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【発明の名称】 |
方向性電磁鋼板の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】今村 猛 【住所又は居所】東京都千代田区内幸町二丁目2番3号 JFEスチール株式会社内 【氏名】早川 康之 【住所又は居所】東京都千代田区内幸町二丁目2番3号 JFEスチール株式会社内 【氏名】村木 峰男 【住所又は居所】東京都千代田区内幸町二丁目2番3号 JFEスチール株式会社内 【氏名】山上 日出雄 【住所又は居所】東京都千代田区内幸町二丁目2番3号 JFEスチール株式会社内 |
【課題】インヒビターを使用しない方向性電磁鋼板の製造において、焼鈍分離剤を適用しない場合にあっても仕上焼鈍時の鋼板相互間での密着問題を回避する製造技術を確立することによって、焼鈍分離剤を適用しない低コストの製造方法を提供する。
【解決手段】質量比で、C:0.08%以下、Si:2.0%〜8.0%およびMn:0.005〜1.0%を含み、Alを150ppm以下、かつN、SおよびSeを各々50ppm以下に低減し、残部Feおよび不可避不純物からなる、スラブを熱間圧延したのち、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、次いで再結晶焼鈍を行い、その後仕上焼鈍を施す一連の方向性電磁鋼板の製造工程において、 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 質量比で、 C:0.08%以下、 Si:2.0%〜8.0%および Mn:0.005〜1.0% を含み、Alを150ppm以下、かつN、SおよびSeを各々50ppm以下に低減し、残部Feおよび不可避不純物からなる、スラブを熱間圧延したのち、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、次いで再結晶焼鈍を行い、その後仕上焼鈍を施す一連の方向性電磁鋼板の製造工程において、 再結晶焼鈍後に焼鈍分離剤を適用することなく仕上焼鈍を施すに当り、仕上焼鈍における最高到達温度について、再結晶焼鈍の雰囲気を露点0℃以下とした場合は前記最高到達温度を1000℃以下、再結晶焼鈍の雰囲気を露点0℃超とした場合は前記最高到達温度を1100℃以下とし、かつ仕上焼鈍における700℃から最高到達温度までの範囲での昇温速度および最高到達温度から700℃までの範囲での冷却速度の平均値を各々30℃/h以下とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。 【請求項2】 質量比で、 C:0.08%以下、 Si:2.0%〜8.0%および Mn:0.005〜1.0% を含み、さらにBi、Sb、Pb、Ta、Ca、Cr、Sr、SnおよびTeから選ばれる1種または2種以上を各々10ppm以上含有し、Alを150ppm以下、かつN、SおよびSeを各々50ppm以下に低減し、残部Feおよび不可避不純物からなる、スラブを熱間圧延したのち、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、次いで再結晶焼鈍を行い、その後仕上焼鈍を施す一連の方向性電磁鋼板の製造工程において、 再結晶焼鈍後に焼鈍分離剤を適用することなく仕上焼鈍を施すに当り、仕上焼鈍における最高到達温度を1300℃以下とし、かつ仕上焼鈍における700℃から最高到達温度までの範囲での昇温速度および最高到達温度から700℃までの範囲での冷却速度の平均値を各々30℃/h以下とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。 【請求項3】 再結晶焼鈍後の鋼板表層に、けい素酸化物を主体としたサブスケールを0.2μm 以上の厚みで形成することを特徴とする請求項1または2に記載の電磁鋼板の製造方法。 【請求項4】 スラブが、さらに質量比で Ni:0.01〜1.50%、 Cu:0.01〜0.50%および P:0.005〜0.50%から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1、2または3に記載の電磁鋼板の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、変圧器や回転機の鉄心材料に好適な方向性電磁鋼板の製造方法に関するものである。 