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【発明の名称】 光学的情報記録媒体とその製造方法、記録方法及び記録装置
【発明者】 【氏名】北浦 英樹
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器産業株式会社内

【氏名】山田 昇
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器産業株式会社内

【氏名】児島 理恵
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地 松下電器産業株式会社内

【要約】 【課題】広い線速度範囲において良好な記録再生特性が得られる記録媒体とその製造方法、記録方法及び記録装置を提供する。

【解決手段】透明基板上に少なくとも記録層を有する光学的情報記録媒体において、前記記録層が、前記透明基板に近い側から順に、少なくとも第1相変化膜及び第2相変化膜からなり、前記第1相変化膜及び前記第2相変化膜がいずれも、10原子%以上50原子%以下のGe及び45原子%以上60原子%以下のTeを含み、さらにいずれか一方のみがBiを含むか、または両方がBiを含んでその含有割合が異なることを特徴とする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に少なくとも記録層を有する光学的情報記録媒体であって、
前記記録層が、前記透明基板に近い側から順に、少なくとも第1相変化膜及び第2相変化膜からなり、
前記第1相変化膜及び前記第2相変化膜がいずれも、10原子%以上50原子%以下のGe及び45原子%以上60原子%以下のTeを含み、
さらに前記相変化膜のいずれか一方のみ、または両方がBiを含むことを特徴とする、光学的情報記録媒体。
【請求項2】
透明基板上に少なくとも記録層を有する光学的情報記録媒体であって、
前記透明基板上に、前記透明基板に近い側から順に、少なくとも第1情報層、分離層、第2情報層を有し、
前記第1情報層と前記第2情報層の少なくともいずれか一方が、少なくとも記録層を有し、
前記記録層が、前記透明基板に近い側から順に、少なくとも第1相変化膜及び第2相変化膜からなり、
前記第1相変化膜及び前記第2相変化膜がいずれも、10原子%以上50原子%以下のGe及び45原子%以上60原子%以下のTeを含み、
さらに前記相変化膜のいずれか一方のみ、または両方がBiを含むことを特徴とする、光学的情報記録媒体。
【請求項3】
前記第1相変化膜と前記第2相変化膜のBi含有割合の差が2原子%以上であることを特徴とする、請求項1または2に記載の光学的情報記録媒体。
【請求項4】
前記透明基板に近い側から順に、少なくとも前記記録層と反射層を有することを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の光学的情報記録媒体。
【請求項5】
前記記録層と前記反射層との間に、さらに上側誘電体層を有することを特徴とする、請求項4に記載の光学的情報記録媒体。
【請求項6】
前記記録層と前記上側誘電体層との間に、さらに上側界面層を有することを特徴とする、請求項5に記載の光学的情報記録媒体。
【請求項7】
前記上側界面層が、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ga及びSiから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含む材料からなることを特徴とする、請求項6に記載の光学的情報記録媒体。
【請求項8】
前記上側誘電体層と前記反射層との間に、さらに光吸収層を有することを特徴とする、請求項5〜7のいずれかに記載の光学的情報記録媒体。
【請求項9】
前記光吸収層がSi及びGeから選ばれる少なくとも1種の元素を含む材料からなることを特徴とする、請求項8に記載の光学的情報記録媒体。
【請求項10】
前記記録層と前記透明基板との間に、さらに下側誘電体層を有することを特徴とする、請求項1〜9のいずれかに記載の光学的情報記録媒体。
【請求項11】
前記下側誘電体層と前記記録層との間に、さらに下側界面層を有することを特徴とする、請求項10に記載の光学的情報記録媒体。
【請求項12】
前記下側界面層が、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ga及びSiから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含む材料からなることを特徴とする、請求項11に記載の光学的情報記録媒体。
【請求項13】
透明基板上に、少なくとも記録層を有する光学的情報記録媒体の製造方法であって、
前記記録層が、前記透明基板に近い側から順に、少なくとも第1相変化膜及び第2相変化膜からなり、
前記第1相変化膜及び前記第2相変化膜がいずれも、10原子%以上50原子%以下のGe及び45原子%以上60原子%以下のTeを含み、
さらに前記相変化膜のいずれか一方のみ、または両方がBiを含むように成膜する工程を含むことを特徴とする、光学的情報記録媒体の製造方法。
【請求項14】
透明基板上に、少なくとも記録層を有する光学的情報記録媒体の製造方法であって、
前記透明基板に近い側から順に、少なくとも第1情報層、分離層、第2情報層を有し、
前記第1情報層と前記第2情報層の少なくともいずれか一方が、少なくとも記録層を有し、
前記記録層が、前記透明基板に近い側から順に、少なくとも第1相変化膜及び第2相変化膜からなり、
前記第1相変化膜及び前記第2相変化膜がいずれも、10原子%以上50原子%以下のGe及び45原子%以上60原子%以下のTeを含み、
