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【発明の名称】 |
材質の異方性及びばらつきの小さい厚鋼板の製造方法 |
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【氏名】長谷川 俊永 【住所又は居所】大分県大分市大字西ノ洲1番地 新日本製鐵株式会社大分製鐵所内 【氏名】皆川 昌紀 【住所又は居所】大分県大分市大字西ノ洲1番地 新日本製鐵株式会社大分製鐵所内 【氏名】白幡 浩幸 【住所又は居所】大分県大分市大字西ノ洲1番地 新日本製鐵株式会社大分製鐵所内 |
【課題】本発明は材質ばらつきが問題となる、Cu,Mo,W,V,Nb,Ta,Zr,Bの1種または2種以上を含有し、加工熱処理によって製造される厚鋼板に対して、熱間圧延上の制限が大きくなく、汎用性が高い、材質の異方性及びばらつきの小さい製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】オーステナイト再結晶抑制及び強度向上に効果のある、Cu,Mo,W,V,Nb,Ta,Zr,Bの1種または2種以上を含み、該元素を含めて化学組成を適性化した鋼において、再結晶率が0〜60%のオーステナイトを形成する仕上げ圧延後、鋼片の温度をAr3 変態点未満に低下させることなく、Ac3 変態点以上、950℃以下に10〜1000s加熱・保持する工程を含むことによって、材質の異方性及びばらつきを極めて小さくすることが可能となる。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 質量%で、 C :0.02〜0.3%、 Si:0.01〜2%、 Mn:0.1〜2%、 Al:0.001〜0.1%、 N :0.001〜0.01% を含有し、不純物として、 P:0.02%以下、 S :0.01%以下 を含有し、さらに、オーステナイト再結晶抑制及び強度向上に効果のある、Cu,Mo,W,V,Nb,Ta,Zr,Bの1種または2種以上を、 Cu:0.01〜1.5%、 Mo:0.01〜2%、 W :0.01〜2%、 V :0.005〜0.5%、 Nb:0.003〜0.2%、 Ta:0.005〜0.2%、 Zr:0.003〜0.1%、 B :0.0002〜0.005% の範囲で含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる鋼片を下記の▲1▼〜▲3▼の工程を含む加工熱処理を施すことを特徴とする、材質の異方性及びばらつきの小さい厚鋼板の製造方法。 ▲1▼鋼片を1000〜1300℃に加熱する工程。 ▲2▼オーステナイトの未再結晶域〜部分再結晶域で累積圧下率が30〜90%の圧延を施し、再結晶率が0〜60%のオーステナイトを形成する仕上げ圧延する工程。 ▲3▼仕上げ圧延後、鋼片の温度をAr3 変態点未満に低下させることなく、Ac3 変態点以上、950℃以下に10〜1000秒間加熱・保持する工程。 【請求項2】 前記加熱・保持した鋼板に加熱温度が450℃以上、Ac1 変態点以下の焼戻し処理を施すことを特徴とする、請求項1に記載の材質の異方性及びばらつきの小さい厚鋼板の製造方法。 【請求項3】 鋼がさらに、質量%で、 Ni:0.01〜6%、 Cr:0.01〜2%、 Ti:0.003〜0.1% の1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の材質の異方性及びばらつきの小さい厚鋼板の製造方法。 【請求項4】 鋼がさらに、質量%で、 Mg:0.0001〜0.01%、 Ca:0.0005〜0.01%、 Y :0.001〜0.1%、 La:0.005〜0.1%、 Ce:0.005〜0.1% のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の材質の異方性及びばらつきの小さい厚鋼板の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【0001】 【発明の属する技術分野】 本発明は、制御圧延や熱間圧延後の加速冷却に代表される加工熱処理によって製造される強度・靱性に優れ、かつ、材質の異方性やばらつきの小さい厚鋼板の製造方法に関するものであり、得られた鋼板は、例えば、建築構造物、海洋構造物、船舶、橋梁、ラインパイプ等の溶接構造物などに用いることができる。 