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【発明の名称】 |
圧電磁器および圧電素子 |
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【氏名】七尾 勝 【住所又は居所】東京都中央区日本橋一丁目13番1号 TDK株式会社内 【氏名】塚田 岳夫 【住所又は居所】東京都中央区日本橋一丁目13番1号 TDK株式会社内 |
【課題】圧電特性および機械的強度を向上させることができる圧電磁器および圧電素子を提供する。
【解決手段】Pba [(Zn1/3 Nb2/3) xTiy Zrz ] O3 (a,x,y,zは、0.96≦a≦1.03、x+y+z=1、0.05≦x≦0.40、0.1≦y≦0.5、0.2≦z≦0.6)を主成分とし、第1副成分としてWを主成分に対してWO3 に換算して0.05〜3質量%含有する。主成分はPbの一部がSr,BaおよびCaのうちの少なくとも1種により置換されていてもよい。更に、第2副成分としてTa,SbおよびNbのうちの少なくとも1種を主成分に対して酸化物に換算して0.2〜1.0質量%含有していてもよい。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 化1で表される組成物に対して、タングステン(W)を酸化物(WO3 )に換算して0.05質量%以上3.00質量%以下の範囲内で含有する ことを特徴とする圧電磁器。 【化1】
(化1において、a,x,y,zは、0.96≦a≦1.03、x+y+z=1、0.05≦x≦0.40、0.1≦y≦0.5、0.2≦z≦0.6をそれぞれ満たす範囲内の値である。) 【請求項2】 化2で表される組成物に対して、タングステン(W)を酸化物(WO3 )に換算して0.05質量%以上3.00質量%以下の範囲内で含有する ことを特徴とする圧電磁器。 【化2】
(化2において、a,b,x,y,zは、0.96≦a≦1.03、0<b<a、x+y+z=1、0.05≦x≦0.40、0.1≦y≦0.5、0.2≦z≦0.6をそれぞれ満たす範囲内の値である。Meは、ストロンチウム(Sr),バリウム(Ba)およびカルシウム(Ca)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。) 【請求項3】 前記組成物に対して、タンタル(Ta),アンチモン(Sb)およびニオブ(Nb)からなる群のうちの少なくとも1種を、酸化物(Ta2 O5 ,Sb2 O3 ,Nb2 O5 )に換算して合計で0.2質量%以上1.0質量%以下の範囲内で含有する ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の圧電磁器。 【請求項4】 請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の圧電磁器を用いたことを特徴とする圧電素子。 【請求項5】 前記圧電磁器よりなる複数の圧電層と、この圧電層の間に挿入された複数の内部電極とを備えたことを特徴とする請求項4記載の圧電素子。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、アクチュエータ,圧電ブザー,発音体およびセンサなどに適した圧電磁器および圧電素子に関する。 【背景技術】 【0002】 従来より、圧電効果によって発生する変位を機械的な駆動源として利用したものの一つにアクチュエータがある。特に、圧電層と内部電極とを積層した積層型アクチュエータは、電磁式のアクチュエータに比べて消費電力および発熱量が少なく、応答性も良好であると共に、小型化軽量化が可能であるので、近年では繊維編機の選針制御などの様々な分野に利用されている。 【0003】 これらのアクチュエータに用いられる圧電磁器には、圧電特性、特に圧電歪定数が大きいことが要求される。大きな圧電歪定数が得られる圧電磁器としては、例えば、チタン酸鉛(PbTiO3 ;PT)とジルコン酸鉛(PbZrO3 ;PZ)と亜鉛・ニオブ酸鉛(Pb(Zn1/3 Nb2/3 )O3 )との三元系(特許文献1および特許文献2参照)、あるいは、その鉛(Pb)の一部をストロンチウム(Sr),バリウム(Ba)あるいはカルシウム(Ca)などで置換したもの(特許文献3,特許文献4および特許文献5参照)などが知られている。 