トップ :: C 化学 冶金 :: C23 金属質材料への被覆;金属質材料による材料への被覆;化学的表面処理;金属質材料の拡散処理;真空蒸着,スパツタリング,イオン注入法,または化学蒸着による被覆一般;金属質材料の防食または鉱皮の抑制一般

【発明の名称】 銅エッチング液及びエッチング方法
【発明者】 【氏名】斉藤 範之
【住所又は居所】福岡県北九州市八幡西区黒崎城石1番1号 三菱化学株式会社内

【氏名】香月 隆伸
【住所又は居所】福岡県北九州市八幡西区黒崎城石1番1号 三菱化学株式会社内

【氏名】石川 誠
【住所又は居所】福岡県北九州市八幡西区黒崎城石1番1号 三菱化学株式会社内

【氏名】青木 真澄
【住所又は居所】福岡県北九州市八幡西区黒崎城石1番1号 三菱化学株式会社内

【要約】 【課題】他の金属が共存する場合であっても銅又は銅合金を選択的にかつ均一にエッチングする。

【解決手段】少なくとも蓚酸アンモニウム、過酸化水素、及び界面活性剤を含有し、表面張力が45mN/m以下であり、pHが6.0〜8.5である銅エッチング液。蓚酸アンモニウムは、銅を銅錯体として溶解させるための錯化剤として機能し、過酸化水素は、銅表面を酸化するための酸化剤として機能し、界面活性剤を含有させることにより、エッチング液の表面張力を45mN/m以下に低下させ、これにより、基板面に対する濡れ性、基板構造における高アスペクト部のエッチング液の浸透性を向上させ、配線又は電極用の良導電性を有する金属の共存下において、銅又は銅合金を均一かつ選択的にエッチングすることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
銅又は銅合金をエッチングするためのエッチング液であって、少なくとも蓚酸アンモニウム、過酸化水素、及び界面活性剤を含有し、表面張力が45mN/m以下であり、pHが6.0〜8.5であることを特徴とする銅エッチング液。
【請求項2】
請求項1において、更にアミノ酸を含有し、アミノ酸の含有量が0.2〜25重量%であることを特徴とする銅エッチング液。
【請求項3】
請求項2において、該アミノ酸がグリシンであることを特徴とする銅エッチング液。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項において、該界面活性剤が、−SOM基、−OSOM基、及び−COOM基(但し、Mはアルカリ金属類、又は水素原子を表す)よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の官能基を有するアニオン系界面活性剤、及び/又はオキシアルキレン基の繰り返し単位構造を有するノニオン系界面活性剤であることを特徴とする銅エッチング液。
【請求項5】
請求項4において、該界面活性剤が、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル誘導体であることを特徴とする銅エッチング液。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、蓚酸アンモニウムの含有量が0.05〜5重量%であり、過酸化水素の含有量が0.2〜10重量%であり、界面活性剤の含有量が0.0001〜5重量%であることを特徴とする銅エッチング液。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、配線又は電極用の良導電性を有する金属の共存下において、銅又は銅合金を選択的にエッチングするためのエッチング液であることを特徴とする銅エッチング液。
【請求項8】
請求項7において、配線又は電極用の良導電性を有する金属が、アルミニウム、チタン、ニッケル、錫、鉛、銀、金、パラジウム及びこれらを主成分とする合金よりなる群から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする銅エッチング液。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれか1項において、20〜50℃の温度で使用されることを特徴とする銅エッチング液。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれか1項において、少なくとも蓚酸アンモニウム、過酸化水素、及び界面活性剤を含む有効成分と水とを混合することにより調製された銅エッチング液であって、過酸化水素以外の有効成分と水とを混合した後、該混合物に過酸化水素を添加混合して得られることを特徴とする銅エッチング液。
