トップ :: C 化学 冶金 :: C12 生化学;ビ−ル;酒精;ぶどう酒;酢;微生物学;酵素学;突然変異または遺伝子工学

【発明の名称】 標的核酸の検出法
【発明者】 【氏名】黒岩 保幸

【氏名】森尾 友宏

【氏名】清水 則夫

【氏名】関根 暉彬

【氏名】山本 興太郎

【氏名】渡邊 健

【要約】 【課題】増幅した試料中の標的核酸を検出する際に、プローブの混入時期を調整することにより、検出作業の迅速化と、より多くの種類の標的核酸検出を可能にする。

【解決手段】患者から抽出した試料中の核酸に対し、プローブを含まない添加剤を添加して核酸増幅した後、検出すべき標的核酸の配列に対して相補的塩基配列を有した複数の標識プローブを混入し、混入後のプローブに含まれる蛍光標識を融解曲線分析することにより複数の標的核酸を同時的に同定検出するようにした。 これにより特殊技術を要することなく、従来技術より短時間で、しかも、少なくとも5種類以上の異なる核酸配列の増幅結果を、より高い検出感度で同時的に確認することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中の核酸に対し、プローブを含まない添加剤を添加して核酸増幅した後、検出すべき標的核酸の配列に対して相補的塩基配列を有した複数の標識プローブを混入し、混入後のプローブに含まれる蛍光標識を融解曲線分析することにより複数の標的核酸を同時的に同定検出するようにした標的核酸の検出方法。
【請求項2】
試料中の核酸がDNA又はRNAであるところの請求項1に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項3】
核酸増幅手段がPCR法によるものであるところの請求項1に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項4】
核酸増幅手段がライトサイクラー又はABI PRISM 定量システムを用いるものであるところの請求項1に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項5】
核酸増幅後に混入するプローブが、蛍光標識プローブであるところの請求項1〜4の何れか1に記載の標的核酸の検出方法。
【請求項6】
標的核酸が、癌関連遺伝子、遺伝病に関連する遺伝子、ウィルス遺伝子、細菌遺伝子及び病気のリスクファクターと呼ばれる多型性を示す遺伝子である塩基配列のものであるところの請求項1に記載の標的核酸の検出方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、傷病・病害の予防若しくは治療に際し、患者から採取した試料中に原因となる有害細菌やウイルスが存在するか否かを迅速に同定検出して対応するための標的核酸の検出方法に関し、より多くの標的核酸配列を高い効率で同時に増幅するとともに、その産物を定性的に高い感度で同時に検出する標的核酸検査方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
傷病・病害の予防、または治療において、原因となる有害な細菌やウィルスを迅速に同定し検出することが重要である。 細菌やウィルスの同定には、一般に病徴の観察による方法、電子顕微鏡などを使用した形態的特徴観察による方法、および抗体を用いる簡便な方法などが用いられているが、これらはいずれも厳密性(高い選択性)に欠けるという欠点があるため、最近では検定生物を用いる方法や遺伝子配列解析による方法、あるいはハイブリダイゼーションを利用する方法などが開発されるに至った。
【0003】
具体的には、第1に、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV1)、2型(HIV2)およびヒト成人T細胞白血病ウイルス1型(HTLV1)、2型(HTLV2)を同時に定量と定性ができる方法、第2に、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、 HIV1を同時に定性ができる方法、 第3に、HBV、HCVを同時に定量と定性ができる方法などが知られる。 上記した第1〜第3の方法は、何れもタックマンプローブ(Taqman probe)法を原理とした検出法(以下単に「タックマン法」と称する)である。
【0004】
