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【発明の名称】 版材用樹脂組成物及びそれを用いた高分子印刷版
【発明者】 【氏名】村上 睦明

【氏名】古谷 浩行

【氏名】▲柳▼田 正美

【要約】 【課題】レーザアブレーション法により良好にセルが形成され、耐印刷性に優れ、静電気発生防止、及び表面の親水性・疎水性制御が可能な高分子印刷版及びその版材の原料となる樹脂組成物を提供することである。特に370nm以下の短波長レーザによるセル形成加工に適した高分子材料を提供することである。

【解決手段】樹脂材料に有機塩化合物を添加する事により、樹脂本来の機械的性質を損なう事無く導電性を付与する事ができると同時にその親水性・疎水性を制御できる。また、樹脂材料に色素を添加する事により、370nm以下の波長の紫外レーザ光でアブレーション加工する場合、レーザ光による良好なセルの形成が可能となる。本発明の版材用樹脂組成物はその主成分として重合後ポリイミド樹脂となる有機化合物を含むことが好ましく、特に、フルオレン骨格を有するポリイミド樹脂の場合、レーザ化工型印刷版樹脂として、好適である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機塩化合物を含有する事を特徴とする版材用樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の版材用樹脂組成物であって、さらに、色素を含有してなることを特徴とする版材用樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の版材用樹脂組成物であって、前記版材用樹脂組成物100重量部に対し、前記有機塩化合物及び/又は色素を合わせて0.01〜30重量部含有してなることを特徴とする版材用樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の版材用樹脂組成物であって、ポリイミド樹脂、または重合してポリイミド樹脂となる有機化合物を主成分として含むことを特徴とする版材用樹脂組成物。
【請求項5】
前記ポリイミド樹脂が、250℃以上のガラス転移温度を有するポリイミド樹脂であって、
及び/又は、有機溶媒に可溶なポリイミド樹脂であることを特徴とする、
請求項4に記載の版材用樹脂組成物。
【請求項6】
前記ポリイミド樹脂が、
示差熱分析装置で、窒素中、10℃/分の昇温速度で測定したとき、250℃以上のガラス転移温度を有するポリイミド樹脂であって、
及び/又は、沸点150℃以下のケトン、エーテル、アルコール、アミン、スルフォンアミド系溶媒に室温で24時間以上攪拌放置したときに少なくとも5重量%以上可溶であることを特徴とする、
請求項4または5に記載の版材用樹脂組成物。
【請求項7】
前記の、ポリイミド樹脂、または重合してポリイミド樹脂となる有機化合物が、式(1)〜式(4)の中から選ばれる少なくとも1種
【化1】


のフルオレン骨格を主鎖骨格中に有する、請求項4〜6に記載の版材用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の版材用樹脂組成物であって、前記有機塩化合物を構成するが陰イオンが、SO3-基を有する陰イオン、COO-基を有する陰イオン、含フッ素陰イオン、及びフルオロアルキル硫酸から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする版材用樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の版材用樹脂組成物であって、前記有機塩化合物を構成する陽イオンが、ピリジン系、及び脂環式アミン系、及びアンモニウム塩系から選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする版材用樹脂組成物。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれかに記載の版材用樹脂組成物から形成された版材を有してなることを特徴とする高分子印刷版。
【請求項11】
請求項10に記載の高分子印刷版であって、前記版材の体積抵抗値が103Ω・cm〜1015Ω・cmであることを特徴とする高分子印刷版。
【請求項12】
請求項10または11に記載の高分子印刷版であって、前記版材の引張り弾性率が3GPa以上であることを特徴とする高分子印刷版。
【請求項13】
請求項10〜12のいずれかに記載の高分子印刷版であって、さらに、370nmよりも短い波長のレーザ光を照射することで、前記版材表面に凹部を形成することによりレーザ印刷版としたことを特徴とする高分子印刷版。
【請求項14】
請求項10〜13のいずれかに記載の高分子印刷版であって、前記版材が金属基板上に形成されてなることを特徴とする高分子印刷版。
【請求項15】
請求項14に記載の高分子印刷版であって、ポリイミド樹脂を主成分とするフィルム状の前記版材が接着剤層を介して前記金属基板上に貼り付けられて版材層として形成されてなることを特徴とする高分子印刷版。
【請求項16】
請求項14に記載の高分子印刷版であって、有機溶媒に可溶なポリイミド樹脂を主成分とする前記版材が前記金属基板上に塗布されて版材層として形成されてなることを特徴とする高分子印刷版。
【請求項17】
請求項14に記載の高分子印刷版であって、熱可塑性ポリイミド樹脂を主成分とする前記版材が前記金属基板上に熱融着されて版材層として形成されてなることを特徴とする高分子印刷版。
【請求項18】
前記有機溶媒に可溶なポリイミド樹脂が、250℃以上のガラス転移温度を有するポリイミド樹脂であることを特徴とする、請求項15〜17のいずれかに記載の高分子印刷版。
【請求項19】
前記ポリイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂が、
250℃以上のガラス転移温度を有するポリイミド樹脂であって、
及び/又は、有機溶媒に可溶なポリイミド樹脂であることを特徴とする、
請求項15〜17のいずれかに記載の高分子印刷版。
【請求項20】
前記ポリイミド樹脂、有機溶媒に可溶なポリイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂が、
示差熱分析装置で、窒素中、10℃/分の昇温速度で測定したとき、250℃以上のガラス転移温度を有するポリイミド樹脂であって、
及び/又は、沸点150℃以下のケトン、エーテル、アルコール、アミン、スルフォンアミド系溶媒に室温で24時間以上攪拌放置したときに少なくとも5重量%以上可溶であることを特徴とする、
請求項15〜19のいずれかに記載の高分子印刷版。
【請求項21】
前記ポリイミド樹脂、有機溶媒に可溶なポリイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂が、式(5)〜式(8)の中から選ばれる少なくとも1種
【化2】


のフルオレン骨格を主鎖骨格中に有する、請求項15〜19のいずれかに記載の高分子印刷版。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、グラビア印刷などの凹版印刷に用いられる印刷版に関し、詳しくはレーザアブレーションによる凹部形成に適した直接描写型の高分子印刷版及びその高分子印刷版の版材原料となる版材用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
