにスポットして電気泳動装置(2100Bioanalyzer)で測定した。
反応条件
DNA濃度:100 μM カルボジイミド化合物1濃度:25 mM
NaCl濃度:0.1 M 反応温度:37 ℃ 反応体積:100 μl
反応時間:4 時間
電気泳動の結果考察
電気泳動の結果は図3に示した。図3の結果より、配列末端の塩基対は内部に比べて開裂しやすく、反応しやすいサイトであるといえる。よって、プローブを設計する際に末端は GC 塩基対となるように設計する必要がある。
【0032】
III.ミスマッチ塩基の位置による反応性の比較
続いて、実際にミスマッチ塩基の反応を行った。ミスマッチの位置を配列中央に配置したものと配列末端に配置したもので反応性の比較を行った。
比較した配列


実験操作
1 mMの二本鎖オリゴヌクレオチドの溶液を TE 緩衝液(0.1 M、pH7.0、NaCl 0.1 M)調製し、次いで、100 mM のカルボジイミド化合物1溶液を炭酸緩衝液(0.1 M、pH8.5、NaCl 0.1 M)にて調製した。オリゴヌクレオチド溶液 10 μl とカルボジイミド1溶液 25 μl を混合し、さらに炭酸緩衝液を加えて 100 μl とした。これを 37 ℃で 4 時間インキュベートし、TE 緩衝液で 250 倍に希釈してマイクロチップにスポットして電気泳動装置(2100Bioanalyzer)で測定した。
【0033】
反応条件
DNA濃度:100 μM カルボジイミド化合物1濃度:25 mM
NaCl濃度:0.1 M 反応温度:37 ℃ 反応体積:100 μl
反応時間:4 時間
電気泳動の結果
電気泳動の結果を図4に示した。
考察
ミスマッチを中央に配置した配列IIIと、ミスマッチを末端に配置した配列IVでは、反応性に差が見られた。配列IIIの場合には、ミスマッチであってもチミン塩基のイミノ基が水素結合を形成していて反応活性なアニオンになっていないこと、またはイミノ基が水素結合していなくても立体的にカルボジイミド化合物1が反応サイトに到達できない構造を取っていることなどから配列IIIに比べて反応性が低くかった。一方、末端にミスマッチを配置した配列IVでは、ミスマッチの中でも安定とされる GT ミスマッチであっても高い反応性を示した。反応物由来の二本のピークはそれぞれ、カルボジイミド化合物1が一個付加したものと二個付加したものであると考える。
【0034】
IV.フルマッチ二本鎖と一塩基ミスマッチを有する二本鎖の反応性の比較
実際にミスマッチ二本鎖とフルマッチ二本鎖の反応性の比較を行った。配列IVについては、上記IIIのデータを用いて比較した。
比較した配列

【0035】
実験操作
1 mM の二本鎖オリゴヌクレオチドの溶液を TE 緩衝液(0.1 M、pH7.0、NaCl 0.1 M)調製し、次いで、100 mM のカルボジイミド化合物1溶液を炭酸緩衝液(0.1 M、pH8.5、NaCl 0.1 M)にて調製した。オリゴヌクレオチド溶液 5 μlとカルボジイミド化合物1溶液 12.5 μlを混合し、さらに炭酸緩衝液を加えて 500 μlとした。これを 37 ℃で 4 時間インキュベートし、TE 緩衝液で 250 倍に希釈してマイクロチップにスポットして電気泳動装置(2100Bioanalyzer)で測定した。
反応条件
DNA濃度:100 μM カルボジイミド化合物1濃度:25 mM
NaCl濃度:0.1 M 反応温度:37 ℃ 反応体積:50 μl
反応時間:4 時間
電気泳動の結果
電気泳動の結果を図5に示した。
考察
装置の定量機能を元に、大まかな反応率を算出したところ、配列IV:84 %、配列V:51 %、配列VI:21 %となり、ミスマッチ二本鎖の反応性が、フルマッチの反応性を大きく上回った。GT ミスマッチと AG ミスマッチで反応性に差が見られたが、これはチミン塩基のほうがグアニン塩基に比べて反応性が高いことが過去に報告されており(N.W.Y. Ho et al., Biochemistry, 6(12), 3632-3639, 1967)、このことを反映した結果であるといえる。
【0036】
V.ラベル化条件における Tm の測定
ラベル化反応は pH8.5 の炭酸緩衝液中で行っており、生理的条件と異なっていることから、二本鎖 DNA が不安定になっている恐れがある。よって、二本鎖 DNA の安定性を確認するために Tm 測定を行ない、安定性を調査した。
比較した配列

