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【発明の名称】 二酸化炭素を吸着させた活性炭およびその製造方法
【発明者】 【氏名】柳 寿一
【住所又は居所】大阪府大阪市淀川区十三本町2丁目17番 85号 日本エンバイロケミカルズ株式会社内

【氏名】岩島 良憲
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区道修町2丁目3番8号 日本エンバイロケミカルズ株式会社内

【要約】 【課題】水によるスラリー輸送をする際、排水のpH値を中性付近に保つことのできる活性炭及び水処理用に使用した場合、速やかに処理水のpH値を中性付近に安定させる活性炭、その製法を提供すること。

【解決手段】活性炭1gあたり10ml以上の二酸化炭素を吸着させた活性炭が上記課題を解決した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性炭1g当たり10ml以上の二酸化炭素を吸着させた活性炭。
【請求項2】
輸送するため水でスラリー化した請求項1の活性炭。
【請求項3】
気密性の容器内で活性炭に分圧50%以上の二酸化炭素を接触させる請求項1記載の活性炭の製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、水によるスラリー輸送をした際、排水のpH値を中性付近に保つことのできる活性炭、若しくは水処理用に使用した場合、速やかに処理水のpH値を中性付近に安定させる活性炭及びその製法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭を吸着塔などに充填する際、水によってスラリーとしてポンプで輸送すれば、クレーンなどの重機を使用せずにすみ、活性炭の微粉除去も同時に行えるという利点がある。ところが、活性炭は、原料に由来して、または賦活工程におけるアルカリ剤の使用などにより、一般にアルカリ性であるので、そのままでスラリー輸送すると、水が著しくアルカリ性となり、排水をそのまま廃棄できないという問題点があった。
活性炭のpH値を低下させる方法として、活性炭を鉱酸で洗浄するという方法があるが、今度は残留する酸が吸着塔を腐食させる恐れがあり、特に溶剤回収用など、ガス処理に活性炭を使用する場合、充填後は酸が洗い流されることがないため、設備の腐食の原因となることがある。
また、活性炭を湿潤化することでpH値を低下させる方法も知られているが、同時に表面酸化物が増加し、吸着性能の低下を招くので好ましくない。
【0003】
特許文献1には、酸性ガスを活性炭と接触させることで、水を使用せずに活性炭のpH値を調整する方法が提示されている。ところが、使用する酸性ガスは、活性炭中のアルカリ金属の当量に合わせる必要があり、過剰に活性炭に酸性ガスを吸着させると、吸着の初期に処理水が酸性になることが併せて示されている。従ってこの場合もやはり処理水のpH調整、装置の腐蝕対策が必要になる。また、この特許文献に示されている酸性ガスとは、塩化水素,臭化水素,二酸化硫黄,一酸化二窒素,一酸化窒素,二酸化窒素の内の1種以上と、いずれも毒性や腐蝕性を有するものであるから、pH調整操作に危険を伴う上、このような方法で調製した活性炭が高温にさらされた場合、これら有毒ガスが周囲に放出される危険性も懸念される。
【特許文献1】特開2000-308823
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
活性炭は、種々の気体を吸着する性質があり、気体の分圧が高いほどその吸着量は多い。活性炭に二酸化炭素を通じると、二酸化炭素が活性炭に吸着され、常温でその吸着量は40ml/g程度である。これは、1.8mmol/gの二酸化炭素に相当する。二酸化炭素1モルは、2価の塩基として働くから、活性炭中に多く含まれるカリウムに換算すると活性炭1gあたり140mg(=14%)に相当し、活性炭を中和するに十分な量である。
