トップ :: C 化学 冶金 :: C07 有機化学

【発明の名称】 質量数13の炭素原子を含むポリエチレングリコールモノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物及びその製造方法
【発明者】 【氏名】伊藤 あづさ
【住所又は居所】大阪府大阪市此花区春日出中3丁目1番135号 株式会社住化分析センター内

【氏名】北坂 和也
【住所又は居所】大阪府大阪市此花区春日出中3丁目1番135号 株式会社住化分析センター内

【氏名】吉田 寧子
【住所又は居所】千葉県袖ケ浦市北袖9番1号 株式会社住化分析センター内

【要約】 【課題】ポリエチレングリコールモノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物のサロゲート物質として好適なエーテル化合物及びその製造方法;該エーテル化合物の製造中間体として用いられる、分子内に3つ以上のエチレングリコールからなるポリエチレングリコールに由来する構造単位と、アルキルフェノールに由来する構造単位とからなるエーテル化合物を製造する方法;並びに、ポリエチレングリコールモノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物を環境試料から正確に定量する方法を提供する。

【解決手段】下記式で表されるエーテル化合物(ア)の1分子内に含まれる炭素原子の少なくとも4つが質量数13の炭素原子であるエーテル化合物(ア)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式で表されるエーテル化合物(ア)の1分子内に含まれる炭素原子の少なくとも4つが質量数13の炭素原子であるエーテル化合物(ア)。


(式中、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、nは0〜12の整数を表す。)
【請求項2】
エーテル化合物(ア)が下記エーテル化合物(1)である請求項1に記載のエーテル化合物(ア)。


(式中、13Cは質量数13の炭素原子を表し、n、Ra、Rb及びRcは、前記と同じ意味を表す。)
【請求項3】
エーテル化合物(1)が下記式(イ)である請求項2に記載のエーテル化合物(1)。


(式中、13Cは前記と同じ意味を表し、Rは炭素数8又は9のアルキル基を表し、iは1〜12の整数を表す。)
【請求項4】
下記式(2)で表されるエーテル化合物(2)。


(式中、13C、n、Ra、Rb及びRcは、前記と同じ意味を表す。)
【請求項5】
エーテル化合物(2)中のnが2〜20である請求項4に記載のエーテル化合物(2)。
【請求項6】
下記式(4)で表されるエステル化合物(4)。


(式中、13C、n、Ra、Rb及びRcは、前記と同じ意味を表し、R’は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
【請求項7】
エーテル化合物(2)にアルカリ金属水素化物及び/又はアルカリ土類金属水素化物を反応させたのち、下記式(3)
X−13CH13COOR’ (3)
(式中、13C及びR’は前記と同じ意味を表し、Xはハロゲン原子を表す。)で表されるハロ酢酸エステル(3)を反応させてエステル化合物(4)を得、続いて、エステル化合物(4)のエステル基を還元してエーテル化合物(1)を製造する方法。
【請求項8】
下記式(7)で表されるエステル化合物(7)。


(式中、13C、n、Ra、Rb、Rc及びR’は前記と同じ意味を表す。)
【請求項9】
下記式(5)


(式中、n、Ra、Rb及びRcは前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物(5)にアルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の塩基を反応させたのち、ハロ酢酸エステル(3)を反応させてエステル化合物(7)を得、続いて、エステル化合物(7)のエステル基を還元してエーテル化合物(2)を製造する方法。
【請求項10】
下記式(8)


(式中、Ra、Rb及びRcは前記と同じ意味を表し、kは0〜11の整数を表す。)
で表される化合物に、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の塩基を反応させたのち、下記式(9)


(式中、Yは炭素数1〜8の炭化水素基を有するスルホニル基を表し、mは1〜11の整数を表す。Zは、アルキル基、アリール基、ベンジル基、パラ−メトキシベンジル基、トリチル基、トリアルキルシリル基、アルキルジフェニルシリル基及びテトラヒドロピラニル基からなる群から選ばれる炭素数1〜20の基を表す。)
で示される化合物を反応させ、続いてZを水素原子と置換して、下記式(5)


