トップ :: G 物理学 :: G01 測定;試験

【発明の名称】 表面プラズモン共鳴センサ及びそのセンサを用いた表面プラズモン共鳴センサ装置並びにそのセンサを用いた検出方法
【発明者】 【氏名】ミケレット・ルジェロ

【氏名】川上 養一

【氏名】藤田 茂夫

【氏名】河井 昭治

【氏名】中田 幸男

【要約】 【課題】小型化及び軽量化が可能で、かつ作製の容易な表面プラズモン共鳴センサ及びそれを用いた表面プラズモン共鳴センサ装置を提供すること。

【解決手段】ガラスファイバー又はプラスチックファイバーから成り、出射端面と該ファイバーの軸方向に対して傾斜角を有する入射端面とを有する導光体と、その導光体の外周面に形成された金属薄膜とを有する表面プラズモン共鳴センサである。光源からの光を入射端面から入射させ導光体と金属薄膜との界面で全反射せしめて金属薄膜の表面上に表面プラズモンを発生させ、金属薄膜からの反射光を出射端面から出射させる。ガラスファイバー又はプラスチックファイバーを導光体に用いることにより、軽量、小型で、かつ作製が容易で安価な表面プラズモン共鳴センサを提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスファイバー又はプラスチックファイバーから成り、出射端面と該ファイバーの軸方向に対して傾斜角を有する入射端面とを有する導光体と、該導光体の外周面に形成された金属薄膜とを有し、
光源からの光を上記入射端面から入射させ上記導光体と上記金属薄膜との界面で全反射せしめて上記金属薄膜の表面上に表面プラズモンを発生させ、上記金属薄膜からの反射光を上記出射端面から出射させるようにした表面プラズモン共鳴センサ。
【請求項2】
上記傾斜角が45度である請求項1記載の表面プラズモン共鳴センサ。
【請求項3】
上記光源に単色光源を用いる請求項1又は2に記載の表面プラズモン共鳴センサ。
【請求項4】
上記金属薄膜の表面に、分子認識物質を含むプローブ層を有する請求項1から3のいずれか一つに記載の表面プラズモン共鳴センサ。
【請求項5】
長手方向に延びる凹溝を有する基板を有しており、該凹溝内に上記入射端面と出射端面とを露出させた状態で上記導光体を収容する一方、該凹溝内に試料流体を供給するようにした請求項1から4のいずれか一つに記載の表面プラズモン共鳴センサ。
【請求項6】
上記凹溝を密閉する着脱可能な保護板を有しており、さらに該保護板は、凹溝の上に配設された試料注入孔と空気抜き孔を有する請求項5記載の表面プラズモン共鳴センサ。
【請求項7】
ガラスファイバー又はプラスチックファイバーから成り、出射端面と該ファイバーの軸方向に対して傾斜角を有する入射端面とを有する導光体と、該導光体の外周面に形成された金属薄膜とを有する表面プラズモン共鳴センサと、該導光体の入射端面に入射光を供給する光源と、該導光体の出射端面からの出射光を検出する光検出器とを有する表面プラズモン共鳴センサ装置。
【請求項8】
光源に単色光源を用いる請求項7記載の表面プラズモン共鳴センサ装置。
【請求項9】
ガラスファイバー又はプラスチックファイバーから成り、出射端面と該ファイバーの軸方向に対して傾斜角を有する入射端面とを有する導光体と、該導光体の外周面に形成された金属薄膜とを有する表面プラズモン共鳴センサを用いる検出方法であって、
被検出物質を上記金属薄膜の表面に供給する一方、
光源からの単色光を、上記導光体と上記金属薄膜との界面で全反射可能に上記入射端面に入射させて上記金属薄膜の表面に表面プラズモンを発生させ、上記金属薄膜からの反射光を出射端面から出射させて該反射光を光検出器により受光し、
上記反射光の強度変化から上記被検出物質を検出する表面プラズモン共鳴センサを用いる検出方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、表面プラズモン共鳴を利用した表面プラズモン共鳴センサ及びそのセンサを用いた表面プラズモン共鳴センサ装置並びにそのセンサを用いた検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
表面プラズモン共鳴センサ(以下、SPRセンサと略す)は、金属表面に生じる表面プラズモンが光波によって励起される現象を利用するものであり、化学や生化学の分野で検体を非破壊かつリアルタイムで分析できる高感度な検出方法である。例えば、免疫反応等の生体物質間相互作用を放射性同位元素や色素等による標識化によることなくリアルタイムで検出することができる。
【0003】
