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【発明の名称】 冊子綴じ込み用プラスチックシート
【発明者】 【氏名】川合 剛
【住所又は居所】東京都豊島区南大塚3−10−10株式会社美幸堂内

【要約】 【課題】冊子から抜け落ちることがないほど強固に接着されるとともに、製本の効率性がよい冊子添付用のプラスチックシートを提供すること。

【解決手段】プラスチックシート本体2の片面又は両面の一端側に設けられた接着剤塗布領域を、紙部材を重合接着してなる冊子4の任意の折丁24に貼り付けて綴じ込み製本されるプラスチックシート1の接着剤塗布領域の接着剤塗布面を粗面に形成した。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックシート本体の片面又は両面の一端側に設けられた接着剤塗布領域を、複数の紙部材を重ねてなる冊子の任意のページ面に貼り付けて綴じ込み製本されるプラスチックシートにおいて、
前記接着剤塗布領域の接着剤塗布面を粗面に形成したことを特徴とするプラスチックシート。
【請求項2】
前記プラスチックシート本体の前記接着剤塗布領域の粗面は、中心線平均粗さパラメータによる表面粗さ(Ra)が0.5μm以上の粗膜を形成するニス剤またはインキ剤により形成したことを特徴とする請求項1に記載のプラスチックシート。
【請求項3】
前記プラスチックシート本体の前記接着剤塗布領域の粗面は、中心線平均粗さパラメータによる表面粗さ(Ra)が、0.5μmから0.7μmの粗膜を形成するニス剤またはインキ剤により形成したことを特徴とする請求項1に記載のプラスチックシート。

