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【発明の名称】 核酸の検出方法
【発明者】 【氏名】金子 善興
【住所又は居所】東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号 オリンパス光学工業株式会社内

【要約】 【課題】必要とする試料である核酸の量が少なくて、かつ、より正確な遺伝子発現などの解析が行える核酸の検出方法を提供する。

【解決手段】アンチセンス鎖RNAを鋳型として、センス鎖cDNAを合成し、これをハイブリダイゼーションに用いる。前記アンチセンス鎖RNAはリニア増幅法によって合成することが好ましく、これよりセンス鎖cDNAを合成する際は、ランダムプライマーを用い、蛍光標識することが好ましい。さらに、このようにして作製されたセンス鎖cDNAを三次元マイクロアレイを用いて検出することで、遺伝子の発現量比などの解析を正確に行うことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンチセンス鎖RNAを鋳型として、センス鎖cDNAを合成し、これをハイブリダイゼーションに用いることを特徴とする核酸の検出方法。
【請求項2】
アンチセンス鎖RNAが、発現量に略比例して増幅されたアンチセンス鎖RNAであることを特徴とする請求項1記載の核酸の検出方法。
【請求項3】
アンチセンス鎖RNAを、リニア増幅法によって合成することを特徴とする請求項1又は2記載の核酸の検出方法。
【請求項4】
アンチセンス鎖RNAを鋳型としてセンス鎖cDNAを合成し、次いで該センス鎖cDNAを標識することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の核酸の検出方法。
【請求項5】
アンチセンス鎖RNAを鋳型として、標識されたヌクレオチドを用いてセンス鎖cDNAを合成することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の核酸の検出方法。
【請求項6】
ヌクレオチドが、蛍光標識されていることを特徴とする請求項5記載の核酸の検出方法。
【請求項7】
センス鎖cDNAを、ランダムプライマーを用いて合成することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の核酸の検出方法。
【請求項8】
前記センス鎖cDNAをターゲットとして、マイクロアレイを用いて検出することを特徴とする請求項1ないし7のいずれかに記載の核酸の検出方法。
【請求項9】
マイクロアレイが、ターゲットと相補的なDNA、cDNA又はオリゴヌクレオチドを固相化したものであることを特徴とする請求項8記載の核酸の検出方法。
【請求項10】
マイクロアレイが三次元構造を有することを特徴とする請求項8又は9記載の核酸の検出方法。
【請求項11】
三次元的に液体を収容し得る微小な液体収容部を二次元的に複数配置してなるマイクロアレイを用いて、核酸を検出する方法であって、請求項10記載のターゲットの一部と相補的に結合するプローブを、液体収容部に配置する工程と、
前記ターゲットを含む液体試料をマイクロアレイ内外で流動させて、該ターゲットと前記プローブとの間でハイブリッドを形成させる条件下で、液体試料とプローブとを接触させる工程と、
ハイブリッドの結合強度の違いに基づいて変化するシグナル強度を、非特異的ハイブリッドを解離させる条件下で、検出する工程と、を含むことを特徴とする核酸の検出方法。
【請求項12】
プローブの塩基長が、20〜70merであることを特徴とする請求項11記載の核酸の検出方法。
【請求項13】
液体試料とプローブとを接触させる前に、液体試料を60〜100℃で、1〜10分間加熱することを特徴とする請求項11又は12記載の核酸の検出方法。
【請求項14】
ターゲットとプローブとのハイブリダイゼーション反応、及びシグナル強度を検出する際の温度条件が、30〜70℃であることを特徴とする請求項11ないし13のいずれかに記載の核酸の検出方法。
【請求項15】
ターゲットとプローブとのハイブリダイゼーション反応を、0.1〜6倍の塩濃度のSSPEを含む溶液中で行うことを特徴とする請求項11ないし14のいずれかに記載の核酸の検出方法。
【請求項16】
液体試料とプローブとを接触させる工程において、液体試料を間欠的に30〜200回流動させることを特徴とする請求項11ないし15のいずれかに記載の核酸の検出方法。
【請求項17】
