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【発明の名称】 電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓の製造方法並びに電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓材
【発明者】 【氏名】小栗 和幸
【住所又は居所】名古屋市港区大江町10番地 三菱重工業株式会社名古屋航空宇宙システム製作所内

【要約】 【課題】可視光線の透過性を向上しつつ、有害な電磁波を効果的に遮蔽し、かつ、電波ステルス性を向上することを目的とする。

【解決手段】曲面形状をなす透明な窓部材1の表面に、導電性材料からなる薄膜2を形成するステップと、該薄膜2を処理してメッシュ形状に形成するステップとを備える電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓4の製造方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曲面形状をなす透明な窓部材の表面に、導電性材料からなる薄膜を形成するステップと、該薄膜を処理してメッシュ形状に形成するステップとを備えることを特徴とする電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓の製造方法。
【請求項2】
平面形状をなす透明な窓部材の表面に、導電性材料からなるメッシュ形状の薄膜を形成するステップと、窓部材および薄膜を一体的に湾曲させて曲面形状に形成するステップとを備えることを特徴とする電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓の製造方法。
【請求項3】
単曲面形状をなす透明な窓部材の表面に、導電性材料からなるメッシュ形状の薄膜を形成するステップと、窓部材および薄膜を一体的に湾曲させて複曲面形状に形成するステップとを備えることを特徴とする電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓の製造方法。
【請求項4】
前記メッシュ形状の薄膜を形成するステップが、その後の湾曲ステップにおける曲率の変化量の大きい領域に配される薄膜ほど、目の細かいメッシュ形状に形成することを特徴とする請求項2または請求項3に記載の電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓の製造方法。
【請求項5】
前記メッシュ形状の薄膜を形成するステップが、その後の湾曲ステップにおける曲率の変化量の大きい領域に配される薄膜ほど線幅の太いメッシュ形状に形成することを特徴とする請求項2から請求項4のいずれか1項に記載の電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓の製造方法。
【請求項6】
平面または単曲面形状をなす透明な窓部材の表面に、湾曲される際の曲率の変化量の大きい領域ほど、目の細かいメッシュ形状の導電性材料からなる薄膜を備えることを特徴とする電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓材。
【請求項7】
平面または単曲面形状をなす透明な窓部材の表面に、湾曲される際の曲率の変化量の大きい領域ほど、線幅の太いメッシュ形状の導電性材料からなる薄膜を備えることを特徴とする電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓材。


【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、航空機、特に、ステルス機に用いて好適な電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓の製造方法および電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、航空機、特にステルス機の電磁波シールド窓としては、金やITO(インジウム錫酸化物)等の透明導電膜を透明樹脂や無機ガラスからなる窓部材の表面にコーティングしたものが知られている。透明導電膜を採用することで、可視光線の透過性を維持しつつ、電波を均一に乱反射させてレーダーに探知されないようにする電波ステルス性や、可視光以外の有害な電磁波が航空機外から機内に侵入することを防ぐ電磁波シールド性を両立させることとしている。
【0003】
しかしながら、航空機用の窓部材、特に風防やキャノピは、大きな曲率で湾曲するとともに、複数の曲率半径を有する複曲面形状を有しているものが多い。このため、このような窓部材に透明導電膜をコーティングする場合には、ムラなく均一にコーティングすることが困難であるという問題がある。
【0004】
また、電波ステルス性や電磁波シールド性を高めると、可視光線の透過性が低下するという問題がある。特に、透明導電膜によって十分な電波ステルス性や電磁波シールド性を達成しようとすると、可視光線の透過率が70%以下に低下してしまい、機内における視界が暗くなるという不都合がある。
