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【発明の名称】 鋳造品の冷却方法
【発明者】 【氏名】中林 誠治
【住所又は居所】富山県氷見市下田子字深惣1番地3 コマツキャステックス株式会社内

【氏名】淡路 佳孝
【住所又は居所】富山県氷見市下田子字深惣1番地3 コマツキャステックス株式会社内

【要約】 【課題】従来の鋳造品の冷却方法で生じていた鋳物砂の性質悪化や、製造設備の複雑化を防止しつつ、鋳造品を強制冷却することが可能な、鋳造品の冷却制御法を提供する。

【解決手段】鋳枠内に鋳物砂を固めて形成した鋳型1において、鋳型1内部の鋳造品5とつながる押湯部7を設け、この押湯部7に溜まった押湯4を冷却媒体を用いて冷却して鋳造品5を強制冷却する。この押湯部7は、外部に開口して露出するように設けられることが望ましい。押湯4を冷却することにより、金属の熱伝導を利用して効率よく鋳造品5を冷却することができる。また、押湯4を直接冷却するため、鋳物砂に冷却媒体が浸透するおそれが無く、また冷却媒体も押湯部7に局所的に供給するだけでよいので、製造設備も過度に複雑化しない。鋳造品5の強制冷却は、品質悪化を防ぐため、鋳造品5の凝固温度と共析変態温度との間の温度範囲で行う。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳物砂を用いて形成した鋳型(1)内に溶湯を注湯した後、押湯(4)を冷却媒体を用いて冷却することを特徴とする鋳造品の冷却方法。
【請求項2】
上記押湯(4)が、外部に露出しており、鋳造品(5)の冷却時に、冷却媒体を押湯(4)の表面にかけることを特徴とする請求項1の鋳造品の冷却方法。
【請求項3】
上記冷却時に、冷却媒体の略全てを気化させることを特徴とする請求項2の鋳造品の冷却方法。
【請求項4】
冷却用配管(8)の途中部分が押湯(4)内部を通るように配置しておき、溶湯を注湯した後、冷却用配管(8)内に、冷却媒体を通すことによって押湯(4)を冷却することを特徴とする請求項1の鋳造品の冷却方法。
【請求項5】
上記鋳造品(5)の冷却を、鋳造品(5)の凝固温度と共析変態温度との間の温度範囲で行うことを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれかの鋳造品の冷却方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
この発明は、鋳造品の冷却方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋳造品は、鋳枠の中に鋳物砂を圧縮して固めて製造した鋳型に、約1300℃の溶湯を注入し、溶湯が凝固し、さらに取扱いの容易な温度に冷却するまで鋳型を放置して自然冷却し、その後、鋳枠を解枠して鋳造品を取り出していた。しかし、鋳物砂には断熱作用があるため、従来の自然冷却による冷却方法では、鋳造品が取り出し可能な温度になるまでに、例えば大型の鋳造品では1週間程度と長い時間を要した。従って、冷却工程に要する時間が鋳造品の全製造工程に要する時間の大部分を占めていた。鋳造品を大量生産する場合には、この冷却工程の間に、多数の鋳型を長時間放置する広いスペースが工場内に必要とされ、工場の生産性を悪化させていた。また、鋳型を放置して鋳造品を冷却する間には、鋳枠や鋳物砂もその鋳型に使用されているため、他の鋳造品製造のためには別の鋳枠や鋳物砂が必要とされ、製造コストが増加した。
【0003】
そこで、冷却工程に要する時間を短縮して、鋳造作業の生産性を高める提案がなされている(例えば、特許文献1)。この特許文献1は、鋳型上部や鋳型内部に設置した水管から冷却水を鋳型に供給し、鋳物砂に水を浸透させることによって鋳造品を間接的に冷却する方法を開示している。この方法によって、鋳造品を急速に冷却させることができ、短時間で解枠することが可能となった。また、鋳型内部に設置した水管から、鋳造品に部分的に冷却水を供給し、特定箇所の冷却速度を速めることもできた。
【特許文献1】特開平9−225621号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来の鋳造品の冷却方法は、鋳物砂に冷却水をかけて冷却水を鋳物砂に浸透させ、鋳造品を包むように間接的に鋳造品を冷却するものであった。従って、鋳物砂の性質が変化したり、鋳物砂が多量の冷却水を含んでしまい、再利用時に乾燥工程が必要となるなど、鋳物砂の再生に多大な労力を要した。また、鋳枠内に均一に冷却水を散布する必要があるため、鋳枠上部の水管の配置が複雑になり、さらに鋳物砂の内部にも水管を配設しているため、製造設備の取扱いが煩雑になるという問題もあった。
【0005】
