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【発明の名称】 吐出ヘッド及び吐出ヘッド製造方法
【発明者】 【氏名】三田 剛
【住所又は居所】神奈川県足柄上郡開成町宮台798番地 富士写真フイルム株式会社内

【要約】 【課題】薄板状の圧電体を容易に製造できると共に圧電体の焼成時に起こる反りを防止する吐出ヘッド及び吐出ヘッド製造方法を提供する。

【解決手段】圧電材料と電極材料を交互に積層させて形成される圧電体基板55の内部には、単層の圧電体から成る圧電活性部58の圧力室52と反対側に空洞部から成る低剛性部59が設けられている。圧電体基板55の厚みを厚くすることで製造時のハンドリング容易性を確保しつつ、薄板状の圧電活性部58を形成することができる。また、圧電体基板55内部には低剛性部59と圧電体基板55の厚み方向を略2等分する面に対して対象の位置に低剛性部59と略同一形状、略同一サイズの第2の低剛性部を設けると、圧電体基板55の焼成時におこる反りを防止することができる。低剛性部59には空洞部に代わり圧電体に比べて剛性が低い部材を用いてもよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被吐出媒体上に液滴を吐出させる吐出ヘッドであって、
電極材料及び圧電材料が交互に積層され、電界を作用させると歪みを生じる圧電活性部が含まれる圧電体基板と、
前記圧電体基板に積層接合され、前記被吐出媒体上に吐出させる液を収容する圧力室及び前記圧力室に液が供給される際の液流路が含まれる流路部材と、
を備え、
前記圧電体基板は、前記圧電活性部の前記圧力室が積層接合される面と反対側の前記圧電体基板内部に圧電材料が欠落した変形用低剛性部を有することを特徴とする吐出ヘッド。
【請求項2】
前記圧電活性部は2層の圧電体を積層して形成されるバイモルフ型圧電体を含むことを特徴とする請求項1記載の吐出ヘッド。
【請求項3】
前記圧電体基板と前記流路部材との間に前記圧電活性部の歪みに応じて変形する振動板を備えたことを特徴とする請求項1記載の吐出ヘッド。
【請求項4】
前記振動板は圧電部材を含む材料で形成されると共に前記圧電体基板と一体形成されることを特徴とする請求項3記載の吐出ヘッド。
【請求項5】
前記流路部材は非圧電部材を含む材料で形成されることを特徴とする請求項1乃至4のうち何れか1項に記載の吐出ヘッド。
【請求項6】
前記圧電活性部はd31モードの変位を発生する圧電体を含むことを特徴とする請求項1乃至5のうち何れか1項に記載の吐出ヘッド。
【請求項7】
前記圧電体基板は、該圧電体基板内部に前記変形用低剛性部と前記圧電体基板の厚み方向に対称の位置に圧電材料が欠落した反り防止用低剛性部を備えたことを備えたことを特徴とする請求項1乃至6のうち何れか1項に記載の吐出ヘッド。
【請求項8】
前記圧電体基板は、該圧電体基板内部の電界を作用させても歪みを生じない圧電不活性部に圧電材料が欠落した干渉防止用低剛性部を備えたことを特徴とする請求項1乃至7のうち何れか1項に記載の吐出ヘッド。
【請求項9】
前記圧電体基板は、該圧電体基板内部に前記干渉防止用低剛性部の該圧電体基板の厚み方向に対称の位置に反り干渉防止用低剛性部を備えたことを特徴とする請求項8記載の吐出ヘッド。
【請求項10】
被吐出媒体上に液滴を吐出させる吐出ヘッドの製造方法であって、
電極材料及び圧電材料が交互に積層され、電界を作用させると歪みを生じる圧電活性部を含んだ圧電体基板を形成させる圧電体基板形成工程と、
前記圧電体基板に前記被吐出媒体上へ吐出させる液を収容する圧力室及び前記圧力室に液が供給される際の液流路が形成される流路部材を積層接合させる接合工程と、
を含み、
前記圧電体基板形成工程は、前記圧電活性部の前記圧力室と反対側の前記圧電体基板内部に圧電材料が欠落した変形用低剛性部を形成する変形用低剛性部形成工程を含むことを特徴とする吐出ヘッド製造方法。
【請求項11】
前記変形用低剛性部形成工程は、前記圧電体基板に前記圧電材料と比べて剛性が低い部材を含んだ少なくとも一部が除去される変形用低剛性部除去層を形成する変形用低剛性部除去層形成工程と、
変形用低剛性部除去層形成工程によって形成された前記変形用低剛性部除去層に圧電材料を積層させる圧電層積層工程と、
前記圧電層積層工程後の前記圧電体基板に熱を与えて前記圧電体基板を焼成させる際に、前記変形用低剛性部除去層の少なくとも一部が除去されて圧電材料が欠落した前記変形用低剛性部が形成される加熱工程と、
を含むことを特徴とする請求項10記載の吐出ヘッド製造方法。
【請求項12】
前記圧電体基板内部には、前記変形用低剛性部除去層と前記圧電体基板の前記圧電体基板の各層が積層される厚み方向に対称の位置に圧電材料と比べて剛性が低い部材を含んだ少なくとも一部が除去される反り防止用低剛性部除去層を形成させる反り防止用低剛性部除去層形成工程を含み、
前記加熱工程によって前記反り防止用低剛性部除去層の少なくとも一部が除去されて圧電材料が欠落した反り防止用低剛性部が形成されることを特徴とする請求項11記載の吐出ヘッド製造方法。
【請求項13】
前記加熱工程後の前記圧電体基板に該圧電体基板と前記流路部材との間に非圧電材料を含む材料で形成される振動板を接合する振動板接合工程を含むことを特徴とする請求項10、11又は12記載の吐出ヘッド製造方法。
【請求項14】
前記吐出力付与部材形成工程後の後加工によって、前記圧電体基板内部の電界を作用させても歪みを生じない圧電不活性部に圧電材料が欠落した干渉防止用低剛性部を形成させる干渉防止用低剛性部形成工程を含むことを特徴とする請求項10乃至13のうち何れか1項に記載の吐出ヘッド製造方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は吐出ヘッド及び吐出ヘッド製造方法に係り、特に薄板積層構造を有する吐出ヘッドの構造及びに製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、画像やドキュメント等のデータ出力装置としてインクジェットプリンターが普及している。インクジェットプリンターは記録ヘッドに備えられたノズル等の記録素子をデータに応じて駆動させ、該ノズルから吐出されるインクによって記録紙などの被印字媒体(記録メディア)上にデータを形成することができる。
【0003】
インクジェットプリンターでは、多数のノズルを有する印字ヘッドと被印字媒体とを相対的に移動させ、該ノズルからインク滴を吐出させることによって被印字媒体上に所望の画像が形成される。
【0004】
インクジェット記録装置に備えられる印字ヘッドからインクを吐出させる方式には、インクが収容されている圧力室の壁面を形成する振動板に圧電素子などのアクチュエータを備え、該アクチュエータを駆動させることにより該圧力室を変形させ、該圧力室体積の変化量に応じたインク量を吐出させる方式や、圧力室内に設けられたヒータによって該圧力室内のインクを加熱し、これによって該圧力室内に発生したバブルの圧力に応じてインクを吐出させるバブルジェット方式がある。
【0005】
圧電素子の変形によってインクを吐出させる方式を適用した印字ヘッドは、インク滴を吐出するノズルが形成されるノズルプレート、圧力室やインク流路が形成される流路プレート、振動板、圧電素子などが薄板状に形成され、これらの薄板状部材を接着剤等により接着させて積層させる積層構造を有している。
【0006】
該圧電素子を形成する場合、バルク材またはグリーンシートを積層して加圧形成した後に焼成したものを、研磨等によって所望の厚さに加工する。更に、個別電極、共通電極が取り付けられ、圧電素子が完成する。このように形成された圧電体は振動板に接合され、振動板の圧電体と反対側には圧力室(壁)、流路プレート、ノズルプレートがこの順に接着等によって接合される。
【0007】
これらの薄板状部材同士を接合させる際に、接合させる部材間では位置決め精度や接着剤の塗布量(厚み)の精度を確保する必要がある。しかし、この積層体を形成する薄板状部材は薄く、また、微細加工が施されているものもあるので、位置決め精度よく積層させることは困難である。また、該薄板状部材を接合させる際に必要な接着剤はごく少量なために接着剤の厚みを制御することは非常に難しい。したがって、これらの薄板状部材から積層体を形成するためには、接合工程を省くために複数の部材を一体形成するなど、その積層方法や接合方法に様々な工夫がなされている。
【0008】
特許文献1に記載されたセラミックインクジェットヘッドとその製造方法では、圧力室の接着位置決めばらつき及び接着剤の厚みばらつきの問題を回避する手段として、感光性樹脂を使用して圧力室、流路、空孔の母型を作るように構成されている。
【0009】
また、特許文献2に記載されたインクジェット記録ヘッド及びその製造方法では、感光性樹脂でできた空孔パターン上に金属薄板を塗り、圧電材及び電極材を交互に積層させ、感光樹脂でできた空孔パターンを焼成工程で溶解させて、内面に金属箔膜が塗布されたインクキャビティを形成するように構成されている。
【0010】
