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【発明の名称】 水酸基含有化合物の製造方法
【発明者】 【氏名】高橋 堅太

【氏名】生島 豊

【要約】 【課題】簡単な装置と操作により、非常に少ない触媒量でも効率よく水酸基含有化合物を製造することができ、これにより触媒回収工程、触媒中和工程を大幅に削減し、かつ触媒再生および触媒交換等を必要としない水酸基含有化合物の製造方法を提供すること。

【解決手段】酸触媒を1ppb〜500ppmの割合で含有する水溶液と、脂肪族二重結合を有する化合物とを、脂肪族二重結合を有する化合物に対する水のモル比(水/脂肪族二重結合を有する化合物)を1〜50、反応温度が200〜600℃、反応圧力が1〜100MPaの条件下で接触させ、脂肪族二重結合を有する化合物と水とを水和反応させて水酸基含有化合物を製造する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸触媒を1ppb〜500ppmの割合で含有する水溶液と、脂肪族二重結合を有する化合物とを、脂肪族二重結合を有する化合物に対する水のモル比(水/脂肪族二重結合を有する化合物)が1〜50、反応温度が200〜600℃、反応圧力が1〜100MPaの条件下で接触させ、脂肪族二重結合を有する化合物と水とを水和反応させて水酸基含有化合物を製造することを特徴とする水酸基含有化合物の製造方法。
【請求項2】
前記酸触媒を含有する水溶液の酸触媒の濃度が1ppb〜300ppmであることを特徴とする請求項1に記載の水酸基含有化合物の製造方法。
【請求項3】
前記脂肪族二重結合を有する化合物に対する水のモル比(水/脂肪族二重結合を有する化合物)が2〜25であることを特徴とする請求項1または2に記載の水酸基含有化合物の製造方法。
【請求項4】
前記酸触媒を含有する水溶液の酸触媒の濃度が1ppb〜70ppmであり、前記脂肪族二重結合を有する化合物に対する水のモル比(水/脂肪族二重結合を有する化合物)が2〜25であることを特徴とする請求項1に記載の水酸基含有化合物の製造方法。
【請求項5】
前記反応温度が250〜450℃であり、反応圧力が4〜90MPaであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水酸基含有化合物の製造方法。
【請求項6】
前記酸触媒が、塩酸、塩化水素、亜塩素酸、次亜塩素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、フッ化水素、フッ化水素酸、臭化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素、ヨウ化水素酸、オルトリン酸、メタリン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、二リン酸、トリポリリン酸、ホウ酸、ケイタングステン酸、ケイタングステン酸ナトリウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸ナトリウム、ケイモリブデン酸、ケイモリブデン酸ナトリウム、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸ナトリウム、安息香酸、酢酸、サリチル酸、シュウ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、フェノールのいずれかであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の水酸基含有化合物の製造方法。
【請求項7】
前記酸触媒が、塩酸、硫酸、硝酸、オルトリン酸、メタリン酸のいずれかであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の水酸基含有化合物の製造方法。
【請求項8】
前記脂肪族二重結合を有する化合物が、モノオレフィンまたはジオレフィンであることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の水酸基含有化合物の製造方法。
【請求項9】
