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【発明の名称】 磁気記録媒体の製造方法及びウェブ状体の裁断方法
【発明者】 【氏名】奥山 清貴
【住所又は居所】東京都中央区日本橋一丁目13番1号TDK株式会社内

【氏名】菊池 勉
【住所又は居所】東京都中央区日本橋一丁目13番1号TDK株式会社内

【氏名】菊原 透
【住所又は居所】山梨県中巨摩郡玉穂町中楯字布毛801メディアテック株式会社内

【要約】 【課題】磁気記録媒体用ウェブ等のウェブ状体を複数の回転受刃を持つ下刃と複数の回転刃を持つ上刃とで裁断するときに磁気記録媒体用のウエブ状体の幅寸法の歩留まりを向上できる磁気記録媒体の製造方法及びウェブ状体の裁断方法を提供する。

【解決手段】この磁気記録媒体の製造方法は、可撓性支持体上に少なくとも磁性層を形成したウェブ50を、複数の回転刃57aが所定間隔で配置された回転刃部57と、複数の回転受刃56aが所定間隔で配置され各回転受刃が段差61を有する円柱状の回転受刃部56と、を用いて各回転刃が各段差内に入り込むようにして裁断する際に、回転受刃部の各段差の回転軸方向の長さLを次の式を満足するように設定する設定する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性支持体上に少なくとも磁性層を形成した磁気記録媒体用ウェブを、複数の回転刃が所定間隔で配置された回転刃部と、複数の回転受刃が所定間隔で配置され前記各回転受刃が段差を有する円柱状の回転受刃部と、を用いて前記各回転刃が前記各段差内に入り込むようにして裁断する際に、前記回転受刃部の各段差の回転軸方向の長さLを次の式を満足するように設定することを特徴とする磁気記録媒体の製造方法。
26≦(L1/L)×100≦80
但し、L1:前記各回転刃の先端の厚さ
【請求項2】
前記回転受刃部の各段差の回転軸方向の長さLを次の式を満足するように設定することを特徴とする請求項1に記載の磁気記録媒体の製造方法。
(L/L2)×100≦12
但し、L2:前記各回転受刃の回転軸方向の長さ
【請求項3】
前記各回転刃は前記裁断を行うとき少なくとも前記段差に入り込む部分が板厚一定であることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項4】
前記各回転刃を前記円柱状の回転受刃部の外周側面の垂線に対し回転軸方向に傾斜させたことを特徴とする請求項1,2または3に記載の磁気記録媒体の製造方法。
【請求項5】
可撓性のウェブ状体を、複数の回転刃が所定間隔で配置された回転刃部と、複数の回転受刃が所定間隔で配置され前記各回転受刃が段差を有する円柱状の回転受刃部と、を用いて前記各回転刃が前記各段差内に入り込むようにして裁断する際に、前記回転受刃部の各段差の回転軸方向の長さLを次の式を満足するように設定することを特徴とするウェブ状体の裁断方法。
26≦(L1/L)×100≦80
但し、L1:前記各回転刃の先端の厚さ

【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体上に磁性層を形成した磁気記録媒体を回転受刃部と回転刃部とで所定幅に裁断する磁気記録媒体の製造方法及びウェブ状体の裁断方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、磁気テープ等の磁気記録媒体は、広幅の支持体に磁性塗料、及び必要に応じてアンダーコート塗料やバックコート塗料を連続的に塗布し塗膜を形成することでウェブを製造し、この支持体に塗膜の形成されたウェブをロール状に巻き取ることで原反ロールを製造した後に、ウェブを所定の幅に裁断することで製造されている。ウェブの裁断は、原反ロールからウェブを繰り出しスリッタと呼ばれる裁断装置に搬送し、裁断装置において複数の回転受刃を持つ回転受刃部(下刃)と複数の回転刃を持つ回転刃部(上刃)との間で切断することで行われる。
【0003】
円柱状の下刃には複数の段差溝が形成されることで複数の回転受刃が構成されている(下記特許文献1、2参照)。また、上刃の回転刃は、先端がナイフエッジ状ではなく板厚一定に環状に形成されており、その先端が被裁断体のウェブに対し若干傾斜している(下記特許文献3の第3図参照)。
【0004】
このような従来の裁断装置によれば、図5のように、上刃の回転刃104は板状の先端105がウェブWに対し若干傾斜した状態で回転しながら下刃101の段差102内に入り込んで、段差溝102の一方の壁面である回転受刃103との間でウェブWを裁断する。