(式中、Ra、Rb及びRcは前記と同じ意味を表し、nはkとmとの合計であり、かつ、1〜12の整数を表す。)
で表される化合物(5)を製造する方法。
【請求項11】
エーテル化合物(ア)の含有量が80重量%以上である分析用内部標準物質。
【請求項12】
請求項11に記載の分析用内部標準物質を用いてポリエチレングリコールモノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物を定量する方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、質量数13の炭素原子を分子内に少なくとも4つ含むポリエチレングリコールモノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物、該化合物の製造方法、該製造方法に供せられる中間体、該中間体の製造方法、及び炭素13を分子内に少なくとも4つ含むポリエチレングリコールモノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物を用いてポリエチレングリコールモノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物を定量する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
オクチルフェノールに由来する構造単位とポリエチレングリコールに由来する構造単位とを含むエーテル化合物、ノニルフェノールに由来する構造単位とポリエチレングリコールに由来する構造単位とを含むエーテル化合物などのポリエチレングリコール−モノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物は、非イオン系の界面活性剤として広く用いられている。前記例示された2つのポリエチレングリコール−モノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物はそれぞれ環境中で生分解を受けると、魚類への内分泌攪乱作用が確認されたオクチルフェノール及びノニルフェノールとなることが知られている。
そして、ポリエチレングリコール−モノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物、特に分子内に3つ以上のエチレングリコールからなるポリエチレングリコールに由来する構造単位と、アルキルフェノールに由来する構造単位とからなるエーテル化合物について環境中における動態把握することは極めて重要であり、該エーテル化合物の高精度な分析法が求められている。
【0003】
環境中における任意の化合物の動態把握するために、環境試料(環境から採取されるサンプル)における該化合物の濃度を定量する必要がある。通常、環境試料における該化合物の濃度は極微量であり、さらに、環境試料から該化合物を抽出や濃縮などの前処理操作したのち測定されることから、環境試料における該化合物の濃度を正確に把握することは困難である。そこで、動態把握したい化合物と性質が似た化合物(サロゲート物質)を環境試料に分析用内部標準物質として添加して、環境試料における動態把握したい化合物の濃度を正確に把握する方法が、例えば、特許文献1に記載されている。具体的には、特許文献1では動態把握したい化合物であるスチレントリマーについて、その水素の一部を重水素に置換した化合物をサロゲート物質として用いる方法が提案されており、該物質の製造方法も開示されている。ここで、サロゲート物質としては、動態把握したい化合物とほぼ同一の構造でかつ安定同位元素で標識された化合物が用いられる。サロゲート物質として安定同位元素で標識された化合物が用いられるのは、前処理操作中に環境試料から回収される割合が動態把握したい化合物とサロゲート物質とで同一であり、回収後、ガスクロマトグラフィー−質量分析法(GC−MS)や高速液体クロマトグラフィー−質量分析法(LC−MS)で分析すると、両者の質量数が異なるため容易に判別することができることから、環境試料における動態把握したい化合物の濃度を正確に定量することができるためである。
【0004】
【特許文献1】特開2000−281598号公報([請求項1]、[発明の効果])
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、ポリエチレングリコール−モノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物のサロゲート物質の製造は容易ではない。例えば、本発明者らが、ポリエチレングリコール−モノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物のサロゲート物質として該エーテル化合物の水素を重水素に置換した化合物の製造を検討したところ、製造中に重水素が水素に置換されてしまい、サロゲート物質を得ることができなかった。
さらに、サロゲート物質の中間体として、分子内に3つ以上のエチレングリコールからなるポリエチレングリコールに由来する構造単位と、アルキルフェノールに由来する構造単位とからなるエーテル化合物が用いられるが、アルキルフェノールからエチレングリコールに由来する構造単位の数を正確に導入しなければならず、そのため、アルキルフェノールから多くのステップを経て該中間体を製造しなければならなかった。
本発明の目的は、ポリエチレングリコールモノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物のサロゲート物質として好適なエーテル化合物及びその製造方法;該エーテル化合物の製造中間体として用いられる、分子内に3つ以上のエチレングリコールからなるポリエチレングリコールに由来する構造単位と、アルキルフェノールに由来する構造単位とからなるエーテル化合物を製造する方法;並びに、ポリエチレングリコールモノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物を環境試料から正確に定量する方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、下記式で表されるエーテル化合物(ア)の1分子内に含まれる炭素原子の少なくとも4つが質量数13の炭素原子であるエーテル化合物(ア)である。


(式中、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、nは0〜12の整数を表す。)
また、エーテル化合物(ア)の含有量が80重量%以上である分析用内部標準物質は、ポリエチレングリコールモノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物のサロゲート物質として用いることができる。さらに、該分析用内部標準物質を用いることにより、ポリエチレングリコールモノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物を正確に定量することができる。
【0007】
エーテル化合物(ア)の中でも、下記式(1)で表されるエーテル化合物(1)が好適である。


(式中、13Cは質量数13の炭素原子を表し、n、Ra、Rb及びRcは、前記と同じ意味を表す。)
とりわけ、下記式で表されるエーテル化合物(イ)は、生分解されて、ノニルフェノール又はオクチルフェノールを与えるエーテル化合物の分析用内部標準物質として用いることができることから好適である。


(式中、13Cは前記と同じ意味を表し、Rは炭素数8又は9のアルキル基を表し、iは1〜12の整数を表す。)
【0008】
エーテル化合物(1)の製造方法としては、例えば、下記式(2)


(式中、13C、n、Ra、Rb及びRcは、前記と同じ意味を表す。)
で表されるエーテル化合物(2)にアルカリ金属水素化物及び/又はアルカリ土類金属水素化物を反応させたのち、下記式(3)
X−13CH13COOR’ (3)
(式中、13Cは前記と同じ意味を表す。Xはハロゲン原子を表し、R’は炭素数1〜6のアルキル基を表す。)
で表されるハロ酢酸エステル(3)を反応させて下記式(4)


(式中、13C、n、Ra、Rb、Rc、R’は、前記と同じ意味を表す。)
で表されるエステル化合物(4)を得、続いて、エステル化合物(4)のエステル基を還元するエーテル化合物(1)を製造する方法が挙げられる。
【0009】
また、エーテル化合物(2)は、エーテル化合物(1)の中間体として好適であるとともに、エーテル化合物(2)もポリエチレングリコールモノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物の分析用内部標準物質に供することができる。中でも、エーテル化合物(2)中のnが2〜20のエーテル化合物は、従来、合成が困難であった、分子内に3つ以上のエチレングリコールからなるポリエチレングリコールに由来する構造単位と、アルキルフェノールに由来する構造単位とからなるエーテル化合物であって、質量数13の炭素原子を含む化合物であることから好ましい。
【0010】
また、エーテル化合物(2)の製造方法としては、例えば、下記式(5)


(式中、n、Ra、Rb及びRcは前記と同じ意味を表す。)
で表される化合物(5)にアルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の塩基を反応させたのち、ハロ酢酸エステル(3)を反応させて下記エステル化合物(7)を得、続いて、エステル化合物(7)のエステル基を還元する方法である。


(式中、13C、n、Ra、Rb、Rc及びR’は前記と同じ意味を表す。)
【0011】
また、化合物(5)中のn=1〜12である化合物(5)の製造方法、すなわち、エチレングリコールに由来する構造単位を含む化合物(5)の製造方法は、例えば、下記式(8)