なおここで、タックマン法とは、まず FRET(fluorescence resonance energy transfer)の原理を利用したもので FRETとは接近して蛍光色素が存在するところに励起光を照射した場合、片方の蛍光色素(reporter;R)に吸収されたエネルギーがもう一方の蛍光色素(quencher;Q)に移る現象をいう。 この場合、reporter側の色素の蛍光は生じず、エネルギーの移動によりquencher側の色素の蛍光(波長が異なる)が生じる。5`端および3`端にreporter、quencher色素が付与したプローブがハイブリダイズし、TaqDNAポリメラーゼの5`→3`エキソヌクレアーゼ活性によりプローブが分解され、接近していた2種類の蛍光物質の距離が離れることにより、色素が蛍光を発するようになるのでこれを検出して測定をおこなうものである。
【0005】
また第4に、BKウイルス(BKV)、JCウイルス(JCV)を同時に定量と定性ができる方法や、第5に、ハイブリプローブ(Hybri−probe)法を原理としたHCVの5種類の変異型が同定できる測定系の検出法も知られている。 さらに第6に、サイバーグリーン(Syber−GreenI)と融解曲線分析を原理とした検出法(以下単に「サイバーグリーン法」という)、すなわちSyber−GreenIとはインターカレート試薬とも呼ばれ、2本鎖遺伝子の中に入り込むことによって、その蛍光強度や蛍光波長が著しく変化するものがあり、その性質を利用して2本鎖遺伝子を検出する(1本鎖 DNAになると離れて再び変化する)ものであって、これによって単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状庖疹(VZV)、エンテロウイルス(enterovirus)、ポリオウイルス(poliovirus)を同時に定性するものである。
【0006】
また第7に、HSV,サイトメガロウイルス(CMV)、EBウイルス(EBV)、ヒトヘルペスウイルス6型(HHV6)、VZVの5種類について同時に定性ができる方法や、第8に、HSV、VZV、EBV、CMVの4種類について同時に定性ができる方法、さらにはEBV、CMV、HHV6、HHV7、HHV8、pseudorabies herpesvirusの6種類について同時に定性できる方法も知られる。 さらに第9に、核酸の塩基配列決定または遺伝的置換の大量スクリーニング法も知られている(特許公表2000−513202)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、タックマン法を原理とする前記第1〜第3の方法による場合には使用できる蛍光色素が4色に限られているため最大4種類が限界である。 またハイブリプローブ法は、使用されるBKV,JCVあるいはHCVは配列において殆ど同じ塩基配列を有する。 そのために同一あるいは、略同一のプライマーとプローブで判定できるが、通常は、各標的遺伝子ごとに異なる2つのプローブを必要とするので仮に多くの種類のプライマーとプローブを反応液に加えると PCR反応を阻害し、著しく検出感度が悪化する難点がある。
【0008】
さらにサイバーグリーン法は、融解曲線分析を原理とした検出法であるが、融解曲線分析はその PCR産物の融解温度(Tm)値によりその目的産物であるか区別する方法である。 一般的には融解曲線分析により4種類の PCR産物を区別するが、PCR産物のような100bp−500bpの大きさではTm値が80℃〜85℃の範囲に集中し、多くをこの10℃の範囲内で区別するのは難しく、また非特異的産物の検出(目的の核酸配列でない配列)を否定できない。
【0009】
さらに既述した第7〜第8は、多いもので6種類の異なる標的核酸を増幅するがどの核酸が増幅されたか否かはアガロースゲル電気泳動法により PCR産物の長さで判定するため、 PCR後にさらに多くの操作と時間が必要となるのみならず、増幅産物が実験室内に拡散し、その後の検出において偽陽性の原因となる可能性が高い。 また第9は、PCR で1チューブに一度に増幅できる遺伝子数には限界があり、ハイブリダイゼーションと検出の処理には1日以上の操作時間を必要とする。
【0010】
また近時においては移植医療、再生医療が盛んとなり、患者に移植や移入する際に、有害な細菌やウィルスの混入は人体に重大な危険を伴う。 また高品質を維持するためにも移植や移入の前に検査する必要がある。 しかし有害な細菌やウィルスには多くの種類が存在し、現在の技術では多量の検査と時間、人手、費用がかかる。 今後、移植医療、再生医療においてこれらの検査が必須になると予想され、高い検出感度の達成と時間、人手、費用の節約をするための効率化が求められる。
【0011】
【課題を解決するための手段】
