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【発明の名称】 シバ属植物の個体識別方法
【発明者】 【氏名】蝦名 真澄

【氏名】中川 仁

【氏名】小林 真

【氏名】高原 学

【氏名】霍田 真一

【氏名】明石 良

【氏名】松尾 景文

【要約】 【課題】シバ属植物を識別するための単純配列反復(SSR)マーカーを提供する。また個体識別を行えるSSRマーカーを用い、形態学的特徴の観察によることなく、遺伝学的手法を利用して、ソッド上のシバ植物の均一性の簡便な検証方法を提供する。

【解決手段】特定の配列に示されるシバ属植物染色体上の単純反復配列のいずれかを鋳型としてPCR増幅を行い、増幅産物の分子量を確認することを特徴とする、シバ属植物の品種、系統、または個体の識別方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1〜137に示されるシバ属植物の単純反復配列のいずれかに相当する染色体領域を鋳型としてPCR増幅を行い、増幅産物の分子量を確認することを特徴とする、シバ属植物の品種、系統、または個体の識別方法。
【請求項2】
ソッド上のシバ植物の均一性の検証方法であって、ソッドから採取したシバ属植物の配列番号1〜137に示される単純反復配列のいずれかに相当する染色体領域を鋳型としてPCR増幅を行い、増幅産物の分子量を確認することを特徴とする上記方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法に使用するための一組のPCRプライマーセットであって、フォワードプライマーとリバースプライマー1又はリバースプライマー2とからなる下記のプライマーセットよりなる群から選択される、少なくとも一つのPCRプライマーセット。
【表1】