(式中、Ra、Rb及びRcは前記と同じ意味を表し、kは0〜11の整数を表す。)
で表される化合物に、アルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の塩基を反応させたのち、下記式(9)


(式中、Yは炭素数1〜8の炭化水素基を有するスルホニル基を表し、mは1〜11の整数を表す。Zは、アルキル基、アリール基、ベンジル基、パラ−メトキシベンジル基、トリチル基、トリアルキルシリル基、アルキルジフェニルシリル基及びテトラヒドロピラニル基からなる群から選ばれる炭素数1〜20の基を表す。)
で示される化合物を反応させ、続いてZを水素原子と置換する方法が挙げられる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明は、前記式(ア)で表されるエーテル化合物であって、エーテル化合物(ア)の1分子内に含まれる炭素原子の少なくとも4つが質量数13の炭素原子に置換されているエーテル化合物(ア)である。
式(ア)中、Ra、Rb及びRcは、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を表し、nは0〜12の整数を表す。尚、本発明のアルキル基とは、直鎖状アルキル基、環状(シクロ)アルキル基、分枝状アルキル基の総称を意味する。
具体例としては、質量数13の炭素原子で全て構成されているフェノールを出発原料として、アルキル化したのち、ポリエチレンエーテルに由来する構造単位を合成して得られるエーテル化合物(ア−1);フェノールに質量数13の炭素原子を少なくとも4つ含むハロゲン化アルキルを反応させてアルキルフェノールを得、続いて、ポリエチレンエーテルに由来する構造単位を合成して得られるエーテル化合物(ア−2);アルキルフェノールに、質量数13の炭素原子を少なくとも4つ含むポリエチレンエーテルに由来する構造単位を合成して得られるエーテル化合物(ア−3)などが挙げられる。(ア−2)及び(ア−3)において、質量数13の炭素原子の存在する位置は任意である。
【0013】
中でも、(ア−1)及び(ア−3)のエーテル化合物が、簡便に入手可能な質量数13の炭素原子を有する化合物から製造できることから好ましく、とりわけ(ア−3)が好ましく、中でもとりわけ、下記エーテル化合物(1)が質量数13の炭素原子あたりの収率が優れることから、経済的に好適である。


