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【発明の名称】 蛍光性化合物、これを用いた試薬、および分析装置
【発明者】 【氏名】斉藤 充弘
【住所又は居所】茨城県ひたちなか市大字市毛882番地 株式会社日立ハイテクノロジーズ設計・製造統括本部那珂事業所内

【氏名】日高 貴志夫
【住所又は居所】茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株式会社日立製作所日立研究所内

【氏名】左通 祐一
【住所又は居所】茨城県日立市大みか町七丁目1番1号 株式会社日立製作所日立研究所内

【要約】 【課題】蛍光計測装置或いは燐光計測装置に於て、試料の時間分解蛍光測定手法による、或いは蛍光乃至燐光分析測定を行う時、LED光源を励起光光源として使用できるものとする。

【解決手段】−(−X−COCHCOC2n+1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
−(−X−COCHCOC2n+1
(式中、Rは水素,アルキル基,フェニル基、又はタンパク質,ペプチド,アミノ酸,核酸もしくは塩基に結合可能な基であり、Xは縮合多環芳香族炭素化合物である。nは1から5までの整数であり、mは1,2又は3である。)で表される蛍光性化合物。
【請求項2】
一般式
−X−(−COCHCOC2n+1
(式中、R は水素,アルキル基,フェニル基、又はタンパク質,ペプチド,アミノ酸,核酸もしくは塩基に結合可能な基であり、Xは縮合多環芳香族炭素化合物である。nは1から5までの整数であり、mは1,2又は3である。)で表される蛍光性化合物。
【請求項3】
請求項1または2記載の蛍光性化合物において、
前記Xは、シアン基,硝酸基,硫酸基を官能基として有するものであることを特徴とする蛍光性化合物。
【請求項4】
【化1】


(式中、R は水素,アルキル基,フェニル基、又はタンパク質,ペプチド,アミノ酸,核酸もしくは塩基に結合可能な基であり、Y からY で示される個所の1個所あるいは複数個所にシアン基,硝酸基,硫酸基を官能基として有するもの。nは1から5までの整数であり、mは1,2又は3である。)で表される蛍光性化合物。
【請求項5】
【化2】


(式中、R は水素,アルキル基,フェニル基、又はタンパク質,ペプチド,アミノ酸,核酸もしくは塩基に結合可能な基であり、Y からY で示される個所の1個所あるいは複数個所にシアン基,硝酸基,硫酸基を官能基として有するもの。nは1から5までの整数であり、mは1,2又は3である。)で表される蛍光性化合物。
【請求項6】
【化3】


(式中、R は水素,アルキル基,フェニル基、又はタンパク質,ペプチド,アミノ酸,核酸もしくは塩基に結合可能な基であり、Y からY で示される個所の1個所あるいは複数個所にシアン基,硝酸基,硫酸基を官能基として有するもの。nは1から5までの整数であり、mは1,2又は3である。)で表される蛍光性化合物。
【請求項7】
【化4】


(式中、R は水素,アルキル基,フェニル基、又はタンパク質,ペプチド,アミノ酸,核酸もしくは塩基に結合可能な基であり、Y からY10で示される個所の1個所あるいは複数個所にシアン基,硝酸基,硫酸基を官能基として有するもの。nは1から5までの整数であり、mは1,2又は3である。)で表される蛍光性化合物。
【請求項8】
【化5】


(式中、R は水素,アルキル基,フェニル基、又はタンパク質,ペプチド,アミノ酸,核酸もしくは塩基に結合可能な基であり、Y からY で示される個所の1個所あるいは複数個所にシアン基,硝酸基,硫酸基を官能基として有するもの。nは1から5までの整数であり、mは1,2又は3である。)で表される蛍光性化合物。
【請求項9】
【化6】