【0005】
ところで、最近の磁気テープは、記憶容量の増大に伴い、磁気テープの全厚が薄くなるとともに支持体厚も薄くなってきている。かかる支持体に塗布される磁性層、アンダーコート層やバックコート層のウェブ幅方向の各厚さむらにより、ウェブを巻き取った原反ロールの幅方向に変形(凸凹)が発生し易くなり、従来の裁断方法では、裁断の際に磁気テープ幅が規格を外れることがあった。
【0006】
例えば、厚さ3〜10μmの支持体に、厚さ0.05〜3μmの磁性層、厚さ0.3〜3μmのアンダーコート層、そして厚さ0.2〜1.5μmのバックコート層を設け、更に、これを1000m〜20000mもの長さでロール状に巻き取るために、極微小な塗膜厚さのむらがあった場合、どうしても巻き上がり原反ロールの表面には幅方向に変形(凸凹)が発生してしまう。
【0007】
かかる原反ロールの凸凹部分ではウェブが伸び縮みしており、上述の図5のような裁断装置で裁断する際に、ウェブWが下刃101の回転受刃の段差溝102に食い込むときの食い込み方がウェブWの幅方向でばらつくために、裁断後の磁気テープ幅寸法がばらついてしまい、磁気テープの製造の歩留まりが悪化する結果となっていた。
【0008】
下記特許文献4は、下刃の段差幅を上刃の回転刃の厚さの1.5〜5倍とすることでウェブの切り口を良好にすることが開示するが、回転刃の先端形状がナイフエッジ状であり、また、回転刃がウェブに対しほぼ直角であり傾斜しておらず、上記図5のような裁断構造にそのまま適用できない。
【特許文献1】特許第2589213号特許公報
【特許文献2】特開2000−334692公報
【特許文献3】特開平1−321198号公報
【特許文献4】特開平1−78794号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述のような従来技術の問題に鑑み、磁気記録媒体用ウェブ等のウェブ状体を複数の回転受刃を持つ下刃と複数の回転刃を持つ上刃とで裁断し磁気記録媒体等を製造するときに磁気記録媒体等の幅寸法等の歩留まりを向上できる磁気記録媒体の製造方法及びウェブ状体の裁断方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上記問題を解消するために本発明者等が鋭意検討し研究した結果、回転受刃部の各段差の回転軸方向の長さLと各回転刃の先端の厚さL1との比(L1/L)を所定範囲内に、更には、回転受刃部の各段差の回転軸方向の長さLと各回転受刃の回転軸方向の長さL2との比(L/L2)を所定値以下とすることで解決できるとの知見を得、かかる知見に基づいてなされたものである。
【0011】
即ち、本発明による磁気記録媒体の製造方法は、可撓性支持体上に少なくとも磁性層を形成した磁気記録媒体用ウェブを、複数の回転刃が所定間隔で配置された回転刃部と、複数の回転受刃が所定間隔で配置され前記各回転受刃が段差を有する円柱状の回転受刃部と、を用いて前記各回転刃が前記各段差内に入り込むようにして裁断する際に、前記回転受刃部の各段差の回転軸方向の長さLを次の式(1)を満足するように設定することを特徴とする。
【0012】
26≦(L1/L)×100≦80 ・・・(1)
但し、L1:前記各回転刃の先端の厚さ
【0013】
この磁気記録媒体の製造方法によれば、回転受刃部の段差の回転軸方向の長さLに対する各回転刃の先端の厚さL1の比(L1/L)を26%以上として段差の厚さを規制することで、裁断前のウェブの回転受刃部の段差への食い込み方がウェブの幅方向でばらつかずに、その結果、裁断後の磁気記録媒体の幅変動がばらつかずに、磁気記録媒体の幅寸法の歩留まりを向上できるとともに、80%以下とすることで、回転刃部と回転受刃部とを組むときに回転刃と回転受刃とのぶつかり合いを防止できる。
【0014】
上記磁気記録媒体の製造方法において前記回転受刃部の各段差の回転軸方向の長さLを次の式(2)を満足するように設定することが好ましい。
【0015】
(L/L2)×100≦12 ・・・(2)
但し、L2:前記各回転受刃の回転軸方向の幅(mm)
【0016】
回転受刃部の段差の回転軸方向の長さLの、各回転受刃の回転軸方向の幅L2に対する比(L/L2)を12%以下として段差の厚さを規制することで、被裁断体であるウェブの回転受刃部の段差への食い込み方が磁気記録媒体の幅方向でばらつかずに、磁気記録媒体の幅寸法の歩留まりを更に向上できる。
【0017】