表面プラズモンの励起方法には、例えば、Kretschmann配置が用いられている。Kretschmann配置は、基本的に、導光体のプリズムと、このプリズムの底面に形成され試料と接触する金属薄膜と、光ビームを発生させる光源と、プリズムと金属薄膜との界面に種々の入射角で光ビームを入射させる光学系と、プリズムと金属薄膜との界面で全反射した光ビームの強度を入射角毎に検出可能な検出器とから構成されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
全反射角以上の入射角でプリズム側から金属薄膜に光ビームを入射させると、金属薄膜が十分に薄い場合、金属薄膜の表面にエバネッセント波が染み出してくる。このエバネッセント波の波数と表面プラズモンの波数が一致すると両者は共鳴状態となり、光のエネルギーが表面プラズモンに移行して表面プラズモンが励起される。この時、入射光のエネルギーが消費されるため、反射光の強度が低下する。具体的には、光学系により金属薄膜への入射角を変化させながら反射光の強度を検出器により検出して反射光強度曲線を作成し、反射光の強度の低下が最も大きい入射角を求める。ここで、表面プラズモンの波数は、金属薄膜表面のごく近傍に存在する媒質の屈折率の影響を受ける。そのため、測定対象物の変化により媒質の屈折率が変化すると、表面プラズモン共鳴が生じる入射角、すなわち共鳴角が変化する。したがって、共鳴角のずれによって、測定対象物の濃度の変化を検出することができる。
【0005】
しかし、導光体にプリズムを用いるSPRセンサは、入射角を変化させるため、光源と検出器の駆動機構が必要となりセンサシステムが大型化せざるを得ず、センサシステムの小型化及び軽量化が困難である。これに対し、近年、小型化及び軽量化の可能な光ファイバーを用い、クラッド層を除去して露出させたコア層の先端面に表面プラズモン共鳴の測定面を形成したSPRセンサが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平6−167443号公報
【特許文献2】特開2001−165852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、光ファイバーの先端に測定面を形成する方法は、クラッド層を除去し、コア層の先端に尖鋭化した測定面を設ける必要があり、加工が困難であり、また測定面が限定されるという問題がある。
そこで、本発明は、上記課題を解決し、小型化及び軽量化が可能で、かつ作製の容易なSPRセンサ及びそれを用いたSPRセンサシステム並びにそのセンサを用いた検出方法を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明の表面プラズモン共鳴センサは、ガラスファイバー又はプラスチックファイバーから成り、出射端面と該ファイバーの軸方向に対して傾斜角を有する入射端面とを有する導光体と、該導光体の外周面に形成された金属薄膜とを有し、
光源からの光を上記入射端面から入射させ上記導光体と上記金属薄膜との界面で全反射せしめて上記金属薄膜の表面上に表面プラズモンを発生させ、上記金属薄膜からの反射光を上記出射端面から出射させるようにしたことを特徴とする。
【0008】
また、本発明のSPRセンサは、傾斜角を45度とすることができる。さらに、光源には単色光源を用いることができる。
【0009】
また、本発明のSPRセンサには、長手方向に延びる凹溝を有する基板を有しており、該凹溝内に上記入射端面と出射端面とを露出させた状態で上記導光体を収容する一方、該凹溝内に試料流体を供給するようにしたものを用いることができる。また、上記凹溝を密閉する着脱可能な保護板を設け、さらにその保護板には、凹溝の上に配設された試料注入孔と空気抜き孔を有するものを用いることができる。
【0010】
また、本発明のSPRセンサには、上記金属薄膜の表面に形成された、分子認識物質を含むプローブ層を有するものを用いることができる。
【0011】