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、冊子に貼り込み製本されるプラスチックシートにかかり、特に、接着剤塗布面に接着補強を施したプラスチックシートに関する。
【背景技術】
【0002】
雑誌などの紙製冊子に付録として添付されるシール等の付録シートは、従来、紙製のものが多かった。しかし、近年は、デザイン性などの観点からこれら付録シートをポリエチレンテレフタレート(PET)シート等のプラスチックシートで形成し、このようなプラスチックシートをカタログや雑誌等の冊子に添付することが多い。
【0003】
一般に、付録シート等の別丁を冊子に添付する手法としては、1)全紙を8枚折りや16枚折りにした状態の製本前の紙面(以下、折丁という)の表面に接着剤で接着し(以下貼り込みという)、この折丁と他の折丁を重ねて綴じる、2)シートを本のページ間に挟んで綴じる、3)シートを折丁と折丁の間に挟んで折丁とともに綴じる、などの手法が採られているが、この中でもシートを折丁の表面に貼り込む1)の手法により製本された冊子は、比較的製本の効率性に優れ、且つ、シートが冊子から外れにくく強固に添付できるものとして知られている。
【0004】
上記プラスチックシートを添付する場合にも同様に、シートを折丁に貼り込んで綴じる1)の手法が採られているので、この手法により作成した冊子の一例を以下に示す。
【0005】
図3は、シートが貼り込まれた折丁に、更に他の折丁を重ねて貼り込んだ、従来のシート付冊子を示し、(a)は、2層の折丁を貼り込んだシート付冊子を示し、(b)は(a)に示すシート付冊子を冊子の背A方向から見た側面図である。
【0006】
シート付冊子21は、図3(a)に示すようにプラスチックシート22が折丁24に接着固定され次層の折丁25と貼り込んで形成されている。
【0007】
具体的には、図3(a)および(b)に示すように、表面全体が滑らかなプラスチックシート22の綴じしろ側の一端に設けられた接着剤塗布領域に、プラスチックシート接着用接着剤23が塗布されていて、折丁24の綴じしろに揃えて接着されている。更に、プラスチックシート22が接着された状態の折丁24と次層の折丁25とが接着剤23とは異なる紙部材接着用の貼り込み用接着剤26で接着されている。
【0008】
この折丁に更に数部の折丁を重ねて、例えば冊子の背をホットメルト系接着剤等で接着製本する(以下この製本方法を無線綴じという)と、プラスチックシート22が冊子21の中程に挟み込み添付された状態になる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述したシート付冊子のようにプラスチックシートの接着にプラスチックシート用の接着剤を用いるようになるまでは、プラスチックシートを折丁に貼り込むための接着剤にも貼り込み用接着剤を用いていた。
【0010】
ところがプラスチックシートを、主として紙同士を接着するための貼り込み用の接着剤で接着した場合、製本後にプラスチックシートが冊子から抜け落ちることがしばしば見受けられた。
【0011】
そこで、シート付冊子21のように、貼り込み用接着剤26とは異なるプラスチックシート接着用の接着剤23でプラスチックシート22を折丁24に接着したことで、プラスチックシート22が冊子21から抜け落ちるという問題点を解消することができた。
【0012】
折丁にシート等の別丁を貼り込んだり、他の折丁を貼り込む工程は、接着剤塗布機構と重合接着機構を備えた一台の貼り込み機によってなされていて、折丁に接着剤を塗布し、他の折丁と重合接着する工程が機械式の流れ作業で行われている。貼り込み機は通常1台で複数の貼り込みを行い、且つ、プラスチックシートの貼り込みは稀である。
【0013】
上記シート付冊子21の構造によれば、この貼り込み工程の中でプラスチックシート22を接着するためには、その都度、接着剤交換を行う必要が生じた。
【0014】
即ち、プラスチックシート貼り込み時には、貼り込み機の糊壺内の接着剤をプラスチックシート接着用の接着剤23に交換し、このプラスチックシート接着用接着剤23でプラスチックシート22を折丁に接着する。
【0015】
また、通常の紙部材同士の貼り込み時には、糊壺を一度空にした後、糊壺に貼り込み用接着剤26を戻す必要があった。
【0016】
このように、製本ラインを一旦停止させて、糊壺内の接着剤を交換することにより、製本にかかる時間が長くなるだけでなく、糊壺の洗浄等接着剤交換に要する労力も多大なものとなった。
【0017】
本願発明の第一目的は、このような従来の問題に鑑みなされたもので、製本後も冊子から抜け落ちることがなく、強い引っ張り負荷に耐えうる程強固に接着可能であるプラスチックシートを提供しようとするものである。
【0018】
本願発明の第二の目的は、製本工程において貼り込み機で使用する接着剤を交換することなく、一の貼り込み工程の中でプラスチックシートを冊子に貼り込み添付することができる製本の効率性に優れたプラスチックシートを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本願発明の第一の構成は、請求項1に記載のように,プラスチックシート本体の片面又は両面の一端側に設けられた接着剤塗布領域を、複数の紙部材を重ねてなる冊子の任意のページ面に貼り付けて綴じ込み製本されるプラスチックシートにおいて、前記接着剤塗布領域の接着剤塗布面を粗面に形成したことを特徴とする。
【0020】