【請求項11】
配線又は電極用の良導電性を有する金属の共存下において、銅又は銅合金を選択的にエッチングする方法であって、請求項1ないし10のいずれか1項に記載のエッチング液を用いることを特徴とするエッチング方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、銅又は銅合金をウエットエッチング法により選択的にエッチングするためのエッチング液と、このエッチング液を用いた銅又は銅合金のエッチング方法に関する。詳しくは、半導体装置、液晶表示装置等の半導体デバイスや、プリント基板、ICカード等の製造における銅又は銅合金薄膜等のエッチングに好適な銅エッチング液とエッチング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置、液晶表示装置等の半導体デバイスや、プリント基板、ICカード等は、一般的に基板上に金属薄膜等をパターン形成することにより、金属薄膜素子や電極配線素子等を構成して製造される。
【0003】
このような金属薄膜を、配線等の微細構造にパターン形成する加工技術としては、フォトリソグラフィー技術によって金属薄膜表面上に形成したフォトレジストパターンをマスクとして用い、化学薬品によるエッチングによってパターン加工を行うウエットエッチング法と、イオンエッチングやプラズマエッチング等のドライエッチング法が挙げられる。
【0004】
このうち、ウエットエッチング法は、ドライエッチング法と比較して高価な装置を必要とせず、比較的安価な薬品を用いるので経済的に有利である。また、大面積の基板であっても、また単位時間あたりの生産性を高くしても(即ち、処理基板枚数を増やしても)、均一なエッチングを行うことができ、更には、エッチング対象の形状に左右され難く、3次元構造を有するものにも適用可能であるなどの利点を有することから、現状では、薄膜パターンの製造方法としてウエットエッチング法が多用されている。
【0005】
近年、半導体及び液晶表示装置等に用いられる金属薄膜素子や電極配線、その他素子等に用いられる材料に対しては、加工パターンの微細化精度の向上に伴い、配線遅延がないこと、断線しにくい等の物性面での要求が益々厳しくなっている。この様な状況下、この様な素子等の材料としては、電気抵抗値が低く、かつ薄膜パターンとする際の加工性が良好であること等の諸特性に優れた材料が望まれているが、最近になって、この様な材料として銅又は銅合金が注目され、その使用が増えつつある。
【0006】
従来、銅又は銅合金を用いて素子等をパターン形成する際に用いられるエッチング液としては、一般的にアミンやアンモニア水等のアルカリ性エッチング液や、塩化第二鉄水溶液、塩化第二銅水溶液、過硫酸塩水溶液、硫酸と過酸化水素を混合した酸性エッチング液が用いられてきた(例えば、特許文献1〜5等)。
【0007】
これらのエッチング液を用いてウエットエッチング法により銅又は銅合金の素子をパターン形成する際、エッチング液には、銅又は銅合金の均一エッチング性のみならず、銅又は銅合金の選択的エッチング性が要求される。即ち、銅又は銅合金を用いた素子を作成する際には、例えばシリコン、ガラス、アルミナ、又は高分子樹脂等の有機物からなる絶縁性基板の上に、ニッケルやニッケル合金等の銅又は銅合金以外の金属薄膜を介して、銅又は銅合金を積層した積層膜とし、この積層膜から銅又は銅合金薄膜のみをエッチング除去し、銅又は銅合金薄膜が除去された部分に他の金属を埋め込んで素子等を作成したり、はんだバンプ形成のための下地金属として銅又は銅合金薄膜のみを選択的にエッチングしたりする場合がある。このような場合には、他の金属はエッチングすることなく、銅又は銅合金のみを選択的にかつ均一にエッチングし得るエッチング液が必要となる。
【特許文献1】特開2002−266087号公報
【特許文献2】特開平10−96088号公報
【特許文献3】特開平8−60386号公報
【特許文献4】特開2002−348685号公報