さらに前記相変化膜のいずれか一方のみ、または両方がBiを含むように成膜する工程を含むことを特徴とする、光学的情報記録媒体の製造方法。
【請求項15】
透明基板上に少なくとも記録層を有する光学的情報記録媒体への情報の記録方法であって、
前記記録層が、前記透明基板に近い側から順に、少なくとも第1相変化膜及び第2相変化膜からなり、
前記第1相変化膜及び前記第2相変化膜がいずれも、10原子%以上50原子%以下のGe及び45原子%以上60原子%以下のTeを含み、
さらに前記相変化膜のいずれか一方のみ、または両方がBiを含み、
前記媒体を回転させながら、前記媒体の線速度が高くなるほど、発光パワーの時間積分を最大発光パワーで割った値が高くなるように設定したレーザーパワー変調パルス波形を用いて、前記情報を記録することを特徴とする、光学的情報記録媒体への情報の記録方法。
【請求項16】
透明基板上に少なくとも記録層を有する光学的情報記録媒体への情報の記録方法であって、
前記透明基板上に、前記透明基板に近い側から順に、少なくとも第1情報層、分離層、第2情報層を有し、
前記第1情報層と前記第2情報層の少なくともいずれか一方が、少なくとも記録層を有し、
前記記録層が、前記透明基板に近い側から順に、少なくとも第1相変化膜及び第2相変化膜からなり、
前記第1相変化膜及び前記第2相変化膜がいずれも、10原子%以上50原子%以下のGe及び45原子%以上60原子%以下のTeを含み、
さらに前記相変化膜のいずれか一方のみ、または両方がBiを含み、
前記媒体を回転させながら、前記媒体の線速度が高くなるほど、発光パワーの時間積分を最大発光パワーで割った値が高くなるように設定したレーザーパワー変調パルス波形を用いて、前記情報を記録することを特徴とする、光学的情報記録媒体への情報の記録方法。
【請求項17】
透明基板上に少なくとも記録層を有する光学的情報記録媒体への情報の記録装置であって、
前記媒体における前記記録層が、前記透明基板に近い側から順に、少なくとも第1相変化膜及び第2相変化膜からなり、
前記第1相変化膜及び前記第2相変化膜がいずれも、10原子%以上50原子%以下のGe及び45原子%以上60原子%以下のTeを含み、
さらに前記相変化膜のいずれか一方のみ、または両方がBiを含み、
レーザービームを出力するレーザービーム出力装置と、
前記媒体を回転させるための媒体回転部と、
前記媒体回転部上の前記媒体にレーザービームを照射するための対物レンズと、
前記媒体を回転させながら、前記媒体の線速度が高くなるほど、発光パワーの時間積分を最大発光パワーで割った値が高くなるように設定したレーザーパワー変調パルス波形を用いて、前記情報を記録するように、前記レーザービーム出力装置と前記媒体回転部を制御する制御部からなることを特徴とする、光学的情報記録媒体への情報の記録装置。
【請求項18】
透明基板上に少なくとも記録層を有する光学的情報記録媒体への情報の記録装置であって、
前記媒体における前記透明基板上に、前記透明基板に近い側から順に、少なくとも第1情報層、分離層、第2情報層を有し、
前記第1情報層と前記第2情報層の少なくともいずれか一方が、少なくとも記録層を有し、
前記記録層が、前記透明基板に近い側から順に、少なくとも第1相変化膜及び第2相変化膜からなり、
前記第1相変化膜及び前記第2相変化膜がいずれも、10原子%以上50原子%以下のGe及び45原子%以上60原子%以下のTeを含み、
さらに前記相変化膜のいずれか一方のみ、または両方がBiを含み、
レーザービームを出力するレーザービーム出力装置と、
前記媒体を回転させるための媒体回転部と、
前記媒体回転部上の前記媒体にレーザービームを照射するための対物レンズと、 前記媒体を回転させながら、前記媒体の線速度が高くなるほど、発光パワーの時間積分を最大発光パワーで割った値が高くなるように設定したレーザーパワー変調パルス波形を用いて、前記情報を記録するように、前記レーザービーム出力装置と前記媒体回転部を制御する制御部からなることを特徴とする、光学的情報記録媒体への情報の記録装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、基板上に形成された薄膜に、レーザー等の高エネルギー光ビームを照射することにより、情報信号を記録・再生することのできる光学的情報記録媒体とその製造方法、記録方法及び記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
基板上に形成したカルコゲン材料等の薄膜にレーザー光を照射して局所的な加熱を行い、照射条件の違いにより光学定数(屈折率n、消衰係数k)の異なる非晶質相と結晶相との間で相変化させることが可能である。これは既に広く知られており、この現象を応用した、いわゆる相変化方式の光学的情報記録媒体の研究開発・商品化が盛んに行われている。
【0003】
相変化方式の光学的情報記録媒体においては、記録レベルと消去レベルの少なくとも2つのパワーレベル間で情報信号に応じてレーザー出力を変調し、情報トラック上に照射することにより、既存の信号を消去しつつ、同時に新しい信号を記録することが可能である。
【0004】
このような光学的情報記録媒体では、記録層以外に、記録層の基板に近い側(下側)及び基板と反対の側(上側)に、耐熱性に優れた誘電体材料等からなる保護層を設けることが一般的である。保護層は、繰り返し記録する際の記録層の蒸発や基板の熱変形を防止し、光学的干渉効果により記録層の光吸収率や光学的変化をエンハンスする等の機能を有する。また、金属・合金材料等からなる反射層を設けることも一般的である。反射層は、入射光を効率良く使い、冷却速度を向上させて非晶質化しやすくさせる等の機能を有する。
【0005】
