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【発明の名称】 ヨウ化トリフルオロメタンの製造方法およびその装置
【発明者】 【氏名】長崎順隆

【氏名】森國義男

【氏名】河田恒佐

【氏名】荒井昭治

【要約】 【課題】工業的実施が可能で安価なヨウ化トリフルオロメタンの製造方法を提供する。

【解決手段】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体触媒の存在下、トリフルオロメタンとヨウ素を反応させ、ヨウ化トリフルオロメタンを製造する方法において、反応器の中で固体触媒を移動させながら、トリフルオロメタンとヨウ素を気相で反応させることを特徴とするヨウ化トリフルオロメタンの製造方法。
【請求項2】
反応系に酸素を添加しながら、反応させることを特徴とする請求項1に記載のヨウ化トリフルオロメタンの製造方法。
【請求項3】
固体触媒を移動させるために、ロータリーキルン型の反応器を用いて、反応器本体を回転させることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のヨウ化トリフルオロメタンの製造方法。
【請求項4】
固体触媒を移動させる手段が、攪拌手段である請求項1または請求項2に記載のヨウ化トリフルオロメタンの製造方法。
【請求項5】
回転して固体触媒を移動する円筒反応容器と、該円筒反応器に気相のトリフルオロメタンとヨウ素を供給する原料ガス供給口と、反応物のヨウ化トリフルオロメタンを取り出す反応ガス取出口を備えたことを特徴とするヨウ化トリフルオロメタンの製造装置。
【請求項6】
反応容器中で固体触媒を移動させるための攪拌手段と、気相のトリフルオロメタンとヨウ素を供給する原料ガス供給口と、反応物のヨウ化トリフルオロメタンを取り出す反応ガス取出口を備えた反応容器であることを特徴とするヨウ化トリフルオロメタンの製造装置。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、固体触媒の存在下、トリフルオロメタンとヨウ素を反応させ、ヨウ化トリフルオロメタンを製造する方法において、反応器の中で固体触媒を移動させながら、トリフルオロメタンとヨウ素を反応させることを特徴とするヨウ化トリフルオロメタンの製造方法およびその装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【非特許文献1】ジャーナル オブ ケミカル ソサエティー(J. Chem. Soc.)第584ページ(1951年)
【非特許文献2】ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(J.
Org. Chem.)第833ページ(1967年)
【非特許文献3】ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(J.
Org. Chem.)第2016ページ(1958年)
【特許文献1】特開平2−262529号公報
【特許文献2】特開昭52−68110号公報
【特許文献3】特開平10−204006号公報
【0003】
ヨウ化トリフルオロメタンは、大気寿命が短く、オゾン層の破壊や地球温暖化の作用が限りなく小さいので、ハロン消火剤のみならず、CF4、C2F6やSF6などの代替ガスとしての使用が期待されている。さらには、トリフルオロメチル基を導入する原料として界面活性剤、農薬、医薬品などのフッ素含有合成中間体として極めて有用な化合物である。
【0004】
従来、いくつかのヨウ化トリフルオロメタンの製造方法が公知である。例えば、非特許文献1や非特許文献2には、トリフルオロ酢酸のアルカリ金属塩や銀塩をヨウ素と反応させる方法が報告されている。さらに、非特許文献3や特許文献1には、トリフルオロアセチルハライドとヨウ化カリウムやヨウ化リチウムを反応させる方法が報告されている。
【0005】
しかしながら、これらの従来法は、いずれもトリフルオロ酢酸およびその誘導体を原料とする方法である。これらの原料は高価であり、例えばトリフルオロ酢酸のアルカリ金属塩を原料とする場合の収率は約70%程度と低く経済的ではない。この収率を改善するため、しばしば高価な銀塩が使用されるが、工業プロセスとして必ずしも有利な方法とは言いがたい。
【0006】