前記脂肪族二重結合を有する化合物が、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、イソペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、イソヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、シクロヘキセン、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、スチレン、アリルベンゼン、トランス−スチルベン、シス−スチルベン、トリフェニルエテン、テトラフェニルエテンおよびジビニルベンゼンから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の水酸基含有化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、脂肪族二重結合を有する化合物と、水とを水和反応させて水酸基含有化合物を製造する方法に関し、さらに詳しくはオレフィンの水和によるアルコール製造の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オレフィンの水和によるアルコール製造は、硫酸その他の酸触媒を用いる方法により行われてきた。硫酸を用いる方法では、オレフィンと水を硫酸の存在下で反応させ、硫酸エステルを生成したのち、これを加水分解して粗アルコールを生成する。得られた粗アルコールから、精留その他の方法により、未反応オレフィン、水、副生成物を分離して精製アルコールを製造する。しかし、この製造方法においては、硫酸エステル製造の際に用いられる硫酸はプロピレンと等モル量必要であり、重量濃度にすると70%にもなる。したがって、反応器内には腐食性の高い硫酸が大量に存在することになるため、設備保全の面からは、各所の材料腐食に起因するトラブルが発生しやすく、また安全面からは、運転者にとって、噴出した硫酸を被液した場合の危険性が高いなど、重大な問題を抱えるプロセスである。
【0003】
また、加水分解後に分離された硫酸水溶液は、再び高濃度水溶液に濃縮したのち、反応工程にリサイクルしなければならず、これにともなう工程数の増加は建設費用を増大させ、また濃縮にかかる加熱用役費用を増大させるため、不経済である。装置の腐食については、反応器のみならず、高濃度の硫酸が流通する工程においてはすべて同様に考えなければならず、補修費用の増大につながる。また、定常的に排出される高濃度な硫酸廃液に対しては、水酸化ナトリウム等を用いた中和処理が必要となり、生成する硫酸塩は産業廃棄物として処理せざるを得ず、環境負荷が高くなる。
【0004】
そこで、プロピレンと水とをリン酸担持触媒を用いて直接水和させる気相反応プロセスが開発された(特許文献1〜3参照)。この方法では、直接水和により生成した粗アルコールから精留その他の方法により、未反応オレフィン、水、副生成物を分離して精製アルコールを製造する。硫酸法と比較して工程が簡略化され、高濃度の強酸を用いる危険もないことから、工業的にも多く実施されている。ただし、この方式では一般にプロピレンの転化率が低いため、単位体積あたりのアルコール生成量が極めて低くなることから、反応器が過大になってしまい、また未反応オレフィンのリサイクルに要するエネルギーも大きい。さらに、反応にともなって触媒成分であるリン酸が飛散し触媒性能が低下するという問題があり、生産性を落としてしまう。
【0005】
直接水和法の別法として、水溶性のヘテロポリ酸を触媒に用いる方法が開発された(特許文献4〜6参照)。この方法では、オレフィンと水とをヘテロポリ酸の存在下で直接水和反応させて粗アルコールを生成する。この粗アルコールから精留その他の方法により、未反応オレフィン、ヘテロポリ酸、水、副生成物を分離して精製アルコールを製造する。ヘテロポリ酸は腐食性が低いため、装置の補修費用の面で改善はされているが、反応工程におけるヘテロポリ酸濃度は、反応液流量に対して数千ppmであり、決して低くはなく、経済性を悪化させる。そしてこの少なくないヘテロポリ酸が定常的に排出されるため、中和処理が必要となる。硫酸法と同様に、定常的に排出されるヘテロポリ酸廃液に対しては、中和処理が必要となり、かつ中和処理後に生成するヘテロポリ酸塩を産業廃棄物として処理する必要もあり、環境負荷が高くなる。また、ヘテロポリ酸は高価なため、廃液中から分離して再利用することも考えられるが、この場合には分離のためのイオン交換樹脂処理工程などにかかる費用が大きく、製造コストを圧迫する。加えて、原料の水/プロピ
レンモル比27は他の従来技術と比較して高いため、生産効率としては低くなってしまう。
【0006】
ヘテロポリ酸以外にも、このような溶解性触媒を用いる方法が開発されており、例えばトリフルオロメタンスルホン酸を用いる方法が開示されており(特許文献7参照)、また、硫酸チタン水溶液を用いる方法が開示されている(特許文献8参照)。しかし、いずれの方法においても、反応を十分に促進するためには、反応器中の触媒濃度は高濃度にならざるを得ず、製造コストを押し上げてしまう。また、触媒使用後の後処理工程が大きくなるため、ここでも建設費用が大きくかかることになる。
【0007】
