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【発明の名称】 黒色ニッケル皮膜の形成方法及び無電解ニッケル−リンめっき浴
【発明者】 【氏名】多田 雅徳
【住所又は居所】大阪府枚方市出口1丁目5番1号 上村工業株式会社中央研究所内

【氏名】道中 岳
【住所又は居所】大阪府枚方市出口1丁目5番1号 上村工業株式会社中央研究所内

【要約】 【課題】

【解決手段】被めっき物上に、ニッケル塩、リン酸塩、有機酸及び/又はその塩、イオウ系化合物、並びにアンモニウムイオンを含有し、かつアミノ基含有化合物を含有しない無電解ニッケル−リンめっき浴を用いて無電解めっきすることによりニッケル−リン合金皮膜を形成し、次いで、該ニッケル−リン合金皮膜を酸性処理液に接触させて処理することを特徴とする黒色ニッケル皮膜の形成方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被めっき物上に、ニッケル塩、リン酸塩、有機酸及び/又はその塩、イオウ系化合物、並びにアンモニウムイオンを含有し、かつアミノ基含有化合物を含有しない無電解ニッケル−リンめっき浴を用いて無電解めっきすることによりニッケル−リン合金皮膜を形成し、次いで、該ニッケル−リン合金皮膜を酸性処理液に接触させて処理することを特徴とする黒色ニッケル皮膜の形成方法。
【請求項2】
上記イオウ系化合物が、チオエーテル化合物及びチオシアン化合物から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項1記載の黒色ニッケル皮膜の形成方法。
【請求項3】
上記酸性処理液が、鉄、銅、銀、コバルト、マンガン及びモリブデンから選ばれる金属のイオンを1種又は2種以上含有することを特徴とする請求項1又は2記載の黒色ニッケル皮膜の形成方法。
【請求項4】
上記酸性処理液が、更にニッケルのイオンを含有することを特徴とする請求項3記載の黒色ニッケル皮膜の形成方法。
【請求項5】
上記ニッケル−リン合金皮膜を酸性処理液に接触させて処理した後、処理されたニッケル−リン合金皮膜を、更に加熱処理することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の黒色ニッケル皮膜の形成方法。
【請求項6】
酸性処理液にニッケル−リン合金皮膜を接触させる処理により黒化して黒色ニッケル皮膜を形成するために用いる上記ニッケル−リン合金皮膜を形成するための無電解ニッケル−リンめっき浴であって、ニッケル塩、リン酸塩、有機酸及び/又はその塩、イオウ系化合物、並びにアンモニウムイオンを含有し、かつアミノ基含有化合物を含有しないことを特徴とする無電解ニッケル−リンめっき浴。
【請求項7】
上記イオウ系化合物が、チオエーテル化合物及びチオシアン化合物から選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする請求項6記載の無電解ニッケル−リンめっき浴。
【請求項8】
上記酸性処理液が、鉄、銅、銀、コバルト、マンガン及びモリブデンから選ばれる金属のイオンを1種又は2種以上含有することを特徴とする請求項6又は7記載の無電解ニッケル−リンめっき浴。
【請求項9】
上記酸性処理液が、更にニッケルのイオンを含有することを特徴とする請求項8記載の無電解ニッケル−リンめっき浴。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、黒色ニッケル皮膜の形成方法及び黒色ニッケル皮膜の形成に用いる無電解ニッケル−リンめっき浴に関する。
【背景技術】
【0002】
光学部品や放熱部材の表面処理に用いられる黒色皮膜としては、黒色クロムめっき、黒色ニッケルめっきなどにより形成された皮膜が知られている。また、無電解めっきにより形成したニッケル−リン合金を酸化処理することにより黒色ニッケル皮膜を得る方法も知られている。例えば、特公昭59−22786号公報(特許文献1)、特公昭64−7153号公報(特許文献2)、特公平7−42588号公報(特許文献3)、特開平9−78256号公報(特許文献4)には、ニッケル合金皮膜を酸化処理することにより黒色皮膜を形成する方法、特開昭61−253381号公報(特許文献5)には、亜鉛又は亜鉛合金皮膜を酸化処理することにより黒化皮膜を形成する方法が記載されている。しかしながら、これら従来の方法により得られた黒色皮膜は、安定して良好な黒色皮膜を得られない場合があり、更なる改良が必要なものであり、ターン数が多くなっても安定して優れた黒色皮膜が得られる方法が望まれていた。また、黒化処理されるニッケル合金皮膜を形成するためのニッケルめっき浴にはアミノ基含有化合物を含むものがあるが、アミノ基含有化合物を含むめっき浴は、廃水処理上の問題があり経済的に不利であった。