【0002】 【従来の技術】 方向性電磁鋼板については、インヒビターと呼ばれる析出物を使用して仕上焼鈍中にゴス(Goss)方位を有する粒を二次再結晶させることが一般的な技術として使用されている。例えば、特許文献1に記載のAlN、MnSを使用する方法、特許文献2に記載のMnS、MnSeを使用する方法が、工業的に実用化されている。これらとは別に、CuSeとBNを添加する技術が特許文献3に、またTi、Zr、Vの窒化物を使用する方法が特許文献4に、それぞれ記載されている。 【0003】 これらのインヒビターを用いる方法は、安定して二次再結晶粒を発達させるのに有用な方法であるが、インヒビターは二次再結晶後には磁気特性を劣化させる原因となることから、仕上焼鈍を1100℃以上の高温としかつ雰囲気を制御することで地鉄中からインヒビターなどの析出物および介在物を除去する必要があった。 【0004】 そこで、発明者らはインヒビター成分を含有しない素材において、ゴス方位結晶粒を二次再結晶により発達させる技術を特許文献5にて提案した。この方法では、インヒビターを純化する工程が不必要となるために、仕上焼鈍を高温化する必要がなく、コスト面でもメンテナンス面でも大きなメリットを有する方法であった。 【0005】 ところで、方向性電磁鋼板の製造において、仕上焼鈍が高温の場合は、鋼板同士の密着を防止するために、仕上焼鈍前に焼鈍分離剤を適用する必要があった。この焼鈍分離剤としては、次工程でフォルステライトを形成させるために、MgOが主に使用されている。また、水に懸濁させたシリカやアルミナを塗布したり、耐熱無機材料シート(シリカ、アルミナ、マイカ)を鋼板の間に挟むことも行われている。この場合、焼鈍分離剤のコストと共に分離剤を適用するための設備に要する費用およびそのメンテナンスの費用がかかるため、コストが高くなることが問題であった。 【0006】 従って、上記のインヒビター成分を含有しない素材を用いる技術が確立されれば、高温の仕上焼鈍が不要になって仕上焼鈍の低温化が実現する結果、焼鈍分離剤が不必要になることが期待されていた。しかしながら、低温で仕上焼鈍を行ったにも関わらず、鋼板同士が密着する場合が多々生じるという、問題が顕在化した。 【0007】 【特許文献1】 特公昭40−15644号公報 【特許文献2】 特公昭51−13469号公報 【特許文献3】 特公昭58−42244号公報 【特許文献4】 特公昭46−40855号公報 【特許文献5】 特開2000−129356号公報 【0008】 【発明が解決しようとする課題】 本発明は、インヒビターを使用しない方向性電磁鋼板の製造において、焼鈍分離剤を適用しない場合にあっても仕上焼鈍時の鋼板相互間での密着問題を回避する製造技術を確立することによって、焼鈍分離剤を適用しない低コストの製造方法を提供しようとするものである。 【0009】 【課題を解決するための手段】 発明者らは、コスト高となる焼鈍分離剤を適用せずとも仕上焼鈍の条件を規定することによって、鋼板の密着を効果的に防止できることを見出し、本発明の電磁鋼板の製造方法を完成した。 【0010】 すなわち、発明者らは、かかる問題の解決に鋭意研究を重ねた結果、鋼中の成分を規定し、かつ仕上焼鈍の昇温速度および冷却速度を適正に調整することによって、インヒビター成分を低減しかつ焼鈍分離剤を適用しない場合にも、仕上焼鈍時の鋼板同士の密着を効果的に防止できることを見出したのである。 以下に、本発明を成功に到らしめた実験に基づいて説明する。 【0011】 <実験1> 質量%で、C:0.0021%、Si:3.31%、Mn:0.060%、sol.Al:56ppm、N:27ppm、S:16ppmおよびBi:0.022%を含む、鋼スラブを連続鋳造にて製造し、1160℃でスラブ加熱した後熱間圧延により2.6mmの厚さに仕上げ、その後950℃で60秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延により0.35mmの厚さに仕上げた。 さらに、均熱条件が830℃および60秒、露点35℃の再結晶焼鈍を施した後、焼鈍分離剤を塗布することなく最高到達温度である1200℃で5時間保定する仕上焼鈍を施した。この際、700℃から最高到達温度までの範囲の昇温速度と、その後の同温度域での冷却速度とを、種々の速度に変化させた。 