【特許文献1】特公昭44−17344号公報 【特許文献2】特開2001−181035号公報 【特許文献3】特公昭45−39977号公報 【特許文献4】特開昭61−129888号公報 【特許文献5】特開2001−181036号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0004】 しかしながら、近年、圧電素子の小型化および薄型化が進み、それにより素子の機械的強度が低下してしまい、製造時および駆動時に破損する可能性が大きくなるという問題があった。特に、ハードディスクドライブのヘッドの微量位置を制御するアクチュエータなどは、形状が複雑であるため部分的に強度が弱くなるといった問題があった。よって、製造歩留まりの低下および製品の信頼性の低下を防止するために、より機械的強度の高い圧電磁器が求められている。また、圧電素子のより小型化および薄型化を図るために、発生変位量のより大きい圧電磁器の開発も求められている。 【0005】 本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、圧電特性および機械的強度を向上させることができる圧電磁器および圧電素子を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0006】 本発明による第1の圧電磁器は、化1で表される組成物に対して、タングステン(W)を酸化物(WO3 )に換算して0.05質量%以上3.00質量%以下の範囲内で含有するものである。 【化1】
(化1において、a,x,y,zは、0.96≦a≦1.03、x+y+z=1、0.05≦x≦0.40、0.1≦y≦0.5、0.2≦z≦0.6をそれぞれ満たす範囲内の値である。) 【0007】 本発明による第2の圧電磁器は、化2で表される組成物に対して、タングステンを酸化物(WO3 )に換算して0.05質量%以上3.00質量%以下の範囲内で含有するものである。 【化2】
(化2において、a,b,x,y,zは、0.96≦a≦1.03、0<b<a、x+y+z=1、0.05≦x≦0.40、0.1≦y≦0.5、0.2≦z≦0.6をそれぞれ満たす範囲内の値である。Meは、ストロンチウム(Sr),バリウム(Ba)およびカルシウム(Ca)からなる群のうちの少なくとも1種を表す。) 【0008】 本発明によるこれらの圧電磁器では、化1または化2で表される組成物に対して、タンタル(Ta),アンチモン(Sb)およびニオブ(Nb)からなる群のうちの少なくとも1種を、酸化物(Ta2 O5 ,Sb2 O3 ,Nb2 O5 )に換算して合計で0.2質量%以上1.0質量%以下の範囲内で含有することが好ましい。 【0009】 本発明による圧電素子は、本発明の圧電磁器を用いたものである。 【発明の効果】 【0010】 本発明の圧電磁器によれば、化1または化2で表される組成物に対して、タングステンを所定量含有するようにしたので、圧電特性および機械的強度を向上させることができる。よって、本発明の圧電磁器を用いれば、圧電素子の小型化および薄型化を図ることができると共に、小型化および薄型化しても製造歩留まりおよび製品信頼性を向上させることができる。 【0011】 特に、本発明の圧電磁器において、鉛の一部をストロンチウム,バリウムおよびカルシウムからなる群のうちの少なくとも1種で置換した化2で表される組成物を含有するようにすれば、圧電特性および機械的強度をより向上させることができる。 【0012】 また、タングステンに加えて、タンタル,アンチモンおよびニオブからなる群のうちの少なくとも1種を所定量含有するようにすれば、機械的強度をより向上させることができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0013】 以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。 【0014】 本発明の一実施の形態に係る圧電磁器は、化3または化4で表される組成物を主成分として含有している。 【0015】 【化3】
化3において、a,x,y,zは、0.96≦a≦1.03、x+y+z=1、0.05≦x≦0.40、0.1≦y≦0.5、0.2≦z≦0.6をそれぞれ満たす範囲内の値である。酸素の組成は化学量論的に求めたものであり、化学量論組成からずれていてもよい。 【0016】 【化4】
