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【発明の名称】 すし酢
【発明者】 【氏名】西 祐二

【要約】 【課題】無洗米の製造時に副産物として発生する肌糠を原料として得た食酢を配合した、独特の風味を有するすし酢を提供することを目的とする。

【解決手段】肌糠を原料として用いて得られた食酢を配合してなるすし酢;前記食酢が、肌糠を原料として用いて得た糖化液にアルコールを加えたアルコール含有液または当該糖化液をアルコール発酵させて得たアルコール含有液を酢酸発酵させて得られたものであるすし酢;前記食酢が、常法による食酢の製造における酢酸発酵終了後または熟成終了後の食酢に、肌糠を原料として用いて得た糖化液または当該糖化液をアルコール発酵させて得たアルコール含有液を添加して得られたものであるすし酢;をそれぞれ提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肌糠を原料として用いて得られた食酢を配合してなるすし酢。
【請求項2】
食酢が、肌糠を原料として用いて得た糖化液にアルコールを加えたアルコール含有液または当該糖化液をアルコール発酵させて得たアルコール含有液を酢酸発酵させて得られたものである請求項1記載のすし酢。
【請求項3】
食酢が、常法による食酢の製造における酢酸発酵終了後または熟成終了後の食酢に、肌糠を原料として用いて得た糖化液または当該糖化液をアルコール発酵させて得たアルコール含有液を添加して得られたものである請求項1記載のすし酢。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、すし酢に関し、詳しくは無洗米の製造時に副産物として発生する肌糠を原料として得た食酢を配合したすし酢に関する。
【背景技術】
【0002】
精米時に発生する糠は赤糠と称されており、糖質の他にビタミン類などの栄養分を豊富に含んでいるため、食品をはじめとする様々な分野に利用されている。 従来、糠を原料として食酢を製造している例としては、玄米の精米時に発生する赤糠を利用した方法並びに酒造米を精白する際に発生する白糠を利用した方法が知られている。
炊飯時の洗米が不要である無洗米に対する需要が近年急速に伸びているが、かかる無洗米の製造時に多量に発生する肌糠(粘糠とも称される)を原料として用いる食酢の製造法は未だ知られていない。とりわけ、肌糠を澱粉分解酵素や蛋白質分解酵素を使用して分解して得た糖化液を食酢の発酵原料や食酢製造の際の酢酸発酵終了後の発酵液に添加する調味添加物として利用された例はない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明の目的は、肌糠を原料として用いて得られた食酢を配合することにより、独特の風味を有するすし酢を提供することにある。ここで、肌糠とは、玄米を精米して得られる精白米の表面に残存している糠のことであり、このものは家庭などで洗米時に生じる磨ぎ汁に含まれている他、上記したように、無洗米の製造時に発生する。
肌糠は、玄米の精米時に発生する赤糠を取り除いた後の精米において、胚乳の近くに存在するアリューロン細胞層の下底部に位置する糠である。肌糠は、糖質を主成分とするが、ビタミン類やリン、亜鉛等の無機質を豊富に含有している。そのため、食酢製造に肌糠を利用することにより、含有成分の高付与や調味付与などの効果が期待される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に係る本発明は、肌糠を原料として用いて得られた食酢を配合してなるすし酢を提供するものである。
請求項2に係る本発明は、食酢が、肌糠を原料として用いて得た糖化液にアルコールを加えたアルコール含有液または当該糖化液をアルコール発酵させて得たアルコール含有液を酢酸発酵させて得られたものである請求項1記載のすし酢を提供するものである。
請求項3に係る本発明は、食酢が、常法による食酢の製造における酢酸発酵終了後または熟成終了後の食酢に、肌糠を原料として用いて得た糖化液または当該糖化液をアルコール発酵させて得たアルコール含有液を添加して得られたものである請求項1記載のすし酢を提供するものである。
【発明の効果】
【0005】
本発明により、肌糠を原料として用いて得られた食酢を配合した合せ酢(すし酢)が提供される。