液体試料とプローブとを接触させる工程後に、0.1〜6倍の塩濃度のSSPEを含む溶液をマイクロアレイ内外で流動させて、非特異的ハイブリッド及び未反応の液体試料を取り除くことを特徴とする請求項11ないし16のいずれかに記載の核酸の検出方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、核酸の検出方法に関するものである。特に、アンチセンス鎖RNAを鋳型としてセンス鎖cDNAを合成し、このセンス鎖cDNAをマイクロアレイなどにおけるハイブリダイゼーションに用いる核酸の検出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
マイクロアレイは、通常、1〜数十センチ四方程度のスライドガラスやシリコンなどからなるプレート(担体)上に、数千〜数十万種の既知のDNAなどの断片(プローブ)を配列、固相したものである。
これらプローブに、相補性を利用して未知のDNAなどの核酸(ターゲット)をハイブリダイズさせる。あらかじめこの未知の核酸に標識をつけ、未知の核酸がどのプローブとハイブリダイズしたかを調べることによって、未知の核酸が何であるかが分かるようになっている。
【0003】
前記ハイブリダイズ用の核酸を調製する方法として、一般に、以下の2通りの方法が知られている:
▲1▼ mRNAやtotalRNAを逆転写してcDNAを合成する方法(例えば、非特許文献1参照。)。
▲2▼ リニア増幅法とも呼ばれ、mRNAを逆転写してcDNAを合成し、さらに二本鎖のcDNAを形成した後、センス鎖cDNAを鋳型にしてRNAを増幅させる(例えば、非特許文献2参照。)。
【0004】
また、標識方法としては、上記▲1▼の方法で調製されるcDNAは、例えば、逆転写する際に蛍光物質のついたdUTP(例えば、Cy3−dUTP、Cy5−dUTP、Fluorescein−12−dUTP)を取り込ませて標識する。一方、上記▲2▼の方法で調製されるRNAは、例えば、ランダムプライマーを用いて標識する。
【0005】
【非特許文献1】
林崎良英、外「DNAマイクロアレイ実践マニュアル」、羊土社、2000年11月、p.66−72
【非特許文献2】
林崎良英、外「DNAマイクロアレイ実践マニュアル」、羊土社、2000年11月、p.80−90
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記▲1▼の方法によって得られたcDNAを用いて、マイクロアレイで遺伝子発現などの解析を行う場合、適量の核酸を作製するためには、多量のmRNA又はtotalRNAが試料として必要である。cDNAを合成する鋳型となるmRNAが、例えば、10μg以下の場合、正確な逆転写反応を行うことができず、得られたcDNAをマイクロアレイに用いても正しい遺伝子の発現量比を検出できない。
【0007】
一方、上記▲2▼の方法によって得られたRNAを用いて、マイクロアレイで遺伝子発現などの解析を行う場合、通常2μg程度のmRNAが試料として必要である。これは、▲1▼の方法より必要とする試料の核酸の量が少ないものの、最終的に標識される核酸がRNAであることから、分解がおこり易い。その結果、DNAよりも多量のRNAをマイクロアレイのハイブリダイゼーションに用いる必要がある。さらに、多量のRNAを用いることで、核酸の高次構造を形成し易くなるため非特異的結合が増加する。その結果、このようなRNAをマイクロアレイに用いても正確な遺伝子の発現量比を検出できない。
【0008】
したがって、本発明は、必要とする試料である核酸の量が少なくて、かつ、より正確な遺伝子発現などの解析が行える核酸の検出方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を解決するため、本発明は、アンチセンス鎖RNAを鋳型として、センス鎖cDNAを合成し、これをハイブリダイゼーションに用いる核酸の検出方法を提供する。
また、本発明は、前記アンチセンス鎖RNAが、発現量に略比例して増幅されたアンチセンス鎖RNAである核酸の検出方法を提供する。
さらに、本発明は、前記アンチセンス鎖RNAをリニア増幅法によって合成する核酸の検出方法を提供する。
さらに、本発明は、前記アンチセンス鎖RNAを鋳型としてセンス鎖cDNAを合成し、次いで合成したセンス鎖cDNAを標識する核酸の検出方法を提供する。
さらに、本発明は、前記アンチセンス鎖RNAを鋳型として、標識されたヌクレオチドを用いてセンス鎖cDNAを合成する核酸の検出方法を提供する。
さらに、本発明は、前記ヌクレオチドが蛍光標識されている核酸の検出方法を提供する。
さらに、本発明は、前記センス鎖cDNAを、ランダムプライマーを用いて合成する核酸の検出方法を提供する。
さらに、本発明は、前記センス鎖cDNAをターゲットとして、マイクロアレイを用いて検出する核酸の検出方法を提供する。
