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【発明の名称】 アンモニア吸着シート
【発明者】 【氏名】中野 修
【氏名】鈴木 幸恵
【氏名】村上 恵理
【課題】本発明は、吸放湿量が多く、短時間における調湿性能を有し、且つアンモニアを吸着して脱着しないアンモニア吸着シートを提供することを課題とする。

【解決手段】製紙用繊維が19〜65質量部、熱融着性物質が1〜10質量部、アンモニア吸着剤と非結晶性無機粉体および貝化石の混合物が25〜80質量部からなるアンモニア吸着シートである。アンモニア吸着剤や非結晶性無機粉体を特定し、これらと貝化石との混合割合を特定する。さらには板状やシート状の調湿基材と貼合したり、ホルマリンを含まない接着剤や防黴剤を湿式含浸したりする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙用繊維が19〜65質量部、熱融着性物質が1〜10質量部、アンモニア吸着剤と非結晶性無機粉体および貝化石の混合物が25〜80質量部からなることを特徴とするアンモニア吸着シート。
【請求項2】
接着剤が基紙全質量に対して3〜25質量%含まれ、必要に応じてホルマリン吸着剤と防黴剤を付与したことを特徴とする請求項1に記載のアンモニア吸着シート。
【請求項3】
アンモニア吸着剤が二酸化珪素、チタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物の複合物であり、これと非結晶性無機粉体および貝化石との混合物の比率が、質量比で5〜15:15〜55:5〜10であることを特徴とする請求項1または2に記載のアンモニア吸着シート。
【請求項4】
アンモニア吸着剤が二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物であり、その化学式が8〜9SiO・Al・4〜5ZnO・nHOで構成され、これと非結晶性無機粉体および貝化石との混合物の比率が、質量比で5〜15:15〜55:5〜10であることを特徴とする請求項1または2に記載のアンモニア吸着シート。
【請求項5】
非結晶性無機粉体がシリカゲルであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のアンモニア吸着シート。
【請求項6】
非結晶性無機粉体が含鉄アルミニウム水和物であり、その主成分がシリカ、アルミナ、酸化鉄で構成されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のアンモニア吸着シート。
【請求項7】
板状、もしくはシート状の調湿基材と貼合したことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のアンモニア吸着シート。
【請求項8】
製紙用繊維が19〜65質量部、熱融着性物質が1〜10質量部、およびアンモニア吸着剤と非結晶性無機粉体および貝化石の混合物が25〜80質量部からなる原料を配合して抄紙して形成された、含有水分が50〜60質量%の乾燥前の坪量が300〜1200g/mの紙匹に、ホルマリンを含まない接着剤と、必要に応じてホルマリン吸着剤と防黴剤とを配合した含浸液を、湿式含浸法によって製紙用原料に対して3〜25質量%含浸処理し、これを乾燥させることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のアンモニア吸着シート。











【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア吸着性能と調湿性能に優れたシート状物に関するものである。詳しくは、美術館や博物館等の新設もしくは増改築に際し、新しいコンクリートの打設によって仕切られた収蔵庫等の壁装材や天井材に貼合して使用され、庫内におけるアンモニアを吸着除去すると共に、長期にわたって湿度の調節を行うのに好適なアンモニア吸着シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、美術館や博物館等において保存・展示環境を改善し、収蔵品の安全性を高めたいとの認識が一層強まってきているのは周知の事実である。特に新設、もしくは増改築したような際に、打設した新しいコンクリートの躯体や内装材から発生するアンモニアを主体とするアルカリ性物質と放湿される水分によって、収蔵品が変色、変形、劣化、変質したりすること等の問題を抱えているのが現状である。また、アンモニアガス自体による臭気の問題は、保存環境以外にも生活環境悪化の問題として重要視されている。
【0003】
