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【発明の名称】 タイヤコード織物及びタイヤ用ゴム部材の製造方法、並びに空気入りタイヤ
【発明者】 【氏名】平野 新一
【住所又は居所】東京都小平市小川東町3−1−1 株式会社ブリヂストン技術センター内

【要約】 【課題】ゴムのトッピング前に所定の幅に分割することが可能なタイヤコード織物の製造方法を提供する。

【解決手段】複数本の経糸を長手方向に整列配置し引き揃えて走行させ、走行中の該経糸を前記長手方向と直交する方向に移動可能な自走式ミシンで縫い留めすることを特徴とするタイヤコード織物の製造方法である。上記ミシンは、1基又は複数基のミシンヘッドを有し、該ミシンヘッドが、経糸長手方向の経糸の進行速度に対して2分の1〜1分の2の範囲の速度で移動するのが好ましい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の経糸を長手方向に整列配置し引き揃えて走行させ、走行中の該経糸を前記長手方向と直交する方向に移動可能な自走式ミシンで縫い留めすることを特徴とするタイヤコード織物の製造方法。
【請求項2】
前記ミシンが1基又は複数基のミシンヘッドを有することを特徴とする請求項1に記載のタイヤコード織物の製造方法。
【請求項3】
前記ミシンヘッドが経糸長手方向の経糸の進行速度に対して2分の1〜1分の2の範囲の速度で移動することを特徴とする請求項2に記載のタイヤコード織物の製造方法。
【請求項4】
前記経糸が有機繊維及び/又は無機繊維からなることを特徴とする請求項1に記載のタイヤコード織物の製造方法。
【請求項5】
前記経糸を、経糸の長手方向3cm〜30cm当り1回の割合で縫い留めすることを特徴とする請求項1に記載のタイヤコード織物の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の方法で織物を製造し、ディップ処理後、縫い留めしたミシン糸を切断することにより経糸を単線コードとし、これらを再整列した後、ゴムをトッピングすることを特徴とするタイヤ用ゴム部材の製造方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法で製造したゴム部材をカーカスに用いたことを特徴とする空気入りタイヤ。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤコード織物及びタイヤ用ゴム部材の製造方法、並びに該ゴム部材を用いた空気入りタイヤに関し、特にゴムのトッピング前に所定の幅に分割することが可能なタイヤコード織物の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、空気入りタイヤに用いられる織物の製造装置としては、一般に、リードと呼ばれる経糸間間隔保持装置で経糸を整列し、ヘルド装置で該経糸を1本又は複数本おきに上下に開口させ、その開口部に緯糸を次々に装填して簾状に製織してゆく豊田織機、スルーザー織機等が知られている。このような装置で製織された織物においては、図1に示すように、緯糸1が経糸2と直交する形で平織り配列されている。
【0003】
しかしながら、上記製織装置で製造された織物には、緯糸の張力が大きいと、配列した経糸が経糸長手方向に波打つ一方、緯糸の張力が弱いと、経糸を規則正しく整列することができないという問題がある。また、上記製織装置でタイヤ用織物を製造した場合、ヘルドで経糸を開口させた際に、該経糸が激しく上下するため、静電気が発生しやすく、更に、緯糸風綿が多量に発生するため、作業環境の点でも問題があった。
【0004】
また、上記製織に用いられる緯糸は、製織工程からディップ工程、更にはカレンダー工程までは重要な役割を有するものの、製品タイヤ中では特に機能がなく、近年では、この緯糸を取り去り、経糸を再整列して使用する方式のゴムトッピング方式が用いられており、緯糸が邪魔になるという問題が生じてきている。ここで、上記緯糸は、織物の形状を保つために、1cm〜3cm当り1本の割合で打ち込まれているため、該緯糸を織物から取り去ることは容易でない。
【0005】
また、上記織物は、ゴムをトッピングする前にその緯糸を切断すると、経糸がバラけてしまうため、緯糸を切断する前に全幅一時にゴムをトッピングする必要があり、大規模な製造設備を要していた。
【0006】
さらに、上記織物に従来の方法でゴムをトッピングして帯状のゴム部材を作製すると、緯糸の拘束力で経糸の分布が幅方向に不均一の状態のままゴムがトッピングされたり、図2に示すように、経糸2が同一面上に配置されず、ゴム部材の表面に対して経糸2が上下に蛇行して、ゴム部材が畳表状になるという欠点もある。また、帯状ゴム部材の表面から経糸2までの距離が短い部分(ゴム3の厚さが薄い部分)が発生するため、ゴム部材の耐久性が低下してしまうという欠点がある。さらに、作製されたゴム部材の部位によっては、緯糸1の拘束力が強く、ゴム部材表面に経糸2が露出したり、トッピングしたゴム3にクラックが発生したりする欠点がある。