【特許文献5】特開2000−248386号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、従来の銅又は銅合金用の一般的なエッチング液、例えば硫酸等の酸と過酸化水素水等を含む酸性エッチング液では、銅又は銅合金がこれらのエッチング液により比較的容易にエッチングを受け易い上に、これらのエッチング液が水を主成分とするため銅又は銅合金との濡れ性が十分に得られないことから、微細加工においてはエッチング遅れやエッチング残渣が生じ易い。また、従来のエッチング液では、他の金属が共存する系において、他の金属をエッチングせずに銅又は銅合金のみをエッチングするエッチング選択性が低い。このようなことから、銅又は銅合金を用いて微細な素子等を形成する際、銅又は銅合金を選択的にかつ均一にエッチングすることが困難であった。
【0009】
本発明は上記従来の問題点を解決し、他の金属が共存する場合であっても銅又は銅合金を選択的にかつ均一にエッチングすることができる銅又は銅合金用エッチング液と、このエッチング液を用いた銅又は銅合金のエッチング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の銅エッチング液は、銅又は銅合金をエッチングするためのエッチング液であって、少なくとも蓚酸アンモニウム、過酸化水素、及び界面活性剤を含有し、表面張力が45mN/m以下であり、pHが6.0〜8.5であることを特徴とする。
【0011】
即ち、本発明者らは上述したような課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、蓚酸アンモニウム及び過酸化水素と、エッチング液の表面張力を45mN/m以下に低下させる有効量の界面活性剤を含有した、特定pHのエッチング液が、良導電性を有する他の金属、特にアルミニウム、チタン、ニッケル、錫、鉛、銀、金、パラジウムやこれらを主成分とする合金が共存する微細なデバイス構造の場合であっても、選択的かつ均一に銅又は銅合金のみをエッチングすることができることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
本発明の銅エッチング液は、更にアミノ酸を0.2〜25重量%含有することが好ましく、このアミノ酸としてはグリシンが好ましい。
【0013】
本発明において、界面活性剤としては、−SOM基、−OSOM基、及び−COOM基(但し、Mはアルカリ金属類、又は水素原子を表す)よりなる群から選ばれる1種又は2種以上の官能基を有するアニオン系界面活性剤、及び/又はオキシアルキレン基の繰り返し単位構造を有するノニオン系界面活性剤が好適であり、特に、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル誘導体が好ましい。
【0014】
本発明のエッチング液中の各成分の含有量は、蓚酸アンモニウムが0.05〜5重量%、過酸化水素が0.2〜10重量%、界面活性剤が0.0001〜5重量%であることが好ましい。
【0015】
本発明の銅エッチング液によれば、配線又は電極用の良導電性を有する金属、特にアルミニウム、チタン、ニッケル、錫、鉛、銀、金、パラジウム及びこれらを主成分とする合金からなる群より選ばれた金属の共存下において、銅又は銅合金を均一かつ選択的にエッチングすることができる。このエッチング液は20〜50℃の温度で用いることが好ましい。
【0016】
本発明の銅エッチング液は、少なくとも蓚酸アンモニウム、過酸化水素、及び界面活性剤を含む有効成分と水とを混合して調製銅エッチング液を調製する際に、過酸化水素以外の有効成分と水とを混合した後、この混合物に過酸化水素を添加混合して調製されることが好ましい。
【0017】
本発明のエッチング方法は、配線又は電極用の良導電性を有する金属の共存下において、銅又は銅合金を選択的にエッチングする方法であって、このような本発明のエッチング液を用いることを特徴とするものであり、銅又は銅合金を均一かつ選択的にエッチングすることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の銅エッチング液及びエッチング方法によれば、半導体装置や液晶表示装置の薄膜トランジスタの電極や配線、又はバンプの製造等に伴う、銅又は銅合金と他の良導電性金属との積層構造を有した基板において、基板上の電子部材、各種積層膜等を腐食させるこなく、微細部に残渣のない均一な銅又は銅合金の選択的エッチングを行うことができる。これにより、従来法と比較して格段に寸法制御性の高い選択的な高精密エッチングを達成し、デバイスの電気特性及び動作特性を改善することにより、半導体素子等の各種装置の性能向上を図ることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の銅エッチング液及びエッチング方法の実施の形態を詳細に説明する。
