| 【発明の名称】 |
発熱有機ガラスおよび発熱有機ガラスの製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】台座 摂人 【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
【氏名】別所 毅 【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
【氏名】松下 忍 【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自動車株式会社内
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| 【要約】 |
【課題】自動車用の窓ガラスなどに使用可能な、表面特性に優れた新規の発熱有機ガラスとその製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の発熱有機ガラスは、透明性樹脂基板1と、基板1の表面に形成された透明導電性膜2と、透明導電性膜2の上に形成された酸化ケイ素からなるハードコート膜3と、を有し、ハードコート膜3は、膜厚が3μm以上であることを特徴とする。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 透明性樹脂基板と、該基板の表面に形成された透明導電性膜と、該透明導電性膜の上に形成された酸化ケイ素からなるハードコート膜と、を有し 該ハードコート膜は、膜厚が3μm以上であることを特徴とする発熱有機ガラス。 【請求項2】 さらに、前記透明導電性膜の少なくとも一部に形成された一対の電極部材を有する請求項1記載の発熱有機ガラス。 【請求項3】 前記ハードコート膜は、真空蒸着法により前記基板の温度を100℃以下に保って成膜された酸化ケイ素膜である請求項1または2記載の発熱有機ガラス。 【請求項4】 前記透明導電性膜は、物理的または化学的成膜法により前記基板の温度を100℃以下に保って成膜された蒸着膜からなる請求項1〜3のいずれかに記載の発熱有機ガラス。 【請求項5】 前記透明導電性膜は、CVD法により成膜された蒸着膜である請求項4記載の発熱有機ガラス。 【請求項6】 前記透明導電性膜および前記ハードコート膜は、非晶質を含む膜である請求項1〜5のいずれかに記載の発熱有機ガラス。 【請求項7】 前記透明導電性膜は、酸化インジウム、酸化スズまたは酸化亜鉛を含む膜である請求項5または6記載の発熱有機ガラス。 【請求項8】 前記透明導電性膜は、スズを含む酸化インジウムの膜である請求項7記載の発熱有機ガラス。 【請求項9】 物理的または化学的成膜法により透明性樹脂基板の表面に該基板の温度を100℃以下に保って透明導電性膜を成膜する透明導電性膜成膜工程と、 SiOターゲットを用いた真空蒸着法により前記透明導電性膜の上に前記基板の温度を100℃以下に保ってSiO2 膜を成膜するSiO2 膜成膜工程と、 を有することを特徴とする発熱有機ガラスの製造方法。 【請求項10】 さらに、前記透明導電性膜の少なくとも一部に一対の電極部材を形成する電極部材形成工程を有する請求項9記載の発熱有機ガラスの製造方法。 【請求項11】 前記SiO2 膜は、膜厚が3μm以上成膜される請求項9または10記載の発熱有機ガラスの製造方法。 【請求項12】 前記透明導電性膜は、CVD法により成膜される請求項9〜11のいずれかに記載の発熱有機ガラスの製造方法。 【請求項13】 前記透明導電性膜は、酸化インジウム、酸化スズまたは酸化亜鉛を含む膜である請求項9〜12のいずれかに記載の発熱有機ガラスの製造方法。 【請求項14】 前記透明導電性膜は、スズを含む酸化インジウム膜である請求項13記載の発熱有機ガラスの製造方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 本発明は、通電により発熱する透明導電性膜を有する、発熱有機ガラスとその製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 発熱ガラスとしては、例えば、無機ガラスの表面に配設された加熱用金属線の発熱を利用してガラスの温度を上昇させ、結露を防止・除去する防曇ガラスが知られている。