さらに、記録層と誘電体層との間に、界面層を設けることが提案されている。界面層は、記録層の結晶化を促進し、消去特性を向上させる機能、記録層と誘電体保護層の間の原子・分子の相互拡散を防止し、繰り返し記録における耐久性を向上させる機能等を有し、さらに、記録層との間に剥離や腐食を生じない環境信頼性も兼ね備えていることが望ましい。
【0006】
また、上側誘電体層と反射層の間に、材料層を設けることも提案されている。材料層は、記録層が結晶である場合と非晶質である場合との光吸収率の比を調整し、オーバーライト時にマーク形状が歪まないようにすることで消去率を高め、かつ、記録層が結晶である場合と非晶質である場合の反射率の差を大きくし、C/N比を大きくする等の機能を有し、さらに、屈折率が高く、適度に光を吸収することが望ましい(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
このような光学的情報記録媒体1枚あたりに蓄積できる情報量を増やすための基本的な手段として、レーザー光の波長を短くする、またはこれを集光する対物レンズの開口数を大きくすることによりレーザー光のスポット径を小さくし、記録面密度を向上させる方法がある。近年の主流は、記録型DVDに代表されるように、波長660nm・開口数0.6程度の光学系を用いるものである。さらには、実用化の段階に近づきつつある波長400nm近傍の青色レーザーダイオードを適用し、さらに開口数を0.85程度まで高めることも検討されている。このように開口数を高くすると、光ディスクのチルトに対する許容幅が小さくなるため、レーザー光入射側の透明基板の厚さを記録型DVDの0.6mmから0.1mm程度に薄くすることも併せて提案されている。
【0008】
さらに、媒体1枚あたりの扱える情報量を増やすために、情報を記録再生する層を複数積層した多層構造媒体も提案されている。このような多層記録媒体は、レーザー光源に近い側の情報層が光を吸収するため、レーザー光源から遠い側の情報層には減衰したレーザー光で記録・再生を行うことになり、記録時には感度低下が、再生時には反射率・振幅低下が問題となる。したがって、多層記録媒体においては、レーザー光源から近い側の情報層は透過率を高く、レーザー光源から遠い側の情報層は反射率、反射率差及び感度を高くして、限られたレーザーパワーで十分な記録再生特性が得られるようにする必要がある。
【0009】
光学的情報記録媒体においては、上記のように記録密度を高めることが重要であるが、さらには記録速度を高めることも、大量のデータを短時間で扱うために重要である。高速記録に対応するためには、記録層の結晶化速度を高める必要がある。代表的な記録材料であるGe−Sb−Te、中でも特にGeTe−Sb2Te3近傍の組成は結晶化速度が高い。
【特許文献1】特開2000−215516号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述のように、新規に開発される記録再生装置の記録速度はより高速化する傾向にあり、媒体もこれに対応したものが要求される。それと同時に、低速でしか記録できない既存のドライブとの互換性を確保するためには、同じ媒体で低速でも記録できる必要がある。また、媒体のどの半径位置に記録する場合でも媒体を回転させる速度を一定に保つことは、モーターの負荷を軽減する観点から好ましい。その場合、媒体の外周部と内周部とでは異なる線速度で記録を行うことになるため、やはり高速から低速、すなわち一定以上の線速度の範囲で媒体の記録が可能である必要がある。
【0011】
媒体が高速記録に対応するためには、上述のように結晶化速度の速い記録層を使用する必要がある。一方、この記録層を低速での記録に用いると、結晶化速度が速すぎることになる。すなわち、非晶質が形成されにくく、マークが大きくなりにくいために信号振幅が低下するという問題が生じる。
【0012】
本発明は、広い線速度範囲において良好な記録再生特性が得られる記録媒体とその製造方法、記録方法及び記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の光学的情報記録媒体は、透明基板上に少なくとも記録層を有し、記録層が、透明基板に近い側から順に、少なくとも第1相変化膜及び第2相変化膜からなり、第1相変化膜及び第2相変化膜がいずれも、10原子%以上50原子%以下のGe及び45原子%以上60原子%以下のTeを含み、さらに相変化膜のいずれか一方のみ、または両方がBiを含むことを特徴とする。
【0014】
さらには、本発明の他の光学的情報記録媒体は、透明基板上に、透明基板に近い側から順に、少なくとも第1情報層、分離層、第2情報層を有し、第1情報層と第2情報層の少なくともいずれか一方が、少なくとも記録層を有し、記録層が、透明基板に近い側から順に、少なくとも第1相変化膜及び第2相変化膜からなり、第1相変化膜及び第2相変化膜がいずれも、10原子%以上50原子%以下のGe及び45原子%以上60原子%以下のTeを含み、さらに相変化膜のいずれか一方のみ、または両方がBiを含むことを特徴とする。これにより、良好な記録再生特性を持つ記録媒体が得られる。
【0015】
また、第1相変化膜と第2層変化膜のBi含有割合の差が、2原子%以上であることが好ましい。これにより、より広い線速度範囲に対応可能となる。
本発明の光学的情報記録媒体は、透明基板に近い側から順に、少なくとも記録層と反射層をこの順に有することが好ましい。
【0016】
また、記録層と反射層との間に、上側誘電体層を有することが好ましい。
記録層と上側誘電体層との間に、さらに上側界面層を有することが好ましい。
上記上側界面層は、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ga及びSiから選ばれる少なくとも1種の元素の酸化物を含む材料からなることが好ましい。これにより、耐湿性、消去率の優れた層を得られる。