本願発明の第二の構成は、請求項2に記載のように、前記プラスチックシート本体の前記接着剤塗布領域の粗面は、中心線平均粗さパラメータによる表面粗さ(Ra)が0.5μm以上の粗膜を形成するニス剤またはインキ剤により形成したことを特徴とする。
【0021】
本願発明の第三の構成は、請求項3に記載のように、前記プラスチックシート本体の前記接着剤塗布領域の粗面は、中心線平均粗さパラメータによる表面粗さ(Ra)が、0.5μmから0.7μmの粗膜を形成するニス剤またはインキ剤により形成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明によれば、プラスチックシート本体の接着剤塗布面を粗面に形成することで、接着面が滑らかなままの状態に比べて接着面積が増すとともに接着面の摩擦力も増す。よって、紙同士の接着に用いられる貼り込み用の接着剤で接着した場合においてもシートと紙面とを充分強固に接着することができ、製本後も冊子から抜け落ちることがない。
【0023】
また、貼り込み機で使用する接着剤を、その都度、交換することが必要ないので製本の効率性に優れたプラスチックシートを提供することができる。
特に、折丁同士を接着剤で貼り込む製本方法の場合には、シートの接着と折丁同士の接着の双方に貼り込み用の接着剤を用いることができるので、接着剤自体を特別なプラスチックシート専用のものに変更する必要がなく、製本の流れ作業の中で冊子のページ面に添付が可能な製本の効率性に優れたプラスチックシートを提供することができる。
【0024】
請求項2に係る発明によれば、プラスチックシート本体を削って粗面に形成する場合に比べて、比較的簡単に接着剤塗布面を粗面に形成することができる。更に、接着に適正な粗膜を形成することができるので接着剤塗布面積が更に大きく確保できるとともに、紙面との接着面積が充分に確保できるので、より強固に接着可能なプラスチックシートを提供することができる。
【0025】
請求項3に係る発明のように、中心線平均粗さ(Ra)パラメータによる塗布後の表面粗さが0.5μm〜0.7μmとなるニス剤を用いれば、紙部材との接着に最適の粗面を得ることが可能で、最も強固に接着できるプラスチックシートを提供することができる。
【0026】
従って、製本後にプラスチックシートをミシン目部分から切り取る場合のように、強い引っ張り負荷を加えてもプラスチックシートの接着領域部分が冊子から外れることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
本発明の実施の形態を図1および図2に示す。尚、従来例と同じ構成部材には同じ符号を付しその説明を省略する。
【0028】
図1(a)は、本発明の一実施形態を示すプラスチックシートの平面図で、図1(b)は、(a)に示すプラスチックシートの接着剤塗布領域の拡大側面図である。
【0029】
図1(a)に示すプラスチックシート1を構成するプラスチックシート本体2は、本実施の形態において、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂で形成されていて、例えば、絵柄が印刷されたシート、付録シールを備えたシート、付録を内包できる袋状シートに形成されている。
【0030】
このプラスチックシート本体2の紙面に貼り付ける面、例えば、接着剤塗布面の綴じしろ側の一端数mm程度の幅にわたって接着剤塗布領域2aとし、この接着剤塗布領域2aは粗面に形成されている。
【0031】
具体的には、図1(b)に示すように、プラスチックシート本体2に塗着した状態において、粗膜を形成する種類の塗着剤を塗着することにより接着剤塗布面を粗面に形成している。本実施の形態においては、プラスチックシート本体2に塗布乾燥した状態において、粗膜を形成するアクリル酸エステル製のニス剤3が塗布されている。
【0032】
発明者は、塗布後の表面粗さの異なる3種類のニス剤を表面が滑らかなプラスチックシート本体2に塗布した試料1〜3のプラスチックシートを用意し、このプラスチックシート1を貼り込み用接着剤26で折丁24に貼り込み、他の折丁25と貼りこんで製本した状態において、冊子4から抜け落ちる頻度を測り、接着強度を評価した。
【0033】
試料1のプラスチックシートは、中心線平均粗さ(Ra)をパラメータとし、中心線平均粗さ測定器(小坂研究所製表面粗さ測定器)、測定距離2.5mmにて測定した表面粗さ(Ra)が0.617μm、試料2のプラスチックシートは、上記中心線平均粗さ(Ra)が0.688μm、試料3のプラスチックシートは、上記中心線平均粗さ(Ra)が0.499μmである。
【0034】
上記試料1〜試料3にかかるプラスチックシートを冊子4に貼り込んだ状態で、冊子4に添付されたプラスチックシートが、冊子4から全く抜け落ちることがない程度に強固に接着されるものを○で表し、殆ど抜け落ちることはないがときどき抜け落ちる程度に接着されるものを△、しばしば抜け落ちる程度に接着されるものを×で示した(表1)。
【0035】
表1に示すように、試料1のプラスチックシートは、冊子4から全く抜け落ちることがない程度に強固に接着されていた。
【0036】
試料2のプラスチックシートは、多少の抜け落ちはあったが、殆ど抜け落ちることがなく充分使用に耐えうる。
【0037】
尚、試料3のプラスチックシートは、冊子4から抜け落ちる頻度が高かった。
【0038】
従って、中心線平均粗さ(Ra)が0.5μm以上の粗膜を形成するニス剤が好適であり、中心線平均粗さ(Ra)が0.617μm程度の粗膜を形成するニス剤が最適である。
【0039】
【表1】


