| 【発明の名称】 |
軟磁性材料および圧粉磁心の製造方法 |
| 【発明者】 |
【氏名】廣瀬 和弘 【住所又は居所】兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友電気工業株式会社伊丹製作所内
【氏名】西岡 隆夫 【住所又は居所】兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友電気工業株式会社伊丹製作所内
【氏名】三村 浩二 【住所又は居所】兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友電気工業株式会社伊丹製作所内
【氏名】豊田 晴久 【住所又は居所】兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友電気工業株式会社伊丹製作所内
【氏名】前田 徹 【住所又は居所】兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友電気工業株式会社伊丹製作所内
【氏名】五十嵐 直人 【住所又は居所】兵庫県伊丹市昆陽北一丁目1番1号 住友電気工業株式会社伊丹製作所内
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| 【要約】 |
【課題】優れた磁気的特性を実現する軟磁性材料および圧粉磁心の製造方法を提供する。
【解決手段】軟磁性材料は、圧粉磁心の作製に用いられる軟磁性材料であって、複数の金属磁性粒子10を備える。ガス吸着法(BET法)によって測定された金属磁性粒子10の比表面積をαとし、レーザー散乱回折法によって測定された平均粒径から算出した金属磁性粒子10の見かけの比表面積をβとする場合、金属磁性粒子10は、α/β≦3.0の関係を満たす。 |
【特許請求の範囲】
【請求項1】 圧粉磁心の作製に用いられる軟磁性材料であって、 複数の金属磁性粒子を備え、 ガス吸着法(BET法)によって測定された前記金属磁性粒子の比表面積をαとし、レーザー散乱回折法によって測定された平均粒径から算出した前記金属磁性粒子の見かけの比表面積をβとする場合、前記金属磁性粒子は、α/β≦3.0の関係を満たす、軟磁性材料。 【請求項2】 前記金属磁性粒子は、α/β≦2.5の関係をさらに満たす、請求項1に記載の軟磁性材料。 【請求項3】 前記金属磁性粒子の表面を取り囲む絶縁被膜をさらに備える、請求項1または2に記載の軟磁性材料。 【請求項4】 前記絶縁被膜の平均厚みは、5nm以上100nm以下である、請求項3に記載の軟磁性材料。 【請求項5】 請求項1から4のいずれか1項に記載の軟磁性材料を用いた圧粉磁心の製造方法であって、 前記複数の金属磁性粒子を金型に投入する工程と、 前記複数の金属磁性粒子を加圧成形して成形体を形成する工程とを備える、圧粉磁心の製造方法。 【請求項6】 前記複数の金属磁性粒子を金型に投入する工程は、熱可塑性樹脂、非熱可塑性樹脂および高級脂肪酸系潤滑剤からなる群より選ばれた少なくとも一種を含む有機物を、前記成形体に対する前記有機物の割合が0.001質量%以上0.2質量%以下となるように前記複数の金属磁性粒子に添加する工程を含む、請求項5に記載の圧粉磁心の製造方法。 【請求項7】 前記複数の金属磁性粒子を金型に投入する工程は、前記金型の内壁に潤滑剤を塗布する工程を含む、請求項5または6に記載の圧粉磁心の製造方法。 【請求項8】 前記複数の金属磁性粒子を金型に投入する工程は、前記金型の内壁および前記複数の金属磁性粒子の少なくともいずれか一方を40℃以上の温度に加熱する工程を含む、請求項5から7のいずれか1項に記載の圧粉磁心の製造方法。
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【発明の詳細な説明】【技術分野】 【0001】 この発明は、一般的には、軟磁性材料および圧粉磁心の製造方法に関し、より特定的には、複数の金属磁性粒子を備える軟磁性材料および圧粉磁心の製造方法に関する。 【背景技術】 【0002】 近年、電磁弁やモーターなどの製品において、広域な周波数で優れた磁気的特性を示す圧粉磁心が電磁鋼板材に変わって利用されつつある。このような圧粉磁心およびその製造方法に関して、たとえば、特開2002−246219号公報に開示がされている(特許文献1)。