【0017】
また、上側誘電体層と反射層との間に、さらに光吸収層を有することが好ましい。
光吸収層は、Si及びGeから選ばれる少なくとも1種の元素を含む材料からなることが好ましい。これにより、十分なC/N比が得られる。
上記本発明の光学的情報記録媒体は、記録層と透明基板との間に、さらに下側誘電体層を有することが好ましい。
【0018】
また、下側誘電体層と記録層との間に、さらに下側界面層を有することが好ましい。
上記下側界面層が、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ga及びSiから選ばれる少なくとも1種の酸化物を含む材料からなることが好ましい。これにより、耐湿性、消去率の優れた層を得られる。
【0019】
本発明の光学的情報記録媒体の製造方法は、透明基板上に、少なくとも記録層を有し、記録層が、透明基板に近い側から順に、少なくとも第1相変化膜及び第2相変化膜からなり、第1相変化膜及び第2相変化膜がいずれも、10原子%以上50原子%以下のGe及び45原子%以上60原子%以下のTeを含み、さらに相変化膜のいずれか一方のみ、または両方がBiを含むように成膜する工程を含むことを特徴とする。
【0020】
また、本発明の光学的情報記録媒体の製造方法は、透明基板上に、透明基板に近い側から順に、少なくとも第1情報層、分離層、第2情報層を有し、第1情報層と第2情報層の少なくともいずれか一方が、少なくとも記録層を有し、記録層が、透明基板に近い側から順に、少なくとも第1相変化膜及び第2相変化膜からなり、第1相変化膜及び第2相変化膜がいずれも、10原子%以上50原子%以下のGe及び45原子%以上60原子%以下のTeを含み、さらに相変化膜のいずれか一方のみ、または両方がBiを含んでその含有割合が異なるように成膜する工程を含むことを特徴とする。
【0021】
さらに、本発明は、上記媒体への情報の記録方法及び記録装置を提供する。
本発明による情報の記録方法は、透明基板上に少なくとも記録層を有し、記録層が、透明基板に近い側から順に、少なくとも第1相変化膜及び第2相変化膜からなり、第1相変化膜及び第2相変化膜がいずれも、10原子%以上50原子%以下のGe及び45原子%以上60原子%以下のTeを含み、さらにいずれか一方のみ、または両方がBiを含み、媒体を回転させながら、媒体の線速度が高くなるほど、発光パワーの時間積分を最大発光パワーで割った値が高くなるように設定したレーザーパワー変調パルス波形を用いて、情報を記録することを特徴とする。
【0022】
また、本発明による情報の記録方法は、透明基板上に、透明基板に近い側から順に、少なくとも第1情報層、分離層、第2情報層を有し、第1情報層と第2情報層の少なくともいずれか一方が、少なくとも記録層を有し、記録層が、透明基板に近い側から順に、少なくとも第1相変化膜及び第2相変化膜からなり、第1相変化膜及び第2相変化膜がいずれも、10原子%以上50原子%以下のGe及び45原子%以上60原子%以下のTeを含み、さらにいずれか一方のみ、または両方がBiを含み、媒体を回転させながら、媒体の線速度が高くなるほど、発光パワーの時間積分を最大発光パワーで割った値が高くなるように設定したレーザーパワー変調パルス波形を用いて、情報を記録することを特徴とする。
【0023】
本発明の記録装置は、透明基板上に少なくとも記録層を有し、記録層が、透明基板に近い側から順に、少なくとも第1相変化膜及び第2相変化膜からなり、第1相変化膜及び第2相変化膜がいずれも、10原子%以上50原子%以下のGe及び45原子%以上60原子%以下のTeを含み、さらにいずれか一方のみ、または両方がBiを含み、媒体を回転させながら、媒体の線速度が高くなるほど発光パワーの時間積分を最大発光パワーで割った値が高くなるように設定したレーザーパワー変調パルス波形を用いて、情報を記録することを特徴とする。
【0024】
また、本発明の記録装置は、透明基板上に、透明基板に近い側から順に、少なくとも第1情報層、分離層、第2情報層を有し、第1情報層と第2情報層の少なくともいずれか一方が、少なくとも記録層を有し、記録層が、透明基板に近い側から順に、少なくとも第1相変化膜及び第2相変化膜からなり、第1相変化膜及び第2相変化膜がいずれも、10原子%以上50原子%以下のGe及び45原子%以上60原子%以下のTeを含み、さらにいずれか一方のみ、または両方がBiを含み、媒体の線速度が高くなるほど、発光パワーの時間積分を最大発光パワーで割った値が高くなるように設定したレーザーパワー変調パルス波形を用いて、情報を記録することを特徴とする。
【0025】
なお、本発明の記録方法および記録装置は、情報の記録に前後して又は記録と共に情報の再生を行う記録再生方法、情報の記録機構とともに再生機構を備えた記録再生装置を包含する。
【発明の効果】
【0026】
以上説明したとおり、本発明によれば、高密度かつ広い線速度範囲において良好な記録再生特性が得られる記録媒体とその製造方法、記録方法及び記録装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。図1〜図4は、それぞれ、本発明の光学的情報記録媒体の一構成例の部分断面図である。
図1に示すように、本発明の光学的情報記録媒体は、透明基板1上に、例えば下側誘電体層2、第1相変化膜3−1及び第2相変化膜3−2からなる記録層3、上側誘電体層4、反射層5及び保護基板6がこの順に設けられて構成されている。この光学的情報記録媒体に対し、透明基板1の側からレーザー光7を対物レンズ8で集光し、記録層3に照射して記録再生を行う。
【0028】