【0005】
さらに、窓部材に透明導電膜をコーティングした電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓は、飛行中に圧力や外気温の大きな変動を受け、窓部材に変形が生ずることになる。しかしながら、透明導電膜、特にITO等のセラミックス系の透明導電膜の場合には、この変形に追従することが困難であり、運用上起こり得る比較的小さな変形でも膜の破断が発生する恐れがある。そのために、特にITO等のセラミックス系の透明導電膜の場合には、比較的変形が小さい窓の内側にコーティングを施すことが行われている。
【0006】
一方、航空機用の窓とは全く異なる技術分野ではあるが、可視光線の透過を許容し、有害な電磁波の通過を防止する装置として、プラズマディスプレイパネルの前面フィルタがある(例えば、特許文献1参照)。この前面フィルタは、プラズマディスプレイパネルの前面全体を覆うように、導電性メッシュを形成したPET等の樹脂性フィルムを貼付して一体化した構成のものである。
【0007】
【特許文献1】特開2001−189589号公報(段落[0003]〜[0004],図3等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような前面フィルタは、プラズマディスプレイパネルに用いられるものであるから、元来、平板状に構成されている。したがって、これを複曲面形状からなる航空機のキャノピのような窓に適用することは困難であった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、可視光線の透過性を向上しつつ、電波を均一に乱反射させてレーダーに探知されないようにする電波ステルス性を有する窓や、可視光以外の有害な電磁波が航空機外から機内に侵入することを効果的に防ぐ電磁波シールド性を有する窓を低コストで製造可能な電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓の製造方法および電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提供する。
すなわち、本発明は、曲面形状をなす透明な窓部材の表面に、導電性材料からなる薄膜を形成するステップと、該薄膜を処理してメッシュ形状に形成するステップとを備える電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓の製造方法を提供する。
【0011】
本発明によれば、予め曲面形状に形成された透明な窓部材の表面に、例えば、メッキや金属蒸着等のコーティング法を用いて導電性材料からなる薄膜を形成する。この際、後工程でフォトエッチング法により微細なメッシュを形成することから、透明導電膜をコーティングする場合のように、コーティング後のムラ等の不均一性にはそれほど敏感ではない。そして、窓部材の表面に密着状態に形成された導電性材料からなる薄膜を、例えば、フォトエッチング等の方法を用いてメッシュ状に構成するので、複雑な曲面形状にかかわらず、均一な密度のメッシュ形状に形成することができる。
【0012】
また、本発明は、平面形状をなす透明な窓部材の表面に、導電性材料からなるメッシュ形状の薄膜を形成するステップと、窓部材および薄膜を一体的に湾曲させて曲面形状に形成するステップとを備える電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓の製造方法を提供する。
さらに、本発明は、単曲面形状をなす透明な窓部材の表面に、導電性材料からなるメッシュ形状の薄膜を形成するステップと、窓部材および薄膜を一体的に湾曲させて複曲面形状に形成するステップとを備える電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓の製造方法を提供する。
【0013】
これらの発明によれば、平面形状または単曲面形状からなる透明な窓部材の表面に予め導電性材料からなるメッシュ形状の薄膜を形成する。平面形状あるいは単曲面形状であれば、メッシュ形状の薄膜を形成した樹脂フィルムあるいは板材を窓部材の表面に沿わせるように配置して、皺なく接着することができる。また、薄膜法により形成しても、その膜厚を比較的容易に均一化することができる。そして、薄膜がメッシュ形状に形成されているので、湾曲時にはメッシュを構成する線が個別に延びるようにして網の目を拡大するように変形する。これにより、薄膜は、湾曲される際における窓部材表面の伸びに追従して、窓部材との密着状態を維持するように変形される。したがって、湾曲後も窓部材とその表面のメッシュ形状の薄膜とが一体的に密着状態に配された電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓を製造することができる。
【0014】
この場合において、前記メッシュ形状の薄膜を形成するステップが、その後の湾曲ステップにおける曲率の変化量の大きい領域に配される薄膜ほど、目の細かいメッシュ形状に形成することとすれば効果的である。
