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【発明の名称】 汚染物質分解菌の菌数測定方法
【発明者】 【氏名】西願寺 篤史
【住所又は居所】東京都港区海岸一丁目5番20号 東京瓦斯株式会社内

【氏名】小池 洋潤
【住所又は居所】東京都港区海岸一丁目5番20号 東京瓦斯株式会社内

【氏名】青山 勝博
【住所又は居所】東京都港区海岸一丁目5番20号 東京瓦斯株式会社内

【要約】 【課題】汚染された土壌等に存在する汚染物質分解菌の菌数を正確に測定する手段を提供する。

【解決手段】以下の工程を含む、汚染物質分解菌の菌数測定方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の工程を含む、汚染物質分解菌の菌数測定方法。
(1)環境から採取されたサンプルを段階的に希釈する工程
(2)一つの希釈段階について液体培地の入った複数の容器を用意し、容器内に希釈サンプルと安定同位体で標識された汚染物質を加え、各希釈段階のサンプルを培養する工程
(3)培養後、安定同位体を含む物質を測定し、それを基にサンプル中の汚染物質分解菌の存否を調べる工程
(4)汚染物質分解菌が存在すると判定されたサンプルの希釈段階及び個数から統計学的に元のサンプル中の汚染物質分解菌の菌数を推定する工程
【請求項2】
安定同位体が、13Cである請求項1記載の汚染物質分解菌の菌数測定方法。
【請求項3】
安定同位体を含む物質が、常温で気体の物質である請求項1又は2記載の汚染物質分解菌の菌数測定方法。
【請求項4】
安定同位体を含む物質が、13COである請求項3記載の汚染物質分解菌の菌数測定方法。
【請求項5】
工程(3)において、13COと共に12COも測定し、13CO12COの存在比からサンプル中の生物の存否を調べる請求項4記載の汚染物質分解菌の菌数測定方法。
【請求項6】
工程(2)において、容器内に希釈サンプルと安定同位体で標識された汚染物質を加えた後、容器を密封し、工程(3)において密封した容器の気相中の安定同位体を含む物質の量を測定する請求項3乃至5のいずれか一項記載の汚染物質分解菌の菌数測定方法。
【請求項7】
汚染物質が、芳香族化合物である請求項1乃至6のいずれか一項記載の汚染物質分解菌の菌数測定方法。
【請求項8】
芳香族化合物が、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン及びナフタレンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項7記載の汚染物質分解菌の菌数測定方法。
【請求項9】
汚染物質が、シアノ基を含む化合物である請求項1乃至6のいずれか一項記載の汚染物質分解菌の菌数測定方法。
【請求項10】
シアノ基を含む化合物が、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム及び金属シアノ錯体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である請求項9記載の汚染物質分解菌の菌数測定方法。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項記載の菌数測定方法で得られた結果に基づいて、汚染物質分解菌で環境を修復する手法を決定する方法。
【請求項12】
請求項11記載の方法で決定した手法で環境を修復する方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、バイオレメディエーション(生物修復)技術に関し、より詳細には、汚染物質分解菌の菌数の測定方法、汚染物質分解菌で環境を修復する手法を決定する方法、及び環境を修復する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
1760年代にイギリスで始まった産業革命以来、科学技術は飛躍的に進歩し、豊かで快適な生活を人類にもたらした。しかし、その一方で、科学技術により天然から抽出された物質あるいは人工的に製造された物質が環境に対して大きな負荷を与え、環境汚染や環境破壊の問題を引き起こしている。環境汚染や環境破壊は、生物の発育阻害、発病、死亡、悪質遺伝などをもたらしており、それは人類に悪影響を与えるばかりでなく、人類の滅亡にもつながりかねない。