【0012】 次いで、仕上焼鈍後にコイルを巻き直しして鋼板同士が密着しているか調査した。その調査結果を、図1に示した。図1において、○は鋼板同士が密着していない場合、×は鋼板同士が密着した場合(鋼板同士が部分的に癒着していれば「密着」した状態とする。以下、密着については同様の定義とする。)、をそれぞれ示す。この結果から、仕上焼鈍の昇温速度および冷却速度が30℃/h以下の場合に、鋼板の密着が発生しないことが明らかとなった。 【0013】 ここで、仕上焼鈍の昇温速度および冷却速度が30℃/h以下の場合に、鋼板の密着が発生しない理由は必ずしも明らかではないが、次のように考えることができる。 すなわち、鋼板が密着する条件は、▲1▼焼鈍温度が高温であること、▲2▼焼鈍時間が長時間であること、▲3▼鋼板同士が大きな圧力で押し付けあっていることが挙げられるが、焼鈍の昇温速度および冷却速度は、▲3▼に影響を及ぼすと考えられる。通常、仕上焼鈍は鋼板をコイル状のまま焼鈍する、いわゆる箱焼鈍により行う。この場合、焼鈍炉の温度変化とコイル自体の温度変化には多少のずれが生じる。さらに、鋼コイルはある一定の大きさを有する円筒形を成していることから、その外側と内側とにも温度差を生じる。この内外の温度差により、鋼の熱膨張に差異が生じる結果、コイルの特定部位に圧縮応力が付与されることが予想される。仕上焼鈍の昇温速度および/または冷却速度が30℃/hを超える速度の場合には、このコイル各部の温度差が大きくなり、そのため大きな圧縮応力が特定部位に付与されて鋼板の密着が助長されるものと考えられる。 【0014】 <実験2> Alを100ppm以下、N、SおよびSeを50ppm以下に低減しかつ表1に記載の成分を有する、鋼スラブを1120℃で加熱し、熱間圧延により2.4mmの厚さに仕上げ、その後950℃で60秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延により0.35mmの厚さに仕上げた。さらに、均熱条件が900℃で10秒、露点−40℃の再結晶焼鈍を施した後、焼鈍分離剤を塗布することなく、最高到達温度1000℃、1100℃および1200℃のそれぞれで75時間保定する仕上焼鈍を施した。この際、700℃から、1000℃、1100℃および1200℃のそれぞれの最高到達温度までの範囲における、昇温速度および冷却速度の平均を各々30℃/hとした。 【0015】 そして、仕上焼鈍後にコイルを巻き直して鋼板同士が密着しているかを調査した。その結果を表1に併記する。表1において、鋼板同士が密着していない場合は○、密着した場合は×で示した。この結果、Bi、Sb、Pb、Ta、Ca、Cr、Sr、SnおよびTeのいずれかをスラブ成分中に含有する場合は、1100℃以上の高温の仕上焼鈍でも鋼板同士が密着しないことが分かる。 【0016】 【表1】
【0017】 <実験3> 表1に記載される鋼1および鋼5の成分組成になる鋼スラブを、1200℃でスラブ加熱し、熱間圧延により2.6mmの厚さに仕上げ、その後950℃で60秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延により0.3mmの厚さに仕上げた。さらに、900℃で10秒の再結晶焼鈍を施した。この際、焼鈍雰囲気の露点を−10〜40℃の範囲で種々に変化させた。再結晶焼鈍後の鋼板表層を観察すると、乾燥雰囲気ではサブスケールの形成・発達が認められなかったが、露点が高くなるにつれてシリカを主体としたサブスケールが発達していた。その後、焼鈍分離剤を塗布することなく、75時間保定する仕上焼鈍を施した。その際、前記種々に露点を変更して作製した再結晶焼鈍板の各々について最高到達温度を1000〜1300℃まで変更し、700℃から最高到達温度までの範囲内の昇温速度および冷却速度の平均を各々30℃/hとした。 【0018】 この仕上焼鈍後にコイルを巻き直しして、鋼板同士が癒着しているかを調査した。そして、仕上焼鈍後に鋼板の密着が認められなかった鋼板について、その仕上焼鈍温度の最高温度と仕上焼鈍前の鋼板のサブスケール厚みとの関係を表2に示す。この結果から、露点0℃超の湿潤雰囲気として仕上焼鈍前の鋼板にサブスケールを0.2mm厚以上発達させれば、Bi等を含有させない場合でも、仕上焼鈍の温度が1100℃でも、鋼板の密着が発生しないことが明らかとなった。 【0019】 【表2】
