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【発明の名称】 苦瓜を原料とするモモルデシンの回収方法
【発明者】 【氏名】木下 弘嗣
【住所又は居所】福岡県福岡市中央区大手門3−14−19 メディア・プライス本社ビル 株式会社メディア・プライス内

【要約】 【課題】苦瓜から高い純度のモモルデシンを抽出して回収することができる苦瓜を原料とするモモルデシンの回収方法を提供すること。

【解決手段】苦瓜をエタノールで抽出して苦瓜抽出溶液を生成し、同苦瓜抽出溶液を酸性に調整した後に冷蔵下で静置し、上澄み液と沈殿物に分離させた後に沈殿物を除去することにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
苦瓜をエタノールで抽出して苦瓜抽出溶液を生成し、同苦瓜抽出溶液を酸性に調整した後に冷蔵下で静置し、上澄み液と沈殿物に分離させた後に沈殿物を除去することを特徴とする苦瓜を原料とするモモルデシンの回収方法。
【請求項2】
前記沈殿物を除去した上澄み液に苦瓜の微粉末を添加してモモルデシンを析出させることを特徴とする請求項1記載の苦瓜を原料とするモモルデシンの回収方法。
【請求項3】
苦瓜をエタノールで抽出して苦瓜抽出溶液を生成し、同苦瓜抽出溶液から分子量600以上の物質を分子ふるいにより分別して回収することを特徴とする苦瓜を原料とするモモルデシンの回収方法。
【請求項4】
前記苦瓜抽出溶液は、分子ふるいにより分子量618、632、及び816の物質に分別することを特徴とする請求項3記載の苦瓜を原料とするモモルデシンの回収方法。
【請求項5】
前記苦瓜抽出溶液は、酸性に調整した後に冷蔵下で静置し、上澄み液と沈殿物に分離させた後に沈殿物を除去していることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の苦瓜を原料とするモモルデシンの回収方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、苦瓜を原料とするモモルデシンの回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
今日では、苦瓜に含まれる各種有効成分の存在が明らかになってきており、かかる有効成分に着目して苦瓜の成分を含有させるようにした苦瓜含有製品が食品や化粧品等の各種分野において提案されている。
【0003】
上記苦瓜含有製品では、苦瓜の果実の抽出物や圧搾液等を製品中に混入することにより、苦瓜の有効成分が製品中に含有されるようにしている(たとえば、特許文献1参照。)。
【特許文献1】特開2002−212050号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した苦瓜の抽出物や圧搾液には、苦瓜中の様々な成分が混在しているため、特定の効能を有する成分に限ってみれば、前述した抽出液や圧搾液をそのまま利用すると、その他の成分のために特定の効能を有する成分自体の含有率は低下してしまい、その効能が低下することになってしまっていた。
【0005】
また、その他の成分によって、逆に、前記特定の効能を有する成分の作用が妨げられるおそれもあった。
【0006】
本願発明者は、今回、苦瓜の苦み成分であり、糖尿病治療作用を有するモモルデシンに着目し、同モモルデシンを高い純度で苦瓜から回収する方法を研究した。本発明は、苦瓜から純度の高いモモルデシンを回収することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の苦瓜を原料とするモモルデシンの回収方法では、苦瓜をエタノールで抽出して苦瓜抽出溶液を生成し、同苦瓜抽出溶液を酸性に調整した後に冷蔵下で静置し、上澄み液と沈殿物に分離させた後に沈殿物を除去することにした。
【0008】
また、上記本発明の苦瓜を原料とするモモルデシンの回収方法は、前記沈殿物を除去した上澄み液に苦瓜の微粉末を添加してモモルデシンを析出させることにも特徴を有する。
【0009】
また、本発明の苦瓜を原料とするモモルデシンの回収方法では、苦瓜をエタノールで抽出して苦瓜抽出溶液を生成し、同苦瓜抽出溶液から分子量600以上の物質を分子ふるいにより分別して回収することにした。
【0010】
また、上記本発明の苦瓜を原料とするモモルデシンの回収方法は、以下の点にも特徴を有するものである。