特許文献1に開示された圧粉磁心の製造方法によれば、まず、リン酸被膜処理アトマイズ鉄粉に所定量のポリフェニレンサルファイド(PPS樹脂)を混合し、これを加圧成形する。得られた成形体を空気中において温度320℃で1時間加熱し、さらに温度240℃で1時間加熱する。その後、冷却することによって圧粉磁心を作製する。 【特許文献1】特開2002−246219号公報 【発明の開示】 【発明が解決しようとする課題】 【0003】 これら圧粉磁心の製造には、通常、水アトマイズ法や還元法により精製された金属粉末が用いられる。水アトマイズ法では、溶解された鉄を高圧の水を利用して噴霧することにより金属粉末を作製し、その金属粉末にさらに粉砕や分級などの工程を実施する。この水アトマイズ法は、量産性に優れ、軟磁性材料の他に一般構造材料の製造にも利用されている。また、還元法では、鉄鉱石やミルスケールをコークスなどで還元し、そのあと水素雰囲気中で熱処理を実施して、金属粉末を得る。 【0004】 これらの方法により金属粉末を精製した場合、その一粒一粒の粒子表面には、その製造過程で出現する凹凸形状が形成される。この凹凸形状は、加圧成形時において粒子同士の絡み合いを促進させ、圧粉磁心の強度を発現させる。しかしその一方で、加圧成形時に粒子同士が引っ掛かったり、粒子表面の尖った部分が他の粒子表面に食い込んだりして、粒子に集中荷重が加わったり、粒子の塑性変形量が大きくなる。このため、粒子に大きな歪みや応力が導入されることとなる。この場合、加圧成形によって作製された圧粉磁心のヒステリシス損が増大し、良好な磁気的特性を得ることができない。 【0005】 そこでこの発明の目的は、上記の課題を解決することであり、優れた磁気的特性を実現する軟磁性材料および圧粉磁心の製造方法を提供することである。 【課題を解決するための手段】 【0006】 この発明に従った軟磁性材料は、圧粉磁心の作製に用いられる軟磁性材料である。軟磁性材料は、複数の金属磁性粒子を備える。ガス吸着法(BET法)によって測定された金属磁性粒子の比表面積をαとし、レーザー散乱回折法によって測定された平均粒径から算出した金属磁性粒子の見かけの比表面積をβとする場合、金属磁性粒子は、α/β≦3.0の関係を満たす。 【0007】 このように構成された軟磁性材料によれば、金属磁性粒子の見かけの比表面積βに対する実際の比表面積αの割合が3.0以下に規定されているため、金属磁性粒子の表面にある凹凸形状が低減されている。このため、圧粉磁心を作製する際の加圧成形時に、金属磁性粒子同士が滑らかに接触し互いに接合される。これにより、金属磁性粒子の内部に歪みが導入されることを抑制し、ヒステリシス損の小さい優れた磁気的特性を実現することができる。 【0008】 また好ましくは、金属磁性粒子は、α/β≦2.5の関係をさらに満たす。このように構成された軟磁性材料によれば、上述の効果をより効果的に奏することができる。 【0009】 また好ましくは、軟磁性材料は、金属磁性粒子の表面を取り囲む絶縁被膜をさらに備える。このように構成された軟磁性材料によれば、圧粉磁心とした時に、絶縁被膜が金属磁性粒子間の絶縁層として機能する。これにより、金属磁性粒子間に流れる渦電流を抑制し、渦電流損の小さいさらに優れた磁気的特性を実現することができる。また、本発明に係る金属磁性粒子を用いると、加圧成形時に金属磁性粒子同士が滑らかに接触し接合されるため、その金属磁性粒子の表面に形成された絶縁被膜の破損を防止できる。これにより、適切に保護された絶縁被膜によって上述の効果を確実に得ることができる。 【0010】 また好ましくは、絶縁被膜の平均厚みは、5nm以上100nm以下である。このように構成された軟磁性材料によれば、絶縁被膜の平均厚みが5nm以上であるため、被膜中を流れるトンネル電流を抑制し、このトンネル電流に起因する渦電流損の増大を抑えることができる。また、絶縁被膜の平均厚みが100nm以下であるため、軟磁性材料を用いて圧粉磁心を作製した場合に、金属磁性粒子間の距離が大きくなりすぎるということがない。これにより、金属磁性粒子間に反磁界が発生することを防止し、反磁界の発生に起因したヒステリシス損の増大を抑制できる。また、軟磁性材料に占める非磁性層の体積比率を抑え、飽和磁束密度が低下することを抑制できる。 【0011】 この発明に従った圧粉磁心の製造方法は、上述のいずれかに記載の軟磁性材料を用いた圧粉磁心の製造方法である。