(式中、R は水素,アルキル基,フェニル基、又はタンパク質,ペプチド,アミノ酸,核酸もしくは塩基に結合可能な基であり、Y からY10で示される個所の1個所あるいは複数個所にシアン基,硝酸基,硫酸基を官能基として有するもの。nは1から5までの整数であり、mは1,2又は3である。)で表される蛍光性化合物。
【請求項10】
請求項1または2に記載の蛍光性化合物と、希土類元素イオンとにより形成された錯体であって、370nm以上に最大吸収波長を有する錯体。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれかに記載の蛍光性化合物または錯体を含む標識試薬。
【請求項12】
発光ダイオードと、
該発光ダーオードを10Hzから1000Hzの点滅サイクルで発光させる発光制御回路と、
該発光ダイオードからの発光をサンプルを保持する保持手段に導く光学系と、
該サンプルからの発光を検出する検出手段と、
を備えた分析装置。
【請求項13】
発光ダイオードと、
該発光ダイオードを連続的に発光させる発光制御回路と、
該発光ダイオードからの発光を10Hzから2000Hzの点滅サイクルで断続させるチョッパーと、
該発光ダイオードからの発光をサンプルを保持する保持手段に導く光学系と、
該サンプルからの発光を検出する検出手段と、
を備えた分析装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、核酸検出法,イムノアッセイ法,化学発光分析法において用いられる時間分解蛍光測定法,遅延燐光測定法あるいはエネルギートランスファー蛍光検出法の標識試薬に好適な化合物に係り、特に従来の励起光光源であるレーザ,キセノンフラッシュランプ等の発光波長より長波長側に吸収波長のピークを有する蛍光性化合物に関する。
【0002】
また、励起光光源に従来の励起光光源であるレーザ,キセノンフラッシュランプ等の発光波長より長波長側に発光強度のピークを有するLED(Light Emission Diode/Laser Diode)を用いた計測システムに関する。
【0003】
【従来の技術】
イムノアッセイあるいは核酸検出法は、可視的及び放射活性計測を含む数多くの手法によってその計測がなされているが、蛍光体あるいは蛍光色素で分析対象物を標識する蛍光強度測定法はその簡易さのため多く用いられている。この手法の有用性は、標識体に用いる蛍光性化合物が励起光波長とは異なる波長域に蛍光あるいは発光を発生するため、励起光に由来するバックグラウンドノイズを低減し得ることにある。従い、励起光の波長ピークと蛍光あるいは発光の波長ピークができるだけ離れており、かつ蛍光あるいは発光が比較的長時間発光するような物質を標識体として選択することが望ましい。
【0004】
ローダミンあるいはフルオレセイン等の蛍光色素においては、蛍光の波長分布域が広く、ブロードな蛍光波形が得られる。複数の蛍光体あるいは蛍光色素を用いて複数物質の同時計測を行おうとする場合、蛍光波長域がオーバーラップし個々の物質の計測が難しいか、個々の物質の量を知るために換算式を適用しアルゴリズム解析する必要が生ずる。
【0005】
近年、ユーロピウムあるいはサマリウム等の希土類元素とそれらの配位子とのコンプレックスから発せられる蛍光あるいは燐光消光時間が長いことを利用して、時間分解蛍光あるいは燐光測定法が優れた手法として開発されている。蛍光あるいは燐光の消光時間が長いこと、ストークスシフトが大きいこと、蛍光あるいは燐光ピーク波形がシャープであることにより、励起光によるノイズを含むことなく蛍光あるいは燐光のシグナルが検出され、高感度の分析手法を提供するとされる。この手法はキセノンフラッシュランプあるいはレーザ等により励起光をパルスで照射し、励起光による装置あるいは他の物質の蛍光が消失する時間が経過してから、目的の蛍光あるいは燐光を計測するものである。特許文献1はこの配位子の改良についての発明であり、4,7−bis(chlorosulfophenyl)−1,10−phenanthroline−2,9−dicarboxylic acid (BCPDA)あるいは4,4′−bis(1″,1″,1″,2″,2″,3″,3″−heptafluoro−4″,6″−hexanedion−6″−yl)chlorosulfo−o−terphenyl(BHHCT)といった化合物を時間分解蛍光あるいは燐光測定手法に用いることが記載されている。