(1)前記苦瓜抽出溶液は、分子ふるいにより分子量618、632、及び816の物質に分別すること。
(2)前記苦瓜抽出溶液は、酸性に調整した後に冷蔵下で静置し、上澄み液と沈殿物に分離させた後に沈殿物を除去していること。
【発明の効果】
【0011】
請求項1記載の本発明によれば、苦瓜をエタノールで抽出して苦瓜抽出溶液を生成し、同苦瓜抽出溶液を酸性に調整した後に冷蔵下で静置し、上澄み液と沈殿物に分離させた後に沈殿物を除去することにしたので、苦瓜抽出溶液から低分子物質を多く含む沈殿物を除去して、モモルデシンとなる高分子物質を多く含む上澄み液を残すことができ、モモルデシンを効率よく回収することができる。
【0012】
請求項2記載の本発明によれば、前記沈殿物を除去した上澄み液に苦瓜の微粉末を添加してモモルデシンを析出させることにしたので、前記微粉末を核としてモモルデシンを析出しやすくなり、苦瓜抽出溶液からモモルデシンを効率よく回収することができる。
【0013】
請求項3記載の本発明によれば、苦瓜をエタノールで抽出して苦瓜抽出溶液を生成し、同苦瓜抽出溶液から分子量600以上の物質を分子ふるいにより分別して回収することにしたので、高濃度のモモルデシンを簡単な方法でコストをかけることなく回収することができる。
【0014】
請求項4記載の本発明によれば、前記苦瓜抽出溶液は、分子ふるいにより分子量618、632、及び816の物質に分別することにしたので、モモルデシンの構成物質を3つの分子量に分けて、各分子量のモモルデシン構成物質を用途に合わせて使い分けることができる。
【0015】
請求項5記載の本発明によれば、前記苦瓜抽出溶液は、酸性に調整した後に冷蔵下で静置し、上澄み液と沈殿物に分離させた後に沈殿物を除去しているので、苦瓜抽出溶液から低分子物質を多く含む沈殿物を除去して、モモルデシンとなる高分子物質を多く含む上澄み液を残すことができ、モモルデシンを効率よく回収することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明に係る苦瓜を原料とするモモルデシンの回収方法は、苦瓜をエタノールで抽出して苦瓜抽出溶液を生成し、同苦瓜抽出溶液からモモルデシンを回収するものである。
【0017】
原料である苦瓜には、ウリ科(Cucurbitaceae)ツルレイシ属(momordica)に含まれる全ての種を用いることができ、同苦瓜からは、ウリ科植物の中でも特に効率よくモモルデシンを回収することができる。
【0018】
苦瓜は生のままであっても乾燥させた後であっても使用することができるが、特に乾燥粉末にして使用した場合には、エタノールに接触する乾燥粉末の面積を大きくしてモモルデシンの抽出効率を向上させることができる。
【0019】
なお、乾燥させた苦瓜を使用する場合には、苦瓜を自然乾燥によって緩慢に乾燥させると、苦瓜中の糖分子間に二次結合が生じて水の浸透が妨げられ、モモルデシンの溶解率が低下してしまうので、苦瓜は急速に乾燥させることが望ましい。
【0020】
また、溶媒として用いるエタノールは、濃度を70〜85重量%とするのが望ましく、かかる濃度範囲のエタノールを用いることにより、モモルデシンの抽出効率を向上させることができると共に、最終処理物としてのモモルデシンの含水率を抑えて品質を保持しやすくすることができる。
【0021】
本発明に係るモモルデシンの回収方法では、上記苦瓜とエタノールとを混合して、まず、モモルデシンを含む苦瓜成分が抽出された苦瓜抽出溶液を生成する。
【0022】
次に、生成した苦瓜抽出溶液から減圧濃縮等によりエタノールを回収し、酸性に調整した後に冷蔵下で静置して上澄み液と沈殿物に分離し、沈殿物を除去する。前記沈殿物には分子量600以下の低分子物質が多く含まれ、前記上澄み液にはモモルデシンの構成物質となりうる分子量600以上の高分子物質が多く含まれる。従って、苦瓜抽出溶液から沈殿物を除去することにより、モモルデシンを効率よく回収することができる。
【0023】
次に、前記沈殿物を除去した上澄み液に粒径20μm程度の苦瓜の微粉末を前記上澄み液の重量の約2〜3%分添加してモモルデシンを析出させる。前記苦瓜の微粉末は、モモルデシンの結晶が析出する際の核となるので、苦瓜の微粉末を添加することによりモモルデシンが析出しやすくなり、苦瓜抽出溶液から効率よくモモルデシンを回収することができる。
【0024】