圧粉磁心の製造方法は、複数の金属磁性粒子を金型に投入する工程と、複数の金属磁性粒子を加圧成形して成形体を形成する工程とを備える。このように構成された圧粉磁心の製造方法によれば、成形体を形成する工程において、金属磁性粒子同士が滑らかに接触し互いに接合されるため、圧粉磁心のヒステリシス損を低減させることができる。 【0012】 また好ましくは、複数の金属磁性粒子を金型に投入する工程は、熱可塑性樹脂、非熱可塑性樹脂および高級脂肪酸系潤滑剤からなる群より選ばれた少なくとも一種を含む有機物を、成形体に対する有機物の割合が0.001質量%以上0.2質量%以下となるように複数の金属磁性粒子に添加する工程を含む。このように構成された圧粉磁心の製造方法によれば、これらの有機物は、複数の複合磁性粒子間を強固に接合するため、成形体の強度を向上させることができる。加えて、加圧成形時に、有機物が隣り合う金属磁性粒子間に介在し、金属磁性粒子同士が激しく擦れ合うことを防止する。これにより、金属磁性粒子の内部に歪みが導入されることを抑制し、圧粉磁心のヒステリシス損をさらに低減させることができる。また、金属磁性粒子の表面に絶縁被膜が形成されている場合は、加圧成形時にその絶縁被膜が破壊されることを防止できる。 【0013】 この際、有機物の割合が0.001質量%以上で、上述の効果を十分に得ることができる。また、有機物の割合が0.2質量%以下で、成形体に占める非磁性層の体積比率を抑え、飽和磁束密度が低下することを抑制できる。 【0014】 また好ましくは、複数の金属磁性粒子を金型に投入する工程は、金型の内壁に潤滑剤を塗布する工程を含む。このように構成された圧粉磁心の製造方法によれば、加圧成形時に、金属磁性粒子と金型との間において良好な潤滑性を得ることができる。これにより、圧粉磁心の密度を大きくするとともに、圧粉磁心の強度を向上させることができる。 【0015】 また好ましくは、複数の金属磁性粒子を金型に投入する工程は、金型の内壁および複数の金属磁性粒子の少なくともいずれか一方を40℃以上の温度に加熱する工程を含む。このように構成された圧粉磁心の製造方法によれば、金属磁性粒子の内部に存在する歪みを低減させ、圧粉磁心のヒステリシス損をさらに低減させることができる。また、複数の金属磁性粒子に添加する有機物を軟化させ、有機物を複数の金属磁性粒子間に十分に行き渡らせることができる。これにより、圧粉磁心の密度を大きくするとともに、圧粉磁心の強度を向上させることができる。 【発明の効果】 【0016】 以上説明したように、この発明に従えば、優れた磁気的特性を実現する軟磁性材料および圧粉磁心の製造方法を提供することができる。 【発明を実施するための最良の形態】 【0017】 この発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。 【0018】 図1は、この発明の実施の形態における軟磁性材料を示す模式図である。図1を参照して、軟磁性材料は、複数の金属磁性粒子10を備える。金属磁性粒子10は、たとえば、鉄(Fe)、鉄(Fe)−シリコン(Si)系合金、鉄(Fe)−窒素(N)系合金、鉄(Fe)−ニッケル(Ni)系合金、鉄(Fe)−炭素(C)系合金、鉄(Fe)−ホウ素(B)系合金、鉄(Fe)−コバルト(Co)系合金、鉄(Fe)−リン(P)系合金、鉄(Fe)−ニッケル(Ni)−コバルト(Co)系合金および鉄(Fe)−アルミニウム(Al)−シリコン(Si)系合金などから形成することができる。金属磁性粒子10は、金属単体でも合金でもよい。なお、本明細書において、複数の金属磁性粒子10の集合体を金属磁性粉末と呼ぶ。 【0019】 金属磁性粒子10の比表面積をαとし、金属磁性粒子10の見かけの比表面積をβとする場合、金属磁性粒子10は、α/β≦3.0の関係を満たす。金属磁性粒子10は、α/β≦2.5の関係をさらに満たすことが好ましい。金属磁性粒子10の比表面積αおよび見かけの比表面積βは、以下に説明する方法によって求めることができる。 【0020】 金属磁性粒子10の比表面積αは、ガス吸着法(BET法:Brunauer, EmmettおよびTellerにより導かれたBET式を用いる比表面積測定方法)により測定する。