【0003】
【特許文献1】特公昭59−22786号公報
【特許文献2】特公昭64−7153号公報
【特許文献3】特公平7−42588号公報
【特許文献4】特開平9−78256号公報
【特許文献5】特開昭61−253381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、ターン数にかかわらず良好な黒色ニッケルめっき皮膜を形成することができる黒色ニッケル皮膜の形成方法及び黒色ニッケル皮膜の形成に用いる無電解ニッケル−リンめっき浴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記問題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、酸性処理液、好ましくは鉄、銅、銀、コバルト、マンガン及びモリブデンから選ばれる金属のイオンを1種又は2種以上含有する酸性処理液にニッケル−リン合金皮膜を接触させる処理により黒化して黒色ニッケル皮膜を形成する場合、上記ニッケル−リン合金皮膜を形成するための無電解ニッケル−リンめっき浴として、ニッケル塩、リン酸塩、有機酸及び/又はその塩、イオウ系化合物、並びにアンモニウムイオンを含有し、かつアミノ基含有化合物を含有しない無電解ニッケル−リンめっき浴を用いることで、良好な黒色ニッケル皮膜を得られると共に、補給やめっき浴の管理が容易になり、ターンにかかわらず安定して良好な黒色ニッケル皮膜が得られることを見出した。
【0006】
また、特に、上記酸性処理液で処理した後、更に加熱処理すれば、黒色を退色させることなく皮膜硬度の向上を図ることができ、高い硬度を有し、かつ良好な黒色を呈する皮膜を得ることができることを見出し、本発明をなすに至った。
【0007】
即ち、本発明は、被めっき物上に、ニッケル塩、リン酸塩、有機酸及び/又はその塩、イオウ系化合物、並びにアンモニウムイオンを含有し、かつアミノ基含有化合物を含有しない無電解ニッケル−リンめっき浴を用いて無電解めっきすることによりニッケル−リン合金皮膜を形成し、次いで、該ニッケル−リン合金皮膜を酸性処理液に接触させて処理することを特徴とする黒色ニッケル皮膜の形成方法、及び
酸性処理液にニッケル−リン合金皮膜を接触させる処理により黒化して黒色ニッケル皮膜を形成するために用いる上記ニッケル−リン合金皮膜を形成するための無電解ニッケル−リンめっき浴であって、ニッケル塩、リン酸塩、有機酸及び/又はその塩、イオウ系化合物、並びにアンモニウムイオンを含有し、かつアミノ基含有化合物を含有しないことを特徴とする無電解ニッケル−リンめっき浴を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、黒化度が高い、皮膜表面に干渉色を発することがないなど良好な黒色を呈する皮膜が得られ、また、得られた皮膜は、被めっき物に対する密着性、硬度も良好である。更に、本発明によれば、ターン数にかかわらず良好な黒色を呈する皮膜が得られ、廃水処理上の問題もないため、経済的に有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について更に詳述する。
本発明の黒色ニッケル皮膜の形成方法は、被めっき物上に、ニッケル塩、リン酸塩、有機酸及び/又はその塩、イオウ系化合物、並びにアンモニウムイオンを含有し、かつアミノ基含有化合物を含有しない無電解ニッケル−リンめっき浴を用いて無電解めっきすることによりニッケル−リン合金皮膜を形成し、次いで、このニッケル−リン合金皮膜を酸性処理液に接触させて処理するものである
【0010】
また、本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴は、酸性処理液にニッケル−リン合金皮膜を接触させる処理により黒化して黒色ニッケル皮膜を形成するために用いる上記ニッケル−リン合金皮膜を形成するための無電解ニッケル−リンめっき浴であり、ニッケル塩、リン酸塩、有機酸及び/又はその塩、イオウ系化合物、並びにアンモニウムイオンを含有し、かつアミノ基含有化合物を含有しないものである。