図2に示すように、上側誘電体層4と反射層5の間に光吸収層9を、下側誘電体層2と記録層3との間に下側界面層10を、記録層3と上側誘電体層4との間に上側界面層11を、反射層5と保護基板6の間に最上誘電体層12を適宜設けてもよい。
また、図3及び図4に示すように、本発明の光学的情報記録媒体は、透明基板1と保護基板6の間に、分離層13を介して第1情報層14及び第2情報層15、さらには第n情報層16(但し、nは3以上の整数)までを設けてもよい。その際、いずれかの情報層が、図1または図2に示した多層薄膜構造と同じである必要がある。この光学的情報記録媒体の各情報層に対し、透明基板1の側からレーザー光7を対物レンズ8で集光し、照射して記録再生を行う。
【0029】
透明基板1の材料としては、レーザー光7の波長において略透明であることが好ましく、ポリカーボネイト樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリオレフィン樹脂、ノルボルネン系樹脂、紫外線硬化性樹脂、ガラス、あるいはこれらを適宜組み合わせたもの等を用いることができる。また、透明基板1の厚さは特に限定されないが、0.01〜1.5mm程度のものを用いることができる。
【0030】
下側誘電体層2及び上側誘電体層4の材料としては、例えば、Y、Ce、Ti、Zr、Nb、Ta、Co、Zn、Al、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Bi、Te等の酸化物、Ti、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、W、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb等の窒化物、Ti、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Si等の炭化物、Zn、Cd等の硫化物、セレン化物またはテルル化物、Mg、Ca、La等の希土類等のフッ化物、C、Si、Ge等の単体、あるいはこれらの混合物を用いることができる。中でも特に略透明で熱伝導率の低い材料、例えばZnSとSiO2の混合物が好ましい。下側誘電体層2及び上側誘電体層4は、必要に応じて異なる材料・組成のものを用いてもよいし、同一の材料・組成のものを用いることもできる。ここで、上側誘電体層4の膜厚は2nm以上80nm以下であることが好ましく、さらには5nm以上50nm以下であることがより好ましい。上側誘電体層4の膜厚が薄過ぎると記録層3と反射層5の間の距離が近付き過ぎて反射層5の冷却効果が強くなり、記録層3からの熱拡散が大きくなって記録感度が低下し、また、記録層3が結晶化しにくくなってしまう。逆に、上側誘電体層4が厚すぎると記録層3と反射層5の間の距離が離れ過ぎて反射層5の冷却効果が弱くなり、記録層3からの熱拡散が小さくなって記録層3が非晶質化しにくくなってしまうからである。下側誘電体層2の膜厚は特に制限されないが、10nm以上200nm以下であることが好ましい。
【0031】
下側界面層10及び上側界面層11の材料としては、下側誘電体層2及び上側誘電体層4の材料として上記に挙げたものの中に、その役割を果たすものが幾つか存在する。例えばGe、Si等をベースにした窒化物、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Ga及びSi等の酸化物またはこれらの複合酸化物を用いることができ、中でも特にTi、Zr、Hf、V、Nb及びTa等の酸化物をベースとして、Cr、Mo、W及びGa等の酸化物を添加したものは耐湿性の面で優れており、さらにSi等の酸化物を添加したものは消去率をより高くすることができる。下側界面層10及び上側界面層11の膜厚は特に限定されないが、薄すぎると界面層としての効果が発揮できなくなり、厚すぎると記録感度低下等につながるため、例えば0.2nm以上20nm以下であることが好ましい。下側界面層10と上側界面層11は、いずれか片方設けるだけでも上記効果を発揮するが、両方設けることがより好ましく、両方設ける場合は必要に応じて異なる材料・組成のものを用いてもよいし、同一の材料・組成のものを用いてもよい。
【0032】
記録層3を構成する第1相変化膜3−1及び第2相変化膜3−2の材料は、10原子%以上50原子%以下のGe及び45原子%以上60原子%以下のTeを必須の成分として含み、さらにいずれか一方のみがBiを含むか、または両方がBiを含んでその含有割合が異なる材料組成を用いる。さらにGe含有割合は、20原子%以上50原子%以下であってもよい。このような記録層を用いることで、広い線速度範囲においてC/N比も消去率も高く保つことができる。Ge、Te及びBi以外には、結晶化速度、熱伝導率または光学定数等の調整、あるいは繰り返し耐久性、耐熱性または環境信頼性の向上等の目的で、Sb、Sn、In、Ga、Zn、Cu、Ag、Au、Cr等の金属、半金属もしくは半導体元素、またはO、N、F、C、S、B等の非金属元素から選ばれる1つまたは複数の元素を、必要に応じて、第1相変化膜3−1全体または第2相変化膜3−2全体の20原子%以下、好ましくは10原子%以下、特に好ましくは5原子%以下の範囲で適宜含んでもよい。
【0033】
記録層3の合計膜厚は、2nm以上20nm以下とすれば、十分なC/N比を得ることができる。記録層3が合計2nm未満の膜厚では十分な反射率及び反射率変化が得られないためC/N比が低く、また、20nmを超える膜厚では記録層3の薄膜面内の熱拡散が大きいため高密度記録においてC/N比が低くなってしまう。さらに、記録層3の合計膜厚は、4nm以上14nm以下であることがより好ましい。また、記録層3の合計膜厚のうち第1相変化膜3−1及び第2相変化膜3−2の占める割合は、いずれも5%以上95%以下、より好ましくは10%以上90%以下、さらに好ましくは20%以上80%以下であれば所望の効果が得られる。