化4において、a,b,x,y,zは、0.96≦a≦1.03、0<b<a、x+y+z=1、0.05≦x≦0.40、0.1≦y≦0.5、0.2≦z≦0.6をそれぞれ満たす範囲内の値である。Meは、ストロンチウム,バリウムおよびカルシウムからなる群のうちの少なくとも1種を表す。酸素の組成は化学量論的に求めたものであり、化学量論組成からずれていてもよい。 【0017】 化3あるいは化4で表される組成物はペロブスカイト構造を有しており、鉛,ストロンチウム,バリウムおよびカルシウムはいわゆるペロブスカイト構造のAサイトに位置し、亜鉛(Zn),ニオブ,チタン(Ti)およびジルコニウム(Zr)はいわゆるペロブスカイト構造のBサイトに位置している。 【0018】 なお、化4で表される組成物は、化3で表される組成物における鉛の一部をストロンチウム,バリウムおよびカルシウムからなる群のうちの少なくとも1種で置換することにより、圧電特性および機械的強度をより向上させることができるようにしたものである。 【0019】 化3における鉛の組成a、あるいは化4における鉛とストロンチウム,バリウムおよびカルシウムからなる群のうちの少なくとも1種との組成aは、いわゆるBサイトに位置する元素、すなわち[(Zn1/3 Nb2/3 )x Tiy Zrz ]の組成を1とした場合におけるいわゆるAサイトに位置する元素の組成比である。aを0.96以上1.03以下とするのは、この範囲内において高い圧電特性を得ることができるからである。 【0020】 化4におけるb、すなわちストロンチウム,バリウムおよびカルシウムからなる群のうちの少なくとも1種の置換量は、0.01以上0.10以下であることが好ましい。0.01未満であると圧電特性および機械的強度を向上させる効果を十分に得ることができず、0.10を超えると焼結性が低下してしまい、それにより圧電特性も低下してしまうからである。 【0021】 化3あるいは化4における亜鉛およびニオブ(Zn1/3 Nb2/3 )は圧電特性を向上させるためのものである。その組成xを0.05以上とするのは、0.05未満では十分な圧電特性を得ることができないからである。また、組成xを0.40以下とするのは、0.40を超えると高価な酸化ニオブを多量に用いなければならず、製造コストが高くなってしまうと共に、圧電歪定数も低下してしまうからである。 【0022】 化3あるいは化4におけるチタンの組成yを0.1以上0.5以下、ジルコニウムの組成zを0.2以上0.6以下とするのは、この範囲内においてモルフォトロピック相境界(MPB)付近の構造を得ることができ、高い圧電特性を得ることができるからである。 【0023】 この圧電磁器は、また、第1副成分として、タングステンを含有している。この第1副成分は、圧電特性および機械的強度を向上させると共に、焼結時における熱収縮を制御するためのものである。第1副成分であるタングステンの含有量は、化3あるいは化4に示した組成物に対して、酸化物(WO3 )に換算して0.05質量%以上3.00質量%以下の範囲内であることが好ましく、より好ましくは、0.10質量%以上2.00質量%以下の範囲内、さらに好ましくは0.30質量%以上1.00質量%以下の範囲内である。0.05質量%未満では十分な効果を得ることができず、3.00質量%を超えると圧電特性および機械的強度が低下してしまうからである。なお、第1副成分であるタングステンは、主成分の組成物に固溶しており、チタンおよびジルコニウムが存在し得るいわゆるBサイトに位置している。 【0024】 この圧電磁器は、更に、第2副成分として、タンタル,アンチモンおよびニオブおよびからなる群のうちの少なくとも1種を含有していることが好ましい。第1副成分に加えて添加することにより、更に圧電特性および機械的強度を向上させることができるからである。第2副成分の含有量は、化3あるいは化4に示した組成物に対して、酸化物(Ta2 O5 ,Sb2 O3 ,Nb2 O5 )に換算して合計で0.2質量%以上1.0質量%以下の範囲内であることが好ましい。0.2質量%未満では添加による効果を十分に得ることができず、1.0質量%を超えると焼結性が低下してしまい、圧電特性が低下してしまうからである。