そこで本発明は高い厳密性を有する PCRまたはRT−PCR法などの核酸配列の増幅を用いて1個のチューブ内あるいは1反応液内で同時に多数の種類を検査する方法について開発したものであって、上記で説明した分子生物学的手法の高い厳密性(細菌やウイルス間の高い選択性、検出性)を保持しつつ、かつ従来の技術の欠点を解決し、高感度でしかも高選択的、かつ迅速に細菌やウイルス、検出やSNPsなどの遺伝子解析をする方法を提供するものである。
【0012】
すなわち、本発明は、ハイブリプローブ法を応用してプローブによる増幅核酸の同定をおこなう場合において、従来のように核酸増幅反応液にあらかじめプローブを加えて反応検出をおこなうのではなしに、増幅反応液にプローブを加えずに核酸増幅をおこない、反応終了後にプローブを加え、その後、融解曲線分析により各プローブのTm値の違いから目的とするウイルス等の標的核酸の有無を判定することを特徴とする。
【0013】
具体的には、患者から抽出した試料中の核酸に対し、プローブを含まない添加剤を添加して核酸増幅した後、検出すべき標的核酸の配列に対して相補的塩基配列を有した複数の標識プローブを混入し、混入後のプローブに含まれる蛍光標識を融解曲線分析することにより複数の標的核酸を同時的に同定検出するようにした標的核酸の検出方法に関する。
【0014】
上記により、増幅反応を行う際に反応液に混ざらない状態でキャピラリー中にプローブを加え、あるいは200μlマイクロチューブに反応液を加え、ついでミネラルオイルを加えた後オイルより上層にプローブ溶液を加える。 この状態では反応液とプローブ液がミネラルオイルを解して混ざらない状態になる。 増幅反応終了後に遠心操作によりプローブと反応液を混合し、融解曲線分析する。 この方法では増幅反応の際にプローブが反応を阻害しないためプライマーとプローブの複雑な産物を形成せず、これまでのハイブリプローブ法よりも検出感度が高い。
【0015】
またプローブによる増幅産物の確認ができるため、特異的増幅産物のみを測定できる。 さらに、これまでのサイバーグリーン法よりも判定の際に使用するTm値の範囲が広いため、多くの種類の判定が容易となる。 電気泳動法のような増幅後の操作が不要で操作時間が節約できる。 増幅産物の拡散が無く、繰り返し測定を行っても偽陽性がでる可能性が極めて低い。 また目視でなく光学機器による計測のため微量でも検出、判定できる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の具体的な内容について順次説明するとつぎの通りである。 まず検出したい遺伝子である標的核酸としては、癌関連遺伝子、遺伝病に関連する遺伝子、ウィルス遺伝子、細菌遺伝子及び病気のリスクファクターと呼ばれる多型性を示す遺伝子である塩基配列のものが含まれる。
【0017】
ほかに、ヒト免疫不全ウイルス1型(HIV1)、2型(HIV2)およびヒト成人T細胞白血病ウイルス1型(HTLV1)、2型(HTLV2)、C型肝炎ウイルス( HCV)、ピコルナウィルス(Picornaviruses)、カリシウィルス(Caliciviruses)、オルソミクソウィルス(Orthomyxoviruses)、トガウィルス(Togaviruses)などの RNAウィルス類、BKウイルス(BKV)、JCウイルス(JCV)、サイトメガロウイルス(CMV)、EBウイルス( EBV)、ヒトヘルペスウイルス6型( HHV6)単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状庖疹(VZV)、ポックスウイルス(Ppxviruses)、パルボウィルス( Parvoviruses)、パポーバウイルス(Papovaviruses)、B型肝炎ウイルス(HBV)、Adenovirus、ヒト乳頭腫ウイルス(HPV)などのDNAウィルス類などがある。
【0018】
また有害細菌としては、例えば、サルモネラ属(チフス菌、パラチフスA菌、パラチフスB菌、腸炎菌、ネズミチフス菌、アリゾナ菌等)、シゲラ属(赤痢菌等)、ビブリオ属(腸炎ビブリオ、コレラ菌、NAGビブリオ、ビブリオ・ミミカス、バルニフィカス、アルギノリチカス等)、エロモナス属(エロモナス・ヒドロフィア、ソブリアキャビエ、サルモニサイダ等)、プレジオモナス属(プレジオモナス・シゲロイデス等)、カンピロバクター属(カンピロバクター・ジェジュニー、カンピロバクター・コリ、カンピロバクター・フィタス等)、クロストリジウム属(ウエルシュ菌、ボツリヌス菌等)、スタフィロコッカス属(黄色ブドウ球菌、MRSA等)、エシェリキア属(大腸菌、腸管出血性大腸菌(O157等)、毒素原性大腸菌、組織侵入性大腸菌、病原血清型大腸菌、腸管付着性大腸菌属等)、エルシニア属(エルシニア・エンテロコリチカ、偽結核菌、ペスト菌等)、バシラス属(セレウス菌、炭疽菌、枯草菌、バシルス・ステアロサーモフィラス等)、リステリア属(リステリア・モノシトジェンズ等)、ミコバクテリア属(人型結核菌、牛型結核菌、鳥型結核菌等)、さらにCandida, Aspergillus, Mucor, Cryptococcus, Pneumicystis carinii, 梅毒菌、淋菌、および応用微生物学(昭和50年発行、相田浩ら、株式会社朝倉書店 発行)の13〜76貢に記載の微生物などが挙げられる。