さらに、本発明は、前記マイクロアレイが、前記ターゲットと相補的なDNA、cDNA又はオリゴヌクレオチドを固相化したものである核酸の検出方法を提供する。
さらに、本発明は、前記マイクロアレイが三次元構造を有する核酸の検出方法を提供する。
さらに、本発明は、三次元的に液体を収容し得る微小な液体収容部を二次元的に複数配置してなるマイクロアレイを用いて、核酸を検出する方法であって、
前記ターゲットの一部と相補的に結合するプローブを、液体収容部に配置する工程と、
前記ターゲットを含む液体試料をマイクロアレイ内外で流動させて、該ターゲットと前記プローブとの間でハイブリッドを形成させる条件下で、液体試料とプローブとを接触させる工程と、
ハイブリッドの結合強度の違いに基づいて変化するシグナル強度を、非特異的ハイブリッドを解離させる条件下で、検出する工程と、を含む核酸の検出方法を提供する。
さらに、本発明は、かかる核酸の検出方法において、プローブの塩基長が、20〜70merである核酸の検出方法を提供する。
さらに、本発明は、かかる核酸の検出方法において、液体試料とプローブとを接触させる前に、液体試料を60〜100℃で、1〜10分間加熱する核酸の検出方法を提供する。
さらに、本発明は、かかる核酸の検出方法において、ターゲットとプローブとのハイブリダイゼーション反応、及びシグナル強度を検出する際の温度条件が、30〜70℃である核酸の検出方法を提供する。
さらに、本発明は、かかる核酸の検出方法において、ターゲットとプローブとのハイブリダイゼーション反応を、0.1〜6倍の塩濃度のSSPEを含む溶液中で行う核酸の検出方法を提供する。
さらに、本発明は、かかる核酸の検出方法において、液体試料とプローブとを接触させる工程において、液体試料を間欠的に30〜200回流動させる核酸の検出方法を提供する。
さらに、本発明は、かかる核酸の検出方法において、液体試料とプローブとを接触させる工程後に、0.1〜6倍の塩濃度のSSPEを含む溶液をマイクロアレイ内外で流動させて、非特異的ハイブリッド及び未反応の液体試料を取り除く核酸の検出方法を提供する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に使用される核酸とは、DNA、RNA、及び人工的ヌクレオチドを含むDNA又はRNAの何れをも意味する。
核酸は、センス鎖とアンチセンス鎖に分けられる。例えば、mRNAをセンス鎖としたとき、このmRNAと同一又は同等の塩基配列を持つ核酸はセンス鎖である。一方、前記mRNAと相補的な塩基配列を持つ核酸はアンチセンス鎖である。
【0011】
ハイブリダイゼーションとは、相補的な塩基配列を持つ同種又は異種な二本の核酸の間に結合が形成される現象であり、核酸の組み合わせの例として、DNA−DNA、DNA−RNA、及びRNA−RNAが挙げられる。
ハイブリッドとは、これら同種又は異種の核酸がハイブリダイゼーションによって形成する二重鎖である。
【0012】
本発明の核酸の検出方法は、アンチセンス鎖RNAを鋳型として、センス鎖cDNAを合成し、これをハイブリダイゼーションのターゲットとして用いて検出する。センス鎖cDNAを合成する際、鋳型となるアンチセンス鎖RNAは、以下のようにして作製することが好ましい。
生体組織や細胞からRNAを抽出し、これを鋳型とし、リニア増幅法によってRNAが抽出された組織又は細胞内での遺伝子の発現量に略比例してmRNAを増幅させる。
RNAは、totalRNA、mRNAの何れでもよいが、抽出する容易さなどの観点から、totalRNAを抽出するのが好ましい。また、生体組織などからRNAを抽出する方法は公知のものであればよく、グアニジンチオシアネート法などが例として挙げられる。
【0013】
リニア増幅法は、例えば以下のようにして行うことができる。
1. 抽出したRNAをオリゴdT−T7プライマーを用いて逆転写してアンチセンス鎖cDNAを合成する。
2.1.で合成したアンチセンス鎖cDNAと相補的なセンス鎖cDNAを合成して二重鎖cDNAを形成する。
3.2.で合成された二重鎖cDNAのうち、センス鎖cDNAを鋳型にしてアンチセンス鎖RNAを合成、増幅させる。
【0014】
上記のように、生体組織などから抽出したRNAをリニア増幅法によって増幅すれば、得られるアンチセンス鎖RNAは、RNAが抽出された組織又は細胞内の遺伝子の発現量に略比例したものである。したがって、増幅前後で遺伝子の比率はほぼ維持されているので、正確な遺伝子の発現等の解析が可能である。