湾曲される窓部材の曲率の変化量に合わせて、湾曲前の窓部材表面に形成する薄膜の網の目の粗密を調整しておくことにより、湾曲後の窓部材表面に形成される薄膜を均一な網目のメッシュ形状に構成することができる。すなわち、窓部材の曲率が大きく変化させられる領域に配置される薄膜は、他の領域よりも目を細かくしておくことにより、窓部材を湾曲させた後には、当該領域の網目が他の領域の網目と同等の粗さまで広げられる。その結果、均一な網目を有するメッシュ形状の薄膜が形成されることになる。
【0015】
また、前記メッシュ形状の薄膜を形成するステップが、その後の湾曲ステップにおける曲率の変化量の大きい領域に配される薄膜ほど線幅の太いメッシュ形状に形成することとしてもよい。
湾曲される窓部材の曲率の変化量に合わせて、湾曲前の窓部材表面に形成する薄膜の網の線幅を調整しておくことにしても、上記と同様の効果が得られる。すなわち、窓部材の曲率が大きく変化させられる領域に配置される薄膜は、他の領域よりも線幅の太いメッシュ形状に形成しておくことにより、窓部材を湾曲させた後には、当該領域のメッシュを構成する各線が引き伸ばされて、他の領域と同等の太さまで細くなる。その結果、均一な網目を有するメッシュ形状の薄膜が形成されることになる。
【0016】
また、本発明は、平面または単曲面形状をなす透明な窓部材の表面に、湾曲される際の曲率の変化量の大きい領域ほど、目の細かいメッシュ形状の導電性材料からなる薄膜を備える電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓材を提供する。
さらに、本発明は、平面または単曲面形状をなす透明な窓部材の表面に、湾曲される際の曲率の変化量の大きい領域ほど、線幅の太いメッシュ形状の導電性材料からなる薄膜を備える電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓材を提供する。
【0017】
これらの発明によれば、湾曲前の形態において、湾曲される際の曲率の変化量の大きい領域ほど、目の細かいメッシュ形状あるいは線幅の太いメッシュ形状の導電性材料からなる薄膜を設けておくことにより、湾曲させるだけで簡易に、窓全体にわたって均一な網目のメッシュ形状の導電性材料からなる薄膜を備えた電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓を構成することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、明るい視界と高度の電波ステルス性および有害な電磁波のシールド性に優れる電磁波シールド窓を製造することができるという効果がある。また、メッシュ形状に形成された薄膜は、その材料として金属を用いることにより、窓部材の変形に追従して容易に変形することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に、本発明に係る電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓(以下、単に電磁波シールド窓という。)の製造方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る電磁波シールド窓の製造方法は、航空機のキャノピのような複曲面を有する電磁波シールド窓の製造方法であって、図1に示されるように、複曲面形状をなす透明な窓部材を成形する窓部材成形ステップS1と、成形された複曲面形状の窓部材の表面に、導電性材料からなる薄膜を形成する薄膜形成ステップS2と、形成された薄膜をメッシュ形状に形成するメッシュ形成ステップS3とを備えている。
【0020】
窓部材成形ステップS1は、例えば、航空機用のストレッチアクリル製の平板状の窓材を加熱して金型間でプレス成形するステップである。
薄膜形成ステップS2は、図2(a)に示す複曲面形状に成形された窓部材1の表面に、図2(b)に示すように、導電性の材料、例えば、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン、錫、のような金属材料からなる薄膜2を、めっき処理により窓部材の表面に形成するステップである。薄膜2の厚さは、例えば、1〜30μm、特に1〜20μmであることが好ましく、10μm程度であることがさらに好ましい。
【0021】
前記メッシュ形成ステップS3は、窓部材1の表面一面に形成された薄膜2を、図2(c)に示すように、メッシュ形状の薄膜3に形成する。具体的には、薄膜2の表面にレジスト膜を形成し、次いで、レジスト膜にマスクパターンを露光した後に、現像することにより、薄膜2の表面にメッシュ形状のマスクを形成する。この状態で、薬品によりエッチングすることにより、薄膜2をメッシュ形状の薄膜3に形成する。その後、レジスト膜を除去することにより、窓部材1の表面にメッシュ形状の薄膜3が形成された電磁波シールド窓4が製造される。
【0022】
形成されるメッシュ状の薄膜3は、厚さが10μm程度、メッシュを構成する各線の幅寸法が10μm程度であり、かつ、各線の間隔が200μm程度であることが好ましい。このように構成することにより、90%程度の光線透過率を達成することができる。また、薄膜3を銅のような良導体により構成することによって、電気抵抗値を数Ω/□以下に抑えることが可能となり、高い電磁波シールド性あるいは電波ステルス性を達成することができる。