また、特許文献3に記載されたインクジェット記録ヘッド及びその製造方法では、円柱状の圧力室形成部と両端に形成された細径上の流路形成部とを、電極材の溶液及び圧電材の溶液に交互に複数回浸し、脱バインド工程で空孔パターン部材を取り除き、電極層と圧電体層を交互に複数層形成させるように構成されている。
【0011】
また、特許文献4に記載されたインクジェット記録ヘッドでは、圧電体をノズルピッチ方向に積層し、圧力室となる空孔部をシートで設けるように構成されている。
【0012】
また、特許文献5に記載されたインクジェットヘッド及びその製造方法では、インクジェットヘッドはグリーンシートを積層して形成され、インクジェットヘッド内では感光性樹脂を用いてグリーンシート上にインク流路のパターンが形成され、これらのグリーンシートを積層した積層体からバインダを除いて焼成することによってインク流路パターンを形成するように構成されている。
【特許文献1】特公平7−96301号公報
【特許文献2】特開平8−25625号公報
【特許文献3】特開平8−20109号公報
【特許文献4】特開2001−334662号公報
【特許文献5】特開平2−3311号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、d31モードの圧電素子を低電圧で駆動する場合や、高密度化のために圧電素子の寸法や取付位置に制約がある場合などには、圧電素子の厚みを薄くしなければならないことがある。グリーンシートやバルクを用いて非常に薄い(例えば、厚さ20〜30μm )圧電素子を作るにはハンドリング上の制約があり、一旦多数の層を積層させてハンドリング可能な厚みを得てから、加圧成形し焼成させた後に研磨やサンドブラスト等によって所定の厚さに加工する方法が用いられ、研磨やサンドブラスト等の後加工が必須となる。したがって、後加工による加工コストの上昇を招くと共に、研磨やサンドブラストでの厚み制御が難しいといった問題が生じてしまう。
【0014】
また、グリーンシート等の薄板を単層で作る場合、圧電素子を焼成させる際の熱によって圧電素子に反りが発生することがあり、振動板との接合不良が起きたり、印字ヘッド全体に反りが起きたりすることがある。特に、被印字媒体の印字可能領域の全幅に対応したフルライン型ヘッド等の長尺ヘッド用の圧電素子ではその長手方向に反りが顕著に現れる。印字ヘッドに反りが起こると被印字媒体上のインク着弾位置にずれを生じ、印字性能を低下させてしまう。
【0015】
特許文献1に記載されたセラミックインクジェットヘッドとその製造方法では、接着工程を除去するために、圧力室と積層圧電体を一体で形成させる手法が開示されているが、圧電体(インクジェットヘッド)の反りについては開示されていない。
【0016】
また、特許文献2に記載されたインクジェット記録ヘッド及びその製造方法では、圧電体の焼成工程におけるインクキャビティの寸法変化及び圧電体の欠損の防止が目的であり、圧電体の薄膜化や反り防止については開示されていない。
【0017】
また、特許文献3に記載されたインクジェット記録ヘッド及びその製造方法では、寸法精度の向上と製造容易、低価格化が目的であり、圧電体の薄板化や反り防止については開示されていない。
【0018】
また、特許文献4に記載されたインクジェット記録ヘッドでは、圧電素子の幅を広げるとノズル密度が低下するために、高密度化(マルチ化)が難しい。また、配線の引き出し方法が複雑になり、配置精度を得ることが難しい。
【0019】
また、特許文献5に記載されたインクジェットヘッド及びその製造方法では、高密度化するためには各層を薄肉化する必要があり、印字ヘッド全体の強度が低下する恐れがある。
【0020】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、薄板状の圧電体を容易に製造できると共に圧電体の焼成時に起こる反りを防止する吐出ヘッド及び吐出ヘッド製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0021】
前記目的を達成するために請求項1に係る発明は、被吐出媒体上に液滴を吐出させる吐出ヘッドであって、電極材料及び圧電材料が交互に積層され、電界を作用させると歪みを生じる圧電活性部が含まれる圧電体基板と、前記圧電体基板に積層接合され、前記被吐出媒体上に吐出させる液を収容する圧力室及び前記圧力室に液が供給される際の液流路が含まれる流路部材と、を備え、前記圧電体基板は、前記圧電活性部の前記圧力室が積層接合される面と反対側の前記圧電体基板内部に圧電材料が欠落した変形用低剛性部を有することを特徴としている。
【0022】
即ち、圧電活性部の圧力室と反対側の圧電体基板内部に圧電材料が欠落した変形用低剛性部を有するので、圧電体基板の厚みを厚くしても電界を作用させると歪みを生じる圧電活性部の厚みを薄くすることができる。したがって、該圧電体基板は製造時のハンドリングが容易であり、また、厚みが薄い圧電活性部を得るための研磨やサンドブラストなどによる圧電活性部の加工が不要になるので、該圧電基板の破損を防止でき、信頼性の向上が見込まれる。
【0023】
圧電活性部は、圧電体に電界(駆動電圧)を印加すると歪みが発生する部分を含み、駆動電圧が印加される個別電極配設領域が含まれる。言い換えると、圧電活性部は、その両面に電極が設けられる構造を有し、一方の電極(個別電極)に印加される駆動信号に応じて圧力室内の液に吐出力を与える圧電アクチュエータとして機能する。
【0024】
圧電体には、単層から成る単層圧電体や複数の圧電体層が積層された多層(スタック型)圧電体が含まれている。積層圧電体では圧電体層の間に電極層が形成され、各圧電体層は電極層に挟まれる構造を持ち、一方の電極は駆動信号の基準電位に接続される共通電極であり、もう一方の電極は駆動信号(駆動電圧)が印加される個別電極となる。
【0025】
また、圧電体には、1つの圧電体に複数の個別電極を備え、各個別電極を独立に制御することで1つの圧電体を等価的に複数の圧電体として機能させる電極分割型圧電体を含んでいてもよい。
【0026】
圧電材料には、チタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどの圧電セラミックを適用してもよい。
【0027】
流路形成部材には、圧電体基板が接合される面の反対側面に液滴の吐出孔が圧力室に対応して設けられている吐出孔部材が接合されてもよいし、該吐出孔部材を流路部材と一体形成してもよい。
【0028】
圧電体基板と流路部材とを積層接合させる態様は、圧電体基板の1つの面に流路部材を直接接合してもよいし、圧電体基板と流路部材とを他の部材を介して接合してもよい。
【0029】
圧電体基板の内部に設けられた変形用低剛性部は空洞(空隙)でもよいし、圧電材料よりも剛性が低い部材を充填してもよい。また、変形用低剛性部は圧電体基板で密閉されていてもよいし、開口や穴等を介して圧電体基板外部と連通されてもよい。
【0030】
吐出ヘッドには、被吐出媒体の全幅に対応する長さにわたって液滴を吐出させる吐出孔が並べられたフルライン型吐出ヘッドや、被吐出媒体の全幅に対応する長さよりも短い長さにわたって液滴を吐出させる吐出孔が並べられた短尺ヘッドを被吐出媒体の幅方向に走査させながら被吐出媒体上に液滴を吐出させるシリアル型吐出ヘッド(シャトルスキャン型吐出ヘッド)などがある。
【0031】
また、フルライン型の吐出ヘッドには、被吐出媒体の全幅に対応する長さに満たない短尺の吐出孔列を有する短尺ヘッドを千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、被吐出媒体の全幅に対応する長さとしてもよい。
【0032】
請求項2に示すように、請求項1に記載された発明は、前記圧電活性部は2層の圧電体を積層して形成されるバイモルフ型圧電体を含むことを特徴としている。
【0033】
バイモルフ型圧電体には、2つの圧電体を積層し(厚み方向に接合させ)、圧電横効果を利用して各層を互いに反対方向に歪ませる(一方は横方向に伸び、他方は横方向に縮む)ことで屈曲変位を得る圧電体を含んでいる。
【0034】
また、請求項3に示すように、請求項1に記載された発明は、前記圧電体基板と前記流路部材との間に前記圧電活性部の歪みに応じて変形する振動板を備えたことを特徴としている。
【0035】
振動板は圧電材料を用いて形成してもよいし、非圧電材料を用いて形成してもよい。
【0036】
また、請求項4に示すように、請求項3に記載された発明は、前記振動板は圧電部材を含む材料で形成されると共に前記圧電体基板と一体形成されることを特徴としている。
【0037】
即ち、振動板を圧電体基板と一体形成させることで、振動板を圧電体基板に接合させる工程を省略できるので、接合不良等を防止でき信頼性を向上させることができる。
【0038】
振動板が液と接する部分には耐液処理を施す態様が好ましい。
【0039】
また、請求項5に示すように、請求項1乃至4のうち何れか1項に記載された発明は、前記流路部材は非圧電部材を含む材料で形成されることを特徴としている。
【0040】
即ち、流路部材を非圧電材料で形成することで、該流路部材に含まれる圧力室、該圧力室に連通される液流路などの液適正(耐液性)が向上する。
【0041】
また、請求項6に示すように、請求項1乃至5のうち何れか1項に記載された発明は、前記圧電活性部はd31モードの変位を発生する圧電体を含むことを特徴としている。