なお、第2副成分も第1副成分と同様に主成分の組成物に固溶しており、チタンおよびジルコニウムが存在し得るいわゆるBサイトに位置している。 【0025】 このような構成を有する圧電磁器は、例えば、次のようにして製造することができる。 【0026】 まず、主成分の原料として、例えば、酸化鉛(PbO)粉末,酸化亜鉛(ZnO)粉末,酸化ニオブ(Nb2 O5 )粉末,酸化チタン(TiO2 )粉末および酸化ジルコニウム(ZrO2 )粉末を用意すると共に、必要に応じて炭酸ストロンチウム(SrCO3 )粉末,炭酸バリウム(BaCO3 )粉末および炭酸カルシウム(CaCO3 )粉末からなる群のうちの少なくとも1種を用意する。 【0027】 また、第1副成分の原料として、例えば、酸化タングステン(WO3 )粉末を用意すると共に、必要に応じて第2副成分の原料として、例えば、酸化タンタル(Ta2 O5 )粉末,酸化アンチモン(Sb2 O3 )粉末および酸化ニオブ粉末からなる群のうちの少なくとも1種を用意する。なお、これら主成分,第1副成分および第2副成分の原料には、酸化物でなく、炭酸塩,シュウ酸塩あるいは水酸化物のように焼成により酸化物となるものを用いてもよく、また、炭酸塩でなく、酸化物あるいは焼成により酸化物となる他のものを用いてもよい。 【0028】 次いで、これら原料を十分に乾燥させたのち、最終組成が上述した範囲となるように秤量し、主成分の原料と第1副成分の原料と必要に応じて第2副成分の原料とをボールミルなどにより有機溶媒中または水中で十分に混合して乾燥し、700℃〜950℃で1時間〜4時間仮焼する。続いて、例えば、この仮焼物をボールミルなどにより有機溶媒中または水中で十分に粉砕し乾燥させたのち、ポリビニールアルコールなどのバインダーを加えて造粒して、一軸プレス成形機あるいは静水圧成形機(CIP)などを用いプレス成形する。成形したのち、例えば、この成形体を大気雰囲気中において好ましくは1000℃〜1200℃で1時間〜4時間焼成する。なお、焼成雰囲気は、大気よりも酸素分圧を高くするようにしてもよく、純酸素中としてもよい。焼成したのち、得られた焼結体を必要に応じて研磨し、分極用電極を設け、加熱したシリコーンオイル中で電界を印加して分極処理を行う。そののち、分極用電極を除去することにより、上述した圧電磁器が得られる。 【0029】 このような圧電磁器は、例えば、アクチュエータ,圧電ブザー,発音体およびセンサなどの圧電素子の材料として、特にはアクチュエータの材料として好ましく用いられる。 【0030】 図1は本実施の形態に係る圧電磁器を用いた圧電素子の一構成例を表すものである。この圧電素子は、例えば、本実施の形態の圧電磁器よりなる複数の圧電層11の間に複数の内部電極12が挿入された積層体10を備えている。圧電層11の一層当たりの厚さは例えば1μm〜100μm程度であり、内部電極12に挟まれた圧電層11よりも両端の圧電層11の厚みの方が厚く形成される場合もある。 【0031】 内部電極12は、導電材料を含有している。導電材料は特に限定されないが、例えば、銀(Ag),金(Au),白金およびパラジウムからなる群のうちの少なくとも1種、あるいはその合金が好ましい。内部電極12は、また、これら導電材料の他にリン(P)などの各種微量成分を0.1質量%程度以下含有していても良い。 【0032】 この内部電極12は例えば交互に逆方向に延長されており、その延長方向には内部電極12と電気的に接続された一対の端子電極21,22がそれぞれ設けられている。端子電極21,22は、例えば、金などの金属をスパッタリングすることにより形成されてもよく、端子電極用ペーストを焼き付けることにより形成されてもよい。端子電極用ペーストは、例えば、導電材料と、ガラスフリットと、ビヒクルとを含有し、導電材料は、例えば、銀,金,銅,ニッケル,パラジウムおよび白金からなる群のうちの少なくとも1種を含むものが好ましい。ビヒクルには有機ビヒクルあるいは水系ビヒクルなどがあり、有機ビヒクルはバインダを有機溶媒に溶解させたもの、水系ビヒクルは水に水溶性バインダおよび分散剤などを溶解させたものである。端子電極21,22の厚さは用途等に応じて適宜決定されるが、通常10μm〜50μm程度である。 【0033】 この圧電素子は、例えば、次のようにして製造することができる。まず、上述した圧電磁器の製造方法と同様にして仮焼成粉を形成し、これにビヒクルを加えて混練して圧電層用ペーストを作製する。