肌糠を原料として製造した食酢は、赤糠や白糠を原料として得た食酢と比べ、米酢としての風味が異なり、しかも水溶性ビタミンB複合体であるナイアシンをはじめとするビタミン類の含量が多く、新たな用途開発が期待される。特に、すし酢とした場合に、独特の風味を有している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
前記したように、本発明において原料として用いる肌糠は、精白米の表面に残存している糠であり、これを取り除いて無洗米を製造する際に発生するものが量的には最も多い。
無洗米の製造には様々な装置が使用され、その加工方式の代表的なものは、加水精米仕上げ方式、乾式研米仕上げ方式、BG米加工方式等である。
【0007】
請求項1記載の本発明は、かかる肌糠を原料として用いて得られた食酢を配合してなるすし酢に関する。
そのようなすし酢としては、請求項2及び3に係る発明によって得られた食酢を用いたものが用いられる。
以下に、これら請求項2及び3に係る発明について説明する。
【0008】
請求項2に係る本発明は、食酢が、肌糠を原料として用いて得た糖化液にアルコールを加えたアルコール含有液または当該糖化液をアルコール発酵させて得たアルコール含有液を酢酸発酵させて得られたものである請求項1記載のすし酢を提供するものである。
即ち、請求項2に係る本発明は、肌糠を原料として用いて得た糖化液にアルコールを加えたアルコール含有液または当該糖化液をアルコール発酵させて得たアルコール含有液を酢酸発酵させて食酢を得、これを配合して合せ酢(すし酢)としたものである。
具体的には、原料の肌糠に加水し、100〜150℃程度の温度で蒸煮した後、冷却して65℃以下とする。次いで、これにアミラーゼ、必要に応じてプロテアーゼ、セルラーゼ、その他の酵素剤の1種もしくは2種以上を適宜加えて常法、例えば50〜65℃で3〜70時間の条件にて糖化して糖化液を得る。また、無蒸煮法で用いられる各種酵素剤を使用して糖化液を得ることもできる。
別法として、肌糠に散水して水分含量が20〜40%程度となるように水を均一に含ませた後、100〜150℃程度の温度で蒸煮し、35℃以下に放冷したのち、これにアミラーゼ生産菌やプロテアーゼ生産菌等を接種して30〜40℃で製麹する。次いで、肌糠麹に加水し、50〜65℃で3〜70時間の条件にて糖化して糖化液を得る。
【0009】
このようにして得た糖化液を、必要に応じて圧搾又は濾過して清澄にした後、アルコールを1〜50%となるように添加してアルコール含有液を得るか、あるいは当該糖化液に酵母を加えてアルコール発酵させることによってアルコール含有液を得る。
次いで、このアルコール含有液を用いて酢酸発酵させて食酢を製造するが、これは常法により実施すればよく、例えば表面発酵法もしくは深部発酵法で酢酸発酵を行う。酢酸発酵終了後、発酵液中の固形物や混濁物などを沈澱させて清澄することなく、発酵液を直ちに濾過し、殺菌して製品である食酢を得る。
このようにして得られる食酢は、赤糠や白糠を原料として製造した食酢、例えば米酢に比べて風味が異なり、エキス分が多いという特色を有している。この肌糠を原料とした食酢は、合せ酢の原料として用い、二杯酢や三杯酢等に利用できるが、特にすし酢とした場合、独特の風味を有しており、すしに良くマッチしたまったり感のあるすし酢が得られる。
【0010】
請求項3に係る本発明は、食酢が、常法による食酢の製造における酢酸発酵終了後または熟成終了後の食酢に、肌糠を原料として用いて得た糖化液または当該糖化液をアルコール発酵させて得たアルコール含有液を添加して得られたものである請求項1記載のすし酢を提供するものである。
即ち、請求項3に係る本発明は、常法による食酢の製造における酢酸発酵終了後または熟成終了後の食酢に、肌糠を原料として用いて得た糖化液又は当該糖化液をアルコール発酵させて得たアルコール含有液を添加して食酢を得、これを配合して合せ酢(すし酢)としたものである。
この方法では、肌糠を原料として、上記した方法により得た糖化液又は当該糖化液をアルコール発酵させて得たアルコール含有液を、酢酸発酵終了後又は熟成終了後の食酢に添加して食酢を製造する。
具体的には、常法による米、酒粕、果実等を原料とする米酢、粕酢、果実酢等の食酢の製造において、酢酸発酵終了後の食酢又は熟成終了後の食酢に、上記の糖化液又は当該糖化液をアルコール発酵させて得たアルコール含有液を0.1〜100%、好ましくは5〜50%添加した後、直ちに濾過し、殺菌して製品である食酢を得る。
【0011】
このようにして得られる食酢は、赤糠や白糠を原料として製造した食酢、例えば米酢に比べて風味が異なり、エキス分が多いという特色を有している。この肌糠を原料とした食酢は、合せ酢の原料として用い、二杯酢や三杯酢等に利用できるが、特にすし酢とした場合、独特の風味を有しており、すしに良くマッチしたまったり感のあるすし酢が得られる。