式(1)中、n、Ra、Rb及びRcは前記と同じ意味を表し、13Cは質量数13の炭素原子を表す。Ra、Rb及びRcは、合計炭素数4〜12のアルキル基が好ましい。中でも、Raが炭素数8又は9であり、Rb及びRcが水素原子であるエーテル化合物(1)は、生分解されて、ノニルフェノール又はオクチルフェノールを与えるエーテル化合物のサロゲート物質として用いることができることから好適である。
【0014】
以下、エーテル化合物(1)について詳細に説明する。
エーテル化合物(1)の製造方法としては、例えば、エーテル化合物(2)に水素化物を反応させたのち、前記式(3)で表されるハロ酢酸エステルを反応させてエステル化合物(4)を生成し、続いて、エステル化合物(4)のエステル基を還元する方法などが挙げられる。
【0015】
ここで、水素化物としては、例えば、水素化カリウム、水素化ナトリウムなどのアルカリ金属水素化物、水素化カルシウムなどのアルカリ土類金属水素化物などが挙げられる。水素化物として異なる2種類の水素化物を用いてもよい。水素化物の中でもアルカリ金属水素化物が好ましく、とりわけ、水素化ナトリウムが好適である。
【0016】
ハロ酢酸エステル(3)とは下記式で表される化合物である。
X−13CH13COOR’ (3)
式中、13Cは前記と同じ意味を表す。Xは塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン原子を表す。中でも、臭素またはヨウ素が好適である。式(3)のR’としては、メチル基、エチル基などの炭素数1〜6のアルキル基などが挙げられる。
ハロ酢酸エステル(3)の中でもXが臭素であり、R’がエチル基である
Ethyl bromoacetate−13は、アルドリッチ社から市販されており、容易に入手できることから好ましい。
【0017】
エステル化合物(4)の製造方法としては、例えば、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどの非プロトン性溶媒に水素化物をエーテル化合物(2)1モルに対し、1〜1.2モル程度を0〜80℃程度、好ましくは20〜50℃程度にて5〜120分間混合させたのち、ハロ酢酸エステル(3)を、通常、20〜100℃程度、好ましくは50℃〜90℃程度にて1〜6時間程度混合させ、続いて、希塩酸などの酸性水溶液により未反応の水素化物を加水分解したのち、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、酢酸エチルなどの水と分液する有機溶媒でエステル化合物(4)を油層に抽出し、必要に応じて、得られた油層を乾燥、該有機溶媒の留去を行い、さらに必要に応じて、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどによる精製等を実施してエステル化合物(4)を取り出すことができる。
ハロ酢酸エステル(3)の使用量としては、該エーテル化合物(2)1モルに対し、1〜5モル程度、好ましくは、1.1〜1.2モル程度、用いられる。
【0018】
かくして得られたエステル化合物(4)を還元することにより、本発明の炭素13を分子内に4つ含むエーテル化合物(1)を得ることができる。ここで還元反応とは、芳香族性の二重結合を還元することなく、エステル基を還元する反応であり、例えば、錯金属水素化物(Complex Metal Hydride)を用いて還元する方法などが挙げられる。
錯金属水素化物としては、例えば、水素化ホウ素エチルリチウム(Li(CBH)などの水素化ホウ素化合物、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH、以下、LAHという場合がある)、水素化トリ−t−ブトキシアルミニウムリチウム(LiAl(O−t−CH)、水素化トリメトキシアルミニウムリチウム(LiAl(OCHH)、水素化アルミニウム(AlH)などの水素化アルミニウム化合物などが挙げられる。錯金属水素化物として異なる2種類の錯金属水素化物を用いてもよい。中でも水素化アルミニウム化合物が好ましく、とりわけ、LAHが好適である。
【0019】
LAHを用いて還元する方法について具体的に説明すると、脱水されたエステル化合物(4)をエーテル、テトラヒドロフラン、ベンゼン、トルエンなどの不活性溶媒中で、エステル化合物(4)1モルに対し、LAHを1〜3モル程度、好ましくは1.5〜2モル程度を−10〜50℃程度にて反応させ、続いて、希塩酸などの酸性水溶液により未反応のLAHを加水分解したのち、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、酢酸エチルなどの水と分液する有機溶媒でエーテル化合物(1)を油層に抽出し、必要に応じて、得られた油層を乾燥、該有機溶媒の留去し、さらに必要に応じて、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどによる精製等を実施してエーテル化合物(1)を取り出すことができる。
【0020】
エーテル化合物(2)の製造方法としては、例えば、化合物(5)にアルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物及びアルカリ金属炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の塩基を反応させたのち、ハロ酢酸エステル(3)を反応させてエステル化合物(7)を得、続いて、エステル化合物(7)のエステル基を還元する方法などが挙げられる。
具体的には、塩基としてアルカリ金属水素化物及び/又はアルカリ土類金属水素化物を用いる場合、エーテル化合物(2)からエーテル化合物(1)を得る製造方法と同様の方法によって求めることができる。
【0021】
塩基として、アルカリ金属炭酸塩を用いるのは、化合物(5)中のnが0である場合、すなわち、化合物(5)がアルキルフェノールである場合である。
具体的には、アルキルフェノール1モルに対し、アルカリ金属炭酸塩を1〜5モル程度、好ましくは2〜3モル程度用いて、20〜100℃程度、好ましくは50〜90℃程度にて1〜6時間攪拌したのち、あとはアルカリ金属水素化物及び/又はアルカリ土類金属水素化物を用いる場合と同様にして、化合物(2)を得ることができる。
【0022】
ここで、アルキルフェノールは、炭素数1〜20のアルキル基を有するアルキルフェノールである。
具体的なアルキルフェノールとしては、4−プロピルフェノール;4−n−ブチルフェノール、4−t−ブチルフェノール、4−s−ブチルフェノールなどの4−ブチルフェノール;4−n−ペンチルフェノール、4−t−ペンチルフェノールなどの4−ペンチルフェノール;4−ヘキシルフェノール;4−n−ヘプチルフェノール、4−(1,1−ジメチルペンチル)フェノールなどの4−ヘプチルフェノール;4−n−オクチルフェノール、4−(1−メチルヘプチル)フェノール、4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、4−(2−エチルへキシル)フェノールなどの4−オクチルフェノール;2−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノールなどの2−オクチルフェノール;4−n−ノニルフェノール、4−(3−プロピルヘキシル)フェノールなどの4−ノニルフェノール;4−(1−メチルノニル)フェノールなどの4−デシルフェノール;4−(1−メチルウンデシル)フェノールなどの4−ドデシルフェノール;2−メチル−4−ノニルフェノール;4−メチル−2−ノニルフェノール;2,4−ジノニルフェノールなどが例示される。
アルキルフェノールとしては、中でも合計炭素数4〜12中のアルキル基を有するアルキルフェノールが好ましく、とりわけ、合計炭素数8及び9のアルキルフェノールは、内分泌撹乱物質として知られているノニルフェノールやオクチルフェノールであることから分析用内部標準物質の原料として好適である。
【0023】
本発明のエーテル化合物(2)は、エーテル化合物(1)の中間体として好適であるとともに、エーテル化合物(2)も質量数13の炭素原子を分子内に2つ含むことから、ポリエチレングリコールモノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物と区別でき、サロゲート物質としても使用することができる。
エーテル化合物(2)中のnが2〜12のエーテル化合物は、従来、合成が困難であった分子内に3つ以上のエチレングリコールからなるポリエチレングリコールに由来する構造単位と、アルキルフェノールに由来する構造単位とからなるエーテル化合物であって、質量数13の炭素原子を含む化合物であることから好ましい。
【0024】
エーテル化合物(2)の製造に用いられる化合物(5)は、例えば、下記式(8)


(式中、Ra、Rb及びRcは前記と同じ意味を表し、kは0〜11の整数を表す。)
で表される化合物にアルカリ金属水素化物、アルカリ土類金属水素化物、アルカリ金属炭酸塩からなる群から選ばれる少なくとも一種の塩基を反応させたのち、下記式(9)で示される化合物を反応させ、続いてZを水素原子と置換する方法などが挙げられる。
【0025】