今日コンピュータの高性能化、インターネットの普及などに伴ない印刷需要が増大し、小ロット、短納期、低コスト印刷版に対する要求が増大している。この様な流れに答えるために、デスクトップパブリッシング(DTP)画像データから直接印刷版を作製する方法が検討されており、直接描写型の印刷版についても低コスト、短納期などの特徴に加えてより高解像度、高品質な印刷版への要求が高まっている。この様な直描型印刷版の例として、フォトポリマーを用いた版(特許文献1)(特許文献2)(特許文献3)、熱化学反応を用いた版(特許文献4)(特許文献5)(特許文献6)、マーキング法を用いた版(特許文献7)(特許文献8)、レーザアブレーションを用いた版が提案されている。しかしながらいずれの方法も一長一短でありまだ多くの課題を抱えている。
【0003】
レーザアブレーションを用いる方法、つまり、アブレーション法としては、通常レーザによって金属を直接アブレーションする事による版の作製が行なわれている。しかし金属材料ではアブレーションによって形成された穴の周りでの金属の盛り上がりや、穴の形成には強いレーザ光を必要とするという問題があり、実際のプロセスではアブレーションの後に盛り上がり部分を切削する事が行われる。しかし、この切削加工は煩雑であるばかりでなく、切削時に削りかすが穴に入り込み印刷の品質を低下させるという課題がある。
【0004】
この様な欠点を克服するために高分子を版材料として用いる事が検討されている。その様な目的の高分子版材の代表的な例はポリエチレンであり、そのインク濡れ性を改善するために、疎水性のポリエチレンに親水性物質を添加する方法が提案されている。(特許文献9)また、レーザ光の吸収効率を高めるために熱可塑性樹脂にカーボンを添加する方法が提案されている。(特許文献10)他の高分子の例としてはシリコーン樹脂を高エネルギーのレーザ光により熱アブレーションする技術が開示されている。これは書き込み前後での現像の必要がないという特徴を持つが、分解物除去のために洗浄工程を必用とする欠点を有している。(特許文献11)また、ベースポリマー上にメラミン系硬化剤およびウレタン系硬化剤の両方を塗布して印刷版シートを作製する方法が開示されている。(特許文献12)しかし、これらの提案にもかかわらず高分子印刷版が具備すべき多くの条件をバランス良く実現できるような材料がない事によって、レーザアブレーション高分子印刷版はまだ実用化には至っていない。
【0005】
一方、高分子のレーザアブレーションはプリント配線板の分野では広範に検討されておりおり、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂はその代表的な高分子材料である。微細な孔形成のためにUVレーザによるポリイミドのアブレーションする技術についての開示がなされている。(特許文献13)(非特許文献1)しかし、プリント配線板の場合とは異なりレーザアブレーション用ポリイミド樹脂印刷版では重合温度が高いという課題、加工性の課題、親水性・疎水性の制御の課題、伝導性制御の課題がある。
【0006】
グラビア印刷ではレーザで窄穴された凹部に印刷インクを充填した後、凹部以外の余分のインクをスキージでかきとる。インク充填の工程では十分にインクが凹部に充填される事、スキージでのかき取り工程ではインクのかき取り残りが無いことが重要で、そのためには版材表面の親水性・疎水性を制御する事が必要である。さらに、この様な工程ではスキージと印刷版の間で静電気が発生し、周辺のごみを引き付け印刷品質を低下させるという問題があった。このため印刷版用樹脂には静電気を逃すための少なくとも半導体程度の伝導性を持つ事が必要である。
【0007】
樹脂に半導体性を付与するための一般的な方法は、絶縁体である合成樹脂に導電性カーボンブラックや金属粉末、金属繊維、炭素繊維などの導電性充填材を配合する方法である。しかしながら、合成樹脂に汎用の導電性充填材を配合した半導電性樹脂組成物は、(1)導電性充填材の充填量の僅かの変化でも体積抵抗率が大幅に変化する、(2)体積抵抗率の分布が均一ではなく場所による体積抵抗率のバラツキが大きい、という問題を抱えていた。
【0008】
このような問題が生じる主たる原因は、合成樹脂に比べて汎用の導電性充填材の体積抵抗率が極めて小さいこと、並びに半導電性の発現が樹脂組成物中での導電性充填材の分散状態に大きく依存していることである。体積抵抗率が大きい合成樹脂中に導電性充填材がバラバラに独立した状態で分散していると、樹脂組成物の体積抵抗率が所望の程度にまで小さくならず、合成樹脂中に導電性充填材の多くが連結状態で分散した時点で体積抵抗率は急激に小さくなる。また、樹脂中に導電性充填材が均一に分散していないと、樹脂組成物の場所による体積抵抗率のバラツキが大きくなる。一方で、導電性充填材は一般に凝集しやすく、導電性充填剤を樹脂中に均一に分散させることは極めて困難であることが知られている。さらには、上記導電性充填材の分散状態は、合成樹脂に対する導電性充填材の種類、形状、充填量、樹脂組成物の成形条件などにも大きく依存しする。それゆえ、105〜1015Ω・cmの体積抵抗率を持つ半導電性樹脂組成物を安定的に再現性よく製造することは、非常に困難であった。
【0009】
上記問題を回避する方法として、樹脂中にLiClなどの無機塩を含有せしめることで抵抗値制御を行う方法が開示されている(特許文献14)。しかしながら、無機塩は一般に水に溶解し易いため、無機塩の添加により抵抗値制御を行ったポリイミド樹脂は、外気湿度の影響によりその抵抗値が大きく変化するという問題があった。
【0010】
さらに導電性充填材を配合する方法によって得られた半導電体樹脂組成物をレーザアブレーションよる印刷版として使用する場合には、アブレーションによって導電性充填材が飛び散り印刷版を汚染するという事も大きな問題であった。
【特許文献1】特開平04−219756号公報
【特許文献2】特開平06−295061号公報
【特許文献3】特開平08−220758号公報
【特許文献4】USP5372907
【特許文献5】特開2002−229212号公報
【特許文献6】特開2003−11316号公報
【特許文献7】特開平09−11655号公報
【特許文献8】特開平09−581144号公報
【特許文献9】特開平05−246165号公報
【特許文献10】特開昭55−41297号公報
【特許文献11】USP5632204
【特許文献12】特開平08−25824号公報
【特許文献13】USP4568632
【特許文献14】特開2001−354782号公報
【非特許文献1】K.Jain et al,”Ultafast Deep UVLithography with Excimer Laser”IEEE Electron Device Letters vol3, EDL−3, No.3, Mar. 1982, pp53−55.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、レーザアブレーション法に適した簡易印刷版用高分子材料およびその製造方法に関する。凹版印刷版用の材料としては、まずレーザによって良好な穴(凹部)が形成可能である事が重要である。凹版印刷であるグラビア印刷に用いられるグラビア版ではこの穴はセルと呼ばれ、画像を形成する1単位となる。高解像度の印刷物を得るためには、画素が20μm〜5μmと小さくする必要があり、そのためには波長が370nm以下である短波長レーザ(UVレーザ)を用いることが適している。本発明の課題はその様な目的に適した高分子材料を提供する事である。
【0012】
印刷版用材料としてはさらに耐印刷性が必要である。耐印刷性とは、すなわち印刷を繰り返したときにスキージによるインクのかき取りで版がこすれ等により摩耗や変形しない耐刷性である。レーザ高分子印刷版の場合、金属版の場合ほどの耐刷性は必要としないが、
