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【発明の名称】 重合性アダマンタン化合物
【発明者】 【氏名】竹中 潤治
【住所又は居所】山口県周南市御影町1番1号 株式会社トクヤマ内

【氏名】山本 博将
【住所又は居所】山口県周南市御影町1番1号 株式会社トクヤマ内

【要約】 【課題】安価なアダマンタノール類から簡単な製造方法によって得ることのできる新規な重合性アダマンタン化合物であって、耐熱性が高く脆性の小さい硬化体を与える重合性アダマンタン化合物を提供する。

【解決手段】1,3−ビス(2−メタクリロイルオキシエトキシ)アダマンタンのような下記式(1)で示される重合性アダマンタン化合物。但し、式中のRは水酸基、ハロゲン原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、Zは、−O−(R−O)−Y(ここで、Rは炭素数1〜15の炭化水素基を表し、Yは(メタ)アクリロイル基を表し、cは1〜6の整数を表す。)で表される基であり、aは0〜3の整数であり、bは1〜4の整数であり、a+bは1〜4の整数であり、aが2〜3の場合にはRで示される基は互いに異なっていてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】


{式中、Rは水酸基、ハロゲン原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、Zは下記式(2)
【化2】


(式中、Rは炭素数1〜15の炭化水素基であり、Yは(メタ)アクリロイル基であり、cは1〜6の整数である。)
で表される基であり、aは0〜3の整数であり、bは1〜4の整数であり、a+bは1〜4の整数であり、aが2〜3の場合にはRで示される基は互いに異なっていてもよい。}
で表される重合性アダマンタン化合物。
【請求項2】
請求項1記載の重合性アダマンタン化合物を含んでなることを特徴とする重合性組成物。
【請求項3】
請求項2記載の重合性組成物を重合させて得られる硬化体。
【請求項4】
請求項3記載の硬化体からなる光学材料。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な重合性アダマンタン化合物に関する。より詳しくは、眼鏡用プラスチックレンズ等の光学材料の製造原料に適した重合性アダマンタン化合物に関する。
【0002】
【従来の技術】
アダマンタン環を基本骨格として有する重合性単量体(重合性アダマンタン化合物)を重合して得られる透明性樹脂は、複屈折が小さく(即ち光学物性に優れ)、耐熱性が高いという特徴を有し、光学材料として好適に使用できる。このような重合性アダマンタン化合物としては、下記▲1▼〜▲3▼に示すような化合物が知られている。
【0003】
▲1▼ 下記式で示されるアダマンチルジ(メタ)アクリレート誘導体(特許文献1参照)。
【0004】
【化3】


【0005】
(式中、Rは水素または低級アルキル基であり、Xは同一もしくは異なっていてもよいハロゲンまたは水酸基である。)
▲2▼ 下記式で示されるアダマンチルジ(メタ)アクリレート(特許文献2参照)。
【0006】
【化4】


【0007】
{式中、Rは水素またはメチルであり、Rは水素またはメチル基であり、Aはシグマ結合、−(CH−(但し、nは1〜4の整数である。)で示される基、フェニレン基、またはフェニレン基を有するジアルキレン基である。}
▲3▼ 下記式で示されるアダマンタンジカルボン酸ジアリル(特許文献3参照)。
【0008】
【化5】


【0009】
{式中、Rは水素またはメチル基であり、Rは水素またはメチル基であり、Bは−(CH−(但し、nは0〜4の整数である。)で示される基である。
【0010】
【特許文献1】
特開昭63−307844号公報
【特許文献2】
特開昭57−500785号公報
【特許文献3】
特開昭60−100537号公報
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
これら化合物から得られる硬化体は、何れもアダマンタン骨格を有することに起因する優れた光学特性および耐熱性を示す。しかしながら、光学物品においては上記物性以外にもその具体的用途の違いによって様々な物性が要求される。例えば、前記▲1▼に示される化合物から得られる硬化体は、脆く耐衝撃性が低いため眼鏡レンズのように耐衝撃性が要求される用途にそのまま用いることはできない。このような多様な要求に応えるためには、新規な重合性アダマンタン化合物の開発が不可欠である。
【0012】