【0019】
さらにビタミンD受容体遺伝子、アポリポタンパクE遺伝子およびエストロゲン受容体遺伝子などの遺伝子多型の SNPs(Single nucleotide polymorphismsの略)領域も含まれる。 SNPsとは、遺伝暗号である塩基配列は一人一人でかなり多くの部位で異なっている。この違いから同じ診断名や類似の症状の疾患であっても、その背景となる疾患を起こす仕組みが異なる。 SNPsの遺伝解析は、違いを考慮にいれた薬剤の使い分けなどの治療を可能にする所謂「オーダーメイド医療」を指す。 さらに疾患の予防、発症の遅延、早期発見、早期治療につながる。
【0020】
また、病原菌等標的核酸を含む可能性のある試料(検体)としては、例えば、細菌、ウィルス等の病原体、生体から分離された血液、唾液、組織病片等、或いは糞尿等の排泄物が挙げられる。 これらのDNA又はRNAなどの核酸を含有した試料は直接、又は必要に応じて遠心分離操作等により沈渣として濃縮した後、例えば、酵素処理、熱処理、界面活性剤処理、超音波処理、或いはこれらの組み合わせ等による細胞破壊処理を予め施したものを使用することができる。 この場合、上記細胞破壊処理は、目的とする組織由来のDNA又はRNAを顕在化させる目的で行われるものである。
【0021】
さらに試料中の核酸増幅は、ポリメラーゼ鎖反応(PCR法)やリガーゼ鎖反応(LCR法あるいはgap−LCR法)、もしくはライゲーション増幅反応(ASPCR法)、あるいはARMS法、ICAN法、Lamp法、または特定の核酸配列を濃縮する他の方法の使用を示している。 なかでもPCR法は、一般にポリメラーゼ鎖反応法と呼ばれる方法であって、2本鎖の試料DNAを加熱して、1本鎖としてから、該1本鎖を鋳型として増幅プライマーをアニールさせ、次いで加温してDNAポリメラーゼにより該プライマーからdNTPsを合成し、伸張させる。
【0022】
上記により得られた2本鎖を1本鎖に分離して、上記反応を繰り返すことにより、効率的に目標領域を有する DNAを増幅することができる。 一般に反応条件は92〜95℃で1秒間〜1分間、50〜65℃を5秒〜1分間、70〜75℃を5秒から5分間を、20〜40回繰り返す。 50〜65℃の部分で上記アニールがおこり、反応を成功させるためのアニール温度は、主にプライマーの組成によって規定される。 70〜75℃の部分で伸張がおこり、反応を成功させるための伸張時間は増幅する目標領域の長さによって規定される。 また標的核酸としてRNAとDNAとがあるがRNAの場合、逆転写してcDNAに変換して増幅する場合とRNAをそのまま増幅する場合がある。
【0023】
本発明によるDNA又はRNAの増幅は、上記したPCR法などによるほかに、ライトサイクラー又はABI PRISM 定量システムなどを用いておこなうこともできる。 また核酸増幅に際しては特異的プライマー、TaqDNApolymerase、pH調整剤、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩基、牛血清アルブミン、ゼラチンなどの添加剤が添加される。 さらに核酸増幅後に混入するプローブとは蛍光標識プローブなどであり、前記標的核酸と塩基配列が相補であるRNA又は1本鎖DNAをいう。 このようなプローブは、PCR法、化学合成法などにより作製することができる。 プローブの長さは、通常のハイブリダイゼーション条件下で安定に標的分子とハイブリダイズできる限り、制限されないが、Tm値を設定から15〜40塩基が望ましい。
【0024】
標的核酸の検出は、混入後のプローブに含まれる蛍光標識を融解曲線分析することにより複数の標的核酸を同時的に同定検出する。 標識物質の種類は限定されないが、例えば使用する標識物質が蛍光標識である場合、蛍光顕微鏡、蛍光強度測定装置およびレーザ・スキャニング・サイトメータ(以下、LSCと略す)等の使用が可能である。 しかし、検出機器は特に上記のものに限定されない。
【0025】
