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【発明の名称】 |
冷間金型用鋼圧延材の製造方法 |
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【氏名】野末 晃志 【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区夜光二丁目4番1号 大同特殊鋼株式会社川崎工場内 【氏名】水間 誠治 【住所又は居所】神奈川県川崎市川崎区夜光二丁目4番1号 大同特殊鋼株式会社川崎工場内 |
【課題】冷間金型用鋼において、耐摩耗性などの特性を損なうことなく、改善された被削性を有する圧延材を製造する方法を提供する。
【解決手段】C:0.8〜1.6重量%を含有し、冷間金型用鋼としての合金組成を有する鋼を、400℃以上であってγ変態点を超えない温度、好適には750℃に加熱し、その温度において圧延する低温圧延を行なったのち、得られた圧延材を球状化焼鈍して硬度を低下させるとともに、二次炭化物の粒子を成長させる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 冷間金型用鋼としての合金組成を有する鋼を、400℃以上であってγ変態点を超えない温度に加熱し、その温度において圧延することを特徴とする冷間金型用鋼圧延材の製造方法。 【請求項2】 冷間金型用鋼としての合金組成を有する鋼を、650℃以上であってγ変態点を超えない温度に加熱し、その温度において圧延したのち、得られた圧延材を球状化焼鈍して硬度を低下させるとともに、二次炭化物の粒子を成長させることを特徴とする冷間金型用鋼圧延材の製造方法。 【請求項3】 球状化焼鈍に続く焼入れ・焼戻しの工程を付加して金型製造用の素材を得る請求項2の製造方法。 【請求項4】 C:0.8〜1.6重量%を含有する合金組成の冷間金型用鋼を、750℃以上の温度に加熱して圧延し、続く球状化焼鈍により鋼の硬度をHB207以下に低下させて被削性を高めるとともに、二次炭化物の成長を促進して平均粒径0.35μm以上とする請求項3の製造方法。 【請求項5】 冷間金型用鋼として、重量で、C:0.8〜1.6%、Si:1%以下、Mn:0.6%以下、Cr:7〜15%、Mo:0.8〜2.1%およびV:0.2〜0.4%を含有し、残部がFeおよび不可避の不純物からなる合金組成を有するものを使用して実施する請求項4の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、冷間金型用鋼の圧延材を製造する方法に関する。ここで「冷間金型用鋼」の語はJISの用語に従ったものであるが、内容はむしろ「冷間ダイス鋼」と呼ばれているものを対象にしている。「圧延」の語は、圧下による鍛錬を意味し、鍛造を包含する。本発明により、耐磨耗性や靭性を低下させることなく、被削性が改善された冷間金型用鋼が提供される。 【背景技術】 【0002】 工具鋼の分野に属する冷間金型用鋼の用途のうちで、今日重要なものは、プレス金型やダイカスト金型である。これらの用途に向ける鋼は、金型を製作する上では被削性が高いことが望まれ、一方、製作された金型を使用する見地からは、耐摩耗性や靭性が高いことが求められる。しかし、その両方を兼ね備えた鋼はない。そこで、現実の用途にとってどちらの性能が重要であるかに従い、鋼種を選択しているのが実情である。具体的にいえば、被削性が高いものとしてはDCXおよびARK1があり、反対に耐摩耗性が特徴であるものとしてはJISのSKD11がある。両方の特性がバランスした鋼として、出願人は、DC53と呼ぶ鋼種を開発し、製造販売している。 【0003】 いうまでもなく、被削性および耐摩耗性・靭性の、どちらもすぐれた鋼が望ましく、そのような鋼の出現は久しく待たれている。この要望にこたえるため発明者らは、DC53をベースとする鋼の改良を企て、その加工工程を、圧延の段階から再検討した。その過程で発明者らは、従来の圧延法のように材料をγ変態点以上に加熱して圧延するのではなく、加熱をγ変態点に達しない温度(たとえば750℃)に止めて実施する圧延(以下「低温圧延」という)を行なうと、被圧延材が示す変形抵抗が、従来法で経験していた値より著しく低いという事実を見出した。 【0004】 詳しく言えば、従来法は被圧延材を1200℃程度の高温に加熱して圧延を開始する(以下「高温圧延」という)ものであって、これはもちろん、高温においては変形抵抗が低くなるという現象を利用している。加工温度が低下してくれば変形抵抗は増大するから、圧延装置の容量からくる制約のため、従来の高温圧延は、高温で圧延を終了するように、工程を設計し実施している。