【0037】
実験操作
1 mM の2本鎖 DNA 溶酸緩衝液(0.1 M、NaCl 0.1 M、pH 7.0 または8.5)にて 1000 倍に希釈し、測定を行なった。
測定条件
緩衝液:0.1 Mリン酸緩衝液 pH:7.0 または 8.5 NaCl濃度:0.1 M
温度速度:0.5 ℃/min 測定波長:260 nm 温度範囲:20 ℃〜95 ℃
使用セル:10 mmセル 注入量:120 μl
結果
結果は表2に示した。
【0038】
【表2】



考察
フルマッチ、ミスマッチともに pH8.5 では、Tm が若干下がっているが、2 本鎖 DNA の安定性が大きく低下しているというほどではなく、ラベル化条件において 2 本鎖 DNA は十分安定に存在していると思われる。
【0039】
VI.ミスマッチ近傍の不安定部位のラベル化
これまで、末端にミスマッチを配置してラベル化を行ってきたが、末端から二番目のミスマッチについては、その隣の末端の塩基対はフルマッチであっても、水素結合を形成せずに開裂しているほうが熱的に安定であることが報告されている(N.W.Y. Ho et al., Biochemistry, 6(12), 3632-3639, 1967)。



これを利用することで、フルマッチ二本鎖とミスマッチ二本鎖の反応性の差をさらに大きくできるのではないかと考えた。
【0040】
比較した配列


実験操作
1 mM の二本鎖オリゴヌクレオチドの溶液を TE 緩衝液(0.1 M、pH7.0、NaCl 0.1 M)調製し、次いで、100 mM のカルボジイミド化合物1溶液を炭酸緩衝液(0.1 M、pH8.5、NaCl 0.1 M)にて調製した。オリゴヌクレオチド溶液 5 μlとカルボジイミド化合物1溶液 12.5 μl を混合し、さらに炭酸緩衝液を加えて 500 μl とした。これを 37 ℃で 4 時間インキュベートし、TE 緩衝液で 250 倍に希釈してマイクロチップにスポットして電気泳動装置(2100Bioanalyzer)で測定した。
【0041】
反応条件
DNA濃度:100 μM カルボジイミド化合物1濃度:25 mM
NaCl濃度:0.1 M 反応温度:37 ℃ 反応体積:50 μl
反応時間:4 時間
電気泳動の結果
電気泳動の結果は図6に示した。
考察
ミスマッチの配列 VIIの反応率が 79 %、フルマッチの配列 VIIIの反応率が 27 %で、反応性に差は出ている。末端にミスマッチを配置した場合と比べると、ミスマッチの反応性が若干落ちていた。
【実施例1】
【0042】
電気化学活性基であるフェロセンを有するカルボジイミド誘導体の合成法
以下の合成スキームに従い、新規遺伝子ラベル剤の合成を行った。
【化14】



I.片末端 Boc 化アミン体1の合成
【化15】


【0043】
実験操作
200 ml のナス型フラスコに N,N-ビス(3-アミノプロピル)メチルアミン 10 ml(0.06 mol) を加え、これを1,4-ジオキサン 20 ml で溶かし、この溶液にS-tert-ブトキシカルボニル-4,6-ジメチル-2-メルカプトピリミジン 7.7 g(0.03 mol)を 1,4-ジオキサン 50 ml に溶かした溶液を室温で約 10 時間かけてゆっくり滴下し、その後約 20 時間攪拌した。黄色の沈殿が生じたのでこれを吸引濾過で取り除いた後、1,4-ジオキサンを減圧留去し、純粋 50 ml を加えた。白色の沈殿が生じたのでこれを吸引濾過で取り除き、濾液に飽和 NaCl 水溶液を加えた後、析出した沈殿を自然濾過で取り除き、濾液を分液ロートにかけ酢酸エチルで片 Boc 体を抽出した。得られた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥後、濾別し、酢酸エチルを減圧留去し、3 時間減圧乾燥して黄色の油状物質を得た。目的物の同定を1H-NMRで行った。
実験結果
性状:黄色油状 収量:4.70 g 収率:63 %
1H-NMR測定結果
【0044】
【表3】