【0006】
これらの化合物は340nm前後に吸収ピークがあるため、キセノンフラッシュランプあるいはレーザ等の340nm前後に発光ピークを有する励起光光源が用いられる。
【0007】
具体的には、レーザにおいては、337nmをピークとする光を発する窒素ガスレーザ、あるいは、355nmの光のNd:YAGレーザ第3高調波を用いることができる。
【0008】
【特許文献1】
特開平9−241233号公報
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
これらの励起光光源は大掛かりでかつ高価なため、装置の大型化,高価格化の原因となっている。一方、近年、短波長LEDの開発進展は著しく、青色LEDあるいは紫外光LEDは、405nmから370nm前後にピーク波長を有するものが開発されるようになってきている。LEDは小さく、かつ低コストであり、これを励起光光源として用いることができれば小型、かつ安価な分析装置が提供できると思われるが、従来の配位子あるいは錯体の光吸収ピークである340nmからは遠く、照射光のエネルギーが配位子あるいは錯体により十分吸収されず、分析感度等の点で問題があることが容易に予想できる。
【0010】
本発明の目的は、従来より長波長側に発光強度のピークを有するLED等の励起光光源を用いて核酸検出法,イムノアッセイ法,化学発光分析法において用いられる時間分解蛍光測定法,遅延燐光測定法あるいはエネルギートランスファー蛍光検出法を行うための標識試薬に好適な蛍光性化合物を提供することにある。
【0011】
また、LEDを励起光源として使用した低コストかつ簡易な計測システムを提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するための本発明の構成は以下の通りである。
【0013】
一般式 R−(−X−COCHCOC2n+1
または、R−X−(−COCHCOC2n+1
(式中、Rは水素,アルキル基,フェニル基、又はタンパク質,ペプチド,アミノ酸,核酸もしくは塩基に結合可能な基であり、Xは縮合多環芳香族炭素化合物である。nは1から5までの整数であり、mは1,2又は3である。)で表される蛍光性化合物。
【0014】
これら化合物は、短波長光LEDによる光波長と十分に重なる光吸収ピークを有する。その結果、LEDにより、分析が実施可能な程度に励起が可能となり、LEDを光源とし、希土類元素とその配位子とを蛍光物質とした時間分解蛍光測定システムが達成できる。
【0015】
また、LEDは、キセノンフラッシュランプあるいは窒素ガスレーザーとは異なり連続点灯によっても光量を損なうことがない。このため、チョッパー等の光遮断システムと組み合わせ、連続光源を用いた時間分解蛍光測定装置の作製ができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。
【0017】
(実施例1)
縮合多環芳香族炭化水素をアントラセンとする本発明の化合物の合成方法を図1に示す。
【0018】
化合物1の吸収スペクトルと励起スペクトルを図2に示す。
【0019】
吸収スペクトルは分光光度計U−3300(日立ハイテクノロジーズ)、励起スペクトルは蛍光光度計F−4010(日立ハイテクノロジーズ)により測定した。
【0020】
図2から吸収ピークおよび励起ピークは415nm付近にあることがわかる。
【0021】
縮合多環芳香族炭化水素の吸収ピークの一覧を表1に示す。対象としてベンゼンを示す。芳香環の数が多くなるにしたがい、吸収ピークは長波長側にあることがわかる。
【0022】
【表1】