従来、マイクロアレイなどにおけるハイブリダイゼーションに用いるターゲットのcDNAを作製するために約10μg以上のmRNA、又はそれ以上のtotalRNA試料を必要としていたが、上記の方法を用いれば、例えば、2μgのtotalRNAを用いてリニア増幅法によりアンチセンス鎖RNAを製造して、そのアンチセンス鎖RNAを鋳型として逆転写、標識することによってFITC蛍光標識されたcDNAを製造し、このうち1μgをターゲットとして一度のハイブリダイゼーションに用いると、プローブの塩基配列に特異的な結合が可能となる。
【0015】
次に、増幅したアンチセンス鎖RNAを鋳型としてセンス鎖cDNAを合成するが、例えば以下のような方法で行うことが好ましい。
アンチセンス鎖RNAを逆転写する際、プライマーとしてランダムプライマーを用いることが好ましい。mRNAからアンチセンス鎖cDNAを合成する際使用されるオリゴdTプライマーを用いたのでは、アンチセンス鎖RNAと反応しないという問題が生じるからである。
センス鎖cDNAを合成する際、以下に示す方法で標識することが好ましい。
(a)逆転写の際、標識されたヌクレオチドを用いてセンス鎖cDNAを合成する。センス鎖cDNAを合成するときに、同時に標識されたヌクレオチドが直接cDNAに取り込まれるため、標識されたcDNAが合成され、合成及び検出が簡便になる。このとき、ヌクレオチドを蛍光標識すれば、RI標識と比較して安全かつ簡便に検出することができる。
(b)センス鎖cDNAが合成された後に標識する。アンチセンス鎖RNAを鋳型としてセンス鎖cDNAを合成した後に、その合成したcDNAを標識することにより、確実かつ正確な検出が可能となる。
【0016】
標識する方法は、公知の方法のいずれを用いてもよく、例えば、ヌクレオチドに蛍光物質、P32などのラジオアイソトープ、ビオチン、アビジンなどを結合させたものを転写の際、核酸に織り込む方法が挙げられる。また、核酸が合成された後に標識する方法として、例えば、アミノアリル法が挙げられる。
蛍光物質の例として、Cy3−dUTP、Cy5−dUTP、Fluorescein−12−dUTP、 Fluorescein−12−UTPなどが挙げられる。
また、これらの他に蛍光ガラスの微粒子を用いたり、蛍光物質以外に金や銀の微粒子、半導体、ガラス、セラミックス、有機樹脂等の誘電体粒子を標識物質として、これらの散乱光により核酸を検出したりすることも可能である。
【0017】
ターゲットは、マイクロアレイなどによって検出される核酸である。通常、ターゲットは、未知のものであり、既知のプローブとハイブリダイズさせることによってターゲットの核酸が如何なるものかわかるようになっている。
従来、核酸の検出方法において、増幅されたRNAがターゲットとして使用されていたが、RNAは不安定であり、非特異的ハイブリッドが形成され易いことから、正確な解析は困難であった。cDNAをハイブリダイゼーションのターゲットとして用いれば、安定性がよく、また、RNA同士で見られる非特異的ハイブリッドが形成されにくい。
【0018】
以上説明したように、RNAをリニア増幅法によって増幅させ、さらに増幅したRNAを逆転写してcDNAを合成することで、必要とする試料を節減できる。また、このようにして作製されたセンス鎖cDNAをターゲットとしてプローブとハイブリダイズさせ、検出することによって、生体組織又は細胞内での遺伝子の発現量などがより正確に解析できるようになっている。
【0019】
プローブは、ターゲットと相補的に結合し得るDNA、cDNA又はオリゴヌクレオチドであり、マイクロアレイに固相化されていることが好ましい。マイクロアレイは、多くの遺伝子の相互作用の解明に用いられており、スループットが高く非常に有効な技術である。マイクロアレイを用いると、特異性が高く正確な情報を多くの遺伝子に対して得られるため大きな効果を有する。
【0020】
プローブとしてcDNA、又は、オリゴヌクレオチドを用いると、塩基配列に特異的な検出が可能となる。プローブの塩基長としては、20〜70merであることが好ましく、より好ましくは40〜60merである。塩基長が20mer未満の場合、非特異的なハイブリッド形成が増加する傾向にあり、70merを超えると、プローブの合成に要する時間、費用の観点から好ましくない。
【0021】
三次元マイクロアレイは、三次元的に液体を収容し得る微小な液体収容部を二次元的に複数配置してなるものであれば、特に制限はないが、自家蛍光の少ない材質が好ましい。液体収容部に適する材質の例として、酸化アルミニウムが挙げられる。ここで、液体収容部は、プローブを固相化するための最小単位であり、プローブスポットとも呼ばれる。
【0022】