【0007】
一方、近年、図3に示すように、ガイド部材4に等間隔離して設けられた多数の円弧溝5に織物の経糸2を接触させることにより、該経糸2を整列させ、緯糸1をそのままの状態で(切断することなく)ゴムをトッピングする方法が提案されている。しかしながら、この方法では、緯糸1が経糸2を繋ぎ止める力によって、経糸2が円弧溝5から飛び出して経糸2の間隔(エンズ分布)が乱れるため、経糸2の間隔を精密に制御することができず、不良品が多く発生するという欠点がある。また、この方法では、緯糸1の拘束力によって、経糸2が同一面上に配置されないため、上述した帯状ゴム部材の表面に対して経糸2が上下に蛇行するという欠点は解決できない。
【0008】
【特許文献1】
特開2003−39574号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明の目的は、ゴムのトッピング前に所定の幅に分割することが可能なタイヤコード織物の製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる方法で製造されたタイヤコード織物を用いたゴム部材であって、該ゴム部材中の経糸の分布が確実且つ精密にコントロールされたタイヤ用ゴム部材の製造方法を提供することにある。更に、本発明のその他の目的は、かかる方法により製造されたゴム部材を具え、ユニフォミティーと耐久性に優れた空気入りタイヤを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、タイヤコード織物の製造において、経糸をミシンで縫い留めすることにより、ディップ工程後に該織物を所定の幅に分割することができ、更に、該織物の経糸を単線コードに細分した後、該経糸を整列してゴムをトッピングしてゴム部材を製造することで、ゴム部材における経糸分布を均一にできることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0011】
即ち、本発明のタイヤコード織物の製造方法は、複数本の経糸を長手方向に整列配置し引き揃えて走行させ、走行中の該経糸を前記長手方向と直交する方向に移動可能な自走式ミシンで縫い留め、所謂、ミシン掛けすることを特徴とする。
【0012】
本発明のタイヤコード織物の製造方法の好適例においては、前記ミシンが1基又は複数基のミシンヘッドを有する。ここで、該ミシンヘッドが経糸長手方向の経糸の進行速度に対して2分の1〜1分の2の範囲の速度で移動するのが好ましい。
【0013】
本発明のタイヤコード織物の製造方法の好適例においては、前記経糸が有機繊維及び/又は無機繊維からなる。
【0014】
本発明のタイヤコード織物の製造方法の好適例においては、前記経糸を、経糸の長手方向3cm〜30cm当り1回の割合で縫い留めする。
【0015】
また、本発明のタイヤ用ゴム部材の製造方法は、上記の方法で織物を製造し、該織物をディップ処理後、縫い留めに使用したミシン糸を切断することにより経糸を単線コードとし、これら単線コードを再整列した後、ゴムをトッピングすることを特徴とする。
【0016】
更に、本発明の空気入りタイヤは、上記の方法で製造したゴム部材をカーカスに用いたことを特徴とする。ここで、本発明の空気入りタイヤにおいて、タイヤ内に充填する気体としては、通常の或いは酸素分圧を変えた空気、又は窒素等の不活性ガスを用いることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を図を参照しつつ詳細に説明する。図4は本発明の方法で製造したタイヤコード織物の平面図で、図5は本発明の方法で製造したタイヤ用ゴム部材の断面図である。なお、図4において、(a)は、ミシンヘッドを1基有するミシンを用いて製造した織物を示し、(b)は、ミシンヘッドを2基有するミシンを用いて製造した織物を示し、(c)は、ミシンヘッドを4基有するミシンを用いて製造した織物を示し、何れの織物においても、長手方向に整列配置された経糸2がミシン糸6と交わり、織物組織を形成している。ここで、ミシン縫いピッチは、好ましくは経糸2の中心と経糸2の中心を結ぶ2点間の距離か、その2ないし3倍の距離の等ピッチであり、経糸2と経糸2の間で縫い留めるのが好ましいが、必ずしも経糸2と経糸2の間で縫い留めなくてもよい。本発明のタイヤコード織物の製造方法においては、経糸2を1本又は複数本毎にミシンで縫い留める。なお、経糸2の縫い留めに使用するミシン糸6は、後工程で熱処理されるため、その熱処理温度より高い融点を有する溶融繊維からなり、具体的には、66ナイロン繊維等からなる。一方、経糸2は、有機繊維及び/又は無機繊維からなり、ここで、有機繊維としては、ポリエステル繊維、PEN繊維、レーヨン等が、無機繊維としては、カーボン繊維等が挙げられる。