【0011】
本発明においてニッケル−リン合金皮膜を形成するために用いる無電解ニッケル−リンめっき浴には、ニッケル塩及びリン酸塩が含まれる。ニッケル塩としては、硝酸ニッケル、塩化ニッケル、酢酸ニッケル等が好ましく、そのめっき浴中の濃度は0.01〜0.2mol/Lであることが好ましい。また、リン酸塩としては、次亜リン酸カリウム、次亜リン酸ナトリウム等の次亜リン酸塩、亜リン酸カリウム、亜リン酸ナトリウム等の亜リン酸塩が好ましく、特に、次亜リン酸塩が好ましい。また、そのめっき浴中の濃度は0.1〜2mol/L、特に0.1〜1mol/Lであることが好ましい。
【0012】
また、本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴は、めっき浴中のニッケルイオンを錯化する及び/又はpH変動を抑制する目的で有機酸及び/又はその塩を含有する。有機酸、有機酸塩としては、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、フマル酸、マロン酸、コハク酸、アジピン酸等のカルボン酸、上記カルボン酸の塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)、乳酸、クエン酸、リンゴ酸、グリコール酸、酒石酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸、上記オキシカルボン酸の塩(ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)が挙げられる。これら有機酸及び/又はその塩は、1種単独で又は2種以上を併用して含有させることが可能である。また、後述するアンモニウムイオンの供給源として、上記有機酸塩としてアンモニウム塩を用いることも可能である。この有機酸及び/又はその塩のめっき浴中の濃度は、0.1〜2mol/L、特に0.1〜1mol/Lであることが好ましい。有機酸及び/又はその塩の濃度が0.1mol/L未満の場合、めっき浴の安定性が悪くなり、ターンが進むにつれて安定して黒色ニッケル皮膜が得られなくなる場合がある。また、2mol/Lより高いとめっきが進行しないおそれがある。
【0013】
また、本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴にはイオウ系化合物が含まれる。イオウ系化合物としては、チオエーテル化合物、チオシアン化合物、チオカルボニル化合物、チオール化合物、チオ硫酸及びチオ硫酸塩から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。具体的には、チオエーテル化合物としては、メチオニン、ジメチルスルホキシド、チオジグリコール酸、ベンゾチアゾール等、チオシアン化合物としては、チオシアン酸、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム等、チオカルボニル化合物としては、チオ尿素又はその誘導体、チオール化合物としてはシステイン、チオ乳酸、チオグリコール酸、メルカプトエタノール、ブタンチオール等、チオ硫酸塩としては、チオ硫酸ナトリウム等が挙げられ、そのめっき浴中の濃度は0.0001〜1g/Lであることが好ましい。
【0014】
なかでも、メチオニン、ジメチルスルホキシド、チオジグリコール酸、ベンゾチアゾール等のチオエーテル化合物、及びチオシアン酸、チオシアン酸塩(チオシアン酸カリウム、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸アンモニウム)等のチオシアン化合物から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。チオエーテル化合物又はチオシアン化合物を用いることにより、干渉色のないより良好な黒色ニッケル皮膜が得られる。
【0015】
本発明において、無電解ニッケル−リンめっき浴には、アンモニウムイオンが含まれる。アンモニウムイオンをめっき浴中に含有させるには、アンモニア水又はアンモニウム塩を添加する方法を採用し得る。この場合、アンモニア水、塩化アンモニウム、水酸化アンモニウム等を用いることができる。また、有機酸のアンモニウム塩を用いることによりアンモニウムイオンを含有させることも可能である。なお、このアンモニウムイオンのめっき浴中の濃度は0.1〜10mol/Lであることが好ましい。