式中、Yは、メタンスルホニル基(−SOMe)、パラトルエンスルホニル基(−SOMe)などの炭素数1〜8の炭化水素基を有するスルホニル基を表す。中でも、Yとしてはメタンスルホニル基が好適である。
mは1〜11の整数を表す。
Zは、アルキル基、アリール基、ベンジル基、パラ−メトキシベンジル基、トリチル基、トリアルキルシリル基、アルキルジフェニルシリル基及びテトラヒドロピラニル基からなる群から選ばれる炭素数1〜20の基を表し、中でも、ベンジル基、パラ−メトキシベンジル基、トリチル基が好ましく、とりわけ、ベンジル基が好適である
【0026】
ここで化合物(9)の製造方法として、Yがメタンスルホニル基、Zがベンジル基である場合について以下に例示すると、塩化ベンジルなどのハロゲン化ベンジルとポリエチレングリコールとを水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属水酸化物の水溶液中で反応させて、ポリエチレングリコールベンジルエーテルを合成したのち、該ポリエチレングリコールベンジルエーテルと塩化メタンスルホン酸とを塩基存在下、好ましくはトリエチルアミンなどの有機アミン存在下に反応させて得る方法などが挙げられる。
中でも、テトラエチレングリコール、ジエチレングリコールなどのmが2以上のポリエチレングリコールを用いると、アルキルフェノールから化合物(5)の収率が優れることから好ましい。
尚、テトラエチレングリコール、ジエチレングリコールは和光純薬工業(株)から市販され、容易に入手することができる。
【0027】
化合物(8)と(9)から化合物(5)を製造する方法として、塩基がアルカリ金属水素化物及び/又はアルカリ土類金属水素化物である場合についてさらに詳しく説明すると、例えば、非プロトン性極性溶媒に塩基を化合物(8)1モルに対し、1〜1.2モル程度を0〜80℃程度、好ましくは20〜50℃程度にて5〜120分間混合させたのち、化合物(9)を、通常、20〜100℃程度、好ましくは20〜40℃程度にて1〜6時間程度混合させ、続いて、希塩酸などの酸性水溶液により未反応の水素化物を加水分解したのち、水と分液する有機溶媒で化合物(5)を油層に抽出し、必要に応じて、得られた油層を乾燥、該有機溶媒の留去を行い、さらに必要に応じて、蒸留、カラムクロマトグラフィーなどによる精製等を実施して化合物(5)を取り出すことができる。
【0028】
化合物(5)の製造に用いられる塩基として、アルカリ金属炭酸塩を用いるのは、化合物(8)中のkが0である場合、すなわち、化合物(8)がアルキルフェノールである場合である。
具体的には、アルキルフェノール1モルに対し、アルカリ金属炭酸塩を1〜5モル程度、好ましくは2〜3モル程度用いて、20〜100℃程度、好ましくは50〜90℃程度にて1〜6時間攪拌したのち、あとはアルカリ金属水素化物及び/又はアルカリ土類金属水素化物を用いる場合と同様にして、化合物(5)を得ることができる。
尚、kが1〜11の化合物(8)は、アルキルフェノールから上記と同様に化合物(9)を反応させて得ることができる。例えばk=6の化合物(8)は、アルキルフェノールにm=2の化合物(9)を反応させてk=2の化合物(8)を得たのち、m=4の化合物(9)を反応させて得ることができる。また、化合物(5)からエーテル化合物(2)を得るが如く、アルキルフェノールからエーテル側鎖を逐次反応して得てもよいが、前記の方法が反応回数が少なく、収率に優れることから好適である。
【0029】
エーテル化合物(1)に代表される本発明のエーテル化合物(ア)は、通常、該エーテル化合物(ア)の質量数13の炭素原子がいずれも通常の炭素原子である化合物、すなわち、分析対象物質の分析用内部標準物質(サロゲート物質)として用いることができる。エーテル化合物(ア)はエーテル化合物(2)よりも質量数13の炭素原子が分子内に2つ多いことから、質量分析法を用いる際に、分析対象物質に本来含まれる同位体と区別が容易であることから、好ましい。
分析用内部標準物質におけるエーテル化合物(1)の含有量は、通常、80重量%以上、好ましくは90重量%以上であり、とりわけ、98重量%以上が好適である。80重量%以上であると、ブランク値及び測定値の測定、並びに検量線の作成において精度が向上する傾向にあることから好ましい。
尚、分析用内部標準物質として、質量数13の炭素原子を分子内に5つ以上含むエーテル化合物を使用してもよいが、経済的な面から質量数13の炭素原子を分子内に4つ含むエーテル化合物(ア)が推奨される。
【0030】
かくして得られた分析用内部標準物質を用いることにより、ポリエチレングリコールモノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物(分析対象物質)を正確に定量することができる。
具体例で説明すると、まず、水/アセトニトリル(約1/9〜9/1)の混合溶媒に、別途合成された分析対象物質については異なる量を正確に秤量して添加し、エーテル化合物(1)については一定量を正確に秤量して添加して、検量線用のサンプルを3つ以上、好ましくは5つ以上調製する。分析対象物質の添加量としては、検出限界から試料における分析対象物質の濃度を超える程度の量、具体的には0.005μg/L〜2μg/L程度である。次に、該成分を高速液体クロマトグラフィー−質量分析法(LC−MS)法又はガスクロマトグラフィー−質量分析法(GC−MS)法等により測定して、分析対象物質とエーテル化合物(1)のピーク面積値(または高さ)の比から検量線を作成する。
【0031】
実際の環境中の分析すべき試料(環境試料)から分析対象物質を測定する方法としては、例えば、環境試料に、所定量のエーテル化合物(1)を加えたのち、固相抽出器に通水し、該抽出器をメタノール溶液等で洗浄して、分析対象物質とエーテル化合物(1)を含む成分を溶出、濃縮し、必要に応じてゲルろ過クロマトグラフィーなどで精製して、高速液体クロマトグラフィー−質量分析法を用いて測定し、得られた分析対象物質とエーテル化合物(1)とのピーク面積値(または高さ)の比から前記の検量線により分析対象物質の検出量を求める方法などが挙げられる。
【0032】
別途合成された分析対象物質とは、検量線を作成するために、前記化合物(8)と同様の方法等によって得られたものである。
また、固相抽出器とは、ODSシリカゲル、スチレンジビニルベンゼン等のポリマーに分析対象物質とエーテル化合物(1)を吸着させ、吸着後、メタノールなどを容器に通液して高濃度の分析対象物質とエーテル化合物(1)を含む成分を得るための装置であり、該装置は、吸着材を充填したカートリッジ型、吸着材が平板に加工されたディスク型などが知られている。
固相抽出器として、カートリッジ型のGL−Pakシリーズ(GLサイエンス社製)、ディスク型のエムポア ディスクシリーズ(登録商標、3M社製)などの市販品をそのまま使用することができる。
【0033】
LC−MSとは、高速液体クロマトグラフと質量分析装置から構成されている。高速液体クロマトグラフは移動相を定量ずつ送出するポンプと、測定用試料を移動相に注入するインジェクタと、分析対象物質を含む成分を分離する分離カラムによって構成されている。また、質量分析計はエレクトロスプレーイオン化法(ESI)及び/又は大気圧化学イオン化法(APCI)のイオンソースを備えている。
【0034】
分析対象物質およびエーテル化合物(1)は、イオン化によって生成するイオンの強度を安定化させるため、アンモニウム付加イオンとして検出されることが好ましく、そのため、高速液体クロマトグラフに用いられる移動相としては、炭酸水素アンモニウム、酢酸アンモニウム、ギ酸アンモニウムなどの緩衝剤を添加したpH6〜8の水溶液が好適に用いられる。
【0035】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、実施例によって本発明の範囲を限定するものではない。
【0036】
(実験例1:2−{2−[2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エチル メタンスルホネイト(9−1)の製造例)