従来は、前記したような問題を解決するために、新設あるいは増改築後の展示室や収蔵庫にすぐに収蔵品を搬入せず、室内の汚染ガス濃度、空気質pH、湿度等が一定のレベル以下になるまで空のまま放置する、いわゆる「枯らし」が行われてきた。つまり、半年から2年にわたってコンクリートの乾燥期間を置き、この間に室内の換気・除湿を強制的に行っているのが一般的であった。また、開館後も空調設備に取り付けられた吸着フィルターによって、アンモニア等の汚染ガスを除去するという方法が試みられてきた。しかし、工期を延長してまでコンクリートの十分な乾燥期間を確保することは困難であり、また、コンクリートから発生するアンモニアガスを低濃度に抑えることは難しく根本的な解決には至らず、短期間で保存・展示環境を改善して早期にかつ安全に使用できる方法が求められてきた。
【0004】
特許文献1には、コンクリートから発生するアルカリ性物質を遮断するための吸着材を設けた建物構造が提案されている。この方法を採用すれば、短期間で収蔵庫内部のアンモニア濃度を一定のレベル以下に低減することが可能となり、施工後の「枯らし」期間を大幅に短縮でき早期の開館が可能となったが、コンクリートから放湿された水分による湿度を調節するには不十分であった。
【0005】
一方、収蔵庫内部の湿度を調節するための基材として、古来より調湿性能の高い桐、杉または桧等の木材が使用され、近年に至って不燃性の珪酸カルシウム板、天然の珪藻土やゼオライト板などが使用されるようになった。しかしながら、前記の木材にはアンモニア吸着性能は殆んど無く、吸放湿量も少ないことに加え、短時間における吸放湿速度が遅いとの欠点を有していた。また、後記の珪酸カルシウム板等ではアンモニアの吸着性能は有しているが、温度の上昇と共に一度吸着したアンモニアを再び脱着する危険性があり、確実なアンモニア吸着性能としては問題を有していた。さらに、吸放湿量は多いが短時間における吸放湿速度が非常に遅いため、調湿性能の面からも問題を有していた。
【0006】
本発明者等は、特許文献2〜特許文献5において、短時間での調湿性能を有し、単位体積当たりの吸放湿量も大きな調湿シートを提案し、さらに特許文献6〜特許文献10においては種々の汚染ガス吸着性能を付与させた保護・保存用紙を提案した。しかし、前記の調湿シートは調湿性能を主体とした提案であり、アンモニアの吸着性能の点では問題があった。また、後記の保護・保存用紙は、調湿性能に色々な汚染ガス吸着性能を付与したものであるが、アンモニアに視点を当てて見ると、温度の上昇と共に一度吸着したアンモニアを再び脱着する危険性を残していた。
【0007】
【特許文献1】特許第2897609号
【特許文献2】特許第1823632号
【特許文献3】特許第3176539号
【特許文献4】特許第3276873号
【特許文献5】特開平11−081188号公報
【特許文献6】特開2002−194695号公報
【特許文献7】特開2003−171896号公報
【特許文献8】特開2003−171899号公報
【特許文献9】特開2003−143388号公報
【特許文献10】特開2003−010079号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、吸放湿量が多く、短時間における調湿性能を有し、且つアンモニアを吸着して脱着することのないアンモニア吸着シートを提供することを課題とする。具体的には以下の通り6点の問題点を解決することを課題とした。
(1) 汚染ガスの内、特にアンモニアガスの吸着性能に優れ、脱着しないこと。
(2) 優れた調湿性能を有すること。(密閉系内部もしくは準密閉系内部における湿度の変化を抑えること。)
(3) 吸放湿速度の速いシートと吸放湿速度が遅く吸放湿量の多い基材とを併用すること。
(4) 繰り返し使用が可能であること。
(5) 廃棄処理が容易であること。
(6) 安価であること。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明の請求項1に係る発明は、製紙用繊維が19〜65質量部、熱融着性物質が1〜10質量部、アンモニア吸着剤と非結晶性無機粉体および貝化石の混合物が25〜80質量部からなることを特徴とするアンモニア吸着シートである。
【0010】
本発明の請求項2に係る発明は、接着剤が基紙全質量に対して3〜25質量%含まれ、必要に応じてホルマリン吸着剤と防黴剤を付与したことを特徴とする請求項1に記載のアンモニア吸着シートである。
【0011】