つまり、金属磁性粒子10の表面に分子の大きさの判っているガス(たとえば、窒素ガスやクリプトンガス)を吸着させ、そのガスが吸着した量から金属磁性粒子10の比表面積α(m2/g)を求める。この方法によれば、金属磁性粒子10の表面に沿って吸着したガス量に基き比表面積を求めるため、金属磁性粒子10の実際の比表面積αを測定することができる。 【0021】 金属磁性粒子10の見かけの比表面積βは、レーザー散乱回折法によって測定された金属磁性粒子10の平均粒径Dを用いて算出する。まず、複数の金属磁性粒子10からなる金属磁性粉末から数十gの試料を取り出す。レーザー散乱回折法を用いてその試料の粒度分布を測定し、得られた粒度分布のヒストグラムから平均粒径D(m)を求める。ここで言う平均粒径Dは、ヒストグラム中、粒径の小さいほうからの質量の和が総質量の50%に達する粒子の粒径、つまり50%粒径Dである。 【0022】 金属磁性粒子10の真密度がk(g)である場合、 金属磁性粒子10の1個当たりの表面積:4×π×(D/2)2 金属磁性粒子10の1個当たりの体積:4/3×π×(D/2)3 金属磁性粒子10の1g当たりの見かけの表面積β: (4×π×(D/2)2)/(4/3×π×(D/2)3×k) が成り立ち、上式から金属磁性粒子10の見かけの比表面積β(m2/g)を算出する。 【0023】 このようにして測定された比表面積αは、表面の凹凸形状を含んだ金属磁性粒子10の実際の比表面積値であり、見かけの比表面積βは、金属磁性粒子10を平均粒径Dの真球と仮定した場合の比表面積値である。このため、本実施の形態では、α/β≦3.0の関係を満たす金属磁性粒子10、言い換えれば、図1に示すように、真球に近い輪郭を有し、表面の凹凸形状が十分に低減された金属磁性粒子10が用いられる。 【0024】 図2は、図1中に示す軟磁性材料を用いて作製された圧粉磁心の表面を示す模式図である。図2を参照して、圧粉磁心は、金属磁性粒子10と、金属磁性粒子10の表面を取り囲む絶縁被膜20とから構成された複数の複合磁性粒子30を備える。複数の複合磁性粒子30の間には、有機物40が介在している。複数の複合磁性粒子30の各々は、主に有機物40によって接合されており、その他に複合磁性粒子30が有する凹凸の噛み合わせによっても接合されている。 【0025】 続いて、この発明の実施の形態における軟磁性材料を用いて、図2中に示す圧粉磁心を製造する方法について説明を行なう。 【0026】 図3は、図1中に示す軟磁性材料を製造するためのアトマイズ装置を示す断面図である。図3を参照して、まず、金属磁性粒子の原料となる金属塊を真空誘導炉51内に投入し、その真空誘導炉51に高周波電源を導入する。これにより、真空誘導炉51内の金属塊を溶解して溶湯56とする。噴射ノズル54に向けて高圧ガス57を吹き付けるとともに、溶湯56を溶湯導入管53に供給する。高圧ガス57が吹き付けられることによって、溶湯56は噴霧され、その後、噴霧塔52内で急冷されることによって、複数の金属磁性粒子10からなる金属磁性粉末が形成される。 【0027】 この際、上述のアトマイズ工程時に、ガス噴出圧力やガスの温度等の条件を適当に設定することによって、金属磁性粒子10を表面粗さの小さい滑らかな形状に仕上げることができる。また、金属磁性粒子10の粒径を小さくする(分級)ほど、金属磁性粒子10の表面に形成される凹凸形状を小さくすることができる。さらに、水アトマイズ法と比較して、ガスアトマイズ法の方が、表面粗さの小さい滑らかな形状に仕上げることができる。 【0028】 次に、得られた金属磁性粉末にリン酸処理を施すことによって、金属磁性粒子10の表面に絶縁被膜20を形成し、複合磁性粒子30を作製する。この絶縁被膜20は、金属磁性粒子10間の絶縁層として機能する。金属磁性粒子10を絶縁被膜20で覆うことによって、圧粉磁心の電気抵抗率ρを大きくすることができる。これにより、金属磁性粒子10間に渦電流が流れるのを抑制して、渦電流に起因する圧粉磁心の鉄損を低減させることができる。 【0029】 なお、絶縁被膜20は、酸化物を含んでいても良い。この酸化物を含有する絶縁被膜20としては、リンと鉄とを含むリン酸鉄の他、リン酸マンガン、リン酸亜鉛、リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、酸化シリコン、酸化チタン、酸化アルミニウムまたは酸化ジルコニウムなどの酸化物絶縁体を使用することができる。