【0016】
アンモニウムイオンを上記範囲で含有させることにより、無電解ニッケル−リンめっき浴を、一般に必須とされるアミノ基含有化合物を含まない構成とすることができ、経済的で、廃水処理上有利なものとすることができる。また、アンモニウムイオンと上述した有機酸及び/又は有機酸塩とイオウ系化合物とを併用することにより、ターン数にかかわらず、干渉色のない良好な黒色ニッケル皮膜が得られる。更に、有機酸として、カルボン酸及び/又はその塩とオキシカルボン酸/又はその塩とを含有させることにより、補給やめっき浴の管理が容易になる上、含有するイオウ系化合物の種類にかかわりなく形成されるニッケル−リン合金皮膜中のリン含有量を後述する黒色ニッケル皮膜を得るのに最適な範囲に安定して保つことができる。
【0017】
なお、本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴には、その他適宜Pb,Tl等の安定剤や界面活性剤などの各種公知の添加物を含有させることができるが、アミノ基含有化合物は含有させないことが好ましい。また、めっき浴のpHは5〜8、特に6〜7であることが好ましい。
【0018】
また、本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴は、アミノ基含有化合物を含有しないものである。アミノ基含有化合物を含有すると、廃水処理上の問題が生じて不経済となる上、干渉色が発生しやすくなる。上記アミノ基含有化合物としては、モノエタノールアミン等の第1級アミン、ジメチルアミン等の第2級アミン、TEA(トリエタノールアミン)等の第3級アミン、グリシン等のアミノ酸又はそれらの塩が挙げられる。
【0019】
本発明においては、被めっき物上に、上記無電解ニッケル−リンめっき浴を用いてニッケル−リン合金皮膜を形成し、次いでこのニッケル−リン合金皮膜を酸性処理液により処理することにより黒化して黒色ニッケル皮膜を形成するが、ニッケル−リン合金皮膜の黒化は、このニッケル−リン合金皮膜を酸性処理液で処理することによりニッケル−リン合金皮膜が酸化されて酸化ニッケルとなって黒化が達成されるものと推定される。そのため、良好な黒色ニッケル皮膜を得るためには、皮膜に対して効果的かつ効率的に酸化反応を進行させて黒化する必要があるが、上記無電解ニッケル−リンめっき浴を用いることにより形成したニッケル−リン合金皮膜は、酸性処理液により効果的かつ効率的に黒化することができる。なお、ニッケル−リン合金皮膜中のリン含有量は2〜7質量%、特に3〜5質量%であることが好ましい。
【0020】
本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴によるめっき温度及びめっき時間は、めっき浴の組成や、形成するニッケル−リン合金皮膜の厚さ等により適宜決定され、特に制限されるものではないが、60〜95℃、特に70〜95℃のめっき温度、0.1〜5時間のめっき時間が好適に適用し得る。
【0021】
なお、本発明においては、ニッケル−リン合金皮膜を形成する前に、無電解ニッケルめっき等により基板上に、好ましくは0.1〜20μmの厚さの下地層を形成してからニッケル−リン合金皮膜を形成することが好ましい。下地層を形成することにより、基板表面の荒れ等の影響を低減することができ、黒化された皮膜がより優れた物性を有するもの、特に優れた黒色を呈するものになることから好ましい。この下地層は、その上に形成される上述したニッケル−リン合金皮膜とは異なり、酸性処理液によって直接処理されるものではないため、従来公知のめっき法により形成することが可能であり、例えば、従来公知の無電解ニッケルめっき浴を用いて形成することが可能である。
【0022】
次に、このニッケル−リン合金皮膜を酸性処理液で処理することにより黒色ニッケル皮膜を形成する。本発明においては、この酸性処理液による処理を、上述したようにして得られたニッケル−リン合金皮膜に加熱処理を施すことなく実施する。皮膜の加熱処理は、皮膜硬度を向上させることができる点で有効であるが、従来の黒色皮膜の形成方法では、黒化させた後に加熱処理すると退色が起こってしまい、また、加熱処理した皮膜に黒化処理しても十分な黒色が得られないという問題があった。これに対して、本発明により得られる黒色ニッケル皮膜は、後述するように、黒化処理後の加熱処理により黒色を退色させることなく皮膜硬度を向上させることができることから、この段階での加熱処理は不要である。