【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
基本的に他殖性で遺伝的背景が個体ごとに異なり、かつ、栄養繁殖を行うシバ属植物において、簡便に個体識別を行える単純反復配列およびそれを用いる手法、その情報を提供する手法に関する。
【背景技術】
【0002】
シバ属植物、特にノシバやコウシュンシバ、コウライシバ等は、一般家庭、公園、運動競技場などで広い面積にわたって使用される、極めて商業的需要の高い植物である。このシバ属植物間の分類は、これまでのところ、形態的特徴のみから行われてきた。
【0003】
しかし、シバ属植物は植物体が小さく、わずかな形態の違いを利用した分類、個体識別を強要されるために、形態による個体識別は一般に困難である。特に、今後の社会的ニーズの多様化により、さらにシバ属植物の新たな登録品種が増加することも予想されるが、従来の形態的特徴に基づくだけでは区別、識別が困難になる場合が想定される。
【0004】
形態観察とは異なる識別方法としては、RFLP(制限酵素断片長多型、restriction fragment length polymorphism)による連鎖解析手法などが挙げられる。また、RFLPを基に作物の有用遺伝子を同定し、それをマーカーに耐病性、耐虫性、高収量性など種々の性質を改善しようとする研究も進められている。
【0005】
しかし、RFLPの操作は煩雑で、多量のDNAを必要とし、数多くのサンプルを複数のマーカーで識別するには多大な時間と労力が必要であるうえ、品種が混在してしまったソッド(平板状に打ち抜いた土のついた芝)については、検定は不可能である。
【0006】
また、別法であるDNAの単純反復配列を利用した個体識別方法は、動物あるいは複数の植物について開発されており、特にヒトでは親子鑑定などに使用されている信頼のおける簡便な手法である。しかし、属を越えた配列の利用は困難であり、特にシバ属植物では単純反復配列に関わる情報が皆無であったため、シバ属植物の遺伝学的分類を行うための方法としては、実用化には至っていない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記のような実状に鑑み、栄養繁殖で増殖し単一個体のソッドが主要な流通形態であるシバ属植物の特性を最大限に生かすため、効率的に反復配列を含む遺伝子領域をシバ属植物から単離して、シバ属植物の個体識別を、形態的特徴の観察によることなく、遺伝学的方法を利用して簡便に行うことのできる技術を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、鋭意研究の結果、シバ属植物の個体識別に有効な単純反復配列の単離に成功し、これを基に、効率的かつ高い信頼性で個体識別を可能にする方法を開発した。
【0009】
すなわち本発明は、配列番号1〜137に示されるシバ属植物の単純反復配列のいずれかに相当する染色体領域を鋳型としてPCR増幅を行い、増幅産物の分子量を確認することを特徴とする、シバ属植物の品種、系統、または個体の識別方法、ならびにソッド上のシバ植物の均一性の検証方法であって、ソッドから採取したシバ属植物染色体上の配列番号1〜137に示されるシバ属植物の単純反復配列のいずれかに相当する染色体領域を鋳型としてPCR増幅を行い、増幅産物の分子量を確認することを特徴とする上記方法、さらに上記方法に使用するための一組のPCRプライマーセットであって、フォワードプライマーとリバースプライマー1又はリバースプライマー2とからなる下記1〜102のプライマーセットよりなる群から選択される、少なくとも一つのPCRプライマーセットに関する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、個体識別を可能とし、さらに既存および自生のシバ属植物およびその交雑後代の個体識別を可能とする手法を取得、またこれに基づき、シバ属の流通の主要な形態であるソッドの均一性を検証する手法を開発し、提供することを課題とする。全く未知の個体であっても、既存品種と同じ物であれば、本発明を用いることで、同定することが可能で、さらに、親子関係や派生系統であるかの有無を確認することもできる。また、品種が混生している場合にも、混生の頻度が40%程度まで正確に判定することができるので、シバの主要な流通形態であるソッドの品質を確認することができるため、品質表示方法としても優れた手法である。本発明を用いることで、品種育成者の権利を守り、安定した品質のソッドの提供を可能とする画期的な効果が得られる。
【0011】
品種、系統および個体ごとにPCR増幅産物の多型を例えばアクリルアミドゲル電気泳動法によって確認し、品種、系統および個体を識別すること、およびこの技術的手段をさらに応用し、主要な流通形態であるソッドの均一性を定性的に検出することを特徴とするものである。
【0012】
本発明において、シバ属植物とはZoysia属に含まれるすべての植物を言う。具体的には、ノシバ(Zoysia japonica)やコウライシバ(Zoysia matrella)、コウシュンシバ(Zoysia tenuifolia)、オニシバ(Zoysia macrostachya)等を挙げることができる。