しかしながら、金属線がガラス表面に複数本配設された場合には、視界を遮る原因となり、特に自動車のフロントガラスなどに用いた際には安全性に問題が生じる。また、金属線には、環境負荷物質である鉛が用いられており、鉛を含まない発熱ガラスが要求されている。 【0003】 そこで、特許文献1には、金属線に代えて透明導電性膜をソーダライムガラス等の無機ガラス表面に配設した防曇ガラスが開示されている。特許文献1の防曇ガラスは、透明絶縁基板と、その基板上に成膜された透明導電性膜と、さらに透明導電性膜の上に成膜された膜厚0.5〜2μmの酸化ケイ素膜と、を有する。透明導電性膜を発熱体に用いれば、無機ガラスの表面全体に発熱体を配設しても、視界を遮ることがない。 【0004】 さらに、近年、自動車のサンルーフや住宅建材などに用いるガラスの軽量化が求められている。そこで、比重が小さく、加工が容易で、無機ガラスに比べて衝撃に強いという特徴を生かして、無機ガラスに代えて有機ガラスが利用されている。しかしながら、特許文献1と同様な構成を有機ガラスにそのまま適用することは容易ではない。有機ガラスは耐熱温度が低いため、耐熱温度の高い無機ガラスと比較して、熱処理や成膜条件に温度の制限がある。また、可撓性を有する有機ガラスは、特許文献1と同様な構成の膜を表面に形成しても、無機ガラスと同様な表面特性(耐摩耗性、密着性など)を得ることは不可能である。 【特許文献1】特開2001−210144号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0005】 本願発明者は、上記問題点に着目し、無機ガラスの代用として有機ガラスを基板として用いた場合でも、その表面に形成する膜の構成や成膜条件を最適なものにすることで、耐摩耗性や密着性といった表面特性に優れた発熱有機ガラスが得られることに想到した。 【0006】 すなわち、本発明の目的は、例えば、自動車用の防曇ガラスとしても使用可能な、表面特性に優れた新規の発熱有機ガラスとその製造方法を提供することにある。 【課題を解決するための手段】 【0007】 本発明の発熱有機ガラスは、透明性樹脂基板と、該基板の表面に形成された透明導電性膜と、該透明導電性膜の上に形成された酸化ケイ素からなるハードコート膜と、を有し、該ハードコート膜は、膜厚が3μm以上であることを特徴とする。酸化ケイ素からなるハードコート膜を有する発熱有機ガラスは、耐摩耗性に優れる。そして、透明導電性膜は、発熱体としての役割だけではなく、同時に、ハードコート膜のプライマーとして働き、ハードコート膜の剥離を防止する。また、ハードコート膜の膜厚が3μm以上の発熱有機ガラスは、特に耐摩耗性に優れ、例えば、自動車用の防曇ガラスとして好適である。 【0008】 さらに、本発明の発熱有機ガラスは、前記透明導電性膜の少なくとも一部に形成された一対の電極部材を有するのが好ましい。 【0009】 前記ハードコート膜は、真空蒸着法により前記基板の温度を100℃以下に保って成膜された酸化ケイ素膜であるのが好ましい。また、前記透明導電性膜は、物理的または化学的成膜法により前記基板の温度を100℃以下に保って成膜された蒸着膜からなるのが好ましく、特に、CVD法により前記基板の温度を100℃以下に保って成膜された蒸着膜であるのが好ましい。 【0010】 前記透明導電性膜および前記ハードコート膜は、非晶質を含む膜であるのが好ましい。非晶質を含む透明導電性膜およびハードコート膜は、透明樹脂基板、透明導電性膜、ハードコート膜のそれぞれの熱膨張係数差による内部応力が緩和され、密着性や耐摩耗性に優れる。また、本発明の発熱有機ガラスは、透明導電性膜およびハードコート膜が非晶質を含むことにより、発熱有機ガラスの使用時に温度差を経験しても、内部応力が蓄積されたり、即座に剥離や亀裂が生じることが抑制されると考えられ、耐候性に優れる。 【0011】 前記透明導電性膜は、酸化インジウム、酸化スズまたは酸化亜鉛を含む膜であるのが好ましい。また、前記透明導電性膜は、スズを含む酸化インジウムの膜であるのが好ましい。 