【0002】 【従来の技術】 鋼の材質は不可避的にばらつきを有しているが、構造物の強度部材として用いられる厚鋼板においては、安全性の観点から、可能な限りばらつきの小さいものが好ましい。一方、最近良好な溶接性と高強度化を両立できることから、高張力厚鋼板においては、制御圧延や熱間圧延後の加速冷却に代表される加工熱処理によって製造される場合が増えているが、未再結晶域圧延や熱間圧延後の水冷等による加速冷却を行うことで、異方性、鋼板位置による材質変動、鋼板間の材質ばらつき、等の材質ばらつきが、既存の、通常の熱間圧延や焼きならし処理、再加熱焼入・焼戻し材に比較して大きくなる傾向にある。 【0003】 加工熱処理により製造される厚鋼板の材質異方性や材質ばらつきの主な原因は、圧延によって生じたオーステナイト粒の不均一性に帰するといえる。すなわち、低温圧延することにより、あるいは/及び、強度元素として添加される、Cu,Mo,W,V,Nb,Ta,Zr,Bがオーステナイトの再結晶温度を高めることによって、変態前のオーステナイトが未再結晶あるいは部分再結晶状態になると、変態組織にも方向性、ばらつきが生じ、かつ、他のプロセス因子のわずかな変動による組織変化も大きくなる。 【0004】 熱間圧延を完全再結晶域で完了させれば、上記の問題はないが、実際の厚鋼板の製造においては、溶接性と強度との両立の必要性から、強度元素であり、かつ、未再結晶温度も上昇させるためのCu,Mo,W,V,Nb,Ta,Zr,Bを添加せざるを得ない場合も多く、また、厚鋼板の板厚が小さい場合には、連続的に熱間圧延をを行っても温度低下が大きいために完全再結晶域で圧延を完了することが困難な場合も多い。一方、確実に完全再結晶温度域で圧延を完了しようとすると、上記再結晶抑制元素が添加されていない場合でも圧延終了温度は高温にせざるを得ず、通常の設備操業では困難な上、圧延終了温度が高い分、オーステナイト粒径が粗大となるため、靱性が劣化する恐れが大となる。 【0005】 従来から材質ばらつきを小さくするための方法は種々提案されている。例えば、特許文献1においては、スラブを低温均一加熱することによって、板厚方向の材質を均一化する方法が開示されている。また、例えば、特許文献2においては、熱間圧延におけるパス間時間や鋼材温度偏差を規定して、オーステナイト粒径や残留転位密度の均一化を図ることによる降伏点のばらつきの低減が開示されている。 【0006】 【特許文献1】 特開昭63−50422号公報 【特許文献2】 特開2002−249822号公報 【0007】 【発明が解決しようとする課題】 上記、特許文献1及び特許文献2に提案の方法は、主として熱間圧延における加熱温度や圧延条件に制限を加えることになるが、加熱温度の低下は強度の向上のために添加される析出強化元素の均一溶体化を困難として強度上昇に不利となる問題を有しており、また、圧延パス間時間を規定することは生産性を低下させたり、操業に負荷をかける場合も多い。 本発明においては、材質ばらつきが問題となる、Cu,Mo,W,V,Nb,Ta,Zr,Bの1種または2種以上を含有し、加工熱処理によって製造される厚鋼板に対して、上記従来技術における熱間圧延上の制限が大きくなく、汎用性が高い、材質の異方性及びばらつきの小さい製造方法を提供することを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】 本発明者らは、強化元素であり且つ再結晶抑制元素である、Cu,Mo,W,V,Nb,Ta,Zr,Bを含有する高張力厚鋼板を加工熱処理により製造する場合の強度・靱性の異方性、板内、板間のばらつきとオーステナイト組織、変態組織との関係で詳細に検討し、強度・靱性の異方性、ばらつきの原因と異方性、ばらつきを低減するための新たな手段を見出した。即ち、先ず、異方性が大きくなるのは、オーステナイト粒が未再結晶域圧延によって圧延方向に伸張していると、変態組織にも方向性を生じるためであり、組織材質の方向性を解消するためにはほぼ90〜100%オーステナイトを整細粒に再結晶させる必要がある。 【0009】 材質のばらつきに対しても、同様に未再結晶状態のオーステナイトが大きな影響を及ぼしている。即ち、変態はオーステナイトの粒界あるいは双晶、変形帯から不均一に生じ、未再結晶オーステナイトの粒内とオーステナイトの粒界あるいは双晶、変形帯とでは変態組織の微細さに大きな差が生じるため材質ばらつきの原因となる。