【0023】
このようなステップを含む本実施形態に係る電磁波シールド窓4の製造方法によれば、予め複曲面を有する形態に形成された窓部材1の表面に導電性材料からなる薄膜2を形成した後に、形成された薄膜2をメッシュ形状の薄膜3に再形成するので、複雑な曲面形状を有する窓部材1の全面にわたってメッシュ形状の薄膜3を均一に形成することができる。したがって、薄膜3が不均一に形成されることによる電磁波の遮蔽ムラや視界の部分的な喪失を防止することができる。その結果、航空機に適用した場合には、航空機内部からの視界を確保しつつ、航空機外部から飛来する電磁波を遮蔽可能な電磁波シールド窓4を製造することができる。また、均一に形成されたメッシュ形状の薄膜3により、電磁波を均一に乱反射することが可能となり、外部のレーダーに対する電波ステルス性を向上した窓4を製造することができるという効果がある。
【0024】
さらに、窓部材1の全面を隙間なく覆う従来の透明導電膜と比較すると、窓部材1の表面を覆う薄膜3が複数の網目を有するメッシュ形状に形成されているために、航空機外部の温度変化や圧力変化のような外部環境の変化が生じた場合においても、薄膜3を構成する材料として金属を用いることにより、窓部材の変形に追従して容易に変形することができる。その結果、本実施形態に係る製造方法により製造された電波ステルス性および電磁波シールド性を有する電磁波シールド窓4は、外部環境の変化によってメッシュの破断や剥離が生ずることなく健全な状態に維持される。
また、メッシュ形状の薄膜3を、環境変化が大きく、部材の変形が大きくなる窓部材1の外面にも適用できるようになり、航空機の機体外面と薄膜3との間に段差が生ずるのを防止して、電波ステルス性をさらに高めることができる。
【0025】
なお、上記実施形態においては、薄膜形成ステップS1として、窓部材1の表面を金属材料によってめっき処理する方法を例示したが、これに限定されるものではなく、CVDやPVDのような導電性材料を蒸着させる方法、導電性塗料やペーストを塗布する方法等、任意の方法を採用してもよい。
また、窓部材1とメッシュ形状の薄膜3とからなる構造の電磁波シールド窓4について説明したが、図3に示されるように、薄膜3を保護する任意の保護層5を形成することにしてもよい。保護層5としては、例えば、ポリシラザン系、ポリウレタン系、ポリシリコーン系あるいはシロキサン系樹脂を用いることができる。保護層5については、メッシュ形状の薄膜3形成後に、フィルムを貼る方法、コーティングする方法など、任意の方法で薄膜3を被覆することにすればよい。
【0026】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態に係る電磁波シールド窓の製造方法について、以下に説明する。
本実施形態に係る電磁波シールド窓の製造方法は、図4に示されるように、平面形状をなす透明な窓部材の表面に、導電性材料からなる薄膜を形成した透明樹脂のフィルムあるいは板を密着状態に形成する薄膜形成ステップS11と、形成された薄膜をメッシュ状に形成するメッシュ形成ステップS12と、これら窓部材およびメッシュ形状の薄膜を一体的に湾曲させる湾曲ステップS13とを備えている。
【0027】
前期薄膜形成ステップS11は、第1実施形態と同様の方法により、平坦に配置した透明樹脂からなるフィルム10の表面一面に導電性材料からなる薄膜を形成する。
また、メッシュ形成ステップS12も、第1実施形態と同様の方法により、フィルム10上の薄膜をメッシュ形状の薄膜11に形成する。これにより、透明樹脂からなるフィルム10上に導電性材料からなるメッシュ形状の薄膜11を密着状態に有するメッシュフィルム12が製造される。なお、透明樹脂製のフィルムに代えて透明樹脂製の板材を採用してもよい。
【0028】
湾曲ステップS13は、まず、図5(a)に示すように、ステップS11,S12において形成されたメッシュフィルム12を平板状の窓部材13の表面に接着することにより、図5(b)に示されるように、窓部材13の表面にメッシュ形状の薄膜11を設ける。
窓部材13は、例えば、伸縮性のある透明な平板状のストレッチアクリルにより構成されている。メッシュフィルム12は、例えば、銅により構成され、線幅10μm、厚さ10μm、線どうしの間隔200μm程度に製造されている。接着剤は、例えば、シランカップリング剤を添加したEVA樹脂等からなるフィルム状の透明接着剤でよい。
次いで、湾曲ステップS13においては、図5(c)に示されるように、接着剤により一体化された窓部材13とメッシュフィルム12とからなる窓材を同時に一体的に湾曲させる。湾曲させる方法としては、例えば、プレス成形法を採用する。これにより電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する電磁波シールド窓14が製造される。
【0029】