それでも少なくとも1000枚程度、望ましくは2000枚以上の耐刷性を有する事が望ましい。従って具体的には、耐刷性のためには機械的強度、弾性率に優れた高分子材料である事が必要となる。また、すでに述べた様に、多様なインクに対応してすぐれたインクの充填性や転写性を実現するために高分子材料表面の親水性や疎水性を制御することが必要である。さらに、スキージとの摩擦で発生する静電気をスムーズに除去するために半導体領域の伝導性を持つ事が望ましい。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、従来用いられてきた導電性カーボンブラックや金属粉末、金属繊維、炭素繊維などの導電性充填材を配合する方法で生じていた充填量精密制御の困難性による版材の導電性の樹脂状態や時間的及び空間的ばらつきを生じる事無く、安定的に半導体領域の伝導性を有すると同時に表面の親水性・疎水性を制御する事が可能な版材用樹脂組成物及びそれを用いた高分子印刷版を提供することである。
【0014】
また、印刷版は通常ローラーの形、あるいは平板の形で形で使用されるのでアルミやステンレス等の金属基板の表面に一定の厚さで版材層を形成する必要がある。すなわち、印刷版用高分子材料としては容易にその様な加工が出来ることが必用である。従って本発明のさらなる課題は、この様な金属基板の表面に一定の厚さで版材層を形成可能な高分子印刷版を提供する事である。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は有機塩化合物を含有する版材用樹脂組成物、及びそれを原料として形成された版材を有する印刷版、つまり有機塩化合物含有高分子印刷版に関する。
有機塩化合物を添加する事により、樹脂本来の機械的な性質を損なう事無く安定的に導電性を版材層に付与する事ができると同時にその親水性・疎水性を制御することができるので、印刷版用樹脂として好ましく用いる事ができる。
【0016】
本発明の版材用樹脂組成物に、さらに、色素を添加すると、高分子印刷版としたときにレーザ光を効率的に吸収できるので、良好なセルを有するレーザ製版となるので好ましい。ここで、本発明に使用される色素は、概念として顔料あるいは染料を含むものである。
【0017】
本発明の高分子印刷版の版材は、その体積抵抗値が103〜1015Ωcmの範囲で制御されてなるものが好ましく、抵抗値をこの様な範囲に調整する事によって前記スキージと印刷版との間での静電気の発生を効果的に抑える事が出来る。
【0018】
また、本発明の高分子印刷版の版材は、その引っ張り弾性率が3GPa以上であると充分な耐印刷性を有するものとなるので好ましい。
【0019】
体積抵抗値を前記範囲とし、また、版材の前記引っ張り弾性率等で評価される機械的特性を充分なものとするためには、前記樹脂組成物100重量部に対し、前記有機塩化合物及び/又は色素を合わせての添加量が0.01〜30重量部である事が好ましい。
【0020】
前記有機塩化合物を構成する陰イオン及び陽イオンが、陰イオンとして、SO3-基を有する陰イオン、COO-基を有する陰イオン、含フッ素陰イオン、及びフルオロアルキル硫酸から、また、陽イオンとして、ピリジン系、及び脂環式アミン系、及びアンモニウム塩系、から、各々選ばれる少なくとも1種以上を含むことが、樹脂組成物中で分子状分散させる事が可能なので好ましい。特に、これらの陰イオン及び陽イオンから構成される有機塩化合物は、ポリイミド樹脂中で良好に分子状分散をさせる事が可能であり、容易に版材の抵抗値を制御する事ができる。
【0021】
また、本発明は、有機塩化合物を含有するとともに、重合してポリイミド樹脂となる有機化合物を主成分として含むことを特徴とする版材用樹脂組成物に関し、またその樹脂組成物を版材とした高分子印刷版に関する。
【0022】
また、本発明は有機塩化合物を含有するポリイミド樹脂組成物を版材とした高分子印刷版に関し、印刷版材料としてポリイミド樹脂を用いる事によりレーザ光による良好な穴(セル)の形成が可能となる。
【0023】
さらに、ポリイミド樹脂に有機塩化合物を添加する事により、ポリイミド樹脂の優れたレーザ加工性や耐熱性、機械的強度、弾性率などの性質を保持したまま、版材としての電気抵抗値を、さらには、その表面性状つまり親水性・疎水性の度合いを制御する事ができる。すなわち、本発明の高分子印刷版の版材を構成する樹脂組成物の主成分がポリイミド樹脂であると、優れた耐熱性、機械的強度及び弾性率の高分子印刷版となり、前記引っ張り弾性率が3GPa以上となるので、耐印刷性への要求を満たすことが出来るので好ましい。
【0024】
本発明の高分子印刷版は、特に、370nmよりも短い波長(370nm以下の波長)のレーザ光(紫外レーザ光)でアブレーション加工した場合でも、良好な穴(凹部)が形成する事ができ、高解像度の印刷ができる。
【0025】
本発明の高分子印刷版は、前記版材を金属基板上に形成したものとして好ましく形成される。
【0026】
版材を金属基板上に形成する方法としては、ポリイミド樹脂を主成分とする前記版材用樹脂組成物を、フィルム状に形成し、接着剤層を介して金属基板、あるいはロール上に貼り付ける方法がある。前記版材用樹脂組成物の主成分が有機溶媒可溶性、または熱可塑性のポリイミド樹脂原料である場合は、金属製ローラー上や平板基板上への版材層の形成・加工を容易に行なう事ができ好ましい。有機溶媒可溶性ポリイミド樹脂である場合にはポリイミド溶液の塗布及び乾燥によって容易に版材層を形成できるのでより好ましい。また、熱可塑性ポリイミド樹脂の場合には金属基板、あるいはロール上に前記版材用樹脂組成物をイミド化した後でも、熱融着や熱圧着することで容易に樹脂層である版材層が形成される。
【0027】
また本発明は、有機塩化合物を含有するとともに、重合してポリイミド樹脂となる有機化合物を主成分として含むことを特徴とする版材用樹脂組成物に関し、またその樹脂組成物を版材とした高分子印刷版に関する。従って、金属性ローラー上や平板基板上へ、ポリイミド前駆体の状態で塗布することも可能である。その場合、ポリイミド前駆体の状態で塗布した後、引き続きイミド化および乾燥させることもできる。
【0028】
いずれの方法で本発明の高分子印刷版を形成した場合でも、金属基板の表面に一定の厚さで版材層を形成できるので好ましい。
【発明の効果】
【0029】
本発明の版材用樹脂組成物を用いて形成された版材を有する高分子印刷版は、グラビア印刷などの凹版印刷の印刷版として、伝導性、及び表面の親水性・疎水性の制御が容易であり、また、耐刷性に優れており好適である。さらに、レーザアブレーション法により良好なセルが形成可能なので、本発明の高分子印刷版をレーザ印刷版として有効に用いることができ、特に370nmよりも短い波長(370nm以下の波長)のレーザ光(紫外レーザ光)でアブレーション加工した場合でも、良好なセルが形成でき、高解像度の印刷ができる。この方法はデスクトップパブリッシング(DTP)画像データから直接印刷版を作製する事ができ、小ロット、短納期、低コスト、高精細の印刷版が欲しいという要求に答える事が出来る。
【0030】
また、このレーザ印刷版は、高分子樹脂を直接加工するため、従来の感光体を用いたレーザグラビア製版方法において実施している現像、銅エッチング、レジスト除去、クロムメッキの工程が不要であり、グラビア製版の高速・低価格生産が実現できる。
【0031】
さらに、本発明の高分子印刷版を金属基板上に版材層を形成したものとする場合、容易に、また、一定の厚さの版材層とすることができ、高品質の高分子印刷版となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