【0023】
本発明において、酸性処理液としては、硝酸、塩酸、硫酸、過硫酸、過酸化水素の1種又は2種以上の水溶液が挙げられ、その酸性処理液中の濃度は10〜800g/Lであることが好ましい。なお、酸性処理液のpHは4以下、特に2以下が好ましい。
【0024】
また、本発明においては、上記酸性処理液が、鉄、銅、銀、コバルト、マンガン及びモリブデン、特に銅及び鉄から選ばれる金属のイオンを1種又は2種以上含んでいることが好ましい。金属のイオンとしては、例えばCu2+,Fe3+等の金属元素のみからなるイオンの他、上記金属を含む錯イオンが挙げられる。この場合、酸性処理液中の上記金属のイオンの濃度は0.1〜10mol/Lであることが好ましい。
【0025】
酸性処理液中に上記金属のイオンを含有させることにより、黒化処理における酸化反応と共に、金属の置換反応によってもニッケル−リン合金皮膜の黒化を進行させることが可能である。上述した本発明の無電解ニッケル−リンめっき浴により形成されたニッケル−リン合金皮膜は、この金属の置換反応に対しても効果的かつ効率的であるためこの点においても好適である。
【0026】
特に、上述した金属のイオンを含む酸性処理液としては、更に、ニッケルのイオンを含むものが好ましい。ニッケルのイオンとしては、ニッケルイオン(Ni2+)の他、ニッケル錯イオンが挙げられる。上述した金属のイオンと共に、ニッケルのイオンを共存させることにより、ニッケルのイオンと共存する金属のイオンによる皮膜の置換反応を促進することが可能である。この場合、酸性処理液中の上記ニッケルのイオンの濃度は0.001〜1mol/Lであることが好ましい。
【0027】
本発明において、酸性処理液による処理温度及び処理時間は、酸性処理液の組成や形成されたニッケル−リン合金皮膜(ニッケル−リン合金皮膜の形成に用いた無電解ニッケル−リンめっき浴の組成)等により適宜決定され、特に制限されるものではないが、0〜60℃、好ましくは20〜60℃の処理温度、0.1〜10分の処理時間が好適に適用し得る。
【0028】
また、酸性処理液により処理して得られた皮膜は、酸性処理液で処理した後、更に加熱処理することが可能である。酸性処理液で処理しただけの皮膜であっても、従来に比べて優れた物性を有するものであるが、得られた皮膜は、加熱処理により黒色を退色させることなく皮膜硬度を向上させることができることから、加熱処理により、更に、高い硬度を有しつつ、良好な黒色を呈する皮膜を得ることが可能である。この場合、加熱処理条件としては、例えば、大気下(空気雰囲気下)、100〜400℃で、0.1〜100分加熱処理することが効果的である。
【0029】
本発明によれば、形成する黒色ニッケル皮膜の膜厚が薄い場合であっても干渉色がない良好な黒色ニッケル皮膜を得ることが可能であり、本発明は100μm以下、特に0.1〜10μm程度の黒色ニッケル皮膜を形成する場合に好適である。
【実施例】
【0030】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【0031】
[実施例1〜5、比較例1]
被めっき物としてAl板(JIS1050)を用い、このAl板に前処理として以下の処理を順に施した。
UA−68(上村工業株式会社製)に50℃にて5分浸漬
AZ−102(上村工業株式会社製)に60℃にて1分浸漬
(1:1)硝酸に20℃にて30秒浸漬
AZ−301(上村工業株式会社製)に25℃にて30秒浸漬
(1:1)硝酸に20℃にて20秒浸漬
AZ−301(上村工業株式会社製)に25℃にて20秒浸漬
【0032】
次に、硝酸ニッケル0.1mol/L、次亜リン酸ナトリウム0.1mol/L及びクエン酸0.2mol/Lを含有し、pHが4.5である無電解ニッケル−リンめっき浴に、上記前処理を施したAl板を90℃にて10分浸漬して下地層を形成した。
【0033】
次に、表1に示される無電解ニッケル−リンめっき浴に、下地層を形成したAl板を、80℃にて、形成するニッケル−リン合金皮膜の膜厚が15μmとなるように時間を調整して浸漬して、無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜を形成した。
【0034】
【表1】