本実施形態に係る電磁波シールド窓14の製造方法によれば、窓部材13を湾曲させる前の状態において、透明樹脂製のフィルム10上にメッシュ形状の薄膜11を形成したメッシュフィルム12を平板状の窓部材13に接着するので、接着時においては、メッシュフィルム12を窓部材11の全域にわたって容易に密着させることができる。そして、その後に、一体に接着された状態のメッシュフィルム12と窓部材13とを一体的に湾曲させるので、曲面形状の窓部材に透明導電膜を接着する場合に生ずる皺の発生を抑えることができる。
特に、メッシュフィルム12を採用しているので、メッシュ形状の薄膜11および透明樹脂のフィルム10は、窓部材13が湾曲される際に生ずる表面の伸縮に合わせて変形される。メッシュフィルム12を構成しているメッシュ形状の薄膜11は、金属製の各線を伸縮させることにより、また、フィルム10は弾性変形することにより、窓部材13の表面との密着状態を維持しつつ、変形されることになる。
したがって、湾曲後の状態においても、曲面形状をした窓部材13の表面に皺なく均一に形成されたメッシュ形状の薄膜11を有する電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する電磁波シールド窓14を製造することができる。
【0030】
このようにして本実施形態に係る製造方法により製造された電磁波シールド窓14も第1実施形態の方法により製造された電磁波シールド窓4と同様に、メッシュ形状の薄膜11が不均一に形成されることによる電磁波の遮蔽ムラや視界の部分的な喪失を防止して、航空機内部からの視界を確保しつつ、航空機外部から飛来する電磁波を遮蔽することができる。また、均一に形成されたメッシュ形状の薄膜11により、電磁波を均一に乱反射することが可能となり、外部のレーダーに対する電波ステルス性を向上することができるという効果がある。また、外部環境の変化による窓材の変形が生じた場合においても、メッシュ形状の金属薄膜11を用いることで、応力を吸収し、健全な状態を維持することができる。
【0031】
なお、上記実施形態においては、平面形状の窓部材13に、メッシュフィルム12を接着することとしたが、これに代えて、単曲面形状の窓部材11にメッシュフィルム12を接着することにしてもよい。単曲面形状であれば、メッシュフィルム12を単純に湾曲させるだけで皺なく窓部材13に密着させることができるので、上記実施形態と同様の効果がある。
また、接着剤として、シランカップリング剤を添加したEVA樹脂からなるフィルム状の接着剤を例に挙げて説明したが、これに代えて、エポキシ樹脂、アクリル樹脂等、任意の接着剤を採用してもよい。
【0032】
また、メッシュフィルム12を窓部材11に接着する方法に代えて、図6に示される方法を採用してもよい。すなわち、図6(a)に示される窓部材13に、図6(b)に示すように、薄膜法により導電性材料からなる薄膜15を形成した後に、図6(c)に示されるように、フォトエッチング等によりメッシュ形状の薄膜16を形成し、形成された薄膜16と窓部材13とを一体的に湾曲させる方法を採用してもよい。
また、窓部材13とメッシュ形状の薄膜11とを一体的に湾曲させる方法として、プレス成形法を採用したが、これに代えて、真空成形法、圧空成形法、等任意の方法を採用できる。
また、保護層については、任意の方法により設けることが可能である。特に、湾曲前に成形しておく方法、湾曲後に成形する方法のいずれを採用してもよい。
【0033】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3実施形態に係る電磁波シールド窓の製造方法について、図面を参照して以下に説明する。
本実施形態に係る製造方法は、第2実施形態に係る製造方法と同様であるが、使用するメッシュフィルムにおいて相違している。なお、本実施形態の説明において、上記実施形態と共通する構成要素については同一符号を付して説明を簡略化する。
【0034】
本実施形態に係る製造方法に使用されるメッシュフィルム20は、透明樹脂製のフィルム21上にメッシュ形状の薄膜22を形成したものであって、例えば、メッシュ形状の薄膜22が、図7に示されるように、位置によって網目の粗密が異なるメッシュ形状を有している。図7に示す例では、領域Aにおいて網目が最も細かく形成され、領域Bにおいて網目が最も粗く形成され、それらの領域の間の領域Cにおいて、網目の大きさが徐々に変化するように構成されている。網目の最も細かい領域Aは、湾曲ステップS13において湾曲されるときに、窓部材13が最も大きく曲率を変化させられる部分に接着される領域である。網目の最も粗い領域Bは、窓部材13の曲率変化が最も少ない部分に接着される領域である。
【0035】
本実施形態に係る電磁波シールド窓23の製造方法は、図8(a)に示されるように、メッシュフィルム20を平板状の窓部材13に接着し、図8(b)に示されるように、窓部材13の表面にメッシュフィルム20が密着した電磁波シールド窓材24を製造する。そして、図8(c)に示されるように、窓部材13とメッシュフィルム20とからなる電磁波シールド窓材24を一体的に湾曲させる。