また、上記従来の重合性アダマンタン化合物においては、その原料となる化合物{前記▲2▼のアダマンチルジ(メタ)アクリレートや▲3▼のアダマンタンジカルボン酸ジアリルの原料化合物となるアダマンタンジアルカノール、アダマンタンジカルボン酸、アダマンタン二酢酸等}は一般に高価であり、得られる重合性アダマンタン化合物も高価となるためその用途が制限させることも多く、安価な原料から製造できる重合性アダマンタン化合物への要求も高い。
【0013】
そこで、本発明は、安価なアダマンタン化合物を原料として製造できる新規な重合性アダマンタン化合物を提供することを目的とする。
【0014】
【発明を解決するための手段】
本発明者は、上記目的を達するため鋭意検討を行った。その結果、比較的安価なアダマンタノール類から簡単な製造方法によって得られる新規な重合性アダマンタン化合物は、耐熱性および耐衝撃性が高い硬化体を与えることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
即ち、本発明は、下記式(1)
【0016】
【化6】


【0017】
{式中、Rは水酸基、ハロゲン原子または炭素数1〜6のアルキル基であり、Zは下記式(2)
【0018】
【化7】


【0019】
(式中、Rは炭素数1〜15の炭化水素基であり、Yは(メタ)アクリロイル基であり、cは1〜6の整数である。)
で表される基であり、aは0〜3の整数であり、bは1〜4の整数であり、a+bは1〜4の整数であり、aが2〜3の場合にはRで示される基は互いに異なっていてもよい。}
で表される重合性アダマンタン化合物である。
【0020】
また、他の本発明は、上記ラジカル重合性アダマンタン化合物を含む重合性組成物および該重合性組成物を重合させてなる硬化体である。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の重合性アダマンタン化合物は、前記式(1)で表される。該式(1)中のRは水酸基、ハロゲン原子または炭素数1〜6のアルキル基である。ハロゲンとしてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子等を挙げることができる。炭素1〜6のアルキル基としては、メチル、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等を挙げることができる。また、式(1)中のaは0〜3の整数であり、aが2〜3の場合にはRで示される基は各々同一でも異なっていてもよい。
【0022】
式(1)中の置換基Zは、前記式(2)で示される(メタ)アクリロイル基を有す置換基である。前記式(2)中のRは炭素数1〜15の炭化水素基であり、当該炭素数1〜15の炭化水素基としては、メチレン基、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,2−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,3−ブチレン基、1,2−ブチレン基、3−メチルペンチレン基、ヘキシレン基等の炭素数1〜6のアルキレン基;フェニレン基、メチルフェニレン基、ナフチレン基等の炭素数6〜12のアリーレン基;シクロペンチレン基、シクロプロピレン基等の炭素数4〜12のシクロアルキレン基等を挙げることができる。これらの炭化水素基の中でも、アダマンタン骨格に由来する優れた光学物性を維持でき、また重合性アダマンタン化合物を合成する際の原料の入手も容易であることから炭素数1〜6のアルキレン基であることが好ましく、エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基が特に好ましい。
【0023】
また、式(2)中のYは(メタ)アクリロイル基であり、cは1〜6の整数であるが、重合性アダマンタン化合物を合成する際の原料の入手の容易さおよび得られた重合体の屈折率と耐衝撃性とのバランスを考慮すると、1〜3であることが好ましい。当該Yの値関数を表すbは1〜4の整数であり、各用途により要求される重合硬化体の物性によって適宜選択すればよいが、一般にbは1〜3の整数、さらには2の整数であることが好ましい。ただし、RとYの合計(即ちa+b)は1〜4の整数である必要がある。
【0024】
及びYの結合位置は特に限定されないが、合成上の理由から、これら置換基はアダマンタン環の橋頭位(1、3、5位等)から優先的に結合するのが好適であり、2位、4位等の2つの置換基が置換可能な結合位置においても、何れか1つの置換基が結合するのが好適である。
【0025】
本発明の重合性アダマンタン化合物は、例えば次のような手段によってその構造を同定、確認することができる。
【0026】
(ア)元素分析により、炭素、水素の各重量%を測定することにより、化合物の組成式を決定することができる。
【0027】
(イ)質量スペクトル(MASS,EI法)により、化合物の分子量を知ることができる。
【0028】