また、本発明には、上記のSPRセンサを用いたSPRセンサ装置も含まれる。すなわち、本発明のSPRセンサ装置は、入射端面と出射端面とを有するガラスファイバーからなる導光体と、該導光体の周方向に密着して形成された金属薄膜とを有する表面プラズモン共鳴センサと、該導光体の入射端面に入射光を供給する光源と、該導光体の出射端面からの出射光を検出する光検出器とを有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明には、上記SPRセンサを用いた検出方法も含まれる。すなわち、本発明の検出方法は、ガラスファイバー又はプラスチックファイバーから成り、出射端面と該ファイバーの軸方向に対して傾斜角を有する入射端面とを有する導光体と、該導光体の外周面に形成された金属薄膜とを有する表面プラズモン共鳴センサを用いる検出方法であって、被検出物質を上記金属薄膜の表面に供給する一方、光源からの単色光を、上記導光体と上記金属薄膜との界面で全反射可能に上記入射端面に入射させて上記金属薄膜の表面に表面プラズモンを発生させ、上記金属薄膜からの反射光を出射端面から出射させて該反射光を光検出器により受光し、上記反射光の強度変化から上記被検出物質を検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のSPRセンサは、導光体にガラスファイバー又はプラスチックファイバーを用い、そのファイバーの外周面に金属薄膜を形成したものである。ガラスファイバー又はプラスチックファイバーを用いているため、軽量・小型化が可能であることは言うまでもない。また、ファイバーの外周面を測定面に用いることができるので、従来のように、光ファイバーのクラッド層を除去してコア層を露出させ、さらにコア層の先端面を尖鋭化する等の微細加工が不要であり、より安価なセンサを提供できる。また、測定面が限定されず、広い測定面積を確保することができるので、被検出物質との接触面積を増加させて感度を向上させることができる。また、従来のように端面に測定面を設ける必要がないので、端面に均一厚みの金属薄膜を形成する必要がなく製造が容易である。また、端面反射により反射光の強度の損失が発生することもない。さらに、端面に測定面がないので、反射光の検出のためビームスピリッタ等の光学部品が不要であり、より安価な測定装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
図1から3は、本実施の形態に係るSPRセンサの構造の一例を示す模式図であり、図2は模式平面図、図2は図1のII-II'線模式断面図、そして図3は側面図である。SPRセンサAは、基板1の長手方向に形成された凹溝1aの中に、ガラスファイバー2を固定した構造を有している。ガラスファイバー2は、両端面を露出した状態で両端部が樹脂3により接着固定されている。また、基板1の上には、ガラスファイバー2を覆うように保護板4が固着されている。
【0015】
ガラスファイバー2は、その中間部に、外周面の全面に形成された金属薄膜を有する検出部2cを有している。入射光は、ガラスファイバー2の入射端面2aから入射し、試料と接触する検出部2cを通り、出射端面2bから出射する。ここで、入射端面2aはガラスファイバー2の軸方向に対して45度の傾斜角を有している。保護板4は、凹溝1aに沿って穿設された試料注入孔4aとガス抜き孔4bとを有しており、試料注入孔4aから試料を注入することができる。
【0016】
図4は、本実施の形態に係るSPRセンサを用いたSPRセンサ装置の構成の一例を示す模式図である。光源10から出力された光14は、ファイバーカプラ11により集光されSPRセンサAに導入される。導入された光は、ガラスファイバーと金属薄膜との界面で反射を繰り返しながら出射する。出射光は、光検出器12により受光され、パーソナルコンピュータ13により出射光の光量変化やスペクトル変化が解析される。これにより試料に含まれる被検出物質の検出あるいはその濃度変化の検出を行うことができる。
【0017】
光源には、レーザ光等の単色光源又は白色光源を用いることができる。単色光源を用いる場合、入射角を一定にする方法を用いることが好ましい。ガラスファイバーへの入射角を一定とし、検出部のファイバー/金属薄膜の界面で反射される反射光の光量を光検出器で計測し、反射光の強度低下を測定する。強度低下は、検出部の表面に存在する被検出物質の屈折率に依存するため、強度低下の程度から被検出物質の種類や濃度を検出することができる。ここで、入射角とは、ガラスファイバーの垂直端面に対する入射光の角度をいう。
【0018】
一方、白色光源を用いる場合、出射光を分光器により計測する。受光した反射光のスペクトルから各波長における光の強度を算出して表面プラズモン共鳴により強度の低下した波長を算出する。表面プラズモン共鳴が生じる波長の変化から、被検出物質の種類やその濃度を検出する。
【0019】
なお、本発明においては、光源には単色光源を用いることが好ましい。特にレーザ光を用いることにより、伝送損失を少なくすることができ、また波長分散の影響を減らして伝送歪を少なくすることができる。また、反射光の強度を直接測定することができるので、検出に分光器を用いる方法に比べ、より迅速かつ高精度の測定が可能だからである。