【0018】
上記経糸の縫い留めに使用するミシンは、自走式であり1基又は複数基のミシンヘッドを有するが、複数基のミシンヘッドを有するのが好ましい。1基のミシンヘッドを有するミシンよりも、複数のミシンヘッドを有するミシンを用いた方が、生産効率がよい。ミシンヘッドの移動方向は、整列された経糸の長手方向と直交する方向、即ち、織物の幅方向である。また、ミシンヘッドの移動速度は、経糸長手方向の経糸進行速度に対して、好ましくは2分の1〜1分の2の範囲の速度、より好ましくは10分の7〜10分の13の範囲の速度、特に好ましくは10分の7〜1分の1の範囲の速度であるが、必ずしもこれにこだわらない。ミシンヘッドの移動速度が経糸進行速度の2分の1より遅いと、生産効率が低く実用的でなく、一方、1分の2より速いと、経糸をつなぎ止める効果が期待できない。
【0019】
このようにミシンで製織されたタイヤコード織物において、ミシン掛けピッチは、経糸長手方向3cm〜30cmに1回の割合であり、好ましくは6cm〜20cmに1回の割合であり、より好ましくは6cm〜15cmに1回の割合である。ミシン掛けピッチが3cmより小幅だと、生産効率が低く実用的でなく、一方、30cmより広いと、織物の端が耳落ちしてしまい、巻き取り作業できない。
【0020】
このようにミシンで製織されたタイヤコード簾織物は、経糸の熱安定性と、該経糸とゴムとの接着性を向上させるために、通常の熱処理及び接着剤処理、所謂ディップ処理が施される。
【0021】
前記熱処理と接着剤処理を施された織物は、熱線式緯糸切断装置で所定の幅に分割され数個の小巻きに巻き取られる。小巻の幅は、タイヤに使用する経糸コードの量、後工程の装置のサイズ等に応じて適宜選択できる。ここで、従来と大きく相違する点は、上記織物は、ディップ処理された状態で所定の幅に裁断しても経糸がバラケないようにミシン掛けされている点である。また、上記タイヤコード織物においては、ミシン糸が経糸に垂直に交差せず斜行しているため、緯糸切断装置の刃への当り力、即ち、ミシン糸の切断抵抗力が小さく、効率良くミシン糸を切断することができる。更に、上記小巻きに分割された織物を同様にして緯糸切断装置で単線コードに分割する。本発明の方法においては、上述のようにミシン糸の切断抵抗力が小さいため、簡易な装置でミシン糸を切り分けして、簡便に単線コードとすることができる。そのため、製造設備の小型化が可能である。
【0022】
本発明のタイヤ用ゴム部材の製造方法では、図5に示すように、単線コードに分割された上記経糸2を所定の本数及び幅に再整列し、再整列された経糸2にゴム3をトッピングする。上記のようにミシンで縫い留めした織物は、ゴムをトッピングする前に所定の小巻きに分割することができるため、経糸総本数を充分減じることができ、更に単線コードへの分離及びゴムのトッピング作業を簡便に行うことができる。そのため、本発明の方法においては、小規模なゴムのトッピング装置を採用することができる。
【0023】
本発明のタイヤ用ゴム部材の製造方法では、単線コードに分離された経糸を再整列した後、ゴムをトッピングするため、経糸の打ち込み間隔を均一にすることができ、且つ経糸を平坦に整列配置することができる。このため、本発明の方法で製造されたゴム部材は、一般の織機で製織した織物にゴムをトッピングしてなるゴム部材に比べ、ゴム部材表面から経糸までの距離がどの位置においても均一で且つ精度良く管理されており、不必要にゴムが厚い部分がない。
【0024】
上記ゴム部材は、カーカスの幅に裁断された後、各裁断片の側片部を順次突き合わせてカーカス材を形成する。該カーカス材は、所定の長さに切断された後、ドラム上で周方向に巻き返して円筒状のカーカスを形成する。
【0025】
本発明の空気入りタイヤは、上記の方法で製造されたゴム部材をカーカスに用いたことを特徴とする。本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム部材をカーカスに用いる以外、特に制限はなく、従来と同様の方法で成形及び加硫して製造される。
【0026】
次に、本発明の空気入りタイヤの一例を図6に示す。図6に示すタイヤは、左右一対の一対のビード部11及び一対のサイドウォール部12と、両サイドウォール部12に連なるトレッド部13とを有し、前記一対のビード部11間にトロイド状に延在して、これら各部11,12,13を補強するラジアルカーカス14と、該カーカス14のタイヤ半径方向外側に配置された少なくとも2枚のベルト層からなるベルト15とを具える。