本発明の請求項3に係る発明は、アンモニア吸着剤が二酸化珪素、チタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物の複合物であり、これと非結晶性無機粉体および貝化石との混合物の比率が、質量比で5〜15:15〜55:5〜10であることを特徴とする請求項1または2に記載のアンモニア吸着シートである。
【0012】
本発明の請求項4に係る発明は、アンモニア吸着剤が二酸化珪素、酸化亜鉛、酸化アルミニウムの複合物であり、その化学式が8〜9SiO・Al・4〜5ZnO・nHOで構成され、これと非結晶性無機粉体および貝化石との混合物の比率が、質量比で5〜15:15〜55:5〜10であることを特徴とする請求項1または2に記載のアンモニア吸着シートである。
【0013】
本発明の請求項5に係る発明は、非結晶性無機粉体がシリカゲルであることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のアンモニア吸着シートである。
【0014】
本発明の請求項6に係る発明は、非結晶性無機粉体が含鉄アルミニウム水和物であり、その主成分がシリカ、アルミナ、酸化鉄で構成されることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のアンモニア吸着シートである。
【0015】
本発明の請求項7に係る発明は、板状、もしくはシート状の調湿基材と貼合したことを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載のアンモニア吸着シートである。
【0016】
本発明の請求項8に係る発明は、製紙用繊維が19〜65質量部、熱融着性物質が1〜10質量部、アンモニア吸着剤と非結晶性無機粉体および貝化石の混合物が25〜80質量部からなる原料を配合して抄紙して形成された、含有水分が50〜60質量%の乾燥前の坪量が300〜1200g/mの紙匹に、ホルマリンを含まない接着剤と、必要に応じてホルマリン吸着剤と防黴剤とを配合した含浸液を、湿式含浸法によって製紙用原料に対して3〜25質量%含浸処理し、これを乾燥させることを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載のアンモニア吸着シートである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、アンモニアの吸着性能に優れ、且つ一度吸着したアンモニアを脱着せず、優れた調湿性能を有し、吸放湿速度の速いシートと遅い基材とを併用し、作業性に優れ、繰り返し使用が可能で廃棄処理が容易であり、安価であるアンモニア吸着シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
前記したような課題を解決するために、まずアンモニア吸着性能に優れ、且つ温度が上昇しても一度吸着したアンモニアが再び脱着しないような物質を見出し、これを使用してシート状にし、且つ繰り返し使用が可能で最終的には可燃物として処理可能なものを目指した。
【0019】
本発明者等は、鋭意検討の結果、二酸化珪素とチタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物の複合物や、二酸化珪素と酸化亜鉛および酸化アルミニウムの複合物がアンモニア吸着性に優れ、且つ温度が上昇しても一度吸着したアンモニアが再び脱着しない吸着剤であることを見出した。そして、これらの複合物に非結晶性無機粉体と貝化石とを混合使用することで、アンモニア吸着性能と調湿性能を確保できることを見出し、これと熱融着性物質や接着剤を利用して製紙用繊維と合体させ、シート状の形状にすることで作業性に優れた材料とすることに成功した。
【0020】
二酸化珪素とチタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物の複合物は、水澤化学工業(株)から「セブントールN」の商品名で市販されている。また、二酸化珪素と酸化亜鉛および酸化アルミニウムの複合物は水澤化学工業(株)から「ミズカナイトHP」の商品名で市販されている。これらのガス吸着剤は、単にアンモニアのみを吸着するのではなく各種の汚染ガスに対する吸着性能を備えているために、本発明のアンモニア吸着シートにも必然的にアンモニア以外の各種の汚染ガスに対する吸着性能が備わっている。
【0021】
前記したガス吸着剤が、温度が上昇しても一度吸着したアンモニアが再び脱着しない理由は、これらの複合物が多孔質で比表面積が大きいことによる物理的なガス吸着だけでなく、以下に示すような化学反応に基づく化学吸着を主体としているからと考えられる。
【0022】