また、未再結晶オーステナイトは化学組成によっては不安定であり、加熱オーステナイト粒径、累積圧下率、温度のわずかな変動によって、未再結晶粒の転位密度が大きく変化したり、再結晶が一部生じ、その再結晶率がやはり大きく変化するために変態組織の板内及び板間ばらつきの大きな原因となる。 【0010】 オーステナイトが100%再結晶する温度で熱間圧延を終了することが一般的に可能であれば上記材質のばらつきは大幅に低減できるが、強度元素であるCu,Mo,W,V,Nb,Ta,Zr,Bは同時にオーステナイトの再結晶を抑制する元素でもあるため、これらの元素を含有する鋼においては100%再結晶温度が高温となる。そのような高温で圧延を終了するとオーステナイト粒径が不可避的に粗大となって靱性確保が困難となる場合がある。また、鋼板板厚が薄い場合には、圧延中の温度低下が大きいために、これら再結晶抑制元素を含まない場合でも通常の熱間圧延ではオーステナイトを100%再結晶させることが困難な場合も多い。 【0011】 そこで、本発明者らは、熱間圧延においてオーステナイトの制御をするのではなく、圧延を終了した後の温度履歴を制御することによって、一旦形成された未再結晶〜部分再結晶オーステナイトを再結晶させて、整細粒オーステナイトを形成せしめることによって、圧延工程の負荷を高めることなく、板厚や化学組成の制限なく、Cu,Mo,W,V,Nb,Ta,Zr,Bを含有し、加工熱処理によって製造する厚鋼板の材質の異方性、ばらつきを小さくできることを初めて知見した。その要旨とするところは以下のとおりである。 【0012】 (1)質量%で、 C :0.02〜0.3%、 Si:0.01〜2%、 Mn:0.1〜2%、 Al:0.001〜0.1%、 N :0.001〜0.01% を含有し、不純物として、 P :0.02%以下、 S :0.01%以下 を含有し、さらに、オーステナイト再結晶抑制及び強度向上に効果のある、Cu,Mo,W,V,Nb,Ta,Zr,Bの1種または2種以上を、 Cu:0.01〜1.5%、 Mo:0.01〜2%、 W :0.01〜2%、 V :0.005〜0.5%、 Nb:0.003〜0.2%、 Ta:0.005〜0.2%、 Zr:0.003〜0.1%、 B :0.0002〜0.005% の範囲で含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなる鋼片を下記の▲1▼〜▲3▼の工程を含む加工熱処理を施すことを特徴とする、材質の異方性及びばらつきの小さい厚鋼板の製造方法。 ▲1▼鋼片を1000〜1300℃に加熱する工程 ▲2▼オーステナイトの未再結晶域〜部分再結晶域で累積圧下率が30〜90%の圧延を施し、再結晶率が0〜60%のオーステナイトを形成する仕上げ圧延する工程 ▲3▼仕上げ圧延後、鋼片の温度をAr3 変態点未満に低下させることなく、Ac3 変態点以上、950℃以下に10〜1000秒間加熱・保持する工程。 【0013】 (2)前記加工・保持した鋼板に加熱温度が450℃以上、Ac1 変態点以下の焼戻し処理を施すことを特徴とする、前記(1)に記載の材質の異方性及びばらつきの小さい厚鋼板の製造方法。 【0014】 (3)鋼がさらに、質量%で、 Ni:0.01〜6%、 Cr:0.01〜2%、 Ti:0.003〜0.1% の1種または2種以上を含有することを特徴とする前記(1)または(2)に記載の材質の異方性及びばらつきの小さい厚鋼板の製造方法。 【0015】 (4)鋼がさらに、質量%で、 Mg:0.0001〜0.01%、Ca:0.0005〜0.01%、 Y :0.001〜0.1%、 La:0.005〜0.1%、 Ce:0.005〜0.1% のうち1種または2種以上を含有することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の材質の異方性及びばらつきの小さい厚鋼板の製造方法。 【0016】 【発明の実施の形態】 以下に本発明の実施の形態について詳細に述べる。加工熱処理によって製造する厚鋼板は構造用鋼としての特性を確保するために、また、オーステナイトの再結晶挙動を本発明の製造方法の下で制御するためには、化学組成の適正化も必須である。そこで、先ず、化学組成の限定理由とその作用を述べ、次いで、製造方法の限定理由を述べる。 【0017】 Cは、構造用鋼として必要な強度を確保する上で必要な元素であり、そのためには0.02%以上含有させる必要がある。