次いで、内部電極12を形成するための上述した導電材料または焼成後に上述した導電材料となる各種酸化物,有機金属化合物あるいはレジネートなどをビヒクルと混練し、内部電極用ペーストを作製する。なお、内部電極用ペーストには、必要に応じて分散剤、可塑剤、誘電体材料、絶縁体材料などの添加物を添加してもよい。 【0034】 続いて、これら圧電層用ペーストと内部電極用ペーストとを用い、例えば、印刷法あるいはシート法により、積層体10の前駆体であるグリーンチップを作製する。そののち、脱バインダ処理を行い、焼成して積層体10を形成する。 【0035】 積層体10を形成したのち、例えばバレル研磨やサンドブラストなどにより端面研磨を施し、金などの金属をスパッタリングすることにより、あるいは、内部電極用ペーストと同様にして作製した端子電極用ペーストを印刷または転写して焼き付けることにより端子電極21,22を形成する。これにより、図1に示した圧電素子が得られる。 【0036】 このように本実施の形態によれば、化3あるいは化4で表される組成物を主成分とし、第1副成分としてタングステンを所定量含有するようにしたので、圧電特性および機械的強度を向上させることができる。よって、圧電素子をより小型化および薄型化することができると共に、小型化および薄型化しても製造歩留まりおよび製品信頼性を向上させることができる。 【0037】 また、鉛の一部をストロンチウム,バリウムおよびカルシウムからなる群のうちの少なくとも1種で置換した化4で表される組成物を含有するようにすれば、圧電特性および機械的強度をより向上させることができる。 【0038】 更に、第2副成分として、タンタル,アンチモンおよびニオブからなる群のうちの少なくとも1種を所定量含有するようにすれば、機械的強度をより向上させることができる。 【実施例】 【0039】 更に、本発明の具体的な実施例について説明する。 【0040】 (実施例1−1〜1−7) 化5に示した組成物を主成分とし、第1副成分としてタングステンを含む圧電磁器を作製した。まず、主成分の原料として酸化鉛粉末,炭酸ストロンチウム粉末,酸化チタン粉末,酸化ジルコニウム粉末,酸化亜鉛粉末および酸化ニオブ粉末を用意し、化5に示した組成となるように秤量した。また、第1副成分の原料として酸化タングステン粉末を用意し、酸化物(WO3 )に換算した主成分に対する割合を実施例1−1〜1−7で表1に示したように変化させて秤量した。 【0041】 次いで、これら原料をボールミルを用いて16時間湿式混合したのち、大気中において700℃〜900℃で2時間仮焼した。続いて、この仮焼物をボールミルを用いて16時間湿式粉砕して乾燥させたのち、バインダーとしてポリビニールアルコールを加えて造粒し、一軸プレス成型機を用いて約245MPaの圧力で直径17mm、厚み1mmの円板状に成形した。成形したのち、熱処理を行ってバインダーを揮発させ、次いで、大気中において1150℃で2時間〜4時間焼成した。そののち、得られた焼結体をスライス加工およびラップ加工により厚み0.6mmの円板状とし、両面に銀ペーストを印刷して650℃で焼き付け、120℃のシリコーンオイル中で3kV/mmの電界を15分間印加して分極処理を行った。これにより、実施例1−1〜1−7の圧電磁器を得た。 【0042】 得られた実施例1−1〜1−7の圧電磁器について、24時間放置したのち、径方向振動の電気機械結合係数krおよび比誘電率εrを測定した。それらの測定にはインピーダンスアナライザー(ヒューレット・パッカード社製HP4194A)を用い、比誘電率εrを測定する際の周波数は1kHzとした。 【0043】 また、電極を印刷する前の焼結体から2mm×4mm×0.6mmの角板を切り出し、3点曲げ測定法により抗折強度を測定した。測定条件は、支点間距離を2.0mm、荷重速度を0.5mm/minとした。それらの結果を表1および図2,3に示す。 【0044】 【化5】
【0045】 【表1】