また、特許文献2には、活性炭あるいは、活性アルミナにアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属塩を担持した固体触媒の存在下に、トリフルオロメタンとヨウ素との反応により、ヨウ化トリフルオロメタンを製造する方法が開示されている。さらに、特許文献3には、反応系に酸素を添加しながら、炭素質担体にアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属塩を担持した固体触媒の存在下に、トリフルオロメタンとヨウ素とを反応させ、触媒寿命の改善や回収されるヨウ素のリサイクルを可能にするヨウ化トリフルオロメタンの製造方法が開示されている。
【0007】
しかしながら、本発明者らは、これらの報告に基づき、さらに検討を重ねた。その結果、本反応を工業的に実施するには、高温でヨウ素を取り扱うために高耐蝕材料を反応器に使用する必要があり、設備コストが高い欠点があり、設備の構造やプロセスを簡略化し、設備並びに製造コストを低減できる反応方法を開発することが望まれていることがわかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
前述の報告に開示されたヨウ化トリフルオロメタンの製造方法は、原料のトリフルオロ酢酸やその誘導体が高価であるとか、収率を上げるために高価な銀塩を使用したりする必要があった。一方、トリフルオロメタンを原料とする製造方法では、反応器コストを低減化できる反応方法を開発することが望まれていた。
【0009】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、設備並びに製造コストを低減できる反応方法を開発し、工業的実施が可能で安価なヨウ化トリフルオロメタンの製造方法およびその装置を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、こうした現状に鑑み、固体触媒存在下、トリフルオロメタンとヨウ素を反応させるヨウ化トリフルオロメタンの製造方法について鋭意検討した。その結果、ヨウ化トリフルオロメタンの工業的な製造方法、として反応器内で固体触媒を移動させながら、固体触媒存在下、トリフルオロメタンとヨウ素を反応させると反応器内での局部発熱が極度に抑制され、さらに、ヨウ素が高純度で回収されリサイクルが可能になり、その結果、設備の簡略化並びに製造コストの低減が可能になることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、固体触媒の存在下、トリフルオロメタンとヨウ素を反応させ、ヨウ化トリフルオロメタンを製造する方法において、反応器の中で固体触媒を移動させながら、トリフルオロメタンとヨウ素を気相で反応させることを特徴とするヨウ化トリフルオロメタンの製造方法およびその装置に関するものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明によれば、固体触媒の存在下、トリフルオロメタンとヨウ素を反応させ、ヨウ化トリフルオロメタンを製造する方法において、反応器の中で固体触媒を移動させながら、トリフルオロメタンとヨウ素を反応させることで、反応器内の局部的な発熱が抑制されることや酸素を添加せずとも回収されるヨウ素のリサイクルが可能となり、設備が簡略化できる。その結果として、安価なヨウ化トリフルオロメタンの工業的な製造が可能となる。
【0013】
以下、本発明についてさらに詳しく説明する。
本発明における、固体触媒は特に限定されないが、例えば特許文献3に記載あるいは引例される方法により製造されるものが使用できる。
【0014】
このような固体触媒としては、例えば、金属の塩を炭素質担体に担持した触媒であり、さらに詳しくは、アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属の塩を活性炭に担持した固体触媒を挙げることができる。この固体触媒の担持方法は、特に限定されないが、例えば、常圧あるいは、減圧下に担体を金属の塩の溶液に含浸させる含浸担持法、担体を金属の塩の溶液に浸漬した後、攪拌しながら沈殿剤を加え、担体上に金属の塩の沈殿を作る沈着法、金属の塩の溶液に沈殿剤を加え沈殿を作った後、これに担体を加えて、混練する混練法などによって調整すればよい。
【0015】
本発明における、移動とは、固体触媒が、反応器内で上下左右に動いていることを意味する。さらに、固体触媒全体が移動する必要はなく、その一部のみが移動する状態でもよい。また、その移動は、特に制限されず、必要に応じて移動させればよく、断続的あるいは、連続的、さらにはそれらを組み合わせた移動状態でよい。不必要に固体触媒の移動を激しくすると触媒の磨耗、粉化が起こり好ましくない。