まず、我々はパルスYAGレーザの3倍高調波(355nm)をもちいて種々の高分子材料のセル形成実験を行なった。この様な条件でのセル形成に適当な樹脂としてポリアセタール(ホルマリン−エチレンオキシド共重合体型)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、変性ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリパラフェニレンサルファイド(PPS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリパラフェ二レンテレフタルアミド、ポリイミド、ウレタン、ノボラック型フェノールホリマリン樹脂は好ましく用いる事が出来、ポリイミドとPPSは特に好ましく用いられる。一方、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエステル樹脂、ポリエチレンナフタレートは透明性の樹脂でありレーザ光の吸収効率が低くセル形成には適さないが、色素やカーボンを加えるなどの工夫により穴あけが可能となる。
【0033】
上記の様に、本発明の版材の主成分としてポリイミド樹脂を用いた場合には
飛び散りや燃えカス(スミヤ)のない最も良好なセルを形成できる。通常ポリイミド樹脂は熱硬化型である事が多いが、分子構造により熱可塑型ポリイミド樹脂を得る事が出来る。レーザによるセル形成の観点からは、熱硬化型ポリイミド樹脂であっても熱可塑型ポリイミド樹脂であってもいずれも良好なセルが形成でき、本発明の目的に好ましく用いる事が出来る。
【0034】
本発明を完成させるには、さらに、ポリイミド樹脂のガラス転移温度が、好ましくは250℃以上、さらに好ましくは、300℃以上であることが必須である。これは、レーザ加工時に、照射により分解した樹脂のレーザ穴付近への融着付着が無いためである。
【0035】
印刷版用の樹脂は平板として用いる場合と金属製のロール上に樹脂層つまり版材層を形成して用いる場合とがある。熱硬化型のポリイミド樹脂を主成分とする前記版材を、平板型の版やロール型の版として用いる場合には、予め版材をフィルム状に形成しそれを金属基板である金属平板や金属ロールに接着材で接合して使用する事が好ましい。
【0036】
これに対して熱可塑性ポリイミド樹脂を主成分とする場合には接着材は必ずしも必要ではなく、フィルム状の版材を基板上に加熱圧着させればよい。また、溶媒可溶性ポリイミド樹脂を主成分とする場合には有機溶媒に溶かした状態で基板上に塗布した後乾燥し有機溶媒をとばすことで版材層を形成すればよい。したがって、熱可塑性ポリイミド樹脂や有機溶媒可溶性ポリイミド樹脂は本発明の版材用樹脂組成物重合後の主成分として好ましい。
【0037】
以下に本発明に係るポリイミド樹脂について説明する。
【0038】
本発明のポリイミド樹脂は公知の製造方法により製造可能である。すなわち、原料である1種または2種以上のテトラカルボン酸二無水物成分、及び1種または2種以上のジアミン成分を実質的に等モル使用、有機極性溶媒中で重合してポリアミド酸重合体溶液を得て、このポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸をイミド化する方法である。
【0039】
このイミド化には、熱キュア法及びケミカルキュア法のいずれかを用いる。
【0040】
熱キュア法は、脱水閉環剤等を作用させずに加熱だけでイミド化反応を進行させる方法である。具体的には、ガラス板やステンレスベルトなどの支持体上に流延塗布し、自己支持性を持つ程度反応を進行させた後に支持体より引き剥がし、端部をピン、クリップなどの方法で固定してさらに加熱して完全にイミド化することで得られる。
【0041】
また、ケミカルキュア法は、ポリアミド酸有機溶媒溶液に、無水酢酸等の酸無水物に代表される化学的転化剤(脱水剤)と、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジン等の第三級アミン類等に代表される触媒と、を作用させる方法である。脱水剤としてジシクロヘキシルカルボジイミド等のカルボジイミド化合物を用いることも可能である。無論、ケミカルキュア法に熱キュア法を併用してもよく、イミド化の反応条件は、ポリアミド酸の種類、得られる樹脂の形態、熱キュア法、及び/またはケミカルキュア法の選択等により変動し得る。
【0042】
ポリアミド酸を合成するための好ましい溶媒は、アミド系溶媒すなわちN,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルフォルムアミドが特に好ましく用いられる。
【0043】
ポリアミド酸重合体の製造に用いられるテトラカルボン酸二無水物成分としては公知のテトラカルボン酸二無水物類を使用することができる。具体的には、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、4,4’−ヘキサフルオロイソプロピリデンジフタル酸無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンジフタル酸無水物等の芳香族テトラカルボン酸二無水物、等が例示される。
【0044】
一方、ポリアミド酸重合体の製造に用いられる代表的なジアミン成分としては公知のジアミン類を使用することができる。具体的には、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)プロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス(4−(4−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、ビス(4−(3−アミノフェノキシ)フェニル)スルフォン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4、4’−ジアミノジフェニルスルフォン、3、3’−ジアミノジフェニルスルフォン、9、9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、ビスアミノフェノキシケトン、4、4’−(1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、4、4’−(1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン))ビスアニリン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3、3’−ジメチル−4、4’−ジアミノビフェニル、3、3’−ジメトキシ−4、4’−ジアミノビフェニル、3,3’−ジメチルベンジジン、3,3’−ジヒドロキシベンジジン等の芳香族ジアミン、あるいはその他の脂肪族ジアミンが例示される。
【0045】
ここに記載したテトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分の組み合わせは、本発明の版材の主成分であるポリイミド樹脂を得るための一具体例を示すものである。これらの組み合わせに限らず用いるテトラカルボン酸二無水物成分、及びジアミン成分の組み合わせおよび使用比率を変えて、本発明の版材用樹脂組成物の主成分としてポリイミド樹脂原料を調整することが可能である。
【0046】
なお、本発明の、重合してポリイミド樹脂となる有機化合物とは、上記のとおりポリイミド樹脂を得るための一具体例として示された、ポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミド酸重合体の製造に用いられる、
上記に記載したテトラカルボン酸二無水物成分の中から選択される少なくとも1種以上を含む化合物および、
上記に記載したジアミン成分の中から選択される少なくとも1種以上を含む化合物である。ただし、これらの具体例の組み合わせに限らず、用いるテトラカルボン酸二無水物成分、及びジアミン成分の組み合わせおよび使用比率を変えて、本発明の版材用樹脂組成物の主成分として、重合してポリイミド樹脂となる有機化合物を選んで、版材用樹脂組成物を調整することが可能である。
【0047】
