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【発明の名称】 射出成形機のスクリュ制御方法
【発明者】 【氏名】山崎 隆
【住所又は居所】静岡県沼津市大岡2068の3 東芝機械株式会社内

【氏名】松林 治幸
【住所又は居所】静岡県沼津市大岡2068の3 東芝機械株式会社内

【氏名】山口 穣
【住所又は居所】静岡県沼津市大岡2068の3 東芝機械株式会社内

【要約】 【課題】射出成形機において、充填工程から保圧工程に移行する際に発生するサージ圧を抑えることにより、製品の品質の安定を図る。

【解決手段】計量工程の終了後、時間間隔毎にスクリュに対する位置指令を更新しながら、充填工程に対応する速度でスクリュを前進させる。これと並行して、上記の位置指令が保圧開始位置に到達したか否かについてモニターし、保圧開始位置に到達したとき、充填工程から保圧工程に移行する。この移行の際、次回の位置指令としてその時点の位置指令から予め設定された補正量だけ後退させた位置を与えることによって、スクリュを減速させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部にスクリュを備えた加熱バレル内に樹脂を導入し、溶融して貯える計量工程と、
位置指令に従ってスクリュの位置を制御することにより、加熱バレル内でスクリュを前進させて樹脂を金型内に充填する充填工程と、
位置指令に従ってスクリュの位置を制御することにより、金型内の樹脂の圧力を所定の値に維持する保圧工程と、
を備えた射出成形機のスクリュ制御方法において、
位置指令の値を監視し、その値が予め設定された保圧開始位置に到達したとき、充填工程から保圧工程に移行し、この移行の際に、その直前の位置指令よりも予め設定された補正量だけ後退させた位置を1回のみの位置指令として与えることによりスクリュを減速させることを特徴とする射出成形機のスクリュ制御方法。
【発明の詳細な説明】【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、射出成形機のスクリュの制御方法に係り、特に、加熱バレル内でスクリュを前進させて溶融樹脂を金型内に充填する過程で、充填工程から保圧工程に移行する際に、サージ圧の発生を抑えるためのスクリュの制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
射出成形機では、内部にスクリュを備えた加熱バレルを使用し、スクリュを回転させて加熱バレル内に樹脂を導入すると同時に樹脂を溶融し(「計量工程」と呼ぶ)、加熱バレル内に溶融樹脂が貯えられた後、スクリュを所定の速度で前進させて溶融樹脂を金型内に充填し(「充填工程」と呼ぶ)、スクリュが予め設定された位置(「保圧開始位置」と呼ぶ)に到達したところでスクリュを減速させ、次いで、金型内の樹脂の圧力が所定の値で維持されるようにスクリュの位置を制御している(「保圧工程」と呼ぶ)。
【0003】
この様な従来のスクリュ制御方法に関しては、次の様な問題があった。即ち、樹脂の充填を高速で行う必要がある場合、従来の制御方法ではスクリュの前進方向の慣性力を抑え切れないので、保圧工程に切り換わったところで大きなサージ圧が発生する。サージ圧が発生すると、保圧工程に切り換わった後での金型内の樹脂の圧力が不安定になる。その結果、射出成形製品の品質が安定せず、歩留まりにも悪い影響を及ぼす。また、金型を損傷することもある。
【0004】
なお、特開2000−167892号公報(特許文献1)には、薄肉の成形品を製造する場合に、バリなどの発生を防止する目的で、充填工程から保圧工程に移行する直前にスクリュを所定の位置まで後退させ、それによって成形品にかかる圧力を減少させることが記載されている(請求項1、パラグラフ[0006]、図1〜3)。
【0005】
特開2001−277322号公報(特許文献2)には、充填工程から保圧工程に移行する際にスクリュを所定の位置まで後退させ、それによって圧抜きを行って必要とする圧力波形を作ることが記載されている(請求項1、図2〜4)。
【0006】
特開2002−028960号公報(特許文献3)には、充填工程においてスクリュが保圧開始位置に到達したとき、所定の補正量だけ後退させた位置を位置指令として与え、それによってスクリュを減速させ、次いで保圧工程に移行することが記載されている(請求項1、図2)。
【0007】
特許文献1及び2に記載された方法では、スクリュが実際に後退する速度に樹脂が追い付かず、エアを巻き込むと言った問題がある。また、特許文献2及び3に記載された方法では、スクリュが実際に保圧開始位置に到達した時にスクリュの後退または減速を行うので、サージ圧抜きの効果が芳しくないと言う問題がある。
【0008】
【特許文献1】
特開2000−167892号公報
【0009】
【特許文献2】
特開2001−277322号公報
【0010】
【特許文献3】
特開2002−028960号公報(図2)
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、以上の様な射出成形機における従来のスクリュ制御方法の問題点に鑑み成されたものであり、本発明の目的は、射出の際、充填工程から保圧工程に移行するときのサージ圧の発生を抑え、これによって、高速で樹脂の充填を行った場合にも射出成形製品の品質を安定させることができるスクリュ制御方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明の射出成形機のスクリュ制御方法は、