上述のようにして析出させたモモルデシンには、エタノールを混合して再びモモルデシンの抽出を行う。このように、2回に分けてエタノールによる抽出を行うので、苦瓜からより純度の高いモモルデシンを回収することができる。しかも、2回の抽出では、ともに安全性の高いエタノールを溶媒として使用するので、最終処理物であるモモルデシンに溶媒が残留していたとしても危険性がない。
【0025】
なお、2回目にモモルデシンの抽出を行う際には、エタノールの濃度を100重量%として、1回目よりも高い濃度のエタノールを用いるのが望ましい。それにより、モモルデシンの抽出量を増加させることができる。
【0026】
次に、モモルデシンの溶け込んだモモルデシン抽出溶液を遠心分離にかけ、上澄み液となるエタノールと、沈殿物となるモモルデシンとに分離する。
【0027】
或いは、前記モモルデシン抽出溶液を分子ふるいにかけて、モモルデシンの含有率が高い分子量600以上の物質を溶液として回収することもできる。特に、分子ふるいによりモモルデシンを回収するに際して、モモルデシンの構成物質である分子量618、632、及び816の物質を別々に回収すれば、それぞれ効能が異なる各分子量のモモルデシン構成物質を用途に合わせて使い分けることができる。このように分子ふるいによりモモルデシンを回収する場合には、分子ふるいを透過したモモルデシンを含む溶液から減圧濃縮等によってエタノールを回収する必要がある。
【0028】
なお、分子ふるいによりモモルデシンを回収する場合には、前記苦瓜の微粉末の添加を行わずに、pH調節により上澄み液と沈殿物とに分離して沈殿物を除去した後の上澄み液を直接分子ふるいにかけたり、或いはpH調節により上澄み液と沈殿物とに分離することなく直接苦瓜抽出溶液を分子ふるいにかけたりすることもできる。また、分子ふるいとしては、充填剤にシリカゲルを用いたカラムを好適に用いることができる。
【0029】
上述のように遠心分離、又は分子ふるいによりモモルデシン抽出溶液から分離されたモモルデシンは、スプレードライや熱風乾燥により乾燥させると共に、篩にかけて100メッシュ以下の粉末を選別する。このように、モモルデシンの形状を乾燥粉末状態とすることによって、扱いやすく、品質が保持しやすくなる。
【0030】
特に、上記スプレードライや熱風乾燥による乾燥処理は60℃〜140℃の温度下で行うのが望ましく、かかる温度域で乾燥処理を行うことにより、モモルデシンを変性させることなく効率よく乾燥させることができる。
【0031】
なお、前述した2回目のモモルデシン抽出、及びそれに伴うエタノールの回収を省略して、1回目のモモルデシン抽出後に苦瓜の微粉末を添加することにより析出させたモモルデシンを、直接、スプレードライや熱風乾燥により乾燥処理することもできる。
【0032】
以下に、本発明に係る苦瓜を原料とするモモルデシンの回収方法の実施形態を、より具体的に説明する。
【0033】
[実施形態1]
(1)第1モモルデシン抽出液生成工程
まず、苦瓜の葉、茎、及び根の乾燥粉末を溶媒である75%エタノールと混合して、モモルデシンを抽出する。
【0034】
(2)溶媒回収工程
次に、上記抽出溶液を約90度の温度下で加熱して溶媒を蒸発させ、その後、約80度の温度下で前記蒸発した溶媒を回収する減圧濃縮を約5時間かけて行い、抽出溶液から溶媒の大部分を回収する。
【0035】
(3)第1静置工程
次に、濃縮された抽出溶液を5度の温度下で24時間静置し、抽出溶液中の脂肪分を固形分として発生させる。
【0036】
(4)第1濾過工程
次に、静置後の抽出溶液を膜分離又はセライト(珪藻土)により濾過し、前工程で発生した脂肪分やその他の沈殿物を抽出溶液から除去する。
【0037】
(5)第2静置工程
次に、濾液からなる抽出溶液を酢酸にてpH4〜5に調節し、pH調節後の抽出溶液を5度の温度下で再び24時間静置し、抽出溶液を上澄み液と沈殿物とに分離させる。
【0038】
(6)第2濾過工程
次に、静置後の抽出溶液をフィルターにて濾過し、沈殿物となる抽出溶液中の色素や一部ゼリー状雑物(フィトコラージュ)等の低分子物質を除去する。
【0039】
(7)第2モモルデシン抽出液生成工程
次に、苦瓜の葉、茎、及び/又は根の粒径約20μmの微粉末を濾液からなる抽出溶液に対しその重量の2%分添加し、モモルデシンの結晶を析出させる。このように、苦瓜の微粉末を添加することにより、同微粉末が種となってモモルデシンを効率よく析出させることができる。
【0040】
上記処理により析出したモモルデシンの結晶は、親水性溶媒である100%エタノールに溶解させて、再びモモルデシンの抽出を行う。
【0041】