(ウ)プロトン核磁気共鳴スペクトル(NMR)を測定することにより、単量体中に存在する水素原子の結合様式を知ることができる。
【0029】
(エ)赤外吸収スペクトル(IR)を測定することにより、各化合物毎にエステル結合等の特性吸収を観察することが出来る。
【0030】
本発明の重合性アダマンタン化合物の製造方法は特に限定されないが、一般的には次に述べる方法で製造することができる。即ち、まず原料化合物であるアダマンタノール類を、水酸基を有するアルキルハライド、あるいは水酸基を有するアリールハライド等と、塩基性化合物の存在下で反応させる。
【0031】
該水酸基を有するアルキルハライド、あるいは水酸基を有するアリールハライドとしては、具体的には、2−クロロエタノール、2−ブロモエタノール、3−ブロモ−1−プロパノール、4−クロロ−1−ブタノール、2−(2−ブロモエトキシ)エタノール、4−ブロモフェノール等が挙げられる。
【0032】
この際、水酸基は、保護基によって保護しておくことが好ましい。なお、この場合は、次の反応の前に、脱保護を行う。該保護基としては、具体的には、t−ブチル基、トリチル基、ベンジル基、p−メトキシベンジル基、t−ブチルジメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基、メタンスルホニル基等が挙げられる。
【0033】
次いで、この化合物を(メタ)アクリル酸ハライドと、塩基性化合物の存在下で反応させることにより、目的とする重合性アダマンタン化合物を得ることができる。また、(メタ)アクリル酸ハライドに代えて、酸無水物を用いる方法や、(メタ)アクリル酸以外の酸ハライドと反応させた後、(メタ)アクリル酸との間でエステル交換反応を行う方法を採用しても良い。
【0034】
なお、塩基性化合物としては、リチウム、ナトリウム等のアルカリ金属類;水素化ナトリウム等のアルカリ金属の水素化物、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;リチウムメトキシド、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシド、t−ブトキシカリウム等のアルコール類のアルカリ金属塩;トリエチルアミン、ピリジン、キノリン等の有機塩基を挙げることができる。塩基性化合物の使用量は公知の範囲でよく、一般的には、アルキルハライド、アリールハライド、酸ハライド等に対して0.5〜50当量、好ましくは1〜5当量程度である。
【0035】
また、反応に際しては一般的には溶媒を用いることが好ましい。概溶媒として好適に使用されるものを例示すれば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒を挙げることができる。これらの溶媒は反応に用いるアダマンタノール類や塩基性化合物の種類によって適宜選択していけばよい。一般的な溶媒の使用量は、原料となるアダマンタノール化合物の濃度が1.0〜50倍重量%となる程度の量である。
【0036】
このときの反応温度は、用いる原料や溶媒の種類によって異なるが、一般的には20〜200℃であり、好ましくは80〜150℃である。反応時間も原料の種類によって異なるが、通常10分から48時間、好ましくは1時間から24時間の範囲である。また、オートクレーブ等の加圧反応装置を用いることにより、反応を溶媒の沸点以上の温度で行うことも可能である。
【0037】
上記反応において、反応生成物のゲル化を防止するため、重合禁止剤を添加することが望ましい。該重合禁止剤としては公知の化合物が何ら制限無く用いられるが、具体的には、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、p−t−ブチルカテコール等のフェノール系重合禁止剤;フェノチアジン、塩化銅(II)、塩化鉄(III)等を挙げることができる。また、該重合禁止剤の使用量は禁止剤の種類、反応温度にもよるが、一般的には原料であるアダマンタン化合物の0.01〜10重量%であり、好ましくは0.1〜5重量%である。
【0038】