【0020】
本発明の銅エッチング液のエッチング対象は、純銅のみに限らず、銅合金であっても良い。銅合金としては、銅の含有量が50重量%以上のものが適当であり、銅合金中の合金化金属に特に制限はないが、例えば、錫、鉛、亜鉛、ニッケル、マンガン等の1種又は2種以上が挙げられる。
【0021】
本発明の銅エッチング液は、通常、蓚酸アンモニウム、過酸化水素、及び界面活性剤と水、場合によっては更にアミノ酸を含む水溶液として調製される。
【0022】
蓚酸アンモニウムは、銅を銅錯体として溶解させるための錯化剤として機能し、エッチング液中の濃度は0.05〜5重量%、特に1.5〜4重量%であることが好ましい。蓚酸アンモニウムの濃度が低すぎると銅のエッチングが不均一になると共に、多大なエッチング時間を要する場合がある。逆に蓚酸アンモニウム濃度が高すぎると、蓚酸アンモニウムの溶解度からエッチング装置内等に蓚酸アンモニウムが析出する可能性がある。
【0023】
過酸化水素は、銅表面を酸化するための酸化剤として機能し、その濃度は0.2〜10重量%、特に0.5〜5重量%であることが好ましい。過酸化水素の濃度が低すぎると、銅のエッチングに多大な時間を要する場合がある。逆に過酸化水素濃度が高すぎると、過酸化水素が分解した際に、エッチング液の急激な発熱や多量の酸素の発生があるなど、安全性の面で問題が生ずる場合がある。従って、過酸化水素は、本発明の銅エッチング液を調製する際に、他の有効成分と水とを混合後、最後に添加することが好ましい。
【0024】
エッチング液中の蓚酸アンモニウム及び過酸化水素の濃度は、上記範囲において、必要とされるエッチング速度によって適宜調整して決定すればよい。
【0025】
本発明の銅エッチング液では、界面活性剤を含有させることにより、エッチング液の表面張力を45mN/m以下に低下させ、これにより、基板面に対する濡れ性、基板構造における高アスペクト部のエッチング液の浸透性を向上させて、より均一なエッチングを可能にする。界面活性剤としては、アニオン系、カチオン系、両性、ノニオン系の界面活性剤が挙げられるが、中でもアニオン系、両性、ノニオン系の界面活性剤が好ましく、とりわけアニオン系、ノニオン系の界面活性剤が好ましい。これらの界面活性剤は、単独で用いても良いし、異種の2種以上を適宜組み合わせて用いても良い。中でもアニオン系界面活性剤とノニオン系界面活性剤の組み合わせは化学エッチャントの浸透性向上、低気泡性、汚染除去効果の点から好ましい。
【0026】
アニオン系界面活性剤としては、カルボン酸型、スルホン酸型、硫酸エステル型、リン酸エステル型など、両性界面活性剤としてはアミノ酸型、ベタイン型など、ノニオン系界面活性剤としては、ポリエチレングリコール型、多価アルコール型などが挙げられる。
【0027】
アニオン系界面活性剤の中ではスルホン酸型(−SO基を有するもの)、硫酸エステル型(−OSO基を有するもの)、及びカルボン酸型(−COO基を有するもの)が好ましい。具体的には、−SOM基、−OSOM基、−COOM基(但し、Mはアルカリ金属類、又は水素原子を表す)の少なくとも1つ有する化合物が好ましく、より具体的には、アルキルスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキル硫酸エステル系、アルキルエーテル硫酸エステル系、アルキルカルボン酸及びこれらの塩類が好ましく用いられる。
【0028】
