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【発明の名称】 ゲノムのメチル化の検出方法
【発明者】 【氏名】奥泉 久人

【要約】 【課題】効率的かつ安価にゲノムDNAのメチル化を検出する方法を提供することを課題とする。

【解決手段】RLGS法において、一次元目電気泳動以前の第2回目の制限酵素処理において、4塩基または5塩基を認識する制限酵素であって、認識配列及び/またはその近傍の塩基のメチル化によりDNA消化反応が阻害される制限酵素でゲノムDNAを切断することにより、ゲノムのメチル化を多数検出することに成功した。このように高頻度切断のメチル化感受性制限酵素を使用することによって、効率的かつ安価にゲノムのメチル化の検出を行うことが可能となる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次元電気泳動によるゲノムのメチル化の検出方法であって、
(a)第1の制限酵素によりゲノムDNAを切断する工程、
(b)ゲノムDNAの切断末端を標識する工程、
(c)第2の制限酵素でゲノムDNAを切断する工程、
(d)ゲノムDNA断片を一次元電気泳動により分画する工程、
(e)第3の制限酵素によりゲノムDNA断片を切断する工程、
(f)ゲノムDNA断片のバンド群を二次元電気泳動により分画する工程
を、順次行うことを含み、第1の制限酵素および/または第2の制限酵素が下記(i)または(ii)である方法。
(i)連続する4塩基を認識する制限酵素であって、認識配列及び/またはその近傍の塩基のメチル化によりDNA消化反応が阻害される制限酵素
(ii)連続する5塩基を認識する制限酵素であって、認識配列及び/またはその近傍の塩基のメチル化によりDNA消化反応が阻害される制限酵素
【請求項2】
二次元電気泳動によるゲノムのメチル化の検出方法であって、
(a)第1の制限酵素によりゲノムDNAを切断する工程、
(b)ゲノムDNAの切断末端を標識する工程、
(c)ゲノムDNA断片を一次元電気泳動により分画する工程、
(d)第2の制限酵素によりゲノムDNA断片を切断する工程、
(e)ゲノムDNA断片のバンド群を二次元電気泳動により分画する工程
を、順次行うことを含み、第1の制限酵素が下記(i)または(ii)である方法。
(i)連続する4塩基を認識する制限酵素であって、認識配列及び/またはその近傍の塩基のメチル化によりDNA消化反応が阻害される制限酵素
(ii)連続する5塩基を認識する制限酵素であって、認識配列及び/またはその近傍の塩基のメチル化によりDNA消化反応が阻害される制限酵素
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、ゲノムDNAのメチル化を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、二次元電気泳動を用いた高等生物のゲノムDNAのスキャニング法(制限酵素ランドマークゲノムスキャニング:RLGS法; Hatada I et al, Proc Natl Acad Sci U S A. 88, 9523-9527, 1991.、 特許第2794047号公報)においては、第1の制限酵素として切断頻度の低い、8塩基ないし6塩基認識の制限酵素が用いられてきた。これに続く工程では、順次切断頻度の高い制限酵素を用いて、DNA断片が順次短くなるように実験が行われており、一次元目の電気泳動による分画以前に、4塩基を認識する制限酵素を単独で反応させる例はなかった。これは、末端標識されてランドマークとなるDNA断片が膨大な数になり、しかもそれぞれのDNA断片長が極端に短くなると当然考えられてきたためである。したがって、従来のRLGS法における工程の中で、4塩基認識制限酵素を単独で反応に用いるのは、一次元目電気泳動後の工程に限られていた。かかる技術的制約から、RLGS法を利用したゲノムのメチル化の検出においても、これまでは、次の2通りの方法が採用されてきた。
【0003】
1つは、第1の制限酵素としてNotIなどの8塩基認識でかつメチル化感受性の制限酵素を用いて、複数の供試材料間におけるRLGSパターンの違いの中からメチル化の影響を受けたスポットを検出する方法である(Hayashizaki Y et al, Nat Genet. 6, 33-40, 1994.)。
【0004】
他の1つは、メチル化感受性の4塩基認識の制限酵素を第3の制限酵素として、一次元目電気泳動の後に用いる方法である。
【0005】
しかし、後者の方法においては、4塩基認識の制限酵素の価格は非常に高額であるにもかかわらず、第3の制限酵素として用いる場合には、1回の実験で多くのユニット数を用いる必要があり、多大なコストを必要とすることが大きな問題点となった。このため、この方法によって4塩基認識制限酵素サイトのゲノムのメチル化を検出する試みはほとんど行われていないのが現状である。