【0040】
尚、本実施の形態においてプラスチックシート本体2は、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂で形成しているが、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリ塩化ビニル樹脂(PVC)等、PET樹脂以外のプラスチック樹脂で形成してもよく、これらの樹脂の合成樹脂を用いてもよい。
【0041】
更に、粗膜を形成するための塗着剤にはニス剤3を用いているが、ニス剤3と同様の粗膜を形成するインキ剤を塗布してもよい。
【0042】
図2は、図1に示すプラスチックシート1を、プラスチックシート1よりワンサイズ大きいシート付冊子4に、貼り込み用接着剤26により接着した状態をシート付冊子4綴じしろ方向から見た側面図である。
【0043】
プラスチックシート1は、図1に示すニス剤3が塗布されている接着剤塗布領域2aを介して、一般に用いられている紙部材接着用の澱粉糊等の貼り込み用接着剤26で、折丁24の綴じしろに揃えて接着されている。
【0044】
更に、プラスチックシート1が接着された折丁24と次層の折丁25の綴じしろとが貼り込み用接着剤26で接着されている。このように数部の折丁を重合接着することでシート付冊子4が形成され、プラスチックシート1はシート付冊子4の中程に綴じ込み添付された状態になっている。
【0045】
プラスチックシート本体2の接着剤塗布領域には、ニス剤3が塗布されて粗面に形成されているので、紙用の貼り込み用接着剤26で充分強固に折丁24に接着固定することができる。
【0046】
従って、プラスチックシート1を折丁24に接着する場合および折丁同士を接着する場合の双方に貼り込み用接着剤26を用いることができ、糊壺内の接着剤を変更することなく一の工程で貼り込みをすることができる。
【0047】
また、冊子4のページ面に強固に接着することができるプラスチックシート1は、製本後に冊子4から抜け落ちることがないばかりか、ミシン目2bから切り取る場合のように、強い引っ張り負荷を加えた場合でも冊子4から外れることがない。
【0048】
尚、本実施の形態においてプラスチックシート1は折丁24の綴じしろに揃えて接着されているが、接着位置は折丁24の綴じしろに限定されるものではなくページ面のその他任意の位置に貼り込んでもよい。
【0049】
更に、本実施の形態において冊子4は、折丁24、25の一端を接着剤26で接着して、例えば冊子の背をホットメルト系接着剤等で接着製本する無線綴じ用の冊子であるが、製本の方法はこれに限られるものではない。
【0050】
例えば、重ね合わせた紙部材の中央部分をステープルで綴じて、二つ折りにする中綴じや、重ね合わせた紙部材冊子綴じしろをステープルで綴じた平綴じ等のステープルどめや、冊子背面を糸でかがる糸かがり綴じのように、接着剤によらない綴じ方により綴じられた冊子のページ面にプラスチックシート1を貼り込んでもよい。
【0051】
この場合においてもプラスチックシート1は、充分強固に接着されるので冊子から外れることがない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明のプラスチックシートの実施の形態を示し、(a)はプラスチックシート平面図、(b)は(a)に示すプラスチックシートの接着剤塗布領域の拡大図。
【図2】図1に示すプラスチックシートを添付した折丁を丁合いしたシート付冊子の綴じしろ方向から見た側面図。
【図3】従来のシート付冊子を示し(a)はシート付冊子の斜視図、(b)は(a)に示すシート付冊子の綴じしろ方向から見た側面図。
【符号の説明】
【0053】
1 プラスチックシート
2 プラスチックシート本体
2a 接着剤塗布領域
2b ミシン目
3 ニス剤
4 シート付冊子
21 シート付冊子
22 プラスチックシート
23 プラスチックシート用接着剤
24 折丁
25 折丁
26 貼り込み用接着剤
【出願人】 【識別番号】597000593
【氏名又は名称】株式会社 美幸堂
【住所又は居所】東京都豊島区南大塚3−10−10
【出願日】 平成16年3月31日(2004.3.31)
【代理人】 【識別番号】100067541
【弁理士】
【氏名又は名称】岸田 正行

【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文

【識別番号】100103506
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 弘晋

【公開番号】 特開2005−288848(P2005−288848A)
【公開日】 平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願番号】 特願2004−106429(P2004−106429)