【0003】
こういった危機的状況の下、近年、汚染された環境を浄化・修復しようという気運が高まり、種々の環境浄化・修復技術が開発されてきている。
【0004】
例えば、汚染土壌は、通常、焼却処理されている。焼却処理は短時間で処理できるという利点があるが、コストがかかり、また焼却後の埋め立て地の確保という問題が残る。生物を用いて汚染土壌を処理する方法(すなわち、バイオレメディエーション(生物修復法))もある。これには、例えば、現場の微生物の活力と増殖を高めて汚染物質の分解を促進させる方法(バイオスティミュレーション)と、汚染物質の分解に適した例えば、微生物を外部から新たに導入する方法(バイオオーギュメンテーション)がある。生物による汚染土壌の処理は、コストが低く、土壌として埋め戻しも可能である一方で、汚染土壌を浄化・修復できるかどうかが不確実であり、また、処理に時間を要するという欠点がある。また、この処理方法の採用にあたっては、例えば、現場の微生物を利用できるか、あるいは外部から新たに例えば、微生物を導入しなければならないかを判断する必要があり、この判断にも時間がかかる。このような不確実性および処理に時間がかかることがバイオレメディエーション技術を利用することの大きな妨げとなっている。
【0005】
以上のような問題を解決するため、本発明者らは、安定同位体で標識された化合物を利用して汚染物質分解菌を検出する方法を開発し、先に出願を行った(特許文献1)。しかし、この方法は、サンプル中に汚染物質分解菌が存在するかどうかは評価できるが、汚染物質分解菌の菌数までは評価できなかった。
【0006】
ところで、試料中の汚染物質分解菌の菌数を測定する際、MPN法がよく使われる(非特許文献1)。MPN法とは、複数の試験管(通常は5本)に培地と同一希釈度のサンプルを入れて培養し、菌が検出される試験管の数を求め、この検出試験を複数の希釈度のサンプルで行い、その結果得られる菌の検出パターンから統計学的にサンプル中の菌数を推定する方法である。菌の検出は、通常、培養液の濁り、色の変化、ガスの産生などを指標として行われている。菌の検出に誤りがあれば、算出される菌数の値も正しいものではなくなるので、本来、MPN法における菌の検出工程は非常に重要なものであるはずである。しかしながら、MPN法における菌の検出工程に着目し、その検出精度を高めようとする試みは従来ほとんどなされていなかった。
【0007】
【特許文献1】
特開2002−78499号公報
【0008】
【非特許文献1】
Carter,M.R.(Ed.), Soil Sample and Methods of Analysis, USA, Lewis Publishers, 1993, pp268−271
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上のような技術的背景の下になされたものであり、汚染された土壌等に存在する汚染物質分解菌の菌数を正確に測定する手段を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、MPN法において行われてきた菌検出法は非常に不正確なものであることを見出すとともに、それは、菌の有無を安定同位体等で標識された物質を利用して判断することにより解決できることを見出し、これらの知見に基づき、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の要旨は以下の通りである。
1.以下の工程を含む、汚染物質分解菌の菌数測定方法。
(1)環境から採取されたサンプルを段階的に希釈する工程
(2)一つの希釈段階について液体培地の入った複数の容器を用意し、容器内に希釈サンプルと安定同位体で標識された汚染物質を加え、各希釈段階のサンプルを培養する工程
(3)培養後、安定同位体を含む物質を測定し、それを基にサンプル中の汚染物質分解菌の存否を調べる工程
(4)汚染物質分解菌が存在すると判定されたサンプルの希釈段階及び個数から統計学的に元のサンプル中の汚染物質分解菌の菌数を推定する工程