【0006】
【特許文献1】特許第2794047号
【特許文献2】特開2000-229000号
【特許文献3】特開2002-350401号
【非特許文献1】Uhlmann K et al,Electrophoresis 1999 Jun;20(8):1748-55
【非特許文献2】Mullaart E et al, Genomics. 1995 Oct 10;29(3):641-6
【非特許文献3】Uitterlinden AG et al, Proc Natl Acad Sci U S A. 1989 Apr;86(8):2742-6
【非特許文献4】Hatada I et al, Proc Natl Acad Sci U S A. 1991 Nov 1;88(21):9523-7
【非特許文献5】Hayashizaki Y et al, Nat Genet. 1994 Jan;6(1):33-40
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、RLGS法の原理に基づくゲノムスキャニングにおいて、ゲノムのメチル化を効率的かつ安価に検出する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った結果、これまで当然避けられてきた制限酵素の使用方法をあえて採用したところ、意外にも、ゲノムのメチル化の検出を効率的に実施することが可能であることを見出した。
【0009】
従来ゲノムDNAのスキャニング法(RLGS法;Hatada I et al, Proc Natl Acad Sci U S A. 88, 9523-9527, 1991.、特許第2794047号公報)において通常3回の制限酵素処理を行う工程の中で、まずDNAの切断頻度が低い制限酵素から用い、順次切断頻度が高い制限酵素を用いることが常識となっており、高い切断頻度を持つ制限酵素(例えば、4塩基認識する制限酵素)を、一次元目電気泳動以前に用いることは理論的にも考えられておらず、現実にもそのような実験は行われてこなかった。しかし、本発明者は、高い切断頻度を持つ制限酵素を一次元目電気泳動以前に用いても、ゲノムのメチル化の検出を有効に行うことができることを見出した。
【0010】
すなわち、RLGS法において、一次元目電気泳動以前の、第2回目の制限酵素処理において、切断頻度の高い制限酵素であって、認識配列及び/またはその近傍の塩基のメチル化によりDNA消化反応が阻害される制限酵素でゲノムDNAを切断すると、ゲノムDNA中にメチル化が存在している場合、該制限酵素による消化が阻害され、切断頻度が低くなる。その結果、メチル化のない状態のゲノムDNAをこの制限酵素で消化した場合より、産生されるDNA断片長が長くなると供に、制限酵素反応によって産生されるDNA断片数も減少する。ゲノムの座位単位でのゲノムのメチル化の頻度は、これまで不明であったが、本発明者により初めて植物におけるゲノムワイドなDNAのメチル化の解析が試みられ、この頻度が20〜30%であることが判明した。RLGS法では、通常、数百〜数千のスポットとして、1次元電気泳動で0.4〜23kbのDNAフラグメント、2次元電気泳動で0〜1600bpのDNAフラグメントの分画を行うが、このメチル化の頻度が、制限酵素処理後の適度なDNA断片数の減少をもたらし、これにより一次元目電気泳動以前の制限酵素処理において切断頻度の高い制限酵素を用いた場合でも、RLGS法に適したDNA断片数となり、効率的にゲノムのメチル化を検出することが可能となったものと考えられる。
【0011】
また、このように一次元目電気泳動以前の制限酵素処理において切断頻度の高い制限酵素を用いることが可能となった結果、一回の実験で必要な制限酵素のうち、高額なメチル化感受性制限酵素の使用量を減少させることができ、ゲノムのメチル化の検出において、従来よりも、大幅にコストの削減を図ることが可能となった。
【0012】
即ち、本発明は、ゲノムのメチル化の検出を効率的かつ安価に実施する方法を提供するものであり、より詳しくは、下記(1)および(2)に記載の発明を提供するものである。
【0013】
(1)二次元電気泳動法によるゲノムのメチル化の検出方法であって、
(a)第1の制限酵素によりゲノムDNAを切断する工程、
(b)ゲノムDNAの切断末端を標識する工程、
(c)第2の制限酵素でゲノムDNAを切断する工程、
(d)ゲノムDNA断片を一次元電気泳動により分画する工程、
(e)第3の制限酵素によりゲノムDNA断片を切断する工程、
(f)ゲノムDNA断片のバンド群を二次元電気泳動により分画する工程
を、順次行うことを含み、第1の制限酵素および/または第2の制限酵素が下記(i)または(ii)である方法。