【0046】 本実施例に対する比較例1−1として、酸化タングステンを添加しないことを除き、実施例1−1〜1−7と同様にして圧電磁器を作製した。また、本実施例に対する比較例1−2として、酸化タングステンの添加量を酸化物(WO3 )に換算した主成分に対する割合で4質量%としたことを除き、実施例1−1〜1−7と同様にして圧電磁器を作製した。比較例1−1,1−2についても、実施例1−1〜1−7と同様にして、径方向振動の電気機械結合係数kr、比誘電率εrおよび抗折強度を測定した。それらの結果を表1および図2,3にあわせて示す。 【0047】 表1および図2,3に示したように、実施例1−1〜1−7によれば、kr×√εrについては28.2以上、抗折強度については80MPa以上の高い値が得られた。これに対して、タングステンを含まない比較例1−1およびタングステンの含有量が多い比較例1−2では、共にこれらよりも低い不十分な値であった。 【0048】 すなわち、タングステンを、主成分に対して酸化物(WO3 )に換算して0.05質量%以上3.00質量%以下の範囲内、より好ましくは0.10質量%以上2.00質量%以下の範囲内、さらに好ましくは0.30質量%以上1.00質量%以下の範囲内で含有するようにすれば、圧電特性および機械的強度を向上させることができることが分かった。 【0049】 (実施例2−1〜2−3) 実施例1−1〜1−7と同様にして、実施例2−1では化6に示した組成物を主成分とし、実施例2−2では化7に示した組成物を主成分とし、実施例2−3では化8に示した組成物を主成分とし、第1副成分としてタングステンを含む圧電磁器を作製した。その際、バリウムの原料には炭酸バリウム粉末を用い、カルシウムの原料には炭酸カルシウム粉末を用いた。実施例2−1〜2−3におけるタングステンの含有量は、酸化物(WO3 )に換算した主成分に対する割合で0.5質量%とした。 【0050】 また、実施例2−1〜2−3に対する比較例2−1〜2−3として、タングステンを添加しないことを除き、実施例2−1〜2−3と同様にして圧電磁器を作製した。このうち比較例2−1は実施例2−1に対応し、比較例2−2は実施例2−2に対応し、比較例2−3は実施例2−3に対応している。 【0051】 これら実施例2−1〜2−3および比較例2−1〜2−3についても、実施例1−1〜1−7と同様にして、径方向振動の電気機械結合係数kr、比誘電率εrおよび抗折強度を測定した。それらの結果を表2〜4に示す。 【0052】 【化6】
【0053】 【表2】
【0054】 【化7】
【0055】 【表3】
【0056】 【化8】
【0057】 【表4】
【0058】 表2〜4に示したように、実施例2−1〜2−3によれば、実施例1−1〜1−7と同様に、kr×√εrについては28.2以上、抗折強度については80MPa以上の高い値が得られたのに対して、タングステンを含まない比較例2−1〜2−3では、いずれもこれらよりも小さい不十分な値であった。 【0059】 すなわち、主成分として化6,化7または化8に示した組成物を含む場合についても、化5に示した組成物を含む場合と同様に、タングステンを所定量含有するようにすれば、圧電特性および機械的強度を向上させることができることが分かった。 【0060】 また、表5に、表1に示した実施例1−4と、表2〜4に示した実施例2−1〜2−3とを比較して示す。表5から分かるように、鉛の一部をストロンチウム,バリウムあるいはカルシウムで置換した実施例1−4,2−2,2−3の方が、置換していない実施例2−1よりも、kr×√εrおよび抗折強度について共に大きな値を得ることができた。すなわち、鉛の一部をストロンチウム,バリウムあるいはカルシウムで置換するようにすれば、圧電特性および機械的強度をより向上させることができることが分かった。 【0061】 【表5】
【0062】 (実施例3−1〜3−4) 実施例1−1〜1−7と同様にして、化9に示した組成物を主成分とし、第1副成分としてタングステンを含むと共に、第2副成分としてタンタル,アンチモンあるいはニオブを含む圧電磁器を作製した。タングステンの含有量は、酸化物(WO3 )に換算した主成分に対する割合で、実施例3−1,3−3,3−4が0.5質量%、実施例3−2が2質量%とした。第2副成分は実施例3−1,3−2がタンタル、実施例3−3がアンチモン、実施例3−4がニオブとし、それらの原料には酸化タンタル粉末,酸化アンチモン粉末および酸化ニオブ粉末を用いた。第2副成分の含有量は、実施例3−1〜3−4のいずれについても、酸化物(Ta2 O5 ,Sb2 O3 ,Nb2 O5 )に換算した主成分に対する割合で0.2質量%とした。 【0063】 また、実施例3−1〜3−4に対する比較例3−1〜3−3として、タングステンを添加しないことを除き、実施例3−1〜3−4と同様にして圧電磁器を作製した。このうち比較例3−1は実施例3−1,3−2に対応し、比較例3−2は実施例3−3に対応し、比較例3−3は実施例3−4に対応している。 【0064】 これら実施例3−1〜3−4および比較例3−1〜3−3についても、実施例1−1〜1−7と同様にして、径方向振動の電気機械結合係数kr、比誘電率εrおよび抗折強度を測定した。それらの結果を表6〜8に示す。 【0065】 【化9】