2.安定同位体が、13Cである1記載の汚染物質分解菌の菌数測定方法。
3.安定同位体を含む物質が、常温で気体の物質である1又は2記載の汚染物質分解菌の菌数測定方法。
4.安定同位体を含む物質が、13COである3記載の汚染物質分解菌の菌数測定方法。
5.工程(3)において、13COと共に12COも測定し、13CO12COの存在比からサンプル中の生物の存否を調べる4記載の汚染物質分解菌の菌数測定方法。
6.工程(2)において、容器内に希釈サンプルと安定同位体で標識された汚染物質を加えた後、容器を密封し、工程(3)において密封した容器の気相中の安定同位体を含む物質の量を測定する3乃至5のいずれか一つに記載の汚染物質分解菌の菌数測定方法。
7.汚染物質が、芳香族化合物である1乃至6のいずれか一つに記載の汚染物質分解菌の菌数測定方法。
8.芳香族化合物が、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン及びナフタレンからなる群より選択される少なくとも1種の化合物である7記載の汚染物質分解菌の菌数測定方法。
9.汚染物質が、シアノ基を含む化合物である1乃至6のいずれか一つに記載の汚染物質分解菌の菌数測定方法。
10.シアノ基を含む化合物が、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム及び金属シアノ錯体からなる群より選択される少なくとも1種の化合物である9記載の汚染物質分解菌の菌数測定方法。
11.1乃至10のいずれか一つに記載の菌数測定方法で得られた結果に基づいて、汚染物質分解菌で環境を修復する手法を決定する方法。
12.11記載の方法で決定した手法で環境を修復する方法。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明の汚染物質分解菌の菌数測定方法は、以下の(1)〜(4)の工程を含むものである。
【0014】
工程(1)では、環境から採取されたサンプルを段階的に希釈する。
【0015】
「環境」とは、生物をとりまき、それと相互作用を及ぼし合う外界をいい、大気、土壌、地下水、河川、海洋、湖沼、池などを例示することができる。また、環境から採取するサンプルとしては、大気、土壌、地下水、河川、海洋、湖沼、池などの一部を例示することができる。
【0016】
段階的な希釈は、一般的なMPN法と同様に行うことができる。希釈倍率は通常10倍であり、この倍率で通常3段階以上、好ましくは5段階以上の希釈サンプルを調製する。
【0017】
工程(2)では、一つの希釈段階について液体培地の入った複数の容器を用意し、容器内に希釈サンプルと安定同位体で標識された汚染物質を加え、各希釈段階のサンプルを培養する。
【0018】
液体培地は、培地中に汚染物質が添加されれば速やかに汚染物質分解菌が増殖できるようなものを使用する。このような液体培地としては、1リットル中に、1.0gの(NHSO 、0.083gのKHPO 、0.167gのNaHPO 、0.083gのMgSO・7HO、0.083gのCaCl・2HO 、1.67mgのクエン酸第二鉄を含む培地などを例示できる。
【0019】
容器は、一般的なMPN法に使用されるものと同様のものを使用することができるが、密封可能な容器を使用することが好ましい。ここで、「密封」とは、隙間のないように堅く封をすることをいい、外部との遮断の程度は特に限定されない。例えば、密封した容器は、外部と物質の流入・流出が全くない状態であってもよいし、通気や脱気等の気体の流通、水、栄養源、電子受容体、電子供与体、微量元素等の添加などが可能な状態であってもよい。
【0020】
用意する容器の数は特に限定されないが、通常5個である。
【0021】
「安定同位体で標識されている」とは、化合物中の少なくとも1つの特定の位置の原子の少なくとも1個が安定同位体で置換されていることにより、化合物中の特定の位置の安定同位体の存在比が天然存在比より高くなっていることをいう。化合物を標識する安定同位体は、1種類であっても複数種であってもよい。安定同位体としては、13C、15N、18O、H(D)などを例示することができる。
【0022】