次に熱可塑性ポリイミド樹脂、あるいは有機溶媒可溶性ポリイミド樹脂について説明する。ここでいう熱可塑性ポリイミドは、非熱可塑性ポリイミドとは異なり、ガラス転移温度を有する樹脂のことである。
【0048】
本発明の版材用樹脂組成物から重合により得られるポリイミド樹脂、熱可塑性ポリイミド樹脂あるいは有機溶媒可溶性のポリイミド樹脂の例としては、下記式(9)
【0049】
【化3】


(式中、A、Bはそれぞれ4価の有機基、X、Yはそれぞれ2価の有機基を示す)、で表されるポリアミド酸を脱水閉環して得られるポリイミドが好ましく、
式(9)中のA、Bが下記群(1)に示す4価の有機基から選択される一種類または二種類以上であることがより好ましく、
【0050】
【化4】


また、前記式(9)中のX、Yは下記群(2)に示す2価の有機基群から選択される一種または二種以上であることがより好ましい。
【0051】
【化5】


本発明の版材用樹脂組成物から重合により得られる熱可塑性ポリイミド樹脂あるいは有機溶媒可溶性のポリイミド樹脂としては、これら酸二無水物とジアミンの組み合わせの中で、上記の群(1)に挙げた酸二無水物残基を与える酸二無水物から選ばれた少なくとも一種の酸二無水物と、上記の群(2)に挙げたジアミン残基を与えるジアミンから選ばれた少なくとも一種のジアミンの組み合わせから得られるものが好ましい。
【0052】
またその中でも酸二無水物として2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、オキシジフタル酸無水物、α−オキシジフタル酸無水物、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、4,4’−(4,4’−イソプロピリデンジフェノキシ)ビス(無水フタル酸)、またジアミンとして1,3−ジアミノベンゼン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4−ビス(4−アミノフェノキ シ)ベンゼン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、等は、工業的に入手可能であり、また得られるポリイミド樹脂は吸水率が低く、優れた弾性率を有するため本発明の目的には特に好ましく使用できる。
【0053】
ポリイミド樹脂は一般的に溶媒不溶であることが認知されておりその改良は大きな技術課題である。そこでフレキシブルで柔軟な化学構造を導入すれば溶媒可溶性を実現出来る知見が知られるようになってきたが、これに伴い耐熱性を損なうという特性上のトレードオフの関係(どちらかを良くしようとすると、片方が悪くなるという、相反する関係)となることも一方で知られている。
【0054】
特に、本発明において、一つの実施形態であるレーザ加工型印刷版に関し、グラビア版用途においては、グラビア版用ロールに樹脂を塗布加工出来ることが一つの最良の形態である為高い溶媒可溶性が望まれ、かつ、レーザ加工時の熱量で変形しないだけの耐熱性が要望されている。
【0055】
しかしながら、上述のように相反する技術要望である為、その両立は困難が予測された。
【0056】
そこで種々検討の結果、フルオレン構造がその有機溶媒可溶性と耐熱性の特性を良好に両立することを発見し、一つの実施形態において、本発明を完成させたものである。発現機構については学術的詳細研究がさらに必要ではあるが、フルオレン残基のネジレ構造が可溶性に、かつ、多環ベンゼン構造が耐熱性に、それぞれ寄与していることが推定出来る。
【0057】
本発明におけるポリイミドを主成分とする版材層である印刷版層の厚みは5μm〜125μmが好ましく、より好ましい範囲は10〜50μmである。引張り弾性率は3GPa以上、好ましくは4GPa以上、より好ましくは5GPa以上である。吸水率は2%以下、好ましくは1.5%以下、より好ましくは1%以下のものが好適である。なお、本発明に係る弾性率(引っ張り弾性率)の測定は、ASTM D882法で実施できる。
【0058】
ポリイミド系樹脂は強度があり、耐摩耗性も強いため、ポリイミド樹脂を主成分とする版材層の表面をそのまま版面として使用してもドクターブレードとの摺接に十分耐えられ、また、小ロット印刷に適用できる印刷版となる。弾性率は高分子印刷版の耐刷性を決定する最も大切な物性であり、一般にポリイミド樹脂は高い弾性率を有しているのでのこの様な観点からもポリイミド樹脂は好ましく用いられる。
【0059】
本発明に使用される色素は、概念として顔料あるいは染料を含むもので、レーザ光を効率的に吸収する為に添加出来るものであれば、何ら制限を有さない。たとえば、アゾ系、縮合多環系、あるいは、フタロシアニン系と分類されている顔料などを、さらには、染料系の色素、などが例示出来る。本発明において、色素として有機溶媒に可溶なものを用いた場合、色素は有機溶媒中そして樹脂中に分子分散せしめることが容易となり、レーザ光の吸収効率の樹脂中でのバラツキが抑制される。また、色素は一般に水に不溶であるため、色素を含有する例えばポリイミド樹脂は、外気湿度の影響等による変動が極めて小さい利点を有する。
【0060】
次に本発明に係る高分子印刷版の版材、特には、ポリイミド樹脂を主成分とする版材に半導電性を付与し、同時にその版材表面に疎水性・親水性も付与する技術について説明する。
【0061】
すでに述べた様に、印刷版用の樹脂が半導電性を必要とする理由は、グラビア印刷において余分な印刷インクをスキージでかきとる場合に発生する静電気をおさえるためである。静電気の発生は回りのごみを吸着して印刷品質を低下させるばかりでなく、印刷インクの紙やプラスチックなどへのスムーズな転写をさまたげる原因にもなる。
【0062】
本発明においては、版材に導電性を付与するために有機塩化合物を添加した版材用樹脂組成物を原料として版材を形成する方法を用いる。
【0063】
有機塩化合物とは、それを構成する陽イオンもしくは陰イオンの少なくとも何れか一方が、有機イオンであることを特徴とする塩である。有機塩化合物は一般に高いイオン導電性を持つため、それを樹脂中に含有せしめることで、半導体領域での抵抗値制御が可能となる。有機塩化合物の多くが、有機溶媒に可溶であることから、有機塩化合物は有機溶媒中そして樹脂中に
分子分散せしめることが容易であり、有機塩化合物を添加することで半導電性を付与した樹脂では抵抗値の時間的・空間的バラツキが抑制される。また、有機塩化合物は一般に水に不溶であるため、有機塩化合物を含有するポリイミド樹脂は、外気湿度によるその抵抗値の変動が極めて小さいという利点をさらに有する。
【0064】
本発明に係る有機塩化合物は、(非特許文献2)大野弘幸監修、「イオン性液体」シーエムシー出版(2003年)に示されるような、当業者の一般的な専門知識に照らして認知され得るものであれば、いかなるものも採用可能であるが、例えば、本発明に係る有機塩化合物は、それを形成する陰イオンの少なくとも一部がp−CH364SO3-、C65SO3-などの、SO3-基を有するスルホン酸系陰イオンであること、あるいはCOO-基を有する陰イオン、含フッ素陰イオン、フルオロアルキル硫酸、である事が好ましい。
【0065】
有機塩化合物を形成する陰イオンとしては、BF4-、PF6-、(CF3SO22-、CF3COO-等のフッ素系や、Cl-、Br-等の非フッ素ハロゲン系などが知られている。これらの陰イオンに比べて、SO3-基を有する陰イオン、あるいはCOO-基を有する陰イオンから形成される有機塩化合物は、樹脂との相容性が極めて高く、また、樹脂への導電性付与能力も極めて高いので、抵抗値の厳密な制御、すぐれた抵抗値再現性を実現できる。
【0066】