内部にスクリュを備えた加熱バレル内に樹脂を導入し、溶融して貯える計量工程と、
位置指令に従ってスクリュの位置を制御することにより、加熱バレル内でスクリュを前進させて樹脂を金型内に充填する充填工程と、
位置指令に従ってスクリュの位置を制御することにより、金型内の樹脂の圧力を所定の値に維持する保圧工程と、
を備えた射出成形機のスクリュ制御方法において、
位置指令の値を監視し、その値が予め設定された保圧開始位置に到達したとき、充填工程から保圧工程に移行し、この移行の際に、その直前の位置指令よりも予め設定された補正量だけ後退させた位置を1回のみの位置指令として与えることによりスクリュの前進速度を減速させることを特徴とする。
【0013】
本発明の射出成形機のスクリュ制御方法によれば、充填工程において、位置指令の値が前記保圧開始位置に到達したとき、スクリュの位置指令として前記補正量だけ後退させた位置を指示することによって、スクリュを速やかに減速させることができる。これによって、サージ圧の発生を抑えることができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明に基づくスクリュ制御方法について、図面を用いて説明する。
【0015】
図1に、本発明の制御方法を電動式射出成形機に適用する場合の装置及び制御システムの構成の例を示す。図中、1は加熱バレル、2はスクリュ、3はホッパ、5は計量駆動モータ、6は射出駆動モータ、20は制御システムを表す。
【0016】
加熱バレル1の内部には、スクリュ2が組み込まれている。加熱バレル1の後端部(図においては右側)の近傍の側面には、ホッパ3が接続されている。加熱バレル1の先端部(図においては左側)は、金型(図示せず)の背面に接続される。成形材料となる樹脂9は、粒状に加工されたペレットであって、ホッパ3から加熱バレル1内に導入される。
【0017】
スクリュ2の後端部には、計量駆動モータ5及び射出駆動モータ6が接続されている。計量駆動モータ5は、計量の際、加熱バレル1内でスクリュ2を回転させる。これにより、樹脂9がホッパ3から加熱バレル1内に導入される。導入された樹脂9は、加熱、溶融、混練されてスクリュ2の前端側へ送られ、加熱バレル1の先端側に蓄えられる。これに伴い、加熱バレル1先端内の樹脂の圧力によってスクリュ2が後退し、おおむね後退量に応じた量の溶融樹脂が加熱バレル1の先端側に蓄えられる。射出駆動モータ6は、射出の際、スクリュ2を加熱バレル1内で前進させて溶融樹脂を金型内に充填する。
【0018】
計量駆動モータ5のシャフトには、スクリュ2の回転数を検出するスクリュ回転数検出器11が取り付けられている。射出駆動モータ6のシャフトには、スクリュ2の軸方向位置を検出するスクリュ位置検出器12が取り付けられている。スクリュ2の後端部には、射出圧力検出器13が取り付けられている。射出圧力検出器13は、スクリュ2によって加熱バレル1の先端側に蓄えられた樹脂9(溶融樹脂)に与えられる射出圧力を、スクリュ2の後端部に作用する反力から検出する。
【0019】
図1に示されているように、この電動式射出成形機の制御システム20は、計量駆動用アンプ21、射出駆動用アンプ22、センサ入力部23、演算部24、及びMMI/F(マンマシン・インタフェース)25、及び制御出力部26から構成されている。
【0020】
計量駆動用アンプ21は、スクリュ回転数検出器11によって検出されたスクリュ2の回転数のデータを取り込み、計量駆動モータ5の動きを制御するとともに、計量駆動モータ5への供給電流をセンサ入力部23へ送る。射出駆動用アンプ22は、射出駆動モータ6の動きを制御するとともに、スクリュ位置検出器12によって検出されたスクリュ2の軸方向位置のデータをセンサ入力部23へ送る。センサ入力部23は、射出圧力検出器13によって検出されたスクリュ2の射出圧力、計量駆動用アンプ21から送られた計量駆動モータ5への供給電流、及び射出駆動用アンプ22から送られたスクリュ2の軸方向位置の各データを、演算部24に送る。
【0021】
演算部24は、マンマシン・インタフェース25を介してオペレータから入力された指示に基づいて、スクリュ2の駆動条件を決定し、制御出力部26に指令を送る。制御出力部26は、計量駆動用アンプ21及び射出駆動用アンプ22に、それぞれ制御信号を送り、計量駆動モータ5及び射出駆動モータ6の動きを制御する。
【0022】
次に、図2に示すフローチャートを用いて、射出工程におけるスクリュ2の制御方法について説明する。
【0023】
フローチャート中で、「位置」とは、加熱バレル(1:図1)内におけるスクリュ(2:図1)の位置を意味し、スクリュの前進限(計量開始位置)を0mmとし、後退方向を正(+)としている。スクリュが前回の射出完了位置(前進限)にあるところから樹脂(9:図1)の計量が開始され、先に説明したように、スクリュはその前方に樹脂を送り込みながら次第に後退する。所定量の樹脂(溶融樹脂となっている)が加熱バレル内に貯えられたとき、スクリュの後退を停止させる。この停止位置を「計量完了位置」と呼ぶ。次いで、射出工程に移行し、スクリュを前進させて金型の中に溶融樹脂を充填する。なお、この例では、計量完了位置は100mmとする。
【0024】
「位置指令」とは、充填工程及び保圧工程におけるスクリュの位置についてのフィードバックループ上での基準入力信号を意味している。
【0025】