【0020】 発明者らは、以上の実験結果から、インヒビターを含まない成分系において、焼鈍分離剤を適用せずに仕上焼鈍を施す上で問題となる、鋼板同士の密着を仕上焼鈍の昇温速度および冷却速度を規定することで効果的に防止し、安定して製造できることを新規に知見したのである。 本発明は、上記知見に立脚するものである。 【0021】 すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。 (1)質量比で、 C:0.08%以下、 Si:2.0%〜8.0%および Mn:0.005〜1.0% を含み、Alを150ppm以下、かつN、SおよびSeを各々50ppm以下に低減し、残部Feおよび不可避不純物からなる、スラブを熱間圧延したのち、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、次いで再結晶焼鈍を行い、その後仕上焼鈍を施す一連の方向性電磁鋼板の製造工程において、 再結晶焼鈍後に焼鈍分離剤を適用することなく仕上焼鈍を施すに当り、仕上焼鈍における最高到達温度について、再結晶焼鈍の雰囲気を露点0℃以下とした場合は前記最高到達温度を1000℃以下、再結晶焼鈍の雰囲気を露点0℃超とした場合は前記最高到達温度を1100℃以下とし、かつ仕上焼鈍における700℃から最高到達温度までの範囲での昇温速度および最高到達温度から700℃までの範囲での冷却速度の平均値を各々30℃/h以下とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。 【0022】 (2)質量比で、 C:0.08%以下、 Si:2.0%〜8.0%および Mn:0.005〜1.0% を含み、さらにBi、Sb、Pb、Ta、Ca、Cr、Sr、SnおよびTeから選ばれる1種または2種以上を各々10ppm以上含有し、Alを150ppm以下、かつN、SおよびSeを各々50ppm以下に低減し、残部Feおよび不可避不純物からなる、スラブを熱間圧延したのち、1回もしくは中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を施し、次いで再結晶焼鈍を行い、その後仕上焼鈍を施す一連の方向性電磁鋼板の製造工程において、 再結晶焼鈍後に焼鈍分離剤を適用することなく仕上焼鈍を施すに当り、仕上焼鈍における最高到達温度を1300℃以下とし、かつ仕上焼鈍における700℃から最高到達温度までの範囲での昇温速度および最高到達温度から700℃までの範囲での冷却速度の平均値を各々30℃/h以下とすることを特徴とする方向性電磁鋼板の製造方法。 【0023】 (3)再結晶焼鈍後の鋼板表層に、けい素酸化物を主体としたサブスケールを0.2μm 以上の厚みで形成することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の電磁鋼板の製造方法。 【0024】 (4)スラブが、さらに質量比で Ni:0.01〜1.50%、 Cu:0.01〜0.50%および P:0.005〜0.50%から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)、(2)または(3)に記載の電磁鋼板の製造方法。 【0025】 【発明の実施の形態】 次に、本発明の構成要件における限定理由について述べる。 まず、本発明の電磁鋼板を製造する際の溶鋼成分の限定理由を、以下に説明する。なお、本明細書において鋼組成を表す%は、特にことわらない限り質量%を意味するものである。 C:0.08%以下、 Cは、0.08%を超えると、脱炭処理を行っても磁気時効の起こらない50ppm以下に低減することが困難になるため、0.08%以下に限定する。 【0026】 Si:2.0%〜8.0% Siは、電気抵抗を高めて鉄損を改善する効果があるが、2.0%未満であるとその効果に乏しく、また高温でγ変態を生じて熱延組織が変化したり、仕上焼鈍で変態して結晶方位が変化したりするため、良好な磁気特性が得られない。一方、8.0%を超えると加工性が劣化し、飽和磁束密度も低下するため、2.0%〜8.0%とする。 【0027】 Mn:0.005〜1.0% Mnは、熱間加工性を良好にするために必要な元素であるが、0.005%未満であると効果がなく、一方1.0%を超えると製品板の磁束密度が低下するため、0.005〜1.0%とする。 