溶剤回収用活性炭は、触媒作用による被吸着物の変質を避けるため、鉱酸で洗浄して極力アルカリ金属分を減少させた後、装置の腐蝕防止のため、熱処理等により鉱酸を揮散せしめることがある。この場合、活性炭に残存するアルカリ金属分はごく微量であるにもかかわらず、活性炭処理水のpH値はアルカリ性を呈する。
【0005】
本発明は、活性炭をスラリー化しても、水をアルカリ性にすることなくほぼ中性を保つことができ、スラリーから活性炭を分離したのちの排水をそのまま廃棄することができる活性炭および水処理用に使用した場合、速やかに処理水のpH値を中性付近に安定させる活性炭を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、活性炭に二酸化炭素を吸着させることで、活性炭と接触した水のpH値の上昇を防止できることを見出した。さらに二酸化炭素は、活性炭に過剰に吸着させた場合でも、処理水のpH値は低くなりすぎないので、あらかじめ活性炭のpHを測定することなく吸着させても全く問題のないことも判明した。本発明はこれらの知見を基に更に検討をかさねて完成したものである。
【0007】
即ち本発明は、
(1)活性炭1g当たり10ml以上の二酸化炭素を吸着させた活性炭、
(2)輸送するため水でスラリー化した上記第1項記載の活性炭、及び
(3)気密性の容器内で活性炭を分圧50%以上の二酸化炭素に接触させる上記第1項記載の活性炭の製造方法
である。
【0008】
本発明において使用される原料活性炭の種類は特に限定されず、木材、鋸屑、木炭、素灰、ヤシ殻やクルミ殻などの果実殻、桃、梅などの果実種子、リグニン廃液のようなパルプ製造副生物、精糖廃物(バカス)、廃糖蜜などの植物系原料、泥炭、草炭、亜炭、褐炭、瀝青炭、無煙炭、コークス、コールタール、石油ピッチ等の鉱物系原料、アクリル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、フェノール樹脂などの合成樹脂系原料若しくはそれらの炭化物など一般的に用いられるものであればいずれでも良い。
原料活性炭は、まず、賦活工程に付される。賦活方法も特に限定されず、たとえば「活性炭−基礎と応用」、講談社(1992)、p.61〜p.69の方法で製造される、水蒸気、酸素、炭酸ガスなどの活性ガスでの賦活炭や、リン酸、塩化亜鉛、水酸化カリウムを用いた薬品賦活炭などハロゲンガスで賦活した以外の活性炭が用いられる。
【0009】
賦活された活性炭のBET比表面積は、800〜2000m/gが好ましく、さらに900〜1800m/gが好ましい。
賦活された活性炭の平均粒径は、0.1〜10.0mmのものが好ましく、さらに
0.5〜8.0mmのものが好ましく、1.0〜5.0mmのものが最も好ましい。
活性炭は、賦活後、水、あるいは希塩酸、希硝酸、希りん酸、希硫酸などの希鉱酸水溶液で洗浄しても良い。また、表面官能基調整の目的で活性炭を熱処理しても良い。活性炭の洗浄は、通常活性炭を希鉱酸水溶液に投入し、攪拌翼、バブリング等の方法により活性炭と希鉱酸水溶液をよく接触させた後、水を切り、その後必要に応じて水のみによる洗浄によって過剰の鉱酸を除去する工程によってなされる。
【0010】
活性炭を熱処理するには、活性炭を窒素ガス、アルゴンガスなど酸素を含まない雰囲気で300℃〜900℃の温度範囲で加熱する。温度が800℃以下の場合は、雰囲気ガスとして水蒸気を用いることもできる。この操作によって、活性炭の表面に存在するカルボキシル基、水酸基などの官能基を除去あるいは減少させることができ、さらには酸洗浄で用いた鉱酸を除去することができる。
【0011】
このようにして得られた賦活化活性炭に、二酸化炭素を吸着させる。
活性炭へ二酸化炭素を吸着させるには、活性炭を密閉容器に収容し、あらかじめ二酸化炭素を空気、窒素ガスなどに希釈して二酸化炭素分圧を50%以上、好ましくは、70%以上となるように調整した気体を容器中に導入し、常温で活性炭に吸着させる。ここで常温とは、5℃〜35℃の範囲である通常の環境温度のことをいう。活性炭と二酸化炭素の接触時間は長いほうが好ましいが、通常吸着は速やかに起こるので、活性炭を充てんした容器、タンク等の下端から二酸化炭素ガスを吹き込み、容器、タンク内を二酸化炭素雰囲気に置換えながら吸着させることで本発明の二酸化炭素吸着活性炭を製造することができる。このとき、特に活性炭充てん層のかくはん、混合は必ずしも必要でない。活性炭を二酸化炭素分圧50%以上の気体を接触させる場合の気体の圧力は、通常常圧でよいが、10気圧以下の加圧下に行ってもよい。