「汚染物質」とは、大気、土壌、地下水、河川、海洋、湖沼、池などの地球環境を汚すあらゆる物質を意味し、ガソリン、ディーゼル燃料、燃料油、精油所汚泥等の石油系炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン等の芳香族系化合物、ナフタレン、フェナントレン、ピレン、ベンゾピレン等の多環芳香系化合物、イソプロパノール、メタノール、エタノール、エチレングリコール、t−ブタノール等のアルコール、アセトン、エチルメチルケトン等のケトン、クロロフェノール、PCP等のフェノール、PCB、フタル酸、塩化メチレン、エチレンジクロライド等の有機塩素溶剤、シアン化ナトリウム、シアン化カリウム等のシアン化水素酸塩、鉄やニッケル等の金属シアノ錯体、ニトリル類等のシアノ基を含む化合物、チラウム、シマジン、チオベンカルブ等の殺菌剤または除草剤などの有機化合物、鉛、六価クロム、水銀、セレン、砒素、カドミウム、銅等の金属などの無機化合物、炭水化物、界面活性剤などを例示することができる。
【0023】
「培養」とは、生物の発育・増殖のために環境条件(温度、湿度、水分量、酸素の供給量など)を一定に保つことをいい、例えば、周囲温度(例えば、室温)で放置することも含む。本発明の方法において、培養時間は、任意に設定することができるが、例えば、4〜30日、好ましくは、7〜14日とするとよい。サンプルの培養は、サンプル中の生物を培養して、発育・増殖させる目的で行う。
【0024】
工程(3)では、培養後、安定同位体を含む物質を測定し、それを基にサンプル中の汚染物質分解菌の存否を調べる。
【0025】
測定対象とする安定同位体を含む物質は、通常、安定同位体で標識された汚染物質の分解物であるが、安定同位体で標識された汚染物質そのものを測定対象としてもよい。なお、分解物には、最終代謝産物、中間代謝産物などが含まれる。安定同位体で標識された汚染物質の分解物としては、13CO1515NO、15O、15NO、C182、18O 、N18O、 N1818H(D)などを例示できる。安定同位体を含む物質は、常温で固体、液体、気体のいずれであってもよい。
【0026】
安定同位体を含む物質の測定は、その性状に応じて行うことができ、例えば、安定同位体を含む物質が気体の場合は、容器内に希釈サンプルと安定同位体で標識された汚染物質を加えた後、容器を密封し、その後、密封した容器の気相中の安定同位体を含む物質を測定すればよい。また、安定同位体を含む物質が気体以外の場合は、サンプルを適当な溶媒で抽出し、得られる抽出液中の安定同位体を含む物質を測定すればよい。ここで使用する溶媒としては、メタノール、ノルマルヘキサン、エタノール、ジクロロメタン、メチルエチルケトン、クロロホルム、トルエン、四塩化炭素、アセトン、水などを例示できる。
【0027】
安定同位体を含む物質の測定方法としては、ガスクロマトグラフ−質量分析法(GC−MS)、NMR、液体クロマトグラフ−質量分析法(LC−MS)、質量分析法、赤外分光法、近赤外分光法などを例示できる。
【0028】
安定同位体を含む物質の測定値からサンプル中に汚染物質分解菌が存在するかどうかを判定することができる。例えば、安定同位体を含む物質が汚染物質の分解物(例えば、二酸化炭素)である場合、サンプルの培養後、安定同位体を含む物質が顕著に増大していれば、そのサンプルには汚染物質分解菌が存在していると判定できる。また、安定同位体を含む物質が汚染物質そのもの(例えば、ベンゼン)である場合、サンプルの培養後、安定同位体を含む物質が顕著に減少していれば、そのサンプルには汚染物質分解菌が存在していると判定できる。また、単純に安定同位体を含む物質の増減をみるのではなく、安定同位体を含む物質と安定同位体を含まない同一物質の存在比(例えば、13CO12COの存在比)に基づいて、汚染物質分解菌の存否を判定してもよい。
【0029】
汚染物質分解菌における「菌」とは、主に細菌やカビを意味するが、これらに限定されるわけではなく、酵母、藻類、原生動物、リケッチア、ウイルスなども含む。また、汚染物質分解菌における「分解」とは、汚染物質をなんらかの作用により別の物質に変えることをいい、これには、資化、代謝、共代謝、異化、同化などが含まれる。また、汚染物質が金属の場合は、還元などにより、無害化することも含まれる。