この発明は、上記従来の問題点を解決するためになされたもので、その目的は、従来の鋳造品の冷却方法で生じていた鋳物砂の性質悪化や、製造設備の複雑化を防止しつつ、鋳造品を冷却することが可能な鋳造品の冷却方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そこで、請求項1の鋳造品の冷却方法は、鋳物砂を用いて形成した鋳型1内に溶湯を注湯した後、押湯4を冷却媒体を用いて冷却することを特徴としている。
【0007】
請求項2の鋳造品の冷却方法は、上記押湯4が、外部に露出しており、鋳造品5の冷却時に、冷却媒体を押湯4の表面にかけることを特徴としている。
【0008】
請求項3の鋳造品の冷却方法は、上記冷却時に、冷却媒体の略全てを気化させることを特徴としている。
【0009】
請求項4の鋳造品の冷却方法は、冷却用配管8の途中部分が押湯4内部を通るように配置しておき、溶湯を注湯した後、冷却用配管8内に、冷却媒体を通すことによって押湯4を冷却することを特徴としている。
【0010】
請求項5の鋳造品の冷却方法は、上記鋳造品5の冷却を、鋳造品5の凝固温度と共析変態温度との間の温度範囲で行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の鋳造品の冷却方法によれば、押湯を強制冷却することにより、金属の高い熱伝導性を利用して鋳型内部の鋳造品を直接的に強制冷却するため、熱効率の良い鋳造品の冷却を行うことが可能である。従って、冷却工程に要する時間を短縮し、生産効率を向上させることができる。また、鋳造品を直接的に冷却するため、鋳物砂などに悪影響を及ぼすことがなく、鋳物砂の再生に要する労力を削減することができる。
【0012】
請求項2の鋳造品の冷却方法によれば、押湯表面が外部に露出しているため、冷却媒体を供給する手段として、例えば冷却媒体を手作業で押湯に供給したり、あるいは、押湯上部まで配管を設置するのみでよく、冷却媒体の供給手法が容易となる。従って、製造設備を複雑化させること無く鋳造品を強制冷却することが可能となる。そのため、冷却工程に要する製造コストや労力を削減することができる。
【0013】
請求項3の鋳造品の冷却方法によれば、冷却媒体の気化潜熱を冷却に利用するため、熱効率の良い冷却が可能である。
【0014】
請求項4の鋳造品の冷却方法によれば、冷却媒体を短時間に大量に供給しても、冷却媒体が外部に溢れ出さないため、冷却媒体の流量を自由に調整することができる。従って、鋳造品の冷却制御がより容易になる。
【0015】
請求項5の鋳造品の冷却方法によれば、鋳造品の材料組織や機械的性質に影響を与えることなく鋳造品を強制冷却が可能であるため、鋳造品の品質を悪化させること無く冷却工程に要する時間を短縮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
次に、この発明の鋳造品の冷却方法の具体的な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。この発明の第1の実施形態を図1、及び図3に示す。図1は、鋳型1の内部構成を示す断面斜視図であり、図3は鋳型1の断面概略図である。この第1の実施の形態の特徴は、鋳物砂を用いて形成した鋳型1内に溶湯を注湯した後、鋳造品5の凝固温度と共析変態温度との間の温度範囲で、外部に露出した押湯4の表面に冷却水をかけ、そのほとんど全てを気化させて鋳造品5を強制冷却することである。その実用化のために、テストを行ったので、その結果について、以下に説明する。
【0017】
まず、図1に示すように、湯口2は、製品部10の外周を回り込むように配設される湯道3を介して、製品部10と接続されている。また、図1、及び図3に示すように、鋳型1の製品部10の略中心部の上部に、押湯部7を外部に露出させて設け、さらにその上部に冷却水供給用バルブ6を設けている。また、注入する溶湯の材質はFCDであり、鋳造品5の重量は約100kgである。
【0018】
まず湯口2から溶湯を注入し、製品部10が溶湯で満たされた後、押湯部7に溶湯の湯位が上がってくる。押湯部7の湯位が鋳型1表面まで達した時点で溶湯注入を完了する。その後、製品部10の略中心である押湯4直下部X部の温度を測定し、X部の温度が共晶凝固温度の約1100℃以下になるまで自然冷却する。ここで、X部の冷却曲線を表すグラフを図2に示す。図2の太線は鋳造品5を自然冷却した場合の冷却曲線であり、細線は強制冷却を行った場合の冷却曲線である。X部の温度が鋳造品5の共晶凝固温度以下となったことを確認した後、押湯部7の上部の冷却水供給用バルブ6から押湯4に冷却水をかけて強制冷却を行った。図2に示すように、この実施形態では、溶湯を注入してから1時間10分後(A)から1時間45分後(B)の間に10リットルの冷却水をかけている。このときかけた冷却水は1分間当り290mlとゆっくりとした放水量であり、冷却水は全て蒸発した。冷却水かけを完了したのは、溶湯注入後1時間45分(B)であり、それ以降は鋳造品5を自然冷却し、共析変態終了温度である730℃で解枠した。