「分配位置」(ΔP)とは、充填工程及び保圧工程におけるスクリュの設定速度と圧力(例えば射出圧力検出器13で検出される射出圧力)との関係から求めたスクリュの移動指令速度(V)と、フィードバックループ上でスクリュの位置指令を更新する時間間隔(Δt)の積を意味している。
【0026】
なお、この例では、
V =10[mm/sec]
Δt= 1[msec]
ΔP=V・Δt=0.01[mm]
である。
【0027】
なお、フローチャート中の“=”記号は、上記の時間間隔(Δt)毎に位置指令が更新されることを意味し、具体的には、“=”の左側の値が右側の値で順次、置き換えられることを意味している。
【0028】
フローチャートに示すように、充填工程の開始時点において、位置指令には現在位置(具体的には、計量完了位置)が設定されている。充填工程の開始後、上記の時間間隔(Δt)毎に位置指令を更新しながら、充填工程に対応する所定の設定速度でスクリュを前進させる。このとき、実際のスクリュ位置をモニターして、スクリュを駆動する射出駆動モータ(6:図1)のフィードバックコントロールを行う。これと同時に、上記の位置指令が保圧開始位置(充填工程から保圧工程への切換がなされる位置)に到達したか否かについてもモニターする。なお、この例では、保圧開始位置は4mmである。
【0029】
位置指令が保圧開始位置に到達したときには、次回の位置指令を、その時の位置指令から予め設定されている補正量(図中「保圧開始時補正量」、この例では1mm)を加えた値に切り換える。即ち、その時の位置指令から上記の補正量だけ後退した位置に位置指令を設定する。これによって、スクリュが速やかに減速される。次いで、直ちに充填工程から保圧工程に移行する。
【0030】
保圧工程に移行した後は、再度、上記の時間間隔(Δt)毎に位置指令を更新しながら、保圧工程に対応する所定の設定速度でスクリュを前進させる。このときも、実際のスクリュ位置をモニターして、射出駆動モータのフィードバックコントロールを行う。これと同時に、予め設定されている射出工程の開始から測定して所定の経過時間(射出時間、例えば60秒)または保圧工程の開始から測定して所定の経過時間(保圧時間、例えば20秒)に到達したか否か(タイマがタイムアップしたか否か)、及びスクリュが前進限に到達したか否かについてもモニターする。
【0031】
上記の射出時間または保圧時間に到達したとき、またはスクリュが前進限に到達したときには、スクリュを停止して、射出工程を終了させる。
【0032】
図3に、本発明の制御方法を採用した場合の、スクリュの位置と速度及び射出圧力との関係の一例を示す。本発明の制御方法によれば、スクリュが保圧開始位置に到達する直前に、その速度が速やかに減速されるので、サージ圧がほとんど発生しない。
【0033】
図4に、従来の制御方法を採用した場合の、スクリュの位置と速度及び射出圧力との関係の一例を示す。従来の制御方法によれば、スクリュの減速が遅れる結果、大きなサージ圧が発生する。
【0034】
【発明の効果】
本発明の射出成形機のスクリュ制御方法によれば、充填工程から保圧工程に移行する際にスクリュを速やかに減速させることができる。これによって、サージ圧の発生が抑えられる。その結果、保圧工程に移行した後に金型内の樹脂の圧力が不安定になる現象が防止されるので、射出成形製品の品質を安定させ、歩留まりの向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に基づくスクリュ制御方法が適用される電動式射出成形機の概略構成を示す図。
【図2】本発明に基づくスクリュ制御方法を示すフローチャート。
【図3】本発明に基づく制御方法を採用した場合の、スクリュの位置と速度及び射出圧力との関係について説明する図。
【図4】従来の制御方法を採用した場合の、スクリュの位置と速度及び射出圧力の関係について説明する図。
【符号の説明】
1…加熱バレル、
2…スクリュ、
3…ホッパ、
5…計量駆動モータ、
6…射出駆動モータ、
9…樹脂、
11…スクリュ回転数検出器、
12…スクリュ位置検出器、
13…射出圧力検出器、
20…制御システム、
21…計量駆動用アンプ、
22…射出駆動用アンプ、
23…センサ入力部、
24…演算部、
25…マンマシン・インタフェース、
26…制御出力部。
【出願人】 【識別番号】000003458
【氏名又は名称】東芝機械株式会社
【住所又は居所】東京都中央区銀座4丁目2番11号
【出願日】 平成15年7月16日(2003.7.16)
【代理人】 【識別番号】100058479
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴江 武彦

【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲

【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠

【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊

【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男

【識別番号】100092196
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 良郎

【公開番号】 特開2005−35039(P2005−35039A)
【公開日】 平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願番号】 特願2003−197826(P2003−197826)