上記磁気記録媒体の製造方法において前記各回転刃は前記裁断を行うとき少なくとも前記段差に入り込む部分が板厚一定であることが好ましく、また、前記各回転刃を前記円柱状の回転受刃部の外周側面の垂線に対し回転軸方向に傾斜させることが好ましい。これにより、裁断のときに、回転刃を段差の側面に押し付けかつ撓ませながら回転させることができ、回転刃部や回転受刃部の振れ等の影響で回転刃と段差側面との接触がなくなることがなく、磁気記録媒体の切断面が乱れ難くなり、磁気記録媒体の歩留まり向上に寄与する。
【0018】
なお、この場合、回転刃部において各回転刃を確実に支持し固定するために皿ばねやコイルばね等の支持部材を配置することが好ましい。
【0019】
また、板厚一定の回転刃の厚さは、0.2〜0.6mmの範囲内であり、好ましくは0.35〜0.45mmの範囲内である。回転刃の厚さが0.6mmを越えると、撓み性が低下し回転刃と段差側面との接触が回転刃部や回転受刃部の振れ等によりなくなり易くなり、また、0.2mm未満であると、回転刃の剛性がなくなり、かえって回転刃と段差側面との接触がなくなり易くなる。
【0020】
また、回転刃の回転受刃部の外周側面の垂線に対する傾斜角は、30分乃至4度の範囲内が好ましい。傾斜角が30分未満であると、回転刃を段差の側面に充分に押し付けられず、また、4度を越えると、回転刃の撓み性が低下し、回転刃と段差側面との接触が悪化し易い。
【0021】
本発明によるウェブ状体の裁断方法は、可撓性のウェブ状体を、複数の回転刃が所定間隔で配置された回転刃部と、複数の回転受刃が所定間隔で配置され前記各回転受刃が段差を有する円柱状の回転受刃部と、を用いて前記各回転刃が前記各段差内に入り込むようにして裁断する際に、前記回転受刃部の各段差の回転軸方向の長さLを次の式(1)を満足するように設定することを特徴とする。
26≦(L1/L)×100≦80 ・・・(1)
但し、L1:前記各回転刃の先端の厚さ
【0022】
このウェブ状体の裁断方法によれば、回転受刃部の段差の回転軸方向の長さLに対する各回転刃の先端の厚さL1の比(L1/L)を26%以上として段差の厚さを規制することで、裁断前のウェブ状体の回転受刃部の段差への食い込み方がウェブ状体の幅方向でばらつかずに、その結果、裁断後のウェブ状体の幅変動がばらつかずに、ウェブ状体の幅寸法の歩留まりを向上できるとともに、80%以下とすることで、回転刃部と回転受刃部とを組むときに回転刃と回転受刃とのぶつかり合いを防止できる。
【0023】
なお、上記ウェブ状体の裁断方法において前記回転受刃部の各段差の回転軸方向の長さLを上記式(2)を満足するように設定することが好ましく、また、前記各回転刃は前記裁断を行うとき少なくとも前記段差に入り込む部分が板厚一定であることが好ましく、また、前記各回転刃を前記円柱状の回転受刃部の外周側面の垂線に対し回転軸方向に傾斜させることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明の磁気記録媒体の製造方法によれば、磁気記録媒体を複数の回転受刃を持つ回転受刃部と複数の回転刃を持つ回転刃部とで裁断し磁気記録媒体を製造するときに磁気記録媒体の幅寸法等の歩留まりを向上できる。
【0025】
また、本発明のウェブ状体の裁断方法によれば、裁断後のウェブ状体の幅変動がばらつかずに、ウェブ状体の幅寸法等の歩留まりを向上できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面を用いて説明する。図1は本実施の形態を示す磁気テープ裁断装置全体の概略的構成を示す側面図である。図2は図1の裁断部の一部を拡大して示す正面図である。図6は図2の回転刃と回転刃部とを拡大し図7の一点鎖線VI-VI線方向に切断して見た断面図である。図7は図2の上刃の回転刃と下刃の回転受刃を示す側面図である。
【0027】
図1に示すように、本実施の形態による磁気テープ裁断装置は、巻戻しリール51にロール状に巻回された帯状体の磁気テープ原反であるウェブ50を連続的に引き出して搬送し、テープの裁断部55で複数本の磁気テープ50aに裁断し、裁断した各磁気テープ50aを各ガイドローラ58を介して複数の巻取装置59の各巻取ハブ60に連続的に巻き取るように構成されている。
【0028】
図1の磁気テープ裁断装置では、巻戻しリール51から巻き戻されるウェブ50が複数のガイドロール52,54及びグランドサクションドラム53を通して裁断部55に搬送される。
【0029】