【0016】
本発明において、使用される原料は、トリフルオロメタンと、ヨウ素である。トリフルオロメタンの純度に特に制限はないが、望ましくは97%以上のものを用いるのが好ましい。ヨウ素は、通常の市販品を使用できる。
【0017】
原料の供給方法は、特に限定されないが、所定反応温度に維持した反応管に予め混合した原料を気体で供給する。通常ヨウ素は固体であるため、加熱、溶融し、液状としたヨウ素中にトリフルオロメタンをバブリングさせ、トリフルオロメタンとヨウ素の混合ガスを発生させ、所定量のトリフルオロメタンとヨウ素を気相で反応系に供給するのがよい。
【0018】
本発明においては、反応系に酸素を添加すると、固体触媒の寿命を延ばすことができる。使用する酸素は、特に限定されないが、純酸素や空気を用いれば良く、必要に応じて反応に不活性なガス、例えば窒素、ヘリウム、アルゴンなどで希釈することも差し支えない。また、その添加量は、特に限定されないが、特許文献3に記載あるいは引例される条件を適宜選択してよい。例えば、トリフルオロメタンに対する酸素の体積比(酸素/トリフルオロメタン)として0.01以上1.0以下の範囲で適宜選択すればよい。
【0019】
本発明において、反応器の形式は、固体触媒を移動させることができる構造であれば、特に制限はないが、反応容器内に充填した固体触媒を攪拌する攪拌装置を備えた形式のものや、反応器本体が回転し、固体触媒を移動させることが可能な構造となるロータリーキルン型の円筒反応器を挙げることができる。
【0020】
図1をもって、攪拌装置を備えた反応器1の一実施形態を説明する。反応器1内には固体触媒2が充填され、この固体触媒を攪拌して移動させるための攪拌機4が設けられている。反応器1の上部には、原料ガスを供給するための原料ガス供給口5が設けられ、反応器1の下部には、反応ガスを取り出すための反応ガス取出口6が設けられている。なお、目皿3を反応容器内下部に設けることにより、固体触媒2が反応ガス取出口6を閉塞することを防ぐことができる。固体触媒2は図示しないが、ヒーター等の適当な加熱手段で、所定温度に加熱すればよい。攪拌機4により攪拌移動する固体触媒2と、原料ガスのトリフルオロメタンとヨウ素が接触して反応し、反応生成物のヨウ化トリフルオロメタンが生成する。
【0021】
図2をもって、ロータリーキルン型の円筒反応器7の一実施形態を示す。回転する円筒反応器本体8内には、固体触媒2が充填されている。図示しないがこの円筒反応器本体8は、適当な駆動手段により、回転される。円筒反応器本体8の両端にはそれぞれロータリージョイント9、10を設け、上流側のロータリージョイント9には、原料ガス供給口5を設け、下流側のロータリージョイント10には、反応ガス取出口6が設けられている。図1と同様に目皿3を設けることにより、固体触媒2が反応ガス取出口を閉塞するのを防いでいる。なお、図示しないが加熱手段としてヒーターを設け、固体触媒2を加熱する。図2には、円筒反応器本体8の内部に、固体触媒2のずれを防ぎ、攪拌移動を効率的にするために、邪魔板11が設けられている。回転する円筒反応器本体8により攪拌移動する固体触媒2と、原料ガスのトリフルオロメタンとヨウ素が接触して反応し、反応生成物のヨウ化トリフルオロメタンが生成する。
【0022】
固体触媒が移動する際に生じる固体触媒の磨耗、粉化をできるだけ防ぐために、固体触媒へ機械的な力を加えない構造が好ましく、例えば、ロータリーキルン型の円筒反応器が好ましい。さらに、円筒反応器の内部には、固体触媒のずれを防ぎ、移動を効率的にするために、通常、ロータリーキルンに装着される邪魔板を装着しておくことが好ましい。
【0023】
本発明において、このロータリーキルン型の円筒反応器を用いて反応を行うには、例えば次のようにすればよい。すなわち、先に調製した固体触媒を充填した円筒反応器を回転させ、所定温度に加熱する。所定温度としては、反応器内の触媒層の温度として、300℃以上750℃以下、好ましくは350℃以上
600℃以下の範囲内で適宜選択すればよい。
【0024】
円筒反応器の回転は、特に制限されず、必要に応じて回転させればよく、断続的あるいは、連続的、さらにはそれらを組み合わせた回転方法でもよい。
【0025】
次いで、所定温度に加熱された反応器内に原料を連続的に気体で供給し反応させる。
【0026】