二酸化珪素とチタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物の複合物によるアンモニアの吸着機能は、吸着剤の表面に存在する活性水酸基とアンモニアとの化学反応に基づくものであり、この反応は不可逆反応であるためにアンモニアは脱着しないのである。反応機構は次式の通りである。
M(四価金属)−OH+NHOH→M−O・NH+H
【0023】
また、二酸化珪素と酸化亜鉛および酸化アルミニウムの複合物によるアンモニアの吸着機能は、二酸化珪素(固体酸)による中和反応と酸化亜鉛による配位子交換反応の2つに分けることができ、この反応は不可逆反応であるためにアンモニアは脱着しないのである。アンモニアに対する中和反応は次式の通りである。
NH+HO+−SIO(−)−→NH(+)SiO(−)+OH(−)
【0024】
本発明においては調湿性能を付与するために非結晶性無機粉体を使用した。非結晶性無機粉体とは、シリカゲル、シリカアルミナゲル、アルミナゲル、含鉄アルミニウム水和物等の合成無機粉体やアロフェン、イモゴライト等の天然の無機粉体が使用できる。図1に木材パルプに非結晶性粉体をそれぞれ50質量%混抄した紙の等温吸着曲線を示した。吸放湿性能には、図1の如く低湿度領域で優れた吸放湿性能を示す(1)のシリカゲルA型と、高湿度領域で優れた吸放湿性能を示す(2)のシリカゲルB型、(3)の含鉄アルミニウム水和物がある。また、(4)に100質量%木材パルプ紙の吸放湿性能を示したが、前記(1)、(2)、(3)と比較して、明らかに低湿度および高湿度領域において際立った吸放湿特性が無いことがわかる。さらに目的とする調湿条件に即した調湿性能を得るためには、このシリカゲルA型とシリカゲルB型、含鉄アルミニウム水和物を単独で、あるいは適度にブレンドして使用すれば良い。
【0025】
非結晶性無機粉体であるシリカゲルや含鉄アルミニウム水和物も良好な汚染ガス吸着物質であるが、これらは物理的な汚染ガスの吸着要素が大きいため、一度補足したアンモニアが温度上昇により脱着する危険性があるので、前記したようなアンモニア吸着剤と併用することが必要となる。
【0026】
本発明においては、本発明者等が先に提案した特許文献2に記載の新第三紀新世代に該当する天然に産する貝化石を使用することが必要である。その理由は、貝化石は炭酸カルシウムを主成分としたアラゴナイトの形をしており、これを微粒子として使用することでアンモニアを物理的に吸着する性能を有している。本発明者等がさらに検討した結果、この貝化石は通常使用されている炭酸カルシウムよりも水に対する解離度が高いことがわかり、長期にわたってシートの冷水抽出pH値を中性に保つのに極めて有効な物質であることが判明したからである。
【0027】
本発明で使用する製紙用繊維としては、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、針葉樹未晒クラフトパルプ(NUKP)、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)等の木材パルプの単独もしくは混合物を主体とし、これに麻、ケナフ、竹、藁等の非木材パルプ、さらにレーヨン、ビニロン等の化学繊維や合成繊維あるいはガラス繊維やロックウール等の無機繊維を必要に応じて単独あるいは混合して使用することができる。製紙用繊維の増減は、熱融着性物質、アンモニア吸着剤と非結晶性無機粉体および貝化石の混合物の使用量によって左右されるが、19〜65質量部であることが必要である。19質量部以下であると前記混合物の含有量が多くなりすぎ、アンモニア吸着性能および調湿性能は向上するが、シート状物としての強度が不足して作業性が悪くなる。また、65質量部以上になると前記混合物の含有量が少なくなりすぎ、作業性は向上するが必要とするアンモニア吸着性能や調湿性能が不足する。
【0028】
本発明では上記したような製紙用繊維と前記混合物を混合した中に、熱融着性物質を1〜10質量部添加する。熱融着性物質の融点は、抄紙における乾燥工程中で熱融着が可能な140℃以下であることが好ましい。熱融着性物質としてはポリエチレン、合成パルプ、ポリプロピレン等のオレフィン繊維及びこれらのミクロフィブリル化繊維、ポリビニルアルコール繊維のような熱水溶解型繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル等を複合させた低融点の繊維のような熱融着繊維や、熱可塑性エラストマー、アイオノマー、変性アイオノマー、酢ビ系共重合ポリオレフィン、ステアリン酸、カルナバワックス等のオレフィン、脂肪酸、脂肪酸の金属石鹸やワックスエマルジョン、あるいはディスパージョンを単独あるいは混合したものを使用する。熱融着性物質が1質量部以下であるとシートの強度が得難い上、粉落ち防止効果が十分ではなく、10質量部以上使用してもシートの強度や粉落ち防止効果は頭打ちとなってしまい、さらにはシートが硬くなるので巻き取り難くなり好ましくない。
