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【発明の名称】 錆面塗料およびそれを用いた防食方法
【発明者】 【氏名】根本 弘充
【住所又は居所】兵庫県加古川市野口町北野 日本精化株式会社研究所内

【氏名】有沢 博光
【住所又は居所】兵庫県加古川市野口町北野 日本精化株式会社研究所内

【氏名】堀江 清
【住所又は居所】兵庫県加古川市野口町北野 日本精化株式会社研究所内

【要約】 【課題】錆面鋼板に対して簡単な下地処理でも防食性の優れた塗料の提供およびそれを用いた防食方法の提供。

【解決手段】親油性界面活性剤、液状油及び熱可塑性樹脂を含有する鋼板の錆面用の非エポキシ樹脂系塗料およびそれを用いるの防食方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
親油性界面活性剤、液状油及び熱可塑性樹脂を含有する鋼板の錆面用の非エポキシ樹脂系塗料。
【請求項2】
親油性界面活性剤がラノリン、ラノリン誘導体、油溶性スルホネート類からなる群から選ばれた少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1の錆面用の非エポキシ樹脂系塗料。
【請求項3】
粘度が3000〜50000mPsである請求項1または2の非エポキシ樹脂系塗料
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の非エポキシ樹脂系塗料を用いた防食方法

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、タンクなどの錆面鋼板の防食方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
船舶や橋梁などのタンク類の内面は塩分、湿度などの影響で、非常に腐食しやすく径年劣化により数mm厚におよぶ錆やさびぶくれが生じ、防食メンテナンスが施されてきている。防食方法としては防食性に優れているためエポキシ樹脂系塗料などが使用されていたが、鋼表面との密着性を確保するためには、下地処理により錆を完全に除去する必要があった。
【0003】
しかし、完全な下地処理としてブラスト処理などのを行うには多大な時間と労力を要するうえ、粉塵、騒音などの発生により作業環境面でも問題があり、簡単な下地処理でも可能な防食方法が望まれていた。特に船舶のバラストタンク、橋梁のタンクなど狭い空間では、その作業性は非常に困難であった。
【0004】
この改善策として、錆鋼の錆層の厚みを膜厚計にて一定以下にコントロールする方法、塗液を特定の粘度にすることにより錆層への浸透性と膜厚を確保する方法などが知られているが、いずれもエポキシ樹脂系の塗料であり、錆面への密着性が不十分であり、その効果は満足いくものではなかった。
【特許文献1】特開平6−206046号公報
【特許文献2】特開平9−206675号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
錆面鋼板に対して簡単な下地処理でも防食性の優れた塗料の提供およびそれを用いた防食方法
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、親油性界面活性剤、液状油及び熱可塑性樹脂を含有する非エポキシ樹脂系塗料が鋼板の錆面に対して簡単な下地処理にて防食性に優れた塗膜をつくることを見いだし、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は親油性界面活性剤、液状油及び熱可塑性樹脂を含有する鋼板の錆面用の非エポキシ樹脂系塗料およびそれを用いるタンク等の錆面鋼板の防食方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の防食方法は錆面を簡単な下地処理後、塗装をするだけで防食性の優れた塗膜を得る利点がある。簡単な下地処理なので、施工時間、費用も少なく、作業環境も良好であり、殊に狭いタンクの施工には好都合である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の塗料に含有される親油性界面活性剤としてはカルボン酸類、カルボン酸塩類、アルコール類、油溶性スルホネート類、リン酸エステル類、ノニオン界面活性剤類などを挙げることができる。
【0009】