(i) 連続する4塩基を認識する制限酵素であって、認識配列及び/またはその近傍の塩基のメチル化によりDNA消化反応が阻害される制限酵素
(ii) 連続する5塩基を認識する制限酵素であって、認識配列及び/またはその近傍の塩基のメチル化によりDNA消化反応が阻害される制限酵素
(2)二次元電気泳動法によるゲノムのメチル化の検出法であって、
(a)第1の制限酵素によりゲノムDNAを切断する工程、
(b)ゲノムDNAの切断末端を標識する工程、
(c)ゲノムDNA断片を一次元電気泳動により分画する工程、
(d)第2の制限酵素によりゲノムDNA断片を切断する工程、
(e)ゲノムDNA断片のバンド群を二次元電気泳動により分画する工程
を、順次行うことを含み、第1の制限酵素が下記(i)または(ii)である方法。
(i) 連続する4塩基を認識する制限酵素であって、認識配列及び/またはその近傍の塩基のメチル化によりDNA消化反応が阻害される制限酵素
(ii) 連続する5塩基を認識する制限酵素であって、認識配列及び/またはその近傍の塩基のメチル化によりDNA消化反応が阻害される制限酵素
【発明の効果】
【0014】
多くの植物ゲノムは、メチル化による修飾を受けており、メチル化状態の変化によって、多くの表現型が影響を受けている。メチル化が遺伝子の発現や遺伝子産物の機能にどのように影響を及ぼすかを理解することは重要である。しかしながら、これまでゲノム全体におけるメチル化座位を個々に検出することは困難であった。
【0015】
本発明により、RLGS法を利用したゲノムのメチル化の検出において、一次元目の電気泳動前に認識する塩基数の少ないメチル化感受性制限酵素を用いた場合でも、効率的にゲノムのメチル化を検出しうることが見出された。また、本発明のゲノムのメチル化の検出法では、高価なメチル化感受性制限酵素の一回の実験当たりの使用量を減少させることができるため、多数のゲノムのメチル化を安価に検出できるという大きな利点を有する。
【0016】
また、本発明の方法において、メチル化感受性に特色のあるイソシゾマ−制限酵素を用いて実験結果を比較すれば、1個体のサンプルを用いてゲノムのメチル化を多数特定することができる。本発明の方法で検出されるスポット位置のゲルには、メチル化されたDNA断片が含まれているため、これを抽出して解析することにより、例えば、植物の成長や開花、生殖に大きな影響を与える遺伝子の同定やクローニングができ、さらにはエピジェネティックな遺伝子調節メカニズムの研究を促進するための基盤情報を提供することもできよう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明は、二次元電気泳動法によるゲノムのメチル化の検出法を提供する。このようなゲノムDNA断片の検出は、例えば、RLGS法により同定することができる。RLGS法は、下記(a)から(f)の工程を、順次行うことによってゲノムDNA断片を分画してゲノムのメチル化を検出する方法である。
(a) 第1の制限酵素によりゲノムDNAを切断する工程
(b) ゲノムDNAの切断末端を標識する工程
(c) 第2の制限酵素でゲノムDNAを切断する工程
(d) ゲノムDNA断片を一次元電気泳動により分画する工程
(e) 第3の制限酵素によりゲノムDNA断片を切断する工程
(f) ゲノムDNA断片のバンド群を二次元電気泳動により分画する工程
【0018】
RLGS法の各工程については、公報(特許第2794047号公報)の記載の準じて実施することができる。
【0019】
本発明のゲノムのメチル化の検出においては、第1の制限酵素および/または第2の制限酵素として、4塩基を認識する制限酵素であって、認識配列及び/またはその近傍の塩基のメチル化によりDNA消化反応が阻害される制限酵素を用い、ゲノムDNAの切断を行う。好ましくは、上記4塩基を認識する制限酵素は第2の制限酵素である。このような制限酵素としては、例えば4塩基配列(CCGG)を認識して切断するが、メチル化されたCを含むCCGG配列は切断しないHpaIIを用いることが効果的である。HpaII以外では、例えば表1左に示した制限酵素を使用することができるが、これらに制限されるものではない。
【0020】
【表1】


【0021】
上記第1の制限酵素または第2の制限酵素として4塩基認識制限酵素以外では、認識配列の塩基数が5塩基であって、認識配列及び/またはその近傍の塩基のメチル化によりDNA消化反応が阻害される制限酵素を用いることができる。この制限酵素としては、例えば、表1右に示した制限酵素を使用することができるが、これらに制限されない。
【0022】
本発明においては、一次元電気泳動前の制限酵素処理の工程を一つ省略し、下記(a)から(e)の工程を、順次行うことによってゲノムDNA断片を分画してゲノムのメチル化を検出することも可能である。
(a) 第1の制限酵素によりゲノムDNAを切断する工程
(b) ゲノムDNAの切断末端を標識する工程