【0029】
本発明では、接着剤が基紙全質量に対して3〜25質量%含まれ、必要に応じてホルマリン吸着剤と防黴剤を付与させることが好ましい。また、接着剤を基紙に担持させる方法として、基紙材料を混合したスラリーに接着剤等を添加し、定着剤で繊維に定着させる方法か基紙に含浸させる方法かのいずれでも良い。本発明で使用する接着剤としてはSBR、NBR等の合成ゴムラテックス、アクリルエマルジョン、エチレン酢ビエマルジョンおよびこれらの共重合エマルジョン、カゼイン、澱粉、ポリビニルアルコール等を適宜組み合わせて使用するが、ホルマリンを含まない接着剤が望ましいものである。さらに、時として接着剤に含まれているホルマリンを除去するためにホルマリン吸着剤を使用する場合は、100質量部の含浸液に対してホルマリン吸着剤を1〜5質量部混合して使用する。ホルマリン吸着剤としては、尿素誘導体や特殊カーボアマイド誘導体等を挙げることができる。また、有機物主体のシートにおける黴の発生を防ぐために、防黴剤を含浸液に100〜2000ppm程度混合して使用する。防黴剤としては、有機沃素化合物、ベンズイミダゾール(TBZ)、パラオキシ安息香酸エステル(パラベン)等を挙げることができる。接着剤の含浸比率が3質量%以下であると、表面強度が弱く、作業性に適したシートになり難い。また、25質量%以上になるとアンモニア吸着量が減少してしまうので好ましくない。
【0030】
本発明では、アンモニア吸着剤と非結晶性無機粉体および貝化石の混合物が25〜80質量部であることが必要である。前記混合物が25質量部以下であると、必要とするアンモニア吸着量と吸放湿量が得られ難くなり、80質量部以上ではこれらの機能が頭打ちになり、さらにはシートの強度が弱くなって巻取りの形にすることが困難となって作業性が悪くなるので好ましくない。また、アンモニア吸着剤と非結晶性無機粉体および貝化石の混合比率は、質量比で5〜15:15〜55:5〜10であることが好ましい。アンモニア吸着剤が質量比で5以下であると、アンモニア吸着量が不足して、新しく打設したコンクリートから発生するアンモニアを吸着することが困難となり、15以上になるとアンモニア吸着剤量としては十分であるが、シートの価格が高くなるので好ましくない。非結晶性無機粉体が質量比で15以下であると、吸放湿量が不足するため十分な湿度調節ができ難くなり、55以上になると性能が頭打ちとなり価格も高くなるので好ましくない。貝化石が質量比で5以下であると、シートの冷水抽出pH値を7〜9に長期間維持することが困難となり、10以上になるとその性能が頭打ちとなるので好ましくない。
【0031】
本発明では板状、もしくはシート状の調湿基材と貼合することが好ましい。本発明における板状、もしくはシート状の調湿基材とは桐、杉、桧、スプルース、合板、インシュレーションボード、セラミック粉混入木繊セメント板、木粉や珪酸カルシウムと吸水性高分子樹脂との複合板等の天然木材および木材加工品の他、セメント板、石膏ボード、珪藻土やゼオライトを混入した石膏ボード、石川珪藻土や秋田珪藻土および稚内珪藻頁岩とアロフェンを用いた調湿板、天然ゼオライトを骨材にしたモルタル板等の無機質材料よりなる基材を指しているが、吸放湿量が多く、吸放湿速度の速いものが望ましい。
【0032】
しかしながら、前記した調湿基材の内、天然木材および木材加工品は、アンモニア吸着性能が殆ど無く、調湿性能は有するが単位体積当たりの吸放湿量が少ない上、短時間における吸放湿速度も若干遅い。また、無機質材料よりなる基材は、アンモニア吸着性能はあるが温度の上昇によって脱着し易く、吸放湿量は多いが短時間における吸放湿速度が遅いことが難点であった。そこで、吸放湿量が多く、短時間における吸放湿速度の速いことに加え、アンモニアを吸着して脱着しない本発明によるシートと前記した調湿基材とを貼合して複合体とすることで、既存の基材の難点を解消することを目指したのである。
【0033】