このカルボン酸類としてはモノカルボン酸として、炭素数8〜34のものであれば、特に限定されないが、好ましくは、炭素数12〜32である。本発明で用いられるモノカルボン酸の例としてはドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、ペンタデカン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、ノナデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、テトラコサン酸などの直鎖飽和酸、イソドデカン酸、イソトリデカン酸、イソテトラデカン酸、イソペンタデカン酸、イソヘキサデカン酸、イソヘプタデカン酸、イソオクタデカン酸、イソノナデカン酸、イソエイコサン酸、2−エチルヘキサン酸、2−ブチルオクタン酸、2−ヘキシルデカン酸、2−オクチルドデカン酸、2−デシルテトラデカン酸、2−ドデシルヘキサデカン酸、2−テトラデシルオクタデカン酸、2−ヘキサデシルオクタデカン酸、ラノリンから得られる長鎖分岐脂肪酸などの分岐酸、リンデル酸、ミリストレイン酸、パルミトレン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エライジン酸、ガドレン酸、エイコサペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸、エルカ酸、ブラシジン酸、アラキドン酸などの直鎖不飽和脂肪酸、2−ヒドロキシドデカン酸、2−ヒドロキシトリデカン酸、2−ヒドロキシテトラデカン酸、2−ヒドロキシヘプタデカン酸、2−ヒドロキシヘキサデカン酸、2−ヒドロキシヘプタデカン酸、2−ヒドロキシオクタデカン酸、12−ヒドロキシオクタデカン酸、2−ヒドロキシノナデカン酸、2−ヒドロキシエイコサン酸、2−ヒドロキシドコサン酸、2−ヒドロキシテトラコサン酸、ラノリンから得られる長鎖分岐2−ヒドロキシ脂肪酸などのヒドロキシ酸、水素添加ロジン、ロジン、アビエチン酸、水素添加アビエチン酸、ブタン安息香酸、などの環状酸が挙げられる。さらに、オレンジ油脂肪酸、アボガド油脂肪酸、マカデミアナッツ油脂肪酸、オリーブ油脂肪酸、水素添加大豆油脂肪酸、ホホバ油脂肪酸、ヤシ油脂肪酸、水素添加ヤシ油脂肪酸、パーム核油脂肪酸、ヒマシ油脂肪酸、サフラワー油脂肪酸、綿実油脂肪酸、牛脂脂肪酸、水素添加牛脂脂肪酸、ラノリン脂肪酸、ミンク油脂肪酸、酸化パラフィンワックス脂肪酸、酸化ペトロラタム脂肪酸等の天然由来脂肪酸等も炭素数8〜34のモノカルボン酸を含有するので、本発明で用いることができる。ジカルボン酸としては植物油脂肪酸を重合して得られるダイマー酸や水素添加ダイマー酸を用いることもできる。これらのカルボン酸類のうち特に好ましいのはアビエチン酸、ラノリン脂肪酸、酸化パラフィン脂肪酸、酸化ペトロラタム脂肪酸である。
【0010】
カルボン酸塩類としては上記カルボン酸類のアルカリ金属(Li、Na、K)、アルカリ土類金属(Ca、Mg、Ba)、亜鉛、アルミニウム、鉄、アミンなどの塩類を用いることができる。これらの塩類のうちLi、Ca、Mg、Ba、Zn,Alの塩が好ましい。特に好ましいのはオクタデカン酸カルシウム、ラノリン脂肪酸カルシウム、ラノリン脂肪酸バリウム、ラノリン脂肪酸亜鉛、酸化ペトロラタムバリウム塩である。
【0011】
アルコール類としては炭素数C10−30の脂肪族又は脂環族アルコール、例えばオレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ラノリンアルコール、ロジンアルコールを例示できる。このうちオレイルアルコール、ラノリンアルコールが好ましい。
【0012】
油溶性スルホネート類としては石油精製の副産物として得られる天然石油スルホネート、ジアルキルベンゼンやノニルナフタレンをスルホン化して得られる合成スルホネート、これらのスルホネートに炭酸カルシウムや炭酸バリウムを高度に分散させた高塩基性スルホネートなどが用いられる。これらの油溶性スルホネートの塩としてはナトリウム、カルシウム、マグネシウム、バリウム、アミン類などの塩類が市販されており、いずれも用いることができるがカルシウム塩は安定性、安全性で好ましい。また高塩基性スルホネートは特に好ましい。
【0013】
リン酸エステル類としてはリン酸と炭素数C8−20脂肪族アルコールとのエステルであるモノアルキルリン酸エステル、ジアルキルリン酸エステル、トリアルキルリン酸エステル、およびそれらの金属塩、アミン塩など、およびレシチンなども用いることができる。
【0014】
ノニオン界面活性剤としてはHLB10以下のより好ましくはHLB8以下のノニオン界面活性剤が用いられる。このようなものとして、上記カルボン酸類と多価アルコールの部分エステルであるエステル型ノニオン界面活性剤、例えばオレイン酸モノグリセライド、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ラノリン脂肪酸ペンタエリスリトールエステル、ラノリン脂肪酸トリメチロールプロパンエステル、大豆脂肪酸トリメチロールプロパンエステルなどを、ポリオキシアルカノールエーテル型ノニオン界面活性剤、例えばオレイルアルコールEO2モル付加物などを、ヒドロキシ脂肪酸のエステル型ノニオン界面活性剤、例えばステアリル乳酸エステル、