【0042】
該圧電活性部にd31モードの変位を発生する圧電体を適用すると、安価で且つ、配線が容易である。
【0043】
31モードの変位を発生する圧電体に振動板を接合させると、該圧電体の横方向の歪み(圧電横効果)に応じて該振動板を縦方向に変位させることができる。なお、該圧電体の歪みを発生させる部分には個別電極が設けられる。
【0044】
また、2つのd31モードの変位を発生する圧電体を積層し、圧電横効果を利用して各層を互いに反対方向に歪ませる(一方は横方向に伸び、他方は横方向に縮む)ことで屈曲変位を得るバイモルフ型圧電体を形成することができる。
【0045】
また、請求項7に示すように、請求項1乃至6のうち何れか1項に記載された発明は、前記圧電体基板は、該圧電体基板内部に前記変形用低剛性部と前記圧電体基板の厚み方向に対称の位置に圧電材料が欠落した反り防止用低剛性部を備えたことを備えたことを特徴としている。
【0046】
即ち、変形用低剛性部と圧電体基板の積層方向(厚み方向)に対称の位置に反り防止用低剛性部を備えたので、圧電体基板に熱を与えて焼成させる際に発生する反りを抑制することができる。
【0047】
変形用低剛性部と反り防止用低剛性部は同一形状、同一サイズであることが好ましい。
【0048】
また、請求項8に示すように、請求項1乃至7のうち何れか1項に記載された発明は、前記圧電体基板は、該圧電体基板内部の電界を作用させても歪みを生じない圧電不活性部に圧電材料が欠落した干渉防止用低剛性部を備えたことを特徴としている。
【0049】
即ち、電界を作用させても歪みを生じない圧電不活性部に干渉防止用低剛性部を設けると、隣り合う圧力室の圧電体を駆動させるときに発生する隣接クロストークを緩和させることができる。
【0050】
また、請求項9に示すように、請求項8に記載された発明は、前記圧電体基板は、該圧電体基板内部に前記干渉防止用低剛性部の該圧電体基板の厚み方向に対称の位置に反り干渉防止用低剛性部を備えたことを特徴としている。
【0051】
即ち、反り防止用低剛性部と圧電体基板の厚み方向に対称の位置に反り干渉防止用低剛性部を備えることで、干渉防止用低剛性部を備えても、圧電体基板の焼成時に発生する反りを抑えることができる。
【0052】
また、前記目的を達成するために請求項10に記載された発明は、被吐出媒体上に液滴を吐出させる吐出ヘッドの製造方法であって、電極材料及び圧電材料が交互に積層され、電界を作用させると歪みを生じる圧電活性部を含んだ圧電体基板を形成させる圧電体基板形成工程と、前記圧電体基板に前記被吐出媒体上へ吐出させる液を収容する圧力室及び前記圧力室に液が供給される際の液流路が形成される流路部材を積層接合させる接合工程と、を含み、前記圧電体基板形成工程は、前記圧電活性部の前記圧力室と反対側の前記圧電体基板内部に圧電材料が欠落した変形用低剛性部を形成する変形用低剛性部形成工程を含むことを特徴としている。
【0053】
変形用低剛性部として形成された空洞部に圧電体基板に比べて剛性が低い部材を変形用低剛性部に充填する充填工程を含んでもよい。
【0054】
請求項11によれば、請求項10に記載された発明は、前記変形用低剛性部形成工程は、前記圧電体基板に前記圧電材料と比べて剛性が低い部材を含んだ少なくとも一部が除去される変形用低剛性部除去層を形成する変形用低剛性部除去層形成工程と、変形用低剛性部除去層形成工程によって形成された前記変形用低剛性部除去層に圧電材料を積層させる圧電層積層工程と、前記圧電層積層工程後の前記圧電体基板に熱を与えて前記圧電体基板を焼成させる際に、前記変形用低剛性部除去層の少なくとも一部が除去されて圧電材料が欠落した前記変形用低剛性部が形成される加熱工程と、を含むことを特徴としている。
【0055】
変形用低剛性部除去層には、加熱工程における熱によって少なくとも一部が焼失(溶解)して除去される部材が適用される。該部材には、バインダ樹脂などを適用してもよい。
【0056】
加熱工程によって、変形用低剛性部除去層が全て取り除かれてもよいし、該変形用低剛性部除去層の一部が残存してもよい。
【0057】
また、請求項12によれば、請求項11に記載された発明は、前記圧電体基板内部には、前記変形用低剛性部除去層と前記圧電体基板の前記圧電体基板の各層が積層される厚み方向に対称の位置に圧電材料と比べて剛性が低い部材を含んだ少なくとも一部が除去される反り防止用低剛性部除去層を形成させる反り防止用低剛性部除去層形成工程を含み、前記加熱工程によって前記反り防止用低剛性部除去層の少なくとも一部が除去されて圧電材料が欠落した反り防止用低剛性部が形成されることを特徴としている。
【0058】
反り防止用低剛性部除去層形成工程は変形用低剛性部除去層形成工程と同一手法を用いる態様が好ましい。
【0059】
また、請求項13によれば、請求項10、11又は12に記載された発明は、前記加熱工程後の前記圧電体基板に該圧電体基板と前記流路部材との間に非圧電材料を含む材料で形成される振動板を接合する振動板接合工程を含むことを特徴としている。
【0060】
振動板と圧電体基板の接合及び、流路部材と振動板との接合には接着剤を用いた接着などの方法が適用可能である。
【0061】
また、請求項14によれば、請求項10乃至13のうち何れか1項に記載された発明は、前記吐出力付与部材形成工程後の後加工によって、前記圧電体基板内部の電界を作用させても歪みを生じない圧電不活性部に圧電材料が欠落した干渉防止用低剛性部を形成させる干渉防止用低剛性部形成工程を含むことを特徴としている。
【0062】
即ち、圧電体基板を焼成させた後に後加工によって干渉防止用低剛性部を形成させるので、反り防止のために干渉防止用低剛性部とペアで形成される反り干渉防止用低剛性部を形成させる必要がない。
【0063】
干渉防止用低剛性部の形状は、溝形状でもよいし、穴形状でもよい。また、干渉防止用低剛性部は、1ヶ所の圧電不活性部に複数設けてもよい。
【発明の効果】
【0064】
本発明によれば、圧電活性部の圧力室と反対側の圧電体基板内部には、圧電材料が欠落した変形用低剛性部を有するので、圧電体基板の厚みを厚くしても圧電活性部の厚みを薄くすることができる。したがって、該圧電体基板は製造時のハンドリングが容易であり、また、厚みが薄い圧電活性部を得る際に研磨やサンドブラストなどによる圧電活性部の加工が不要になるので、該圧電基板の破損を防止でき、信頼性の向上が見込まれる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0065】
以下、図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0066】
〔本発明に係る印字ヘッドを搭載したインクジェット記録装置の全体構成〕
図1は本発明の実施形態に係る印字ヘッドが搭載されたインクジェット記録装置の全体構成図である。同図に示したように、このインクジェット記録装置10は、インクの色ごとに設けられた複数の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yを有する印字部12と、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに供給するインクを貯蔵しておくインク貯蔵/装填部14と、記録紙16を供給する給紙部18と、記録紙16のカールを除去するデカール処理部20と、前記印字部12のノズル面(インク吐出面)に対向して配置され、記録紙16の平面性を保持しながら記録紙16を搬送する吸着ベルト搬送部22と、印字部12による印字結果を読み取る印字検出部24と、印字済みの記録紙16(プリント物)を外部に排紙する排紙部26と、を備えている。
【0067】
図1では、給紙部18の一例としてロール紙(連続用紙)のマガジンが示されているが、紙幅や紙質等が異なる複数のマガジンを併設してもよい。また、ロール紙のマガジンに代えて、又はこれと併用して、カット紙が積層装填されたカセットによって用紙を供給してもよい。
【0068】
複数種類の記録紙を利用可能な構成にした場合、紙の種類情報を記録したバーコード或いは無線タグなどの情報記録体をマガジンに取り付け、その情報記録体の情報を所定の読取装置によって読み取ることで、使用される用紙の種類を自動的に判別し、用紙の種類に応じて適切なインク吐出を実現するようにインク吐出制御を行うことが好ましい。
【0069】
給紙部18から送り出される記録紙16はマガジンに装填されていたことによる巻きクセが残り、カールする。このカールを除去するために、デカール処理部20においてマガジンの巻きクセ方向と逆方向に加熱ドラム30で記録紙16に熱を与える。このとき、多少印字面が外側に弱いカールとなるように加熱温度を制御するとより好ましい。
【0070】
ロール紙を使用する装置構成の場合、図1のように、裁断用のカッター(第1のカッター)28が設けられており、該カッター28によってロール紙は所望のサイズにカットされる。カッター28は、記録紙16の搬送路幅以上の長さを有する固定刃28Aと、該固定刃28Aに沿って移動する丸刃28Bとから構成されており、印字裏面側に固定刃28Aが設けられ、搬送路を挟んで印字面側に丸刃28Bが配置される。なお、カット紙を使用する場合には、カッター28は不要である。