【0034】
光吸収層9としては、記録層3が結晶である場合と非晶質である場合との光吸収率の比を調整し、オーバーライト時にマーク形状が歪まないようすることで特に高線速での消去率を高め、かつ、記録層3が結晶である場合と非晶質である場合の反射率の差を大きくし、C/N比を大きくする等の目的で、屈折率が高く、適度に光を吸収する、すなわち、例えば屈折率nが3以上6以下、消衰係数kが1以上4以下、より好ましくはnが3以上5以下、kが1.5以上3以下である材料を用いるとよい。具体的にはGe−Cr、Ge−Mo、Si−Cr、Si−Mo、Si−W等の非晶質であるGe合金及びSi合金、あるいはTi、Zr、Nb、Ta、Cr、Mo、W、SnTe、PbTe等の結晶性の金属、半金属及び半導体材料を使用することが好ましい。中でも特にSiをベースとした材料はGeに比べて融点が高いため耐熱性が良好で、熱伝導率も高いためC/N比が大きくなり、より好ましい。また、光吸収層9の代わりに上側誘電体層4と反射層5の間の反応による混ざり込み・腐食等を防止するために、追加の界面層として、下側誘電体層2及び上側誘電体層4の材料として上記に挙げたものの中から透明に近い材料を用いてもよい。
【0035】
反射層5の材料としては、例えば、Au、Ag、Cu、Al、Ni、Crあるいはこれらをベースにした合金材料を用いる。中でも特にAg合金は熱伝導率及び反射率が高く、またAl合金もコストの面から好ましい。また、反射層5は複数の層を組み合わせて用いてもよい。
【0036】
最上誘電体層12の材料としては、下側誘電体層2及び上側誘電体層4の材料として上記に挙げたものの中から適当なものを用いる。特に反射層5が例えば20nm以下のように薄く半透明であった場合、屈折率nが高いTiO2、Bi23等を用いることで反射率変化あるいは反射率のコントラストを大きくできるため好ましい。
【0037】
なお、上記の多層薄膜は、オージェ電子分光法、X線光電子分光法または2次イオン質量分析法等の方法により各層の材料及び組成を調べることが可能である。本願の実施の形態においては各層のターゲット材料組成と実際に形成された薄膜の組成が略同等であることを確認した。ただし、成膜装置、成膜条件またはターゲットの製造方法等によっては、ターゲット材料組成と実際に形成された薄膜の組成が異なる場合もある。そのような場合には、あらかじめ組成のずれを補正する補正係数を経験則から求め、所望の組成の薄膜が得られるようにターゲット材料組成を決めることが好ましい。
【0038】
保護基板6の材料としては、透明基板1の材料として挙げたのと同じものを用いることができるが、透明基板1とは異なる材料としてもよく、レーザー光7の波長において必ずしも透明でなくてもよい。また、保護基板6の厚さは特に限定されないが、0.01〜3.0mm程度のものを用いることができる。
【0039】
分離層13としては、紫外線硬化性樹脂等を用いることができる。分離層13の厚さは、第1情報層14及び第2情報層15のいずれか一方を再生する際に他方からのクロストークが小さくなるように、少なくとも対物レンズ8の開口数NAとレーザー光7の波長λにより決定される焦点深度以上の厚さであることが望ましく、また、全ての情報層が集光可能な範囲に収まる厚さであることも必要である。例えば、分離層13の厚さは、λ=660nm、NA=0.6の場合は10μm以上100μm以下、λ=405nm、NA=0.85の場合は5μm以上50μm以下であることが好ましい。但し、層間のクロストークを低減できる光学系が開発されれば分離層13の厚さは上記より薄くできる可能性もある。
【0040】
第1情報層14は、30%以上の透過率を有することが望ましいが、書換型のみならず、追記型または再生専用型のいずれの情報層とすることも可能である。
なお、上記光学的情報記録媒体2枚を、それぞれの保護基板6の側を対向させて貼り合わせ、両面構造とすることにより、媒体1枚あたりに蓄積できる情報量をさらに2倍にすることができる。
【0041】
上記の各薄膜は、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法、MBE(Molecular Beam Epitaxy)法等の気相薄膜堆積法によって形成することができる。
上記の薄膜層や分離層13は、透明基板1上に順次形成した後に保護基板6を形成または貼り合せしてもよいし、逆に保護基板6上に順次形成した後に透明基板1を形成または貼り合せしてもよい。中でも特に、後者は透明基板1が0.4mm以下のように薄い場合に適している。その場合、レーザー光案内用の溝であるグルーブやアドレス信号等の凹凸パターンは、保護基板6及び分離層13の表面上に形成、すなわちスタンパ等のあらかじめ所望の凹凸パターンが形成されたものから転写される必要がある。その際、特に分離層13のようにその膜厚が薄いため、通常用いられているインジェクション法により作成することが困難な場合は、2P法(photo-polymerization法)を用いることもできる。
【0042】
上記光学的記録媒体の記録層3は、一般に、成膜したままの状態では非晶質状態なので、レーザー光等でアニールすることで結晶状態とする初期化処理を施すことで完成ディスクとなり、記録再生を行うことができる。