使用する標識物質が蛍光標識である場合、検出方法の例を以下に示すとFRET(fluorescence resonance energy transfer)の原理を利用して検出する。 FRETとは、近接して蛍光色素が存在するところに励起光を照射した場合、片方の蛍光色素(reporter;R)に吸収されたエネルギーがもう一方の蛍光色素(quencher;Q)に移る現象を言う。
【0026】
検出プローブの種類としては以下のものが例示される
A.ハイブリプローブ(Roche Diagnostics社製)
これは2種類のプローブが増幅された核酸とハイブリダイズすることにより、2種類の蛍光色素が接近し、quencher側の色素が蛍光を発するようになるので、これを検出するものである
B.Moleculer Beacon(Stratagene社製)
これは、ハイブリダイゼーションプローブは遊離の状態ではヘアピン構造をとるため、2種類の蛍光色素(正確には、Moleculer Beaconの場合はquencherは蛍光物質でなく、quenching 作用のある物質)は近接している。 増幅された核酸とハイブリダイズすることにより、互いの距離が離れ、reporter側の色素が蛍光を発するようになるので、これを検出するものである。
【0027】
上記いずれのものを使用する場合においても、それぞれの核酸配列固有のプローブの区別は融解曲線分析により判定される。 融解曲線分析は、増幅された核酸やプローブと増幅された核酸のハイブリッドを初めは低温(40℃)から通常0.2℃/secの速度で75℃まで温度を上げていくとそれぞれの増幅された核酸やプローブが持つ固有のTm値に従い核酸やプローブと増幅された核酸のハイブリッドが融解し、この場合、増幅された核酸はSyber−GreenIが、またプローブと増幅された核酸のハイブリッドはFRETの蛍光強度が急激に落ちる。 そしてその温度に対する急激に落ちた蛍光強度変化を微分してピーク化したものを分析する方法による。
【0028】
なお、上記したSyber−GreenIとは、インターカレート試薬とも呼ばれ、2本鎖遺伝子の中に入り込むことによって、その蛍光強度や蛍光波長が著しく変化するものがあり、その性質を利用して2本鎖遺伝子を検出するものである。 1本鎖 DNAになると離れて再び変化する。
【0029】
【実施例】
〔DNAの抽出〕
ウィルス性疾患の疑いのある患者から採血した血液から試料として Viral DNA抽出をした。 DNA の抽出は、QIAamp DNA Blood Mini kit を用い、以下の操作方法により抽出した。 すなわち 1.5μl tubeにProteinase K 20μlを入れ、そのTube内に血液または血清を200μl+Buffer AL200μl加え、これをVortex 15secした後、56C 10min incubation Tubeをスピンしてサンプルを集めた。
【0030】
これに100% Ethanol 200μlを加え、Vortex 15sec し、さらにスピンした後に 2ml 遠心Tubeにセットしたスピンカラムにサンプルを移す。 8000rpm 1min 遠心後、2ml の遠心tube内の溶液を捨て、再びスピンカラムにセットする。 このスピンカラムにBuffer AW1 500μlを加えて再び8000rpm 1min 遠心する。
【0031】
新しい 2ml 遠心tubeに交換してスピンカラム内にBuffer AW2 500μlを加え、これを再び 14000rpm 3min 遠心する。 2ml の遠心tube内の溶液を捨て、再びスピンカラムにセットし、14000rpm 1min 遠心する。 1.5ml 遠心tube内にスピンカラムを移し、Buffer AE 50μl を加え、室温で1min放置した後、8000rpm 1min 遠心してDNAを回収する。
【0032】
〔核酸の増幅〕
DNA ウィルスについては、Herpes Simplex Virus1(HSV1)、 Herpes Simplex Virus2(HSV2)、 Varicella−Zoster Virus(VZV)、 Human Cytomegalovirus(HCMV)、 Human Herpes Virus 7(HHV7)、 Human Herpes Virus 8(HHV8)、 parvoB19、 BK Virus (BKV)、 JC Virus (JCV) などの各ウィルスを同時定性する。
【0033】
これに添加するプライマーとしてウィルス特異的配列を有する核酸配列(例えば、
Journal of Medical Virology ,2002,68,p.399−403,
Journal of Clinical Microbiology Dec,2001,p.4357−4361.