(式中、Msはメタンスルホニル基を表す。)
テトラエチレングリコール500g(2.56mol、和光純薬工業(株)製)、及び塩化ベンジル81g(0.64mol)を50%水酸化ナトリウム水溶液に溶解させ、90℃で5時間攪拌した。得られた反応液に水を加えたのち、ジエチルエーテルで抽出し、得られたジエチルエーテル層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムにより乾燥した。該溶液から濾別して濾液を得て、該濾液からジエチルエーテルを減圧除去したのち、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル)により精製し、ベンジル化合物(A)133g(収率73%)を得た。
ベンジル化合物(A)のH−NMR(300MHz、δ、CDCl)7.35〜7.26(m,5H)、4.57(s,2H)、3.71〜3.58(m,16H)、2.79(br,s,1H)。
エーテル化合物(A)のm/z(ESI,+)285.2
【0037】
続いて、ベンジル化合物(A)123g(435mmol)を塩化メチレンに溶解させ、氷浴中で塩化メチルスルホニル110g(957mmol)を滴下し、さらにトリエチルアミン99g(979mmol)を滴下した。滴下終了後、0℃で1時間攪拌した。得られた反応液に0.2規定塩酸水溶液を加えたのち、塩化メチレンで抽出し、得られた塩化メチレン層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムにより乾燥した。該溶液から濾別して濾液を得て、該濾液から塩化メチレンを減圧除去することにより、メタンスルホニル化合物(9−1)146g(収率93%)を得た。
メタンスルホニル化合物(9−1)のH−NMR(300MHz、δ、CDCl)7.35〜7.26(m,5H)、4.57(s,2H)、4.36(t,2H)、3.75(t,2H)、3.66〜3.62(m,12H)、3.03(s,3H)。
メタンスルホニル化合物(9−1)のm/z(ESI,+)363.0
【0038】
(実験例2:ベンジル化合物(B)の製造例)


4−ノニルフェノール 44g((8−1)、201mmol、東京化成工業(株)製)をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させ、室温で炭酸カリウム69g(502mmol)を添加し、2−{2−[2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エトキシ]−エトキシ}−エチル メタンスルホネイト80g((9−1)、221mmol)を滴下した。滴下終了後、50℃で15時間攪拌した。得られた反応液に水及び2規定塩酸水溶液を順次加えたのち、酢酸エチルで抽出し、得られた酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムにより乾燥した。該溶液から濾別して濾液を得て、該濾液から酢酸エチルを減圧除去したのち、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒)により精製し、ベンジル化合物(B)48g(収率49%)を得た。
ベンジル化合物(B)のH−NMR(300MHz、δ、CDCl)7.34〜6.81(m,8H)、4.56(s,2H)、4.10(t,2H)、3.84(t,2H)、3.76〜3.61(m,12H)、1.75〜0.46(m,19H)。
ベンジル化合物(B)のm/z(ESI,+)487.5
【0039】
(実験例3:エーテル化合物(8−2)の製造例)


エーテル化合物(B)48.3g(99.3mmol)をメタノール及び酢酸に溶解させ、室温で10%パラジウムチャーコール7.3gを添加し、水素雰囲気下で反応させた。反応終了後、得られた反応溶液からパラジウムチャーコールをセライト濾過により濾別し、得られた濾液を実験例2と同様に後処理して、エーテル化合物(8−2)38.2g(収率97%)を得た。
エーテル化合物(8−2)のH−NMR(300MHz、δ、CDCl)7.25〜6.82(m,4H)、4.12(t,2H)、3.86(t,2H)、3.83〜3.59(m,12H)、2.64(t,1H)、1.84〜0.42(m,19H)。
エーテル化合物(8−2)のm/z(ESI,+)397.2
【0040】
(実験例4:ベンジル化合物(C)の製造例)