図5に、本発明の記録装置の一例として、光学的情報記録媒体の記録再生を行う記録再生装置の最小限必要な装置構成の一例の概略図を示す。レーザーダイオード17を出たレーザー光7は、ハーフミラー18及び対物レンズ8を通じて、モーター19によって回転されている光学的情報記録媒体(ディスク)20上にフォーカシングされる。情報の再生は、光学式情報記録媒体20からの反射光をフォトディテクター21に入射させ、信号を検出することにより行われる。制御部22は、本発明の光学的情報記録媒体20に情報を記録再生するために、レーザーダイオード17とモーター19を制御するよう構成される。制御部22は、レーザーダイオード17とモーター19を制御する制御プログラムを組み込んだマイクロコンピューターを含んでいることが好ましい。また、制御部22は、従来の入力インターフェース回路、出力インターフェース回路、あるいはROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等の記憶部、等を含んでいてもよい。
【0043】
情報信号の記録を行う際には、レーザー光7の強度を複数のパワーレベル間で変調する。レーザー強度を変調するレーザー光強度変調手段としては、半導体レーザーの駆動電流を変調して行う電流変調手段を用いてもよく、電気光学変調器、音響光学変調器等の手段を用いてもよい。記録マークを形成する部分に対しては、ピークパワーP1の単一矩形パルスでもよいが、特に長いマークを形成する場合は、過剰な熱を省き、マーク幅を均一にする目的で、図6に示すようにピークパワーP1及びボトムパワーP3(但し、P1>P3)との間で変調された複数のパルスの列からなる記録パルス列を用いる。また、最後尾のパルスの後に冷却パワーP4の冷却区間を設けてもよい。マークを形成しない部分に対しては、バイアスパワーP2(但し、P1>P2)で一定に保つ。
【0044】
記録マークを形成するためのレーザーパワー変調パルス波形を、その発光パワーの時間積分を最大発光パワーで割った値が高線速度ほど大きいものとすることで、より広い線速度範囲で良好な記録再生特性を保つことができる。発光パワーの時間積分を最大発光パワーで割った値を大きくするということは、具体的には、例えば図6に示すパルス波形において、ピークパワーP1の各パルスの一部または全ての幅を広くするか、あるいは、パワーレベルP3を高くすることで実現でき、特に高線速度での消去率向上に効果がある。
【0045】
ここで、記録するマークの長さ、さらにはその前後のスペースの長さ等の各パターンによってマークエッジ位置に不揃いが生じ、ジッタ増大の原因となることがある。本発明の光学的情報記録媒体の記録方法では、これを防止し、ジッタを改善するために、上記パルス列の各パルスの位置または長さをパターン毎にエッジ位置が揃うように必要に応じて調整し、補償することもできる。
【0046】
本発明では、情報の記録の際に2以上のモードを適用し、この2以上のモードに応じて異なる2以上の線速度で媒体を回転させ、この2以上の線速度に応じて異なる2以上のレーザーパワー変調パルス波形を用い、かつこの2以上のレーザーパワー変調パルス波形を、上記線速度が高いほど、発光パワーの時間積分を最大発光パワーで割った値が高くなるように設定してもよい。
【実施例】
【0047】
以下、本発明をさらに具体的に説明するが、本実施例は本発明を限定するものではない。
透明基板として、ポリカーボネイト樹脂からなり、直径12cm、厚さ0.6mm、グルーブピッチ1.23μm、グルーブ深さ約55nmの基板を準備した。この透明基板のグルーブが形成された表面上に、(ZnS)80(SiO220からなる膜厚130nmの下側誘電体層、(ZrO225(SiO225(Cr2350からなる膜厚5nmの下側界面層、様々な材料組成からなる膜厚4nmの第1相変化膜及び膜厚4nmの第2相変化膜を透明基板に近い側からこの順に積層してなる合計膜厚8nmの記録層、(ZrO225(SiO225(Cr2350からなる膜厚5nmの上側界面層、(ZnS)80(SiO220からなる膜厚35nmの上側誘電体層、CrSi2からなる膜厚30nmの光吸収層、Ag98Pd1Cu1からなる膜厚80nmの反射層の各層をスパッタリング法により順次積層した。
【0048】
記録層の第1相変化膜及び第2相変化膜としては、(表1)に示すとおり、Ge、Sb、Bi及びTeのうち一部または全部からなる材料で、それぞれ組成比を変えたものを用いた。
【0049】
【表1】


【0050】
各層の成膜には、記録層についてはAr−N2混合ガス(N2分圧約3%)を、それ以外についてはArのみをスパッタガスとして流しながら成膜した。
こうして形成された多層薄膜面上に紫外線硬化性樹脂を介してポリカーボネイトからなる保護基板を貼り合せ、紫外線光を照射して硬化させた。このディスクの透明基板側からレーザー光でアニールすることにより記録層全面を初期化した。
【0051】
これらのディスクを線速度8.2m/s(基準クロックT=17.1ns)及び線速度20.5m/s(基準クロックT=6.9ns)の2条件で回転させ、波長660nm・NA0.6の光学系を用いて測定を行った。いずれの線速度においても、グルーブ及びランドに3T信号と11T信号を交互に11回記録し、3T信号が記録された状態でこのトラックを再生してそのC/N比をスペクトラムアナライザーで測定した。そして、さらにその上に11T信号を1回記録したときの消去率、すなわち3T信号振幅の減衰比をスペクトラムアナライザーで測定した。
【0052】
信号を記録する際のレーザー変調波形は、いずれの線速度においても、3T信号の場合は幅1.5T(パワーレベルP1)の単一矩形パルスとし、11T信号の場合は幅1.5Tの先頭パルスとこれに続く幅0.5Tの8つのサブパルスからなるパルス列(パワーレベルP1)とし、各パルス間(パワーレベルP3)の幅も0.5Tとした。マークを記録しない部分ではパワーレベルP2の連続光とした。線速度8.2m/sの場合はP3=P2、線速度20.5m/sの場合はP3=P2+1mWとした。各パワーレベルの決め方としては、記録パワーレベルP1はC/N比が45dBを超えるパワーの下限値の1.5倍、パワーレベルP2は消去率が20dBを超えるパワー範囲の中央値、再生パワーレベルP5は1.0mWとした。
