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【発明の名称】 SiC被覆カーボンナノチューブ、その製造方法とその複合材料
【発明者】 【氏名】森貞 好昭

【氏名】宮本 欽生

【要約】 【課題】カーボンナノチューブの優れた特性を引き出すことが可能なSiC被覆カーボンナノチューブ、ボロンドープSiC被覆カーボンナノチューブ、その製造方法およびSiC被覆カーボンナノチューブ強化複合材料を提供する。

【解決手段】SiOガスとCOガスとの化学反応を用いることにより、カーボンナノチューブを被覆するSiC膜およびボロンドープSiC膜を得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンナノチューブと、前記カーボンナノチューブを被覆するβ−SiCを主成分とする膜とを備える被覆カーボンナノチューブ。
【請求項2】
前記β−SiC膜において、平均粒子サイズが25nm以下の多結晶体で構成されており、膜厚が25nm〜1000nmである請求項1の被覆カーボンナノチューブ。
【請求項3】
前記β−SiCを主成分とする膜にボロンをドープした請求項1の被覆カーボンナノチューブ。
【請求項4】
金属、セラミックスおよび樹脂のうちの一種類以上と、カーボンナノチューブと、β−SiCを主成分とする膜とを備え、前記金属、セラミックスおよび樹脂のうちの1種類以上の材料と、前記膜によって被覆された前記カーボンナノチューブとが結合されている複合材料。
【請求項5】
カーボンナノチューブ表面にSiCを析出させることによってSiC被覆カーボンナノチューブを作製する方法。
【請求項6】
前記SiCを主成分とする膜にボロンをドープさせる方法。
【発明の詳細な説明】【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SiCを被覆した被覆カーボンナノチューブ、その製造方法とその複合材料に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブが発見されて以来、様々な角度から研究がなされており、熱伝導性、導電性、強度などにおいて優れた特性を持ち、軽く、柔軟性にも富んでいることが明らかになっている。しかしながら、カーボンナノチューブは他の炭素材料と同様に高温酸化という問題点を有し、これによりその使用環境は制限されてしまう。また、強化繊維として使用される場合にはマトリックスとの化学反応やカーボンナノチューブ表面形状に起因した母材との低い密着性が懸念されている。さらに、表面に絶縁被膜を有していなければ線材として用いることも困難である。現在、このような問題点を克服し得る耐環境性保護被膜の作製方法は存在しない。上記理由より、カーボンナノチューブの優れた特性を十分に発揮し得る複合材料は得られていない。
【0003】
カーボンナノチューブへの被覆方法としては無電解めっき法によるニッケル被覆が存在する(先行技術文献1)。また、シリカと炭素の高温反応で生成するSiOガスを利用してカーボンナノチューブからSiCナノロッドを作製する試みが行われている(先行技術文献2)。
先行技術文献1:W.X.Chen,J.P.Tu,L.Y.Wang,H.Y.Gan,Z.D.Xu,X.B.Zhang,Carbon 41 215−222(2003)
先行技術文献2:J.W.Liu,D.Y.Zhong,F.Q.Xie,M.Sun,E.G.Wang,W.X.Liu,Chem.Phys.Lett.348 357−360(2001)
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ニッケル被覆では高温安定性及び機械的特性が十分でなく、
【0002】
記載の問題点を克服することはできない。また、カーボンナノチューブを完全にSiCナノロッドにしてしまってはカーボンナノチューブが有する特性を利用することができない。しかし、耐環境性、高温特性を考慮するとSiCは非常に有効的な被覆材である。ここでカーボンナノチューブの表面にSiCを均一に析出させることができれば
【0002】
記載の問題点を解決することができる。
【0005】
SiCは電気伝導性が低いが、ボロンをドープすることで比抵抗値を1×10−1〜1×10Ωmに制御することが可能である。つまりSiC被膜を耐環境性保護被膜としてのみではなく、電気伝導性を有するナノメートルサイズの機能性部材として利用することも可能である。
【0006】