絶縁被膜20は、図中に示すように1層に形成しても良いし、多層に形成しても良い。 【0030】 また、絶縁被膜20の平均厚みは、5nm以上100nm以下とすることが好ましい。ここで言う平均厚みとは、組成分析(TEM−EDX:transmission electron microscope energy dispersive X-ray spectroscopy)によって得られる膜組成と、誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS:inductively coupled plasma-mass spectrometry)によって得られる元素量とを鑑みて相当厚さを導出し、さらに、TEM写真により直接、被膜を観察し、先に導出された相当厚さのオーダーが適正な値であることを確認して決定されるものをいう。 【0031】 次に、熱可塑性樹脂、非熱可塑性樹脂および高級脂肪酸系潤滑剤などからなる有機物40を準備する。このような有機物40としては、たとえば、熱可塑性ポリイミド、熱可塑性ポリアミド、熱可塑性ポリアミドイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミドまたはポリエーテルエーテルケトンなどの熱可塑性樹脂や、高分子量ポリエチレン、全芳香族ポリエステルまたは全芳香族ポリイミドなどの非熱可塑性樹脂や、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、パルミチン酸リチウム、パルミチン酸カルシウム、オレイン酸リチウムおよびオレイン酸カルシウムなどの高級脂肪酸系などを用いることができる。なお、高分子量ポリエチレンとは、分子量が10万以上のポリエチレンをいう。 【0032】 V型混合機を用いて、複合磁性粒子30と有機物40とを混合する。この際、後の工程で作製される成形体に対する有機物40の割合が、0.001質量%以上0.2質量%以下となるように混合する割合を調整する。なお、混合方法に特に制限はなく、たとえばメカニカルアロイング法、振動ボールミル、遊星ボールミル、メカノフュージョン、共沈法、化学気相蒸着法(CVD法)、物理気相蒸着法(PVD法)、めっき法、スパッタリング法、蒸着法またはゾル−ゲル法などのいずれを使用することも可能である。 【0033】 次に、得られた混合粉末に対して加圧成形工程を実施する。図4から図6は、図2中に示す圧粉磁心を製造する際の加圧成形の工程を示す断面図である。図4を参照して、まず、金型装置71のバンドヒータ77に通電し、ダイ72の内壁73を40℃以上の温度まで加熱する。また、内壁73の加熱に変えて、先の工程で得られた混合粉末を加熱しても良いし、両方を加熱しても良い。さらに、これらを80℃以上200℃以下の温度まで加熱することが好ましい。 【0034】 次に、内壁73に囲まれた空間74の上方に潤滑剤供給部78を位置決めする。エアーを用いて、潤滑剤供給部78の噴射ノズルから空間74に向けて金型潤滑剤91を吹き付ける。これにより、金型装置71の内壁73および底面76に金型潤滑剤91を付着させる。図中には、粉末状の金型潤滑剤91を模式的に示したが、液体状の金型潤滑剤91であっても良く、付着させる方法は、湿式および乾式のいずれであっても良い。金型潤滑剤91としては、たとえば、金属石鹸、ポリエチレン、アミド系ワックス、ポリアミド、ポリプロピレン、アクリル酸エステル重合体、メタクリル酸エステル重合体、フッ素系樹脂および層状潤滑剤などを用いることができる。また、これらの材料から2以上の材料を適当に選択し、混合したものを用いても良い。 【0035】 図5を参照して、空間74の上方にシュー79を位置決めし、シュー79から空間74に向けて、先の工程で得られた混合粉末15を供給する。図6を参照して、空間74の上方に上パンチ80を位置決めする。上パンチ80を下方に移動させ、たとえば、700MPaから1500MPaまでの圧力で混合粉末15を加圧成形する。この際、加圧成形する雰囲気は、不活性ガス雰囲気または減圧雰囲気とすることが好ましい。この場合、大気中の酸素によって混合粉末が酸化されるのを抑制できる。 【0036】 この加圧成形の際、有機物40は、隣り合う複合磁性粒子30間の潤滑剤として機能する。これにより、加圧成形時に金属磁性粒子10に歪みが導入されたり、絶縁被膜20同士が強く擦れ合って破壊されることを抑制する。 