フッ素系陰イオンを有する有機塩化合物は樹脂との相容性が低いことから、それを添加した樹脂は、その抵抗値の場所によるバラツキが大きいという問題がある。しかしながら、フッ素系陰イオンは樹脂表面の疎水性を制御するには最適の有機塩化合物であり、SO3-基を有する陰イオンあるいはCOO-基を有する陰イオンとの併用をすることで導電性と表面の疎水性を制御できる。
【0067】
SO3-基を有する陰イオンとしては、具体的にはベンゼンスルフォン酸、トルエンスルフォン酸、アルキルベンゼンスルホン酸、ナフタレンスルフォン酸、アルキルナフタレンスルフォン酸、アントラキノンスルホン酸、ポリビニルスルホン酸、メタスルフォン酸、アルキルスルホン酸などを例示することができる。中でも、ベンゼンスルフォン酸、パラトルエンスルフォン酸が、高い導電性付与能力を有する有機塩化合物を与えることから、本目的により好ましく用いられる。
【0068】
一方、COO-基を有する陰イオンとしてはRCOO--OOCRCOOH、-OOCRCOO-、NH2CHRCOO-を例示する事ができる。具体的にはギ酸、酢酸、マレイン酸、アジピン酸、シュウ酸、フタル酸、コハク酸、アミノ酸などを用いて有機塩化合物を合成する事が有効である。
【0069】
また、フッ素化アルキル硫酸アンモニウムを出発原料として、対応するカチオン成分を有するハロゲン化合物から直接合成することでフルオロアルキル硫酸をアニオンとする有機塩化合物が得られる。
【0070】
本発明に係る有機塩化合物は、また、同一分子内に陽イオンと陰イオンの両方を固定した双イオン型の有機塩化合物さらには、側鎖に陽イオン部位及び/または陰イオン部位を有する有機塩高分子であってもよい。
【0071】
有機塩化合物を形成する陽イオンとして、具体的には、メチルピリジニウム、ブチルピリジニウムなどのピリジン系、エチルメチルイミダゾリウム、プロピルメチルイミダゾリウム、メチルピラゾリウムなどの脂環式アミン系、ヘキシルトリメチルアンモニウムなどの脂肪族アミン系等を例示できる。
【0072】
中でも有機塩化合物の熱安定性、導電性、ポリイミド樹脂との相容性を考慮すると、有機塩化合物を形成する陽イオンは、ピリジン系、脂環式アミン系から選ばれる少なくとも1種以上を含むことが好ましい。ここでいうピリジン系とは、分子構造内にピリジン誘導体を持つものを指し、具体的には、例えば、メチルピリジニウム、ブチルピリジニウムが挙げられる。
【0073】
また、脂環式アミン系とは、分子構造内にイミダゾール誘導体若しくはピラゾール誘導体を持つものを指し、例えば、エチルメチルイミダゾリウム、ジメチルイミダゾリウム、メチルピラゾリウムが挙げられる。
【0074】
また、アンモニウム塩系とは、分子構造内にアンモニウム塩の構造を持つものを指し、具体的には、例えば、テトラメチルアンモニウム、ジメチルエチルベンジルアンモニウム、アニリニウム、ジメチルアンモニウム、等が挙げられる。
【0075】
有機塩化合物の具体例としては、例えば、エチルメチルイミダゾリウム・p−CH364SO3-塩、ブチルメチルイミダゾリウム・C65SO3-塩等が挙げられる。
【0076】
版材用樹脂組成物に含有せしめる有機塩化合物及び、または、色素の量が少ない場合、その効果を十分に発揮できないことがあり、逆に多すぎる場合は、版材用樹脂組成物から重合を通して得られる版材が本来有する機械的・力学的特性を低下せしめることがある。従って、版材用樹脂組成物100重量部に対し有機塩化合物及び/又は色素を合わせて0.01〜30重量部含有されている事が好ましく、より好ましくは0.1〜20重量部含有されている事である。
【0077】
本発明に係る版材は、版材層とした後の体積抵抗率が少なくとも半導体領域にあることが重要であり、好ましい体積抵抗率の範囲は103Ω・cmから1015Ω・cmである。静電気除去の目的には103Ω・cm以下の抵抗率は必要でなく、また1015Ω・cm以上の体積抵抗率では静電気除去の目的を達成できない。なお、本発明に係る体積抵抗率は、JIS K6911に準拠して測定できる。
【0078】
本発明の版材用樹脂組成物は、有機塩化合物以外にも、機械的物性、硬度調整、すべり性の改良、などの目的に応じて、各種充填材を配合して含むことができる。こうした充填材としては、例えば、カーボンやグラファイト、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ABS樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル、ポリウレタン、ポリジメチルシロキサン、ポリ酢酸ビニル、ポリスチレン、ポリアクリル酸メチルなどの高融点有機質繊維状物質などの繊維状、粒状(粉末状や板状を含む)充填剤を挙げることができる。これらの充填材は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの充填材は樹脂組成物中、0〜50質量%、好ましくは0〜30質量%の割合で使用される。
【0079】
グラビア印刷には油性のインクや水生のインクなど多様なインクが用いられる。従ってインクの性質に合わせて樹脂の親水性・疎水性を制御する必要がある。すでに述べた様に、この様な親水性、疎水性の制御は本発明において用いられる有機塩化合物及び/又は色素の種類を選択する事により実現できる。
【0080】
油性インク使用のグラビア印刷を行うためのグラビア版を形成する場合には、ポリイミド樹脂を主成分とする版材の表面が撥油性を有するように版材を形成し、レーザ光を版材層上の画線部に照射しつつ走査して、その版材層部分を掘り込むことが好ましく、又、水性インク使用に適したグラビア版を形成する場合には、ポリイミド樹脂を主成分とする版材の表面が疎水性を有するように版材を形成し、レーザ光を版材層上の画線部に照射しつつ走査して、その版材層部分を掘り込むことが好ましい。
【0081】
本発明の高分子印刷版は、特に370nm以下の波長の紫外レーザ光でのアブレーション加工に適している。C−C結合、C−O結合、C−N結合などの結合はこの様な波長によって乖離するため、例えば波長355nmの紫外レーザ光によってほぼレーザビームの形状に相当するセルが残存物(スミヤ)なく穿孔される。セルの直径はレーザビームの形状でほぼ定まり、通常20μm程度の直径のセルが形成され、特に紫外レーザ光源を用いることによって2〜3μm程度と高解像度に適した小さい直径のセルの単独加工も本発明の高分子印刷版では可能となる。これらのセルを連続させて穿孔することによって更に大きいセル加工や線加工が可能であることは言うまでもない。この穴の深さは照射する紫外レーザの照射パルス回数にほぼ比例し、その比例定数はパルスエネルギーに依存する。
【0082】
紫外レーザ光源としてはクリプトンやアルゴンイオンレーザの360nm波長域のレーザや更に波長の短いYAGレーザの4倍波高調波レーザ(266nm)を利用することが可能である。
【0083】
レーザ印刷版の製造装置概念図を図1に示す。図1に示すレーザ印刷版製造装置を用い、版材上にレーザ照射装置からレーザビームを照射することでセルを形成し、形成したセルを電子顕微鏡で観察して印刷版としての出来、不出来を評価した。さらに出来上がった版をもちいて繰り返し印刷を行い耐刷性を評価した。
【0084】
図1において、1は紫外レーザ光源でYAGレーザの3倍高調波である355nmの波長を有する紫外レーザ光を出射する。評価装置の場合、1パルスは100nJ、繰り返し周波数は80MHzである。2は該紫外レーザを所定のビーム形状に成形するビーム成形照射部である。また、3は製版情報を光源1やビーム成形照射部2や版胴5に関与する制御部、4は金属ロール5表面に装着されたポリイミド系の版材4である。ビーム成形照射部では入射したレーザ光は開口成形部で細く集束され音響光学型の光変調部に入射する。この光変調部は10MHz程度で光強度変調が可能であり、製版情報を付与された制御部3からの変調信号によって回折光の強度変調ができる。光変調部を出射した回折光は強度変調されたパルス光となって投影光学部に入射し、ここで縮小投影レンズ系により版材面上で所定のビーム径になるように成形される。