さらに、別の直接水和法として、強酸性イオン交換樹脂触媒を用いる方法も開発されている(特許文献9〜11参照)。この方法では、固体触媒を充填した反応器にてオレフィンと水とを直接水和反応させて粗アルコールを生成する。この粗アルコールから精留その他の方法により、未反応オレフィン、水、副生成物を分離して精製アルコールを製造する。固体触媒を用いることにより、硫酸あるいはヘテロポリ酸等の溶解性触媒を用いる方法で生じるような触媒回収工程は不要となり、また廃液中の酸性成分の中和処理等も不要となる。しかし、固体触媒を用いる方法においては、触媒の経時的な劣化が起こり、反応成績を維持するために、温度を上げるあるいは、生産量を落とすなどの対応が必要となる。このため、運転管理が煩雑になり、同時に経済性にも悪影響を及ぼす。劣化した触媒は再生しなければならず、ここでも経済性を悪化させる。再生不可能になった場合には、交換作業の必要が生じるが、この触媒交換には少なくない日数が必要であり、生産量を低下させる。また、大量に発生する廃触媒は産業廃棄物として処理せざるを得ない。
【0008】
他にも固体酸触媒を用いる方法は多数開発されてきている。例えば、ZSM−5ゼオライトを触媒に用いる方法が開示されている(特許文献12参照)。さらに、固体酸触媒寿命を改善、あるいは性能を向上させた方法としていくつかの方法が開示されている(特許文献13〜15参照)。しかし、いずれの方法においても、固体酸触媒の経時劣化は不可避であり、本質的な改善を要する。
【0009】
上記のように、これらの従来方法では、さまざまな理由により経済性悪化、産業廃棄物処理等の問題を避けることはできないのが現状である。
先に我々は、オレフィンと水との水和反応によりアルコール類を製造するにあたり、酸触媒を必要としない直接水和プロセスを開発した(特許文献16参照)。これは、水の臨界点近傍で発現する酸触媒機能を利用したものである。この技術を生かして、さらなる生産性の向上を図るべく鋭意検討した結果、本発明に至った。
【特許文献1】特公昭51−44915公報
【特許文献2】特開昭52−133095公報
【特許文献3】特開昭53−84906公報
【特許文献4】特開昭47−30608公報
【特許文献5】特開昭47−31908公報
【特許文献6】特開昭47−31909公報
【特許文献7】特開昭52−133910公報
【特許文献8】特開昭52−113904公報
【特許文献9】特開昭49−117412公報
【特許文献10】特開昭49−126607公報
【特許文献11】特開昭49−126609公報
【特許文献12】特開昭63−218251公報
【特許文献13】特開平8−143493公報
【特許文献14】特開平8−151339公報
【特許文献15】特開平11−76836公報
【特許文献16】特開2003−34657公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、脂肪族二重結合を有する化合物と水との水和反応による水酸基含有化合物の製造方法であって、簡単な装置と操作を用いて、非常に少ない触媒量でも効率よく水酸基含有化合物を製造することができ、これにより触媒回収工程、触媒中和工程を大幅に削減し、かつ触媒再生および触媒交換等を必要としない水酸基含有化合物の製造方法を提供することを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、次の水酸基含有化合物の製造方法である。
(1)酸触媒を1ppb〜500ppmの割合で含有する水溶液と、脂肪族二重結合を有する化合物とを、脂肪族二重結合を有する化合物に対する水のモル比(水/脂肪族二重結合を有する化合物)が1〜50、反応温度が200〜600℃、反応圧力が1〜100MPaの条件下で接触させ、脂肪族二重結合を有する化合物と水とを水和反応させて水酸基含有化合物を製造することを特徴とする水酸基含有化合物の製造方法。
【0012】
(2)前記酸触媒を含有する水溶液の酸触媒の濃度が1ppb〜300ppmであることを特徴とする上記(1)に記載の水酸基含有化合物の製造方法。
(3)前記脂肪族二重結合を有する化合物に対する水のモル比(水/脂肪族二重結合を有する化合物)が2〜25であることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の水酸基含有化合物の製造方法。
【0013】
(4)前記酸触媒を含有する水溶液の酸触媒の濃度が1ppb〜70ppmであり、前記脂肪族二重結合を有する化合物に対する水のモル比(水/脂肪族二重結合を有する化合物)が2〜25であることを特徴とする上記(1)に記載の水酸基含有化合物の製造方法。
【0014】
(5)前記反応温度が250〜450℃であり、反応圧力が4〜90MPaであることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載の水酸基含有化合物の製造方法。