【0028】 Alを150ppm以下、かつN、SおよびSeを各々50ppm以下 インヒビター元素であるAlは150ppm以下、かつN、SおよびSe については50ppm以下に低減することが、本発明において鋼板を良好に二次再結晶させる上で必須である。かかる成分は、極力低減することが磁気特性の観点からは望ましく、例えばAlとしては100ppm以下がより好ましい。しかし、これらの成分を低減するためにはコスト高となる場合があることから、上記範囲内で残存させても問題はない。 【0029】 Bi、Sb、Pb、Ta、Ca、Cr、Sr、SnおよびTeから選ばれる1種または2種以上を各々10ppm以上 また、Bi、Sb、Pb、Ta、Ca、Cr、Sr、SnおよびTeから選ばれる1種または2種以上を含有させることで、かかる元素およびその化合物が表層に濃化そして析出し、鋼板同士が接触した際においても鋼(地鉄)そのものの接触が回避され、1300℃までの高温仕上焼鈍においても鋼板同士の密着を抑制する効果が見込まれることから有効である。ただし、含有量が多いと材料コストが増加するために多量に含有させる必要はない。 【0030】 その他の窒化物形成元素である、Ti、Nb、B、V等についても、それぞれ50ppm以下に低減することが、鉄損の劣化を防いで良好な加工性を確保する上で有効である。 【0031】 さらに、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させるために、Niを添加することができる。その添加量が0.005%未満であると磁気特性の向上量が小さく、一方1.50%を超えると二次再結晶が不安定になり磁気特性が劣化するため、添加量は、0.005〜1.50%とする。 【0032】 さらにまた、鉄損を向上させる目的で、Cu:O.01〜0.50%およびP:O.005〜0.50%のうちのいずれか一種を単独で、または2種を複合して添加できる。それぞれ添加量が下限量より少ない場合には鉄損向上効果がなく、一方上限量を超えると二次再結晶粒の発達が抑制される。 【0033】 上記成分を有する溶鋼は、通常の造塊法や連続鋳造法でスラブとしてもよいし、100mm以下の厚さの薄鋳片を直接鋳造法で製造してもよい。スラブは通常の方法で加熱して熱間圧延するが、鋳造後加熱せずに直ちに熱間圧延してもよい。薄鋳片の場合には、熱間圧延しても良いし、熱間圧延を省略してそのまま以後の工程に進んでもよい。熱間圧延前のスラブ加熱温度は従来必須であったインヒビターを固溶させるための高温焼鈍を必要としないことから、1250℃以下の低温とすることがコストの面で望ましい。 【0034】 次いで、必要に応じて熱延板焼鈍を施す。ゴス組織を製品板において高度に発達させるためには、熱延板焼鈍温度は800℃以上1100℃以下が好適である。熱延板焼鈍温度が800℃未満であると熱延でのバンド組織が残留し、整粒の一次再結晶組織を実現することが困難になり二次再結晶の発達が阻害される。熱延板焼鈍温度が1100℃を超えると、熱延板焼鈍後の粒径が粗大化しすぎることため、整粒の一次再結晶組織を実現する上で極めて不利である。 【0035】 熱延板焼鈍後は、必要に応じて中間焼鈍を挟む1回以上の冷間圧延を施した後、再結晶焼鈍を行う。冷間圧延の温度を100℃〜250℃に上昇させて行うこと、および冷間圧延途中で100〜250℃の範囲での時効処理を1回または複数回行うことが、ゴス組織を発達させる点で有効である。 【0036】 再結晶焼鈍は、脱炭を必要とする場合に雰囲気を露点が0℃超である湿潤雰囲気とするが、脱炭を必要としない場合、露点が0℃以下の乾燥雰囲気で行っても良い。湿潤雰囲気の場合、けい素酸化物を主体とするサブスケールが形成することがあるが、サブスケールの存在により鋼板同士が接触した際でも鋼(地鉄)そのものの接触が回避され、サブスケールを0.2μm 、好ましくは0.8μm 、より好ましくは1.8μmの厚さに形成することにより、高温での仕上焼鈍においても鋼板相互の密着を防止でき有効である。 【0037】 ここで、けい素酸化物を主体とするサブスケールとは、SiO2およびFeSixOyで表されるFe−Si酸化物(例えば、ファイアライト、クリノフェロシライト等)が9割以上で構成された内部酸化層である。 【0038】 また、再結晶焼鈍後にC量を100〜250ppmに調節することにより、磁束密度を向上させることができる。さらに、再結晶焼鈍後は、浸珪法によってSi量を増加させる技術を併用してもよい。