【実施例】
【0085】
次に、本発明に係る版材用樹脂組成物及び高分子印刷版につき実施例により詳しく説明する。
【0086】
(実施例1)
攪拌翼がついた容器に、モレキュラーシーブにて十分に脱水したジメチルホルムアミド(DMF)を1500g入れ、4、4′−ジアミノジフェニルエーテル200gを加え、完全に溶解するまで攪拌した。この系を0℃に冷却し、ピロメリット酸二無水物218gを徐々に加え、よく攪拌した。系の粘度が約3×102Pa・sになったところで攪拌を停止し、ポリアミック酸溶液を得た。0
次に、ピリジン系陽イオンであるエチルメチルピリジニウムと、p−CH364SO3-から形成される有機塩化合物5gと色素である山陽色素株式会社製のシアニンブルーKROS1.4gを、ビーカーに採取した。このビーカー中に、上記で得られたポリアミック酸溶液300gを溶かし入れた。このようにして、硬化後のポリイミド樹脂100重量部に対して有機塩化合物と色素との混合物を約10重量部含有する、樹脂組成物を調製した。更に、上記溶液に、触媒であるイソキノリンを20g、脱水剤である無水酢酸を32g混練した。
【0087】
上記で得られた有機塩化合物、色素、触媒及び脱水剤を含有する樹脂組成物を、外径200mm、長さ1000mmのロール上塗布し、次いで該塗布膜を100℃から380℃まで、約30分かけて昇温した。最後に系を室温まで冷却しポリイミド印刷版を得た。ポリイミド樹脂層の厚さは30μmである。
【0088】
得られた高分子印刷版の版材と同様にして、同じ厚さのポリイミド成形体を別途形成し、その体積抵抗率測定、及び引っ張り弾性率測定を行った。ポリイミド成形体はアルミニウム箔上に上記樹脂組成物を塗布、熱処理後アルミニウム箔をエッチングにより除去することによって作製した。また、図1の1〜3よりなるレーザ照射装置による版材面への凹部形成とその観察、モデル実験による耐刷性評価を行った。
【0089】
体積抵抗率測定は、以下の手順で行った。得られたポリイミド成形体から、10cm×10cm×30μmの試験片を切り出し、当該試験片の体積抵抗率を、アドバンテスト社製抵抗測定装置R8302を用いて測定した。その結果、体積抵抗率は6×109Ω・cmであった。また、引っ張り弾性率は4.2GPaであった。
【0090】
レーザで穿孔された版材上のセルの電子顕微鏡を行なった結果、3ショットの照射でセルの版材表面の上部の直径が10μm、その深さが8μmのセルが形成されていた。セルの版材断面の形状はガウス分布に近い形であり、セルの周りの版材表面上には分解物やスミヤは全くなかった。
【0091】
得られた高分子印刷版を用いて実際に印刷を行いその耐刷実験を行なった。用いたインクは水性インクである。スキージとの摩擦による静電気の発生はなく、周囲のごみが引き付けられる現象は観察されなかった。1000回の印刷を行なったが、凹部の形状はほとんど変化しておらず、良好な耐刷性を持つ事が分かった。
【0092】
(実施例2)
実施例1と同様の手段でポリアミック酸溶液を作成した。
【0093】
次に、ピリジン系陽イオンであるブチルメチルピリジニウムと、CH3SO3-とから形成されるSolvent Innovation社製の有機塩化合物5gと色素である日本化薬株式会社製のKayafect Red G 1.4gとを、ビーカーに採取した。このビーカー中に、上記で得られたポリアミック酸溶液300gを溶かし入れた。このようにして、硬化後のポリイミド樹脂100重量部に対して有機塩化合物と色素との混合物を約10重量部含有する樹脂組成物を調製した。
【0094】
上述の手段で得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の手順でポリイミド成形体を作成した。得られたポリイミド成形体に対し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、体積抵抗率は5×108Ω・cm、引っ張り弾性率は5GPaであった。
【0095】
レーザで穿孔された版材上のセルの電子顕微鏡を行なった結果、3ショットの照射で上部の直径が10μm、深さおよそ8μmのセルが形成されていた。セルの周りには分解物やスミヤは全くなかった。得られた版を用いて実際に印刷を行いその耐刷実験を行なった。用いたインクは水性インクである。スキージとの摩擦による静電気の発生はなく、周囲のごみが引き付けられる現象は観察されなかった。1000回の印刷を行なったが、セルの形状はほとんど変化しておらず、良好な耐刷性を持つ事が分かった。
【0096】
(実施例3)
触媒及び脱水剤を含まないことを除いて、実施例1と同様の手順で得られた樹脂組成物を、径200mm、長さ1000mmのアルミロール表面に均一に塗布し、回転させながら100℃の熱風に40分間晒すことで溶媒を揮散させた。次いで、100℃から380℃まで、約30分間かけて昇温し、最後に系を室温まで冷却し、ポリイミドを主成分とする版材層を形成した。実施例1と同様にして得られたポリイミド成形体に対し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、体積抵抗率は9×107Ω・cm、引っ張り弾性率は4.3GPaであった。実施例2と同様のレーザ加工性、耐刷性を示した。
【0097】
(実施例4)
実施例1の方法に従いイソキノリンと無水酢酸を混練して得られた樹脂組成物を、焼成後のフィルム厚が30μmになるように、アルミロール上にバーコーターを用いて均一に塗布し、10分間230℃の雰囲気中に静置した。次いで、100℃から380℃まで、約30分かけて昇温し、最後に系を室温まで冷却し、目的のポリイミド印刷版を得た。
【0098】
得られたポリイミド印刷版に対し、実施例1と同様の評価を行った。体積抵抗率は6×109Ω・cm、引っ張り弾性率は5.2GPaであった。実施例1と同様のレーザ加工性、耐刷性を示した。
(実施例5)
実施例1と同様の手段でポリアミック酸溶液を作成した。
【0099】
次に、ピリジン系陽イオンであるエチルメチルピリジニウムと、PF6-から形成されるSolvent Innovation社製の有機塩化合物5gと色素である東亜化成株式会社製のTOA Scarlet 4BS1.4gとを、ビーカーに採取した。このビーカー中に、上記で得られたポリアミック酸溶液300gを溶かし入れた。このようにして、硬化後のポリイミド樹脂100重量部に対して有機塩化合物と色素との混合物を約10重量部含有する、樹脂組成物を調製した。上述の手段で得られた樹脂組成物を用いて、実施例1と同様の手順でポリイミド印刷版を作成した。
【0100】
得られたポリイミド成形体に対し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、体積抵抗率は8×1011Ω・cmであり、表面は疎水性となった。評価の結果、実施例1と同様のレーザ加工性、耐刷性を示した。
【0101】
(実施例6)
攪拌翼がついた容器に、モレキュラーシーブにて十分に脱水したジメチルホルムアミド(DMF)を1500g入れ、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン320gを加え、完全に溶解するまで攪拌した。この系を0℃に冷却し、ピロメリット酸二無水物218gを徐々に加え、よく攪拌した。系の粘度が約3×102Pa・sになったところで攪拌を停止し、ポリアミック酸溶液を得た。
【0102】