なお、二酸化炭素による賦活方法が知られているが、活性炭と二酸化炭素との接触は850℃〜1000℃の高温であり、この温度での活性炭の二酸化炭素吸着性能はほとんどなく、本発明の活性炭を得ることはできない。
大気中の二酸化炭素濃度(約330ppm)と平衡にある炭酸水のpH値は、5.6であるから、過剰の二酸化炭素が瞬時に飽和するまで水に溶解しない限り、通常用いられる水は種々のイオンを含み緩衝能力があるので、本発明の活性炭処理水のpH値は、実際上排水基準である5.8を下回ることがない。したがって、二酸化炭素を使用して活性炭のpH値を調整する場合は、活性炭中に残存するアルカリ金属分を全く考慮することなく、二酸化炭素を吸着させることができる。
【0012】
二酸化炭素の吸着が完了したかどうかを知るためには、酸素濃度計で容器出口(ベント孔等容器上部からの気体出口)の酸素濃度を測定すればよい。吸着が完了すると、出口ガスは二酸化炭素のみとなり、酸素濃度が急激に減少する。
二酸化炭素吸着量は、1気圧、25℃において、通常10ml/g以上あれば十分であるが、好ましくは20ml/g以上、より好ましくは30ml/g以上である。30ml/g以上あれば、保管条件の如何を問わず6ヶ月以上の長期間二酸化炭素処理の効果が持続する。
二酸化炭素活性炭の保管方法については、例えば、ポリエチレン製、ポリプロピレン製、ポリカーボネート製等の樹脂製、鋼製、ステンレス製、アルミ製等の金属製などの密閉袋あるいは密閉容器に封入するのが好ましいが、通常の活性炭の包装に用いられる内側からポリエチレン、クラフト紙(2〜3層)でもよい。
【0013】
このようにして得られた活性炭をスラリー状としてパイプや溝を通して容易に輸送するには、通常活性炭を水流、かくはん翼等を用いてかくはんしながらその5〜20倍量の水に懸濁させる。具体的には、容器内において活性炭と所定量の水を加え、水流で混合しながらポンプを用いて、活性炭を充填する吸着塔などの設備へフレキシブル管の配管を経由して輸送し、金網、多孔性コンクリート、目皿など、活性炭の粒径より小さく、活性炭の流出が起きない資材により活性炭と排水が分離される。
【0014】
吸着塔などへ輸送された活性炭は、過熱水蒸気などを通じて水分が5%以下になるまで乾燥してその後の使用に供することができる。また、排水処理、浄水処理に供する場合は、そのまま水を通じて使用することができる。
活性炭をスラリー輸送した後の水は、ほぼ中性を呈する水であり、有害な物質を溶解していないので、そのまま廃棄することができる。
【発明の効果】
【0015】
活性炭を吸着塔などに充てんする際、水によってスラリーとしてポンプ等で輸送すれば、クレーンなどの重機を使用せずにすみ、活性炭の微粉除去も同時に行える利点がある。しかし通常の活性炭は、アルカリ性であるので、そのままでスラリー輸送すると、水が著しくアルカリ性となり、排水をそのまま廃棄できないという問題点がある。
一方活性炭を鉱酸によって洗浄することにより水のpHを低下させた場合は、活性炭に酸が残留し、その酸が吸着塔を腐食させる恐れがあり、特に溶剤回収用など、ガス処理に活性炭を使用する場合、充填後は酸が完全に洗い流されることがないため、設備の腐食の原因となることがある。
【0016】
しかし本発明の活性炭はスラリー化しても水をアルカリ性にすることなくほぼ中性を保つことができるので、排水をそのまま廃棄しても問題点はない。又処理水のpH値は、実際上排水基準である5.8を下回ることもないので、設備などを腐食するという問題も起こらない。
また、水処理用活性炭として使用する場合、本活性炭は吸着タンク、吸着池に充てんした後速やかに処理水のpH値が中性付近となるので捨て水が不要であり有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【実施例1】
【0018】