本発明の重合性アダマンタン化合物を例示すると、1−(2−[メタ]アクリロイルオキシエトキシ)アダマンタン、1−(2−[メタ]アクリロイルオキシプロポキシ)アダマンタン、2−(2−[メタ]アクリロイルオキシエトキシ)アダマンタン、1−(2−{2−[メタ]アクリロイルオキシエトキシ}エトキシ)アダマンタン、1−(2−[2−{2−[メタ]アクリロイルオキシエトキシ}エトキシ]エトキシ)アダマンタン、1−(2−[メタ]アクリロイルオキシエトキシ)−3−メチルアダマンタン等の(メタ)アクリロイル基を1つ有する重合性アダマンタン化合物;1,3−ビス(2−[メタ]アクリロイルオキシエトキシ)アダマンタン、1,3−ビス(2−[メタ]アクリロイルオキシプロポキシ)アダマンタン、1,2−ビス(2−[メタ]アクリロイルオキシエトキシ)アダマンタン、1,3−ビス(2−{2−[メタ]アクリロイルオキシエトキシ}エトキシ)アダマンタン、1,3−ビス(2−[2−{2−[メタ]アクリロイルオキシエトキシ}エトキシ]エトキシ)アダマンタン、1,3−ビス(2−[メタ]アクリロイルオキシエトキシ)−5−メチルアダマンタン等の(メタ)アクリロイル基を2つ有する重合性アダマンタン化合物;1,3,5−トリス(2−[メタ]アクリロイルオキシエトキシ)アダマンタン、1,3,6−トリス(2−[メタ]アクリロイルオキシエトキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(2−[メタ]アクリロイルオキシプロポキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(2−[メタ]アクリロイルオキシエトキシ)アダマンタン、1,3,5−トリス(2−{2−[メタ]アクリロイルオキシエトキシ}エトキシ)アダマンタン等の(メタ)アクリロイル基を3つ有する重合性アダマンタン化合物等を挙げることができる。
【0039】
本発明の重合性アダマンタン化合物は、分子内に柔軟性を示すアルキレンオキシ基を有しているため、重合性単量体として重合硬化させることにより、優れた光学特性及び耐熱性を有し、更に脆さが改善されて高い耐衝撃性を示す硬化体を与える。
【0040】
本発明の重合性アダマンタン化合物は、単独重合したときに得られる上記の特性を生かして光学材料、特にレンズ材料として好適に使用できる。なお、本発明の重合性アダマンタン化合物をこの様な用途に使用する場合には、本発明の重合性アダマンタン化合物と共重合可能な他の不飽和単量体(以下、コモノマーともいう)とを併用して共重合体とすることもできる。
【0041】
該コモノマーは、本発明の重合性アダマンタン化合物と共重合可能な重合性単量体であれば特に限定されず、目的とする用途に応じて必要な物性を与えるものを適宜選択して使用すれば良い。光学材料として使用する場合に好適なコモノマーを具体的に例示すれば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニル、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−(メタ)アクリロイルオキシエトキシフェニル)プロパン等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;メチルチオ(メタ)アクリレート、フェニルチオ(メタ)アクリレート、ベンジルチオ(メタ)アクリレート、エタンジチオールジチオ(メタ)アクリレート、ベンゼンジチオールジチオ(メタ)アクリレート、キシリレンジチオールジチオ(メタ)アクリレート等のチオ(メタ)アクリル酸エステル化合物;ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、酒石酸ジアリル、エポキシコハク酸ジアリル、ジアリルマレート、アリルシンナメート、アリルイソシアヌレート、クロレンド酸ジアリル、ヘキサフタル酸ジアリル、ジアリルカーボネート、アリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物;スチレン、ジビニルベンゼン、クロロスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ビニルナフタレン、イソプロペニルナフタレン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等の芳香族ビニル化合物;(メタ)アクリレート基を2つ以上有するウレタン(メタ)アクリレート又はエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらのコモノマーは1種又は2種以上を混合して使用できる。
【0042】
共重合する場合の共重合組成も目的に応じて適宜決定すれば良いが、全重合性単量体の総重量を基準として、本発明の重合性アダマンタン化合物が10〜98重量%、特に20〜95重量%(残部がコモノマー量となる。)の範囲で使用するのが好ましい。
【0043】
本発明の重合性アダマンタン化合物、或いはこれとコモノマーの混合物を重合硬化させて硬化体を得る重合方法は特に制限されず、公知の重合方法を採用することができる。また、重合に際しては、離型剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、紫外線安定剤、酸化防止剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、フォトクロミック化合物等の各種安定剤、添加剤を必要に応じて混合して使用することができる。