【0020】
本発明に用いるファイバーには、光ファイバーに使用される公知のガラスファイバー又はプラスチックファイバーを用いることができる。ガラスファイバーには石英ファイバーと多成分ガラスファイバーが含まれる。ここで、用いるファイバーの屈折率は、共鳴角や共鳴波長に影響を与える。例えば、屈折率1.46の石英ファイバーは、約1.32〜1.45の屈折率の測定が可能であり、また波長400〜1000nmの範囲で共鳴波長を観測することができる。石英ファイバーの屈折率より大きいファイバーを用いると、測定可能な屈折率の範囲(ダイナミックレンジ)を大きくすることができる。逆に、ファイバーの屈折率を石英ファイバーより小さくすると、ダイナミックレンジを小さくすることができる。また、ファイバーの直径は、極端に細いものは強度が弱く取り扱いが容易ではないため、100μm〜2000μm、より好ましくは、100μm〜1000μmである。また、検出部に導入された入射光の内、共鳴条件を満たす反射角度で伝達される光は、反射回数とともに指数関数的に減衰する。そのため、検出部の長さは、検出部における入射光の反射回数を1回以上となるようにする必要がある。
【0021】
また、ファイバーの入射端面に、ファイバーの軸方向に対して傾斜角を設けることが好ましい。表面プラズモン共鳴を発生させるには光を全反射条件で入射する必要があり、通常深い入射角が必要になる。本発明では端面に傾斜角を設けているので、入射角の範囲を広くすることができる。これにより、広い範囲の共鳴角を測定することができ、多くの種類の被検出物質を検出することが可能となる。特に、傾斜角を45度とすることにより約16度から約73度の広い範囲で入射光を端面に入射させることができる。これに対し、傾斜角を有しない場合には、約48度以上の深い入射角を得ることは困難である。なお、傾斜角を所定の角度に加工するには、回転研磨装置等を用いて行うことができる。
【0022】
金属薄膜に用いる金属は、高い反射率を有する金、銀、白金等を挙げることができる。これらを単独又は複数組み合わせて使用することもできる。金属薄膜の厚さは、10〜200nm、より好ましくは10〜50nmである。200nmを超えると、表面プラズモン共鳴が減少して十分に検出することができないからである。金属薄膜の形成方法は、所定の膜厚を均一に形成できる方法であれば特に限定されない。例えば、スパッタリング法や蒸着法を用いることができる。
【0023】
測定に際しては、被検出物質を金属薄膜に接触させ、金属薄膜に接する媒体の屈折率変化を測定するが、金属薄膜の表面に疎水層を形成することが好ましい。金属薄膜への水分の吸着を抑制して、湿度変化に起因する共鳴条件のドリフトを防止することができる。疎水層には、単分子膜を形成する界面活性物質、例えばアルキルチオールを用いても良く、又はシラン処理を行っても良い。また、金属薄膜の表面に分子認識物質を含むプローブ層を設け、被検出物質との相互作用によるプローブ層の屈折率変化を測定することにより、被検出物質及びその濃度を検出することもできる。分子認識物質には、抗原や抗体等のタンパク質、核酸等の生体由来物質や、特定の物質に親和性を有する合成物質等を用いることができる。
【0024】
また、分子認識物質をリンカーにより金属薄膜上に固定することができる。リンカーは予めプローブ層の下地層として金属薄膜上に固定することができ、アミノ基又はチオール基を有する化合物、ペプチド、アビジン、ビオチン、ヒスチジン等を用いることができる。これらのリンカーは予め化学修飾により分子認識物質に導入することもできる。
【0025】
例えば、特定の塩基配列をハイブリダイゼーションにより検出する遺伝子検出方法に適用する場合、多数のDNA又はオリゴヌクレオチドの配列(プローブ核酸)を、金属薄膜上にスポット固定する。ここで、金属薄膜への固定にはプローブ核酸を構成する官能基であるチオール基との結合により行う。検体となる標識した試料RNA(標的核酸)を含む溶液をセンサの検出部に滴下すると、固定したプローブ核酸と、標的核酸とのハイブリダイゼーションによりプローブ核酸と相補的な塩基配列を有する標的核酸が選択的にプローブ核酸と結合する。このハイブリダイゼーションに伴う共鳴角や反射光強度の変化を測定する。
【0026】
図1には、バッチタイプのSPRセンサの例を示したが、試料を連続的あるいは断続的に測定するフロータイプとしても用いることができる。フロータイプとして用いる場合、例えば保護板に外部に連通した流路を設ければ良い。試料は、流路を通じてSPRセンサの検出部に流れ込み、測定に供された後、流路を通じて外部に排出される。流速の調整は、コンピュータの指令により作動するポンプで行うことができる。