Journal of Clinical Microbiology ,Dec,2001,p.4413−4419.
Journal of Clinical Microbiology ,Nov,2000,p.4006−4009.
Journal of Clinical Microbiology ,Sept,2000,p.3187−3189.
BMC Microbiology,2002, 2,p.12−22
に記載されている核酸配列のもの)、
またHHV7に特異的な増幅プライマー対:gaaaaatccg ccataatagc 配列番号1,atggaacacc tattaacgg c 配列番号2. 10μMを0.2μl ずつ合計2.8μl、 合成酵素として〔 Accuprime Taq DNA polymerase(Invitrogen社製)〕0.25μl、調整剤として 10*Accuprime PCR buffer I 1μl、これに抽出した DNA 5μlと、Nucrease Free Water 1.95μlとを加えて合計 10μlとし、これを Mixし、図1に示したライトサイクラーキャピラリー1の透明ガラス製の細長い容器2内に注入(図1Aのa参照)する。 なお核酸の増幅手段としては、この場合PCR法を用いた。
【0034】
〔プローブの混入〕
ついでその上部に、蛍光色素(LCRed640,LCRed705,FITC)が付着したウィルス特異的ハイブリダイゼーションプローブミックス(例えば、
BMC Microbiology,2002, 2,p.12−22
Journal of Medical Virology ,2002,68,p.399−403,
Journal of Clinical Microbiology Dec,2001,p.4357−4361.
Journal of Clinical Microbiology ,Dec,2001,p.4413−4419.
Journal of Clinical Microbiology ,Nov,2000,p.4006−4009.
Journal of Clinical Microbiology ,Sept,2000,p.3187−3189.
に記載されている核酸配列のもの、HHV7に特異的なプローブ: ttgtgaaatg tgttgcgata gggc 核酸配列3、gccataagaa acaggtacag acattgtca 核酸配列4、およびHCMVに特異的なプローブ:acaccactta tctg 核酸配列5、VZVに特異的なプローブ: aagttcgcgg tataattgt 核酸配列6を記載されているものの代わりに用いる。以上のプローブ混合液をつくり4μl 入れ(図1Aのb参照)てプラスチック製の蓋3で栓をした。 この状態ではPCR溶液aとハイブリイゼーションプローブミックスbとは分離された状態にある。
【0035】
キャピラリーを刺したカローセルをライトサイクラーにセットしてPCRをおこなった。 PCR条件は95℃で2分、次に95℃で1秒、57℃で15秒、72℃で15秒の温度サイクルを40サイクルおこない、最後に40℃で30秒間の冷却をして終了した。
【0036】
上記すべてのTemperature Transition Rateは20C/secでおこなった。 次にカローセルをカローセル遠心機にて遠心(3000rpm 3秒)し、PCR反応液10μlとハイブリダイゼーションプローブミックス4μl を混合(図1Bのc参照)して1分間放置した後、再びライトサイクラーにカローセルをセットして、融解曲線分析をおこなった。 分析条件は、95℃ 1分、Temperature Transition Rate20C/sec、40℃ 15秒 Temperature Transition Rate20℃/sec、75℃0秒 Temperature Transition Rate0.6℃/sec Acquistion Mode CONT、40℃ 30秒である。
【0037】
なおプローブの混合には上記した図1のライトサイクラーキャピラリー1に代えて図2にあらわしたマイクロチューブ(PCRチューブ)4を用いることもできる。 これはポリプロピレン等の透明な容器5と折り曲げ自在のヒンジを介して施蓋可能な蓋6とからなるもので、図2Aはプローブを混合する前段階をあらわし、PCR 反応液a,プローブ溶液b,ミネラルオイルcが順次積層状に充填された状態をあらわしている。 また図2BはPCR後に3000rpm3秒間遠心してプローブ溶液を混合した状態をあらわしている。