【0027】
ここで、前記カーカス14は、カーカスコードをタイヤ周方向に対し例えば75〜90°の角度で配列したラジアル配列の1枚以上のプライからなり、該プライが上述のゴム部材で構成されている。なお、本例では、カーカス14は1枚のプライよりなる。上記カーカス14は、ビード部11にそれぞれ埋設したビードコア16間にトロイダルに延びる本体部と、各ビードコア16の周りで、タイヤ幅方向の内側から外側に向けて半径方向外方に巻上げた折り返し部とを有し、該本体部と折り返し部との間には、ビードコア16から先細状に立ち上がるビードエペックス17が配置されている。
【0028】
【実施例】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、 本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0029】
経糸として、ポリエステル製で1670dtex/2のコード構造を有し、上撚り数400回/mのコードを用い、該経糸を40本/5cmの割合で整列し、ミシンで縫い留めして実施例としてのタイヤコード織物を作製した。次に、該タイヤコード織物にディップ処理を施した後、所定幅に分割して小巻きを作製し、引き続き、単線コード分割、ゴムトッピングしてタイヤ用ゴム部材を作製した。更に、このゴム部材をカーカスに用い、図6に示す構造で、表1に示す仕様の乗用車用ラジアルタイヤ(サイズ195/65R15)を試作し、該タイヤのユニフォミティー及び強力保持率を下記の方法でテストした。また、比較例として、カーカス以外は実施例と同様で表1に示す仕様のタイヤを製造した。
【0030】
(1)ユニフォミティー
JASOC607に準拠して、内圧200kPa、荷重4510Nの下で供試タイヤ各5本の低速RFV、高速RFV、高速TFVを測定し、それぞれの平均値を表1に示した。なお、低速は周速度7km/h、高速は周速度120km/hのときの値である。
【0031】
(2)実地走行後残留強力保持率
トレッドの摩耗率が90%になるまで上記タイヤを実地走行させた後、ビード周辺の経糸コードの残留強力を測定し、新品対比の保持率(%)で表した。
【0032】
【表1】


【0033】
実施例のタイヤは、低速RFV、高速RFV及び高速TFVの総てが比較例のタイヤよりも低く、ユニフォミティーが優れていた。更に、実施例のタイヤは、実地走行後の残留強力保持率も高く、カーカスの耐久性が向上していた。
【0034】
【発明の効果】
上述のごとく、本発明の方法でタイヤコード織物を製造した場合、ディップ処理後に親幅分割でき、また、簡便にミシン糸を切断して経糸を単線コードにできるため、小規模のトッピング設備でゴムをトッピングでき、製造設備を小型化することができる。また、ディップ処理後、単線コードに分割された経糸を再整列した後、ゴムをトッピングしてゴム部材を形成するため、ゴム部材中の経糸分布を確実に、しかも、精密にコントロールして、その品質を向上させることができる。更に、かかるゴム部材をタイヤのカーカスに用いることにより、タイヤのユニフォミティー及び耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のタイヤコード織物の平面図である。
【図2】従来のカーカス用ゴム部材の断面図である。
【図3】多数の円弧溝を有するガイド部材に織物の経糸を接触させた状態を示す断面図である。
【図4】本発明の方法で製造したタイヤコード織物の平面図である。
【図5】本発明の方法で製造したタイヤ用ゴム部材の断面図である。
【図6】本発明の空気入りタイヤの一実施態様を示す断面図である。
【符号の説明】
1 緯糸
2 経糸
3 トッピングゴム
4 ガイド部材
5 円弧溝
6 ミシン糸
11 ビード部
12 サイドウォール部
13 トレッド部
14 ラジアルカーカス
15 ベルト
16 ビードコア
17 ビードエペックス

【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【出願人】 【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
【住所又は居所】東京都中央区京橋1丁目10番1号
【出願日】 平成15年6月11日(2003.6.11)
【代理人】 【識別番号】100072051
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 興作

【公開番号】 特開2005−2499(P2005−2499A)
【公開日】 平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願番号】 特願2003−166249(P2003−166249)