【0012】 また、本発明の発熱有機ガラスの製造方法は、物理的または化学的成膜法により透明性樹脂基板の表面に該基板の温度を100℃以下に保って透明導電性膜を成膜する透明導電性膜成膜工程と、SiOターゲットを用いた真空蒸着法により前記透明導電性膜の上に前記基板の温度を100℃以下に保ってSiO2 膜を成膜するSiO2 膜成膜工程と、を有することを特徴とする。表面にSiO2 膜が形成された発熱有機ガラスは、耐摩耗性に優れる。また、SiOターゲットを用いた真空蒸着法によりSiO2 膜を成膜すると、基板の温度の上昇を抑えることができ、剥離や亀裂などの損傷のないハードコート膜を樹脂基板に容易に成膜することができる。さらに、SiOターゲットを用いた真空蒸着法によれば、透明導電性膜の上でも、所望の膜厚のSiO2 膜を容易に得ることができる。 【0013】 さらに、本発明の発熱有機ガラスの製造方法は、前記透明導電性膜の少なくとも一部に一対の電極部材を形成する電極部材形成工程を有するのが望ましい。 【0014】 前記SiO2 膜は、膜厚が3μm以上成膜されるのが望ましい。SiO2 膜の膜厚が3μm以上とすることで、特に耐摩耗性に優れた発熱有機ガラスが得られ、この発熱有機ガラスは、例えば、自動車用の防曇窓ガラスとして好適である。 【0015】 前記透明導電性膜は、CVD法により成膜されるのが望ましい。そして、前記透明導電性膜は、酸化インジウム、酸化スズまたは酸化亜鉛を含む膜であるのが望ましい。特に、前記透明導電性膜は、スズを含む酸化インジウム膜であるのが望ましい。 【発明の効果】 【0016】 本発明の発熱有機ガラスは、透明性樹脂基板と、該基板の表面に形成された透明導電性膜と、該透明導電性膜の上に形成された酸化ケイ素からなるハードコート膜と、を有し、該ハードコート膜は、膜厚が3μm以上であることを特徴とする。酸化ケイ素からなるハードコート膜を有する発熱有機ガラスは、耐摩耗性や密着性に優れる。そして、透明導電性膜を有することにより、発熱体としての役割だけではなく、同時に、ハードコート膜のプライマーとして働き、ハードコート膜の剥離を防止する。また、ハードコート膜の膜厚が3μm以上の発熱有機ガラスは、特に耐摩耗性に優れ、例えば、自動車用の防曇ガラスとして好適である。 【0017】 また、本発明の発熱有機ガラスの製造方法は、物理的または化学的成膜法により透明性樹脂基板の表面に該基板の温度を100℃以下に保って透明導電性膜を成膜する透明導電性膜成膜工程と、SiOターゲットを用いた真空蒸着法により前記透明導電性膜の上に前記基板の温度を100℃以下に保ってSiO2 膜を成膜するSiO2 膜成膜工程と、を有することを特徴とする。表面にSiO2 膜が形成された発熱有機ガラスは、耐摩耗性や密着性に優れる。また、SiOターゲットを用いた真空蒸着法は、基板の温度の上昇を抑えることができ、剥離や亀裂などの損傷のないハードコート膜を樹脂基板に容易に成膜することができる。さらに、SiOターゲットを用いた真空蒸着法によれば、透明導電性膜の上でも、所望の膜厚のSiO2 膜を容易に得ることができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0018】 本発明の発熱有機ガラスおよび発熱有機ガラスの製造方法の実施の形態を説明する。 【0019】 [発熱有機ガラス] 本発明の発熱有機ガラスは、透明性樹脂基板と、該基板の表面に形成された透明導電性膜と、該透明導電性膜の上に形成された酸化ケイ素からなるハードコート膜と、を有する。 【0020】 透明樹脂基板は、発熱有機ガラスの用途に応じて十分な透明性や耐衝撃性などの特性を有する樹脂材料からなる基板であれば特に限定はない。例えば、自動車の窓ガラスに用いる発熱有機ガラスであれば、透明樹脂基板としてポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等が好ましい。また、透明樹脂基板は、その厚さが3mm以上であるのが好ましく、自動車用の窓ガラスであれば、4〜6mmであるのが好ましい。 【0021】 透明導電性膜は、透明樹脂基板の表面に形成される。透明導電性膜は、発熱体としての役割だけではなく、同時に、透明導電性膜上に形成されるハードコート膜のプライマーとして働き、ハードコート膜の剥離を防止する。透明樹脂基板は、その表面の耐摩耗性が十分ではないので、例えば、表面を酸化ケイ素膜のハードコート膜で被覆する。