【0023】
有機化合物においては二重結合が一つおきに連なった共役二重結合の構造をもつものが多く存在する。モル吸光係数は、光を吸収する度合いを示す指標であり、これが大きいほど光を強く吸収する。共役系が大きくなればなるほど、吸収ピークが長波長側にずれ、かつ、光を吸収する度合いが大きくなることを示す。
【0024】
これらの化合物を構成する炭素原子は、sp 混成をしており、その結果、分子は平面構造となり炭素の2p 原子軌道は互いに有効に重なり合って分子全体にわたり、π電子は非局在化している。
【0025】
さらには、官能基を付加することにより、化合物の吸収ピークが移動することが知られている。図3に記載のように、ベンゼン,フェノール,ニトロフェノールと官能基が付加されるにしたがい、吸収ピークは255nm,270nm,
310nmと長波長側に移動する。
【0026】
紫外可視吸収は電子の運動状態の変化,遍移に関係する。光子の持つエネルギーはhc/λ(h:プランク定数,c:光の速さ,λ:光の波長)で表されることが知られている。共役系にはπ電子が多数存在するが、このπ電子は分子の骨格を形作っているσ結合の電子より動きやすく、π電子に光子がぶつかれば電子の運動状態を容易に変えることになる。共役系が大きくなればなるほどπ電子は動きやすくなり、エネルギーの低い光子であっても遍移させることが可能となる。遍移は光子のエネルギーが電子の状態エネルギーに変換されたことを表す。光子のエネルギーが小さいことはhc/λのλが大きいことになり、共役系が存在すれば長波長側に吸収ピークがでることを示す。
【0027】
シアン基,硝酸基,硫酸基等の共役系を伸ばす官能基を縮合多環芳香族炭化水素に付加することで、吸収ピークの長波長側へのシフトがさらになされることになる。
【0028】
(実施例2)
以下、本発明の化合物1を用いたイムノアッセイを例示する。
【0029】
(1)抗ヒトCRP(C反応性タンパク)抗体のビオチン標識
抗ヒトCRP抗体1mgをリン酸緩衝食塩水(PBS,pH7.4)1mLで溶解する。Sulfo−NHS−LC−Biotin 0.062mg を混合、氷浴中に2時間静置する。その後、PD−10カラム(ファルマシア製)を用い、PBSにて抗体画分を溶出採取、未結合のSulfo−NHS−LC−Biotin を除く。ビオチン標識抗体液は0.1%にアジ化ナトリウムを加え、4℃に保存する。
【0030】
(2)SA標識体の作製
実施例1の化合物1へのクロロスルホニル基の導入
化合物0.1ミリモルあたり0.2mLのクロロ硫酸(和光純薬製)を加え、室温にて7時間攪拌した後、攪拌下の純水(氷浴中)4mLに反応溶液を滴下する。生成する沈殿を遠心分離し、純水にて3回洗浄する。その後、沈殿を45時間真空乾燥する。
【0031】
ストレプトアビジン(SA,Chemicon International製)10ミリモルを0.1M炭酸緩衝液(pH9.1)4mLに溶解する。前記の化合物10ミリモルをエタノール40μLに溶解し、SA液中に滴下する。混合液を室温にて1時間攪拌した後、0.05%アジ化ナトリウム加0.1MNaHCO 水溶液で十分に透析した。透析後、1M HClにてpHを6.8に調整し全量を6mLとし、0.1%にBSAを加える。これを10−7M EuCl・6HO,1%BSA,0.1%アジ化ナトリウムを含む0.05M トリス塩酸緩衝液(pH7.8)にて300倍に希釈し、56℃2時間加温の後、反応に使用する。
【0032】
(3)抗ヒトCRP抗体によるマイクロタイタープレートコーティング
抗ヒトCRP抗体の固相化されたマイクロタイタープレートを用意する。
【0033】
0.1M炭酸緩衝液(pH9.6)で5μg/mLに稀釈した抗ヒトCRP抗体をマイクロタイタープレートに100μL分注し、4℃一夜静置コーティングを行う。その後、0.05%Tween20加生理食塩水で洗浄した後、1%BSA,2%シュクロース加炭酸緩衝液(pH9.1)100μLを加え、37℃にて静置する。1時間後、0.05%Tween20(シグマ製)加生理食塩水で洗浄し、−20℃で保管する。
【0034】
(4)イムノアッセイの実施
1%BSA加生理食塩水にて、ヒトCRP標準品を10倍段階稀釈し、その50μLをマイクロタイタープレート各穴に加える。37℃,1時間振盪後、0.05%Tween20加生理食塩水で洗浄する。その後、1μg/Lに(1)のビオチン標識抗ヒトCRP抗体を1%BSA加生理食塩水にて稀釈し、その50μLを各穴に分注した。37℃,1時間振盪後、0.05%Tween20加生理食塩水で洗浄する。その後、(2)のユーロピウム標識SAを1%BSA加生理食塩水にて稀釈し、その50μLを各穴に分注する。
【0035】
室温にて30分静置後、0.05%Tween20加生理食塩水で洗浄した。LEDを光源として搭載したマイクロタイタープレートを時間分解測定装置にて発光量を計測する。
【0036】
結果を図4に示す。化合物は標識体として、性能よくイムノアッセイにて使用できることがわかる。
【0037】
(実施例3)
現在、青色あるいは白色光LEDは、370nm以上の波長のものが主である。
【0038】
実施例1にて作成した蛍光性化合物を用いるパルス光源による時間分解測定装置の構成図を図5に示す。
【0039】
化合物は塩化ユウロピウム液と混合され、蛍光性化合物としてサンプル容器に分注される。マイクロコンピューターにより制御されたトリガー回路によりLEDの発光と消光が一定の間隔で繰り返される。時間分解測定手法により発光から少し遅れ、出力ゲートは光電子増倍管でのフォトンカウンティングを開始させマイクロコンピューターにより入力された時間間隔の蛍光計測がなされる。