【0030】
工程(4)では、汚染物質分解菌が存在すると判定されたサンプルの希釈段階及び個数から統計学的に元のサンプル中の汚染物質分解菌の菌数を推定する。
【0031】
汚染物質分解菌の菌数の推定は、一般的なMPN法と同様に行うことができ、例えば、当業者によく知られた文献(例えば、「土壌環境分析法」、土壌環境分析法委員会編、博友社、161−164頁)の記載に従って行うことができる。
【0032】
本発明の汚染物質分解菌の菌数測定方法により、環境中にどのくらいの数の汚染物質分解菌が存在するのかを推定することが可能になる。この結果に基づいて、化合物で汚染された環境を生物で修復する方法を決定することができる。例えば、汚染物質分解菌が多数存在する場合には、この土着の分解菌を利用して汚染環境を修復する手法(バイオスティミュレーション)を選択し、汚染物質分解菌が少ない場合には、外部からその化合物の分解に適した微生物を補給して汚染土壌を修復する手法(バイオオーギュメンテーション)を選択するとよい。
【0033】
【実施例】
以下、本発明を実施例及び比較例により具体的に説明する。なお、これらの実施例等は、本発明を説明するためのものであって、本発明の範囲を限定するものではない。
【0034】
公知のMPN法は複数の試験管(通常は5本)に同一希釈度のサンプルと培地を入れて培養し、菌が検出される試験管の数を求め、この検出試験を複数の希釈度(最低3段階)において行い、その結果得られる菌の検出パターンから統計学的にサンプル中の菌数を計数する方法である。
【0035】
ここで菌の検出について公知の方法(比較例1、2)と本願に開示する方法(実施例1、2)で行なった結果を以下に示す。
【0036】
〔比較例1〕
無機液体培地(1リットル中に、1.0gの(NHSO 、0.083gのKHPO 、0.167gのNaHPO 、0.083gのMgSO・7HO 、0.083gのCaCl・2HO 、1.67mgのクエン酸第二鉄を含む培地)の入ったバイアルに、ベンゼン等で汚染された地下水の測定対象井戸から採取された井戸水を100μl接種し、更にベンゼン0.879mgを添加した。バイアルを密封し、20℃で1週間振盪培養を行った。図1の右のバイアルが本比較例のバイアルである。図に示すようにバイアル中の培養液には濁りが観察され、公知のMPN法における菌の存否判定では本バイアル中にベンゼン分解菌が存在する、と判定される。
【0037】
しかし、比較例1のバイアルの気相において、ガスクロマトグラフを用いて振盪培養実施前と実施後についてベンゼン濃度を測定したところ、図2のAに示すとおり変化が見られなかった。このことから本バイアル中にはベンゼン分解菌が存在しないことが解り、公知のMPN法における菌の存否判定では菌の存否を見誤るケースがあることが解る。
【0038】
〔比較例2〕
比較例1で用いたものと同じ無機液体培地の入ったバイアルに、比較例1とは別の測定対象井戸から採取された井戸水を100μl接種し、更にベンゼン0.879mgを添加した。バイアルを密封し、20℃で1週間振盪培養を行った。図1の左のバイアルが本比較例のバイアルである。図に示すようにバイアル中の培養液には濁りは観察されず、公知のMPN法における菌の存否判定では本バイアル中にベンゼン分解菌が存在しない、と判定される。
【0039】
しかし、比較例2のバイアルの気相において、ガスクロマトグラフを用いて振盪培養実施前と実施後についてベンゼン濃度を測定したところ、図2のBに示すとおりベンゼン濃度は減少していた。この事から、本バイアル中にはベンゼン分解菌が存在することが解り、公知のMPN法における菌の存否判定では菌の存否を見誤るケースがあることが解る。
【0040】
〔実施例1〕
比較例1で用いたものと同じ無機液体培地の入ったバイアルに、比較例1における測定対象井戸から採取された井戸水を100μl接種し、更に13Cで標識されたベンゼン0.879mgを添加した。バイアルを密封し、20℃で1週間振盪培養を行った。1週間後のバイアル中の培養液には比較例1同様濁りが観察された。
【0041】