図2に代表的な調湿基材の吸放湿速度と吸放湿量を示した。これは各種の基材を温度が25℃、相対湿度が40%RHの条件下で7日間調整した後、温度が25℃、相対湿度が80%RHの条件下で24時間暴露し、次いで温度が25℃、相対湿度が40%RHの条件下に24時間暴露した時の吸放湿量の変化を調べたものである。図中で(5)は実施例5による本発明のアンモニア吸着シート(実施例5のアンモニア吸着シートを2枚に貼合し、厚さ3mm、坪量1200g/mとした)、(6)は珪酸カルシウム板(厚さ25mm)、(7)は秋田県産の杉板(厚さ20mm)を示す。図からわかるように(6)と(7)は相対湿度が40%RHから80%RHの条件下で24時間暴露した際、さらには80%RHから40%RHの条件下で24時間暴露した際には、本来到達すべき平衡水分量には達していなかった。この図から吸放湿速度は(5)のアンモニア吸着シートが最も速く、次いで(6)の珪酸カルシウム板、(7)の杉板の順となる。また、吸放湿量は(6)の珪酸カルシウム板が最も多く、次いで(5)のアンモニア吸着シート、(7)の杉板の順となるが、アンモニア吸着シートを(6)の珪酸カルシウム板と同程度の厚さにまで積層すれば珪酸カルシウム板の吸放湿量を超えることが予測される。しかしながら、巻取りが可能なシートの厚さを考慮すると厚さは3mm以下とすべきであり、珪酸カルシウム板や杉板と貼合することでこれらの欠点を補う材料とした方が経済的であり、好ましい。
【0034】
本発明では、製紙用繊維が19〜65質量部、熱融着性物質が1〜10質量部、アンモニア吸着剤と非結晶性無機粉体および貝化石の混合物が25〜80質量部からなる原料を配合して抄紙して形成された、含有水分が50〜60質量%の乾燥前の坪量が300〜1200g/mの紙匹に、ホルマリンを含まない接着剤と、必要に応じてホルマリン吸着剤と防黴剤とを配合した含浸液を、湿式含浸法によって製紙用原料に対して3〜25質量%含浸処理することが好ましい。
【0035】
シートを一度乾燥した後で接着剤等を含浸して再度乾燥させる乾式含浸法は、含浸液と紙内部の空気との置換であるため、厚い紙では内部の空気と含浸液との置換が巧くいかず、含浸液中の接着剤の分布が不均一になりやすい。また、含浸後乾燥する際に、紙の表裏に含浸液中の接着剤がマイグレートする結果、紙の内部には接着剤が少なくなる傾向がある。また、一度シートを形成した後で含浸、再度乾燥処理を行うために工程数が増え、コストがかかるという欠点がある。本発明で採用する湿式含浸法においては、含有水分が50〜60質量%の乾燥前の濡れた紙を含浸処理するために、含浸液と紙匹内部にある水分とがスムースに置換でき、厚い紙でも乾燥後のシートに接着剤が均一に分布し、且つ通気性の良い低密度のシートとなり、また工程数も増えないのでコスト的にも有利であるという利点を有する。
【実施例】
【0036】
[実施例1]
製紙用繊維として針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)30質量部、二酸化珪素とチタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物よりなるアンモニア吸着剤(商品名「セブントールN」、水澤化学工業(株)製造)10質量部、非結晶性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270A」、富士シリシア化学(株)製造)50質量部、貝化石((株)グリーン・カルチュア製造)5質量部との混合物に熱融着性物質(商品名「TJ04CN」、帝人(株)製造)5質量部を混合し、離解して得られた均一なスラリーに、紙力増強剤(商品名「ネオタックL−1」、日本食品加工(株)製造)を固形分換算で0.5質量%添加して分散し、更に高分子アニオン性凝集剤(商品名「ハイホルダー351」、栗田工業(株)製造)を固形分換算で0.006質量%添加した後、常法により長網抄紙機で坪量600g/mのアンモニア吸着シートを得た。
【0037】
[実施例2]
アンモニア吸着剤を二酸化珪素と酸化亜鉛および酸化アルミニウムよりなるアンモニア吸着剤(商品名「ミズカナイトHP」、水澤化学工業(株)製造)に変更した以外は実施例1と同様にして坪量600g/mのアンモニア吸着シートを得た。
【0038】
[実施例3]
非結晶性無機粉体を含鉄アルミニウム水和物(商品名「アロフェマイトFP」、水澤化学工業(株)製造)に変更した以外は実施例1と同様にして坪量600g/mのアンモニア吸着シートを得た。
【0039】
[実施例4]
アンモニア吸着剤を二酸化珪素と酸化亜鉛および酸化アルミニウムよりなるアンモニア吸着剤(商品名「ミズカナイトHP」)に、非結晶性無機粉体を含鉄アルミニウム水和物(商品名「アロフェマイトFP」)に変更した以外は実施例1と同様にして坪量600g/mのアンモニア吸着シートを得た。
【0040】
[実施例5]