一方、0.3%を超えて含有すると、母材及び溶接部の靭性や耐溶接割れ性を低下させる。従って、本発明においては、C含有量を0.02〜0.3%と定める。 【0018】 Siは、脱酸元素として必要であり、脱酸効果を発揮するためには、0.01%以上必要である。Siは固溶強化により強度を高める元素であり、高強度化にも有用であるが、Siを2%を超えて過度に含有させると、母材やHAZの靱性を劣化させるため、本発明においては上限を2%とする。 【0019】 Mnは、鋼の強度確保のために0.1%以上必要である。一方、2%超になると、溶接性の劣化や、粒界脆化感受性を高めて好ましくないため、本発明においてはMnの範囲を0.1〜2%に限定する。 【0020】 Alは脱酸に有用な元素であり、またAlNにより母材の加熱オーステナイト粒径微細化に有効な元素である。効果を発揮するためには0.001%以上含有する必要がある。一方、0.1%を超えて過剰に含有すると、粗大な酸化物を形成して延性を劣化させるため、0.001%〜0.1%の範囲に限定する必要がある。 【0021】 Nは固溶状態では延性、靭性に悪影響を及ぼすため、好ましくないが、V,AlやTi、等の窒化物形成元素と結びついてオーステナイト粒微細化や析出強化に有効に働くため、微量であれば機械的特性向上に有効である。また、工業的に鋼中のNを完全に除去することは不可能であり、必要以上に低減することは製造工程に過大な負荷をかけるため好ましくない。そのため、延性、靭性への悪影響が許容できる範囲で、かつ、工業的に制御が可能で、製造工程への負荷が許容できる範囲として下限を0.001%とする。過剰に含有すると、固溶Nが増加し、延性や靭性に悪影響を及ぼす可能性があるため、許容できる範囲として上限を0.01%とする。 【0022】 Pは不純物元素であり、0.02%を超えると、靱性や溶接性を劣化させるため、0.02%以下に限定する。 Sも不純物元素であり、0.01%を超えると、延性、靭性に悪影響があるため、0.01%を上限とする。 【0023】 本発明は、強化元素であり、且つ、オーステナイトの再結晶抑制元素である、Cu,Mo,W,V,Nb,Ta,Zr,Bの1種または2種以上を含有する厚鋼板を対象としているが、各々、下記に示す理由による含有量を限定する。 Cuは固溶強化、変態強化、析出強化による強化が可能な元素であり、靱性への悪影響も小さいため、強化元素として有用である。効果を発揮するためには0.01%以上含有させる必要がある。一方、1.5%を超えて含有させると鋼片の表面割れの助長、継手靭性の劣化等、悪影響が顕在化するため、本発明では上限を1.5%とする。 【0024】 Moは固溶強化、変態強化、析出強化を介した強度向上の他に、耐焼戻し脆化、耐SR脆化にも有効な元素でもあるが、その効果を発揮するためには0.01%以上の含有が必要であり、一方、2%を超える含有では逆に靱性、溶接性が劣化するため、0.01〜2%に限定する。 【0025】 WはMoと同様の効果を有する元素であり、効果を発揮でき、かつ材質劣化を生じない範囲として、0.01〜2%の範囲に限定する。 【0026】 VはVNを形成して強度向上に有効な元素であるが、過剰の含有では析出脆化により靭性が劣化する。従って、靭性の大きな劣化を招かずに、効果を発揮できる範囲として、0.005〜0.5%の範囲に限定する。 【0027】 Nbは、再結晶抑制に最も有効な元素であると同時に、変態時あるいは焼戻し時にNb(C,N)を形成することで強度の向上に有効な元素であるが、過剰の含有では析出脆化により靭性が劣化する。従って、靭性の劣化を招かずに、効果を発揮できる範囲として、0.003〜0.2%の範囲に限定する。 【0028】 Taも、Nbと同一の機構によりオーステナイトの再結晶抑制、強化に有効な元素である。その効果を発揮するためには0.005%以上の含有が必要である。一方、0.2%を超えると、析出脆化や粗大な析出物、介在物による靭性劣化を生じるため、上限を0.2%とする。 【0029】 Zrも窒化物を形成する元素であり、他の析出物形成元素と同様の効果を有するが、その効果を発揮するためには0.003%以上の含有が必要である。一方、0.1%を超えると、粗大な析出物、介在物を形成して靭性や延性を劣化させるため、0.003〜0.1%の範囲に限定する。 