ここでバイアルの気相中のCOについて13CO12COの比(13COCO×100で定義される)を検討すると、天然存在比では1.1となるところであるが、本発明ではあらかじめバイアル中に13Cで標識されたベンゼンを添加しているため、バイアル中にベンゼン分解菌が存在すれば13Cで標識されたベンゼンをベンゼン分解菌が代謝する事で13COが発生し、その結果バイアル中の気相における13CO12COの比が天然存在比とは異なった値(13CO12COとすれば天然存在比より大きくなる)になるところである。
【0042】
しかし、本実施例のバイアルから気相を採取し、GC−MSにより13CO12COを測定し両者の比を求めたところ1.1であり、本実施例では13CO12COの比が天然存在比と変わらなかったことから13Cで標識されたベンゼン由来の13COの発生はなく、このことからベンゼンを代謝するベンゼン分解菌が存在していなかったことがわかり、公知のMPN法における菌の存否判定で培養液が濁ったことから判断を誤るところ、気相中のベンゼンを直接測定する方法と同様に本発明では菌の存否を確実に検出できることが解る。
【0043】
〔実施例2〕
比較例1で用いたものと同じ無機液体培地の入ったバイアルに、比較例2と同じ測定対象井戸から採取された井戸水を100μl接種し、更に13Cで標識されたベンゼン0.879mgを添加した。バイアルを密封し、20℃で1週間振盪培養を行った。比較例2同様バイアル中の培養液には濁りは観察されなかった。
【0044】
本実施例のバイアルから気相を採取し、GC−MSにより13CO12COを測定し両者の比を求めたところ250であった。天然存在比(=1.1)より大きくなっていることからバイアル中にベンゼン分解菌が存在する事が解り、公知のMPN法における菌の存否判定で培養液が澄んでいたことから判断を誤るところ、気相中のベンゼンを直接測定する方法と同様に本発明では菌の存否を確実に検出できた。
【0045】
実施例1、2より、本発明の汚染物質分解菌の菌数判定方法により、各菌検出試験において正確に菌の有無を判定し、これをもとにした統計処理によって環境中にどれぐらいの数の汚染物質分解菌が存在するかを確度よく計数することができた。
【0046】
〔実施例3〕
比較例1で用いたものと同じ無機液体培地の入ったバイアルに、比較例2と同じ測定対象井戸から採取された井戸水を100μl接種し、更に13Cで標識されたベンゼン0.879mgを添加した。バイアルを密封し、20℃で4日間振盪培養を行った。本バイアルから適宜気相を採取し、GC−MSによりベンゼン、13CO12COを測定した。測定結果を図3に示す。13COの量は振盪開始後1日で初期値の100倍に達した。一方ベンゼンや12COの量の変化を確認するには4日間を要する結果となった。
【0047】
このことより、測定対象中のベンゼン分解菌の存否を早く判断するためには気相中のベンゼン濃度を直接測定するより、本発明で開示している13C標識ベンゼンを系に加えた上で13C標識ベンゼン由来の13COの変化量を観察する方法が優位であるといえる。
【0048】
【発明の効果】
本発明の菌数測定方法によれば、汚染物質分解菌の菌数を正確に測定することができる。従って、この方法を利用すれば、生物による汚染環境の浄化・修復を効率的かつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】サンプルを培養した後のバイアルの写真。
【図2】培養前及び培養後の気相中のベンゼン濃度を示す図。
【図3】サンプルの培養期間とバイアル気相中のベンゼン、13CO12COの関係を示す図。
【出願人】 【識別番号】000220262
【氏名又は名称】東京瓦斯株式会社
【住所又は居所】東京都港区海岸1丁目5番20号
【出願日】 平成15年6月18日(2003.6.18)
【代理人】 【識別番号】100107870
【弁理士】
【氏名又は名称】野村 健一

【識別番号】100098121
【弁理士】
【氏名又は名称】間山 世津子

【公開番号】 特開2005−6541(P2005−6541A)
【公開日】 平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願番号】 特願2003−173352(P2003−173352)