製紙用繊維として針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)33質量部、二酸化珪素とチタンの水不溶性リン酸塩および亜鉛の水酸化物よりなるアンモニア吸着剤(商品名「セブントールN」)10質量部、非結晶性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270A」)50質量部、貝化石5質量部との混合物に熱融着性物質(商品名「TJ04CN」)2質量部を混合して得られた均一なスラリーに、紙力増強剤を固形分換算で0.5質量%添加して分散し、さらに高分子アニオン性凝集剤を固形分換算で0.006質量%添加した後、常法により長網抄紙機で抄紙した湿紙に、固形分濃度20質量%濃度の接着剤(商品名「ニポールLX−430」、日本ゼオン(株)製造)と固形分濃度2質量%のホルマリン吸着剤(商品名「TFC−21B」、高松油脂(株)製造)および固形分濃度0.0005質量%の防黴剤(商品名「コートサイド55D」、武田薬品工業(株)製造)の混合液を、湿式含浸法によって、基紙質量に対して5質量%付着させ、坪量600g/mのアンモニア吸着シートを得た。
【0041】
[実施例6]
アンモニア吸着剤を二酸化珪素と酸化亜鉛および酸化アルミニウムよりなるアンモニア吸着剤(商品名「ミズカナイトHP」)に、非結晶性無機粉体を含鉄アルミニウム水和物(商品名「アロフェマイトFP」)に変更した以外は実施例5と同様にして坪量600g/mのアンモニア吸着シートを得た。
【0042】
[実施例7]
実施例1〜実施例6で得られたアンモニア吸着シートを一定の寸法に裁断した後、同寸法に裁断した40g/mの熱融着性不織布(ポリアミド等)を介在させ、熱圧プレスによって厚さ20mmの珪酸カルシウム板に熱圧貼合してアンモニア吸着性内装材を得た。
【0043】
[比較例1]
製紙用繊維として針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)40質量部、非結晶性無機粉体(商品名「シリカゲルPA−270A」)50質量部、貝化石((株)グリーン・カルチュア製造)5質量部との混合物に熱融着性物質(商品名「TJ04CN」)5質量部を混合し、離解して得られた均一なスラリーに、紙力増強剤(商品名「ネオタックL−1」)を固形分換算で0.5質量%添加して分散し、更に高分子アニオン性凝集剤(商品名「ハイホルダー351」)を固形分換算で0.006質量%添加した後、常法により長網抄紙機で坪量600g/mのシートを得た。
【0044】
[比較例2]
非結晶性無機粉体を含鉄アルミニウム水和物(商品名「アロフェマイトFP」)に変更した以外は比較例1と同様にして坪量600g/mのシートを得た。
【0045】
実施例1〜実施例7、および比較例1〜比較例2で得られたサンプルについて以下のような評価試験を行い、その結果を図3〜図5に示した。
【0046】
(1)アンモニアガスの吸着性能と脱着
実施例1〜実施例6および比較例1〜比較例2で得られたサンプルを温度23℃、相対湿度50%RHの条件下で24時間放置して前処理した。次いでこのサンプルを6cmの大きさに裁断してからテドラーバッグに入れて脱気し、既知の濃度に調製したアンモニアガス2リットルを注入し、直ちに検知管(ガステック(株)製造)を使用してその濃度を温度25℃で測定し、これを初期濃度とした。温度を25℃に保ちながらアンモニアガスの濃度を15分毎に60分まで測定した。さらに温度を50℃まで上昇させ、60分後に再度アンモニアガスの濃度を測定し、アンモニアガスの脱着を調べた。その結果を図3に示した。
【0047】
(2)吸放湿性能
実施例5で得られた600g/mのアンモニア吸着シートと厚さ20mmの珪酸カルシウム板とを貼合した複合体(10)と、厚さ20mmの珪酸カルシウム板(11)を予め温度23℃、相対湿度53%RHの条件下で7日間調整した後に、温度は変えずに相対湿度73%RHの条件下で24時間曝し、次いで相対湿度53%RHの条件下で24時間曝した時の吸放湿量を測定した。その結果を図4に示した。
【0048】
(3)密閉容器内における調湿性能
鋼製の密閉容器を用いて実施例1〜実施例6(12)で得られたサンプルの調湿性能を確認した。容器の中に気積率が2m/mとなるようにサンプルを裁断し、別々に壁面に固定して測定した。密閉容器の蓋を開け20℃、65%RHで5時間開放した後密封し、容器の保管温度(14)を40→20→10→20℃と5時間毎に変化させた時の容器内の湿度変動を測定した結果を図5に示した。図5中の(13)は、アンモニア吸着シートを全く使用しなかった時の湿度変動を示している。
【0049】