図2のように、裁断部55は、ウェブ50が巻き付くように円柱状に構成され所定間隔で配置された複数の回転受刃56aを有し回転軸56bを中心に回転する下刃(回転受刃部)56と、下刃56との間でウェブ50を複数本の磁気テープ50aに裁断するように所定間隔で配置された複数の回転刃57aを有し回転軸57bを中心に回転する上刃(回転刃部)57と、を備える。
【0030】
図2のように、下刃56の各回転受刃56aは、裁断される磁気テープ50aの幅に対応して所定幅L2に形成されるとともに、回転軸方向Pに長さLを有するように下刃56の表面から溝状に形成された段差61を備える。
【0031】
裁断部55の下刃56と上刃57は、図2のような回転受刃56aと回転刃57aとをそれぞれ多数備え、各回転刃57aが各回転受刃56aの段差61内に入り込むように設置されたスリット(磁気テープ1本の切断用)を多数構成し、1回の裁断で多数本の磁気テープを得ることができる。
【0032】
図2のように、上刃57は、表面に形成された溝64内で各回転刃57aを皿ばね63で押圧するようにして支持し固定している。また、図2,図6,図7のように、上刃57の各回転刃57aは、円形のシート状に形成され、回転軸縦方向に切断した断面形状が先端62に至るまで板厚一定に構成されており、回転刃57aが下刃56の外周側面56cの垂線に対し回転軸方向Pに角度θだけ若干傾斜している。傾斜角度θは、好ましくは30分乃至4度の範囲内であり、例えば1度程度とされる。
【0033】
上述の回転刃57aは、板厚が厚く先端部分がエッジナイフ状の回転刃に比べて板厚一定で薄く、その全厚が0.2〜0.6mm、好ましくは0.35〜0.45mmであり撓むことができる。また、回転刃57aが1度程度傾斜しているので、ウェブ裁断のときに、回転刃57aを段差61の側面61aに押し付け、上刃57の回転刃57aと下刃56の回転受刃56aとを隙間なく接触させることができる。
【0034】
以上のように、回転刃57aの板厚一定及び傾斜構造により、回転刃57aが可撓性のある状態でかつ段差61の側面61aに押し付けられた状態で回転でき、回転刃部57や回転受刃部56が回転中に振れても回転刃57aと段差61の側面61aとの接触がなくなることがなく、磁気テープの切断面が乱れ難くなる。磁気テープの切断面が乱れると、エッジ部分の磁性膜等の脱落が発生し、この脱落物がドロップアウトや装置側の磁気ヘッドの目詰まりの原因となるため、不良となってしまうが、かかる切断面の乱れを防ぐことができるので、磁気テープの歩留まり向上に寄与する。
【0035】
図7のように、裁断のときには、上刃57の回転刃57aと下刃56の回転受刃56aとが相対的に接近し、回転刃57aが段差61に入り込んで図7の段差61内の領域65に位置するが、このとき、板厚一定の回転刃57aは、図7の位置A,Bで回転受刃56aに対し図6のように接触し、ウェブ50が図7の横方向Fに搬送される場合は位置Aでウェブ50を切断する。
【0036】
図2のように、下刃56の各回転受刃56aと上刃57の各回転刃57aとは、それぞれ1対1に対応し1スリットを構成するが、ウェブ50は、図2の紙面垂直方向に搬送されてきて、回転中の下刃56と回転中の上刃57とが相対的に接近し、各スリットにおいて上述の図6,図7のようにして裁断され、複数スリット分の磁気テープ50aを得る。
【0037】
上述の下刃56と上刃57は、図6のように、回転刃57aの先端62の角と段差61の角とが位置Aで接触することで、ウェブ50を切断するが、この際、ウェブが完全に切れるまでは、ウェブ50は回転刃57aの先端62で段差61内に(図6の下方向)に押し込まれる。このようにウェブ50が段差61内に押し込まれ食い込むことに起因して、従来までは、磁気テープの幅が変動し易かったのであるが、本実施の形態では、次のようにしてかかる幅変動を抑えている。
【0038】
即ち、上述のような下刃56と上刃57において、下刃56の段差61の回転軸方向Pの長さLは、各回転刃57aが各段差61で裁断を行うとき、図6のように回転刃57aの厚さL1に対し、その比(L1/L)が26%以上となるように規制されている。更に、下刃56の段差61の長さLは、下刃56の各回転受刃56aの回転軸方向Pの長さである幅L2に対し、その比(L/L2)が12%以下となるように規制されている。
【0039】