【0013】
本発明は、シバ属植物のゲノムDNAに存在すると考えられてきた単純反復配列を具体的にクローニングすることに成功した事に基づくものである。この単純反復配列の具体的な核酸配列は配列番号1〜137に示される通りである。この配列は、品種「朝駆」のゲノムDNAから単離、確認されたものである。これらAG単反復配列の中には、6〜28回のAG反復配列から成っていて、反復配列の途中に別の塩基(AA)が混在する「中断型」の構造を有するSSR領域も認められる。
【0014】
これらの単純反復配列は、シバ属植物のゲノム上に数多く点在しており、何れも一定の塩基配列の繰り返し部分の両端に、それぞれ異なる特徴的な核酸配列が位置していることが確認された。
【0015】
一般に、ゲノム上の反復配列自体の長さ(反復回数)は、生物種によって異なっていることが知られている。従って、シバ属植物で確認されたこれらの単純反復配列も、シバ属植物の種毎、あるいは個体ごとにそれぞれ反復回数すなわち反復配列の長さが異なっていることが予想される。そこで、実際に第1番の単純反復配列に着目し、これを特異的に増幅することのできる核酸配列を有するPCRプライマーセットとしてセットNo.1(ZjAG133)のプライマーセットを設計し、このプライマーを用いて、複数のシバ属植物のゲノムDNAを鋳型にPCR法を行ったところ、実際に植物種によって増幅断片のサイズの違いを確認することが出来た。このことから、各単純反復配列をマーカーとして、そのいずれかを選択して利用することにより、シバ属植物の品種、系統、または個体を、目視によらずに識別することが可能となった。
【0016】
本発明のプライマーセットは、上記の単純反復配列を含む遺伝子領域を特異的にPCR法によって増幅する際に使用することのできるプライマー組である。
【0017】
その核酸配列の設計は、単純反復配列の両側に位置する特異的なゲノム配列を確認した後、かかる配列にハイブリダイズするように行えばよいが、さらにプライマー自体あるいはプライマー同士が望ましくない2次構造等を構成しないよう、適宜配列を設計することが好ましい。
【0018】
具体的には、プライマーのTm値は65℃程度がよく、フォワード、リバースプライマーのTm値の差は多くとも5℃以内、好ましくは2℃以内の配列が望ましい。また、プライマー配列は、自己の配列内部に相同性がなくヘアピン構造をつくらない配列であることが望ましく、またプライマー同士の配列の相同性にも配慮して、これを設計すべきである。しかしながら、反復配列の情報からどうしてもこれらの困難を克服できないときは、プライマー配列の自己相同性に由来する結合はδG<−5kcal、異なる2つのプライマー配列同士の場合は−7kcal以下とすることが望ましい。
【0019】
なお、これらのプライマー設計の条件は最適な条件を示すものであり、対象とする単純反復配列をPCR法により増幅できるものであれば、プライマーの核酸配列は、例えば特定の制限酵素切断部位や、特定の遺伝子配列にハイブリダイズするような特定の核酸配列などを有するように、自由に設計することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
シバ属植物からの、反復配列を含むDNA断片は、以下のようにして調製することができる。
【0021】
シバ属植物のゲノムDNAを、例えばCTAB法によって抽出し、例えばAFLP法を用いて特定の制限酵素断片部位に既知のプライマー配列をライゲーションさせ、PCR法にもとづく増幅を可能としたゲノムDNA断片を得る。さらに、既知のプライマー配列を用いてゲノムDNAをPCR法で増幅し、得られた増幅産物から、以後の解析に有効な100bp〜500bpの断片を分子量フルイを利用したフィルターなどを用いて選抜する。
【0022】
次に、目的とする単純反復配列、例えば(AG)nをもつPCR産物を、抗ストレプトアビジン結合鉄ビーズを利用して、合成したビオチン化単純反復配列(例えばAGの30回繰り返した物が好ましいが配列と繰り返し回数は任意である)と増幅したPCR産物とのハイブリダイゼーションおよびビオチン-ストレプトアビジンの結合を利用して選抜する。単純反復配列はAGの反復を用いて選抜すれば効率はよいが、それ以外でも、単純反復配列で有れば何でも良い。
【0023】
選抜した反復配列、例えばAG反復配列を含むPCR産物をさらにPCR法により増幅し、例えばTAクローニングを用いて大腸菌プラスミドに挿入する。得られたプラスミドをエレクトロポーレーション法などにより大腸菌に形質転換し、例えば挿入断片のβガラクトシダーゼ遺伝子破壊によるコロニーの識別方法により、挿入領域のあるプラスミドを持つ大腸菌のみをクローニングする。得られたクローンの増殖により大腸菌プラスミドを大量に得て、プラスミドのドットブロット法などによる2次選抜を行った後、単純反復配列を有する挿入断片を有するクローンを単離し、その核酸配列を決定することで、反復配列の遺伝情報を得ることができる。
【0024】