(6)前記酸触媒が、塩酸、塩化水素、亜塩素酸、次亜塩素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、フッ化水素、フッ化水素酸、臭化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素、ヨウ化水素酸、オルトリン酸、メタリン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、二リン酸、トリポリリン酸、ホウ酸、ケイタングステン酸、ケイタングステン酸ナトリウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸ナトリウム、ケイモリブデン酸、ケイモリブデン酸ナトリウム、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸ナトリウム、安息香酸、酢酸、サリチル酸、シュウ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、フェノールのいずれかであることを特徴とする上記(1)〜(5)のいずれかに記載の水酸基含有化合物の製造方法。
【0015】
(7)前記酸触媒が、塩酸、硫酸、硝酸、オルトリン酸、メタリン酸のいずれかであることを特徴とする上記(1)〜(6)のいずれかに記載の水酸基含有化合物の製造方法。
(8)前記脂肪族二重結合を有する化合物が、モノオレフィンまたはジオレフィンであることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれか1項に記載の水酸基含有化合物の製造方法。
【0016】
(9)脂肪族二重結合を有する化合物が、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、イソペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、イソヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、シクロヘキセン、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、
1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエ
ン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエン、1,9−デカジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエン、スチレン、アリルベンゼン、トランス−スチルベン、シス−スチルベン、トリフェニルエテン、テトラフェニルエテン、ジビニルベンゼンのいずれかであることを特徴とする上記(1)〜(7)のいずれかに記載の水酸基含有化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明の製造方法は、脂肪族二重結合を有する化合物と水との水和反応を、微量の酸触媒の存在下、高温、高圧下で行うことにより、十分な速度で水和反応を進行させることができ、従来の触媒回収工程、触媒中和工程を大幅に削減し、かつ触媒再生および触媒交換等を必要とせず、低コストで効率よく水酸基含有化合物を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明に係る水酸基含有化合物の製造方法について具体的に説明する。
本発明では、酸触媒の存在下、脂肪族二重結合を有する化合物と水とを水和反応させて水酸基含有化合物を製造している。
【0019】
(脂肪族二重結合を有する化合物)
本発明において用いられる脂肪族二重結合を有する化合物は、下記モノオレフィン、ジオレフィンなどの水和し得る脂肪族炭素−炭素二重結合を少なくとも一個有する化合物である。
【0020】
モノオレフィンとしては、例えば下記一般式(1)
一般式 R12C=CR34 …(1)
(ここで、R1〜R4は各々独立に、飽和脂肪族基、芳香族基または水素原子を表す。)
で表される脂肪族モノオレフィンおよび芳香族基含有モノオレフィンが挙げられる。
【0021】
脂肪族モノオレフィンの具体例としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、イソペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、イソヘキセン、ヘプテン、オクテン、ノネン、デセン、ドデセン、シクロヘキセンなどが挙げられる。また、芳香族基含有モノオレフィンの具体例としては、スチレン、アリルベンゼン、トランス−スチルベン、シス−スチルベン、トリフェニルエテン、テトラフェニルエテンなどが挙げられる。
【0022】
ジオレフィンとしては、
例えば下記一般式(2)