オレイルリンゴ酸エステル、ラノリンなどを例示できる。これらのうち特にラノリン、ラノリン脂肪酸ペンタエリスリトールエステル、ラノリン脂肪酸トリメチロールプロパンエステルは好ましい。
【0015】
本発明の塗料におけるの親油性界面活性剤の含有量は、適宜選択することができるが目安として不揮発成分中の1〜50重量%程度が適当であり、5〜20重量%が好ましい。
【0016】
本発明の塗料に含有される液状油としては親油性界面活性剤を溶解あるいは微細に分散させることのできる、撥水性の液状オイルであればよく、炭化水素系のものとして、鉱物油、流動パラフィン、ポリオレフィン油などを、エステル系の液状油としては動植物油、例えば大豆油、菜種油、ホホバオイル、チキンオイル、メンヘーデン油などを例示できる。
本発明の塗料における液状油の含有量は不揮発成分の1〜50重量%程度が適当であり、5〜30重量%が好ましい。
【0017】
本発明の塗料における熱可塑性樹脂としては、石油樹脂、クマロン樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、低分子量ポリエチレン樹脂、アスファルトなどを用いることができ、このうち石油樹脂、クマロン樹脂、アスファルトは好ましい。
熱可塑性樹脂は塗膜の強度を強くするのに必要で、その含有量は不揮発性分中に5〜50重量%程度が適当であり、10〜30重量%が好ましい。多すぎると膜強度は強くなるが、柔軟性に欠けるようになり、また密着性が低下する。
【0018】
本発明の塗料には一般の塗料に使用される添加剤、例えば溶剤、顔料、ダレ止め剤、などを必要に応じて用いることができる。
溶剤としてはトルエン、キシレン、ガソリン、エーテル、テトラヒドロフラン、アセトン、MEK、MIBK、IPA、イソブタノール、酢酸エチルなどを例示できる。
【0019】
顔料としては、タルク、カオリン、酸化チタン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、ベンガラ、亜鉛末、アルミ末およびこれらの粉末を有機物で表面処理したものなどを例示できる。
【0020】
ダレ止め剤としては有機ベントナイト、微粉末シリカ、ひまし油誘導体などを例示できる。
【0021】
本発明の塗料は親油性界面活性剤、液状油、熱可塑性樹脂、溶剤及び必要に応じて顔料等の添加剤をニーダー等の攪拌機に仕込み、混合撹拌することにより得られる。熱可塑性樹脂など溶解に加温を要するものは、あらかじめ溶剤に溶解したものを用いてもよく、全量の混合撹拌時に加温してもよい。塗料の粘度は3000〜20000mPsにするのが好ましく、殊に4000〜10000mPsが塗装の作業性からより好ましい。3000mPsより粘度が低いと一回塗りの膜厚が薄くなり、重ね塗りをすると乾燥のインターバルなどもあり作業時間が大幅に長くなる。また20000mPs以上では浸透性がわるくなり、かつ塗装装置が特殊な高圧スプレーあるい加温スプレーなどの特殊塗装となり作業性がわるくなる。
【0022】
本発明の防食方法における簡単な下地処理としては、まずスクレーパー、電動サンダーなどにより浮き錆(腐食がかなり進行し、手で軽く触れたり研磨したりすると、容易に剥がれる錆)を取り除く。ついで、表面の粉錆、ごみ、塩分などが多い場合は、箒等や水をシャワーして取り除くことが好ましい。水洗をした場合は乾燥後に塗装作業を行う。
【0023】
塗装には刷毛ぬり、ロール塗り、エアレススプレーが適用できるが、作業性からはエアレススプレーが好ましい。このようなエアレススプレー機としてはPremier45:1(グラコ社製 エアー駆動エアレススプレー機)などがある。本発明の防食方法では塗料は錆の状況等を考慮してwet 300〜1000μm程度塗布する。塗料には親油性界面活性剤、液状油が含有されており、錆層の深部まで塗料が浸透して錆層中の空気と置換したり、錆層中の水分を塗料内に取り込んで、鉄面の錆化の進行に必要な酸素や水分を鉄面から遮断することにより、錆の進行を抑制するものと推定される。そして、塗装膜厚を十分に確保することにより、ピンホールの防止、酸素、水分の浸透を防止することが期待される。
【実施例】
【0024】
以下、本発明を実施例を用いてより詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでない。
【0025】
実施例1〜3、比較例1
表1に示す成分をニーダーに仕込み、110℃まで加熱混合後、室温まで冷却して各塗料を調製し、下記方法で粘度、垂れ性試験、塩水噴霧試験を行った。
結果を表2に示す。
【0026】
【表1】