次に、ピリジン系陽イオンであるエチルメチルピリジニウムと、p−CH364SO3-とから形成される有機塩化合物を、ビーカーに6.4g採取した。当該有機塩化合物は、Solvent Innovation社製のものである。このビーカー中に、上記で得られたポリアミック酸溶液300gを溶かし入れた。このようにして、硬化後のポリイミド樹脂100重量部に対して有機塩化合物を約10重量部含有する、樹脂組成物を調製した。更に、上記溶液に、触媒であるイソキノリンを20g、脱水剤である無水酢酸を32g混練した。
【0103】
上記で得られた有機塩化合物、触媒及び脱水剤を含有する樹脂組成物を、外径200mm、長さ1000mmのロール上塗布し、次いで該塗布膜を100℃から380℃まで、約30分かけて昇温した。最後に系を室温まで冷却しポリイミド印刷版を得た。ポリイミド樹脂層の厚さは30μmである。
【0104】
得られた高分子印刷版の版材と同様にして、同じ厚さのポリイミドフィルムを別途形成し、その体積抵抗率測定、及び引っ張り弾性率測定を行った。ポリイミドフィルムはアルミニウム箔上に上記樹脂組成物を塗布、熱処理後アルミニウム箔をエッチングにより除去することによって作製した。また、図1の1〜3よりなるレーザ照射装置による版材面への凹部形成とその観察、モデル実験による耐刷性評価を行った。
【0105】
体積抵抗率測定は、以下の手順で行った。得られたポリイミド成形体から、10cm×10cm×30μmの試験片を切り出し、当該試験片の体積抵抗率を、アドバンテスト社製抵抗測定装置R8302を用いて測定した。その結果、体積抵抗率は6×109Ω・cmであった。また、引っ張り弾性率は4.2GPaであった。
【0106】
レーザで穿孔された版材上のセルの電子顕微鏡を行なった結果、3ショットの照射でセルの版材表面の上部の直径が10μm、その深さが8μmのセルが形成されていた。セルの版材断面の形状はガウス分布に近い形であり、セルの周りの版材表面上には分解物やスミヤは全くなかった。
【0107】
得られた高分子印刷版を用いて実際に印刷を行いその耐刷実験を行なった。用いたインクは水性インクである。スキージとの摩擦による静電気の発生はなく、周囲のごみが引き付けられる現象は観察されなかった。1000回の印刷を行なったが、凹部の形状はほとんど変化しておらず、良好な耐刷性を持つ事が分かった。
【0108】
(実施例7)
ピロメリット酸二無水物を9,9−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)フルオレン酸ニ無水物438gに代えた以外実施例6と同様にして、体積抵抗率は4×1010Ω・cmであった。また、引っ張り弾性率は6.2GPaのポリイミドを得た。
【0109】
実施例6の実験と同様にして、セルの周りの版材表面上には分解物やスミヤは全くなく、1000回印刷テストでも良好な耐刷性を持つ事が分かった。
【0110】
(実施例8)
ピロメリット酸二無水物をα―オキシジフタル酸無水物315gに代えた以外は実施例6と同様にして、体積抵抗率は1.4×1010Ω・cmであった。また、引っ張り弾性率は4.0GPaのポリイミドを得た。
【0111】
実施例6の実験と同様にして、セルの周りの版材表面上には分解物やスミヤは全くなく、1000回印刷テストでも良好な耐刷性を持つ事が分かった。
【0112】
(比較例1)
有機塩化合物及び色素を添加しないこと以外実施例1と同様の手段でポリアミック酸溶液を作成し、有機塩化合物及び色素を含まないポリイミド樹脂を合成した。実施例1と同様の方法でアルミロールに塗布し、印刷版を作製した。得られたポリイミド印刷版に対し実施例1と同様の評価を行った。その結果、体積抵抗率は1×1016Ω・cm以上であり、引っ張り弾性率は5.1MPaであった。
【0113】
評価の結果、実施例1と同様のレーザ加工性を示したが、印刷中に静電気の発生に起因すると思われる周辺ダストの吸着、インクの紙への転写不良が発生し印刷物の品質が低下した。また、穴は扁平な形をしていた。
【0114】
(比較例2)
ライオン社製カーボンブラックEC−600JD10gとDMF600gとを容器に入れよく攪拌し、さらに超音波分散機にかけることで分散液中のカーボンブラックを均一に分散させた。
【0115】
上記で得られたカーボンブラック分散液を、ビーカーに598g採取した。このビーカー中に、有機塩化合物を添加しないこと以外は実施例1と同様の手順で得られたポリアミック酸溶液300gを溶かし入れた。このようにして、硬化後のポリイミド樹脂100重量部に対してカーボンブラックを約15重量部含有する、樹脂組成物を調製した。更に、上記樹脂組成物に、触媒であるイソキノリンを20g、脱水剤である無水酢酸を32g混練し、実施例1と同様の手順でポリイミド印刷版を調製した。
【0116】
得られたポリイミド印刷版に対し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、体積抵抗率は3.4×1010Ω・cm、引っ張り強度は2.5MPaであった。しかし、レーザ加工性においてはレーザで穿孔された凹部の電子顕微鏡を行なった結果、穴の周辺に大量のスミヤが付着していた。また、耐刷性評価において1000回の印刷の後、表面の磨耗が顕著であった。
【0117】
(比較例3)
無機塩化合物LiCl10gとDMF90gとを容器に入れよく攪拌した。次いで、上記LiCl溶液19gを、ビーカー中に採取した。このビーカー中に、有機塩化合物を添加しないこと以外は実施例1と同様の手順で得られたポリアミック酸溶液300gを溶かし入れた。このようにして、硬化後のポリイミド樹脂100重量部に対して無機塩化合物を約3重量部含有する樹脂組成物を調製し、実施例1と同様の手順でポリイミド印刷版を調製した。
【0118】
得られたポリイミド成形体に対し、実施例1と同様の評価を行った。その結果、体積抵抗率は4×109Ω・cmであった。しかし、この印刷版は水性インクに対する耐性に劣り、繰り返し印刷中に版材表面がインクに溶解することに起因する著しい磨耗が発生した。
【0119】
以上、本発明に係る樹脂組成物について説明したが、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。
【0120】
以上、本発明に係る樹脂組成物について説明したが、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、記述した範囲内で種々の変形を加えた態様で実施できるものである。
【0121】
(比較例4)
有機塩化合物を添加しないこと以外は実施例6と同様の手段でポリアミック酸溶液を作成し、有機塩化合物を含まないポリイミド樹脂を合成した。実施例6と同様の方法でアルミロールに塗布し、印刷版を作製した。得られたポリイミド印刷版に対し実施例6と同様の評価を行った。その結果、体積抵抗率は1×1016Ω・cm以上であり、引っ張り弾性率は5.1MPaであった。
【0122】
評価の結果、実施例6と同様のレーザ加工性を示したが、印刷中に静電気の発生に起因すると思われる周辺ダストの吸着、インクの紙への転写不良が発生し印刷物の品質が低下した。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【図1】レーザ印刷版製造装置の概念図
【符号の説明】
【0124】
1 紫外レーザ光源
2 ビーム成形照射部
3 版材情報を光源やビーム成形照射部に供与する照射部
4 高分子版材
5 金属ロール
【出願人】 【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
【出願日】 平成16年6月16日(2004.6.16)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−289034(P2005−289034A)
【公開日】 平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願番号】 特願2004−178262(P2004−178262)