もし段差61の長さLが比較的大きいと、上述のように裁断時に回転刃57aがウェブ50を段差61内に回転軸56bに向けて押し下げたときの食い込み方がばらつき易いのに対し、上述のように段差61の長さLを回転刃57aの厚さL1に対し上述の式(1)の範囲内となるように小さく規制することで、ウェブ50の段差61内への食い込み方がウェブ50の幅方向(回転軸方向P)でばらつかずに、磁気テープの幅寸法の歩留まりを向上できる。
【0040】
更に、好ましくは、下刃56の段差61の長さLを下刃56の各回転受刃56aの回転軸方向Pの長さである幅L2に対し上述の式(2)の範囲内となるように小さく規制することで、ウェブ50が下刃56の外周側面56cに接する部分が大きくなり、ウェブ50と外周側面56cとの接触による摩擦が大きくなるので、ウェブ50が段差61内に食い込むことを抑えることができ、ウェブ50の段差61への食い込み方がウェブ幅方向でばらつかずに、磁気テープの幅寸法の歩留まりを更に向上できる。
【0041】
また、上記比(L1/L)を80%以下とすることで、下刃56と上刃57とを組み込むときに、回転刃57aと回転受刃56a(段差61)とがぶつかり合うことを防止できる。
【0042】
なお、比(L1/L)における回転刃57aの厚さL1は、図2,図6,図7のように、位置A(ウェブが図7の横方向Fに搬送される場合)でウェブ50の実際の裁断に寄与する部分であるため、比(L1/L)は、ウェブ50の実際の裁断におけるウェブ50の段差61内への食い込み方の程度をよりよく表す係数であると考えられる。
【0043】
次に、磁気テープ原反(ウェブ)50について説明する。磁気記録媒体を製造するための磁気テープ原反は比較的薄い非磁性の支持体上に磁性層がほぼ全面に形成されているが、磁性層を形成するための磁性塗料に含まれる各構成材料、添加剤、または材料の混合、混練、分散、塗布等の製造方法には特に制限はないが、例えば、以下の材料を用いることができる。
【0044】
非磁性支持体としては、ポリエステル、ポリアミドまたは芳香族ポリアミドなどの既知の樹脂フィルムまたはこれらの積層樹脂フィルムから適宜選定することができ、その厚さ等についても既知の範囲内であり、特に制限されない。
【0045】
磁性層に用いる強磁性粉末は、好ましくは平均長軸長が0.15μm以下、より好ましくは0.03〜0.10μmの針状強磁性金属粉末である。平均長軸長が0.15μmを超えると、磁気テープに要求される電磁変換特性(特に、S/NおよびC/N特性)を十分に満足することができなくなる傾向にある。また、バリウムフェライト等の六方晶形酸化鉄粉末を用いることもできる。六方晶形酸化鉄粉末の板状比は2〜7が好ましい。また、TEM観察による平均一次板径が10〜50nmであることが好ましい。これよりも大きいと、磁性層表面が悪化する傾向にある。
【0046】
このような強磁性粉末は、磁性層組成中に70〜90重量%程度含まれていればよい。強磁性粉末の含有量が多すぎると結合剤の含有量が減少するためカレンダ加工による表面平滑性が悪化しやすくなり、一方、少なすぎると高い再生出力が得られにくくなる。
【0047】
磁性層用の結合剤樹脂としては、電子線硬化型樹脂の他、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化型樹脂、他の放射線硬化型樹脂やこれらの混合物を好適に使用することができ、特に制限されない。磁性層に用いられるこれらの結合剤樹脂の含有量は、強磁性粉末100重量部に対して5〜40重量部、特に、10〜30重量部が好ましい。結合剤樹脂の含有量が少なすぎると磁性層の強度が低下するため、走行耐久性が悪化し易くなる。一方、多すぎると強磁性金属粉末の含有量が低下するため、電磁変換特性が低下してくる。
【0048】
これらの結合剤樹脂を硬化させる架橋剤としては、例えば、熱硬化型樹脂の場合は、既知の各種ポリイソシアネートを挙げることができ、この架橋剤の含有量は結合剤樹脂100重量部に対し、10〜30重量部とすることが好ましい。また、磁性層中には、必要に応じ、研磨材、界面活性剤等の分散剤、高級脂肪酸、その他の各種添加物を添加してもよい。
【0049】
磁性層形成用の塗料は、上記成分に有機溶剤を加えることにより調製される。用いる有機溶剤は特に制限はなく、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソプチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤やトルエン等の芳香族系溶剤などの各種溶剤の1種または2種以上を適宜避択して用いればよい。有機溶剤の添加量は、固形分(強磁性金属粉末や各種無機粒子等)と結合剤樹脂との合計量100重量部に対して100〜1100重量部程度とすればよい。