(c) ゲノムDNA断片を一次元電気泳動により分画する工程
(d) 第2の制限酵素によりゲノムDNA断片を切断する工程
(e) ゲノムDNA断片のバンド群を二次元電気泳動により分画する工程
【0023】
この場合、第1の制限酵素として、メチル化によりDNA消化反応が阻害される、上記の制限酵素を用いる。
【0024】
さらにまた、以上に述べた実施形態のそれぞれについて、公報(特開2000-229000号公報、特開2002-350401号公報)の記載の準じ、一次元電気泳動前の工程においてDNA断片にアダプターを接続し、そのアダプターに放射標識を行う工程を付加したり、接続したアダプターの塩基配列に相補的なプライマーを利用してDNA断片を増幅する工程を付加することも可能である。
【実施例】
【0025】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に制限されるものではない。
【0026】
[実施例1] 植物(シロイヌナズナ)のゲノムのメチル化の検出(その1)
(1) 試料の調製
シロイヌナズナの植物体の粉砕物0.1gに臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)緩衝液〔1%CTAB、0.05g/lプロテイナーゼK、0.05M EDTA(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム)、10mg SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、10mg PVPP(ポリビニルポリピロリドン)、1.4M 塩化ナトリウム、0.1% β-メルカプトエタノール、0.05M トリス−塩酸 pH8.0〕0.5mlを添加して、56℃で30分間保温した。つぎにPCI処理として、0.5mlのPCI(0.25mlフェノール、0.24mlクロロホルム、0.01mlイソアミルアルコール)を添加して、20分間振揺混合した。さらにCIA処理として、15,000rpm、10℃で10分間遠心分離した後、1mlのCIA(0.96mlクロロホルム、0.04mlイソアミルアルコール)を添加して10分間振揺混合した。15,000rpm、10℃で10分間遠心分離した後、イソプロパノール沈澱によりゲノムDNAを濃縮洗浄して乾燥し、0.2g/lになるようにRNaseA(リボ核酸分解酵素A)緩衝液(7g/l RNaseA、10mM トリス−塩酸pH7.9、50mM 塩化ナトリウム 10mM 塩化マグネシウム、1mM ジチオスレイトール)に溶解して、37℃で2時間保温した。そして、該PCI処理、該CIA処理を行い、10℃で10分間遠心分離した後、エタノール沈殿を行いDNAを乾燥させた。
【0027】
(2) ゲノムDNAを DNAポリメラーゼにより修復する工程
上記工程により得られたゲノムDNA 0.1μg をDNAポリメラーゼ反応液(0.5ユニット DNAポリメラーゼ、0.4μM dNTP、0.1mM ジチオスレイトール、50mM トリス−塩酸pH7.8、10mM 塩化マグネシウム)2.5μlに溶解し、37℃で20分間反応させた。その後65℃で60分間反応させて反応を終了させた。
【0028】
(3) 第1の制限酵素(EagI)によりゲノムDNAを切断する工程
上記工程により得られたゲノムDNA 0.1μgにEagI反応液(10ユニットEagI、100mM トリス−塩酸pH7.9、200mM 塩化ナトリウム 20mM 塩化マグネシウム、2mM ジチオスレイトール)を2.5μl添加し、37℃で2時間反応させた。
【0029】
(4) ゲノムDNAの切断末端を標識する工程
上記工程により得られたゲノムDNA の溶液に0.5μl [α-32P]dGTP (10mCi/ml)、0.5μl [α-32P]dCTP (10mCi/ml)、及び標識用緩衝液(0.5ユニット DNAポリメラーゼ、1mM ジチオスレイトール)を4μl添加し、37℃で30分間反応させた後、65℃で60分間反応させて反応を終了させた。
【0030】
(5) 第2の制限酵素(HpaII)によりゲノムDNA断片を切断する工程
上記工程により得られたゲノムDNA 溶液にHpaII緩衝液(20ユニットHpaII、10mM トリス−塩酸pH7.9、50mM 塩化ナトリウム 10mM 塩化マグネシウム、1mM ジチオスレイトール)を10μl添加し、37℃で1時間反応させた。
【0031】
(6) ゲノムDNA断片を一次元電気泳動により分画する工程
0.8%アガロースゲル(直径2.5mm、長さ60cm)のキャピラリーの上端ウェル部(直径2.5mm、深さ1cm)に、上記工程により得られたゲノムDNAを0.1μg添加後、230Vの電圧で24時間泳動した。アガロースは1D緩衝液(0.1M トリスアセテート pH8.0、40mM ソディウムアセテート 3mM EDTA, 36mM 塩化ナトリウム)に溶解して調製した。なお、電気泳動用緩衝液として、1D緩衝液を使用した。