原料活性炭として市販の溶剤回収用ヤシ殻活性炭(円柱状炭)、BET比表面1200m/g、粒径3.35〜2.36mmのものを用いた。
二酸化炭素吸着量の測定方法
活性炭10gを内径20mmの石英管に入れ、片方の端に内容量10Lのガス捕集用袋を取り付け、片方の端から窒素ガスを100ml/分の割合で流しながら、石英管を150℃に保った電気炉にいれ、100分間出口ガスを捕集し、ガス中の二酸化炭素濃度をTCDガスクロマトグラフ装置で測定した。
活性炭20Lを内容量25Lのポリエチレン製ドラムに入れ、25℃の二酸化炭素を容器の下部から50L/分の割合で10分間吹き込み、活性炭No.1を得た。活性炭の二酸化炭素吸着量は35ml/gであった。吹き込み終了後ガラス瓶に入れ、蓋をして常温で保管した。
【実施例2】
【0019】
二酸化炭素:窒素ガス=1:1(体積比)で混合した希釈二酸化炭素ガスを上記と同様活性炭と反応させ、活性炭No.2を得た。活性炭の二酸化炭素吸着量は20ml/gであった。
【実施例3】
【0020】
二酸化炭素:窒素ガス=1:1(体積比)で混合した希釈二酸化炭素ガスを温度35℃で活性炭と反応させ、活性炭No.3を得た。活性炭の二酸化炭素吸着量は15ml/gであった。
〔比較例1〕
【0021】
実施例1で、原料炭として用いた活性炭20Lを内容量25Lのポリエチレン瓶に入れ、そのまま蓋をして、常温で保管した(活性炭No.4)。活性炭の二酸化炭素吸着量は1ml/g以下であった。
二酸化炭素:窒素ガス=1:2(体積比)で混合した希釈二酸化炭素ガスを温度25℃で活性炭と反応させ、活性炭No.5を得た。活性炭の二酸化炭素吸着量は8ml/gであった。
〔実験例1〕
【0022】
活性炭のスラリー輸送実験
攪拌槽に実施例1で得られた製造6時間後の活性炭(活性炭No. 1)、製造後3ヶ月室温で蓋をしたまま保管したもの(活性炭No. 1※)、及び比較例1の通常の活性炭をポリエチレン瓶に入れ、蓋をして常温で3ヶ月保管したもの(活性炭No.6)および活性炭No.2〜No. 5それぞれ1kgを水道水10Lに加えてスラリーとした。この活性炭スラリーをかくはんしながら、1L/分の割合でポンプを用いて内径15mmのシリコンチューブを経由して10m先に輸送し、目開き2.0mmの金網を用いて活性炭と排水を分離した。排水を経時的に採取し、そのpH値を測定した。結果を表1に示した。実験に用いた水道水のpH値は7.5であった。
【0023】
【表1】


【0024】
本発明の製造6時間後の活性炭活性炭No.1および3ヶ月間保管した活性炭(No. 1※)、二酸化炭素吸着量が15ml/g(No.2)及び20ml/g(No.3)の活性炭のいずれでも排水のpH値は10時間経過時点で中性付近に保たれている。しかし比較例1(No.4)、比較例2(No.5)及び実験例1で作成したNo.6の活性炭では、10時間後には排水のpH値は放流するためにはpH調整が必要となる8.6以上にまで上昇した。
【産業上の利用可能性】
【0025】
本発明の1g当たり10ml以上の二酸化炭素を吸着させた活性炭は、後工程でのpH調整なしにスラリー輸送などで接触する水のpH値を5.6から8.6の範囲に納めることができるので、スラリー輸送で充填設備に充てんされる溶剤回収用、水処理用活性炭として有利に用いることができる。
また、水処理用に使用した場合、速やかに処理水のpH値を中性付近に安定させることができるので、工業用水の処理剤や家庭用浄水器の吸着剤としても有利に使用することができる。
【出願人】 【識別番号】503140056
【氏名又は名称】日本エンバイロケミカルズ株式会社
【住所又は居所】大阪府大阪市中央区道修町二丁目3番8号
【出願日】 平成15年12月25日(2003.12.25)
【代理人】 【識別番号】100071973
【弁理士】
【氏名又は名称】谷 良隆

【公開番号】 特開2005−187253(P2005−187253A)
【公開日】 平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願番号】 特願2003−429551(P2003−429551)