しかしながら、樹脂基板上に直接酸化ケイ素膜を成膜すると、樹脂基板と酸化ケイ素膜との熱膨張係数の差により内部応力が発生し、剥離や亀裂の原因となる。そこで本発明では、樹脂基板とハードコート膜との間に透明導電性膜を形成することで応力緩和され、ハードコート膜の剥離や亀裂が抑制され、密着性が高くなる。 【0022】 透明導電性膜の形成方法に特に限定はなく、通常行われている方法でよい。この際、基板の温度は、その基板の耐熱温度以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは50℃以下に保って成膜を行う。なお、成膜方法に関しては、[発電有機ガラスの製造方法]にて後述する。 【0023】 また、透明導電性膜は、非晶質を含むのが好ましい。主として非晶質を含む透明導電性膜は、ハードコート膜や樹脂基板との応力差が緩和されるため、内部応力の発生が抑制され、密着性や耐摩耗性に優れた透明導電性膜となると考えられる。さらに、発熱有機ガラスの使用時に温度差を経験しても、内部応力が蓄積されたり、即座に剥離や亀裂が生じることが抑制され、耐候性に優れる。なお、透明導電性膜の種類や成膜条件にもよるが、基板の温度を100℃以下に保って成膜された透明導電性膜は、主として非晶質を含む膜となる。また、透明導電性膜は、透明導電性膜の種類や発熱有機ガラスの使用温度範囲にもよるが、膜厚が0.1〜1μmであるのが好ましい。 【0024】 なお、透明樹脂基板の表面を熱処理やオゾン水処理などの表面処理を施して、基板表面を清浄表面とし、その上に透明導電性膜を形成してもよい。表面処理をすることにより、基板と透明導電性膜との密着性が向上する。 【0025】 また、透明導電性膜は、透明性を有し、かつ、導電性があり、電圧の印加により発熱する抵抗発熱体であればよく、酸化インジウム(In2 O3 )、酸化スズ(SnO2 )または酸化亜鉛(ZnO)を含む膜であるのが好ましい。他にもCdO、TiO2 、CdIn2 O4 、Cd2 SnO4 、Zn2 SnO4 、In2 O3 −ZnO系などを用いてもよい。これらの膜は、単層で用いても2層以上の多層膜で用いてもよい。また、特に好ましいのは、スズを含む酸化インジウム(ITO:Indium Tin Oxide)の膜である。ITOは、高透過率性と高電気伝導性の双方で優れているため、透明導電性膜として特に好ましい。なお、基板の温度を100℃以下に保って成膜したITO膜は、成膜条件にもよるが、主として非晶質を含む膜となる。 【0026】 透明導電性膜は、基板の表面の全面に形成しても、あるパターンで部分的に形成してもよい。さらに、透明導電性膜は、透明導電性膜の少なくとも一部に形成された一対の電極部材を有するのが好ましい。電極部材は、透明導電性膜よりも十分に抵抗の低いAu、Ag、Cuなどの金属や合金などが好ましい。 【0027】 ハードコート膜は、透明導電性膜の上に形成され、酸化ケイ素からなる。ハードコート膜は、樹脂基板および透明導電性膜を保護する役割を果たす。そして、膜厚が3μm以上のハードコート膜を有する発熱有機ガラスは、耐摩耗性に優れた発熱有機ガラスである。ハードコート膜の形成方法に特に限定はなく、通常行われている方法でよいが、3μm以上のハードコート膜を成膜するためには、真空蒸着法が好ましい。この際、基板の温度は、その基板の耐熱温度以下、好ましくは100℃以下、より好ましくは50℃以下に保って成膜を行う。なお、成膜方法に関しては、[発電有機ガラスの製造方法]にて後述する。 【0028】 また、ハードコート膜は、非晶質を含むのが好ましい。主として非晶質を含むハードコート膜は、ハードコート膜と透明導電性膜、および樹脂基板との応力差が緩和されるため、内部応力の発生が抑制され、密着性や耐摩耗性に優れた透明導電性膜となると考えられる。さらに、発熱有機ガラスの使用時に温度差を経験しても、内部応力が蓄積されたり、即座に剥離や亀裂が生じることが抑制され、耐候性に優れる。なお、基板の温度を100℃以下に保って成膜されたハードコート膜は、主として非晶質を含む酸化ケイ素膜となる。また、ハードコート膜の膜厚が3μm以上であると、耐摩耗性に優れた発熱有機ガラスとなり、例えば、自動車用の防曇ガラスとして好適である。 