これに対して低温圧延を行なうと、材料が示す変形抵抗は、高温圧延に比べれば、絶対値においては大きいが、高温から温度が低下してきたという履歴をもつ材料が低温領域で示す変形抵抗より小さいという現象である。 【0005】 これを具体的な数値で示せば、図1のようになる。図1は400〜600℃の範囲の圧延温度(測定は鍛造について行なったが)における変形抵抗を、室温から1200℃まで加熱し、そこから冷却されてこの温度に至った材料と、室温から600℃に加熱した材料とでどう異なるかを比較したグラフである。グラフに見るとおり、変形抵抗の低下は顕著であって、平均で約40%にも達する。このようなわけで、低温圧延において対処すべき変形抵抗は、高温圧延において経験していた変形抵抗より大きいといっても、実際の代表的な低温圧延温度700℃付近では、変形抵抗が400MPa以下である。この値は圧延機負荷の一般的な許容範囲内であり、とりたてて問題にならない。 【0006】 低温圧延の意義は、とくに、続いて球状化焼鈍を行なったときに発揮されることがわかった。すなわち、球状化焼鈍によって、結晶粒径は顕著に大きくなる。この現象は、変形抵抗が大きい状態で圧延すると圧延材の中には大きな塑性ひずみが残り、それが駆動力となって、再結晶が促進されるからであると解される。結晶粒径が大きくなれば被削性が改善されることは、よく知られている事実である。 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0007】 本発明の一般的な目的は、上述のような発明者らが見出した現象を利用して、冷間金型用鋼の圧延材を製造する有利な方法を提供することにある。本発明の特定的な目的は、耐磨耗性などの冷間金型用鋼に要求される特性を損なうことなく、改善された被削性を有する冷間金型用鋼の圧延材を製造する方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0008】 上記した一般的な目的を達成する本発明の冷間金型用鋼圧延材の製造方法は、冷間金型用鋼としての合金組成を有する鋼を、400℃以上であってγ変態点を超えない温度に加熱し、その温度において圧延する低温圧延を行なうことを特徴とする。 【0009】 特定的な目的を達成する本発明の冷間金型用鋼圧延材の製造方法は、冷間金型用鋼としての合金組成を有する鋼を、650℃以上であってγ変態点を超えない温度に加熱し、その温度において圧延する低温圧延を行なったのち、得られた圧延材を球状化焼鈍して硬度を低下させるとともに、二次炭化物の粒子を成長させることを特徴とする。 【発明の効果】 【0010】 本発明の方法にしたがって冷間金型用鋼圧延材を製造すれば、圧延機負荷に若干の増加はあるものの、後に予定された球状化焼鈍において結晶粒の成長が顕著に促進されるような圧延材を得ることができる。その圧延材に対し、球状化焼鈍を経て焼入れ・焼鈍しを行なうことにより、耐磨耗性などの冷間金型用鋼に要求される特性と、改善された被削性とを兼ね備えた冷間金型用鋼圧延材を得ることができる。この材料は、既知の加工技術によって、冷間金型、代表的にはプレス金型などに有利に加工することができる。加熱温度が低いということは、当然にエネルギーの消費が少なくて済むことを意味する。 【発明を実施するための最良の形態】 【0011】 本発明の低温圧延は、上記のように、冷間金型用鋼を、400℃以上であってγ変態点を超えない温度に加熱して圧延する。加熱温度は、上の説明から理解されるように低いほど圧延残留ひずみが大きくなり、球状化焼鈍における結晶粒成長が顕著であって、硬さを低下させる効果は大きく好ましいが、変形抵抗は大きくなって圧延機の負荷が増すから、それが許容する限度において選択しなければならない。通常の設備条件においては、750℃内外が、バランスのとれた、実際的な加熱温度である。 【0012】 球状化焼鈍の条件は、この種の冷間金型用鋼に対して通常行なわれているものを採用すればよい。一例を挙げれば、温度850〜890℃、加熱時間2〜3時間である。高温の球状化焼鈍は、それにより、炭化物のマトリクスへの溶け込みが促進され、その後の長時間にわたる冷却の過程で球状化が進み、また結晶粒の成長が促進される。 【0013】 球状化焼鈍により実現すべき硬さは、HB207以下である。この条件は、DC53鋼に関して硬さと被削性との関係を調べて得た、図2のデータに基づいて定めたものである。図2は、HB換算硬さと、エンドミル切削において横逃げ面最大磨耗が300μmに達するまでの切削距離との関係をグラフにしたものであって、HB207以下の硬さであれば、実用性の高い、45000mm以上の切削が可能であることを示している。 