【0050】
磁性層の厚さは3.0μm以下とし、好ましくは0.01〜0.50μm、さらに好ましくは0.02〜0.30μmとする。磁性層が厚すぎると、自己減磁損失や厚さ損失が大きくなる。
【0051】
アンダーコート層としての非磁性層を磁性層と非磁性支持体との間に設けることができ、これにより、薄層化された磁性層の電磁変換特性についての改良がなされ、より一層の信頼性の向上に役立つ。
【0052】
非磁性層に用いる非磁性粉末としては、各種無機質粉末を用いることができ、好ましくは、針状非磁性粉末、例えば、針状の非磁性酸化鉄(α−Fe)などを挙げることができる。その他、炭酸カルシウム(CaCO)、酸化チタン(TiO)、硫酸バリウム(BaSO)、α−アルミナ(α−Al)等の各種非磁性粉末を適宜配合してもよい。また、非磁性層にはカーボンブラックを用いることが好ましい。かかるカーボンブラックとしては、ゴム用ファーネスブラック、ゴム用サーマルブラック、カラー用ブラック、アセチレンブラック等を用いることができる。
【0053】
カーボンブラックと無機質粉末の配合比率は、重量比で100/0〜10/90が好ましい。無機質粉未の配合比率が90を上回ると、表面電気抵抗で問題が生じ易くなる。
【0054】
非磁性層用の結合剤樹脂としては、磁性層と同様の電子線硬化型樹脂の他に、従来公知の熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、他の放射線硬化型樹脂やこれらの混合物等が使用されるが、これらの中でも放射線硬化型樹脂が好ましい。
【0055】
また、非磁性層中には、さらに、必要に応じ、磁性層に用いた界面活性剤等の分散剤、高級脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコーンオイル等の潤滑剤、その他の各種添加物を添加してもよい。また、非磁性層用の塗料は、上記磁性層と同様の有機溶剤を同程度の添加量にて用いて作製することができる。
【0056】
非磁性層の厚さは、好ましくは2.5μm以下、より好ましくは0.1〜2.3μmである。この厚さを2.5μmより厚くしても性能の向上は望めず、却って、塗膜を設ける際、厚さが不均一になり易く、塗布条件が厳しくなり、表面平滑性も悪くなりがちになる。
【0057】
バックコート層は、走行安定性の改善や磁性層の帯電防止等のために、必要に応じて設けられる。バックコート層には、30〜80重量%のカーボンブラックを含有させることが好ましく、かかるカーボンブラックとしては通常使用されるものであればどのようなものであってもよく、上述の非磁性層に用いるものと同様のものを用いることができる。また、カーボンブラック以外に、必要に応じ、磁性層に用いた各種研磨材等の非磁性無機粉末や、界面活性剤等の分散剤、高級脂肪酸、脂肪酸エステル、シリコーンオイル等の潤滑剤、その他の各種添加物を添加してもよい。
【0058】
バックコート層の厚さ(カレンダー加工後)は、0.1〜1.5μm、好ましくは0.2〜0.8μmである。この厚さが1.0μmを超えると、磁気テープ摺接経路との間の摩擦が大きくなりすぎて、走行安定性が低下する傾向にある。一方、0.1μm未満では、磁気テープの走行時にバックコート層の塗膜削れが発生し易い。
【実施例】
【0059】
次に、実施例により本発明を更に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0060】
まず、次のようにして磁気テープ原反を作製した。
下記組成物を用いて磁性層形成のための磁性塗料を調整した。
【0061】
〈磁性層形成のための磁性塗料組成〉
(a)強磁性粉未 ・・・100重量部
(関東電化工業(株)製、Hc1700Oe、長軸長0.15μm
Fe/Si/Al/Ni/Co=100/2.6/5.8/3/5(原子比)BET値=52.0m/g)
(b)塩化ビニル共重合体 ・・・10重量部
(日本ゼオン(株)製、MR−110 重合度300、極性基−SO3−K含有)
(c)ポリウレタン樹脂 ・・・・8重量部
(日本ポリウレタン工業(株)製、N−3301、カルボン酸含有)
(d)α−Al ・・・15重量部
(住友化学工業(株)製HIT−60A、平均粒径0.2μm)
(e)メチルエチレケトン ・・・100重量部
(f)トルエン ・・・100重量部
(g)シクロヘキサノン ・・・40重量部
【0062】