【0040】
LEDから発せられた光はレンズあるいはトロイドミラーで集光され、蛍光性化合物を含むサンプルに照射される。サンプルから発せられた蛍光はレンズあるいはトロイドミラーで集光され、光電子増倍管で計測される。
【0041】
時間分解測定手法はユーロピウム錯体に励起光を照射した後、錯体から発光される蛍光,燐光を測定する手法であるため、励起光の単位時間当たりの点滅を多くした方が、測定感度(測定下限値)が向上する。しかし、従来の励起光光源であるキセノンランプ,レーザ等は点滅サイクルを大きくすると光量が低下する問題があった。
【0042】
LEDは、小さな電力で発光し、また、単位時間あたりの発光消光の繰り返しサイクルを10Hzから2000Hzと大きくしても、光量の低下等の問題なく測定感度(測定下限値)を大きくすることが可能である。一方、従来の励起光光源で点滅サイクルを大きく(細かく)できない欠点を補うため照射する励起光の光量を大きくすると、サンプル容器等から散乱光が発生し、ノイズが増加するという問題も生じる。従い、SN比を確保しつつ、測定下限を向上するためには、微弱な励起光で点滅サイクルを大きくすることがより有効である。
【0043】
ユーロピウム錯体を形成するキレートの吸収波長をLEDの吸収波長に近づけた本発明の蛍光性化合物を用いることにより、初めて点滅サイクルが10Hzから2000Hzの励起光光源を用いた時間分解測定手法が可能となる。
【0044】
(実施例4)
実施例1にて作成した蛍光性化合物を用いる連続光源による時間分解測定装置の構成図を図6に示す。
【0045】
化合物は塩化ユウロピウム液と混合され、蛍光性化合物としてサンプル容器に分注される。マイクロコンピューターにより制御されLEDが発光し、モーターによりチョッパーが回転する。トリガー回路はチョッパーからの信号を得て、時間分解測定手法により発光から少し遅れ、出力ゲートと光電子増倍管でのフォトンカウンティングをオン,オフする。
【0046】
LEDから発せられた光はチョッパーを通過し、レンズあるいはトロイドミラーで集光され、蛍光性化合物を含むサンプルに照射される。サンプルから発せられた蛍光はレンズあるいはトロイドミラーで集光され、光電子増倍管で計測される。
【0047】
LEDは、小さな電力で発光し、また、連続した発光をする。チョッパーの小窓よりLED光を通過と遮断とを行う。単位時間あたりのサンプルへの励起光照射の繰り返しは、チョッパーの小窓の数と回転数により制御する。
【0048】
パルス光である場合、発光時および消光時にはランプ本来の波長とは異なる波長の光が発生することがあり、これらが計測時のノイズとなりうる。連続光である場合、発光時および消光時の異なる波長光の発生がなくなる。
【0049】
このことは、パルス光を発生させるための電気回路が必要でないばかりか、発光,消光による異波長光とそれらによる散乱光を発生させることなく、低ノイズでSN比の高い計測を可能にする。
【0050】
【発明の効果】
(1)本発明によれば、希土類元素とその配位子との蛍光物質は、370nm以上の波長域に吸収ピークを有し、これにより青色LEDあるいは紫外LEDの発光波長に重なる波長域に吸収ピークを有することが可能になる。結果として、LEDから発せられた光はエネルギーの損失を最小として試料中の蛍光物質に吸収され、蛍光が発せられる。LED光を光源とし、希土類元素とその配位子との蛍光物質とした時間分解蛍光測定法およびシステムが作製される。
【0051】
(2)本発明によれば、LEDは単一あるいは狭い波長域の光、かつ、従来のキセノンランプあるいはレーザを使用するよりは長波長の光を発する。レンズ・フィルタあるいは主にプラスチックを材料とする反応容器は短波長光が照射された場合、非特異的な蛍光あるいは散乱光等のノイズをより強く発するとされている。長波長光の使用はノイズを低減させ、装置あるいは試料容器に由来するバックグラウンドを下げ、さらには装置最小検出感度を高めることができる。
【0052】
(3)本発明によれば、蛍光測定装置,燐光測定装置はLEDを光源とすることができる。LEDは小形であり、かつ、消費電力はきわめて小さい。これにより、低コスト,小形かつ簡便な蛍光分析システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化合物の合成方法の一例。
【図2】本発明の化合物1の吸収/励起スペクトル。
【図3】ベンゼン,フェノール,ニトロフェノールの吸収ピーク変化。
【図4】本発明の蛍光性化合物の発光量測定結果。
【図5】本発明の測定装置の一例。
【図6】本発明の測定装置の一例。
【出願人】 【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクノロジーズ
【住所又は居所】東京都港区西新橋一丁目24番14号
【出願日】 平成15年6月23日(2003.6.23)
【代理人】 【識別番号】100075096
【弁理士】
【氏名又は名称】作田 康夫

【公開番号】 特開2005−8601(P2005−8601A)
【公開日】 平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願番号】 特願2003−177436(P2003−177436)