【0027】
【表2】



【0028】
試験方法

1.塩水噴霧試験(JIS−Z2371準拠)
塩水噴霧試験機 :スガ試験機株式会社 ST−90
試験条件
試験室温度 :35℃、
5%食塩水、噴霧量 1〜2ml/hr、80cm2
噴霧圧 0.098 mPa
試験板
70×150×3.2mmの黒皮鋼板を海辺のスプラッシュゾーンに暴露し、層状錆、こぶ錆等を発生させた錆鋼板に、スクレーパーを用いて軽く擦って、緩く結合している浮き錆を取り除いた。ついで表面を水道水で掛け洗浄を行い、風乾した。この錆鋼板にエアレススプレーALS−431(アネスト岩田(株)製 )にて試験塗料をwet500μmの膜厚で塗布を行い、乾燥後塩水噴霧試験に供した。実施例4、および比較例1は重ね塗りして所定膜厚にした。
2.粘度
BM型回転粘度計 No.4ローター 30rpm 室温にて測定。
3.垂れ性試験
冷間圧延ダル鋼板(70×150×1.2mm)を垂直にして、試験塗料をエアレススプレーにて所定の膜厚に塗布し、垂れ性をみる。

評価
垂れ試験
〇 :膜の垂れ落ちがないもの
△ :垂れ落ちが3mm以内であるもの
× :3mm以上垂れてしまうもの

塩水噴霧試験 2000時間後
〇 :塗膜表面に錆汁がでてこないもの
△ :塗膜表面に錆汁が少しでているもの
× :塗膜表面に錆汁が広がっているもの

【0029】
表2から実施例の発明は錆面鋼板への防錆性にすぐれ、また塗料は垂れ落ち性に優れており、厚塗りが容易に行える。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明により、船舶のバラストタンク、橋梁のタンクなど錆面鋼板の防食用塗料の提供及び、防食方法を提供することができる。
【出願人】 【識別番号】000231497
【氏名又は名称】日本精化株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区備後町2丁目4番9号
【識別番号】503413330
【氏名又は名称】マリンクラフト工業株式会社
【住所又は居所】兵庫県神戸市中央区相生町5丁目12−14
【出願日】 平成15年11月10日(2003.11.10)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−139406(P2005−139406A)
【公開日】 平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願番号】 特願2003−380413(P2003−380413)