【化16】



考察
1H-NMRより、目的物は得られたと判断した。
II.化合物2の合成
【化17】


【0045】
実験操作
化合物1 4.7 g(19.3 mmol)を無水エーテル 7 ml で溶かした溶液に、エチルイソシアネート 1.46 g(19.3 mmol)を無水エーテル 13 ml に溶かした溶液をゆっくりと氷浴中で撹拌しながら加えた。10 分後、この反応溶液を室温にもどして 2 時間撹拌した。反応追跡はニンヒドリン呈色により行った。2 時間後、エーテルを減圧留去し、3 時間減圧乾燥した。得られた油状物質は、1H-NMR により同定を行った。
実験結果
性状:黄色油状 収量:6.6 g 収率:114 %
1H-NMR測定結果
【0046】

【表4】



【化18】



考察
1H-NMRの結果より、目的物は得られたと判断した。
III.脱 Boc 化による化合物3の合成
【化19】


【0047】
実験操作
化合物 2 6.6 g(20.9 mmol)に TFA 20 ml(259 mmol)を加え、室温で 3 時間撹拌した。3 時間後、TFA を減圧留去し、5 時間減圧乾燥した。得られた油状物質は、1H-NMR、MALDI TOF MS により同定を行った。
実験結果
性状:黄色油状 収量:14.51 g 収率:160 %
1H-NMR測定結果
【0048】

【表5】



【化20】



考察
1H -NMR におけるBoc基のピークの消失から目的物は得られたと判断した。
IV.フェロセン化体4の合成
【化21】


【0049】
実験操作
25 ml ナス型フラスコに化合物 3 1.24 g(2.8 mmol)、トリエチルアミン 1.16 ml(8.4 mmol)、クロロホルム 30 ml を加え完全に溶解させた後、フェロセンプロピオン酸スクシンイミドエステル 1.0 g(2.8 mmol)を加え室温で撹拌した。シリカゲル TLC で反応追跡を行い、18 hr 後反応を終了し溶媒を減圧留去した。得られた固体物をシリカゲルクロマトグラフィーを用いて(展開溶媒クロロホルム/メタノール/ジエチルアミン=95/10/0.5)、Rf 値 0.1 の成分を分取し、溶媒を減圧留去し、3 時間減圧乾燥し、最後に化合物に含まれる水分を除去するために凍結乾燥した。化合物の同定は、1H -NMR、MALDI TOF MS(Mw=456)により同定した。
結果
性状:黄色油状 収量:0.74 g 収率:58 %
1H -NMR
【0050】

【表6】



【化22】



考察
1H -NMR、MALDI TOF MSの結果、目的物は得られたと判断した。
V.フェロセン化カルボジイミドIIの合成
【化23】



実験操作
ウレア体化合物 4 を 10% クエン酸水溶液で洗浄し、過剰に含まれていたジエチルアミンを除去した(確認は1H -NMRで行った)。洗浄後、化合物中に含まれる水分を除去するために凍結乾燥を行った。反応を行う前に、系中を窒素ガスで置換し水分を除去した。50ml 三つ口フラスコに玉付き還流管を取り付け、化合物 4 0.50g(1.1mmol)、トリエチルアミン 0.54ml(4.0mmol)、脱水したジクロロメタン 3ml を加え、-25℃の氷浴中で 30 分間攪拌した。この溶液にジクロロメタン3ml にp-トルエンスルホニルクロライド 0.38g(2.0mmol)を溶かした溶液をゆっくり滴下した。滴下後、反応溶液を室温まで戻し、50℃油浴中で4時間還流した。反応追跡はシリカゲルTLC(展開溶媒MeOH)で行った。還流後、反応溶液に 40%炭酸カリウム水溶液を 10ml 加え洗浄し、分液ロートによりジクロロメタン相を抽出した(10ml×3)。得られたジクロロメタン相を減圧留去し、黄色油状の化合物を得た。これにジエチルエーテル 20ml を加え、沈殿物を除去し、得られた濾液からジエチルエーテルを減圧留去した。最後に、化合物中に含まれる水分を除去するため、凍結乾燥した。得られた化合物は、FT-IR、MALDI TOF MSにより同定を行った。
【0051】
結果
性状:黄色油状 収量:0.31g 収率:64%
IR測定
以下の条件で IR 測定した結果を図7に示した。
IR試料セル:KBr液膜法 分解能:4cm-1 積算回数:256
考察
FT-IRの同定結果、2200cm-1〜2100cm-1付近にカルボジイミド由来の強い吸収が見られ、目的物は得られたと判断した。
【実施例2】
【0052】
フェロセン化カルボジイミドIIのオリゴヌクレオチドのチミン部位への反応性の検討
実施例1で合成したラベル化剤IIの反応性を調べるため、チミン、グアニン塩基を含む 20mer のオリゴヌクレオチドを用いて検討した。オリゴヌクレオチドとの反応性は、逆相 HPLC、MALDI TOF MS により評価した。用いたオリゴヌクレオチドの配列は、以下に示すとおりである。これらの配列を用い、反応の位置特異性やフェロセン導入率などを検討することにした。