その後、焼鈍分離剤を適用することなく仕上焼鈍を施す。 【0039】 ここで、焼鈍分離剤の適用とは、水に懸濁させたMgO、シリカ、アルミナ等の鋼板への塗布や、耐熱無機材料シート(シリカ、アルミナ、マイカ)を鋼板の間に挟む様に、なんらかの薬剤もしくは無機・有機材料を鋼板に塗布、電着、接着し、コイル状にして巻き込むことあるいはコイル状に巻いた際に鋼板の間にそれらを装入もしくは注入させることを意味する。 なお、再結晶焼鈍の際に鋼板表層に酸化物等(SiO2、FeSiO3等)のサブスケールが不可避的に生成することは、焼鈍分離剤を適用したことにはならない。 【0040】 その後、二次再結晶を発現させるために仕上焼鈍を施す。仕上焼鈍における昇温速度および冷却速度は上述の理由により700℃から仕上焼鈍での最高到達温度までの平均で30℃/h以下にする必要がある。仕上焼鈍は、最高到達温度に達する過程で一次保定および二次保定と呼ばれる、各々一定の温度で段階的に数時間ずつ保定する場合がある。この保定も鋼板の密着に影響するので、本発明ではこれら保定時間も込みで計算した速度を、昇温速度および冷却速度とする。ただし、最高到達温度での保定時間は含めず、700℃から最高到達温度に達した時点までの時間で昇温速度を計算する。 【0041】 また、仕上焼鈍は二次再結晶発現のために750℃以上で行う必要があるが、特に二次再結晶を完了させるために800℃以上の温度で30時間以上保持させることが望ましい。 【0042】 仕上焼鈍後には、平坦化焼鈍を行って張力を付加して形状を矯正することが、鉄損低減のために有効である。また、平坦化焼鈍を湿潤雰囲気で行い脱炭を行ってもよい。鋼板を積層して使用する場合には、鉄損を改善するために、平坦化焼鈍後、鋼板表面に絶縁コーティングを施すことが有効である。良好な打抜き性を確保するためには樹脂を含有する有機系コーティングが望ましく、溶接性を重視する場合には無機系コーティングを適用することが望ましい。 【0043】 なお、本発明における方向性電磁鋼板とは、二次再結晶により結晶粒を発現させた電磁鋼板を意味する。よって、Goss方位のみでなくCube方位({100}<001>方位もしくは{100}<011>方位)が二次再結晶している場合も、本発明の対象とする。 【0044】 【実施例】 実施例1 C:0.043%、Si:3.31%、Mn:0.060%、Al:32ppm、N:27ppm、S:16ppmおよびSb:0.032%を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなるスラブを、連続鋳造にて製造した。ついで、1200℃に加熱した後、熱間圧延により板厚1.8mmの熱延板に仕上げ、925℃で60秒の熱延板焼鈍を施した。その後、冷間圧延により板厚0.15mmに仕上げた後、860℃で60秒、露点が25℃の湿潤雰囲気下で再結晶焼鈍を施した。この再結晶焼鈍後には、鋼板にけい素酸化物を主体としたサブスケールが形成していた。 【0045】 さらに、焼鈍分離剤を適用することなく、窒素雰囲気中で最高到達温度1000℃の仕上焼鈍を施した。最高到達温度での保定時間は5時間とし、かつその昇温過程の850℃で30時間の保定を行った。この際、700℃から1150℃に昇温するときの平均昇温速度と、1150℃から700℃に冷却する際の冷却速度とを、表3に記載のとおり種々に変化させた。冷却後に、鋼板コイルを巻き直すことで鋼板同士の密着の有無を調査した。その結果を、表3に併記する。鋼板同士が密着していない場合は○、密着した場合は×で示した。 同表から明らかなように、本発明に従って製造した場合は、鋼板同士の密着が発生しなかった。 【0046】 【表3】
【0047】 実施例2 表4に示す成分を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなるスラブを、連続鋳造にて製造した。その後、1100℃で20分加熱後、熱間圧延により板厚2.8mmの熱延板に仕上げた。引き続き、900℃で30秒の熱延板焼鈍を施し、冷間圧延により板厚0.35mmに仕上げた後、950℃で10秒、露点が−45℃の乾燥雰囲気下で再結晶焼鈍を施した。この再結晶焼鈍後には、鋼板にサブスケールは形成していなかった。 【0048】 その後、焼鈍分離剤を適用することなく、窒素雰囲気中で最高到達温度900℃で75時間の仕上焼鈍を施した。ここで、700〜900℃間の平均昇温速度を表4に記載のごとく変化させ、同温度域での冷却速度は15℃/hに制御した。冷却後に、鋼板コイルを巻き直すことで鋼板同士の密着の有無を調査した。その結果を、表4に併記する。鋼板同士が密着していない場合は○、密着した場合は×で示した。 同表から明らかなように、本発明に従って製造した場合は、鋼板同士の密着が発生しなかった。 【0049】 【表4】