【0030】 Bは、固溶状態でオーステナイト粒界に偏析することで、微量で焼入れ性を高めて高強度化に有効な可能な元素であるが、粒界に偏析した状態では、オーステナイトの再結晶抑制にも有効である。焼入性、再結晶抑制に効果を発揮するためには0.0002%以上の含有が必要であるが、一方、0.005%を超える過剰の添加では、BN,Fe23(C,B)6 等の粗大な析出物を生じて、靱性が劣化するため、0.0002〜0.005%に限定する。 【0031】 本発明においては、以上の基本成分の他に、強度、靱性の調整のために、必要に応じて、Ni,Cr,Tiの1種または2種以上を含有させることができる。Niは、靱性確保のために最も有効な元素であり、効果を発揮させるためには0.01%以上含有させる必要がある。含有量が多くなると強度、靭性は向上するが、6%を超えて含有させても効果が飽和する一方で、溶接性の劣化を招くため、上限を6%とする。 【0032】 Crは、焼入れ性向上、析出強化により母材の強度向上に有効な元素であるが、明瞭な効果を生じるためには0.01%以上必要であり、一方、2%を超えて添加すると、靭性及び溶接性が劣化する傾向を有するため、0.01〜2%の範囲とする。 【0033】 Tiは、析出強化により母材強度向上に寄与するとともに、高温でも安定なTiNの形成により加熱オーステナイト粒径微細化にも有効な元素であり、加工熱処理を基本とする本発明においては有効な元素である。効果を発揮するためには0.003%以上の含有が必要である。一方、0.1%を超えると、粗大な析出物、介在物を形成して靭性や延性を劣化させるため、上限を0.1%とする。 【0034】 またさらに、延性の向上、継手靭性の向上のために、必要に応じて、Mg,Ca,Y,La,Ceの1種または2種以上を含有することができる。本発明における各元素の含有量は効果が発現する下限から下限値が決定され、各々、Mgは0.0001%、Caは0.0005%、Yは0.001%、Laは0.005%、Ceは0.005%を下限値とする。一方、上限値は介在物が粗大化して、機械的性質、特に延性と靭性に悪影響を及ぼすか否かで決定され、本発明では、この観点から上限値を、Mg,Caは0.01%、Y,La,Ceは0.1%とする。 【0035】 以上が本発明おける化学組成に関する限定理由である。本発明においては、上記理由により化学組成を限定した上で、加工熱処理における製造条件を限定し、さらに圧延後に直ちに特定の熱履歴を加えることによってオーステナイト組織を均一化することを通して、厚鋼板の材質の異方性及びばらつきを極小化する。なお、本発明における加工熱処理とは、オーステナイト粒径、転位密度を材質制御に用いるために意図的に制御する工程を含む製造方法を全て指す。すなわち、圧延としては、再結晶オーステナイト域でオーステナイト粒径を制御する工程から未再結晶域圧延工程を含み、また、冷却方法としては空冷から加速冷却までを包含する。さらに、強度、靱性レベルの調整や形状調整のために行う焼戻し工程を行う場合も含む。 【0036】 本発明においては、鋼片(連続鋳造スラブ、インゴット、及び該スラブ、インゴットを若干の形状調整のために圧延または鍛造を加えたものを包含する)を、加工熱処理によって厚鋼板に製造する工程において、下記の▲1▼〜▲4▼の工程を含むことを要件とする。なお、工程は▲1▼から▲4▼の工程の順に行う必要があるが、▲1▼の工程の前の拡散熱処理等の熱処理、分塊圧延を加えることや、▲2▼の工程の前にサイズ調整のための幅出し圧延や粗圧延を施すことや、▲3▼の工程の後に脱水素処理等の目的のために加熱温度が▲4▼の焼戻し処理温度未満の熱処理を行うことや、▲4▼の焼戻しを本発明の範囲内で繰り返すこと、は本発明の効果を損なうものではない。 【0037】 ▲1▼鋼片を1000〜1300℃に加熱する工程 ▲2▼オーステナイトの未再結晶域〜部分再結晶域で累積圧下率が30〜90%の圧延を施し、再結晶率が0〜60%のオーステナイトを形成する仕上げ圧延する工程 ▲3▼仕上げ圧延後、鋼片の温度をAr3 変態点未満に低下させることなくAc3 変態点以上、950℃以下に10〜1000s加熱・保持する工程 ▲4▼必要に応じて、加工熱処理後の鋼板に加熱温度が450℃以上、Ac1 変態点以下の焼戻し処理を施す工程 【0038】 先ず、熱間圧延に先だって▲1▼の工程で、鋼片を1000〜1300℃に加熱する。加熱温度が1000℃未満であると、本発明の前提となっている、強化元素、再結晶抑制元素として含有される、Cu,Mo,W,V,Nb,Ta,Zr,Bの固溶が十分でなく、強化に対して有効に働かないために好ましくない。