ノニオン系界面活性剤の中では、ポリエチレングリコール型としてポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルなど、またポリアルキレングリコール型としてポリオキシエチレンポリオキシプロピレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシブチレンエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルなど、多価アルコール型として、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルなどが挙げられる。これらのノニオン系界面活性剤のうち化学的安定性、汚染除去性に優れ、なおかつ、低起泡性に優れる点で、好ましくは、ポリオキシアルキレン(アルキル)エーテルなどが用いられる。
【0029】
界面活性剤は、銅エッチング液の表面張力が45mN/m以下となるように配合されていれば良く、銅エッチング液中の界面活性剤濃度には特に制限はないが、本発明の銅エッチング液中の界面活性剤濃度は、0.0001〜5重量%、特に0.001〜1重量%であることが好ましい。界面活性剤の濃度が低すぎると界面活性剤によるエッチング液の浸透性向上及び各種パーティクル汚染除去性能が十分ではなく、また高すぎると泡立ちが顕著となり、エッチング方法によっては不向きとなったり、また廃液を処理する際の負荷が増大する場合がある。
【0030】
本発明の銅エッチング液は、表面張力が45mN/m以下であることを特徴とするものであり、このように表面張力が小さいことにより、十分な濡れ性を確保するものである。
【0031】
また、本発明の銅エッチング液は、更にグリシン等のアミノ酸を含有していても良い。アミノ酸の添加効果としては、後述のpH緩衝作用に加えて、酸化剤である過酸化水素濃度のエッチング速度に与える影響が小さくなることが挙げられる。即ち、経時的な過酸化水素の分解は不可避的なものであるが、アミノ酸添加系では、エッチング速度が過酸化水素濃度に、あまり影響を受けないため、経時的な過酸化水素の分解によるエッチング速度の急激な低下を回避することができる。また、アミノ酸無添加系においては、不安定な過酸化水素の濃度でエッチング速度が決定されるため、エッチング速度の安定性に問題があったが、アミノ酸添加系においては、過酸化水素濃度の影響が小さいため、エッチング液濃度の調整でエッチング速度を安定的に任意の速度に調整することができる。この場合、銅エッチング液中のアミノ酸の含有量は、0.2〜25重量%、特に1〜15重量%程度とすることが好ましい。
【0032】
本発明の銅エッチング液のpHは6.0〜8.5、好ましくは6.5〜8である。銅エッチング液のpHがこの範囲よりも低すぎたり、高すぎたりした場合、共存金属とのエッチング選択性が低下する場合がある。銅エッチング液のpHは、必要に応じて、酸、アルカリ成分を用いて調整することができる。使用される酸成分としては、酢酸等の有機酸や、塩酸、硝酸等の無機酸が挙げられるが、特に、蓚酸水溶液を用いることが好ましい。一方、アルカリ成分としては、アンモニア水や水酸化ナトリウム、水酸化カリウム水溶液等を用いることができるが、特に、アンモニア水を用いることが好ましい。
【0033】
銅エッチング液のpH調整は、調液時のみならず、エッチング中にも行うことが好ましい。即ち、エッチングによって、pHが変動することがあるが、好ましいpH範囲を逸脱すると、共存金属に対する銅エッチング選択性が低下する場合があり、また、特に、銅エッチング液のpHが高くなると、酸化剤である過酸化水素の分解速度が速くなり、その結果として、銅エッチング液のライフが短くなる場合があるためである。なお、本発明の銅エッチング液がアミノ酸を含有していると、アミノ酸のpH緩衝作用により、pHの変動幅が小さくなり、pH調整を頻繁に行う必要がなくなるため、非常に有利である。
【0034】
このような本発明の銅エッチング液を用いてエッチングを行う際、エッチング液中に微粒子等の不溶性不純物が存在すると、特にエッチング加工するパターンサイズが微細化するに伴って均一なエッチングを阻害するおそれがあるので、銅エッチング液を事前に精密フィルターを介して濾過するなどの方法で、液中の微粒子等の不溶性不純物を除去しておくことが好ましい。濾過の方式はワンパス式でもよいが、微粒子除去効率の点から、循環式がより好ましい。精密フィルターの孔径は適宜選択すればよいが、一般的には0.2μm以下、特に0.1μm以下のものが好ましい。フィルターの素材は、濾過するエッチング液に対して化学的・物理的に安定しているものであれば任意であり、例えば高密度ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素樹脂系素材等が挙げられる。銅エッチング液は、このような濾過処理により、例えば直径0.5μm以上の微粒子が1000個/ml以下となるように、微粒子等の不溶性不純物を除去しておくことが好ましい。