本発明において、反応器に供給する原料ガスの量は、標準状態のガス換算として原料ガス総量の線速度が、30cm/分以上、500cm/分以下が好ましい。30cm/分未満であるとCF3Iの選択性が低下し、副生成物が生成し、回収される未反応ヨウ素の純度が低下する傾向が強まる。一方、500cm/分を越えると反応器内の反応熱が大きくなり、CF3Iの選択性が低下する傾向が強まる。
【0027】
さらに、本発明においては、固体触媒が移動する際に生じる磨耗や粉化あるいは、燃焼などに伴う触媒の減少分を補うために、触媒を補給して反応させることができる。固体触媒を補給する方法は、特に限定されないが、例えばロータリーキルン型の円筒反応器を使用する場合には、ロータリージョイントを通じて補給することができる。固体触媒の補給は、反応中に連続的あるいは断続的に補給してもよいし、一旦反応を停止した後固体触媒を補給後、再度反応を開始してもよい。
【0028】
本発明において、反応の諸条件、原料の供給方法および反応管を通過した反応ガスの処理は、特に限定されないが、特許文献3の明細書に記載あるいは引例される反応条件を適宜選択してよい。例えば、(反応の諸条件は、前記のようにして調製した固体触媒を用いて、前記のような反応温度範囲および原料ガスの供給量範囲で適宜選択すればよい。反応ガスの処理は、特に限定されないが、例えば、反応管を通った反応ガスを冷却し気体と固体に分離する。気体は、常法に従って、加圧蒸留により、未反応のトリフルオロメタンと生成したヨウ化トリフルオロメタンに分離され、未反応のトリフルオロメタンは回収し、原料として再利用され、ヨウ化トリフルオロメタンは製品となる。蒸留は、バッチ式で実施しても、連続式で実施しても一向に差し支えない。一方、固体は未反応のヨウ素である。
【0029】
本発明によれば、未反応のヨウ素は、純度が高いため、リサイクルして使用することができる。未反応のヨウ素とは、ヨウ化トリフルオロメタンおよび副生成物であるヨウ化ペンタフルオロエタンなどに転化したヨウ素原子を除くヨウ素分子である。本発明において、特異的なことは、未反応のヨウ素を高純度のヨウ素分子として回収できることである。酸素を添加しない場合、固体触媒を移動させないとペースト状の不純物が生成し、回収したヨウ素に混入し、リサイクル使用することが不可能になる。しかし、固体触媒を移動させて反応させると、未反応のヨウ素は、高純度のヨウ素分子として回収できリサイクルして使用することができる。このことは、固体触媒が移動することで、高分子量のポリマーとして推定されるペースト状の不純物の生成を抑制したものと考えられる。一方、酸素を添加した場合においては、反応器内の局部発熱によると思われる不純物の発生が増えるが、固体触媒が移動すると反応器内の局部発熱が抑制されることにより、ヨウ化トリフルオロメタンの選択率が向上し、副生成物の生成が抑制されると推定され、未反応のヨウ素は、高純度で回収できる。以上のことから、固体触媒を移動させながら反応することにより、未反応のヨウ素は回収され、そのまま精製することなくリサイクル使用することが可能となり、回収されるヨウ素の精製工程が不要となり、経済性に優れたシンプルなプロセスとなり、設備並びに製造コストを低減できることとなる。
【0030】
本発明での、反応装置の材質としては、炭素鋼、鋳鉄、ステンレス鋼、銅、ニッケルまたはハステロイなどが挙げられるが、ハステロイが好ましい。
【0031】
【実施例】
以下、本発明を具体的に実施例にて説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【0032】
また、表現の簡略化のため、原料のトリフルオロメタン、ヨウ素および酸素と各生成物は、以下のように略記する。
【0033】
トリフルオロメタン ;CHF3
酸素 ;O2
ヨウ素 ;I2
ヨウ化トリフルオロメタン ;CF3I
以下の実施例中で示す転化率、選択率および線速度は、次式で表される。
転化率(%)=(転化したCHF3のモル数/供給したCHF3のモル数)×100
選択率(%)=(CF3Iのモル数/転化したCHF3のモル数)×100
線速度(cm/分)=原料ガスの総供給量(cc/分)/反応管断面積(cm
尚、原料ガス供給量は、すべて標準状態としてガス換算した値を基準として算出した。
【0034】
参考例(触媒の調製)