一方、鋼片の加熱温度が1300℃超と過大であると、オーステナイト粒径が過大となる恐れがあり、また、表面性状が劣化するため、好ましくない。なお、連続鋳造スラブまたは分塊圧延後の鋼片をそのまま室温まで冷却することなく所定温度に保持または加熱・保持することは構わない。ただし、加熱オーステナイト粒径は微細なほど、最終的なオーステナイト粒径も整細粒化するため、材質均一性のためには一旦、Ar1 変態点以下まで冷却した冷片を1000〜1200℃に再加熱することがが好ましい。 【0039】 熱間圧延工程は形状調整を主な目的とした粗圧延と材質を決定づけるために温度や圧下率を意図的に制御する仕上げ圧延に区分される。本発明では材質制御を目的とする仕上げ圧延を、オーステナイトの未再結晶域〜部分再結晶域で累積圧下率が30〜90%の圧延を施し、再結晶率が0〜60%のオーステナイトを形成する工程とすることを要件とする。 【0040】 オーステナイト再結晶率とそのときの累積圧下率を規定するのは、再結晶率と累積圧下率が適正範囲に入っていて初めて引き続く加熱・保持工程において、オーステナイトが細粒で且つ混粒度の小さい整細粒組織となって良好な靭性が得られると同時に、材質の異方性、ばらつきを極めて小さくすることができるためである。 【0041】 圧延温度域を未再結晶域〜部分再結晶域とするのは、100%再結晶したオーステナイトは転位密度が低く、引き続く加熱・保持工程によってオーステナイトの状態を変化させることが困難であると同時に、100%再結晶状態で圧延が完了するような組成、製造条件では、オーステナイトは混粒度が大きくない限り、材質の異方性やばらつきはもともと小さく、本発明を適用する効果も小さいためである。 【0042】 引き続く加熱・保持工程で整細粒のオーステナイトを確実に形成するためには、仕上げ圧延が完了した時点でのオーステナイトの再結晶率が0〜60%となっている必要がある。そのためには、圧延温度域が未再結晶域〜部分再結晶域の仕上げ圧延の累積圧下率を30〜90%とする必要がある。累積圧下率が30%未満ではオーステナイト中に導入される転位密度が過小で、引き続く加熱・保持工程での再結晶のための駆動力が十分でなく、100%再結晶した整細粒のオーステナイトを確実に形成することが困難となる。累積圧下率は大きいほど再結晶させるために、また、再結晶後のオーステナイト粒径の微細化に有利であるが、90%を超えると、製造できる鋼板サイズも限定され、生産性にも問題が生じるため、本発明においては累積圧下率の上限を90%とする。 【0043】 仕上げ圧延が終了した時点でのオーステナイトの再結晶率は0〜60%となっている必要がある。引き続く加熱・保持工程で整細粒オーステナイトを確実に形成するためには、再結晶率が0%の完全未再結晶であることが好ましいが、未再結晶部が40%、すなわち、再結晶率が60%であれば、引き続き行う加熱・保持工程で再結晶を生じて混粒度の非常に小さい整細粒オーステナイト組織を形成させることが可能である。一方、再結晶率が60%超の部分再結晶オーステナイトであると、引き続く加熱・保持工程で完全に再結晶させることが困難であり、また、完全に再結晶させるためには、本発明の範囲をはずれて高温・長時間で加熱・保持する必要があり、オーステナイトが粗大化して靱性劣化の恐れがあり、好ましくない。 【0044】 仕上げ圧延工程に引き続いて、▲3▼の加熱・保持を施し、強化元素、再結晶抑制元素として、Cu,Mo,W,V,Nb,Ta,Zr,Bの1種または2種以上を、本発明の範囲内で含む化学組成の鋼においても、整細粒オーステナイトを形成させて、材質の異方性、ばらつきの小さい厚鋼板に製造する。その要件は、仕上げ圧延後、鋼片の温度をAr3 変態点未満に低下させることなく、Ac3 変態点以上、950℃以下に10〜1000s加熱・保持することにある。 【0045】 仕上げ圧延後、加熱・保持を行うことによって、未再結晶〜部分再結晶オーステナイトを再結晶させ、細粒且つ等方性を有する等軸オーステナイトにする。このとき、加熱温度がAc3 変態点未満では再結晶の進行が極端に遅くなり、100%再結晶させることが困難となる上、鋼の組成によっては、保持中に一部変態が生じてしまい、所望の均一組織が達成されない恐れがあるため、好ましくない。