【0037】 その後、加圧成形により得られた成形体16を空間74から抜き出す。次に成形体16を、有機物40のガラス転移温度を超え、有機物40の熱分解温度以下の温度で熱処理する。これにより、有機物40が熱分解されるのを抑制しつつ、有機物40を複合磁性粒子30間に入り込ませることができる。これにより、複合磁性粒子30同士が強固に接合され、成形体16の強度を向上させることができる。また別に、熱処理の実施により、加圧成形時に成形体16の内部に発生した歪みや転位を取り除くことができる。 【0038】 最後に、成形体16に押出し加工や切削加工など適当な加工を施すことによって、図1中に示す圧粉磁心が完成する。 【0039】 このように構成された軟磁性材料および圧粉磁心の製造方法によれば、金属磁性粒子10が、輪郭の歪みが小さく、表面の凹凸が低減された形状に形成されているため、その表面形状が絶縁被膜20の表面に転写される。このため、加圧成形時において、複合磁性粒子30同士が滑らかに接触して接合され、金属磁性粒子10に大きい歪みが導入されることを抑制できる。これにより、その加圧成形によって得られた圧粉磁心のヒステリシス損を低減させることができる。また、加圧成形時に適切に保護された絶縁被膜20により、圧粉磁心の渦電流損を低減させることができる。このため、ヒステリシス損の低減と渦電流損の低減とがあいまって、圧粉磁心の鉄損を大幅に低減させることができる。 【0040】 なお、このように作製した圧粉磁心を、たとえば、チョークコイル、スイッチング電源素子および磁気ヘッドなどの電子部品、各種モーター部品、自動車用ソレノイド、各種磁気センサならびに各種電磁弁などの製品として利用することができる。 【実施例】 【0041】 以下に説明する実施例によって、本発明による軟磁性材料および圧粉磁心の製造方法の評価を行なった。 【0042】 (実施例1) アトマイズ法により金属磁性粒子10としての鉄粒子を作製し、アトマイズ条件や篩を用いた粒径制御により、表面性状の異なる複数種の鉄粉末を得た。実施の形態に記載の方法に従って、それらの鉄粒子の比表面積αおよび見かけの比表面積βを測定した。 【0043】 次に、市販のリン酸鉄溶液を用いたpH値が6の水溶液を準備し、その水溶液に鉄粉末を浸漬させ、温度30℃の恒温槽中で10分間、攪拌した。その後、温風循環型の乾燥機を用いて温度180℃で1時間、鉄粉末を乾燥させ、鉄粒子の表面に絶縁被膜20としてのリン酸鉄被膜を形成した。この際、リン酸鉄溶液の濃度を調整して、リン酸鉄被膜の厚みを50nm近辺に設定した。 【0044】 次に、被膜処理された鉄粉末を、1275MPa(=13ton/cm2)の圧力で加圧成形し、サンプル1から13の成形体を形成した。この際、成形体の密度を7.65g/cm3に制御した。また、成形体の形状は、外径30mm×内径20mm×厚み5mmの大きさを有するリング状とした。 【0045】 得られた成形体の周囲にコイルを均等に巻き、励起磁束密度を10kG(キロガウス)、測定周波数を1000Hzとした磁場を印加し、各サンプルの成形体の鉄損値W10/1000を測定した。測定された鉄損値を、各サンプルを構成する鉄粒子およびリン酸鉄被膜のデータとともに表1に示す。なお、表中において、サンプル1および8から13は、本発明の実施例であり、サンプル2から7は、比較例である。 【0046】 【表1】
【0047】 図7は、実施例1において、鉄粒子のα/βの値と成形体の鉄損値との関係を示すグラフである。表1および図7を参照して、α/βの値を3.0以下にした場合に、比較的低い鉄損値を得ることができた。また、α/βの値を2.5以下にしたサンプル8の成形体において、最も低い鉄損値を得ることができた。 【0048】 (実施例2) 実施例1のサンプル10の成形体に用いた鉄粉末に、絶縁被膜20としてのリン酸鉄被膜を形成した。この際、リン酸鉄溶液の濃度を変化させることによって、異なる厚みのリン酸鉄被膜を形成した。実施例1と同様の方法により、その鉄粉末からサンプル10−1から10−7の成形体を作製した。その後、実施例1と同様に、各サンプルの成形体の鉄損値W10/1000を測定した。測定された鉄損値を、各サンプルを構成する鉄粒子およびリン酸鉄被膜のデータとともに表2に示す。 【0049】 【表2】