【0014】 同じく球状化焼鈍によりもたらされる二次炭化物の粒径成長は、それによりマトリクス内に存在する間隙を広くし、硬さを低下させ、切削工具の磨耗を低減するという効果を与える。この目的からみたとき、粒径0.1μm以上の二次炭化物の平均粒径が0.35μm以上であることが好ましい。その理由は、図3のデータにある。図3は、やはりDC53鋼に関して、粒径0.1μm以上の二次炭化物の平均粒径とHB換算硬さとの関係をプロットしたグラフであって、上記のHB207以下という好ましい硬さは、二次炭化物の平均粒径0.35μm以上の条件により達成できることが、このグラフからわかる。 【0015】 本発明の製造方法を適用することができる冷間金型用鋼の概括的な合金組成としては、重量で、C:0.8〜1.6%、Si:1%以下、Mn:0.6%以下、Cr:7〜15%、Mo:0.8〜2.1%およびV:0.2〜0.4%を含有し、残部がFeおよび不可避の不純物からなるものである。具体的な鋼種名をあげれば、DC11、DC53(ともに出願人が開発した鋼種)などである。合金成分に関して、重要な要素は炭素含有量であって、0.8%未満では炭化物の析出が実質上見られず、冷間金型用鋼としての性能を示さない。含有量が増せば析出する二次炭化物の量も増加するが、1.6%を超えると、一次炭化物が析出してしまい、冷間金型用鋼として適切でないものになる。 【実施例1】 【0016】 下記の組成のDC53鋼を溶製し、 C:0.95%、Si:0.94%、Mn:0.37%、Cr:8.11%、Mo:1.92%、V:0.20%、残部:Feおよび不純物 分塊して得た、直径28cm×長さ600cmのビレットを750℃に加熱し、圧下率53%の圧延を行なった。比較のため、1200℃に加熱して、同じ圧下率の圧延を行なった圧延材も用意した。これらの圧延材を、温度860℃で3時間均熱した後、740℃まで冷却速度25℃/時間で徐冷し、その後、室温まで空冷することにより、球状化焼鈍した。焼鈍材の硬さ(HB)の平均値は、それぞれ下記のとおりであった。 実施例:216 比較例:230 【0017】 各焼鈍材に対してエンドミルによる切削を行なって、被削性を調べた。結果は図4に示すとおりであって、実施例は比較例にくらべて、同じ工具磨耗量に至るまでに、2倍近い切削距離を切削することができた。 【実施例2】 【0018】 下記の組成のDC11鋼を溶製し、 C:1.45%、Si:0.27%、Mn:0.47%、Cr:12.8%、Mo:0.81%、V:0.23%、残部:Feおよび不純物 実施例1と同じ操作で圧延材を製造した。比較例も同様である。それらの圧延材を、実施例1と同じ条件で、球状化焼鈍した。焼鈍材の硬さ(HB)の平均値は、それぞれ下記のとおりであった。 実施例:209 比較例:230 【図面の簡単な説明】 【0019】 【図1】冷間金型用鋼を400〜600℃で圧延したときの変形抵抗を、室温から1200℃まで加熱してそこから冷却した材料と、室温(RT)から600℃に加熱した材料とで比較したグラフ。 【図2】冷間金型用鋼をエンドミルで切削したときの、硬さ(HB換算)と切削距離との関係を示すグラフ。 【図3】冷間金型用鋼に析出した二次炭化物の平均粒径と、硬さ(HB換算)との関係をプロットしたグラフ。 【図4】本発明の実施例のデータであって、本発明の方法により製造した冷間金型用鋼の圧延材の被削性を、従来法により製造した圧延材の被削性と比較して示したグラフ。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003713 【氏名又は名称】大同特殊鋼株式会社 【住所又は居所】愛知県名古屋市中区錦一丁目11番18号
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| 【出願日】 |
平成16年1月8日(2004.1.8) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100070161 【弁理士】 【氏名又は名称】須賀 総夫
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| 【公開番号】 |
特開2005−194593(P2005−194593A) |
| 【公開日】 |
平成17年7月21日(2005.7.21) |
| 【出願番号】 |
特願2004−3371(P2004−3371) |
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