図3から以下のことがわかった。(8)は実施例1〜実施例6のサンプルが示した代表的なアンモニアガスの残存率の曲線を示し、(9)は比較例1〜比較例2のサンプルが示した代表的なアンモニアガスの残存率の曲線を示す。(8)と(9)ではアンモニアガスに対する吸着量や吸着速度に関してその差は余り認められないが、昇温して60分後のアンモニアガス濃度には大きな差が出ていることがわかる。すなわち、実施例1〜実施例6では昇温してもアンモニアガスが脱着しないが、比較例1〜比較例2においてはアンモニアガスが脱着していることが確認された。
【0050】
図4から以下のことがわかった。(10)は実施例7で得られたアンモニア吸着シート(実施例1〜実施例6で得られた代表的なアンモニア吸着シート)と厚さ20mmの珪酸カルシウム板とを貼合した複合体を、(11)は厚さ20mmの珪酸カルシウム板の単体を示す。図4からわかるように(11)においては、相対湿度が53%RHから73%RHで、また73%RHから53%RHの条件下で24時間曝しても到達すべき平衡水分含有量には達していない。また、(10)は(11)と比較して湿度の変化に対応して直ぐに反応して吸放湿し、しかも吸放湿量を増加させるので、保存環境の相対湿度を一定に保つには極めて有効な調湿基材となることがわかった。
【0051】
図5から以下のことがわかった。(12)は実施例1〜実施例6で得られたアンモニア吸着シートを使用した時の代表的な湿度変動を示したが、容器の保管温度(14)が変動しても相対湿度の変化が非常に少なく、極めて短時間の内に相対湿度が一定になることがわかる。しかしながら、アンモニア吸着シートを使用しない(13)では、容器内の相対湿度は25〜90%RHの範囲で大きく変動することがわかる。
【0052】
実施例5で得られるアンモニア吸着シートを製造した時、全く同じ処方と方法で坪量を500、600、700、800、1000、1200g/mのアンモニア吸着シートを得た。特に図示はしないが、吸放湿性能を23℃で50%RHから75%RHに変化させた時の吸湿量として測定すると、シートの坪量が600g/m以上より重いと目的とする吸湿量に達し易くなり、吸湿量も多くなることがわかった。本発明の用途として、平版状で使用するには問題はないが、壁紙のような建材用のように3インチ紙管に所定の長さを巻く場合を想定すると、800g/m以上になると巻き芯に近い部分に折れ割れが生じ易いこと、小巻ロールの1本当りの重量が重くなり2人では運搬でき難いことが確認されたので、巻取りでの扱いに際しては、シートの坪量は800g/m以下であることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
美術館、博物館、各種の資料保存庫等において新築、増改築時にコンクリート躯体の天井や壁、あるいは資料保存用や展示用の棚、台等に設置することで、資料の安全な保存環境を整え、コンクリートの枯らし期間を大幅に短縮するのに好適に利用できる。また、学校や病院等の公共建造物、各種ホール等における新築、増改築時にコンクリート躯体から発生するアンモニアを吸着することで、環境維持の向上効果も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】非結晶性無機粉体の種類による相対湿度と平衡重量の関係を示す図である。
【図2】代表的な調湿基材の吸放湿速度と吸放湿量の関係を示す図である。
【図3】アンモニアガスの吸着性能と昇温による脱着の関係を示す図である。
【図4】相対湿度を変化させた際の吸放湿量の関係を示す図である。
【図5】相対湿度を変化させた際の、密閉容器内の相対湿度の変化を示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 シリカゲルA型
2 シリカゲルB型
3 含鉄アルミニウム水和物
4 ブランク
5 実施例5による本発明のアンモニア吸着シート(厚さ3mm、坪量1200g/m
6 珪酸カルシウム板(厚さ20mm)
7 秋田県産の杉板(厚さ20mm)
8 実施例1〜実施例6における代表的なアンモニア吸着シート
9 比較例1〜比較例2における代表的なシート
10 実施例1〜実施例6における代表的なアンモニア吸着シートと珪酸カルシウム板を貼合した基材
11 珪酸カルシウム板
12 実施例1〜実施例6における代表的なアンモニア吸着シート
13 ブランク
14 容器の保管温度


























【出願人】 【識別番号】000225049
【氏名又は名称】特種製紙株式会社
【出願日】 平成16年5月7日(2004.5.7)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−319367(P2005−319367A)
【公開日】 平成17年11月17日(2005.11.17)
【出願番号】 特願2004−138091(P2004−138091)