60%水素化ナトリウム2.9g(72.1mmol)を脱水テトラヒドロフランに添加しスラリー状とした。室温でエーテル化合物(8−2)22g(55.5mmol)を含む脱水テトラヒドロフラン溶液を滴下したのち、室温で1時間攪拌した。この反応溶液に、実験例1と同様にして別途調整した2−(2−ベンジルオキシ−エトキシ)−エチル メタンスルホネイト16.7g((9−2)、61.0mmol)の脱水テトラヒドロフラン溶液をさらに滴下した。滴下終了後、50℃で3時間攪拌したのち、水及び2規定塩酸水溶液を順次加えて前記化合物(C)を含む粗生成物を得た。粗生成物を実験例2と同様に後処理及び精製して、ベンジル化合物(C)19.4g(収率61%)を得た。
ベンジル化合物(C)のH−NMR(300MHz、δ、CDCl)7.34〜6.81(m,8H)、4.56(s,2H)、4.10(t,2H)、3.83(t,2H)、3.72〜3.61(m,20H)、1.75〜0.46(m,19H)。
ベンジル化合物(C)のm/z(ESI,+)574.4。
【0041】
(実験例5:エーテル化合物(5−1)の製造例1)


エーテル化合物(B)の代わりにエーテル化合物(C)を用いる以外は、実験例3とほぼ同様に実施して、エーテル化合物(5−1)14.9g(収率93%)を得た。
エーテル化合物(5−1)の1H−NMR(300MHz、δ、CDCl)7.24〜6.81(m,4H)、4.11(t,2H)、3.84(t,2H)、3.73〜3.58(m,20H)、1.74〜0.45(m,19H)。
エーテル化合物(5−1)のm/z(ESI,+)385.5
【0042】
(実験例6:エステル化合物(7−1)の製造例)


(式中、13Cは、質量数13の炭素原子を表す。)
60%水素化ナトリウム221mg(5.52mmol)を脱水テトラヒドロフランに添加しスラリー状としたのち、氷浴で1時間攪拌した。続いて、該スラリー溶液に化合物(5−1)1.9g(3.92mmol)を含む脱水テトラヒドロフラン溶液を滴下した。氷浴中で1時間攪拌後、質量数13の炭素原子を有するブロモ酢酸エチル(6−1)729mg(4.32mmol、Aldrich社製Ethyl bromoacetate−13)を含む脱水テトラヒドロフラン溶液をさらに滴下した。滴下終了後、室温で6時間攪拌した。得られた反応液を実験例4と同様にして後処理して、エステル化合物(7−1)957mg(収率43%)を得た。
エステル化合物(7−1)のH−NMR(300MHz、δ、CDCl)7.21〜6.81(m,8H)、4.38(d,1H)、4.21(q,2H)、4.11(t,2H)、3.90(d,1H)、3.84(t,2H)、3.72(m,2H)、1.66〜0.42(m,22H)。
エステル化合物(7−1)のm/z(ESI,+)573.4
【0043】
(実験例7:エーテル化合物(2−1)の製造例)


(式中、13Cは、前記と同じ意味を表す。)
水素化リチウムアルミニウム102mg(2.67mmol)を脱水テトラヒドロフラン6mLに添加しスラリー状とした。氷浴で冷却した該スラリー溶液にエステル化合物(7−1)957mg(1.67mmol)を含む脱水テトラヒドロフラン溶液を滴下した後、室温で2.5時間攪拌した。得られた反応液に水を加え、浮遊物を濾過し、酢酸エチルで抽出した。得られた酢酸エチル層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸マグネシウムにより乾燥した。該溶液から濾別して濾液を得て、該濾液から酢酸エチルを減圧除去したのち、カラムクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘキサン/酢酸エチル混合溶媒)により精製し、エーテル化合物(2−1)704mg(収率80%)を得た。
エーテル化合物(2−1)のH−NMR(300MHz、δ、CDCl)7.24〜6.81(m,8H)、4.11(t,2H)、3.96〜3.34(m,26H)、3.05(br,s,1H)、1.75〜0.45(m,19H)。
エーテル化合物(2−1)のm/z(ESI,+)531.4。
【0044】
(実験例8:エステル化合物(4−1)の製造例)


(式中、13Cは、前記と同じ意味を表す。)
化合物(5−1)が、エーテル化合物(2−1)と代わる以外は、ほぼ実験例6と同様にして、エステル化合物(4−1)282mg(収率34%)を得た。
エステル化合物(4−1)のH−NMR(300MHz、δ、CDCl)7.22〜6.81(m,8H)、4.38(d,1H)、4.21(q,2H)、4.11(t,2H)、3.90(d,1H)、3.84(t,2H)、3.72(m,2H)、1.66〜0.41(m,24H)。
エステル化合物(4−1)のm/z(ESI,+)619.3。
【0045】
(実験例9:エーテル化合物(1−1)の製造例)


(式中、13Cは、前記と同じ意味を表す。)
エステル化合物(7−1)が、エステル化合物(4−1)に代わる以外は、実験例7と同様にしてエーテル化合物(1−1)242mg(収率92%)を得た。
エーテル化合物(1−1)のH−NMR(300MHz、δ、CDCl)7.22〜6.81(m,8H)、4.11(t,2H)、3.96〜3.36(m,30H)、2.75(br,s,1H)、1.73〜0.45(m,19H)。
エーテル化合物(1−1)のm/z(ESI,+)577.4。
【0046】
(実験例10:エーテル化合物(5−1)の製造例2)
ノニルフェノール(8−1)に、塩基を反応させたのち、質量数13の炭素原子で置換されたことのない、通常のブロモ酢酸エチル(和光純薬工業(株)製)を実験例6の如く反応させたのち、実験例7の如くLAHで還元してエチレングリコール単位を1つ増やしたエーテル化合物を製造した。
これを繰り返して、エーテル化合物(5−1)を得た。それぞれの反応における化学式と収率を表1にまとめた。
【0047】
【表1】


(i)BrCHCOOEt/KCO/DMF(ジメチルホルムアミド)/80℃/4時間
(ii)LAH/THF(テトラヒドロフラン)/室温/約3時間
(iii)BrCHCOOEt/NaH/THF/室温/約12時間
【0048】
ノニルフェノールを出発原料として、実験例2〜5を実施してエーテル化合物(5)を得るための通算収率と、実験例10に記載の通算収率の比較を表2に示した。
【表2】