以上の単純反復配列を有する遺伝子領域の配列情報を得るための操作は、ゲノムDNA濃縮法として知られている既知の手法(ゲノム領域濃縮法、enriched genomic library法、Yamamoto, T. et al., 2002など)であるが、特にシバ属植物では、単純反復配列を含む遺伝子領域を得る手法として、特に有効である。しかしながら、単純反復配列情報を得るという目的からすれば、RAHM法(random amplified hybridization microsatellites, Cifarelli et al., 1995)や5’アンカードPCR法(Fisher et al., 1996) などを用いてもよい。
【0025】
このようにして得られた単純反復配列を含む遺伝子情報から、以下のようにプライマーを設計し、品種、系統および個体の識別に使用する。
【0026】
得られた遺伝子情報をもとに、単純反復配列の両側に16〜30好ましくは20mer程度の任意のPCR増幅用のプライマーを設計する。プライマーの設計は、Tm値が65℃程度がよく、フォワード、リバースプライマーのTm値の差は多くとも5℃以内、好ましくは2℃以内の配列が望ましい。また、プライマー配列は、自己の配列内部に相同性がなくヘアピン構造をつくらない配列であることが望ましく、またプライマー同士の配列の相同性にも配慮して、これを設計すべきである。しかしながら、反復配列の情報からどうしてもこれらの困難を克服できないときは、プライマー配列の自己相同性に由来する結合はδG<−5kcal、異なる2つのプライマー配列同士の場合は−7kcal以下とすることが望ましい。
【0027】
なお、これらのプライマー設計の条件は最適な条件を示すものであり、単純反復配列を3’末端に含むものであれば、その上流側の核酸配列は、例えば特定の制限酵素切断部位や、特定の遺伝子配列にハイブリダイズするような特定の核酸配列などを有するように、自由に設計することができる。
【0028】
上記のようにして設計し合成したプライマーについては、増幅したバンドの検出感度を向上させるため、FAMなどの蛍光標識を付してPCR反応に使用することがすることが望ましい。
【0029】
このようなプライマーを用いて、例えば20μL程度のPCR反応液(10mM Tris-HCl, pH8.3, 50mM KCl, 2.5mM MgCl2, 0.01% gelatin, 0.4mM each of dNTPs, 50 ng of each forward primer labelled with fluorescent chemical and unlabelled reverse primer, 50ng genomic DNA and 0.5 unit Taq polymerase)中で、PCR反応(95℃ 1分の解離反応、65℃1分のアニーリング反応、72℃ 1分30秒の伸長反応の後、アニーリング温度を1℃づつ下げ、これらの繰り返しをアニーリング温度が56℃になるまで10回繰り返した後、30サイクルの95℃ 1分の解離反応、55℃ 1分のアニーリング反応、72℃ 1分30秒の伸長反応を行う。さらに、最後に72℃で6分程度増幅産物の最終伸長反応を行い、4℃にて反応を終了し、保存する)を行う。
【0030】
蛍光標識されたプライマーを用いた場合には、PCR反応による増幅産物の検出を蛍光を利用して検出することができるが、蛍光標識しないプライマーを用いた場合には、エチジウムブロマイドやSYBER GREENなどの染色法を利用しても検出できる。
【0031】
PCR反応により得られた増幅産物の塩基長(bp)は、例えばABI3100などのフラグメント解析機能を有するシークエンサーなどで、または4%程度の6M尿素を含む変成アクリルアミドによる電気泳動法によって、確認することができる。
【0032】
このようにして特定された増幅産物は、シバ属では品種毎に異なるバンドサイズを有する。予め品種のもつバンドサイズを確認しておけば、未知の個体についての品種を推定できるばかりではなく、両親系統のもつバンドサイズ以外は子孫には遺伝しないことを利用して、どの個体から交雑により派生した個体であるか推定することができる。さらに、1つのプライマー組み合わせから得られたバンドは、シバ属内で共通する1遺伝子座から生じているため品種の識別の確からしさは論ずるまでもなく、また、既知の品種や個体を、複数の多くのプライマー組み合わせによりそれぞれ増幅されるバンドの長さにより記載すれば、遺伝子座の数とアリルの種類による無限の組み合わせを正確に記載することになり、識別の可能性は無限である。
【0033】
以下、実施例を詳細に述べるが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0034】
シバ属植物用SSRマーカーの作成
1)ゲノム領域濃縮ライブラリーの作成
シバ品種「朝駆」の葉5gからCATB法(Murray and Thompson 1980)によりゲノムDNAを抽出した。得られたゲノムDNAの濃度を分光光時計により測定した後、Yamamotoら(2001)の方法により、市販キットAFLP Analysis System(Life Technologies社)を用いて、600ngのゲノムDNAを制限酵素EcoR1およびMse1で2.5時間消化した後、70℃で15分間処理し、直ちに急冷することで制限酵素を失活させ、T4DNAリガーゼによりDNA断片の両末端にアダプター配列を付加した。得られたDNA断片を、Suprec 2−PCR(Takara)により濃縮し回収した。