56C=CR7−R8−R9C=CR1011 …(2)
(R5〜R7、R9〜R11は各々独立に、飽和脂肪族基、芳香族基または水素原子を表し、
8は飽和脂肪族基、芳香族基または単結合を表す。)
で表される脂肪族ジオレフィンおよび芳香族基含有ジオレフィンが挙げられる。
【0023】
脂肪族ジオレフィンの具体例としては、1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,4−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、2,4-ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、1,8−ノナジエ
ン、1,9−デカジエン、1,3−シクロヘキサジエン、1,4−シクロヘキサジエンなど
が挙げられる。また、芳香族基含有ジオレフィンの具体例としては、ジビニルベンゼンなどが挙げられる。
【0024】
(酸触媒)
本発明で用いられる酸触媒としては、塩酸、塩化水素、亜塩素酸、次亜塩素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、フッ化水素、フッ化水素酸、臭化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素、ヨウ化水素酸、オルトリン酸、メタリン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、二リン酸、トリポリリン酸、ホウ酸、ケイタングステン酸、ケイタングステン酸ナトリウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸ナトリウム、ケイモリブデン酸、ケイモリブデン酸ナトリウム、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸ナトリウム、安息香酸、酢酸、サリチル酸、シュウ酸、トリフルオロメタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、フェノールなどが挙げられ、好ましくは、塩酸、塩化水素、亜塩素酸、次亜塩素酸、硫酸、亜硫酸、硝酸、亜硝酸、フッ化水素、フッ化水素酸、臭化水素、臭化水素酸、ヨウ化水素、ヨウ化水素酸、オルトリン酸、メタリン酸、ホスフィン酸、ホスホン酸、二リン酸、トリポリリン酸、ホウ酸、ケイタングステン酸、ケイタングステン酸ナトリウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸ナトリウム、ケイモリブデン酸、ケイモリブデン酸ナトリウム、リンモリブデン酸、リンモリブデン酸ナトリウムなどの水溶性の酸触媒である。
上記酸触媒の中では、塩酸、硫酸、硝酸、オルトリン酸、メタリン酸が好ましい。
【0025】
本発明の水酸基含有化合物の製造方法に用いる酸触媒の割合は、脂肪族二重結合を有する化合物と接触させる酸触媒を含有する水溶液の濃度として、通常1ppb〜500ppm、好ましくは1ppb〜300ppm、さらに好ましくは1ppb〜70ppm、特に好ましくは10ppb〜50ppmである。
【0026】
酸触媒の使用割合が上記範囲内にあると、十分な速度で水和反応を進行させることができ、しかも触媒回収工程、触媒中和工程を大幅に削減することができ、かつ触媒再生および触媒交換等を必要としない。
【0027】
(反応条件)
酸触媒の存在下、脂肪族二重結合を有する化合物と水とを水和反応させる際の反応温度および反応圧力は、好ましくは反応温度が200〜600℃であり反応圧力が1〜100MPa、より好ましくは反応温度が250〜450℃であり反応圧力が4〜90MPa、さらに好ましくは反応温度が250〜450℃であり反応圧力が5.5〜50MPaである。最も好ましくは、臨界点近傍の超臨界または亜臨界の反応温度および反応圧力で水和反応を行う。ここで臨界点とは水と脂肪族二重結合を有する化合物のモル比(水/脂肪族二重結合を有する化合物)で決まる、気体と液体が共存できる限界の温度および圧力のことであり、本発明において臨界点近傍の超臨界または亜臨界の反応温度および反応圧力とは、具体的には270〜400℃の温度および5.5〜50MPaの圧力である。
【0028】
温度および圧力が上記範囲内にあると、十分な速度で水和反応を進行させることができる。
脂肪族二重結合を有する化合物に対する水のモル比(水/脂肪族二重結合を有する化合物)は、通常1〜50であり、好ましくは1〜25であり、より好ましくは2〜20であり、特に好ましくは5〜15である。
【0029】
脂肪族二重結合を有する化合物に対する水のモル比が上記範囲内にあると、低モル比側で問題となる、反応時間が長くなることによる反応器サイズの増大が避けられ、また高モル比側で問題となる、単位生産量あたりの水使用量増大による反応器サイズの増大または水昇圧のための消費エネルギーの増大が避けられる。