【0035】
本発明の銅エッチング液を用いるエッチング方法は、15〜30℃程度の室温で実施しても良いが、エッチング速度を向上させる目的でエッチング液を加温しても良い。一般的にはエッチング液の温度は10〜60℃、中でも20〜50℃が好ましい。
【0036】
本発明のエッチング方法は、例えば、シリコン、ガラス、アルミナ、又は高分子樹脂等の有機物からなる絶縁性基板上に形成されたアルミニウム、ニッケル、錫、鉛、銀、金、パラジウム及びこれらを主成分とする合金等の良導電性金属膜上に積層された銅又は銅合金薄膜のエッチングに適用される。
【0037】
本発明の銅エッチング液を用いる本発明のエッチング方法は任意であり、従来公知の、ウエットエッチングで使用される機器、装置を用いて行えばよい。
【0038】
例えばエッチング対象物とエッチング液との接触方法としては、エッチング槽にエッチング液を満たしてエッチング対象物を浸漬させるディップ方式等が挙げられる。この際には該エッチング対象物を揺動させたり、槽内のエッチング液を強制循環させることによりエッチングをより均一に行うことができるので好ましい。その他、エッチング液をエッチング対象物面へ噴霧するスプレー方式や、回転するエッチング対象物にノズルよりエッチング液を吐出させるスピン方式等が挙げられる。これらの処理方法もディップ方式と併せて好ましく用いられる。
【0039】
本発明のエッチング方法においては、好ましくは、エッチングにより、銅又は銅合金薄膜が溶解除去されて、銅又は銅合金薄膜の下層の金属薄膜又は基板が表出するエンドポイントまでのジャストエッチングと、このジャストエッチング後更にエッチングを行うオーバーエッチングとを行う。この場合、オーバーエッチング時間には特に制限はないが、ジャストエッチング時間の5%以上200%以下、特に10%以上100%以下であることが好ましい。
【実施例】
【0040】
以下に実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0041】
なお、以下において、エッチング液の表面張力は、表面張力計(協和科学(株)製「CBVP SURFACE TENSIONMETER A3」)を用いて測定した。また、pHは、pHメーター((株)堀場製作所製「D−24」)を用いて測定した。
【0042】
実施例1
厚さ0.5mmの銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、錫/銀(96.5重量%/3.5重量%)合金(Sn・Ag)、アルミニウム(Al)の板をそれぞれ幅10mm×長さ10mmにカットしたものを金属溶解速度評価用試験片とした。
【0043】
水に3重量%の蓚酸アンモニウムと0.5重量%の過酸化水素と0.005重量%の界面活性剤(オキシエチレン縮合物のアルキル(炭素数12)エーテル 三洋化成工業(株)製「NL110」)を添加したエッチング液100gを100mlのビーカに入れ、エッチング液の温度を25℃に調整した。このエッチング液の表面張力及びpHは表1に示す通りであった。
【0044】
このエッチング液に、各試験片を2時間浸漬させ、浸漬前後の重量差から各金属の溶解速度を算出した。また、銅に対するエッチング選択性として、エッチング速度比(銅の溶解速度/各金属の溶解速度)を算出した。これらの結果を表1に示した。
【0045】
比較例1
実施例1において、エッチング液に界面活性剤を添加しなかったこと以外は、同様にしてエッチング液を調製し、同様に表面張力及びpHを測定すると共に、金属溶解速度評価試験を行い、結果を表1に示した。
【0046】
【表1】


【0047】
表1から明らかなように、本発明のエッチング液は、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、錫(Sn)、錫/銀(96.5/3.5重量%)合金(Sn・Ag)、アルミニウム(Al)に対して大きなエッチング選択性を有しており、これらの金属を侵すことなく銅のみを選択的にエッチングすることができることが分かる。また、比較例1と実施例1の銅の溶解速度が同等であることから、エッチング液に添加した界面活性剤は銅の溶解速度に影響を与えないことが分かる。