【0053】
以上の条件で、各ディスクのC/N比と消去率を測定した結果を(表1)に示す。なお、C/N比及び消去率は、各ディスクともグルーブとランドで大きな差はなかったが、(表1)には低い方の値を示している。
ディスク0a、0b及び0cは、第1相変化膜と第2相変化膜とで組成が異ならない記録層を用いており、本願発明の実施例のディスクに対する比較例である。ディスク0aは、低速での記録においては高いC/N比と消去率が得られているが、高速では結晶化速度が不十分であるため消去率が低い。逆に、ディスク0bは、高速では高いC/N比と消去率が得られているが、低速では結晶化速度が過剰となりC/N比が低い。ディスク0cは、低速での記録においては結晶化速度がやや過剰であるため十分なC/N比が得られておらず、逆に高速での記録においては結晶化速度が不十分であるため消去率が不十分である。このように、Bi含有割合によって結晶化速度を調整することはできるものの、対応できる線速度範囲には限界があることがわかる。
【0054】
これに対し、本願発明の実施例であるその他のディスクでは、低速でも十分なC/N比が得られており、高速での消去率も高く、低速から高速まで良好な記録特性を示している。その中でもディスク1x及びディスク1yよりもディスク2x及び2yの方がより優れた記録特性を示しており、第1相変化膜と第2相変化膜との間のBi含有割合の差が大きい方が、より広い線速度範囲に対応可能であることを示している。また、第1相変化膜と第2相変化膜とで、どちらのBi含有割合が多くても、広い線速度範囲に対応できることは同じであるが、ディスク1xよりもディスク1y、ディスク2xよりもディスク2yの方が、よりC/N比は高いが消去率は低くなっており、第1相変化膜の方が結晶化、第2相変化膜の方が非晶質化に対する影響が相対的に大きいことがわかる。また、ディスク2xに対してディスク3x、さらにはディスク4xと、Bi含有割合が大きく、かつGe含有割合が小さくなる程、C/N比は十分ではあるものの、やや低くなる傾向にある。これは結晶−非晶質間の光学的なコントラストが低下するためであり、熱物性的には対応可能な線速度範囲が狭くなることはないが、光学的な側面からは、Bi含有割合を大きくし過ぎることは実用上好ましくない。これに対し、ディスク5zは、第1相変化膜のBi含有割合はディスク4xと同じく大きいのでC/N比が低くなる方向に働くが、第2相変化膜のGe含有割合をディスク2xと同じく大きくしているためC/N比が高くなる方向に働き、その結果として低速と高速でC/N比と消去率を両立している。よって、第1相変化膜と前記第2相変化膜との間のBi含有割合の差が2原子%以上であれば、本発明を実施できるが、差は4原子%以上、さらには8原子%以上であることが好ましい。
【0055】
なお、本実施例では第1相変化膜と第2相変化膜の膜厚を同じに固定しているが、その合計膜厚を変えずに膜厚の比を変えた場合、両者のバランスが変わるため結晶化速度が変化するが、その分のBi量を変えて調整することでバランスをとることができる。
以上の結果から、Bi含有割合の異なる相変化膜を組み合わせて記録層として用いることで、広い線速度範囲において良好な記録再生特性が得られることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
本発明の光学的情報記録媒体は、映像、音楽、情報等の電子化できるデータを保存する媒体として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の光学的情報記録媒体の一構成例の断面図
【図2】本発明の光学的情報記録媒体の一構成例の断面図
【図3】本発明の光学的情報記録媒体の一構成例の断面図
【図4】本発明の光学的情報記録媒体の一構成例の断面図
【図5】本発明の光学的情報記録媒体の記録再生装置の一例の概略図
【図6】本発明の光学的情報記録媒体の記録再生に用いる記録パルス波形の一例の概略図
【符号の説明】
【0058】
1 透明基板
2 下側誘電体層
3 記録層
3−1 第1相変化膜
3−2 第2相変化膜
4 上側誘電体層
5 反射層
6 保護基板
7 レーザー光
8 対物レンズ
9 光吸収層
10 下側界面層
11 上側界面層
12 最上誘電体層
13 分離層
14 第1情報層
15 第2情報層
16 第n情報層
17 レーザーダイオード
18 ハーフミラー
19 モーター
20 光学的情報記録媒体
21 フォトディテクター
22 制御部
【出願人】 【識別番号】000005821
【氏名又は名称】松下電器産業株式会社
【住所又は居所】大阪府門真市大字門真1006番地
【出願日】 平成17年3月2日(2005.3.2)
【代理人】 【識別番号】100094145
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 由己男

【識別番号】100106367
【弁理士】
【氏名又は名称】稲積 朋子

【識別番号】100121120
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 尚

【識別番号】100130340
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健二

【公開番号】 特開2005−289044(P2005−289044A)
【公開日】 平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願番号】 特願2005−56802(P2005−56802)