2)SSR領域の濃縮
アダプター配列を付加したDNA断片を完全な2本鎖にするため、回収したDNA断片を鋳型にアダプター配列上に設計されたプライマー(配列表1および配列表2)を用いてPCR反応を行った。PCR反応における反応組成および反応条件は以下の通りである。なお、耐熱性DNAポリメラーゼは、ABI社製のAmpli Taq GOLDを用いた。
【0035】
反応液の組成
鋳型DNA 10μl
10×Ampli Taq GOLD buffer (15mM MgCl2) 20μl
50mM MgCl2 6μl
dNTPs (各2μM) 16μl
10pmol/μμlプライマー1 5μl
100pmol/μlプライマー2 3μl
耐熱性DNAポリメラーゼ 2μl
水 138μl
全量 200μl
反応条件
72℃ 15分間
90℃ 30秒間、56℃ 1分間、72℃ 1分間のサイクルを10回。
【0036】
72℃ 3分間
PCR反応終了後、反応液5μlを2%TAE−アガロースゲルで電気泳動し、増幅産物の確認を行った。その結果、約200−500bpの領域にスメアーな泳動像が認められ、各DNA断片が増幅されているものと判断された。
【0037】
次に、得られたPCR産物全量に対して、3’末端をビオチンラベルしたAGの20回単反復配列を加え100℃で処理した後、室温で放置することで(AG)20単反復配列とSSR領域との再会合を行い、この混合液を用いてSSR領域の濃縮操作を行った。SSR領域は、混合液にマグネットビーズ(DYNABEADs M−280)を加え30分間撹拌混合を行った後、マグネットでビーズのみを回収することで濃縮した。得られた濃縮液は、STEXバッファー(100mM NaCl, 10mM Tris-Hcl (pH8.0), 1mM EDTA, 0.1% Triton X-100)により洗浄し、再度100℃で処理しマグネットでビーズを含んだ画分のみを回収した。なお、STEXバッファーによる洗浄操作は3回行った。
3)SSR領域のクローニング
2)で濃縮したDNA断片を鋳型に配列表1及び2に示したプライマーを用いてPCR反応を行い、各々の増幅断片をクローニングした。PCR反応における反応組成および反応条件は以下の通りである。なお、耐熱性DNAポリメラーゼには、ABI社製のAmpli Taq GOLDを用いた。
【0038】
反応液の組成
鋳型DNA 2.5μl
10×Ampli Taq GOLD buffer (15mM MgCl2) 5.0μl
25mM MgCl2 6.0μl
dNTPs (各2μM) 4.0μl
10pmol/μlプライマー1 1.25μl
100pmol/μlプライマー2 0.75μl
耐熱性DNAポリメラーゼ 0.5μl
S.D.W 30μl
Total 50μl
反応条件
90℃ 30秒間、56℃ 1分間、72℃ 1分間のサイクルを25回。
【0039】
72℃ 3分間
PCR反応終了後、増幅断片はTOPO TA cloning kit(Invitrogen)を用いてプラスミドベクターに挿入し、キット添付の大腸菌に導入した。得られたクローンはアンピシリン、X−galおよびIPTGを含む1.5%LB選択培地に塗抹し、暗条件下37℃で一晩培養した後、プラスミドベクターに組み込まれたβ−ガラクトシダーゼ遺伝子の発色反応を指標とした青白選択法により白色の菌株のみを選別した。本実験では、実施例1で得られたシバ品種「朝駆」由来の濃縮ライブラリーから最終的に1920個の白色クローンを選別した。
【0040】
選別した大腸菌を用いてcolony−PCR法によるインサートの増幅を行った。PCR反応における反応組成および反応条件は以下の通りである。なお、耐熱性DNAポリメラーゼには、ABI社製のAmpli Taq GOLDを用いた。
【0041】
反応液の組成
10×Ampli Taq GOLD buffer (15mM MgCl2) 1.0μl
dNTPs (各2μM) 1.0μl
10pmol/μlM13 Reverseプライマー 0.5μl
10pmol/μlM13 Forwerdプライマー 0.5μl
耐熱性DNAポリメラーゼ 0.05μl
S.D.W 7.45μl
Total 10μl
反応条件
94℃ 1分間、55℃ 1分間、72℃ 2分間のサイクルを30回。
【0042】
72℃ 3分間
PCR反応終了後、増幅産物を用いてSSR領域を含むクローンのスクリーニングを行った。スクリーニングは、ドットブロットハイブリダイゼーション法を適用した。すなわち、増幅産物は100℃処理により一本鎖にした後、1μlをHybond N+ナイロンメンブレン(AmershamPharmacia Biotech.)に固定した。メンブレンは、ハイブリダイゼーションバッファー(5×SSC, 0.1% サルコシル, 0.02% SSC, 1% Blocking Regent)中で50℃、30分間のプレハイブリダイゼーションを行い、その後50pmolのプローブDNAを添加して50℃で2時間ハイブリダイゼーションを行った。プローブには5末端をビオチンでラベルしたAGの20回単反復配列を使用した。