【0044】
重合開始手段は、種々の過酸化物やアゾ化合物などのラジカル重合開始剤の使用、又は紫外線、α線、β線、γ線等の照射或いは両者の併用によって行うことができる。
【0045】
ラジカル重合開始剤としては、特に限定されず、公知のものが使用できるが、代表的なものを例示すると、ベンゾイルパーオキサイド、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、デカノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等のアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシジカーボネート、クミルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−sec−ブチルオキシカーボネート等のパーカーボネート類;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)等のアゾ化合物等が挙げられる。
【0046】
該ラジカル重合開始剤の使用量は、重合条件や開始剤の種類、前記本発明の重合性組成物の種類や組成によって異なり、一概に限定できないが、一般には、全重合性単量体100重量部に対して0.01〜10重量部の範囲で用いるのが好適である。
【0047】
重合方法も特に制限されないが、レンズ等の光学材料としての用途を考える場合には、注型重合を行うのが好適である。以下、代表的な注型重合方法について更に詳しく説明する。
【0048】
該方法では、エラストマーガスケット又はスペーサーで保持されているモールド間に、ラジカル重合開始剤を添加した本発明の重合性組成物を注入し、空気炉中で加熱して重合硬化させた後、取り出すことによって行われる。
【0049】
重合条件のうち、特に温度は得られる硬化体の性状に影響を与える。この温度条件は、開始剤の種類と量や単量体の種類に影響を受けるので、一概には限定できないが、一般的に比較的低温で重合を開始し、ゆっくりと温度を上げていき、重合終了時に高温下に硬化させるいわゆるテーパ型の2段重合を行うのが好適である。
【0050】
重合時間も温度と同様に各種の要因によって異なるので、予めこれらの条件に応じた最適の時間を決定するのが好適であるが、一般に2〜40時間で重合が完了するように条件を選ぶのが好ましい。
【0051】
また紫外線を用いた公知の光重合によっても同様に注型重合が実施できる。この際には、光重合開始剤としてベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾフェノール、アセトフェノン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンジルメチルケタール、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−イソプロピルチオキサントン等が挙げられる。これら光重合開始剤は、全単量体100重量部に対して0.001〜5重量部の範囲で用いるのが一般的である。
【0052】
上記のような方法で得られた本発明の硬化体は、その用途に応じて以下のような処理を施すこともできる。即ち、分散染料等の染料を用いる染色、シランカップリング剤やケイ素、ジルコニウム、アンチモン、アルミニウム、スズ、チタン等の酸化物のゾルを主成分とするハードコート剤によるハードコーティング処理や、Si0、TiO、ZrO等の金属酸化物からなる薄膜の蒸着や有機高分子体の薄膜の塗布等による反射防止処理、帯電防止処理等の加工および2次処理を施すことも可能である。
【0053】
【実施例】
以下、本発明を説明するために、実施例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0054】
実施例1
1,3−ビス(2−メタクリロイルオキシエトキシ)アダマンタンの合成
1,3−アダマンタンジオール16.8g(0.10mol)を脱水テトラヒドロフラン200mlに分散し、水素化ナトリウム(60%油性)8.8g(0.22mol)を加えた。これに、2−(2−ブロモエトキシ)−2−メチルプロパン[2−ブロモエタノールの水酸基を常法によりt−ブチル基で保護した化合物]39.8g(0.22mol)を滴下し、還流温度で8時間攪拌した。放冷後、反応液にエーテル100mlを加え、水洗した後、エーテル層を減圧留去した。得られた素体に、トリフルオロ酢酸を150mlを加え、室温で1時間攪拌した。トリフルオロ酢酸を減圧留去した後、15%水酸化ナトリウム水溶液を加え、0℃で30分、室温で1時間攪拌した。エーテル100mlで抽出し、水洗後、エーテル層を減圧留去した。得られた粗体をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製して、1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)アダマンタン16.4g(収率64%)を得た。