本発明は、カーボンナノチューブ表面にSiCを析出させることでSiC被膜を形成させ、耐酸化性の向上や金属に対する反応性の抑止を図り、またそのSiC被膜にボロンをドープすることで比抵抗値を制御し、さらにはSiC被覆カーボンナノチューブを強化材とする複合材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明であるSiC被覆カーボンナノチューブの第1の特徴は、カーボンナノチューブの構造を維持したままナノメートルサイズのSiC粒子膜をカーボンナノチューブ表面に均一に析出させて作製することである。カーボンナノチューブをSiCに転換するとカーボンナノチューブ自体がSiC生成の為の炭素源として消費されてしまうが、カーボンナノチューブ表面にSiCを析出させる方法ではカーボンナノチューブ自体は消費されない。坩堝低部にSiO顆粒を配置し、その上にカーボンフェルトを介してカーボンナノチューブを配置する。坩堝上部はカーボンフェルト、カーボンシートにて蓋をする。これを真空炉中、もしくは不活性ガス流通下の炉内で加熱する。SiO顆粒をSiOガスにする必要がある為、加熱温度としては約1150℃以上が必要である。SiO顆粒の替わりにSiOと炭素を配置してもよい。坩堝の上部をカーボンフェルト、カーボンシートで蓋をすることによって坩堝内のSiO分圧を保つことができる。また、SiC被膜が生成する際に同時に生成するCOガスが坩堝内のカーボンフェルト、カーボンシートと反応して速やかにCOガスになる。このCOガスがカーボンナノチューブ自体のSiC化を抑制すると共に、SiOガスと反応することによってカーボンナノチューブ表面にSiCが析出する。
【0008】
また、坩堝内のカーボンフェルト、カーボンシートを炭素以外の耐熱材料に置き換えることで、必要に応じて多層カーボンナノチューブ表面を10nm〜100nmの厚みに渡って速やかにSiC化することも可能である。
【0009】
坩堝の材質はAl(アルミナ)、MgO(マグネシア)、グラファイト等、高温不活性雰囲気下の使用に耐えうる物であればよい。
【0010】
第2の特徴として、カーボンナノチューブ表面にSiC被膜を作成する際にSiC中にボロンをドープすることが可能である。これによりボロンがドープされたSiCはP型半導体となり、ドープ量によってSiC被膜の比抵抗値を制御することができる。坩堝低部にSiO顆粒を配置し、その上にカーボンフェルトを介してボロン顆粒を配置する。更にその上にカーボンフェルトを介してカーボンナノチューブを配置する。坩堝上部はカーボンフェルト、カーボンシートにて蓋をする。これを真空炉中、もしくは不活性ガス流通下の炉内で加熱する。SiO顆粒をSiOガスにする必要がある為、加熱温度としては約1150℃以上が必要である。SiO顆粒の替わりにSiOと炭素を配置してもよい。カーボンナノチューブ表面にSiC被膜が形成される際、気化したボロンがSiCの結晶格子中および粒界に取り込まれる。なお、ドーパントとしての不純物はボロン以外にリンやアルミニウムも利用できる。
【0011】
請求項5の発明の被覆カーボンナノチューブの製造方法は、カーボンナノチューブと粒子状の一酸化ケイ素(SiO)とを、真空中もしくは不活性雰囲気下において1150℃以上の温度で加熱することにより、カーボンナノチューブ表面をβ−SiC膜によって被覆する。
【0012】
上記の製造方法ではSiO(気相)+3CO(気相)→SiC(固相)+2CO(気相)の化学反応が生じ、SiC膜が生成する。CO(気相)は、SiO(気相)+2C(カーボンナノチューブ、カーボンフェルト、カーボンシート)→SiC(固相)+CO(気相)およびCO(気相)+C(カーボンフェルト、カーボンシート)→2CO(気相)の化学反応によって供給される。ここで、カーボンナノチューブ自身もSiO(気相)+2C(カーボンナノチューブ、カーボンフェルト、カーボンシート)→SiC(固相)+CO(気相)の化学反応によって若干消費されるが、表面に薄いSiC膜が形成した後は当該膜によってその後の化学反応から保護される。カーボンフェルト、カーボンシートはカーボンナノチューブと比較して十分多量に存在する為、SiO(気相)+2C(カーボンフェルト、カーボンシート)→SiC(固相)+CO(気相)およびCO(気相)+C(カーボンフェルト、カーボンシート)→2CO(気相)の化学反応によってSiO(気相)+3CO(気相)→SiC(固相)+2CO(気相)の化学反応に必要なCO(気相)が供給可能となる。
【0013】
請求項4の複合材料は、金属、セラミックスおよび樹脂のうち1種類以上と、カーボンナノチューブと、カーボンナノチューブを被覆するβ−SiC膜とを備え、金属、セラミックスおよび樹脂のうちの1種類以上の材料と、上記の膜によって被覆されたカーボンナノチューブとが結合されている。
【0014】