【0050】 表2を参照して分かるように、リン酸鉄被膜の厚みが5nm以上100nm以下の範囲にあるサンプルにおいて、鉄損値を特に低減させることができた。 【0051】 (実施例3) 実施例1のサンプル10の成形体に用いたリン酸鉄被膜処理された鉄粉末に、有機物40としての樹脂を所定の割合で添加し、実施例1と同様の方法により、その鉄粉末からサンプル10−8から10−22の成形体を作製した。本実施例では、樹脂として、ポリエチレン、ポリフェニレンサルファイド(PPS樹脂)、ポリイミド樹脂およびステアリン酸亜鉛を用いた。その後、実施例1と同様に、各サンプルの成形体の鉄損値W10/1000を測定した。測定された鉄損値を、各サンプルを構成する鉄粒子、リン酸鉄被膜および有機物のデータとともに表3に示す。 【0052】 【表3】
【0053】 表3を参照して分かるように、添加総量が0.001質量%以上0.2質量%以下となるように樹脂を添加することによって、成形体の鉄損値が低減する傾向にあることを確認できた。 【0054】 また、実施例中の成形体を作製する加圧成形工程において、金型の内壁にエチレンビスステアリン酸アミドを噴霧した場合、成形体の鉄損値をさらに低減させることができた。また、金型に供給する鉄粉末を加熱すると、加熱温度が40℃以上とした場合に低鉄損化の効果が得られ、さらに加熱温度を80℃以上200℃以下の範囲にした場合に、5%減から10%減の低鉄損化の効果が得られることを確認できた。同様に、加圧成形工程において、金型の内壁を加熱すると、加熱温度が40℃以上の場合、特に80℃以上200℃以下の場合に、低鉄損化の傾向を確認することができた。なお、これらの組み合わせにより、さらに良好な磁気的特性を有する圧粉磁心の作製が可能となるが、使用する金型装置や内壁に塗布する潤滑剤の種類によってそれぞれ最適な条件が存在する。 【0055】 今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。 【図面の簡単な説明】 【0056】 【図1】この発明の実施の形態における軟磁性材料を示す模式図である。 【図2】図1中に示す軟磁性材料を用いて作製された圧粉磁心の表面を示す模式図である。 【図3】図1中に示す軟磁性材料を製造するためのアトマイズ装置を示す断面図である。 【図4】図2中に示す圧粉磁心を製造する際の加圧成形の第1工程を示す断面図である。 【図5】図2中に示す圧粉磁心を製造する際の加圧成形の第2工程を示す断面図である。 【図6】図2中に示す圧粉磁心を製造する際の加圧成形の第3工程を示す断面図である。 【図7】実施例1において、鉄粒子のα/βの値と成形体の鉄損値との関係を示すグラフである。 【符号の説明】 【0057】 10 金属磁性粒子、16 成形体、20 絶縁被膜、30 複合磁性粒子、40 有機物、71 金型装置、73 内壁、91 金型潤滑剤。
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| 【出願人】 |
【識別番号】000002130 【氏名又は名称】住友電気工業株式会社 【住所又は居所】大阪府大阪市中央区北浜四丁目5番33号
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| 【出願日】 |
平成16年3月5日(2004.3.5) |
| 【代理人】 |
【識別番号】100064746 【弁理士】 【氏名又は名称】深見 久郎
【識別番号】100085132 【弁理士】 【氏名又は名称】森田 俊雄
【識別番号】100083703 【弁理士】 【氏名又は名称】仲村 義平
【識別番号】100096781 【弁理士】 【氏名又は名称】堀井 豊
【識別番号】100098316 【弁理士】 【氏名又は名称】野田 久登
【識別番号】100109162 【弁理士】 【氏名又は名称】酒井 將行
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| 【公開番号】 |
特開2005−248273(P2005−248273A) |
| 【公開日】 |
平成17年9月15日(2005.9.15) |
| 【出願番号】 |
特願2004−62140(P2004−62140) |
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