【0071】
デカール処理後、カットされた記録紙16は、吸着ベルト搬送部22へと送られる。吸着ベルト搬送部22は、ローラ31、32間に無端状のベルト33が巻き掛けられた構造を有し、少なくとも印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する部分が水平面(フラット面)をなすように構成されている。
【0072】
ベルト33は、記録紙16の幅よりも広い幅寸法を有しており、ベルト面には多数の吸引孔(不図示)が形成されている。図1に示したとおり、ローラ31、32間に掛け渡されたベルト33の内側において印字部12のノズル面及び印字検出部24のセンサ面に対向する位置には吸着チャンバ34が設けられており、この吸着チャンバ34をファン35で吸引して負圧にすることによってベルト33上の記録紙16が吸着保持される。
【0073】
ベルト33が巻かれているローラ31、32の少なくとも一方にモータ(図1中不図示,図7中符号88として記載)の動力が伝達されることにより、ベルト33は図1上の時計回り方向に駆動され、ベルト33上に保持された記録紙16は図1の左から右へと搬送される。
【0074】
縁無しプリント等を印字するとベルト33上にもインクが付着するので、ベルト33の外側の所定位置(印字領域以外の適当な位置)にベルト清掃部36が設けられている。ベルト清掃部36の構成について詳細は図示しないが、例えば、ブラシ・ロール、吸水ロール等をニップする方式、清浄エアーを吹き掛けるエアーブロー方式、或いはこれらの組み合わせなどがある。清掃用ロールをニップする方式の場合、ベルト線速度とローラ線速度を変えると清掃効果が大きい。
【0075】
なお、吸着ベルト搬送部22に代えて、ローラ・ニップ搬送機構を用いる態様も考えられるが、印字領域をローラ・ニップ搬送すると、印字直後に記録紙16の印字面をローラが接触するので画像が滲み易いという問題がある。したがって、本例のように、印字領域では画像面を接触させない吸着ベルト搬送が好ましい。
【0076】
吸着ベルト搬送部22により形成される記録紙搬送路上において印字部12の上流側には、加熱ファン40が設けられている。加熱ファン40は、印字前の記録紙16に加熱空気を吹き付け、記録紙16を加熱する。印字直前に記録紙16を加熱しておくことにより、インクが着弾後乾き易くなる。
【0077】
印字部12は、最大紙幅に対応する長さを有するライン型ヘッドを記録紙搬送方向と直交方向(主走査方向)に配置した、いわゆるフルライン型のヘッドとなっている(図2参照)。詳細な構造例は後述するが(図3乃至図5)、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yは、図2に示したように、本インクジェット記録装置10が対象とする最大サイズの記録紙16の少なくとも一辺を超える長さにわたってインク吐出口(ノズル)が複数配列されたライン型ヘッドで構成されている。
【0078】
記録紙16の送り方向(以下、記録紙搬送方向という。)に沿って上流側から黒(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)の順に各色インクに対応した印字ヘッド12K,12C,12M,12Yが配置されている。記録紙16を搬送しつつ各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yからそれぞれ色インクを吐出することにより記録紙16上にカラー画像を形成し得る。
【0079】
このように、紙幅の全域をカバーするフルラインヘッドがインク色ごとに設けられてなる印字部12によれば、副走査方向について記録紙16と印字部12を相対的に移動させる動作を一回行うだけで(すなわち1回の副走査で)、記録紙16の全面に画像を記録することができる。これにより、印字ヘッドが主走査方向に往復動作するシャトル型ヘッドに比べて高速印字が可能であり、生産性を向上させることができる。
【0080】
なお、本例では、KCMYの標準色(4色)の構成を例示したが、インク色や色数の組み合わせについては本実施形態に限定されず、必要に応じて淡インク、濃インクを追加してもよい。例えば、ライトシアン、ライトマゼンタなどのライト系インクを吐出する印字ヘッドを追加する構成も可能である。
【0081】
図1に示したように、インク貯蔵/装填部14は、各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yに対応する色のインクを貯蔵するタンクを有し、各タンクは不図示の管路を介して各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yと連通されている。また、インク貯蔵/装填部14は、インク残量が少なくなるとその旨を報知する報知手段(表示手段、警告音発生手段)を備えるとともに、色間の誤装填を防止するための機構を有している。
【0082】
印字検出部24は、印字部12の打滴結果を撮像するためのイメージセンサを含み、該イメージセンサによって読み取った打滴画像からノズルの目詰まりその他の吐出不良をチェックする手段として機能する。
【0083】
本例の印字検出部24は、少なくとも各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yによるインク吐出幅(画像記録幅)よりも幅の広い受光素子列を有するラインセンサで構成される。このラインセンサは、赤(R)の色フィルタが設けられた光電変換素子(画素)がライン状に配列されたRセンサ列と、緑(G)の色フィルタが設けられたGセンサ列と、青(B)の色フィルタが設けられたBセンサ列と、からなる色分解ラインCCDセンサで構成されている。なお、ラインセンサに代えて、受光素子が二次元配列されて成るエリアセンサを用いることも可能である。
【0084】
印字検出部24は、各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yにより印字されたテストパターンを読み取り、各印字ヘッドの吐出検出を行う。吐出判定は、吐出の有無、ドットサイズの測定、ドット着弾位置の測定などで構成される。
【0085】
印字検出部24の後段には、後乾燥部42が設けられている。後乾燥部42は、印字された画像面を乾燥させる手段であり、例えば、加熱ファンが用いられる。印字後のインクが乾燥するまでは印字面と接触することは避けたほうが好ましいので、熱風を吹き付ける方式が好ましい。
【0086】
多孔質のペーパーに染料系インクで印字した場合などでは、加圧によりペーパーの孔を塞ぐことでオゾンなど、染料分子を壊す原因となるものと接触することを防ぐことで画像の耐候性がアップする効果がある。
【0087】
後乾燥部42の後段には、加熱・加圧部44が設けられている。加熱・加圧部44は、画像表面の光沢度を制御するための手段であり、画像面を加熱しながら所定の表面凹凸形状を有する加圧ローラ45で加圧し、画像面に凹凸形状を転写する。
【0088】
こうして生成されたプリント物は排紙部26から排出される。本来プリントすべき本画像(目的の画像を印刷したもの)とテスト印字とは分けて排出することが好ましい。このインクジェット記録装置10では、本画像のプリント物と、テスト印字のプリント物とを選別してそれぞれの排出部26A、26Bへと送るために排紙経路を切り替える不図示の選別手段が設けられている。なお、大きめの用紙に本画像とテスト印字とを同時に並列に形成する場合は、カッター(第2のカッター)48によってテスト印字の部分を切り離す。カッター48は、排紙部26の直前に設けられており、画像余白部にテスト印字を行った場合に本画像とテスト印字部を切断するためのものである。カッター48の構造は前述した第1のカッター28と同様であり、固定刃48Aと丸刃48Bとから構成される。
【0089】
また、図1には示さないが、本画像の排出部26Aには、オーダー別に画像を集積するソーターが設けられる。
【0090】
次に、印字ヘッドの構造について説明する。インク色ごとに設けられている各印字ヘッド12K,12C,12M,12Yの構造は共通しているので、以下、これらを代表して符号50によって印字ヘッドを示すものとする。
【0091】
図3(a) は印字ヘッド50の構造例を示す平面透視図であり、図3(b) はその一部の拡大図である。また、図3(c) は印字ヘッド50の他の構造例を示す平面透視図、図4はインク室ユニットの立体的構成を示す断面図(図3(b) 中の4−4線に沿う断面図)である。なお、図4ではインクの吐出方向を上方向に示している。
【0092】
記録紙面上に印字されるドットピッチを高密度化するためには、印字ヘッド50におけるノズルピッチを高密度化する必要がある。本例の印字ヘッド50は、図3(a) 〜(c) 及び図4に示したように、インク滴が吐出されるノズル51と、各ノズル51に対応する圧力室52等からなる複数のインク室ユニット53を千鳥でマトリックス状に配置させた構造を有し、これにより見かけ上のノズルピッチの高密度化を達成している。
【0093】