ODN1:(5')-TAAAAAAAAAAAAAAAAAAA (20mer)
ODN2:(5')-AAAAAAAAAATAAAAAAAAA (20mer)

ODN3:(5')-GAAAAAAAAAAAAAAAAAAA (20mer)
ODN4:(5')-AAAAAAAAAAGAAAAAAAAA (20mer)

ODN5:(5')-AAAAAAAATTTAAAAAAAAA (20mer)
ODN6:(5')-TTTAAAAAAAAAAAAAAAAA (20mer)

本実験では、反応条件を検討するために、まずこれまでのフェロセン修飾オリゴヌクレオチドの合成法にならって以下のスキームに従い反応性を検討した。本実験では、溶媒の種類を水/DMSO 及び水/MeOH の 2 種類で行った。
【化24】


【0053】
実験操作
ODN(オリゴデオキシヌクレオチド) 25 nmolを含む Na2CO3/NaHCO3 緩衝液(pH 9.0) 20 μlに、遺伝子ラベル化剤 5 1.3 μmol(0.56 mg)を含む DMSO、及び MeOH 溶液 6 μlを加えて室温で 24 時間振とうした。振とう後、全量が 1 ml になるように0.1 M TEAA(トリエチルアミン−酢酸)緩衝液(pH7.0)を加え、NAP-10 カラム(Parmacia SephadexG-25)を用いてオリゴヌクレオチドに由来する成分を分取した。その際、NAP-10 カラム はあらかじめ 0.1 M TEAA 緩衝 15ml で平衡化させた後使用した。全量が 1 ml になるようにメスアップした試料をカラムにチャージし、1 ml の溶液が溶出した後、0.1 M TEAA 緩衝 を 1.5 ml チャージした。この直後からの溶出液 1.5 ml を分取した。この得られた溶液を一晩凍結乾燥し、滅菌蒸留水 100 μl を加えて逆相 HPLC により分析した。HPLC にインジェクトした溶液は、20 分の 1 に希釈して分析した。
結果
HPLC測定
カラム:Lichrospher RP-18(Cica-MERCK) 流速:1 ml/min
検出波長:260 nm 試料注入溶媒:超純水
溶離液A:0.1M TEAA buffer(pH7.0), 10 % CH3CN溶液
溶離液B:0.1M TEAA buffer(pH7.0), 40 % CH3CN溶液
【0054】
【表7】