【実施例】
【0012】
以下に、実施例により本発明を詳しく説明する。
製造例1
肌糠(商品名:米の精、東洋精米機製作所製)1.5kgを4Lの水に浸漬、分散させた後、液化型アミラーゼを2g加え、120℃で30分間加熱蒸煮を行った。次いで、これを冷却した後、糖化型アミラーゼを6g、プロテアーゼを1g加えて良く混合し、60℃で20時間糖化処理した。
この糖化液を圧搾、分離して得た糖化液3Lに、予め前培養しておいた酵母(サッカロミセス・セレビシエ)培養液500mLを加え、25℃で4日間アルコール発酵を行ってアルコール含有液3.3Lを得た。
【0013】
次いで、容積9.6Lの深部培養器に上記アルコール含有液3Lと95%酒精400mLを加え、さらに種酢1Lと水5.2Lを加えて深部培養法により、30〜34℃で5日間程酢酸発酵を行った。
発酵終了後、酢酸発酵液を直ちに濾過し、殺菌して混濁物がなく、かつ香味が良好な食酢8Lを得た。この肌糠由来の食酢の成分を分析したところ、市販の米酢と比べてアミノ酸、ミネラル、ビタミンの各含量がそれぞれ約10倍程度多いことが分かった。
また、この食酢を経験豊富なパネラー10名により香り、酸味及び嗜好について官能的に評価した。その結果、香りに関しては甘い香りが強く、好ましいとの評価が得られ、酸味に関してはまろやかな酸味があると評価され、嗜好については香り、酸味共に良好で、好まれるものであるとの評価を得た。
【0014】
製造例2
肌糠(商品名:米の精、東洋精米機製作所製)1.5kgを3Lの水に浸漬、分散させた後、液化型アミラーゼを2g加え、120℃で20分間加熱蒸煮を行った。次いで、これを冷却した後、糖化型アミラーゼを4g、プロテアーゼを0.5g加えて良く混合し、57℃で20時間糖化処理した。
この糖化液2Lに95%酒精125mLと種酢2L及び水375mLを加えて混合し、加温して30℃としたものを、容積5Lの容器に入れ、均一に混合した後、30℃に保温して5日間静置し酢酸発酵を行った。
発酵終了後、酢酸発酵液を直ちに濾過し、殺菌して混濁物がなく、かつ香味が優れた食酢を約4.5L得た。このとき得られた食酢の酸度は5.2%、Brixは14.1、pHは3.6であった。
【0015】
製造例3
精白米500gを水に浸漬した後、通常の方法により蒸煮し、冷却して得た蒸米に麹菌(アスペルギルス・オリゼー)を接種して30℃、湿度95%の条件下で3日間製麹して米麹650gを得た。
この米麹650gと水2Lを3L容の容器に入れ、混合して加温し、60℃で40時間糖化処理した。糖化終了後、圧搾して2000Lの糖化液を得た。
次いで、この糖化液に、予め前培養しておいた酒母500mLを加え、20℃でアルコール発酵を10日間実施した。この発酵で香味が良好なアルコール発酵液2.3Lを得た。
次に、アルコール発酵液2Lと水1880mL及び95%酒精120mLを混合し、加温して40℃としたのち、これに種酢3.5Lを加え、これを容積8Lの木桶に入れ、保温しながら静置して60日間酢酸発酵させ、米酢7Lを得た。
【0016】
一方、肌糠を原料として実施例1と同様の方法でアルコール濃度5%のアルコール含有液3Lを製造した。
このアルコール含有液500mLを上記の米酢7Lに加えて混合し、直ちに濾過し、殺菌して混濁物の存在しない香味の優れた食酢7.5Lを得た。
【0017】
実施例1
製造例2で得た肌糠由来の食酢200mL、砂糖150g、食塩36g及びグルタミン酸ナトリウム2gを混合し、合せ酢(すし酢)を製造した。
このすし酢を米飯と混ぜてすし飯を調製し、品質を官能的に評価した。結果を第1表に示す。
【0018】
【表1】


【0019】
*:合せ酢を冷却後、乾燥しないようにラップに包み、室温で24時間放置したものについて酸味の強さを評価した。
◎:非常に好ましい、○:好ましい、△:普通、×:好ましくない
【出願人】 【識別番号】398065531
【氏名又は名称】株式会社ミツカングループ本社
【出願日】 平成17年8月31日(2005.8.31)
【代理人】 【識別番号】100074077
【弁理士】
【氏名又は名称】久保田 藤郎

【識別番号】100086221
【弁理士】
【氏名又は名称】矢野 裕也

【公開番号】 特開2005−341975(P2005−341975A)
【公開日】 平成17年12月15日(2005.12.15)
【出願番号】 特願2005−250649(P2005−250649)