【0032】
(7) HindIIIによりゲノムDNA断片を切断する工程
上記工程により得られたゲノムDNAのバンド群を有するゲルを、下記の反応液組成に浸し、37℃で2時間反応させた。すなわち1500ユニットのHindIIIを含むHindIII緩衝液(10mM トリス−塩酸pH7.5、50mM 塩化ナトリウム 10mM 塩化マグネシウム、1mM ジチオスレイトール)に浸した。
【0033】
(8) ゲノムDNA断片のバンド群を二次元電気泳動により分画する工程
上記工程を経た泳動済ゲルを、2D緩衝液で2回洗浄し、2枚のガラス板で挟み作成された5%ポリアクリルアミドゲル(46cm幅×43cm高×1mm厚)の上にアガロースゲルの泳動方向とポリアクリルアミドゲルの上端縁とが平行になるように載置した。これらゲルの間隙を接続用0.8%アガロースゲルで満たして固化させ、アガロースゲルとポリアクリルアミドゲルとを接続した。150Vの電圧で24時間泳動した。
【0034】
電気泳動用緩衝液としては、2D緩衝液(0.05M Tris-塩酸pH7.5、0.062M ホウ酸、1mM EDTA)を使用した。5%ポリアクリルアミドゲルは、アクリルアミド:ビスアクリルアミドを29:1の割合で混合し、2D緩衝液に溶解し、0.07%過硫酸アンモニウム、0.027%N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンを添加してゲル化させた。接続用0.8%アガロースゲルは、2D緩衝液に溶解して調整した。
【0035】
(9) 泳動終了後、泳動済のゲル(アガロースゲルとポリアクリルアミドゲルとが接続したもの)を、瀘紙(商品名:3MM、ワァットマン社製)に密着乾燥させた。この乾燥ゲルをイメージングプレート(商品名BAS2000、富士フィルム社製)に密着させ、1日間暗室中で静置した。
【0036】
この感光したイメージングプレートのオートラジオグラムを図1に示す。
【0037】
また、上記実施例1の工程(5)において、HpaIIの代わりにMspIを第2の制限酵素として用いてゲノムDNAを切断し、その他の工程(1)〜(4)および(6)〜(9)はまったく同じ操作の実験を行った結果の二次元電気泳動パターンを図2に示す。
【0038】
[実施例2] 植物(シロイヌナズナ)のゲノムのメチル化の検出(その2)
(1) 試料の調製
シロイヌナズナの植物体の粉砕物0.1gに臭化セチルトリメチルアンモニウム(CTAB)緩衝液〔1%CTAB、0.05g/lプロテイナーゼK、0.05M EDTA(エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム)、10mg SDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、10mg PVPP(ポリビニルポリピロリドン)、1.4M 塩化ナトリウム、0.1% β-メルカプトエタノール、0.05M トリス−塩酸 pH8.0〕0.5mlを添加して、56℃で30分間保温した。つぎにPCI処理として、0.5mlのPCI(0.25mlフェノール、0.24mlクロロホルム、0.01mlイソアミルアルコール)を添加して、20分間振揺混合した。さらにCIA処理として、15,000rpm、10℃で10分間遠心分離した後、1mlのCIA(0.96mlクロロホルム、0.04mlイソアミルアルコール)を添加して10分間振揺混合した。15,000rpm、10℃で10分間遠心分離した後、イソプロパノール沈澱によりゲノムDNAを濃縮洗浄して乾燥し、0.2g/lになるようにRNaseA(リボ核酸分解酵素A)緩衝液(7g/l RNaseA、10mM トリス−塩酸pH7.9、50mM 塩化ナトリウム 10mM 塩化マグネシウム、1mM ジチオスレイトール)に溶解して、37℃で2時間保温した。そして、該PCI処理、該CIA処理を行い、10℃で10分間遠心分離した後、エタノール沈殿を行いDNAを乾燥させた。
【0039】
(2) ゲノムDNAを DNAポリメラーゼにより修復する工程
上記工程により得られたゲノムDNA 0.1μg をDNAポリメラーゼ反応液(0.5ユニット DNAポリメラーゼ、0.4μM dNTP、0.1mM ジチオスレイトール、50mM トリス−塩酸pH7.8、10mM 塩化マグネシウム)2.5μlに溶解し、37℃で20分間反応させた。その後65℃で60分間反応させて反応を終了させた。
【0040】
(3) 第1の制限酵素(NotI)によりゲノムDNAを切断する工程
上記工程により得られたゲノムDNA 0.1μgにNotI反応液(10ユニットNotI、100mM トリス−塩酸pH7.9、200mM 塩化ナトリウム 20mM 塩化マグネシウム、2mM ジチオスレイトール)を2.5μl添加し、37℃で2時間反応させた。