【0043】
ハイブリダイゼーション終了後、メンブレンはBrightStar BioDetect Kit(Ambion)で洗浄・検出し、X線フィルム(富士フィルム)に感光させ、現像した。得られたフィルムをもとに陽性クローンの識別を行った結果、1920クローンの中から、プローブと強くハイブリダイズする457クローンを識別した。
4)SSR領域の塩基配列の決定
スクリーニングによって得られた457の陽性クローンのうち、162クローンについて塩基配列を決定した。プラスミドDNAは、菌株をアンピシリン、X−galおよびIPTGを含むLB液体培地で37℃一晩振とう培養し、プラスミドDNA精製キット(Quiagen)を用いて抽出・精製した。得られたプラスミドDNAは、Big dye terminator cycle sequencing kit(Perkin-Elmer, Applied Biosystems)によりシークエンス反応を行い、ABI373シークエンサー(Perkin-Elmer, Applied Biosystems)でインサートのDNAの配列情報を得た。これらのDNA配列を図1(配列番号1〜137)に示す。
【0044】
全体についてみると、162クローン中4クローンにはSSR領域が認められなかった。また、2クローンについては重複クローンであり、残りの154クローンは全て単一クローンであることが判明した。これら156クローンについてさらなる解析を行ったところ、そのうちの23.7%にあたる37クローンは3〜7反復の短い繰り返し配列を有することが認められた。一方、76.3%にあたる119クローンは8反復以上のSSR領域を含んでいた。
【実施例2】
【0045】
特異的増幅プライマーの設計
インサートの配列情報に基づいて、単反復配列を含む領域を特異的に増幅するプライマーを設計した。プライマーの設計は、ソフトウエアOLIGO ver.6.0(TAKARA)を用いて行った。プライマーは、単純反復配列の両側に19−21merの塩基数で、増幅産物が150〜250bpの鎖長になるように設計した。また、プライマー配列にはTm値が65〜70℃で、かつ、自己相同性による結合やヘアピン構造などのプライマー間における2次構造をとらない領域を選択した。なお、片側のプライマーについては、5末端側を蛍光標識(FAM)した。各クローンにおけるシーケンスの精度やSSR領域の位置などによりプライマーの設計に困難な配列情報も存在したが、最終的に102組のSSRプライマーを設計することができた(図2)。
【実施例3】
【0046】
SSRマーカーを用いた遺伝子座の数の推定
実施例2で設計したプライマーを用いてSSR解析を行い、遺伝子座の数の推定を行った(図3)。オニシバ(Zoysia macrostachya)のエコタイプ「うの岬」を花粉親、「竹富カイジ」を交配親にもつF1後代の11個体からCATB法によりゲノミックDNAを抽出し、PCR反応を行った。PCR反応における反応組成は以下の通りである。なお、耐熱性DNAポリメラーゼには、ABI社製のAmpli Taq GOLDを用いた。
【0047】
反応液の組成
鋳型DNA(25ng/μl) 1μl
10×Ampli Taq GOLD buffer (15mM MgCl2) 1μl
25mM MgCl2 1μl
dNTPs (各2μM) 2μl
10pmol/μlプライマー1 0.5μl
10pmol/μlプライマー2 0.5μl
耐熱性DNAポリメラーゼ 0.03μl
S.D.W 3.97μl
Total 10μl
また、反応条件はMaize Mapping Progect(http://www.maizemap.org)の方法に従ってアニーリング温度を1℃/サイクル低下させるタッチダウンPCR法を適用した。
【0048】
反応条件
95℃ 8分間
95℃ 1分間、65-55℃ 1分間、72℃ 1.5分間を11サイクル行う。
【0049】
ただし、アニーリング温度は1℃/サイクル低下させる。
【0050】
95℃ 1分間、55℃ 1分間、72℃ 1.5分間を25サイクル。
【0051】
72℃ 3分間
PCR反応終了後、増幅断片は脱イオン化ホルムアミドで10倍に希釈し、100℃で処理した後、5%変性ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分画し、Molecular imager FX(Bio-Rad)を用いてFAM蛍光標識を検出した。その結果、供試したオニシバのF1後代11個体全てにおいて、1〜2本の明瞭な増幅断片が認められ、さらに、両親のバンドが矛盾なく後代に遺伝していることが確認された。このことは、本プライマーで得られたSSRマーカーが単一遺伝子座に由来することを示している。
【0052】