【0029】 本発明の発熱有機ガラスは、航空機、車輛、自動車の窓、建設機械の窓、ビル、家、ガレージ、温室、アーケードなどの窓の他、ショーケースや、各種レンズ等にも好適に使用することができる。また、本発明の発熱有機ガラスは、上記の積層構造に限るものではなく、樹脂基板の裏面などに、さらに他の層を形成してもよい。 【0030】 [発熱有機ガラスの製造方法] 本発明の発熱有機ガラスの製造方法は、物理的または化学的成膜法により透明性樹脂基板の表面に該基板の温度を100℃以下に保って透明導電性膜を成膜する透明導電性膜成膜工程と、SiOターゲットを用いた真空蒸着法により前記透明導電性膜の上に前記基板の温度を100℃以下に保って膜厚が3μm以上のSiO2 膜を成膜するSiO2 膜成膜工程と、を有する 透明導電性膜成膜工程では、透明性樹脂基板の表面に透明導電性膜を成膜する。透明樹脂基板は、発熱有機ガラスの用途に応じて十分な透明性や耐衝撃性などの特性を有する樹脂材料からなる基板であれば特に限定はない。例えば、自動車の窓ガラスに用いる発熱有機ガラスであれば、透明樹脂基板としてポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレン等を用いるのが好ましい。また、透明樹脂基板は、その厚さが3mm以上であるのが望ましく、得られる発熱有機ガラスの用途が自動車用の窓ガラスであれば、4〜6mmであるのが望ましい。 【0031】 透明導電性膜成膜工程では、物理的または化学的成膜法により、透明性樹脂基板の表面に透明導電性膜を成膜する。透明導電性膜の成膜方法は、透明導電性膜を成膜する方法として通常用いられている成膜方法であれば特に限定はなく、スパッタリング法、真空蒸着法、CVD法などのいずれの成膜法でもよい。また、透明導電性膜は、透明導電性膜の種類や発熱有機ガラスの使用温度範囲にもよるが、0.1〜1μmの膜厚を成膜するのが望ましい。 【0032】 また、透明導電性膜を成膜する際には、基板の温度は、その基板の耐熱温度以下、望ましくは100℃以下、より望ましくは50℃以下に保って成膜を行う。なお、透明導電性膜の種類や成膜条件にもよるが、基板の温度を100℃以下に保って成膜された透明導電性膜は、主として非晶質を含む膜となる。非晶質を含む膜により、発熱有機ガラスの内部応力が緩和されるため、密着性や耐摩耗性に優れた発熱有機ガラスが得られると考えられる。さらに、発熱有機ガラスの使用時に温度差を経験しても、内部応力が蓄積されたり、即座に剥離や亀裂が生じることが抑制され、耐候性に優れる。 【0033】 また、透明導電性膜は、透明性を有し、かつ、導電性があり、電圧の印加により発熱する抵抗発熱体であればよく、酸化インジウム(In2 O3 )、酸化スズ(SnO2 )または酸化亜鉛(ZnO)を含む膜であるのが望ましい。他にもCdO、TiO2 、CdIn2 O4 、Cd2 SnO4 、Zn2 SnO4 、In2 O3 −ZnO系などを用いてもよい。これらの膜は、単層で用いても2層以上の多層膜で用いてもよい。また、特に好ましいのは、スズを含む酸化インジウム(ITO:Indium Tin Oxide)の膜である。ITOは、高透過率性と高電気伝導性の双方で優れているため、透明導電性膜として特に好ましい。なお、成膜条件にもよるが、基板の温度を100℃以下に保って成膜したITO膜は、主として非晶質を含む膜となる。 【0034】 透明導電性膜は、基板の表面の全面に形成しても、あるパターンで部分的に形成してもよい。さらに、透明導電性膜の少なくとも一部に一対の電極部材を形成する電極部材形成工程を有するのが望ましい。電極部材形成工程は、透明導電性膜成膜工程の前工程でも後工程でもどちらでもよい。電極部材としては、透明導電性膜よりも十分に抵抗の低いAu、Ag、Cuなどの金属や合金などを用いるのが好ましい。 【0035】 なお、透明導電性膜成膜工程の前に、透明樹脂基板の表面を清浄にする表面処理工程を有してもよい。基板の表面処理をすることにより、基板と透明導電性膜との密着性が向上する。表面処理としては、熱処理や、オゾン水処理などが望ましい。 