【0027】
また、図1には、基板上にファイバーを1本配置した例を示したが、複数本のファイバーを基板上に配置することもできる。これによれば、多種の被検出物質を同時に検出することが可能となる。すなわち、複数本のファイバーの金属薄膜のそれぞれに、特定の検出物質と反応するプローブ層を設け、各ファイバーに単色光源又は白色光源から光を導入し、各ファイバーからの出射光を複数の光検出器を用いて検出する方法を用いることができる。
【0028】
また、複数本のファイバーを用いる場合、その内の1本を温度補償部とし、残部を計測部とすることもできる。表面プラズモン共鳴は温度の影響を受けるため、共鳴角あるいは反射光強度が温度の影響により変動する。そのため、一般には、SPRセンサを恒温室に入れるが、そうすると装置が大がかりになる。試料が液体や気体の場合、被検出物質を含まない液体又は気体のみと接するように、例えば温度補償部を閉鎖された隔室内に配置することができる。具体的には、温度センサを用いて検出部の温度を測定する一方、計測部からの共鳴角又は反射光強度のデータから温度補償部からの共鳴角又は反射光強度のデータを差し引けば良い。また、温度補償部にもプローブ層を設けるが、その厚さを表面プラズモン共鳴を引き起こすエバネッセント波が滲み出ない厚さとすることもできる。この場合、共鳴角又は反射光強度はプローブ層の持つ一体の屈折率にのみ依存することとなり、その変動は温度変化のみによることとなる。この場合のプローブ層の厚さは100nm以上とすることが好ましい。
【0029】
また、図4に示した測定システムでは、SPRセンサのファイバーの一端面からの反射光を光検出器で受光できるように、光軸を一致させた状態で、光源と光検出器を配置した例を示したが、SPRセンサを光ファイバーを介して光源と光検出器に接続することもできる。この方法によれば、光源と光検出器をSPRセンサの側に配置する必要がないので、リモートセンシングが可能となる。この場合、SPRセンサと光ファイバーとの接続には、例えば、公知の着脱可能なコネクタ方式を用いることができる。すなわち、精度よくつくられた微細孔の中に接着剤を用いてあるいはカシメ等により光ファイバーの端部を固定した光ファイバーブロックを、嵌合スリーブを用いてSPRセンサと接続してファイバー同士を位置合わせする方法を用いることができる。また、高精度につくられたV溝の中に光ファイバーの端部を接着固定した光ファイバーブロックを、ファイバー同士を突き合わせるようにして、SPRセンサと接続する方法を用いることもできる。
【実施例】
【0030】
以下、実施例を用いて本発明を具体的に説明する。
実施例1.
(SPRセンサの作製)
コアレスファイバー(フジクラ製、直径1mm、屈折率1.51)(以下、ファイバーと略す)を長さ7cmにカットして用いた。ファイバーの外周面の全面に金を50nmの厚さに蒸着した。ファイバーの一端面を傾斜角が45度になるように回転研磨した。次いで、ファイバーを基板の凹溝内に配置し、両端面を露出した状態で両端部を樹脂により接着固定した。次いで、基板の上に、ファイバーを覆うように保護板を固着してSPRセンサを得た。
【0031】
(測定)
図4の測定システムを用いた。SPRセンサは、移動ステージ(不図示)上に固定された固定治具(不図示)の上に固定した。移動ステージを移動させることにより、光源から一定の入射角(本実施例では45度)でSPRセンサのファイバーに光が入射するようにした。なお、光源には、He-Neレーザを用い、ファイバー内を反射して出射した反射光の強度を検出器により測定した。
【0032】
(結果)
図5(a)は、エタノールをSPRセンサの検出部に滴下する様子を示した模式図であり、図5(b)は反射光強度の時間変化を示すグラフである。そして図6(a)は、1mMオクタデカンチオールのエタノール溶液をSPRセンサの検出部に滴下する様子を示した模式図であり、図6(b)は反射光強度の時間変化を示すグラフである。エタノールを添加した場合には、反射光強度の低下はないが、オクタデカンチオールを滴下すると、図6(b)に示すように反射光強度は低下した。これは、オクタデカンチオールが金属薄膜上に単分子膜を形成し表面の屈折率を大きくするためである。オクタデカンチオールの分子鎖長は2nmであり、その質量は0.1pg(0.1 x 10-12g)である。本実験によれば、ガラスファイバーを用いたSPRセンサによりpgレベルの高感度な検出が可能であることを証明できた。
【0033】
実施例2.