即ち、本実施形態における印字ヘッド50は、図3(a) ,(b) に示すように、インクを吐出する複数のノズル51が記録紙搬送方向と略直交する方向に記録紙16の全幅に対応する長さにわたって配列された1列以上のノズル列を有するフルラインヘッドである。
【0094】
また、図3(c) に示すように、短尺の2次元に配列されたヘッド50’を千鳥状に配列して繋ぎ合わせて、印字媒体の全幅に対応する長さとしてもよい。
【0095】
各ノズル51に対応して設けられている圧力室52は、その平面形状が概略正方形となっており、対角線上の両隅部にノズル51と供給口54(図4には不図示)が設けられている。各圧力室52は供給口54を介して不図示の共通流路と連通されている。
【0096】
図4に示すように、インク室ユニット53(印字ヘッド50)は、電極層を形成する電極材料と圧電体となる圧電材料が交互に積層されて多層の圧電体が形成される圧電体基板55の最上面には共通電極55Aが設けられている。圧電体基板55の最上位層が電極層になるように圧電体基板55を形成し、該最上位層となる電極層と共通電極55Aとを兼用してもよい。
【0097】
電極層を形成する電極材料には金、銀、銅、ニッケル、プラチナなどの金属材料が適用され、圧電体層を形成する圧電材料にはチタン酸ジルコン酸鉛やチタン酸バリウムなどが用いられる。
【0098】
また、共通電極55Aの圧電体基板55と反対側の面には振動板56が設けられている。振動板56は金属材料が用いられ、共通電極55Aと電気的に接続される。なお、振動板56と共通電極55Aとを兼用するように構成してもよい。振動板56の材料には金属材料以外にも、金属酸化物やシリコン、樹脂、圧電材料など様々な材料を適用可能である。振動板56に圧電材料が適用される場合には、圧電体基板55と振動板56とを一体形成させて圧電体の不活性部(駆動信号を与えても歪みを生じない領域)を振動板56として用いてもよい。
【0099】
更に、振動板56の共通電極55Aと反対側の面には圧力室52、供給口54(図4には不図示)、前記共通流路が形成されている流路部材52Aが設けられ、流路部材52Aの振動板56と反対側の面にはノズル51が形成されるノズルプレート51Aが設けられている。
【0100】
流路部材52A(圧力室52が形成される圧力室プレート)のうち、圧力室52となる領域には開口が形成される。この流路部材52Aと振動板56を接合させると、振動板56は圧力室52の1つの壁面を形成することになるので、振動板56は少なくとも圧力室52の壁面となる部分では耐インク性を備えた材料が用いられる。なお、振動板56の少なくとも圧力室52の壁面となる部分(インクと接触する部分)に耐インク処理を施してもよい。
【0101】
また、流路部材52Aには、金属や樹脂など、所定の剛性を有する非圧電材料が用いられる。流路部材52Aは、圧力室52や、前記共通流路、図4に示した供給口などとなる開口、穴、溝等が形成されるキャビティプレートを積層して構成してもよい。
【0102】
即ち、圧力室52を形成する壁面のうち、振動板56が接合される壁面以外の5つの壁面は、非圧電材料を用いて形成される。振動板56に非圧電材料を用いると、圧力室52を形成する壁面には非圧電材料が用いられる。
【0103】
なお、振動板56と流路部材52Aとの接合、流路部材52Aとノズルプレート51Aとの接合には接着剤を用いて接着してもよいし、これ以外の接合方法を用いてもよい。
【0104】
一方、圧電体基板55の圧電体層のうち、最も圧力室側にある一層には個別電極57が取り付けられる。即ち、圧電体基板55内部の圧力室52に対応する位置(図4では圧力室52の下部)には、インク吐出時に駆動信号が印加される個別電極57が接合される。
【0105】
言い換えると、個別電極57は最も圧力室側にある圧電体層(一層)の振動板56及び共通電極55A反対側の面に接合されている。また、個別電極57は共通電極55Aと同様に、金、銀、銅、ニッケル、プラチナなどの金属材料や金属酸化物材料が用いられる。
【0106】
圧電体層のうち最も圧力室側にある一層の個別電極57が接合される領域は、前記駆動信号に応じて歪みが起こる圧電活性部58としての機能を有する。即ち、共通電極55Aと個別電極57との間に挟まれた圧電体は、圧電効果を発生する圧電活性部58として機能する。
【0107】
個別電極57に駆動信号が印加されると、圧電活性部58には、共通電極55A及び個別電極57間に生じる電界によって該電界の方向と略直交する方向(図4の左右方向)に歪みが生じるので、圧電活性部58はd31モードの(圧電横効果)圧電体として機能する。
【0108】
上述した圧電活性部58の歪みに応じて、振動板56は図4の上下方向に変形され、この振動板56の変位に応じて圧力室52の体積が変化することによって、圧力室52の体積変化量に相当するインク量がノズル51から吐出される。
【0109】
即ち、単層圧電体を含んだ圧電活性部58をユニモルフ駆動させると、振動板56はインク吐出方向(図4では、下から上へ向かう方向)及びその反対方向に変位し、圧力室52に収容されているインクをノズル51から吐出させることができる。
【0110】
また、圧電活性部58の個別電極57の反対側の面は変形用低剛性部59が設けられている。変形用低剛性部59は、図4に示すように空洞部を設けてもよいし、圧電体より剛性が低い低剛性部材を用いてもよい。
【0111】
変形用低剛性部59には、ガラス系材料、ガラス繊維材料、チタン(Ti)合金、低ヤング率金属、ナノコンポジット材料(Si3 4 /BN、AIN/BN、Al2 3 /BN、SIC/BN)等を用いてもよい。また、変形用低剛性部59は圧電体基板55の外部と連通されてもよいし、圧電体基板55の外部と非連通でもよい。
【0112】
このように、個別電極57の圧電活性部58と反対側の面に圧電体基板55よりも剛性が低い低剛性部を設けることで、駆動信号が印加されるときに振動板56が変位することができるようになり、圧電体基板55の厚さに比べて十分に薄い圧電活性部58(圧電アクチュエータ)を形成することができる。
【0113】
かかる構造を有する多数のインク室ユニット53を図5に示す如く、主走査方向に沿う行方向及び主走査方向に対して直交しない一定の角度θを有する斜めの列方向に沿って一定の配列パターンで格子状に配列させた構造になっている。主走査方向に対してある角度θの方向に沿ってインク室ユニット53を一定のピッチdで複数配列する構造により、主走査方向に並ぶように投影されたノズルのピッチPはd× cosθとなる。
【0114】
すなわち、主走査方向については、各ノズル51が一定のピッチPで直線状に配列されたものと等価的に取り扱うことができる。このような構成により、主走査方向に並ぶように投影されるノズル列が1インチ当たり2400個(2400ノズル/インチ)におよぶ高密度のノズル構成を実現することが可能になる。以下、説明の便宜上、ヘッドの長手方向(主走査方向)に沿って各ノズル51が一定の間隔(ピッチP)で直線状に配列されているものとして説明する。
【0115】
なお、用紙の全幅に対応したノズル列を有するフルラインヘッドで、ノズルを駆動する時には、(1)全ノズルを同時に駆動する、(2)ノズルを片方から他方に向かって順次駆動する、(3)ノズルをブロックに分割して、ブロックごとに片方から他方に向かって順次駆動する等の駆動制御が行われ、記録紙16の幅方向(記録紙搬送方向と直交する方向)に1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るラインを印字するようなノズルの駆動を主走査と定義する。
【0116】
特に、図5に示すようなマトリクスに配置されたノズル51を駆動する場合は、上記(3)のような主走査が好ましい。即ち、ノズル51-11 、51-12 、51-13 、51-14 、51-15 、51-16 を1つのブロックとし(他にはノズル51-21 、…、51-26 を1つのブロック、ノズル51-31 、…、51-36 を1つのブロック、…として)記録紙16の搬送速度に応じてノズル51-11 、51-12 、…、51-16 を順次駆動することで記録紙16の幅方向に1ラインを印字する。
【0117】
一方、上述したフルラインヘッドと用紙とを相対移動することによって、上述した主走査で形成された1列のドットによるライン又は複数列のドットから成るラインの印字を繰り返し行うことを副走査と定義する。
【0118】
なお、本発明の実施に際してノズルの配置構造は図示の例に限定されない。例えば、主走査方向にノズル列が1列配置されていてもよいし、副走査方向に複数のノズルを有する配置でもよい。
【0119】
図6はインクジェット記録装置10におけるインク供給系の構成を示した概要図である。
【0120】
インク供給タンク60はインクを供給するための基タンクであり、図1で説明したインク貯蔵/装填部14に設置される。インク供給タンク60の形態には、インク残量が少なくなった場合に、不図示の補充口からインクを補充する方式と、タンクごと交換するカートリッジ方式とがある。使用用途に応じてインク種類を変える場合には、カートリッジ方式が適している。この場合、インクの種類情報をバーコード等で識別して、インク種類に応じた吐出制御を行うことが好ましい。なお、図6のインク供給タンク60は、先に記載した図1のインク貯蔵/装填部14と等価のものである。