【0035】
次いで、各めっき浴につき、この操作を繰り返し、各々1ターン目、3ターン目、5ターン目に当たる無電解ニッケル−リンめっき皮膜を形成したAl板について、塩化第二鉄100g/L(Fe3+として約0.37mol/L)、及び塩酸200g/Lを含有する酸性処理液を用い、酸性処理液中に25℃で1分浸漬する黒化処理を施して黒色ニッケル皮膜を得た。得られた黒色ニッケル皮膜の明度、干渉色の有無を下記の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0036】
明度(L値)
分光式色差計(日本電色製:SQ−2000)を用い光源(C/10)にて測定した。
干渉色の有無
皮膜に蛍光灯の光を照射して目視し、虹色が確認されたものを干渉色「有」とした。
【0037】
【表2】


【0038】
[実施例6〜8]
酸性処理液を下記表3のA(実施例6)、B(実施例7)、C(実施例8)に換えて黒化処理した以外は実施例5と同様の方法で黒色ニッケル皮膜を形成し、得られた黒色ニッケル皮膜について、実施例1と同様の方法で評価した。結果を表4に示す。
【0039】
【表3】


【0040】
【表4】


【0041】
[実施例9、比較例2]
実施例5及び比較例1の各々と同様の方法でAl板を前処理し、下地層及び無電解ニッケル−リン合金めっき皮膜を形成した1ターン目の皮膜について、黒化処理を施した後、更に300℃で60分加熱処理を施して黒色ニッケル皮膜を得た。得られた黒色ニッケル皮膜について、明度、干渉色の有無を実施例1と同様の方法で、また、皮膜硬度を下記の方法で評価した。結果を表5に示す。
【0042】
皮膜硬度
微小硬さ試験機(アカシ製:HM−124)を用いビッカース硬さを測定した。
【0043】
【表5】


【0044】
[実施例10〜19]
ベンゾチアゾールの代わりに表6に示される化合物を表6に示される量で用いた以外は実施例5と同様の方法で黒色ニッケル皮膜を形成し、得られた黒色ニッケル皮膜について、実施例1と同様の方法で評価した。結果を表7に示す。
【0045】
【表6】


【0046】
【表7】



【出願人】 【識別番号】000189327
【氏名又は名称】上村工業株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区道修町3丁目2番6号
【出願日】 平成15年12月2日(2003.12.2)
【代理人】 【識別番号】100079304
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 隆司

【識別番号】100114513
【弁理士】
【氏名又は名称】重松 沙織

【識別番号】100120721
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 克成

【識別番号】100124590
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 武史

【公開番号】 特開2005−163107(P2005−163107A)
【公開日】 平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願番号】 特願2003−403310(P2003−403310)