【0030】
(水酸基含有化合物)
本発明の方法に従って製造される水酸基含有化合物は、脂肪族二重結合を有する化合物の該二重結合を構成する2個の炭素原子のいずれかに水酸基が結合した化合物である。脂肪族二重結合を有する化合物が、例えば上記一般式(1)で示されるモノオレフィンの場
合、
12(HO)C−CHR34
および/または
12C−C(OH)R34
で示されるアルコールが製造される。
【0031】
本発明の方法にしたがって好ましく製造される水酸基含有化合物としては、エタノール、2−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、2−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−メチル−3−ペンタノール、3−メチル−3−ペンタノール、2−エチル−2−ブタノール、2,3−ジメチル−2−ブタノ
ール、3,3−ジメチル−2−ブタノール、2,3−ジメチル−3−ブタノール等を挙げることができる。これらに対応する脂肪族二重結合を有する化合物として、各々エチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−2−ブテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、2−メチル−2−ペンテン、3−メチル−2−ペンテン、4−メチル−2−ペンテン、2−エチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−1−ブテン、
3,3−ジメチル−1−ブテン、2,3−ジメチル−2−ブテンが挙げられる。
【0032】
本発明は特にエタノール、2−プロパノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール、2−ペンタノール、2−ヘキサノール、4−メチル−2−ペンタノール等の製造に好ましく用いられる。
【0033】
(製造例)
脂肪族二重結合を有する化合物と水との水和反応により水酸基含有化合物を製造する本発明の方法について、脂肪族二重結合を有する化合物がモノオレフィンである場合を例として以下に説明する。
【0034】
反応の方法としては、バッチ式でも連続式でもどちらでもよいが、連続式の場合について、本発明を実施するための工程の概略フローシートの一例が示されている図1を参照して説明する。なお、連続式で実施する態様の下記の説明をバッチ式に応用して実施することは当業者には容易である。
【0035】
水は原料タンク1からライン4を経て酸触媒水溶液調合タンク6へ供給する。酸触媒は酸触媒タンク2からライン5を経て酸触媒水溶液調合タンク6へ供給され、水と混合される。使用する水は、好ましくはイオン交換水を用いる。ここで調合された酸触媒水溶液はライン7を経て反応器9へ供給する。酸触媒水溶液は必要に応じて反応器へ供給する前に、予熱してから供給する。オレフィンは原料タンク3からライン8を経て反応器9に供給する。オレフィンも必要に応じて予熱してから供給する。生成した反応液はライン10を経て分離工程11へ送られ、未反応オレフィン、酸触媒水溶液を分離する。未反応オレフィンはライン12を経て反応器9にリサイクルされる。また、酸触媒水溶液はライン13を経て反応器9にリサイクルされる。ライン14からは副生成物等を含む粗アルコールが精製工程15に送られ、副生成物等を精留等の方法によりライン16から分離したのち、ライン17から製品アルコールを得て製品タンク18に貯蔵することができる。
【0036】
反応器9において、モノオレフィンと酸触媒水溶液を1ppb〜500ppmの酸触媒下、脂肪族二重結合を有する化合物に対する水のモル比(水/脂肪族二重結合を有する化合物)を1〜50として、200〜600℃の高温、1〜100MPaの高圧で接触させ
て反応させる。このとき、水は、その温度、圧力によって、気体、液体、超臨界状態のいずれかの形態をとっている。反応のための好ましい条件は、1ppb〜300ppm、好ましくは1ppb〜70ppm、より好ましくは10ppb〜50ppmの酸触媒の存在下、200〜600℃の反応温度および1〜100MPaの反応圧力、より好ましくは250〜450℃の反応温度および4〜90MPaの反応圧力、さらに好ましくは250〜450℃の反応温度および5.5〜50MPaの反応圧力である。最も好ましくは、臨界点近傍の超臨界または亜臨界の反応温度および反応圧力で水和反応を行う。また、脂肪族二重結合を有する化合物に対する水のモル比(水/脂肪族二重結合を有する化合物)は、好ましくは1〜25、より好ましくは2〜20、さらに好ましくは5〜15である。
【0037】