一方、加熱温度が950℃超であると、再結晶抑制元素を含有していても、極短時間に再結晶し、さらに粒成長を開始して、粗大オーステナイト組織が形成される可能性があるため、好ましくない。従って、本発明においては、仕上げ圧延後の加熱・保持における加熱温度はAc3 変態点以上、950℃以下とする。 【0046】 仕上げ圧延後、Ac3 変態点〜950℃に加熱する際の保持時間は本発明では10〜1000秒(s)とする。仕上げ圧延後の未再結晶〜部分再結晶オーステナイトを整細粒の再結晶オーステナイトとすることが可能である限りは特に保持時間の制約はないが、保持時間が10s未満と極短時間とすることは工業的に制御が困難であるため、本発明では保持時間を10s以上とする。一方、1000sを超えるような長時間保持をすることは生産性を極端に阻害して好ましくないことから、本発明では保持時間の上限を1000sとする。なお、仕上げ圧延後、加熱・保持に入るまでの間に鋼の温度がAr3 変態点未満にならないようにする必要がある。Ar3 変態点未満に低下すると、変態が一部生じる可能性が大きく、一部、変態が生じてしまうと、その後に加熱・保持を行っても、オーステナイトままの領域と、一旦変態が生じた後にオーステナイト化した領域とではオーステナイト粒径に極端な差が生じて、材質のばらつきを拡大する恐れが高いため、好ましくない。また、材質劣化が生じる恐れもある。 【0047】 上記加熱・保持によってオーステナイトを再結晶させて整細粒化した後の鋼板の冷却は、冷却でも加速冷却でも、材質の均一化には、同様の効果を得られるため、通常の制御圧延、加速冷却をともなう加工熱処理、いずれにおいても、本発明は有効である。 以下に、本発明の効果を実施例によりさらに詳細に説明する。なお、本発明は下記実施例に限定されるものではない。 【0048】 【実施例】 以上が、本発明の要件についての説明であるが、さらに、実施例に基づいて本発明の効果を示す。 表1に示す化学組成の鋼片を用いて、表2に示す製造条件により鋼板を試作した。試作鋼は真空溶解または転炉により溶製し、鋳造まま鋼片(インゴットあるいはスラブ)あるいは分塊圧延により形状を調整した鋼片を鋼板に製造した。 【0049】 表1中の鋼片番号1〜10が本発明の化学組成を満足しているものであり、鋼片番号11〜15は化学組成が本発明の範囲を逸脱している比較例である。 表2において、鋼板番号A1〜A13は本発明例であり、鋼板番号B1〜B6はいずれかの要件が本発明を満足していない比較例である。なお、鋼板間及び鋼板内における材質のばらつきを検証する目的から、表2に示す製造方法各々について、同一条件で3枚づつ鋼板(鋼板子番1〜3)を製造した。 【0050】 表2の条件で製造された鋼板の引張特性、2mmVノッチシャルピー衝撃特性を調査し、強度、靭性レベル及びそのばらつき、異方性を検討した。材質のばらつきと異方性を詳細に比較する目的で、各鋼板とも、鋼板の先端から全長の1/5位置(先端:F)、中央(中央部:M)、尾端から1/5(尾端:T)の3位置についてL方向(圧延方向に平行に試験片を採取)、C方向(圧延方向に直角に試験片を採取)の板厚中心部の材質を調査した。従って、同一製造条件(同一鋼板番号)ごとに9カ所(鋼板3枚×3カ所)の材質をL,C両方向について調査している。なお、引張試験は平行部の直径が10mm、評点間距離が60mmの丸棒引張試験片により室温で実施し、2mmVノッチシャルピー衝撃試験は試験片断面が10mm×10mmの標準試験片により行い、靭性は破面遷移温度(vTrs)により評価した。 【0051】 表3に材質調査結果を示す。各鋼板番号とも、L方向、C方向ごとに3枚の鋼板の各位置、合計9カ所の強度(降伏応力、引張強度)靭性(破面遷移温度:vTrs)を示し、各方向ごとの測定値の最大値と最小値の差で材質のばらつきを評価し、同一位置での各特性のL方向とC方向との差で材質異方性を評価した。 【0052】 表3に示すように、本発明例である鋼板番号A1〜A13の試験結果からは、本発明により変態前のオーステナイトの状態を制御した場合には、材質ばらつきも異方性も非常に小さくなっていることが明らかである。具体的には、材質ばらつきについては、降伏応力、引張強度の変化幅で20MPa以下、vTrsの変化幅で13℃以下であり、L/C方向異方性については、強度で17MPa以下、vTrsで10℃以下となっている。また、靭性レベルも化学組成、強度レベルからみて良好なレベルを有している。 