上記組成物の溶剤の一部を除いてた組成物をニーダーにて十分に混練した後、残りの溶剤で希釈し、その後、サンドグラインドミルにて5時間分散を行った。その後に、下記のステアリン酸、ステアリン酸アミド、プチルステアレートと溶剤とともに投入し、更に1時間サンドグラインドミルにて分散を行った。
(h)ステアリン酸 ・・・1.0重量部
(i)プチルステアレート ・・・1.0重量部
(j)メチルエチルケトン ・・・30重量部
(k)トルエン ・・・30重畳部
(l)シクロヘキサノン ・・・15重量部
【0063】
このようにして得られた磁性塗料に硬化剤(日本ポリウレタン工業(株)製、コロネートL)3重量部添加し混合し、このものを更に平均孔径0.3μmのフィルタで濾過して磁性塗料を作製した。
【0064】
ついで、下記バックコート層形成のための塗料組成物を用い、バックコート層形成のためのバックコート塗料を作製した。
【0065】
〈バックコート層形成のための塗料組成物〉
(a)カーボンブラックA ・・・100量量部
(三菱化学社製、#42B、平均粒径22nm、BET134m/g)
(b)カーボンブラックB ・・・1.2重量部
(コロンピヤン社製、セバカーブMT-CI、平均粒径350nm、BET8m/g)
(c)塩化ビニール系樹脂 ・・・40重量部
(日信化学社製、SOLBAIN−A 重合度400、極性基−OH)
(d)ポリウレタン樹脂 ・・・40重量部
(日本ポリウレタン工業社製N−2304)
(e)α−Fe ・・・1重畳部
(戸田工業社製TF−100)
(f)メチルエチルレケトン ・・・150重量部
(g)トルエン ・・・150重量部
(h)シクロヘキサノン ・・・80重量部
【0066】
上記組成物の一部の溶剤を除いた組成物をニーダーにて十分に混練した後、残りの溶剤で希釈し、その後、サンドグラインドミルにて5時間分散を行った。その後に、下記の組成物を投入し、更に1時間サンドグラインドミルにて分散を行った。
(i)メチルエチルケトン ・・・400重量部
(j)トルエン ・・・400重量部
(k)シクロヘキサノン ・・・200重量部
【0067】
このようにして得られたバックコート塗料に硬化剤(日本ポリウレタン工業(株)製、コロネートL)20重量部添加し混合し、このものを更に平均孔径0.5μmのフィルタで濾過してバックコート塗料を作製した。
【0068】
以上のようにして得られた磁性層形成用の磁性塗料とバックコート層形成のためのバックコート塗料を用いて下記の要領で、全体長さが15000mの磁気テープ原反を作製した。
【0069】
まず、厚さ7.5μm、幅660mmのPETフィルム支持体の上に、上記磁性層形成用の磁性塗料を厚さ2.5μmとなるように塗設し、7000ガウスの配向磁石を印加し、その後塗膜を乾燥し、次いで温度90度、線圧260kg/cm、3ニップの条件でカレンダリング処理を行った。
【0070】
次に、上述のような磁性層形成の面とは反対側の支持体の面上に、上記バックコート層形成用のバックコート塗料を厚さ0.8μmとなるように塗設し、その後塗膜を乾燥し、次いで温度90度、線圧210kg/cm、3ニップの条件でカレンダリング処理を行った。
【0071】
以上のような一連の処理が完了したウェブを巻き取りロールに巻き取り磁気テープ原反とし、そのままの状態で24時間放置し、しかる後、熱硬化処理を60℃にて48時間行った。
【0072】
〈実施例1,2〉
【0073】
以上のようにして作製された磁気テープ原反を図1,図2の磁気テープ裁断装置にかけ、図2の下刃56の回転受刃56aの幅L2を12.65mm、上刃57の回転刃57aの厚さL1を0.40mm、段差61の長さLを1.2mmに設定し、12.65mm幅に裁断し、計50パンケーキ分の磁気テープを実施例1として得た。
【0074】
次に、段差61の長さLを1.5mmに設定した以外は、実施例1と同様にして計50パンケーキ分の磁気テープを実施例2として得た。
【0075】
〈比較例1,2〉
【0076】
図2の段差61の長さLを1.7mmに設定した以外は、実施例1と同様にして計50パンケーキ分の磁気テープを比較例1として得た。
【0077】
次に、段差61の長さLを2.0mmに設定した以外は、実施例1と同様にして計50パンケーキ分の磁気テープを比較例2として得た。
【0078】
上述のようにして得た実施例及び比較例の磁気テープについて次の条件でテープ幅の測定を行い、幅寸法が12.650±0.005mmの規格内に入っているか否かを調べ、テープ幅寸法の歩留まりを得た。
・幅測定器(ミツトヨ製LSMテープ幅測定装置)