反応器9における反応時間(滞留時間)は、モノオレフィンの種類、反応温度、反応圧力その他の条件によって適切に設定されるが、通常0.1秒〜30分程度である。
[実施例]
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0038】
実施例および比較例では、図2に示される流通型の反応装置を用いて、連続式でオレフィンの水和反応を行った。図2に示される反応装置は、ポンプ23、24、反応器25、加熱器26、背圧弁27を有する。原料水および酸触媒を混合した酸触媒水溶液はタンク21からポンプ23を用いて反応器25に供給し、原料オレフィンはタンク22からポンプ24により反応器25に供給し、反応器25でこれらを混合して水和反応を起こさせた。なお、反応器25の温度および圧力は、加熱器26および背圧弁27により調節し、反応液を反応液タンク28より取り出した。また、反応時間(滞留時間)はポンプ23、24を調整して原料酸触媒水溶液と原料オレフィンの流量で制御した。
【0039】
すべての実施例、比較例の反応成績(STY)は、反応液の組成から下記の数式(1)により算出した。なお、反応液の組成はアジレントテクノロジー製のガスクロマトグラフ質量分析計(GC−MS)により分析して決定した。
数式(1):
STY(g/g-cat・h)=[(生成アルコール量)/{(触媒量)×(反応時間)}]
【実施例1】
【0040】
オレフィンとしてプロピレンを用い、反応器25は加熱器26で加熱した。反応器25内の反応温度および反応圧力を、各々380℃および30MPaとし、酸触媒水溶液中の硫酸濃度を50ppmとして、水和反応を行った。水/プロピレン(モル比)が10、滞留時間が10分となるよう、酸触媒水溶液流量を102g/h、プロピレン流量を23.8g/h、反応器25の容積を50mLとした。このときのSTYは1,960g/g−
cat・hであった。
【実施例2】
【0041】
温度を370℃とし、水/プロピレン(モル比)が10、滞留時間が10分となるように、酸触媒水溶液流量を109g/h、プロピレン流量を25.3g/hとした以外は実施例1と同様に行った。このときのSTYは2,310g/g−cat・hであった。
【実施例3】
【0042】
温度を360℃とし、水/プロピレン(モル比)が10、滞留時間が10分となるように、酸触媒水溶液流量を113g/h、プロピレン流量を26.5g/hとした以外は実施例1と同様に行った。このときのSTYは2,930g/g−cat・hであった。
【実施例4】
【0043】
温度を350℃とし、水/プロピレン(モル比)が10、滞留時間が10分となるように、酸触媒水溶液流量を118g/h、プロピレン流量を27.5g/hとした以外は実施例1と同様に行った。このときのSTYは4,590g/g−cat・hであった。
【実施例5】
【0044】
温度を340℃とし、水/プロピレン(モル比)が10、滞留時間が10分となるように、酸触媒水溶液流量を122g/h、プロピレン流量を28.4g/hとした以外は実施例1と同様に行った。このときのSTYは6,390g/g−cat・hであった。
【実施例6】
【0045】
温度を320℃とし、水/プロピレン(モル比)が10、滞留時間が10分となるように、酸触媒水溶液流量を129g/h、プロピレン流量を30.1g/hとした以外は実施例1と同様に行った。このときのSTYは10,300g/g−cat・hであった。
【実施例7】
【0046】
温度を310℃とし、水/プロピレン(モル比)が10、滞留時間が10分となるように、酸触媒水溶液流量を133g/h、プロピレン流量を30.9g/hとした以外は実施例1と同様に行った。このときのSTYは11,800g/g−cat・hであった。
【実施例8】
【0047】
温度を300℃とし、水/プロピレン(モル比)が10、滞留時間が10分となるように、酸触媒水溶液流量を136g/h、プロピレン流量を31.7g/hとした以外は実施例1と同様に行った。このときのSTYは10,700g/g−cat・hであった。
【実施例9】
【0048】
温度を280℃とし、水/プロピレン(モル比)が10、滞留時間が10分となるように、酸触媒水溶液流量を142g/h、プロピレン流量を33.2g/hとした以外は実施例1と同様に行った。このときのSTYは9,580g/g−cat・hであった。
【実施例10】
【0049】
温度を260℃とし、水/プロピレン(モル比)が10、滞留時間が10分となるように、酸触媒水溶液流量を149g/h、プロピレン流量を34.7g/hとした以外は実施例1と同様に行った。このときのSTYは4,190g/g−cat・hであった。
【実施例11】
【0050】
温度を250℃とし、水/プロピレン(モル比)が10、滞留時間が10分となるように、酸触媒水溶液流量を152g/h、プロピレン流量を35.4g/hとした以外は実施例1と同様に行った。このときのSTYは1,520g/g−cat・hであった。