【0066】 【表6】
【0067】 【表7】
【0068】 【表8】
【0069】 表6〜8に示したように、実施例3−1〜3−4によれば、実施例1−1〜1−7と同様に、kr×√εrについては28.2以上、抗折強度については80MPa以上の高い値が得られた。これに対して、タングステンを含まない比較例2−1では、共に同様に高い値が得られたが、実施例3−1,3−2よりも低かった。また、比較例2−2,2−3では、kr×√εrが28.2よりも低く、抗折強度については80MPa以上であったものの、実施例3−3,3−4よりも低かった。 【0070】 更に、表9に、表1に示した実施例1−4と、表6〜8に示した実施例3−1,3−3,3−4とを比較して示す。表9から分かるように、第2副成分を添加しない実施例1−4よりも、第2副成分を添加した実施例3−1,3−3,3−4の方が、より大きな抗折強度を得ることができた。また、第2副成分としてタンタルを添加した実施例3−1によれば、kr×√εrについてもより高い値が得られた。 【0071】 【表9】
【0072】 すなわち、タングステンと、タンタル,アンチモンおよびニオブからなる群のうちの少なくとも1種とを含むようにすれば、機械的強度をより向上させることができることが分かった。これは第1副成分と第2副成分との相乗効果によるものであると考えられる。 【0073】 (実施例4−1,4−2) 実施例1−1〜1−7と同様にして、実施例4−1では化10に示した組成物を主成分とし、実施例4−2では化11に示した組成物を主成分とし、第1副成分としてタングステンを含むと共に、第2副成分としてタンタルを含む圧電磁器を作製した。その際、バリウムの原料には炭酸バリウム粉末を用い、カルシウムの原料には炭酸カルシウム粉末を用い、タンタルの原料には酸化タンタル粉末を用いた。実施例4−1,4−2におけるタングステンの含有量は、酸化物(WO3 )に換算した主成分に対する割合で0.5質量%とし、タンタルの含有量は、酸化物(Ta2 O5 )に換算した主成分に対する割合で0.2質量%とした。 【0074】 また、実施例4−1,4−2に対する比較例4−1,4−2として、タングステンを添加しないことを除き、実施例4−1,4−2と同様にして圧電磁器を作製した。このうち比較例4−1は実施例4−1に対応し、比較例4−2は実施例4−2に対応している。 【0075】 これら実施例4−1,4−2および比較例4−1,4−2についても、実施例1−1〜1−7と同様にして、径方向振動の電気機械結合係数kr、比誘電率εrおよび抗折強度を測定した。それらの結果を表10,11に示す。 【0076】 【化10】
【0077】 【表10】
【0078】 【化11】
【0079】 【表11】
【0080】 表10,11に示したように、実施例4−1,4−2および比較例4−1,4−2のいずれについても、kr×√εrについては28.2以上、抗折強度については80MPa以上の高い値が得られたが、タングステンを含む実施例4−1,4−2の方がより大きな値が得られた。 【0081】 また、表12に、表3に示した実施例2−2と表10に示した実施例4−1とを比較すると共に、表4に示した実施例2−3と表11に示した実施例4−2とを比較して示す。表12から分かるように、第2副成分を添加しない実施例2−2,2−3よりも、第2副成分を添加した実施例4−1,4−2の方が、kr×√εrおよび抗折強度について共に高い値を得ることができた。 【0082】 【表12】