【0049】
(実験例11:エーテル化合物(1)の質量分析)
エーテル化合物(1)のうち、nが8の化合物について、下記条件にてLC−MS測定したところ、m/zとして、682.7が最も高いピークとして観測され、該ピークの強度を100としたとき、683.7のピークが33.3、684.7のピークが9.6の強度で観測された。
<高速液体クロマトグラフの設定条件>
カラム:GF−310 2D 2mm I.D.×15cm(Shodex)
移動相の流量:0.2mL/min
試料の注入量:10μL
移動相:30%B−(10分)−50%B−(30分)−90%B
A:50mM酢酸アンモニウム水溶液
B:アセトニトリル
<質量分析計の設定条件>
イオン化法:エレクトロスプレーイオン化法
測定モード:SCAN Positive
Fragmenter電圧:80V
【0050】
(実験例12:分子内に10のエチレングリコールからなるポリエチレングリコールに由来する構造単位とノニルフェノールとのエーテル化合物(D)の調整、並びに、その質量分析)
実験例10に準じて、分子内に10のエチレングリコールからなるポリエチレングリコールに由来する構造単位とノニルフェノールとのエーテル化合物(D)を得た。エーテル化合物(5−1)からの収率は、5.8%であった。


エーテル化合物(D)について、エーテル化合物(1)と同様に質量分析したところ、m/zとして、678.95が最も高いピークとして観測され、該ピークの強度を100としたとき、同位体680.0のピークが37.9、同位体681.0のピークが8.0、同位体682.0ピークが2.2の強度で観測された。エーテル化合物(1)の最も高いピークである682.7と一致するピークは観察されず、分析用内標準物質として好適であることが判明した。
【0051】
(実験例13)
<検量線の作成>
エーテル化合物(D)を2ng、4ng、20ng、40ng、200ng、400ng、800ngをそれぞれ含んだ1mLの検量線用調製液を作成した。次に、エーテル化合物(1)を100ngずつ、それぞれの検量線用水溶液に正確に添加した。続いて、それぞれの検量線用溶液についてLC−MS法にて測定して、エーテル化合物(D)とエーテル化合物(1)のピーク面積値の比から検量線を作成した。
【0052】
<エーテル化合物(D)の定量例>
実際の環境試料からエーテル化合物(D)を測定するには、分析すべき試料400mLに、100ngのエーテル化合物(1)を加えたのち、水質試料をエムポア ディスク C18ff(登録商標、3M社製)に通液したのち、メタノールで洗浄して、エーテル化合物(D)とエーテル化合物(1)を含む成分を溶出、濃縮し、必要に応じてゲルろ過クロマトグラフィーで精製した。得られたエーテル化合物(D)とエーテル化合物(1)を含む成分を前記と同様に測定し、得られたエーテル化合物(D)とエーテル化合物(1)とのピーク面積値の比から前記の検量線によりエーテル化合物(D)の検出量比を求めることができる。これに添加した100ngを乗じて分析すべき試料に含まれるエーテル化合物(D)の重量を求め、これを400mLで除して水質試料中の濃度(通常mg/Lあるいはμg/Lで表す)を求めることができる。
【0053】
<検出限界についての考察>
超純水にエーテル化合物(D)が0.20μg/Lとなるように添加して試料を調整し、前記と同様にエーテル化合物の(1)添加→固相抽出→濃縮→GPC精製→LC−MS分析を行なった。同条件で並行してn=5の定量試験を行なった結果は、エーテル化合物(D)の濃度は、平均値が0.19μg/Lと測定された。また、その際の平均回収率は94%であった。
検出下限濃度は、「要調査項目等調査マニュアル 平成14年9月環境省環境管理局水環境部企画課」によれば、n=5の測定の場合には標準偏差の2.132倍が検出下限値となることから、上記5回の測定結果から標準偏差を算出したところ、得られた検出下限値は0.026μg/Lであり、高精度な分析法であることが判明した。
【0054】
【発明の効果】
本発明によれば、ポリエチレングリコールモノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物のサロゲート物質を容易に調製することができる。また、サロゲート物質の中間体である、分子内に3つ以上のエチレングリコールからなるポリエチレングリコールに由来する構造単位と、アルキルフェノールに由来する構造単位とからなるエーテル化合物の製造方法について、従来のアルキルフェノールからエチレングリコールを逐次反応させるよりも、本発明の方法は、アルキルフェノールからの収率が優れる。
さらに、本発明のエーテル化合物(ア)は、質量数13の炭素原子を分子内に少なくとも4つ含むことから、マスクロマトグラフィーを実施しても分析対象物質の同位体とピークがほとんど重複することがなく、分析の精度が著しく優れることから、下水、上水、工業用水、河川水、海水などの水質試料等の環境試料におけるポリエチレングリコールモノ(パラ−アルキルフェニル)エーテル化合物の濃度を正確に定量することができる。
【出願人】 【識別番号】390000686
【氏名又は名称】株式会社住化分析センター
【住所又は居所】大阪府大阪市此花区春日出中3丁目1番135号
【出願日】 平成15年6月23日(2003.6.23)
【代理人】 【識別番号】100093285
【弁理士】
【氏名又は名称】久保山 隆

【識別番号】100113000
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 亨

【識別番号】100119471
【弁理士】
【氏名又は名称】榎本 雅之

【公開番号】 特開2005−15341(P2005−15341A)
【公開日】 平成17年1月20日(2005.1.20)
【出願番号】 特願2003−177718(P2003−177718)