【0041】
(4) ゲノムDNAの切断末端を標識する工程
上記工程により得られたゲノムDNA の溶液に0.5μl [α-32P]dGTP (10mCi/ml)、0.5μl [α-32P]dCTP (10mCi/ml)、及び標識用緩衝液(0.5ユニット DNAポリメラーゼ、1mM ジチオスレイトール)を4μl添加し、37℃で30分間反応させた後、65℃で60分間反応させて反応を終了させた。
【0042】
(5) 第2の制限酵素(HpaII)によりゲノムDNA断片を切断する工程
上記工程により得られたゲノムDNA 溶液にHpaII緩衝液(20ユニットHpaII、10mM トリス−塩酸pH7.9、50mM 塩化ナトリウム 10mM 塩化マグネシウム、1mM ジチオスレイトール)を10μl添加し、37℃で1時間反応させた。
【0043】
(6) ゲノムDNA断片を一次元電気泳動により分画する工程
0.8%アガロースゲル(直径2.5mm、長さ60cm)のキャピラリーの上端ウェル部(直径2.5mm、深さ1cm)に、上記工程により得られたゲノムDNAを0.1μg添加後、230Vの電圧で24時間泳動した。アガロースは1D緩衝液(0.1M トリスアセテート pH8.0、40mM ソディウムアセテート 3mM EDTA, 36mM 塩化ナトリウム)に溶解して調製した。なお、電気泳動用緩衝液として、1D緩衝液を使用した。
【0044】
(7) BamHIによりゲノムDNA断片を切断する工程
上記工程により得られたゲノムDNAのバンド群を有するゲルを、下記の反応液組成に浸し、37℃で2時間反応させた。すなわち、1500ユニットのBamHIを含むBamHI緩衝液(50mM トリス−塩酸pH7.5、100mM 塩化ナトリウム 10mM 塩化マグネシウム、1mM ジチオスレイトール)に浸した。
【0045】
(8) ゲノムDNA断片のバンド群を二次元電気泳動により分画する工程
上記工程を経た泳動済ゲルを、2D緩衝液で2回洗浄し、2枚のガラス板で挟み作成された5%ポリアクリルアミドゲル(46cm幅×43cm高×1mm厚)の上にアガロースゲルの泳動方向とポリアクリルアミドゲルの上端縁とが平行になるように載置した。これらゲルの間隙を接続用0.8%アガロースゲルで満たして固化させ、アガロースゲルとポリアクリルアミドゲルとを接続した。150Vの電圧で24時間泳動した。
【0046】
電気泳動用緩衝液としては、2D緩衝液(0.05M Tris-塩酸pH7.5、0.062M ホウ酸、1mM EDTA)を使用した。5%ポリアクリルアミドゲルは、アクリルアミド:ビスアクリルアミドを29:1の割合で混合し、2D緩衝液に溶解し、0.07%過硫酸アンモニウム、0.027%N,N,N',N'-テトラメチルエチレンジアミンを添加してゲル化させた。接続用0.8%アガロースゲルは、2D緩衝液に溶解して調整した。
【0047】
(9) 泳動終了後、泳動済のゲル(アガロースゲルとポリアクリルアミドゲルとが接続したもの)を、瀘紙(商品名:3MM、ワァットマン社製)に密着乾燥させた。この乾燥ゲルをイメージングプレート(商品名BAS2000、富士フィルム社製)に密着させ、1日間暗室中で静置した。
【0048】
この感光したイメージングプレートのオートラジオグラムを図3に示す。
【0049】
また、上記実施例2の工程(5)において、HpaIIの代わりにMspIを第2の制限酵素として用いてゲノムDNAを切断し、その他の工程(1)〜(4)および(6)〜(9)はまったく同じ操作の実験を行った結果の二次元電気泳動パターンを図4に示す。
【0050】
[実施例3] 検出されたメチル化サイトのPCRによる確認
上記実施例2で明らかにされたメチル化サイトについて、別の実験方法を用いてメチル化されていることを確認した。
【0051】
対象としたRLGSスポットは、図3および図4において矢印で示したスポットである。このスポットは、RLGS二次元画像(スポットパターン)から、1次元目の電気泳動におけるDNA断片(NotIとMspIを両端に持つDNA断片)は約2Kbの分子量であり、2次元目におけるDNA断片(NotIとBamHIを両端に持つDNA断片)は約300bpの分子量であると考えられた。
【0052】
公知のシロイヌナズナ全ゲノム塩基配列情報(URL:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/mapview/map_search.cgi?taxid=3702)を利用し、NotI、MspI(HpaII)、BamHIの各サイトを検索し、NotIサイトからMspIサイトまでの距離が約2Kbでかつ、NotIサイトからBamHIサイトまでの距離が約300bpである塩基配列を調べた。その結果、シロイヌナズナ第1染色体において対応する部分を見出した。これはNotIサイトからMspIサイトまでの距離が2087bpであり、NotIサイトからBamHIサイトまでの距離が319bpであった。この各制限酵素サイトの概略を図5に示す。