【0121】
図6に示したように、インク供給タンク60と印字ヘッド50の中間には、異物や気泡を除去するためにフィルタ62が設けられている。フィルタ・メッシュサイズは、ノズル径と同等若しくはノズル径以下(一般的には、20μm程度)とすることが好ましい。
【0122】
なお、図6には示さないが、印字ヘッド50の近傍又は印字ヘッド50と一体にサブタンクを設ける構成も好ましい。サブタンクは、ヘッドの内圧変動を防止するダンパー効果及びリフィルを改善する機能を有する。
【0123】
また、インクジェット記録装置10には、ノズル51の乾燥防止又はノズル近傍のインク粘度上昇を防止するための手段としてのキャップ64と、ノズル面の清掃手段としてのクリーニングブレード66とが設けられている。
【0124】
これらキャップ64及びクリーニングブレード66を含むメンテナンスユニットは、不図示の移動機構によって印字ヘッド50に対して相対移動可能であり、必要に応じて所定の退避位置から印字ヘッド50下方のメンテナンス位置に移動される。
【0125】
キャップ64は、図示せぬ昇降機構によって印字ヘッド50に対して相対的に昇降変位される。電源OFF時や印刷待機時にキャップ64を所定の上昇位置まで上昇させ、印字ヘッド50に密着させることにより、ノズル面をキャップ64で覆う。
【0126】
印字中又は待機中において、特定のノズル51の使用頻度が低くなり、ある時間以上インクが吐出されない状態が続くと、ノズル近傍のインク溶媒が蒸発してインク粘度が高くなってしまう。このような状態になると、圧電活性部58が動作してもノズル51からインクを吐出できなくなってしまう。
【0127】
このような状態になる前に(圧電活性部58の動作により吐出が可能な粘度の範囲内で)圧電活性部58を動作させ、その劣化インク(粘度が上昇したノズル近傍のインク)を排出すべくキャップ64(インク受け)に向かって予備吐出(パージ、空吐出、つば吐き、ダミー吐出)が行われる。
【0128】
また、印字ヘッド50内のインク(圧力室52内)に気泡が混入した場合、圧電活性部58が動作してもノズルからインクを吐出させることができなくなる。このような場合には印字ヘッド50にキャップ64を当て、吸引ポンプ67で圧力室52内のインク(気泡が混入したインク)を吸引により除去し、吸引除去したインクを回収タンク68へ送液する。
【0129】
この吸引動作は、初期のインクのヘッドへの装填時、或いは長時間の停止後の使用開始時にも粘度上昇(固化)した劣化インクの吸い出しが行われる。なお、吸引動作は圧力室52内のインク全体に対して行われるので、インク消費量が大きくなる。したがって、インクの粘度上昇が小さい場合には予備吐出を行う態様が好ましい。
【0130】
クリーニングブレード66は、ゴムなどの弾性部材で構成されており、図示せぬブレード移動機構(ワイパー)により印字ヘッド50のインク吐出面(ノズル板表面)に摺動可能である。ノズル板にインク液滴又は異物が付着した場合、クリーニングブレード66をノズル板に摺動させることでノズル板表面を拭き取り、ノズル板表面を清浄する。なお、該ブレード機構によりインク吐出面の汚れを清掃した際に、該ブレードによってノズル51内に異物が混入することを防止するために予備吐出が行われる。
【0131】
図7はインクジェット記録装置10のシステム構成を示す要部ブロック図である。インクジェット記録装置10は、通信インターフェース70、システムコントローラ72、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78、プリント制御部80、画像バッファメモリ82、ヘッドドライバ84等を備えている。
【0132】
通信インターフェース70は、ホストコンピュータ86から送られてくる画像データを受信するインターフェース部である。通信インターフェース70にはUSB、IEEE1394、イーサネット、無線ネットワークなどのシリアルインターフェースやセントロニクスなどのパラレルインターフェースを適用することができる。この部分には、通信を高速化するためのバッファメモリ(不図示)を搭載してもよい。ホストコンピュータ86から送出された画像データは通信インターフェース70を介してインクジェット記録装置10に取り込まれ、一旦メモリ74に記憶される。メモリ74は、通信インターフェース70を介して入力された画像を一旦格納する記憶手段であり、システムコントローラ72を通じてデータの読み書きが行われる。メモリ74は、半導体素子からなるメモリに限らず、ハードディスクなど磁気媒体を用いてもよい。
【0133】
システムコントローラ72は、通信インターフェース70、メモリ74、モータドライバ76、ヒータドライバ78等の各部を制御する制御部である。システムコントローラ72は、中央演算処理装置(CPU)及びその周辺回路等から構成され、ホストコンピュータ86との間の通信制御、メモリ74の読み書き制御等を行うとともに、搬送系のモータ88やヒータ89を制御する制御信号を生成する。
【0134】
モータドライバ76は、システムコントローラ72からの指示にしたがってモータ88を駆動するドライバ(駆動回路)である。ヒータドライバ78は、システムコントローラ72からの指示にしたがって後乾燥部42等のヒータ89を駆動するドライバである。
【0135】
プリント制御部80は、システムコントローラ72の制御に従い、メモリ74内の画像データから印字制御用の信号を生成するための各種加工、補正などの処理を行う信号処理機能を有し、生成した印字制御信号(印字データ)をヘッドドライバ84に供給する制御部である。プリント制御部80において所要の信号処理が施され、該画像データに基づいてヘッドドライバ84を介して印字ヘッド50のインク液滴の吐出量や吐出タイミングの制御(打滴制御)が行われる。これにより、所望のドットサイズやドット配置が実現される。
【0136】
プリント制御部80には画像バッファメモリ82が備えられており、プリント制御部80における画像データ処理時に画像データやパラメータなどのデータが画像バッファメモリ82に一時的に格納される。なお、図7において画像バッファメモリ82はプリント制御部80に付随する態様で示されているが、メモリ74と兼用することも可能である。また、プリント制御部80とシステムコントローラ72とを統合して一つのプロセッサで構成する態様も可能である。
【0137】
ヘッドドライバ84はプリント制御部80から与えられる印字データに基づいて各色の印字ヘッド12K,12C,12M,12Yのアクチュエータを駆動する。ヘッドドライバ84にはヘッドの駆動条件を一定に保つためのフィードバック制御系を含んでいてもよい。
【0138】
不図示のプログラム格納部には各種制御プログラムが格納されており、システムコントローラ72の指令に応じて、制御プログラムが読み出され、実行される。前記プログラム格納部はROMやEEPROMなどの半導体メモリを用いてもよいし、磁気ディスクなどを用いてもよい。外部インターフェースを備え、メモリカードやPCカードを用いてもよい。もちろん、これらの記録媒体のうち、複数の記録媒体を備えてもよい。
【0139】
なお、前記プログラム格納部は動作パラメータ等の記録手段(不図示)と兼用してもよい。
【0140】
印字検出部24は、図1で説明したように、ラインセンサを含むブロックであり、記録紙16に印字された画像を読み取り、所要の信号処理などを行って印字状況(吐出の有無、打滴のばらつきなど)を検出し、その検出結果をプリント制御部80に提供する。
【0141】
プリント制御部80は、必要に応じて印字検出部24から得られる情報に基づいて印字ヘッド50に対する各種補正を行う。
【0142】
なお、図1に示した例では、印字検出部24が印字面側に設けられており、ラインセンサの近傍に配置された冷陰極管などの光源(不図示)によって印字面を照明し、その反射光をラインセンサで読み取る構成になっているが、本発明の実施に際しては他の構成でもよい。
【0143】
本実施形態では、フルライン型の印字ヘッドを例示したが、本発明はシャトル型ヘッドにも適用可能である。
【0144】
図8(a) 、(b) に、図4に示したインク室ユニット53の変形例を示す。なお、図8(a) 、(b) 中、図4と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0145】
図4では、圧電活性部58が単層の圧電体によって形成される態様を示したが、図8(a) には、圧電活性部58が3層の積層圧電体によって形成される態様を示し、図8(b) には、圧電活性部58が2層の積層圧電体によって形成される態様 (バイモルフ型)を示している。
【0146】
図8(a) に示す態様では、圧電活性部58は共通電極55A側から順に、第1の圧電体層55B、内層個別電極57A、第2の圧電体層55C、内層共通電極55D、第3の圧電体層55E、個別電極57が形成された積層構造を有している。
【0147】
また、第3の圧電体層55Eの内層共通電極55Dと反対側には、個別電極57及び変形用低剛性部59が形成される第4の圧電体層55Fが形成されている。
【0148】