ODN1 との反応性
HPLC 測定結果は図8に示した。
考察
HPLC により反応追跡を行った結果、RT=20 min 付近に目的物と推測されるピークが観察された。ピーク強度により、反応率を算出したところ、DMSO 系で 17 %、MeOH 系で 20 % であり、水/MeOH 系のほうが、反応率が若干高かった。これは、目的物の溶解性や、有機溶媒と水との親和性などが影響していると考えられる。また本実験では、pH= 9.0 の条件下で行った。これはチミン塩基のイミノ基を活性化するためである(イミノ基 pKa= 9.2 )。反応性を向上させるためには、さらに pH を高くすることが考えられるが、pH>10 ではホスホジエステル部の加水分解が起こる可能性がある。従って、pH の最適条件は、pH=9.0 付近であると推測される。また反応濃度であるが、本実験では、ラベル化剤の濃度はオリゴヌクレオチドに対して、約 50 倍でおこなった。これまでの Ajilent を用いた実験では、二本鎖 DNA に対しおよそ 250 倍濃度まで反応性の向上が見られている。
目的物の同定は、RT= 20 min付近の目的物をHPLC分取した後、MALDI TOF MSにより行った。
【0055】
MALDI-TOF-MS の結果
MALDI-TOF-MS 測定の結果の MS スペクトルを図9に示した。この MS スペクトルから、以下のことが明らかとなった。
Laser Intensity:2139 Matrix:3-HPA
目的物:m/z =6631.8
考察
同定の結果、目的物の分子量と一致し、遺伝子ラベル化剤は特異的にチミン塩基と反応していることが明らかとなった。
【0056】
フェロセン化カルボジイミドIIに対する ODN1 の反応条件の検討
フェロセン化カルボジイミドII の ODN1 の反応性に対してpH(A)と温度(B)の影響を調べた。pH に対する実験は、1 mM ODN1 に対して 200 mM のフェロセン化カルボジイミドII を加え 40℃で異なった pH にて 24 h反応を行った。pH7.5 と 8.0 はリン酸緩衝液NaH2PO4/Na2HPO4)を用いた。pH8.5, 9.0, 9.5 においては炭酸緩衝液(NaHCO3/Na2CO3)を用いた。温度に対する実験においては、pH8.5の炭酸緩衝液にて 24 時間緒異なった温度にて反応を行った。
結果を図10に示した。これらの結果よりフェロセン化カルボジイミドIIは pH8.5、45℃で反応させることによりもっとも良い反応効率を与えた。
【0057】
ODN2 との反応性
ODN1 と同様に、ODN2 とフェロセン化カルボジイミドIIとの反応性を調べた。結果を図11に示す。
考察
図11に示した HPLC プロファイルのピーク強度より反応率を算出した結果、DMSO 系で約 9%、MeOH 系で 15% であった。本実験では、反応溶媒により反応性の違いが見られた。さらに、ODN1 と ODN2 の反応性の違いを比較すると、位置特異性はほとんどないと推測された。
これまでの結果から、以後は反応溶媒に水/MeOH系を用いることにした。
ODN3 および ODN4 との反応性
ODN3 および ODN4 とフェロセン化カルボジイミドIIとの反応性を調べた。結果を図12に示す。
考察
図12に示した HPLC プロファイルのピーク強度より反応率を算出した結果、約10 %以下であり、ラベル化剤5とグアニン塩基との反応性はチミン塩基に比べ低いことがわかった。これは、グアニン塩基のイミノ基の反応性がチミン塩基に比べ低いことが原因であると考えられる。
反応性のまとめ
フェロセン化カルボジイミドIIはグアニンがほぼ 10% の反応性を示し、チミンはほほ 20% であった。また、これらのオリゴヌクレオチド上の位置(中心部と末端部)の影響は見られなかった。
【0058】
【表8】



ODN4 および ODN6 との反応性
ODN5 および ODN6 とフェロセン化カルボジイミドIIとの反応性を調べた。結果を図13に示す。
【0059】
考察
図13の HPLC プロファイルから分かるように、RT=23 min付近に目的物と推測されるピークが観測され、3つに分裂したピークであった。これらのピークは、フェロセンが1つ導入されたものと推測される。また反応率は、3 つのピークそれぞれおよそ 17%であった。さらに RT=28 min 付近のピークは、フェロセンが2つ導入されたものと推測できる。反応率を算出した結果、約 6% であり、複数個フェロセンを導入することは難しいと考えられる。この原因としては、導入サイトが隣接しているために立体的嵩張りにより反応が抑制されたと考えられる。しかしながら、反応濃度や温度条件の最適化を行うことにより、反応率の向上も期待される。
【実施例3】
【0060】
配列上に複数個とのチミン部位を有するオリゴヌクレオチドに対するフェロセン化カルボジイミドIIの反応性
オリゴヌクレオチドの濃度を1mMとして1.5MのIIをpH8.5の緩衝液中40℃で24時間反応させた。用いたオリゴヌクレオチドは以下の通りである。

(a) AATAAAAAATAAAAAAATAA (20 mer)
(b) AAAAAAAATTTAAAAAAAAA (20 mer)
(c) TTTTTTTTTTCGACGTTGTAAAACGACGGCCAGT (34 mer)