三次元マイクロアレイは、例えば、スライドグラス上にプローブが固相化されたマイクロアレイ(以下、二次元マイクロアレイ)に比べて、多量のプローブを固相化することができる。また、従来の二次元マイクロアレイでは、プローブを定量的に固相化することが困難なため、各プローブの固相化量に、ばらつきが生じることが多かった。これに対し、三次元マイクロアレイは、定量的なプローブの固相化が可能なため、発現量の解析などの定量的な実験に好適である。
【0023】
本発明の核酸の検出方法は、上記ターゲット及び三次元マイクロアレイを用いて行われるものであって、以下の工程を含むことを特徴とする。
即ち、アンチセンス鎖RNAを鋳型として、核酸(ターゲット)を作製する工程(1)と、ターゲットの一部と相補的に結合するプローブを液体収容部に配置する工程(2)と、ターゲットを含む液体試料をマイクロアレイ内外で流動させて、ターゲットとプローブとの間でハイブリッドを形成させる条件下で、液体試料とプローブとを接触させる工程(3)と、ハイブリッドの結合強度の違いに基づいて変化するシグナル強度を、非特異的ハイブリッドの形成を解離させる条件下で、検出する工程(4)である。
【0024】
ターゲットを作製する工程(1)では、組織や細胞などからRNAを抽出し、このRNAを鋳型としてセンス鎖cDNAを合成する。この際、前述したように、リニア増幅法を用いて抽出したRNAを増幅し、さらに、ランダムプライマーを用いて増幅したRNAを逆転写、蛍光標識してセンス鎖cDNAを合成するのが好ましい。
次いで、このようにして合成されたセンス鎖cDNAをターゲットとし、例えば、滅菌蒸留水などに溶解させて液体試料として用いる。また、後段で説明するが、プローブとのハイブリッド形成を容易にする目的で、適宜、塩などを添加することができる。
本発明の核酸の検出方法は、上記のようにして作製されたセンス鎖cDNAをハイブリダイゼーションのターゲットとして用いるので、必要とする試料量を節約でき、また、試料内の遺伝子発現量比に忠実な核酸の検出ができる。
【0025】
本発明において、プローブを液体収容部に配置する工程(2)では、まず、前述したように、例えば、20〜70merの塩基長を有し、ターゲットとハイブリダイズし得るDNA、cDNA又はオリゴヌクレオチドを作製する。
このようなプローブを定量的に各液体収容部に配置・固相化することは、上述したように比較的容易なため、各液体収容部のプローブ量にばらつきが少なく、再現性に優れた測定を実施することができる。
【0026】
次いで、液体試料とプローブとを接触させる工程(3)は、液体試料をマイクロアレイ内外で流動させて、ターゲットとプローブとの間でハイブリッドを形成させる条件下で行う。
このように、三次元マイクロアレイの内外に液体試料を流動させることによって、各液体収容部の空間に、容易にターゲットを含む液体試料を流動させることができるため、確実にターゲット分子とプローブ分子とが接触でき、ハイブリッド形成を短時間で行うことができる。
【0027】
ターゲットとプローブとのハイブリッドを形成させる際、0.1〜6倍の塩濃度のSSPE溶液中で行うことが好ましい。つまり、上記範囲の塩濃度となるように、SSPE溶液を液体試料に添加して、ハイブリダイゼーション反応を行う。ここで、SSPE溶液は、例えばSSPE溶液(20倍)を希釈して調製することができる。SSPE溶液(20倍)の組成は、3.0M 塩化ナトリウム、0.2M リン酸ナトリウム、0.02M EDTA、pH7.4である。SSPE溶液の塩濃度は希釈の程度を表し、例えば、塩濃度が6倍であるSSPE溶液とは、SSPE溶液(20倍)を20分の6倍に希釈したものである。SSPE溶液の塩濃度については、塩濃度が高いほうが、ハイブリッド形成が行われ易いためシグナル強度の増大に寄与するが、塩濃度が6倍を超えると、その増加率が減少する傾向にある。一方、塩濃度が低いほうがハイブリッド形成の特異性は上昇するが、塩濃度が0.1倍未満の場合、反応時間を長くする必要がある。
【0028】
また、液体試料とプローブとを接触させる工程において、液体試料を間欠的に30〜200回流動させることが好ましい。30回未満の場合、標識された核酸分子とプローブ分子との接触頻度が不十分なため、ハイブリッド形成反応が十分に行われないことが多い。一方、200回を超えると、反応時間が長くなる割にハイブリッド形成の効率が低下する傾向にある。
【0029】
また、液体試料をプローブに接触させる前に、予め、液体試料を60〜100℃で1〜10分間、より好ましくは70〜95℃で2〜5分間加熱することが好ましい。また、液体試料を加熱後、急冷を行うことがさらに好ましい。液体試料を加熱することによって、その中に含まれるターゲット分子のもつれ(分子内結合及び/又は分子間結合)が解け、また、急冷することによって、前記もつれが再発生するのを防ぐ。このように前処理されたターゲットを含む液体試料をハイブリダイゼーションに用いることによって、非特異的なハイブリッドの形成が抑制される。