【0083】 すなわち、主成分として化10または化11に示した組成物を含む場合についても、化9に示した組成物を含む場合と同様に、タングステンと、タンタル,アンチモンおよびニオブからなる群のうちの少なくとも1種とを含むようにすれば、機械的強度をより向上させることができることが分かった。 【0084】 (実施例5) 実施例3−1の圧電磁器、すなわち化9に示した組成物を主成分とし、タングステンを酸化物(WO3 )に換算した主成分に対する割合で0.5質量%含有すると共に、タンタルを酸化物(Ta2 O5 )に換算した主成分に対する割合で0.2質量%含有する圧電磁器を用い、図1に示したような積層型の圧電素子を作製した。内部電極12に挟まれた圧電層11の厚さは15μm、その積層数は10層とし、縦および横の大きさは縦4mm×横2mmとした。内部電極12には銀・パラジウム合金を用い、焼成温度は1150℃とした。なお、素子の端面を焼成した後、素子の端面を砥石車を用いて平面研磨し、チッピングなどの発生の有無を外観検査した。100個中の不良品率を表13に示す。また、得られた圧電素子について30Vの駆動電圧を印加し、その変位量を調べた。その結果についても表13に示す。 【0085】 実施例5に対する比較例5として、タングステンおよびタンタルを添加しないことを除き、他は実施例5と同様にして圧電素子を作製した。比較例5についても、実施例5と同様にして、100個中の不良品率、および30Vの駆動電圧を印加した際の変位量を調べた。それらの結果についても表13に示す。 【0086】 【表13】
【0087】 表13に示したように、実施例5によれば、比較例5に比べて、不良品率を低くすることができた。また、変位量も大きくすることができた。すなわち、タングステンを所定量含有するようにすれば、素子の圧電特性および機械的強度を向上させることができることが確認された。 【0088】 なお、上記実施例では、いくつかの例を挙げて具体的に説明したが、主成分および副成分の組成を変化させても、上記実施の形態で説明した範囲内であれば、同様の結果を得ることができる。 【0089】 以上、実施の形態および実施例を挙げて本発明を説明したが、本発明は、上記実施の形態および実施例に限定されるものではなく、種々変形することができる。例えば、上記実施の形態および実施例では、化3あるいは化4に示した主成分と、タングステンと、必要に応じてタンタル,アンチモンおよびオブからなる群のうちの少なくとも1種とを含有する場合について説明したが、これらに加えて、他の成分を含んでいてもよい。その場合、その他の成分は、主成分に固溶していてもよく、固溶していなくてもよい。 【0090】 また、上記実施の形態では、積層型の圧電素子について説明したが、単板型などの他の構造を有する圧電素子についても同様に本発明を適用することができる。 【産業上の利用可能性】 【0091】 アクチュエータ,圧電ブザー,発音体およびセンサなどの分野において広く用いることができる。 【図面の簡単な説明】 【0092】 【図1】本発明の一実施の形態に係る圧電磁器を用いた圧電素子の一構成例を表す断面図である。 【図2】タングステンの含有量とkr×√εrとの関係を表す特性図である。 【図3】タングステンの含有量と抗折強度との関係を表す特性図である。 【符号の説明】 【0093】 10…積層体、11…圧電層、12…内部電極、21,22…端子電極。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003067 【氏名又は名称】TDK株式会社 【住所又は居所】東京都中央区日本橋1丁目13番1号
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| 【出願日】 |
平成15年10月31日(2003.10.31) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100109656 【弁理士】 【氏名又は名称】三反崎 泰司
【識別番号】100098785 【弁理士】 【氏名又は名称】藤島 洋一郎
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| 【公開番号】 |
特開2005−132704(P2005−132704A) |
| 【公開日】 |
平成17年5月26日(2005.5.26) |
| 【出願番号】 |
特願2003−373028(P2003−373028) |
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