(a)は連続アデニンを挟んでチミンが存在する場合、(b)は連続したチミンが中心部に存在する場合である。(c)はcDNA、cRNAのモデルとして合成した。
実施例2と同様にして、これらのオリゴヌクレオチドに対するフェロセン化カルボジイミドIIの反応性を HPLC により調べた。得られた結果は図14に示した。図14の HPLC のプロファイルから分かように、いずれの場合も複数個のフェロセンが導入されたが、導入量の増加に伴って反応性が低下した。また、(c)においては導入場所の違いによって多数の異性体が生じ、ブローディングしたピークが得られた。
【実施例4】
【0061】
フェロセン化カルボジイミドII(三級アミン体)とその四級アミン体Vとの反応性の比較
【化25】



フェロセン化カルボジイミドIIの三級アミン部をヨウ化メチルを用いて四級化した四級アミン体Vを新たに合成した。四級アミン体Vとオリゴヌクレオチド ODN1 および ODN2 との炭酸緩衝液およびメタノール含有緩衝液での反応性を調べた。
結果を表9に示した。四級アミン体Vは水溶性が高く、これまでIIを用いる際に使用していたメタノールを用いなくても反応できることが明らかとなった。
【0062】
【表9】


【実施例5】
【0063】
フェロセン化カルボジイミドIIを利用したミスマッチ二本鎖核酸の特異的修飾
図15の模式図に示したように以下の配列 ODN7と ODN8 よりなるフルマッチ二本鎖 DNAと ODN7 と ODN9 よりなるミスマッチ二本鎖 DNA を用いてフェロセン化カルボジイミドIIのミスマッチ特異的反応性を調べた。この配列はリポタンパクリパーゼのSNPに対応する配列である。

ODN7 GGGTCCCCTGGTCGAAGCATTGGAATCCAG
ODN8 CCCAGGGGACCAGCTTCGTAACCTTAGGTC
ODN9 CTCAGGGGACCAGCTTCGTAACCTTAGGTC

200mM のフェロセン化カルボジイミドIIを用いて ODN7 から ODN9 の濃度を 0.1mM として pH8.5 にて 37℃で 24 時間反応させた。その後 HPLC にて反応混合物を分析した。
得られた結果を図16に示した。図16に示すようにフルマッチの場合はほとんどフェロセン化カルボジイミドが反応していないのに対しミスマッチでは高い反応性示した。ここでの HPLC 条件では、二本鎖 DNA が解離して溶出される。従って完全に反応したとしても半分量の未反応 DNA 鎖が存在することになる。
【実施例6】
【0064】
フェロセン化カルボジイミドIIでラベル化した DNA の電気化学的検出
図17に示すように、フェロセン化カルボジイミドIIでラベル化した DNA の電気化学的を行った。
下記の二種の配列を有するオリゴヌクレオチド(a)および(b)とフェロセン化カルボジイミドIIとを、pH8.5 の炭酸緩衝液にて 37℃で 24 時間反応を行った。図17に示すようにHPLC でフェロセン化カルボジイミドIIによる修飾体を分離後、それを用いて電気化学遺伝子検出を行った。これら二つと相補的なオリゴヌクレオチド(c)および(d)を固定化した電極を調整し、分取したフェロセン化カルボジイミドIIラベル化 DNA を 2×SSC で 37℃から 3時間かけて 25℃ とすることによりハイブリダイゼーションを行った。また、電気化学測定は、0.1M KCl を含む 0.02M のリン酸緩衝液(pH7.0)にて 10℃ で 行った。

(a) TTTTTTTTTTCGACGTTGTAAAACGACGGCCAGT
(b) TAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA
(c) 5'-ACTGGCCGTCGTTTTACAACGTCG-3'
(d) 5'-TTTTTTTTTTTTTTTTTTTTT-3'