【0019】
図2に示すように、溶湯注入から解枠までの時間は、共晶凝固開始から共析変態完了まで全て自然冷却した場合は5時間30分(C)であるが、上記の実施形態のように冷却水により強制冷却した場合には3時間(D)となり、溶湯注入から解枠までの時間を大幅に短縮することができた。これは、製品部10と直接つながる押湯4を強制冷却したため、金属の熱伝導を利用した効率のよい冷却が行われたことを示している。このように、第1の実施形態における鋳造品5の強制冷却では、冷却工程に要する時間を大幅に短縮できると共に、生産効率の向上が可能となる。また、冷却水を供給する配管も押湯部7の上部まで1本配設するだけでよく、製造設備が簡略な構成となり、製造コストを抑えることができる。さらに、押湯部7が製品部10の略中心部上部に位置しているため、押湯部7を冷却することにより、鋳造品5を肉厚な中心部から末端部にかけて徐々に冷却することができ、局所的な割れの発生など品質悪化への影響を小さくすることができる。
【0020】
ここで、強制冷却を行った上記実施形態の鋳造品5と完全に自然冷却した鋳造品5の機械的性質と材料組織を比較して、強制冷却による品質への影響を調べたが、鋳造品5の強制冷却を上記温度範囲で行ったため、品質の悪化は見られなかった。
【0021】
さらにこの実施形態では、鋳造品5の冷却媒体である冷却水がすべて蒸発するため、冷却水の大きな蒸発潜熱を冷却に利用できると共に、鋳物砂に水が浸透するなどの悪影響を回避することができる。従って、鋳物砂の乾燥工程等を追加する必要が無い。また、この実施形態では断熱性の高い鋳物砂を冷却して間接的に鋳造品5を冷却するのではなく、押湯4に直接的に冷却水をかけて、金属の熱伝導を利用した直接的な冷却を行う。従って、使用する冷却水の量も少なく冷却水の量の調整も容易なため、効率のよい冷却を行うことができると共に、冷却速度の制御も容易になる。
【0022】
次に、この発明の第2の実施形態を図4に示す。図4は第2の実施形態で用いる鋳型1の断面概略図であり、第1の実施形態と同様に、押湯部7を外部に露出させて設けている。第1の実施形態と異なる点は、図4に示すように押湯部7の内部に冷却用配管8を設けている点である。この実施形態では、溶湯の凝固後に、冷却用配管8内に冷却水を通して押湯4を冷却し、鋳造品5を強制冷却している。冷却水の配管8への通水は、第1の実施形態と同様に共晶凝固温度と共析変態温度の間の温度範囲で行う。
【0023】
上記第2の実施形態においても、第1の実施形態と同様に、鋳造品5の品質を悪化させたり、製造設備を過度に複雑化させること無く、冷却工程に要する時間の短縮が可能である。また、冷却水を短時間に大量に供給しても、押湯部7から水が溢れて鋳物砂に浸透するおそれが無いため、配管内の水の流量を自由に調整できると共に、水の流量を増やすことによって急速な鋳造品5の冷却も可能である。すなわち、第2の実施形態では鋳造品5の冷却速度の制御がより容易になる。
【0024】
以上にこの発明の鋳造品の冷却方法の具体的な実施の形態について説明したが、この発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、この発明の範囲内で種々変更して実施することが可能である。例えば、第1の実施形態では冷却媒体として水を用いたが、水以外にも氷やドライアイスを押湯部7から直接投入しても良い。また、第2の実施形態でも冷却媒体として水を用いたが、水以外にも油や空気など、任意の冷却媒体を使用することができる。第1、第2の実施形態共に、強制冷却時には押湯部7を使用したが、それに加えて、他の湯口2、ガス抜き等の鋳型1開放部を同時に冷却してもよい。さらに、大型の鋳造品5を製造する場合には、外部に開放された押湯部7を複数設けてそれぞれを強制冷却してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】この発明の第1の実施形態の鋳型の断面斜視図である。
【図2】この発明の第1の実施形態の製品中心部の冷却曲線を示すグラフである。
【図3】この発明の第1の実施形態を表す鋳型の断面概略図である。
【図4】この発明の第2の実施形態を表す鋳型の断面概略図である。
【符号の説明】
【0026】
1・・鋳型、4・・押湯、5・・鋳造品、7・・押湯部、8・・冷却用配管
【出願人】 【識別番号】502386798
【氏名又は名称】コマツキャステックス株式会社
【住所又は居所】富山県氷見市下田子1番地3
【出願日】 平成15年11月11日(2003.11.11)
【代理人】 【識別番号】100084629
【弁理士】
【氏名又は名称】西森 正博

【公開番号】 特開2005−144461(P2005−144461A)
【公開日】 平成17年6月9日(2005.6.9)
【出願番号】 特願2003−381320(P2003−381320)