さらに、ハイブリッドを形成させる好ましい条件として、所定の温度範囲とすることが好ましいが、温度条件については後段で詳しく説明する。
【0030】
次いで、ハイブリッドの結合強度の違いに基づいて変化するシグナル強度を検出する工程(4)は、非特異的ハイブリッドの形成を解離させる条件下で行う。具体的には、液体試料とプローブとを接触させる工程を終了した後に、0.1〜6倍の塩濃度のSSPE溶液をマイクロアレイ内外で流動させることにより洗浄を行う。この際に、SSPE溶液の塩濃度が0.1倍未満の場合、特異的ハイブリッド形成をも解離させる可能性があり、6倍を超えると、液体試料に含まれる未反応の標識された核酸と、プローブとの間で、非特異的なハイブリッドを形成する可能性が高くなる。
このように、ハイブリッド形成反応終了後に、0.1〜6倍の塩濃度のSSE溶液をマイクロアレイ内外で流動させることによって、非特異的ハイブリッド及び未反応の液体試料を取り除き、より正確な測定を実施することができる。
【0031】
また、ハイブリッド形成反応、及びシグナル強度を検出する際の温度条件が、30℃〜70℃であることが好ましく、より好ましくは45〜55℃である。ハイブリッド形成反応の観点から言えば、反応温度が30℃未満の場合、非特異的なハイブリッド形成が増加する傾向にある。また、反応温度を高く設定したほうが、ハイブリダイゼーション反応の特異性が増すため好ましいが、高く成りすぎると、ハイブリッド形成に要する時間が長くなる、若しくは、特異的なハイブリッド形成までもが阻害されてしまう可能性がある。
【0032】
また、シグナル強度の検出の観点から言えば、30℃未満の場合、非特異的ハイブリッド形成を解離させることが困難となる。また、70℃を超えると、非特異的ハイブリッド形成だけではなく、特異的なハイブリッド形成までも解離させてしまう可能性があり、全体的にハイブリダイゼーション強度が低下する傾向にある。すると、全体的なシグナル強度が弱くなるため、シグナルの検出が困難となってしまう。ここで、シグナルとは、プローブ分子にハイブリダイズしている核酸分子に付加している標識から発せられる蛍光、放射能、化学発光などや、誘電体粒子を標識としたときの散乱光などであり、これらの中でも、費用と取り扱いの良さから蛍光が好ましい。また、シグナルは定量的に測定できることが好ましい。
【0033】
【実施例】
以下、実施例を挙げて、本発明を詳しく説明する。
【0034】
試験例1
ヒト培養細胞を試料に用いて、下記の要領でターゲットの作製を行った。
1.試料となる生体組織又は細胞からtotalRNA2μgをグアニジンチオシアネート法により抽出した。
2.抽出したtotalRNAを鋳型としてリニア増幅法によりアンチセンス鎖RNA2μgを合成した。
3.さらに、アンチセンス鎖RNAを鋳型として、ランダムプライマーを用いた逆転写法によって、センス鎖cDNA2μgを作製した。このとき、FITC標識を行った。
4.FITC標識されたセンス鎖cDNAの1μgを滅菌蒸留水35μlに溶解させcDNA溶液とし、95℃で5分間加熱して変性させ、その後、氷水中で急冷した。
5.前記cDNA溶液に、20×SSPE溶液を15μl加えて(最終塩濃度6×SSPE溶液)、液体試料とした。
【0035】
<プローブの設計及び固相化>
プローブとする所望のDNAに特異的な塩基配列に基づいて、下記のDNAプローブを設計した。


次いで、このプローブをマイクロピペットにより液体収容部が酸化アルミニウムからなる三次元マイクロアレイ上にスポットし、固相化した。
【0036】
<ハイブリダイゼーション及び核酸の検出>
上記液体試料を前記3次元マイクロアレイ内外に150回流動させ、ハイブリッド形成を行った。なお、このときの反応温度を50℃に設定した。
反応終了後、6×SSPE溶液50μlを3回更新させながら、各々1回ずつ流動させて洗浄を実施した。
洗浄終了後、蛍光顕微鏡に搭載したCCDカメラ(オリンパス光学工業株式会社製)を用い、WIBAフィルターカセット(オリンパス光学工業株式会社製)を使用して蛍光画像を取得した。各種プローブを固相化したプローブスポットの平均蛍光強度を図1に示す。なお、図1及び後述する図3において、アンチはアンチセンス鎖を表し、センスはセンス鎖を表す。
【0037】
図1より、GAPDH、β−actin共に、ターゲットをアンチセンス鎖のプローブとハイブリダイズさせた場合、センス鎖のプローブとハイブリダイズさせた場合より強い平均蛍光強度を示していることがわかる。アンチセンス鎖RNAを増幅し、それを鋳型としてランダムプライマーを用いた逆転写により合成したセンス鎖cDNAをターゲットとして用いているので、アンチセンス鎖のプローブとのハイブリダイゼーションによる平均蛍光強度が強いことは、ターゲットとプローブとが特異的に結合したことを示している。