【0053】
そこで、MspI(HpaII)サイトを挟み込む形でPCR反応のためのプライマーセット(P1およびP2)を図5に示すように設計した。各プライマーの塩基配列は、P1(5’-TTCCTGCAGGTTGTGATAAGC-3’/配列番号:1)とP2(5’-TTGCGAGATCTCATCAGTGTG-3’/配列番号:2)であり、これを用いて739bpのPCR産物DNAが期待された。
【0054】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によるDNA断片の増幅反応に使用した耐熱性ポリメラーゼは、KOD PLUS(登録商標:東洋紡製)であった。反応液の組成(20μl反応液中の濃度で示す)は、上述のように調製した、試験されるシロイヌナズナ由来のゲノムDNA(1ng)、KOD PLUSポリメラーゼ(0.4Unit)、5’-TTCCTGCAGGTTGTGATAAGC-3’/配列番号:1(P1)および5’-TTGCGAGATCTCATCAGTGTG-3’/配列番号:2(P2)のヌクレオチド配列を有するプライマー(0.75pmol)、デオキシヌクレオシド三リン酸(dATP、dCTP、dTTP、dGTP)(各0.2mmol)、硫酸マグネシウム(1mmol)およびKOD PLUSポリメラーゼに添付されていたバッファーであった。
【0055】
PCRの前に、まず熱変性反応(94℃、2分)を行った。PCRは、1サイクルが熱変性(94℃、15秒)、アニーリング(50℃、30秒)、および伸長反応(68℃、1分)からなった。これを25サイクル行った。
【0056】
電気泳動法によるゲノムDNA断片の分画は、1%アガロースゲルのウェル部に、上記で得られたPCR反応液10μlをのせた。次いで、100Vで1時間泳動した。
【0057】
なお、アガロースは、TBE緩衝液に溶解して調製した。また、電気泳動用緩衝液としてTBE緩衝液を使用した。ここで、DNAサイズマーカーは、2000bp、1550bp、1400bp、1000bp、750bpのDNA断片を含んでいるものを使用した。
【0058】
泳動終了後、エチジウムブロマイドでDNAバンドの染色を行った。DNA断片の電気泳動パターンは、紫外線照射下でCCDカメラを用いて撮影した。
【0059】
P1(5’-TTCCTGCAGGTTGTGATAAGC-3’/配列番号:1)とP2(5’-TTGCGAGATCTCATCAGTGTG-3’/配列番号:2)のプライマーセットによるPCR産物の電気泳動パターンを図6に示す。本図において、レーン1は「DNAサイズマーカー」であり、示されたバンドは上から順に2000bp、1550bp、1400bp、1000bp、750bpである。レーン2は、「制限酵素による消化反応処理をまったく行っていないシロイヌナズナゲノムDNA」、レーン3は「MspIで消化したシロイヌナズナゲノムDNA」、レーン4は「HpaIIで消化したシロイヌナズナゲノムDNA」をそれぞれテンプレートに用いてPCR反応を行ったものである。
【0060】
レーン2では、制限酵素処理がなされていないため、P1およびP2の両プライマーにはさまれたDNAは切断されておらず、公知のゲノム塩基配列情報から予測された分子量(739bp)の位置にバンドが検出された。
【0061】
レーン3では、バンドが消失していた。ここでPCR反応に用いたテンプレートDNAは、MspIで消化されていたため、この位置でDNAが切断されておりPCRによる増幅ができなかったことを示している。なお、MspIは、認識配列にメチル化されたシトシンがあってもDNA消化することができる。なお、極めてうすいバンドが750bp付近に見られるが、これはゲノムDNAのMspI消化の際に切れ残ってしまったごく微量のDNAが増幅されたものと考えられる。
【0062】
レーン4では、バンドが検出された。ここでPCR反応に用いたテンプレートDNAは、HpaIIで消化処理されたものである。ただし、この制限酵素HpaIIは、MspIと認識配列は同じ5’-CCGG-3’であるが、メチル化感受性であり認識配列中のシトシンのメチル化があるとDNA消化しないことが知られている。したがって、PCR反応によるバンドが検出されたことは、このHpaIIの認識サイトがメチル化されていたためにこの位置でDNAが切断されず、PCRによる増幅ができたことを示している。すなわち、HpaIIサイトがメチル化されていることが確認された。
【0063】