共通電極55A及び内層共通電極55Dは電気的に接続され、また、個別電極57及び内層個別電極57Aは電気的に接続される。共通電極55Aと内層共通電極55Dとの接続方法、個別電極57と内層個別電極57Aとの接続方法は、接続される電極間に形成されたスルーホールを用いる方法など、公知の方法が用いられる。
【0149】
このように多層圧電体で形成された圧電活性部58では、第1の圧電体層55Bと第3の圧電体層55Eとは分極方向が同一になる。一方、第1の圧電体層55B(第3の圧電体層55E)と第2の圧電体層55Cとは異なる分極方向を有している。
【0150】
即ち、第1の圧電体層55Bの分極方向は内層個別電極57Aから共通電極55Aへ向かう方向(図8(a) では、下から上へ向かう方向)であり、第2の圧電体層55Cの分極方向は内層個別電極57Aから内層共通電極55Dへ向かう方向(図8では、上から下へ向かう方向)である。また、第3の圧電体層55Eの分極方向は個別電極57から内層共通電極へ向かう方向(図8(a) では、下から上へ向かう方向)である。
【0151】
図8(a) に示した圧電活性部58の個別電極57に駆動信号を印加すると、各圧電体層には印加電圧(作用する電界)の方向に応じて横方向の歪みが発生し、振動板56をインクの吐出方向及びその反対方向に変位させることができる。
【0152】
図8(a) に示したように、圧電活性部58を積層構造にすることで単層構造よりも大きなエネルギーを発生させることができる。
【0153】
図8(a) には振動板56に圧電材料を用い、圧電体基板55と一体成形される態様を例示したが、図4に示すように、振動板56には金属材料などの非圧電材料を用いてもよい。図8(a) に示す圧力室52は、図4に示した圧力室52と同様に、振動板56が接合(形成)される面を除いて非圧電材料が用いられる。
【0154】
また、図8(b) には、d31モードの圧電体である第1の圧電体層55B、第2の圧電体層55Cを積層させる構造を有し、第1の圧電体層55Bは横方向に伸びる歪みを発生し、第2の圧電体層55Cは横方向に縮む歪みを発生させるように駆動すると、該積層圧電体から成る圧電活性部58は縦方向(図8(b) では上方向に凸)の屈曲変位を得ることができるバイモルフ型圧電体として機能する。
【0155】
即ち、圧電活性部58は個別電極57側から順に、第1の圧電体層55B、内層共通電極55A、第2の圧電体層55C、第2の個別電極57’(内層個別電極層57A)が形成された積層構造を有している。なお、個別電極57の圧力室52側(即ち、インクと接する面)には所定の耐インク処理が施される。もちろん、個別電極57に耐インク性を有する材料を用いてもよい。
【0156】
このように、圧電活性部58にバイモルフ型圧電体を適用すると、振動板56を省略することができると供に、積層構造を簡素化することができる。
【0157】
次に、図9乃至図11を用いて、本実施形態の応用例を説明する。
【0158】
図9(a) は、圧電体基板55の立体構造を示す断面図であり、図9(b) は、インク室ユニット53の立体構造を示す断面図(図3(a) 中の9b−9b線に沿う断面図)である。なお、図9(a) 、(b) 中図4及び図8と同一又は類似する部分には同一の符号を付し、その説明は省略する。
【0159】
図9(a) 、(b) に示す圧電体基板55には、変形用低剛性部59及び反り防止用低剛性部102が複数形成されている。これら複数の変形用低剛性部は同一構成であり、同様に複数の反り防止用低剛性部は同一構成であるので、ここでは、複数の変形用低剛性部及び反り防止用低剛性部を代表して符号を付した変形用低剛性部59及び反り防止用低剛性部102について説明する。
【0160】
圧電体基板55の内部では、変形用低剛性部59と圧電体基板55の厚みを略2等分する面に対して対称な位置に反り防止用低剛性部102が設けられている。
【0161】
即ち、図9(a) に示す断面では、圧電体基板55の厚み方向を略2等分する線104に対して線対称の位置(厚み方向に対称の位置)に反り防止用低剛性部102が設けられている。
【0162】
言い換えると、圧電体基板55の厚み方向を略2等分する線104からの距離が略同一になるように、略同一形状、略同一サイズの変形用低剛性部59と反り防止用低剛性部102とが設けられている。なお、圧電体基板55の厚み方向を略2等分する線104は、図9(a) 、(b) の断面図上で圧電体基板55の厚みを略2等分する面を表している。
【0163】
一方、変形用低剛性部59には反り防止用低剛性部102と反対側の面に個別電極57が形成される。もちろん、変形用低剛性部59と反り防止用低剛性部102が同一形状、同一構造になるように反り防止用低剛性部102に個別電極57に相当する電極層を設けてもよい。
【0164】
本例では、変形用低剛性部59と略同一形状、略同一サイズの反り防止用低剛性部102を示したが、反り防止用低剛性部102を変形用低剛性部59と異なる形状、異なるサイズに形成してもよいし、1つの変形用低剛性部59に対して複数の反り防止用低剛性部102を設けてもよい。また、複数の変形用低剛性部59に対して1つの反り防止用低剛性部102を設けてもよい。
【0165】
即ち、圧電体基板焼成時の反りを防止するために、圧電体基板55全体の剛性がほぼ均一になるように、変形用低剛性部59に対応して反り防止用低剛性部102が設けられる。
【0166】
図9(b) には、図9(a) に示した変形用低剛性部59及び反り防止用低剛性部102が設けられた圧電体基板55に共通電極55A、振動板56、流路部材52A、ノズルプレート51Aが接合される状態を示す。
【0167】
図9(b) に示す圧電体基板55は1つの圧電体基板に複数の個別電極を設け、各個別電極ごとに駆動信号を与えて複数の圧電体として駆動させる電極分割型圧電体である。
【0168】
図9の如く形成された圧電体基板55では、製造時の焼成工程において発生する反りを防止することができる。なお、圧電体基板55の製造工程の詳細は後述する。
【0169】
図10(a) 、(b) には、図9(a) 、(b) に示した態様の変形例を示す。
【0170】
図10(a) に示す圧電体基板55は、図9(a) に示した圧電体基板55に共通電極55A及び圧電材料から成る振動板56が一体形成され、振動板56の内部には干渉防止用低剛性部110、圧電体基板55の内部には、干渉防止用低剛性部110と圧電体基板55の厚み方向を略2等分する線104に対して線対称の位置である厚み方向に対称の位置に反り干渉防止用低剛性部112が設けられている。
【0171】
干渉防止用低剛性部110は、図4及び図8示した圧電活性部58に対応した領域(即ち、変形用低剛性部59が設けられる領域)を除く、振動板56のうち、インク吐出時に圧電活性部58の歪みに応じて変形する変形領域114以外の非変形領域116に設けられている。また、干渉防止用低剛性部110と反り干渉防止用低剛性部112とは同一形状、同一サイズを有している。
【0172】
図10(b) は、図10(a) に示した圧電体基板55を用いたインク室ユニット53を示している。
【0173】
図10の如く形成された圧電体基板55では、製造時の焼成工程において発生する反りを防止することができると供に、インク吐出時に起こる隣接クロストークを緩和することが可能になる。
【0174】
即ち、干渉防止用低剛性部110はインク吐出時の隣接クロストーク緩和に寄与し、反り干渉防止用低剛性部112は干渉防止用低剛性部110を設けることによって起こり得る圧電体基板55の反りの防止に寄与する。
【0175】
図11には、圧電体基板55に隣接クロストークを緩和するための溝120を備えた態様を示す。
【0176】
図11に示すように、溝120は、圧電活性部58の両側のうち少なくとも一方の隣にある個別電極57が配設されていない圧電不活性部122に設けられ、圧電体基板55の焼成後に切削等の加工手段によって形成される。
【0177】
圧電不活性部122は、駆動信号が印加される個別電極57と共通電極55Aにはさまれていない領域を含んでおり、圧電活性部58の周囲を囲むように形成されている。即ち、圧電不活性部122は圧電基板55のうち圧電効果を生じない領域が含まれている。
【0178】
本例では、隣り合う圧電活性部の間に溝120を2本形成する態様を例示したが、もちろん、溝120は1本でもよいし、3本以上でもよい。また、溝120の形状は、図11に示すように、その断面形状が略長方形(四角形)でもよいし、穴形状などの他の形状でもよい。
【0179】
上述したように、隣接クロストークを緩和するための溝120を圧電体基板55焼成後に切削等の加工手段によって形成させるので、圧電体基板55の反り防止のために圧電体基板55内部の厚み方向に対象の位置(圧電体基板55の厚み方向を略2等分する線104に対して線対称の位置)に溝120に対応する溝を設けなくてもよい。
【0180】
上述した、図4及び図8に示した変形用低剛性部59、図9に示した変形用低剛性部59、反り防止用低剛性部102、図10に示した干渉防止用低剛性部110、反り干渉防止用低剛性部112、図11に示した溝120の内部に圧電体よりも合成の低い材料を充填してもよい。
【0181】
〔印字ヘッド製造方法〕