20.0gの硝酸カリウムと39.2gの硝酸セシウムを500gの水に溶解した溶液に、400gの粒状活性炭(武田薬品(株)製、白鷺C2)を加え一晩浸漬した。浸漬後、溶液が少量残存していたため、ロータリーエバポレーターで徐々に減圧にして水を除去した。その後、この活性炭をバットに移し、乾燥機中90〜110℃で6時間、予備乾燥した。予備乾燥後、乾燥機に充填し、窒素ガスを流通下、150℃で1時間焼成して触媒を調製した。尚、硝酸カリウム、および硝酸セシウムは、市販品試薬をそのまま使用した。
【0035】
実施例1
攪拌装置として攪拌翼および温度計を備えた内径55mmのハステロイC製の縦型反応器に、参考例で調製した触媒の一部を350cc充填した。その後、攪拌翼を1分間あたり10回転させながら、反応器内の触媒層の温度を440℃まで昇温し、CHF3=1600cc/分、I2=400cc/分の混合ガスを反応器の上部より供給し反応させ、反応ガスは反応器の下部から連続的に抜き出した。このときの線速度は、84cm/分であった。なお、ヨウ素は、液状ヨウ素中にCHF3をバブリングし、トリフルオロメタンとヨウ素の混合ガスを発生させ反応系に供給した。
【0036】
反応後、反応ガスは、冷却器を通して冷却し、気体と固体に分離した後、気体をガスクロマトグラフィーにより分析した。反応開始から10時間後の反応ガスを分析した結果、CHF3の転化率=20%、CF3Iの選択率=58%であった。また、反応器内の触媒層の温度を測定した結果、発熱は観測されなかった。一方、反応ガスを冷却し分離した固体は、金属光沢のある黒紫色の板状結晶であり、日本工業規格K8190に従い、ヨウ素の含量を分析した結果、ヨウ素含量96〜98%の純度であった。
【0037】
実施例2
原料ガスをCHF3=1500cc/分、I2=375cc/分、O2=120cc/分の混合ガスとした以外は、実施例1と全く同じ装置、方法で反応し、後処理を行った。このときの線速度は、84cm/分であった。
【0038】
反応開始から10時間後の反応ガスを分析した結果、CHF3の転化率=20%、CF3Iの選択率=58%であった。また、反応器内の触媒層の温度を測定した結果、約20℃の発熱が観測されたが、局部的な発熱ではなかった。一方、反応ガスを冷却し分離した固体は、金属光沢のある黒紫色の板状結晶であり、実施例1と同様に分析した結果、ヨウ素含量98〜99%の純度であった。
【0039】
実施例3
邪魔板および温度計を備えた内径55mmのハステロイC製のロータリーキルン横型反応器を用い、反応器本体を1分間あたり50回転させて固体触媒を移動させた以外は、実施例1と全く同様にして反応を行った。
【0040】
反応開始から10時間後の反応ガスを分析した結果、CHF3の転化率=19%、CF3Iの選択率=60%であった。また、反応器内の触媒層の温度を測定した結果、発熱は観測されなかった。一方、反応ガスを冷却し分離した固体は、金属光沢のある黒紫色の板状結晶であり、実施例1と同様に分析した結果、ヨウ素含量98〜99%の純度であった。
【0041】
実施例4
実施例3と全く同様の反応装置を用い、実施例2と同様の反応条件で反応を行った。反応開始から10時間後の反応ガスを分析した結果、CHF3の転化率=22%、CF3Iの選択率=59%であった。また、反応器内の触媒層の温度を測定した結果、わずか5℃の発熱が観測されたのみであった。一方、反応ガスを冷却し分離した固体は、金属光沢のある黒紫色の板状結晶であり、実施例1と同様に分析した結果、ヨウ素含量98〜99%の純度であった。
【0042】
実施例5
線速度が35cm/分になるように、原料ガスの組成を一定にして、原料ガスの量を変えた以外は、実施例4と全く同じ装置および条件で反応を行った。反応開始から10時間後の反応ガスを分析した結果、CHF3の転化率=26%、CF3Iの選択率=55%であった。また、反応器内の触媒層の温度を測定した結果、10℃の発熱が観測されたが局部的な発熱ではなかった。一方、反応ガスを冷却し分離した固体は、金属光沢のある黒紫色の板状結晶であり、実施例1と同様に分析した結果、ヨウ素含量96〜98%の純度であった。
【0043】
実施例6
線速度が450cm/分になるように、原料ガスの組成を一定にして、原料ガスの量を変えた以外は、実施例4と全く同じ条件で反応を行い、反応ガスの分析を行った。反応開始から10時間後の反応ガスを分析した結果、CHF3の転化率=16%、CF3Iの選択率=62%であった。また、反応器内の触媒層の温度を測定した結果、25℃の発熱が観測されたが局部的な発熱ではなかった。一方、反応ガスを冷却し分離した固体は、金属光沢のある黒紫色の板状結晶であり、実施例1と同様に分析した結果、ヨウ素含量96〜98%の純度であった。