【実施例12】
【0051】
温度を380℃とし、酸触媒水溶液中の硫酸濃度を0.5ppm(500ppb)として、水/プロピレン(モル比)が10、滞留時間が10分となるように、酸触媒水溶液流量を102g/h、プロピレン流量を23.8g/h、反応器25の容積を50mLとした以外は実施例1と同様に行った。このときのSTYは172,000g/g−cat・
hであった。
【実施例13】
【0052】
温度を310℃とし、酸触媒水溶液中の硫酸濃度を500ppmとして、水/プロピレン(モル比)が10、滞留時間が10分となるように、酸触媒水溶液流量を133g/h、プロピレン流量を30.9g/hとした以外は実施例1と同様に行った。このときのS
TYは1,340g/g−cat・hであった。
[比較例1]
温度および圧力を、各々190℃および30MPaとし、酸触媒水溶液中の硫酸濃度を50ppmとして、水/プロピレン(モル比)が10、滞留時間が10分となるように、酸触媒水溶液流量を104g/h、プロピレン流量を65.1g/hとした以外は実施例1と同様に行った。このときのSTYは0g/g−cat・hであった。
[比較例2]
温度および圧力を、各々250℃および30MPaとし、酸触媒水溶液中の硫酸濃度を0.0005ppm(0.5ppb)として、水/プロピレン(モル比)が10、滞留時間が10分となるように、酸触媒水溶液流量を152g/h、プロピレン流量を35.4g/hとした以外は実施例1と同様に行った。このときのSTYは0g/g−cat・hであった。
[比較例3]
温度および圧力を、各々250℃および30MPaとし、酸触媒水溶液中の硫酸濃度を50ppmとして、水/プロピレン(モル比)が0.8、滞留時間が10分となるように、酸触媒水溶液流量を27.8g/h、プロピレン流量を81.1g/hとした以外は実施例1と同様に行った。このときのSTYは0g/g−cat・hであった。
【0053】
上記実施例1〜13および比較例1〜3の反応条件およびSTYの値を下記表1に示した。
[比較例4]
温度および圧力を、各々380℃および30MPaとし、水/プロピレン(モル比)が10、滞留時間が10分となるように、水流量を102g/h、プロピレン流量を23.8g/hとし、酸触媒を用いなかったこと以外は実施例1と同様に行った。
【0054】
その結果、触媒量が0のため、STYとしては計算できないが、実施例1において生成するIPAの選択率は59%であったのに対して、比較例4の場合は3.6%であり、大きく低下した。
【0055】
【表1】


表1に示した結果より、本発明で特定された反応の条件を満たす実施例1〜13は、水和反応のSTYが大きく、効率的に反応が進行していることがわかる。一方、本発明で特定する条件のうち、温度条件を満たさない比較例1および、硫酸濃度条件を満たさない比較例2および、水/プロピレンモル比条件を満たさない比較例3については、どの場合も水和反応も進行していないことが明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明実施のためのフローシートである。
【図2】実施例および比較例で用いた装置の概略フローシートである。
【符号の説明】
【0057】
1 水原料タンク
2 酸触媒タンク
3 オレフィン原料タンク
4 水供給ライン
5 酸触媒供給ライン
6 酸触媒水溶液調合タンク
7 酸触媒水溶液供給ライン
8 オレフィン供給ライン
9 反応器
10 反応液輸送ライン
11 分離工程
12 未反応オレフィン回収循環ライン
13 酸触媒水溶液循環ライン
14 粗アルコール輸送ライン
15 精製工程
16 副生成物排出ライン
17 製品アルコール輸送ライン
18 製品アルコールタンク
21 酸触媒水溶液タンク
22 オレフィン原料タンク
23 酸触媒水溶液供給ポンプ
24 オレフィン供給ポンプ
25 反応器
26 加熱器
27 背圧弁
28 反応液タンク
【出願人】 【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】独立行政法人産業技術総合研究所
【出願日】 平成16年5月13日(2004.5.13)
【代理人】 【識別番号】100081994
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊一郎

【識別番号】100103218
【弁理士】
【氏名又は名称】牧村 浩次

【公開番号】 特開2005−8621(P2005−8621A)
【公開日】 平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願番号】 特願2004−144016(P2004−144016)