(8)遠心分離工程
次に、上記第2モモルデシン抽出液生成工程により生成された抽出溶液を遠心分離にかけて、モモルデシンを含む沈殿物とエタノールを含む水分とに分離し、水分を除去する。
【0042】
(9)乾燥工程
次に、遠心分離により分離された沈殿物を85度の温度下で6時間熱風乾燥する。
【0043】
(10)選別工程
上述のようにして乾燥させたモモルデシンの乾燥粉末は、篩にかけて100メッシュ以下の物質を選別し、これを最終処理物とする。
【0044】
上記(1)〜(10)の工程からなるモモルデシンの回収方法によれば、苦瓜に含まれるモモルデシンを高い純度で回収することができる。
【0045】
[実施形態2]
本実施形態のモモルデシンの回収方法は、上記実施形態1と(1)〜(6)の工程が共通であり、それ以降の工程が異なってくる。そこで、以下においては、上記実施形態1と共通の(1)〜(6)の工程を省略し、本実施形態に特徴的な(7)以降の工程を説明する。
【0046】
(7)カラム透過工程
カラム透過工程では、上記実施形態1の(6)における第2濾過工程終了後の抽出溶液を、シリカゲルを充填したカラムに透過させ、まず、精製水を溶媒に用いて低分子量の糖を洗い落とす。次に、65〜70%のエタノールを溶媒に用いて分子量618、632、及び816の物質を溶液としてそれぞれ回収する。
【0047】
(8)第2溶媒回収工程
次に、各分子量の物質を含む溶液をそれぞれ前記実施形態1の(2)における溶媒回収工程と同様の温度条件下で1時間減圧濃縮し、溶媒であるエタノールを溶液中から回収する。
【0048】
(9)乾燥工程
次に、エタノール回収後の残留物を、入口温度80度、出口温度100〜120度の温度条件下でスプレードライにより乾燥させる。
【0049】
(10)選別工程
上述のようにして乾燥させた各分子量毎のモモルデシンの乾燥粉末は、実施形態1の(10)における選別工程と同様、篩にかけて100メッシュ以下の物質を選別し、これを最終処理物とする。
【0050】
上記実施形態2のモモルデシンの回収方法によれば、苦瓜に含まれるモモルデシンを高い純度で回収することができると共に、モモルデシンの構成物質を3つの分子量に分けて回収することができ、各分子量のモモルデシン構成物質を用途に合わせて使い分けることができる。
【0051】
[実施形態3]
本実施形態のモモルデシンの回収方法は、上記実施形態1及び2と(1)〜(6)の工程が共通であり、それ以降の工程が異なってくる。そこで、以下においては、上記実施形態1及び2と共通の(1)〜(6)の工程を省略し、本実施形態に特徴的な(7)以降の工程を説明する。
【0052】
(7)モモルデシン析出工程
モモルデシン析出工程では、前記実施形態1の(7)における第2モモルデシン抽出液生成工程と同様、苦瓜の葉、茎、及び/又は根の粒径約20μmの微粉末を、(6)の第2濾過工程終了後の抽出溶液に対してその重量の2%分添加し、モモルデシンの結晶を析出させる。このように、苦瓜の微粉末を添加することにより、同微粉末が種となってモモルデシンを効率よく析出させることができる。
【0053】
(8)乾燥工程
前記工程において析出したモモルデシンの結晶は、前記実施形態2の(9)における乾燥工程と同様、入り口温度80度、出口温度100〜120度の温度条件下でスプレードライにかけて乾燥させる。
【0054】
(9)選別工程
上述のようにして乾燥させたモモルデシンの乾燥粉末は、実施形態1及び2の(10)における選別工程と同様、篩にかけて100メッシュ以下の物質を選別し、これを最終処理物とする。
【0055】
上記実施形態3のモモルデシンの回収方法によれば、苦瓜に含まれるモモルデシンを高い純度で回収することができると共に、より少ない操作でモモルデシンを回収することができ、回収に要する手間を省くことができる。
【出願人】 【識別番号】595116186
【氏名又は名称】株式会社メディア・プライス
【住所又は居所】福岡県福岡市中央区大手門3−14−19 メディア・プライス本社ビル
【出願日】 平成15年10月23日(2003.10.23)
【代理人】 【識別番号】100080160
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 憲一郎

【公開番号】 特開2005−126370(P2005−126370A)
【公開日】 平成17年5月19日(2005.5.19)
【出願番号】 特願2003−363829(P2003−363829)