【0048】
実施例2
銅のエッチング特性を評価するため、厚さ10nmの熱酸化膜(SiO)を有する4インチのシリコン(Si)基板上にスパッタリング法によりチタン(Ti)を100nmの膜厚で堆積させたTi/SiO/Si基板上に、更に銅(Cu)を300nmの膜厚で堆積させた基板を作成した(ベタ基板)。このベタ基板上にポジ型フォトレジスト樹脂(膜厚約1μm)をスピンコーティングし、このものをフォトリソグラフィー技術によりパターン形成し、5〜100μmのラインとスペースのパターンが存在する基板を作成した(パターン付き基板)。このパターン付き基板を長さ約50mm×幅約10mmに切断したものを評価用の試料とした。
【0049】
実施例1と同一のエッチング液組成、エッチング液温度にて、この試料をエッチング液中で上下左右に動かしながらエッチングを行った。
【0050】
ジャストエッチング時間は、エッチング開始時点からエンドポイントまでの時間とした。エンドポイントは、基板上のエッチングすべき部分の金属が溶解して基板が露出する時点を目視で観察して決定した。また、所定のオーバーエッチング時間は、ジャストエッチング時間とオーバーエッチングによってエッチングする量(オーバーエッチング量)より適宜計算して決定した。
【0051】
所定時間のオーバーエッチングが完了後、試料を取り出し、純水で1分間洗浄した後、クリーン空気を用いて風乾した。
【0052】
エッチング後の基板表面の観察をレーザ顕微鏡(キーエンス社製「VK-8500」)及び走査型電子顕微鏡(日本電子社製「6320F」)を用いて行い、エッチング残渣の有無を調べ、結果を表2に示した。
【0053】
比較例2
実施例2において、比較例1と同一のエッチング液組成としたこと以外は同様にしてエッチング特性の評価を行い、結果を表2に示した。
【0054】
【表2】


【0055】
表2の結果から明らかなように、本発明のエッチング液は微細パターンへの浸透性に優れており、少ないオーバーエッチング量で微細部に残渣のない均一なエッチングを行うことができる。
【0056】
実施例3
水に3重量%の蓚酸アンモニウムと5重量%のグリシンと0.5重量%の過酸化水素と0.005重量%の界面活性剤(オキシエチレン縮合物のアルキル(炭素数12)エーテル 三洋化成工業(株)製「NL110」)を添加したエッチング液100gを100mlのビーカーに入れ、エッチング液の温度を28℃に調整した。このエッチング液の表面張力及びpHは表3−1に示す通りであった。
【0057】
このエッチング液を用いて、実施例2と同様にして、エッチング特性の評価を行い、結果を表3−2に示した。
【0058】
比較例3
実施例1において、界面活性剤を添加しなかったこと以外は同様にしてエッチング液を調製した。このエッチング液の表面張力及びpHは表3−1に示す通りであった。
【0059】
このエッチング液を用いて、実施例2と同様にして、エッチング特性の評価を行い、結果を表3−2に示した。
【0060】
【表3】


【0061】
表3の結果から明らかなように、本発明のエッチング液は微細パターンへの浸透性に優れており、少ないオーバーエッチング量で微細部に残渣のない均一なエッチングを行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明の銅エッチング液及びエッチング方法は、半導体装置、液晶表示装置等の半導体デバイスや、プリント基板、ICカード等の製造における、銅又は銅合金薄膜素子や電極配線素子等の形成に有用である。
【出願人】 【識別番号】000005968
【氏名又は名称】三菱化学株式会社
【住所又は居所】東京都港区芝五丁目33番8号
【出願日】 平成16年7月26日(2004.7.26)
【代理人】 【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛

【公開番号】 特開2005−105410(P2005−105410A)
【公開日】 平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願番号】 特願2004−217469(P2004−217469)