複合材料の1成分として、上記の被覆ナノチューブを用いることにより、複合材料の中に強固に組み込まれたカーボンナノチューブの優れた特性を利用することができる。SiC膜は化学的に安定であり、カーボンナノチューブと母材との反応によるカーボンナノチューブの劣化を抑制する。さらに、SiC膜によってカーボンナノチューブと母材との密着性を改善することが可能となる。また、SiC膜自身が熱伝導性および機械的特性に優れるので、カーボンナノチューブを応用した複合材料として、カーボンナノチューブの極めて高い熱伝導率および機械的特性を十分引き出すことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明において、カーボンナノチューブにSiC被覆を行う際の坩堝内配置例を図1に示す。坩堝下部にSiOガスを生成するような原料を配置し、その上にカーボンフェルトを介してカーボンナノチューブを配置する。坩堝上部はカーボンシート、カーボンフェルトで蓋をする。これを真空または不活性雰囲気に調整した炉内で加熱する。処理温度としては1150℃以上が必要である。
【0016】
本発明において、カーボンナノチューブにSiC被覆を行うと同時に、SiC被膜にボロンをドープする際の坩堝内配置例を図2に示す。坩堝下部にSiOガスを生成するような原料を配置し、その上にカーボンフェルトを介してボロンを配置する。さらにその上にカーボンフェルトを介してカーボンナノチューブを配置する。坩堝上部はカーボンシート、カーボンフェルトで蓋をする。これを真空または不活性雰囲気に調整した炉内で加熱する。処理温度としては1150℃以上が必要である。
【0017】
前記被覆手法を用いて作製した被覆カーボンナノチューブおよびカーボンナノチューブを用いた複合材料とカーボンナノチューブを添加しない材料の性能比較を行った。これらの被覆カーボンナノチューブおよびカーボンナノチューブの粉末と、平均粒径5μmのWC粉末および平均粒径1μmのCo粉末とを用いてSiC被覆カーボンナノチューブおよびカーボンナノチューブの含有率が3体積%で、残部がWC−10重量%Coの超硬合金系の混合粉を得た。また、比較材料の作製の為にWC−10重量%Coの超硬合金系の混合粉を得た。次にこれらの混合粉をプラズマ焼結法により約1050℃で5分間加熱焼結して、超硬合金にSiC被覆カーボンナノチューブおよびカーボンナノチューブが分散したφ15mm、厚さ5mmの円板状の複合材料を作製した。また、カーボンナノチューブを含まない混合粉をプラズマ焼結法により約1050℃および約1150℃で5分間加熱焼結してφ15mm、厚さ5mmの円板状の超硬合金を作製した。このようにして作製した材料の表面を鏡面状に加工し、複合材料の相対密度およびその表面のビッカース硬度を測定した。相対密度とビッカース硬度を表1に示す。1250℃または1350℃における処理で得られた被覆カーボンナノチューブを複合材料に添加した場合、ビッカース硬度が約20GPaへと上昇している。また、被覆ナノチューブおよびナノチューブを添加した場合、1050℃での焼結で相対密度約100%の焼結体が得られたことから、被覆ナノチューブおよびナノチューブが焼結を促進する働きをしたものと考えられる。
【表1】


【発明の効果】
【0018】
以上の説明からわかるように、本発明を用いることで容易にSiC被覆カーボンナノチューブを得ることができる。SiC被膜はカーボンナノチューブ表面に均一に形成され、SiC被覆カーボンナノチューブはカーボンナノチューブと比較して優れた耐酸化特性、化学的安定性を有する。図3に1250℃〜1550℃の各温度で15分間SiC被覆処理を行ったカーボンナノチューブと未処理のカーボンナノチューブの質量が空気中、650℃でどのように変化するのかを示す。カーボンナノチューブが5分程度で完全に酸化しているのに対し、SiC被覆カーボンナノチューブの酸化耐久性は大幅に改善されている。特に1550℃で被覆処理を行ったものは60分後も約90%の質量が残存している。
【0019】
カーボンナノチューブ表面に形成したSiC被膜の比抵抗値を変化させたい場合は、ボロンをドープすることで1×10−1〜1×10Ωmに制御が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】 本発明におけるSiC被覆処理で用いる坩堝内配置
【図2】 本発明においてSiC被膜中にボロンをドープする際に用いる坩堝内配置図
【図3】 650℃の空気中におけるカーボンナノチューブ及びSiC被覆カーボンナノチューブの質量変化を示すグラフ
【符号の説明】
1.坩堝
2.SiO顆粒
3.カーボンナノチューブ
4.カーボンフェルト
5.カーボンシート
6.ボロン顆粒
【出願人】 【識別番号】303049511
【氏名又は名称】森貞 好昭
【識別番号】592138994
【氏名又は名称】宮本 欽生
【出願日】 平成15年8月29日(2003.8.29)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−75720(P2005−75720A)
【公開日】 平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願番号】 特願2003−347582(P2003−347582)