【0038】
〔融解曲線分析の解析〕
融解曲線分析結果を解析するための操作方法について説明すると、Select a Programにおいてプログラムをmelting curve programに選択し、またCalculation MethodをPolynominalに選択した。 Extra Manual Tm を選択して各サンプルのTm値を測定したところ、各ウィルスのハイブリダイゼーションプローブ融解ピーク(Tm値)は図3に示す通りであった。
【0039】
融解Tm値が同じか、あるいは近いものは、蛍光色素「LCRed640(F2/F1), LCRed705(F3/F1)の2色」を換えて異なる波長で検出するようにした。 この操作によりウィルスが存在すれば、増幅されたPCR産物にウィルス種特異的プローブがハイブリダイゼーションする。 そして除々に温度を上げていくとそのハイブリダイゼーションプローブ固有のTm値のところでプローブが解離して蛍光強度が急激に落ちる。 縦軸を温度、横軸を温度にして急激に下がった温度変化を微分してピークとする。 その解離ピークのTm値よりウィルス種を判定する。
【0040】
測定の結果、F2/F1チャンネルでTm値59℃にピークが現れ、HHV6において陽性となった。このサンプルをウィルス定量系にてウィルス定量したところHHV6においては25コピー/μgDNA検出され、他のウィルスは検出されなかった。 このことから定性系と定量系との一致が見られた。 なおこの場合に予め反応液等を用意しておけば、血液から DNA,RNA抽出に30分、核酸増幅に30分、検出に15分、数にもよるが操作の合計が30分と、合計1時間45分で検査作業が完了する。
【0041】
なおDNA用ハイブリダイゼーションプローブミックスの組成・蛍光色素・添加量などの概要を図4に示す。
【0042】
【発明の効果】
以上詳述した通り、本願の発明は患者から抽出した試料中の核酸に対し、プローブを含まない添加剤を添加して核酸増幅した後、検出すべき標的核酸の配列に対して相補的塩基配列を有した複数の標識プローブを混入し、混入後のプローブに含まれる蛍光標識を融解曲線分析することにより、複数の標的核酸を同時的に同定検出するようにしたものであるために、特殊技術を要することなく、従来技術より短時間で、しかも、少なくとも5種類以上の異なる核酸配列の増幅結果を、より高い検出感度で同時的に確認することができる。
【0043】
その結果、傷病・病害の予防、または治療において、患者の体内に原因となる有害細菌やウイルスが存在するか否かを迅速に同定検出することができ、また近時盛んとなった移植医療、再生医療の分野において、患者に移植や移入する際の有害細菌・ウィルスの混入を事前に避けることができ、迅速かつ安全でしかも高品質の移植医療、再生医療の実現に寄与するところが大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明において用いるプローブ混合手段の一例をあらわしたライトサイクラーキャピラリーの縦断面図。
【図2】本発明において用いるプローブ混合手段の別の例をあらわしたマイクロチューブ(PCRチューブ)の縦断面図。
【図3】本発明におけるDNAウイルスハイブリダイゼーションプローブの融解ピークをあらわした実験結果表。
【図4】本発明において用いるDNAウイルスハイブリダイゼーションプローブの内容をあらわした一覧表。
【符号の説明】
1 ライトサイクラーキャピラリー
2 容器
3 蓋
4 マイクロチューブ(PCRチューブ)
5 容器
6 蓋
【出願人】 【識別番号】503209641
【氏名又は名称】清水 則夫
【識別番号】501005092
【氏名又は名称】株式会社リンフォテック
【出願日】 平成15年6月10日(2003.6.10)
【代理人】 【識別番号】100070183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉村 公一

【公開番号】 特開2005−25(P2005−25A)
【公開日】 平成17年1月6日(2005.1.6)
【出願番号】 特願2003−164799(P2003−164799)