・不可視光レーザ光使用
・測定数:1パンケーキについて長さ方向5点
【0079】
上記測定結果として表1に回転刃の先端の厚さL1と段差厚Lとの比(L1/L)(%)、段差厚Lと回転受刃幅L2との比(L/L2)(%)及び幅寸法歩留まり(%)を示す。図3に比(L1/L)と幅寸法歩留まりとの関係を示し、図4に比(L/L2)と幅寸法歩留まりとの関係を示す。
【0080】
【表1】


【0081】
表1,図3から分かるように、段差長さLが回転刃厚さL1に対し大きくなり、比(L1/L)が小さくなると、幅寸法歩留まりが低下し、L1/Lが比較例1,2のように26%未満となると、幅寸法の規格を満足せずに幅寸法歩留まりが低下したのに対し、L1/Lが26%以上の実施例1,2では、全て幅寸法の規格を満足し幅寸法歩留まりが100%であった。
【0082】
また、表1,図4から分かるように、回転受刃の幅L2が一定の条件下、段差長さLが大きくなると、幅寸法歩留まりが低下し、比(L/L2)が比較例1,2のように12%を越えると、幅寸法の規格を満足せずに幅寸法歩留まりが低下したのに対し、比(L/L2)が12%以下の実施例1,2では、全て幅寸法の規格を満足し幅寸法歩留まりが100%であった。
【0083】
以上のように本発明を実施の形態及び実施例により説明したが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で各種の変形が可能である。例えば、磁気テープ裁断装置のスリット本数は適宜増減できる。
【0084】
また、本実施の形態では、磁気テープ原反であるウェブを磁気テープに裁断する例を説明したが、裁断対象のウェブ状体は、磁気テープ原反に限定されず、他の種類のウェブ状体であってもよく、例えば、積層セラミックスコンデンサ・圧電部品・サーミスタ・バリスタ等の積層セラミック電子部品を製造する際に用いられる、セラミック粉末、バインダ、溶剤等を含む塗料を可撓性支持体に塗布したウェブであってよい。
【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】本実施の形態による磁気テープ裁断装置全体の概略的構成を示す側面図である。
【図2】図1の裁断部の一部を拡大して示す正面図である。
【図3】実施例及び比較例のテープの幅測定で得た回転刃の先端の厚さL1と段差厚Lとの比(L1/L)(%)と幅寸法歩留まり(%)との関係を示す図である。
【図4】実施例及び比較例のテープの幅測定で得た段差厚Lと回転受刃幅L2との比(L/L2)(%)と幅寸法歩留まり(%)との関係を示す図である。
【図5】従来の磁気テープ裁断装置の裁断部の要部を正面から見た断面図である。
【図6】図2の回転刃と回転刃部とを拡大し図7の一点鎖線VI-VI線方向に切断して見た断面図である。
【図7】図2の上刃の回転刃と下刃の回転受刃を示す側面図である。
【符号の説明】
【0086】
50・・・ウェブ、磁気テープ原反(ウェブ状体)
50a・・・磁気テープ(磁気記録媒体)
55・・・裁断部
56・・・下刃(回転受刃部)
56a・・・回転受刃
56b・・・下刃の回転軸
56c・・・下刃外周側面
57・・・上刃(回転刃部)
57a・・・回転刃
57b・・・上刃の回転軸
61・・・下刃の段差
62・・・回転刃の先端
L・・・各段差61の回転軸方向の厚さ
L1・・・各回転刃の先端の厚さ
L2・・・回転受刃の回転軸方向の幅

【出願人】 【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
【住所又は居所】東京都中央区日本橋1丁目13番1号
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタホールディングス株式会社
【住所又は居所】東京都千代田区丸の内一丁目6番1号
【出願日】 平成16年6月2日(2004.6.2)
【代理人】 【識別番号】100107272
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 敬二郎

【識別番号】100109140
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 研一

【公開番号】 特開2005−34985(P2005−34985A)
【公開日】 平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願番号】 特願2004−163963(P2004−163963)