これによれば、窓部材11とメッシュフィルム20とを一体的に接着した状態で湾曲ステップS13を行うと、領域Aに配されている窓部材13がその曲率を大きく変化させるように湾曲させられる。このとき、領域Aにおける窓部材13の表面は、湾曲に伴って伸びる。そして、窓部材13の表面に接着されているメッシュ形状の薄膜22も、窓部材13の表面の伸びが大きいところでは大きく、窓部材13の表面の伸びが小さいところでは小さく伸びるように変形させられる。
【0036】
この場合において、本実施形態に係る製造方法によれば、窓部材13の表面の伸びが最も大きい領域Aに配されるメッシュ形状の薄膜22は、該メッシュ形状の薄膜22を構成している各線22aを伸ばして、網目が大きくなるように最も大きく変形させられる。領域Aのメッシュフィルム20は、他の部分よりも細かい網目を有しているので、大きく変形させられることにより、変形の最も少ない領域Bと同等の網目の大きさになる。また、領域Bにおいては、曲率の変化が少ないので、メッシュ形状の薄膜22の網目の大きさはあまり変化することなく、最初の細かさが維持される。また、領域Aと領域Bとの間に配される領域Cにおいては、領域A,Bの中間程度の変形量で変形させられる。その結果、湾曲ステップS12が終了すると、図8(c)に示されるように、窓部材11の全領域にわたって、同等の大きさの網目を有するメッシュ形状の薄膜22を有する電磁波シールド窓23が製造されることになる。
【0037】
本実施形態に係る製造方法によれば、第1、第2実施形態と同様に、複雑な曲面形状をなす窓部材13の表面に、皺なく密着するメッシュ形状の薄膜22を設けた電磁波シールド窓23を製造することができる。したがって、外部から飛来する電磁波を効果的に遮蔽することができる。そのうえ、本実施形態に係る製造方法によれば、窓部材13の表面に形成されるメッシュ形状の薄膜22が、全領域に渡って同等の細かさの網目を有しているので、電波を均一に乱反射して高い電波ステルス性を発揮する電磁波シールド窓23を製造することができるという効果がある。
【0038】
なお、本実施形態においては、メッシュフィルム20を、湾曲される窓部材13の曲率の変化の大小に合わせて、予め網目に粗密を有するものを採用したが、これとともに、図9に示されるように、メッシュ形状の薄膜22を構成する各線22aの太さにも変化をつけることが好ましい。すなわち、窓部材13の曲率の変化が大きい領域Aに配されるメッシュ薄膜22の各線22aは、湾曲されることによる変化量が大きく、伸びる際にその太さが細くなっていくので、窓部材13の曲率の変化が小さい領域Bに配されるメッシュ薄膜22の各線22aより太く形成しておくことが好ましい。これにより、湾曲ステップS13終了後に形成されるメッシュ形状は、網目の細かさのみならず、メッシュ形状の薄膜22を構成する各線22aの太さまで均一に形成されることになる。したがって、電波ステルス性をより高めることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1実施形態に係る電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】図1の製造方法の各ステップを部分的な断面により示す工程図である。
【図3】図1の製造方法により製造された窓に保護層を付加したものを示す部分的な断面図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓の製造方法を示すフローチャートである。
【図5】図4の製造方法の各ステップを部分的な断面により示す工程図である。
【図6】図5の変形例を示す工程図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係る電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓に用いられるメッシュフィルムを示す部分的な断面図である。
【図8】図7のメッシュフィルムを用いた電波ステルス性および/または電磁波シールド性を有する窓の製造方法の各ステップを部分的な断面により示す工程図である。
【図9】図7のメッシュフィルムの変形例を示す部分的な断面図である。
【符号の説明】
【0040】
1,13 窓部材
2,3,11,15,16,22 薄膜
4,14,23 電磁波シールド窓
10,20 メッシュフィルム(薄膜)
24 電磁波シールド窓材。
S2,S11 薄膜形成ステップ
S3,S12 メッシュ形成ステップ
S13 湾曲ステップ
【出願人】 【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
【住所又は居所】東京都港区港南二丁目16番5号
【出願日】 平成15年9月30日(2003.9.30)
【代理人】 【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴

【識別番号】100089163
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 重光

【公開番号】 特開2005−104310(P2005−104310A)
【公開日】 平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願番号】 特願2003−340497(P2003−340497)