【0053】 一方、表3から、本発明を満足していない鋼板番号B1〜B8については、材質のばらつき、異方性ともに本発明例より大幅に劣っているか、あるいは構造用鋼として十分な機械的性質を発揮できないことが明らかである。 すなわち、鋼板番号B1は、製造方法については本発明を満足していて材質ばらつきは小さいが、C量が過剰であるために、靭性が非常に劣化していて好ましくない。 鋼板番号B2も、製造方法については本発明を満足していて材質ばらつきは小さいが、Mn量が過剰であるため、靭性が大きく劣化している。 鋼板番号B3は、Nb量が過剰なため、Nbによるオーステナイトの再結晶抑制効果が強固で、熱間圧延後の加熱・保持工程の要件は本発明を満足しているものの、該工程の中でのオーステナイトの再結晶が十分でなく、材質ばらつき、異方性は本発明鋼に比べて格段に大きくなっており、好ましくない。加えてNb量が過剰なため、Nbの析出強化、粗大なNb炭窒化物に起因して靭性劣化も著しい。 【0054】 鋼板番号B4,B5も、同様に、各々、再結晶抑制及び析出強化元素であるTa,Vが過剰なために、鋼板番号B3と同じ理由により、材質ばらつき、異方性が過大であり、靭性劣化も大きい。 鋼板番号B6〜B8は、鋼片は鋼板番号A2と同一のものであるため、化学組成は本発明を満足しているが、製造方法に関わる要件が本発明を満足していないために、本発明により製造した鋼板に比べて材質ばらつき、異方性が非常に大きい例である。 すなわち、鋼板番号B6は、圧延で形成された形態や転位密度の不均一なオーステナイト粒を均一整細粒とするために必要な圧延後の加熱・保持工程における加熱温度が過小であるため、加熱・保持後のオーステナイトが100%再結晶しておらず、そのため、圧延工程で形成されたオーステナイトの不均一性、異方性が完全には解消されず、その結果、変態組織のばらつき、異方性が大きくなっている。そのため、強度・靭性のばらつき、異方性も大きい。 【0055】 鋼板番号B7は、鋼板番号B6とは反対に、該加熱・保持工程おける加熱温度が過大であったため、オーステナイトは100%再結晶して均一化しており、材質のばらつきは小さいが、加熱温度が過大なために、圧延で細粒化されたオーステナイト粒が粗大となってしまったため、靭性が同一組成の本発明鋼である鋼板番号A2と比べて著しく劣り、好ましくない。 鋼板番号B8は、圧延後、加熱・保持工程に入る前にAr3変態点以下の二相域まで温度低下したために、加熱・保持後のオーステナイトの混粒度が大きくなり、材質の不均一性が大きい。また混粒オーステナイトから変態した組織のため、靭性レベルは本発明例に比べて劣る。 【0056】 以上の実施例から、本発明によれば、材質の異方性やばらつきが極めて小さい、材質の均一性にすぐれた厚鋼板の製造が可能であることが明らかである。 【0057】 【表1】
【0058】 【表2】
【0059】 【表3】
【0060】 【発明の効果】 本発明によれば、強化元素であり、同時にオーステナイトの再結晶を抑制に効果のある元素である、Cu,Mo,W,V,Nb,Ta,Zr,Bの1種または2種以上を含有し、加工熱処理によって製造される厚鋼板において、材質の異方性及びばらつきを極めて小さくすることが可能であり、産業上の効果は極めて大きい。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000006655 【氏名又は名称】新日本製鐵株式会社 【住所又は居所】東京都千代田区大手町2丁目6番3号
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| 【出願日】 |
平成15年6月9日(2003.6.9) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100062421 【弁理士】 【氏名又は名称】田村 弘明
【識別番号】100068423 【弁理士】 【氏名又は名称】矢葺 知之
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| 【公開番号】 |
特開2005−2372(P2005−2372A) |
| 【公開日】 |
平成17年1月6日(2005.1.6) |
| 【出願番号】 |
特願2003−164431(P2003−164431) |
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