次に、本発明に係る印字ヘッド50の製造方法について詳説する。
【0182】
図12(a) 〜 (i)を用いて印字ヘッド50の製造方法をその工程の順を追って説明する。
【0183】
図12(a) は、グリーンシート積層工程を示している。
【0184】
グリーンシート積層工程では、グリーンシート(圧電材料)200と電極材料から成る内層電極202とを交互に積層させ、圧電材料と電極材料との積層体204が形成される。なお、グリーンシートを積層させる代わりのスクリーン印刷によって積層体204を形成してもよいし、ゾルゲル法によって積層体204を形成してもよい。
【0185】
図12(b) は、バインダ印刷工程を示している。
【0186】
図4及び図8に示した変形用低剛性部59、図9乃至図11に示した変形用低剛性部59を形成させる部分にバインダ樹脂210が形成される。バインダ樹脂210に液体バインダを用いる場合には印刷手法が用いられる。一方、固体バインダを用いる場合にはバインダ固形物をフォトリソグラフ工程でグリーンシート上に着けてもよい。
【0187】
本工程で用いられるバインダ材料は、グリーンシート、印刷ペーストに用いられるバインダ材料であり、アクリル系、ポリウレタン系、ナイロン系、テフロン系、シリコン系などが考えられる。
【0188】
また、図12(a) に示した第1のグリーンシート積層工程において、図9に示した反り防止用低剛性部102及び図10に示した反り干渉防止用低剛性部112を形成させる部分にもバインダ樹脂210が印刷される。
【0189】
図12(c) は、個別電極形成工程を示している。
【0190】
図12(b) に示したバインダ印刷工程において、グリーンシート上に印刷されたバインダ樹脂210のグリーンシートと反対側には個別電極57となる電極材料が積層される。
【0191】
図12(d) は、第2のグリーンシート積層工程を示している。
【0192】
積層体204のバインダ樹脂210及び個別電極57形成面側に、更にグリーンシート200が積層される。
【0193】
図12(e) は、加圧工程及び脱脂・焼成工程を示している。
【0194】
第2のグリーンシート積層工程を経た積層体204は、厚み方向(図12の上下方向)に加圧成形された後に、脱脂及び焼成される。
【0195】
焼成工程では、積層体204には600℃〜1300℃の熱が加えられ、圧電材料は焼成され、バインダ樹脂210が焼失する。本工程において、バインダ樹脂210が焼失することによりグリーンシート間(圧電体層間)に変形用低剛性部59(変形用低剛性部59)となる空孔(空洞部)が形成される。
【0196】
なお、本工程において、バインダ樹脂210が完全に焼失せずにバインダ樹脂210が残った場合にも、残存したバインダ樹脂は低剛性体として作用し、吐出力(発生圧力)を上げることができ、振動防止効果(ダンパ効果)、破壊防止(信頼性の向上)の役割を果たす。
【0197】
図12(f) は、共通電極形成工程を示している。
【0198】
図12(e) に示した脱脂・焼成工程を経て、変形用低剛性部59が形成された圧電体基板55の上面側には電極材料から成る共通電極55Aが形成される。共通電極55Aを圧電体基板55上に形成させる方法には蒸着やスパッタなど公知の薄膜形成技術を用いることができる。
【0199】
図12(g) は、振動板接合工程を示している。
【0200】
図12(f) に示した共通電極形成工程によって形成された共通電極55Aには振動板56が接合される。
【0201】
なお、振動板56は圧電材料を用いて形成する場合には、共通電極形成工程と振動板接合工程は省略される。
【0202】
図12(h) は、流路部材接合工程を示している。
【0203】
図12(f) に示した振動板接合工程によって圧電体基板55に振動板56が接合されると、振動板56の圧電体基板55と反対側の面には流路部材52Aが形成される。
【0204】
図12(i) は、ノズルプレート接合工程を示している。
【0205】
図12(f) に示した流路部材接合工程によって流路部材52Aが接合されると、流路部材52Aの振動板56と反対側の面にはノズルプレート51Aが接合される。
【0206】
共通電極55Aと振動板56との接合及び、振動板56と流路部材52Aとの接合、流路部材52Aとノズルプレート51Aとの接合は、接着材を用いて接着してもよいし、他の接合方法を用いてもよい。
【0207】
個別電極57の配線及び圧電体基板55の内層にある電極層の配線は変形用低剛性部59(空孔)からビアを用いて引き出してもよい。また、図12(c) に示した個別電極形成工程に代わり、第2のグリーンシート積層工程において積層させるグリーンシート200のバインダ側の面全体に電極層を形成してこの電極層を共通電極とし、圧電体基板55の焼成後に圧電体基板の振動板接合面側に個別電極を形成してもよい。
【0208】
なお、圧電体基板55内部の内層電極層202は、図示せぬ配線工程によって、共通電極55A或いは個別電極57に配線され、図8に示した、内層共通電極55D及び内層個別電極57Aとして機能する。
【0209】
図10に示した干渉防止用低剛性部110を形成させる際には、共通電極55Aとなる電極層が形成された後に、干渉防止用低剛性部110が形成される位置にバインダ樹脂210が配置される。
【0210】
また、図11に示した溝120を形成する場合には、図12(e) に示した脱脂・焼成工程の後に溝加工工程が設けられる。
【0211】
更に、図4及び図8に示した変形用低剛性部59、図9に示した変形用低剛性部59、反り防止用低剛性部102、図10に示した干渉防止用低剛性部110、反り干渉防止用低剛性部112、図11に示した溝120の内部に圧電体よりも合成の低い材料を充填する充填工程を設けてもよい。
【0212】
上記の如く構成された印字ヘッド50は、圧電材料と電極材料とを交互に積層させた圧電体基板55を用いて印字ヘッド50から吐出されるインクの吐出力付与手段となる圧電体を形成し、また、圧電体焼成時に少なくとも一部が焼失するバインダ樹脂210を用いて圧電活性部58(圧電アクチュエータ)の圧力室52とは反対側に空孔などの変形用低剛性部59を設けたので、圧電体基板55に比べて厚みが薄い圧電活性部58(圧電活性部)を形成することができる。
【0213】
したがって、圧電体基板55に厚みがあるために大面積の印字ヘッドを製造する際にもハンドリング性を確保でき、更に、圧電体基板55の厚みに比べて十分に薄い圧電活性部58(圧電アクチュエータ)を形成する際に、研磨やサンドブラスト等の後工程が不要になる。
【0214】
圧電体基板55の内部には、変形用低剛性部59の圧電体基板55の厚み方向に対象の位置(圧電体基板55の厚み方向を略2等分する線104に対して線対称の位置)に反り防止用低剛性部102を設けたので、圧電体基板55焼成時の熱によって起こる反りを防止することができる。
【0215】
本実施形態では液滴の吐出ヘッドとしてインクジェット記録装置に用いられる印字ヘッドを例示したが、本発明は、ウエハやガラス基板、エポキシなどの基板類等の被吐出媒体上に液類(水、薬液、レジスト、処理液)を吐出させて画像、回路配線、加工パターンなどの形状を形成させる液吐出装置に用いられる吐出ヘッドにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0216】
【図1】本発明の実施形態に係る印字ヘッドを搭載したインクジェット記録装置の基本構成図
【図2】図1に示したインクジェット記録装置の印字周辺の要部平面図
【図3】印字ヘッドの構造例を示す平面透視図
【図4】図3中の4−4線に沿う断面図
【図5】図3に示した印字ヘッドのノズル配列を示す拡大図
【図6】本実施形態に係る印字ヘッドを搭載したインクジェット記録装置におけるインク供給系の構成を示した概念図
【図7】本実施形態に係る印字ヘッドを搭載したインクジェット記録装置のシステム構成を示す要部ブロック図
【図8】図4に示したインク室ユニットの変形例の立体構造を示す断面図
【図9】図4及び図8に示した圧電体基板及びインク室ユニットの変形例を示す図
【図10】図9に示した圧電体基板及びインク室ユニットの応用例を示す図
【図11】図9に示した圧電体基板の他の応用例を示す図
【図12】本発明に係る印字ヘッドの製造工程を説明する図
【符号の説明】
【0217】
10…インクジェット記録装置、50…印字ヘッド、52…圧力室、52A…流路部材、55…圧電体基板、55A,55D…共通電極、56…振動板、57,57A…個別電極、58…圧電活性部、59,100,102,110,112…低剛性部、120…溝、210…バインダ樹脂
【出願人】 【識別番号】000005201
【氏名又は名称】富士写真フイルム株式会社
【住所又は居所】神奈川県南足柄市中沼210番地
【出願日】 平成16年3月31日(2004.3.31)
【代理人】 【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三

【公開番号】 特開2005−288916(P2005−288916A)
【公開日】 平成17年10月20日(2005.10.20)
【出願番号】 特願2004−107853(P2004−107853)