【0055】
次いで、得られた1,3−ビス(2−ヒドロキシエトキシ)アダマンタン15.4g(0.06mol)とメタクリル酸クロリド6.3g(0.06mol)とをピリジン4.8g(0.06mol)存在下、クロロホルム200ml中、0℃で4時間攪拌した後、20℃で一夜攪拌した。反応後、ピリジンの塩化水素塩を濾別し、反応液を1N塩酸、5%水酸化ナトリウム水溶液、20%塩化ナトリウム水溶液でそれぞれ洗浄した後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーにて精製し、白色固体状の生成物15gを得た。
【0056】
元素分析(なお、括弧内の値はC2232としたときの計算値である。)
C: 67.29%(67.32%)
H: 8.24%( 8.22)
MASS(EI): 392(M
IR:1715cm−1付近にC=O伸縮振動に基づく吸収
H−NMR:δ1.3−2.5(m,20H)、3.8−4.2(m,8H)、5.4(s,2H)、6.1(s、2H)
上記の結果から、単離生成物は1,3−ビス(2−メタクリロイルオキシエトキシ)アダマンタンであることを確認した。
【0057】
実施例2
前記実施例1で製造した本発明の重合性アダマンタン化合物を用いて、硬化性組成物を調製し、得られた硬化性組成物を重合硬化させて硬化体を得た。重合は、次のようにして行った。すなわち、上記重合性アダマンタン化合物100重量部に対し、ラジカル重合開始剤として、t−ブチルパーオキシネオデカネート0.5重量部及び1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサネート0.4重量部を添加してよく混合した。この混合液をガラス板とエチレン−酢酸ビニル共重合体からなるガスケットで構成された鋳型の中に注入し、注型重合を行った。重合は空気炉を用い、33℃から90℃まで17時間かけて徐々に昇温し、90℃で5時間保持した。重合終了後、鋳型を空気炉から取り出し、放冷後、硬化体を鋳型のガラスから取り外した。
【0058】
得られた各硬化体について、下記の試験方法によって諸物性を測定した。
【0059】
〔屈折率〕 アタゴ(株)製アッベ屈折率計を用いて、20℃における屈折率を測定した。接触液にはブロモナフタレンまたはヨウ化メチレンを使用した。屈折率は共に高い方が好ましい。
【0060】
〔耐衝撃性〕 厚さ2mm、直径65mmの5〜10枚の試験板1枚ずつに127cmの高さから16g、32g、48g、64g、80g、96g、112g、131g、151gの鋼球を自然落下させ、試験板が破損しない最も重い鋼球の重さの平均で評価した。
【0061】
実施例2で得られた硬化体の屈折率は1.525、耐衝撃性は113gであった。
【0062】
比較例1
実施例2で用いた重合性アダマンタン化合物の代わりに1,3−ビス(メタクロイルオキシ)アダマンタンを用いた以外は、同様な方法で硬化体を得た。得られた硬化体の屈折率は1.530、耐衝撃性は84g(試験を複数回行った後の平均値)であった。
【0063】
実施例2と比較例1とを比較すると、本発明の実施例がほぼ屈折率が同等でありながら、さらに耐衝撃性が高いことが判る。以上の通り、本発明の重合性アダマンタン化合物を眼鏡レンズに用いる場合、物性のバランスが重要であり、本発明の実施例で示した化合物はバランスに優れていることから、眼鏡レンズ等に好適に使用できることが分かる。
【0064】
【発明の効果】
本発明の重合性アダマンタン化合物は、高屈折率であり、耐衝撃性に優れた硬化体を与える単量体として有用である。このため、本発明の重合性アダマンタン化合物を単独重合またはコモノマーと共重合して得た硬化体は、光学材料として有用であり、例えば眼鏡レンズ、光学機器レンズ等の光学レンズとして最適であり、またプリズム、光ディスク基盤、光ファイバー等の用途に好適に使用できる。
【出願人】 【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
【住所又は居所】山口県周南市御影町1番1号
【出願日】 平成15年6月16日(2003.6.16)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−8527(P2005−8527A)
【公開日】 平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願番号】 特願2003−171227(P2003−171227)