既存品種および日本各地のエコタイプ計21個体を用いて、対立遺伝子座数の推定を行い、これをもとにヘテロ接合度の観察値Hを算出し、設計したプライマーの識別能力を検討した。供試12プライマーにおいて、シバ品種およびエコタイプ21個体での推定対立遺伝子数は5(ZjAG125)−17(ZjAG130)であり、その平均値は11.9であった。また、これらのプライマーによるヘテロ接合度の観察値は0.14〜0.57であり、その平均値は0.36であった。図4は、これら12プライマーのうち、プライマーZjAG 133による供試21個体でのSSR解析の結果を示したものである。本プライマーにより得られた推定対立遺伝子座数は13であった。また、ヘテロ接合度の観察値Hは0.14であり、供試プライマーの中で最も低い値であった。
【実施例4】
【0053】
シバ属品種の識別方法
設計したプライマーのうち、8プライマーを用いて、既存品種7個体のSSR解析を行った。用いたプライマーにおける供試7品種間での推定対立遺伝子数は4〜7であった。図5は、プライマーZjAG140によるSSR解析の結果を示したものである。本プライマーにおいて、供試7品種間で多型が認められ、全ての品種を識別することが可能であった。また、異なる2つのプライマー(ZjAG116およびZjAG130)を組み合わせることで、各品種に特異的なバンドパターンが判別でき、品種識別のため有効で十分なプライマーのセットを提供できることを明らかにした(図6)。
【実施例5】
【0054】
ソッドの均一性検証
品種識別における有効性が認められたプライマーを用いて混合DNAのSSR解析を行った。SSR解析は、2種のアリルの異なるシバ品種「朝駆」および外来種「クィンズランド」のゲノミックDNAを鋳型DNAとして、これら2種ゲノミックDNAの異なる混合比によりPCR反応を行った(図7)。その結果、40%の混生サンプルまでバンドを確認することができ、2種のアリルの異なるシバ品種を用いて、ソッドの均一性の検証が上記のプライマーで検証できることを明らかにした。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1−1】本発明により得られたシバ属植物のSSRマーカーの核酸配列を示す。
【図1−2】本発明により得られたシバ属植物のSSRマーカーの核酸配列を示す。
【図1−3】本発明により得られたシバ属植物のSSRマーカーの核酸配列を示す。
【図1−4】本発明により得られたシバ属植物のSSRマーカーの核酸配列を示す。
【図1−5】本発明により得られたシバ属植物のSSRマーカーの核酸配列を示す。
【図1−6】本発明により得られたシバ属植物のSSRマーカーの核酸配列を示す。
【図1−7】本発明により得られたシバ属植物のSSRマーカーの核酸配列を示す。
【図1−8】本発明により得られたシバ属植物のSSRマーカーの核酸配列を示す。
【図1−9】本発明により得られたシバ属植物のSSRマーカーの核酸配列を示す。
【図1−10】本発明により得られたシバ属植物のSSRマーカーの核酸配列を示す。
【図1−11】本発明により得られたシバ属植物のSSRマーカーの核酸配列を示す。
【図2−1】本発明によって得られたシバ属の単純反復配列を含むゲノム領域を増幅するための102組のプライマーセットの核酸配列を示す。
【図2−2】本発明によって得られたシバ属の単純反復配列を含むゲノム領域を増幅するための102組のプライマーセットの核酸配列を示す。
【図3】プライマーセットZjAG136を用いてPCR反応を行ったときの、増幅産物の電気泳動結果を示す。
【図4】プライマーセットZjAG02/133を用いて、既存品種および日本各地のエコタイプ計21個体を用いてPCR反応を行ったときの、増幅産物の電気泳動結果を示す。
【図5】プライマーセットZiAG02/140を用いて、既存品種7個体を用いてPCR反応を行ったときの、増幅産物の電気泳動結果を示す。本発明によって得られたプライマーの増幅する領域の識別能力の検定結果を示す。
【図6】プライマーセットZjAG02/116及びZjAG02/130を組み合わせてPCR反応を行ったときの、増幅産物の電気泳動結果を示す。
【図7】プライマーセットNo.ZjAG125を用いて混合DNAのSSR解析を行った結果を示す。
【出願人】 【識別番号】501203344
【氏名又は名称】独立行政法人農業・生物系特定産業技術研究機構
【識別番号】503242453
【氏名又は名称】明石 良
【識別番号】503242464
【氏名又は名称】株式会社宮崎芝園
【出願日】 平成15年7月4日(2003.7.4)
【代理人】 【識別番号】100062007
【弁理士】
【氏名又は名称】川口 義雄

【識別番号】100113332
【弁理士】
【氏名又は名称】一入 章夫

【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠

【識別番号】100103920
【弁理士】
【氏名又は名称】大崎 勝真

【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明

【公開番号】 特開2005−27566(P2005−27566A)
【公開日】 平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願番号】 特願2003−271137(P2003−271137)