【0036】 SiO2 膜成膜工程では、SiOターゲットを用いた真空蒸着法により透明導電性膜の上に前記基板の温度を100℃以下に保って膜厚が3μm以上のSiO2 膜を成膜する。SiOターゲットを用いた真空蒸着法は、一般的なSiO2 ターゲットを用いた真空蒸着法に比べ、基板の温度が上昇しにくいので、長時間成膜を行った場合でも、基板の温度の上昇を抑制することができる。したがって、基板の温度を100℃以下に保ってある程度の膜厚(例えば3μm以上)の酸化ケイ素膜を容易に成膜することができる。 【0037】 なお、SiOターゲットを用いた真空蒸着法以外の他の成膜法(CVD法、スパッタリング法など)でもSiO2 膜の成膜は可能ではある。しかしながら、他の方法で透明導電性膜の上にSiO2 膜を成膜すると、成膜後に剥離が発生する、3μm以上の膜厚のSiO2 膜を成膜することができない、成膜中に基板の温度が上昇する、等の問題が生じる。すなわち、他の方法で成膜したSiO2 膜は、透明導電性膜との密着性が悪く、所望の膜厚を成膜できないため、本発明の発熱有機ガラスの製造方法としては適さない。 【0038】 基板の温度を100℃以下に保って成膜されたSiO2 膜は、主として非晶質を含む膜となる。非晶質を含む膜により、発熱有機ガラスの内部応力が緩和されるため、密着性や耐摩耗性に優れた発熱有機ガラスが得られると考えられる。さらに、発熱有機ガラスの使用時に温度差を経験しても、内部応力が蓄積されたり、即座に剥離や亀裂が生じることが抑制され、耐候性に優れる。 【0039】 また、本発明の発熱有機ガラスの製造方法は、上記の工程に限るものではなく、樹脂基板の裏面などに、さらに他の層を形成する工程を有してもよい。 【実施例】 【0040】 本発明の発熱有機ガラスおよび発熱有機ガラスの製造方法を、図を用いて説明する。なお、図1〜3は、以下に示すNo.1〜6までの発熱有機ガラスを模式的に示した平面図、側面図および断面図である。 【0041】 (試料1) 透明樹脂基板としてポリカーボネート(150mm×100mm×3mm)の基板1を準備した。基板1は、エタノールにて10分超音波洗浄後、120℃で2時間熱処理を行った。その後、基板1の表面および一側面に、スクリーン印刷法により銀ペーストを塗布し、一対の電極4を形成した。銀ペーストは、基板1の表面では両縁部に平行に帯状に塗布され(図1参照)、表面から一側面側へ延長(図2および3参照)するように塗布し、電極4とした。なお、発熱有機ガラスを発熱させる際には、基板1の側面に塗布された銀ペーストからなる電極4の端部に電圧を印加する。 【0042】 次に、基板1の電極4を形成した表面に、CVD法により膜厚0.3μmのITO透明導電性膜2を成膜した。この際、ターゲットには住友金属鉱山製ITOターゲットを用い、成膜時の真空度を1.3Pa、導入ガスをAr、O2 (流量は、Ar:O2 =99:1となるように成膜時の真空度により調整)、基板温度70℃、で成膜を行った。なお、成膜後の抵抗値は、300Ωであった。 【0043】 次に、透明導電性膜2の上に、真空蒸着法により膜厚4.0μmのSiO2 膜3を成膜した。この際、ターゲットにはフルウチ化学製SiOターゲットを用い、成膜時の真空度を5.3×10-2Pa、導入ガスをO2 (O2 流量は、成膜時の真空度により調整)、基板温度50℃、で成膜を行った。 【0044】 なお、透明導電性膜2およびSiO2 膜3を成膜中の基板温度は、成膜炉内の温度分布および成膜直後の基板温度より推定した。 【0045】 以上のようにして得られた発熱有機ガラスをNo.1とした。 【0046】 (試料2) SiO2 膜3の膜厚を3.0μmとした他は、試料1と同様にして、No.2の発熱有機ガラスを得た。 【0047】 (試料3) SiO2 膜3の膜厚を2.0μmとした他は、試料1と同様にして、No.3の発熱有機ガラスを得た。 【0048】 (試料4) SiO2 膜3をスパッタリング法により成膜し、膜厚を1.0μmとした他は、試料1と同様にして、No.4の発熱有機ガラスを得た。 【0049】 なお、SiO2 膜3の成膜の際は、ターゲットには真空冶金株式会社製SiO2 ターゲットを用い、成膜時の真空度を6.7×10-2Pa、導入ガスをAr(Ar流量:25sccm)、基板温度110℃、で成膜を行った。 