得られた結果を図18に示した。図18に示したように、本発明のフェロセン化カルボジイミドIIでラベル化した DNA を電気化学的に検出できることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】図1は、参考例1のIのI−1において、カルボジイミド化合物1とオリゴヌクレオチドとの反応物を HPLC に付した時の HPLC プロファイルを示す。
【図2】図2は、参考例1のIのI−1において、カルボジイミド化合物1とオリゴヌクレオチドとの反応物の MALDI-TOF-MS 測定の結果の MS スペクトルを示す。
【図3】図3は、参考例1のIIにおいて、二つのフルマッチ二本鎖オリゴヌクレオチドとカルボジイミド化合物1との反応物を電気泳動に付した結果を示す。
【図4】図4は、参考例1のIIIにおいて、二つのミスマッチ二本鎖オリゴヌクレオチドとカルボジイミド化合物1との反応物を電気泳動に付した結果を示す。
【図5】図5は、参考例1のIVにおいて、ミスマッチ二本鎖およびフルマッチ二本鎖とカルボジイミド化合物1との反応物を電気泳動に付した結果を示す。
【図6】図6は、参考例1のVIにおいて、ミスマッチ二本鎖およびフルマッチ二本鎖とカルボジイミド化合物1との反応物を電気泳動に付した結果を示す。
【図7】図7は、実施例1で合成した本発明のカルボジイミド誘導体(フェロセン化カルボジイミドII)の IR測定結果を示す。
【図8】図8は、実施例2において、本発明のカルボジイミド誘導体(フェロセン化カルボジイミドII)とオリゴヌクレオチド ODN1 との反応物を HPLC に付した時の HPLC プロファイルを示す。
【図9】図9は、実施例2において、本発明のカルボジイミド誘導体(フェロセン化カルボジイミドII)とオリゴヌクレオチド ODN1 との反応物の MALDI-TOF-MS 測定の結果の MS スペクトルを示す。
【図10】図10は、実施例2において、本発明のカルボジイミド誘導体(フェロセン化カルボジイミドII)とオリゴヌクレオチド ODN1 との反応性を pH 値および温度を変化させて調べたグラフを示す。
【図11】図11は、実施例2において、本発明のカルボジイミド誘導体(フェロセン化カルボジイミドII)とオリゴヌクレオチド ODN2 との反応物を HPLC に付した時の HPLC プロファイルを示す。
【図12】図12は、実施例2において、本発明のカルボジイミド誘導体(フェロセン化カルボジイミドII)とオリゴヌクレオチド ODN3 および ODN4 との反応物を HPLC に付した時の HPLC プロファイルを示す。
【図13】図13は、実施例2において、本発明のカルボジイミド誘導体(フェロセン化カルボジイミドII)とオリゴヌクレオチド ODN5 および ODN6 との反応物を HPLC に付した時の HPLC プロファイルを示す。
【図14】図14は、実施例3において、配列上に複数個とのチミン部位を有するオリゴヌクレオチドと本発明のカルボジイミド誘導体(フェロセン化カルボジイミドII)との反応物を HPLC に付した時の HPLC プロファイルを示す。
【図15】図15は、本発明のカルボジイミド誘導体とフルマッチ二本鎖 DNA およびミスマッチ二本鎖 DNA との反応の模式図を示す。
【図16】図16は、実施例4において、フルマッチ二重らせんDNA(左)とミスマッチ二重らせん(右)とフェロセン化カルボジイミドIIとの反応後のHPLC による分析結果を示す。
【図17】図17は、本発明のカルボジイミド誘導体でラベル化した DNA の電気化学的検出例を示す模式図である。
【図18】図18は、実施例5において、フェロセン化カルボジイミドIIを用いて電気化学的に検出した時の結果を示す。
【図19】図19は、本発明のカルボジイミド誘導体を用いたラベル化法の応用例を概略的に示した。
【図20】図20は、シグナル基としてフェロセン基を有する本発明のカルボジイミド誘導体を用いて mRNA を電気化学的に検出する模式図を示す。
【図21】図21は、シグナル基としてフェロセン基を有する本発明のカルボジイミド誘導体でラベル化された一本鎖 DNA を DNA プローブ修飾電極を用いて検出する模式図を示す。
【図22】図22は、シグナル基としてフェロセン基を有する本発明のカルボジイミド誘導体を利用して電気化学的に SNP を検出する模式図を示す。
【図23】図23は、シグナル基としてフェロセン基を有する本発明のカルボジイミド誘導体を利用して、ヘテロ接合体の SNP を検出する模式図を示す。
【図24】図24は、シグナル基としてフェロセン基を有する本発明のカルボジイミド誘導体を用いて、酵素による塩基伸長反応を利用した SNP の検出の模式図を示す。
【出願人】 【識別番号】596057011
【氏名又は名称】竹中 繁織
【出願日】 平成16年3月18日(2004.3.18)
【代理人】 【識別番号】100066692
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 皓

【識別番号】100072040
【弁理士】
【氏名又は名称】浅村 肇

【識別番号】100088926
【弁理士】
【氏名又は名称】長沼 暉夫

【識別番号】100102897
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 幸弘

【公開番号】 特開2005−265617(P2005−265617A)
【公開日】 平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願番号】 特願2004−78900(P2004−78900)