【0050】 実施例3 表5に示す成分を含み、残部が鉄および不可避的不純物からなるスラブを、連続鋳造にて製造した。その後、1250℃で30分加熱後熱間圧延により板厚2.8mmの熱延板に仕上げ、続いて冷間圧延により0.75mm厚の板厚とした。さらに、1100℃で30秒の熱延板焼鈍を施し、200℃の温間圧延により板厚0.27mmに仕上げた後、830℃で60秒、露点が40℃の湿潤雰囲気下で再結晶焼鈍を施した。この再結晶焼鈍後には、鋼板にけい素酸化物を主体としたサブスケールが形成していた。 【0051】 その後、焼鈍分離剤を適用することなく、840℃で25時間、窒素雰囲気中で保定後、最高到達温度1100℃で20時間、Ar雰囲気で保定する仕上焼鈍を施した。ここで、700〜1100℃間の平均昇温速度は15℃/hに制御し、同温度域での冷却速度は表5に記載のごとく変化させた。冷却後に、鋼板コイルを巻き直すことで鋼板同士の密着の有無を調査した。その結果を表5に併記する。鋼板同士が密着していない場合は○、密着した場合は×で示した。 同表から明らかなように、本発明に従って製造した場合は、鋼板同士の密着が発生しなかった。 【0052】 【表5】
【0053】 実施例4 表4に示した鋼A、BおよびCの成分を有する熱延板に、1000℃で90秒の熱延板焼鈍を施し、冷間圧延により板厚0.50mmに仕上げた後、900℃で10秒の再結晶焼鈍を施した。この際、露点については1条件は−50℃の乾燥雰囲気で、もう1条件は50℃の湿潤雰囲気とした。乾燥雰囲気での再結晶焼鈍後には鋼板にサブスケールは形成していなかったが、湿潤雰囲気では約1μm の厚さのサブスケールが認められた。 【0054】 その後、焼鈍分離剤を適用することなく、昇温並びに冷却過程ではAr雰囲気、保定時はH2雰囲気の仕上焼鈍を施した。仕上焼鈍の最高到達温度を、900、1000、1100、1200、1300℃と変化させ、それぞれの温度での保定時間は15時間とした。700℃から最高到達温度までの平均昇温速度は30℃/hおよび同温度範囲での冷却速度は15℃/hに制御した。冷却後に、鋼板コイルを巻き直すことで鋼板同士の密着の有無を調査した。その結果を表6に示す。鋼板同士が密着していない場合は○、密着した場合は×で示した。 同表から明らかなように、本発明に従って製造した場合は、鋼板同士の密着が発生しなかった。 【0055】 【表6】
【0056】 【発明の効果】 本発明によれば、インヒビター成分を有しない素材を用いて方向性電磁鋼板を製造する際に、焼鈍分離剤を適用することなく仕上焼鈍を施す場合においても、鋼板同士の密着が回避されるから、安定して方向性電磁鋼板を製造することができる。 【図面の簡単な説明】 【図1】仕上焼鈍における700℃から最高到達温度までの平均昇温速度および冷却速度を変化させた場合の、仕上焼鈍後の鋼板同士の密着の有無を示した図である。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000001258 【氏名又は名称】JFEスチール株式会社 【住所又は居所】東京都千代田区内幸町二丁目2番3号
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| 【出願日】 |
平成15年7月4日(2003.7.4) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100072051 【弁理士】 【氏名又は名称】杉村 興作
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| 【公開番号】 |
特開2005−23393(P2005−23393A) |
| 【公開日】 |
平成17年1月27日(2005.1.27) |
| 【出願番号】 |
特願2003−191869(P2003−191869) |
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