【0050】 (試料5) SiO2 膜3の膜厚を0.5μmとした他は、試料4と同様にして、No.5の発熱有機ガラスを得た。 【0051】 (試料6) SiO2 膜3の膜厚が3.0μmとなるような成膜時間で成膜した他は、試料4と同様にして、発熱有機ガラスを作成した。得られた発熱有機ガラスをNo.6としたが、膜厚3.0μmのSiO2 膜3を有する発熱有機ガラスは得られなかった。 【0052】 [評価] No.1〜6の発熱有機ガラスに対して、試料表面の状態の観察と、耐摩耗性試験、冷熱繰り返し試験、耐湿性試験、耐碁盤目性試験、および可視光透過率測定を行った。 【0053】 耐摩耗性試験、耐湿性試験および可視光透過率測定は、JIS R3212(自動車用ガラス試験法)に従って行った。また、冷熱繰り返し試験および耐碁盤目性試験は、JIS D0202(自動車部品の塗膜通則)に従って行った。各試験の結果を、発熱有機ガラスの製作条件と合わせて表1に示す。なお、表1で、RHは真空蒸着法をSPはスパッタリング法を示す。 【0054】 表1において、試料表面の状態の観察は、剥離を目視により確認し、剥離までの日数を示した。耐摩耗性試験の結果は、摩耗による曇価増加分ΔH[%]で示した。冷熱繰り返し試験および耐湿性試験の結果は、試験後の試料表面を目視により評価した。また、耐碁盤目性試験の結果は、100個の碁盤目(分母)のうち試験後においても剥離しなかった碁盤目の数(分子)を示したものである。なお、耐碁盤目性試験の結果のうち、*印(試料No.4および5)は、剥離発生後に試験を行った結果である。 【0055】 また、X線回折(XRD)を行った。XRDによれば、No.1〜6の発熱有機ガラスでは、透明導電性膜2およびSiO2 膜3は、ともに非晶質膜であった。 【0056】 【表1】
【0057】 真空蒸着法で成膜したSiO2 膜3を有するNo.1〜3の発熱有機ガラスは、成膜後の剥離が発生せず、耐摩耗性、透明性、密着性に優れた発熱有機ガラスであった。また、冷熱繰り返し試験後、耐湿試験後に変化も見られず、耐候性にも優れた発熱有機ガラスであった。特に、No.1およびNo.2の発熱有機ガラスは、曇価増加分ΔHが4%以下であり、密着性、耐候性にも優れるため、例えば、自動車用の防曇有機ガラスとして好適である。 【0058】 一方、スパッタリング法で成膜したSiO2 膜3を有するNo.4〜6の発熱有機ガラスは、成膜後に剥離が発生した。中でも、No.6は、十分な成膜時間で成膜しても3.0μmの膜厚のSiO2 膜3を得られなかった。 【図面の簡単な説明】 【0059】 【図1】本発明の発熱有機ガラスを模式的に示した平面図である。 【図2】本発明の発熱有機ガラスを模式的に示した側面図であって、図1のY方向からの側面図である。 【図3】本発明の発熱有機ガラスを模式的に示した断面図であって、図1のX−X’断面の断面図である。 【符号の説明】 【0060】 1:透明樹脂基板 2:透明導電性膜 3:ハードコート膜(SiO2 膜) 4:電極
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| 【出願人】 |
【識別番号】000003207 【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社 【住所又は居所】愛知県豊田市トヨタ町1番地
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| 【出願日】 |
平成15年7月18日(2003.7.18) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100081776 【弁理士】 【氏名又は名称】大川 宏
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| 【公開番号】 |
特開2005−35248(P2005−35248A) |
| 【公開日】 |
平成17年2月10日(2005.2.10) |
| 【出願番号】 |
特願2003−276967(P2003−276967) |
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