本実施例では、SPRセンサへのレーザ光の入射角を90度とした以外は、実施例1と同様の条件で測定を行った。図7はエタノールのみを、図8は1mMオクタデカンチオールのエタノール溶液をSPRセンサの検出部に滴下した場合の結果を示している。本実施例においてもオクタデカンチオールの検出は可能であった。しかし、S/Nは2であり、入射角を45度にした実施例1のS/N=3に比べ低い値であった。
【0034】
実施例3.
本実施例では、実施例1のSPRセンサを用い、検出部に純水、メタノール、エタノールをこの順で添加した。なお、各液体を添加する前には、検出部に空気を流して液体を除去した。図9は入射角を45度とした場合、そして図10は入射角を90度とした場合の結果を示す。図9に示すように、水、メタノール、そしてエタノールで反射光強度が異なっており、これらの液体を識別することが可能であることを確認できた。また、入射角が90度の場合、液体間の反射光強度の差が少なくなっている。
【0035】
実施例4.
本実施例では、実施例1のSPRセンサを用い、反射光強度の入射角依存性を調べた。試料には純水を用いた。結果を図11に示す。ここで、反射光強度は出力電圧で表している。試料に純水を用いた場合、入射角約40〜44度の範囲で高い出力電圧が得られ、入射角を変化させて共鳴角を求めることも可能であることを確認した。
【0036】
以上、説明したように、本発明のSPRセンサは、外周面に金属薄膜を有するガラスファイバー又はプラスチックファイバーから構成されているので、軽量化や小型化が可能で、かつ作製が容易で安価なSPRセンサを提供することが可能となる。
なお、本発明は、例示された実施例に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の改良及び設計上の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明のSPRセンサの構造の一例を示す模式平面図である。
【図2】図1のSPRセンサのII-II'線に沿った模式断面図である。
【図3】図1のSPRセンサの模式側面図である。
【図4】本発明のSPRセンサを用いたSPRセンサシステムの構成の一例を示す模式図である。
【図5】実施例1において試料にエタノールを用いた場合の測定方法と結果を示す図であり、(a)は測定方法を示す模式図、(b)は反射光強度の時間変化を示すグラフである。
【図6】実施例1において試料にオクタデカンチオールのエタノール溶液を用いた場合の測定方法と結果を示す図であり、(a)は測定方法を示す模式図、(b)は反射光強度の時間変化を示すグラフである。
【図7】実施例2において試料にエタノールを用いた場合の反射光強度の時間変化を示すグラフである。
【図8】実施例2において試料にオクタデカンチオールのエタノール溶液を用いた場合の反射光強度の時間変化を示すグラフである。
【図9】実施例3において入射角を45度にした場合の反射光強度の時間変化を示すグラフである。
【図10】実施例3において入射角を90度にした場合の反射光強度の時間変化を示すグラフである。
【図11】実施例4の結果を示すグラフであり、入射角と出力電圧の関係を示すグラフである。
【符号の説明】
【0038】
1 基板、 1a 凹溝、 2 ガラスファイバー、 2a 入射端面、 2b 出射端面、 2c 検出部、 3 樹脂、 4 保護板、 4a 試料注入孔、 4b ガス抜き孔、 10 光源、 11 ファイバーカプラ、 12 光検出器、 13 コンピュータ、 A SPRセンサ。

【出願人】 【識別番号】504132272
【氏名又は名称】国立大学法人京都大学
【識別番号】501445977
【氏名又は名称】テラメックス株式会社
【出願日】 平成16年3月15日(2004.3.15)
【代理人】 【識別番号】100086405
【弁理士】
【氏名又は名称】河宮 治

【識別番号】100091465
【弁理士】
【氏名又は名称】石井 久夫

【公開番号】 特開2005−257631(P2005−257631A)
【公開日】 平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願番号】 特願2004−72908(P2004−72908)