【0038】
試験例2
ヒト培養細胞を試料として用い、試験例1と同様にして、ターゲットの作製、プローブの固相化、ハイブリダイゼーション及び核酸の検出を行った。プローブは、下記のDNAプローブを使用した。


【0039】
試験例3
ヒト培養細胞totalRNA2μgを抽出し、これを鋳型としてリニア増幅により、アンチセンス鎖RNA2μgを作製した。このアンチセンス鎖RNAをFITC標識したセンス鎖RNAのうち1μgを、マイクロアレイにおいてハイブリダイゼーションさせた。このとき、プローブの設計、固相化、ハイブリダイゼーション及び核酸の検出条件は、試験例2と同様であった。
GAPDHは、ポジティブコントロールとして、試験例2及び試験例3において発現量に差がないと予測される遺伝子であり、pRL−TKは、ネガティブコントロールとして、試験例2、試験例3共に検出されないと予想される遺伝子である。
【0040】
図2は、試験例2と試験例3におけるポジティブコントロールとネガティブコントロールのプローブを使用した場合の蛍光強度の比率(GAPDH/pRL−TK)を示す。図2より、同量の試料を使用したにも関わらず、試験例2は試験例3の3倍強の前記比率を示していることがわかる。試験例2の核酸の検出方法は、試験例3に比べてより効果的に核酸の特異的結合を検出することができることが判明した。
【0041】
試験例4
ラット肝臓細胞を試料として用い、試験例1と同様にして、ターゲットの作製、プローブの設計、固相化、ハイブリダイゼーション及び核酸の検出を行った。
試験例5
マイクロアレイに二次元マイクロアレイを使用した以外は、試験例4と同様の条件でターゲットを作製、これをハイブリダイゼーションさせ検出した。
試験例4及び試験例5における各種プローブを使用したときの平均蛍光強度を図3に示す。
【0042】
図3より、二次元マイクロアレイを使用した場合、各種プローブを使用したときの蛍光強度にあまり差がないことがわかる。一方、三次元マイクロアレイを使用した場合、ポジティブコントロールであるアンチセンス鎖GAPDHとアンチセンス鎖β−actinで高い蛍光強度を示し、ネガティブコントロールであるセンス鎖GAPDHとセンス鎖β−actinで低い蛍光強度を示していることがわかる。したがって、三次元マイクロアレイを用いた核酸の検出方法によって、特異的結合をより効果的に検出できることが判明した。
【0043】
試験例6
下記の試料及びDNAプローブを用い、試験例1と同様にして、ターゲットの作製、プローブの固相化、ハイブリダイゼーション及び核酸の検出を行った。
試料:正常ヒト繊維芽細胞株TIG−1(以下、TIG−1と略す)
ヒト大腸癌細胞株COLO320DM(以下、COLO320DMと略す)


pRL−TKは、ネガティブコントロールとして、ヒトゲノム中に存在しない遺伝子であり、c−mycは、COLO320DMにおいて特異的に発現が上昇すると予測される遺伝子であり、β−actinは、代表的なハウスキーピング遺伝子であり、GAPDHは、インターナルコントロールとして、両細胞間で発現量の変動がないと予測される遺伝子である。
【0044】
TIG−1由来の液体試料を用いたハイブリダイゼーション結果を図4(A)、COLO320DM由来の液体試料を用いたハイブリダイゼーション結果を図4(B)に示す。なお、各プローブの配置位置を左側に示す。
図4(A)及び図4(B)より、共にネガティブコントロールであるpRL−TKの発現は認められないことから、ハイブリダイゼーション反応が特異的に進行したことが示された。また、c−mycとβ−actinについて観察すると、TIG−1由来のターゲット(A)に比べて、COLO320DM由来のターゲット(B)のほうがより強い蛍光強度を示していることから、これらの遺伝子の発現量はCOLO320DM由来のターゲットにおいてより発現されていることが判明した。GAPDHについては、両試料とも発現量に差がないことが確認された。
さらに、図4(A)及び図4(B)において、同一のプローブをスポットしたときの蛍光強度にほとんど差異は認められないことから、上記の核酸の検出方法は再現性に優れていることが判明した。
【0045】
また、インターナルコントロールであるGAPDHの輝度を1:1に補正したときの各遺伝子についての補正蛍光強度を算出した。結果を図5に示す。各遺伝子の発現量の比を比較したところ、表1に示すように、COLO320DM由来のターゲットは、TIG−1由来のそれに比べて、c−mycの発現量が11倍、β−actinの発現量が1.7倍の上昇が認められた。