以上のことから、本発明のメチル化検出方法においては、PCR反応を利用した方法でもメチル化サイトが確認できることが証明された。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】RLGS実験の第1-第2-第3の制限酵素としてそれぞれEagI-HpaII-HindIIIを用いたシロイヌナズナのRLGSパターンを示す写真である。
【図2】RLGS実験の第1-第2-第3の制限酵素としてそれぞれEagI-MspI-HindIIIを用いたシロイヌナズナのRLGSパターンを示す写真である。ここでは、第2の制限酵素としてHpaIIとはメチル化感受性に違いのあるMspIを用いた。図1のRLGSパターン(EagI-MspI-HindIIIのRLGSパターン)と比較した結果、EagI-MspI-HindIIIおよびEagI-HpaII-HindIIIのRLGSパターンで検出されたスポットの合計662個中、MspIに特異的なスポットを137個検出した。一方、HpaIIに特異的なスポットは49個検出された。HpaIIと MspIは、同じ認識配列(CCGG)を消化する制限酵素であるが、一定のメチル化されたCCGG配列で、HpaIIでは消化されないが、MspIでは消化されるという反応が知られている。したがって、 HpaIIに特異的なスポットは、EagIサイトの隣にメチル化されたHpaII認識サイトを少なくとも一つは持つことを示している。
【図3】RLGS実験の第1-第2-第3の制限酵素としてそれぞれNotI-HpaII-BamHIを用いたシロイヌナズナのRLGSパターンを示す写真である。
【図4】RLGS実験の第1-第2-第3の制限酵素としてそれぞれNotI-MspI-BamHIを用いたシロイヌナズナのRLGSパターンを示す写真である。矢印で示したスポットは、第2の制限酵素としてMspIを用いた場合に特異的に検出されたスポットである。これに対して、図3に示したように第2の制限酵素としてHpaIIを用いた場合にはほとんど見えないほど薄いシグナルである。これは、NotIサイトの隣にメチル化されたHpaII認識サイトを少なくとも一つは持つことを示している。
【図5】図3および図4において矢印で示したスポットに相当するゲノムDNAの制限酵素サイトの位置関係を示す図である。これは、シロイヌナズナ全ゲノム塩基配列情報をもとに、1次元目の電気泳動におけるDNA断片(NotIとMspIを両端に持つDNA断片)が約2Kbの分子量であり、2次元目におけるDNA断片(NotIとBamHIを両端に持つDNA断片)が約300bpの分子量であるところを検索した。その結果、第1染色体において対応する部分を見出した。これはNotIサイトからMspIサイトまでの距離が2087bpであり、NotIサイトからBamHIサイトまでの距離が319bpであった。このゲノム塩基配列情報からさらに、MspI(HpaII)サイトを挟み込む形でPCR反応のためのプライマーセット(P1およびP2)を設計し、図に示した。各プライマーの塩基配列は、P1(5’-TTCCTGCAGGTTGTGATAAGC-3’/配列番号:1)とP2(5’-TTGCGAGATCTCATCAGTGTG-3’/配列番号:2)であり、これを用いて739bpのPCR産物DNAが期待された。
【図6】P1(5’-TTCCTGCAGGTTGTGATAAGC-3’/配列番号:1)とP2(5’-TTGCGAGATCTCATCAGTGTG-3’/配列番号:2)のプライマーセットによるPCR産物の電気泳動パターンを示す写真である。本図において、レーン1は「DNAサイズマーカー」であり、示されたバンドは上から順に2000bp、1550bp、1400bp、1000bp、750bpである。レーン2では、「制限酵素による消化反応処理をまったく行っていないシロイヌナズナゲノムDNA」をテンプレートに用い分子量(739bp)の位置にバンドが検出された。レーン3では「MspIで消化したシロイヌナズナゲノムDNA」をテンプレートに用いたが、MspIで消化されていたためバンドがほとんど消失していた。レーン4では「HpaIIで消化したシロイヌナズナゲノムDNA」をテンプレートに用いてPCRを行った結果、バンドが検出されたことからHpaIIサイトのメチル化が確認された。
【出願人】 【識別番号】501167644
【氏名又は名称】独立行政法人農業生物資源研究所
【出願日】 平成16年5月20日(2004.5.20)
【代理人】 【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志

【識別番号】100108774
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 一憲

【公開番号】 特開2005−167(P2005−167A)
【公開日】 平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願番号】 特願2004−150574(P2004−150574)