【0044】
実施例7
実施例4と全く同様の条件で反応を開始し、20時間ごとに初期充填触媒量に対し、±20%の触媒量になるように、触媒を補給して、150時間の連続運転を行い、10時間ごとに反応ガスの分析を行った。その結果、CHF3の転化率=18〜22%、CF3Iの選択率=56〜59%と安定していた。また、反応器内の触媒層の温度も併せて10時間ごとに測定した結果、わずか5℃の発熱が観測されたのみであった。一方、反応ガスを冷却し分離した固体は、金属光沢のある黒紫色の板状結晶であり、実施例1と同様に分析した結果、ヨウ素含量98〜99%の純度であった。
【0045】
実施例8
使用するヨウ素を実施例7で回収された未反応ヨウ素を用いた以外は、実施例4と全く同様にして反応を行い、反応ガスの分析を行った。反応開始から10時間後の反応ガスを分析した結果、CHF3の転化率=21%、CF3Iの選択率=58%であった。また、反応器内の触媒層の温度を測定した結果、わずか5℃の発熱が観測されたのみであった。一方、反応ガスを冷却し分離した固体は、金属光沢のある黒紫色の板状結晶であり、実施例1と同様に分析した結果、ヨウ素含量98〜99%の純度であった。このことから、回収ヨウ素のリサイクル使用が可能であることがわかった。
【0046】
比較例1
攪拌しなかった以外は、実施例1と全く同様にして反応を行い、反応ガスの分析を行った。反応開始から10時間後の反応ガスを分析した結果、CHF3の転化率=19%、CF3Iの選択率=52%であった。また、反応器内の触媒層の温度を測定した結果、発熱は観測されなかった。一方、反応ガスを冷却し分離した固体は、ペースト状の粘性物質であり、実施例1と同様に分析した結果、ヨウ素含量75〜78%の純度であり、攪拌した場合に比べて、低純度であった。
【0047】
比較例2
攪拌しなかった以外は、実施例2と全く同様にして反応を行い、反応ガスの分析を行った。反応開始から10時間後の反応ガスを分析した結果、CHF3の転化率=25%、CF3Iの選択率=42%であった。また、反応器内の触媒層の温度を測定した結果、100℃の大きな局部的な発熱が観測された。一方、反応ガスを冷却し分離した固体は、黒紫色の塊であり、実施例1と同様に分析した結果、ヨウ素含量90〜93%の純度であり、攪拌した場合に比べて、低純度であった。
【0048】
比較例3
比較例1で回収された純度75〜78%のヨウ素を用いる以外は、実施例8と全く同様にして反応を行った。しかし、液状ヨウ素中にCHF3をバブリングさせ、CHF3とヨウ素の混合ガスを発生させようとしたが、バブリングさせてもヨウ素が十分にガス化せず、反応器に所定量のヨウ素を供給することすることができなかった。そこで、比較例1で回収されたヨウ素を用いて、蒸留や、昇華の精製方法を試みた。その結果、高分子量のポリマーと思われるペースト状の不純物がヨウ素溶融液の上に多量に分散し、ヨウ素をガス化させることが困難で、精製することができなかった。
【0049】
【発明の効果】
本発明により、安価に、ヨウ化トリフルオロメタンを工業的に製造することができる。
【0050】
また、本発明方法における未反応のヨウ素は高純度であるため、回収して再利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】攪拌装置を備えた反応器の一実施形態を示す模式断面図。
【図2】ロータリーキルン型の反応器の一実施形態を示す模式断面図。
【符号の説明】
2 固体触媒
3 目皿
4 攪拌機
5 原料ガス供給口
6 反応ガス取出口
8 円筒反応器本体
9、10 ロータリージョイント
11 邪魔板
【出願人】 【識別番号】591180358
【氏名又は名称】東ソ−・エフテック株式会社
【出願日】 平成15年6月18日(2003.6.18)
【代理人】 【識別番号】100067541
【弁理士】
【氏名又は名称】岸田 正行

【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文

【識別番号】100103506
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 弘晋

【公開番号】 特開2005−8543(P2005−8543A)
【公開日】 平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願番号】 特願2003−173231(P2003−173231)