【0046】
さらに、試験例6の上記結果を別の角度から検証するために、TIG−1由来のtotalRNAと、COLO320DM由来のtotalRNAを抽出し、pRL−TK、c−myc、β−actin、GAPDHの各遺伝子についてそれぞれ20ngのtotalRNAを用いてkinetic RT−PCRを実施した。このときの条件としては、はじめに94℃で5分間熱変性させた後、94℃で30秒間の熱変性と、63℃で30秒間のアニーリングと、72℃で30秒間の伸長反応とからなるサイクルとなるように設定した。
【0047】
各遺伝子について、マイクロアレイに固相化したプローブを含む約200bpのPCR産物が得られるようにPCRを行い、15、18、21、24サイクル目のPCR産物についてアガロース電気泳動を実施した。TIG−1由来のtotalRNAを鋳型として得られたPCR産物のアガロース電気泳動像を模式的に表したものを図6(A)、COLO320DM由来のtotal RNAを鋳型として得られたPCR産物のアガロース電気泳動像を模式的に表したものを図6(B)に示す。
【0048】
GAPDHの発現量を1としたとき、各遺伝子のバンドの出現サイクル数から見積もられるCOLO320DM由来の試料とTIG−1由来の試料の遺伝子発現量比は、表1に示すように、c−mycで10倍、β−actinで2倍となり、これらの遺伝子発現量の強弱パターンは、前述したマイクロアレイによる解析結果とよい相関が得られた。したがって、本発明の核酸の解析方法を用いた遺伝子の発現量の解析結果は、信頼性の高いものである。
【0049】
【表1】


【0050】
【発明の効果】
本発明の核酸の検出方法を用いれば、少量の試料を用いて正確な遺伝子発現解析が可能である。また、リニア増幅法を用いてアンチセンス鎖RNAを作製し、これを逆転写してセンス鎖cDNAを合成すれば、この効果は向上する。さらに、センス鎖cDNAを標識することによって、核酸の検出が簡便になる。さらに、マイクロアレイを用いて前記ターゲットをプローブとハイブリダイズさせることによって、核酸の配列、配列中の変異の有無、mRNAのコピー数等の情報を得ることができる。この際、3次元マイクロアレイを使用することによってプローブの固相化量が増加するため、より効率的に遺伝子発現等の解析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ヒト培養細胞由来のセンス鎖cDNAを各種プローブとハイブリダイズさせた結果を示すグラフである。アンチはアンチセンス鎖を表し、センスはセンス鎖を表す。
【図2】ヒト培養細胞由来のセンス鎖cDNAとセンス鎖RNAをGAPDH及びpRL−TKとハイブリダイズさせた結果を示すグラフである。
【図3】ラット肝臓細胞由来のセンス鎖cDNAを三次元と二次元マイクロアレイを用いて各種プローブとハイブリダイズさせた結果を示すグラフである。アンチはアンチセンス鎖を表し、センスはセンス鎖を表す。
【図4】TIG−1由来(A)とCOLO320DM由来(B)のセンス鎖cDNAを各種プローブとハイブリダイズさせた結果を示すマイクロアレイの概略図である。
【図5】TIG−1由来(A)とCOLO320DM由来(B)のセンス鎖cDNAを各種プローブとハイブリダイズさせたときの補正蛍光強度を示すグラフである。
【図6】TIG−1(A)とCOLO320DM(B)からRNAを抽出し、kineticRT−PCRを行い、電気泳動した結果を示す模式図である。
【出願人】 【識別番号】000000376
【氏名又は名称】オリンパス株式会社
【住所又は居所】東京都渋谷区幡ヶ谷2丁目43番2号
【出願日】 平成15年6月26日(2003.6.26)
【代理人】 【識別番号】100106909
【弁理士】
【氏名又は名称】棚井 澄雄

【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武

【識別番号】100101465
【弁理士】
【氏名又は名称】青山 正和

【識別番号】100094400
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 三義

【識別番号】100086379
【弁理士】
【氏名又は名称】高柴 忠夫

【識別番号】100118913
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 邦生

【公開番号】 特開2005−13095(P2005−13095A)
【公開日】 平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願番号】 特願2003−182646(P2003−182646)