トップ :: B 処理操作 運輸 :: B01 物理的または化学的方法または装置一般




【発明の名称】 消泡と撹拌を同時に行うための撹拌装置およびこれを用いた反応装置および反応方法
【発明者】 【氏名】茂野 俊也

【氏名】小野寺 正幸

【氏名】竹園 恵

【要約】 【課題】撹拌反応装置における泡立ちを解決する方法として消泡剤の添加、pHの変化、温度の変化などを行うと、反応装置内の化学反応や微生物の培養などが阻害されることもあり、さらに消泡剤の添加はコスト増加となる。機械的消泡においては、高回転で消泡用回転翼を運転するため、溶液撹拌用回転翼を同軸上に設置すると、撹拌動力が大きくなり、また溶液が必要以上に激しく撹拌されて泡立ちの原因となる。

【解決手段】消泡用回転翼と同軸上に設置した溶液撹拌用回転翼の構造を撹拌効率の低い形状とする。溶液撹拌用回転翼が撹拌効率の低い形状を有するため撹拌が必要以上に激しくならないので泡立ちが抑えられ、さらに溶液の抵抗も小さくなるので回転のための動力を抑えることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の回転軸に少なくとも1枚の消泡用回転翼と少なくとも1枚の撹拌効率の低い形状を有する溶液撹拌用回転翼を各々設置することを特徴とし、消泡のために必要な回転数を伴う撹拌においても必要な動力を低く抑えると同時に充分な溶液の撹拌状態を可能とする撹拌装置。
【請求項2】
1本の回転軸に少なくとも1枚の消泡用回転翼と少なくとも1枚の棒状溶液撹拌用回転翼を各々設置することを特徴とし、消泡のために必要な回転数を伴う撹拌においても必要な動力を低く抑えると同時に充分な溶液の撹拌状態を可能とする撹拌装置。
【請求項3】
1本の回転軸に少なくとも1枚の消泡用回転翼と少なくとも1枚の撹拌効率の低い形状を有する溶液撹拌用回転翼を各々設置することを特徴とし、消泡のために必要な回転数を伴う撹拌においても必要な動力を低く抑えると同時に充分な溶液の撹拌状態を可能とする撹拌装置あるいは1本の回転軸に少なくとも1枚の消泡用回転翼と少なくとも1枚の棒状溶液撹拌用回転翼を各々設置することを特徴とし、消泡のために必要な回転数を伴う撹拌においても必要な動力を低く抑えると同時に充分な溶液の撹拌状態を可能とする撹拌装置を設置することを特徴とする反応装置。
【請求項4】
1本の回転軸に少なくとも1枚の消泡用回転翼と少なくとも1枚の撹拌効率の低い形状を有する溶液撹拌用回転翼を各々設置することを特徴とし、消泡のために必要な回転数を伴う撹拌においても必要な動力を低く抑えると同時に充分な溶液の撹拌状態を可能とする撹拌装置あるいは1本の回転軸に少なくとも1枚の消泡用回転翼と少なくとも1枚の棒状溶液撹拌用回転翼を各々設置することを特徴とし、消泡のために必要な回転数を伴う撹拌においても必要な動力を低く抑えると同時に充分な溶液の撹拌状態を可能とする撹拌装置を設置することを特徴とする微生物の培養装置。
【請求項5】
1本の回転軸に少なくとも1枚の消泡用回転翼と少なくとも1枚の撹拌効率の低い形状を有する溶液撹拌用回転翼を各々設置することを特徴とし、消泡のために必要な回転数を伴う撹拌においても必要な動力を低く抑えると同時に充分な溶液の撹拌状態を可能とする撹拌装置あるいは1本の回転軸に少なくとも1枚の消泡用回転翼と少なくとも1枚の棒状溶液撹拌用回転翼を各々設置することを特徴とし、消泡のために必要な回転数を伴う撹拌においても必要な動力を低く抑えると同時に充分な溶液の撹拌状態を可能とする撹拌装置を設置することを特徴とする微生物の培養装置を用いることを特徴とする微生物の培養方法。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は撹拌することで、泡が発生する溶液を用いた撹拌反応において消泡と撹拌を同時に実現するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
撹拌は溶液反応において、溶液を充分に混合したり、気体と液体を充分に接触させたりする場合において不可欠な作業である。特に微生物の好気培養においては培養液に充分な酸素を溶解させることが重要であり、そのために多くの形状の撹拌翼が提案され、利用されている。
【0003】
一般的には溶液を撹拌すると泡が生じ、装置の外へ溢れ出したりするなどの問題が生じる。微生物の培養においては培養液の装置外への漏出は雑菌汚染の原因となり得る。このため従来は泡の温度を上昇させたり、下降させたりするなどの熱学的消泡法、消泡剤の添加や溶液のpHを変化させるなどの化学的消泡法あるいは散水や回転翼による衝撃などを利用した機械的消泡法などが行われている。これらの消泡技術については例えば「発酵と工業」Vol.36、No.4、1978年、p288−298や「あわの発生メカニズムと制御およびトラブル対策」、技術情報協会、1999年などに記載されている。
【0004】
しかし装置内で行おうとする反応によっては、温度の変動やpHの変化を避けなくてはならない場合もある。また消泡剤の添加によって反応が阻害されたり、微生物の培養においては酸素移動速度の低下を招き、微生物にとって毒物となる場合もある。また反応液からの目的物質の分離精製プロセスへの悪影響といった問題も生じる。さらに消泡剤などの薬品の添加は経済的には反応のためのコストを増大させる要因となる。
【0005】
機械的消泡法は溶液のpHや温度を変化させること無く、また薬剤の添加も不必要である。特に溶液水面よりも高い位置に設置した撹拌翼による消泡は撹拌翼による泡の巻上げと衝突による泡の破壊によって実現される消泡法であり、機械的構造が単純なため、コストが低く、効率的な方法である。
【0006】
回転翼による消泡法は泡の巻上げと衝突による泡の破壊によるものであるため、消泡用撹拌翼の回転速度は速いほど消泡の効率は高くなる。消泡用回転翼を高速回転させるために、従来は消泡用回転翼を反応装置の蓋部分に設置し、溶液撹拌用回転翼は装置底部に設置して、各々の回転翼は異なる駆動系によって異なる回転速度で運転されている。これは消泡効果を高めるために必要な高速回転で溶液撹拌用回転翼を運転すると、撹拌が激しすぎて泡立ちが盛んになり消泡効果が現れにくくなるためである。また溶液中にある溶液撹拌用回転翼を高速回転させるには、溶液の抵抗のため、大きな動力を必要とする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
回転軸の駆動部分を反応装置底部に設置することは、回転軸駆動部分が溶液中に存在することであり、溶液が漏洩しないためのメカニカルシールと呼ばれる特殊な構造が不可欠とり、装置作成のためのコストは増大する。また反応装置運転中の保守作業においても回転軸駆動部分が溶液中にあるのは好ましくない。このため回転軸駆動部分は溶液の上、つまり反応装置の蓋部分に設置されていることは望ましい構造である。しかし高速回転する消泡用回転翼と消泡用回転翼よりも低速で運転される溶液撹拌用回転翼を同時に反応装置の蓋部分に設置することは、装置の設計や作成上困難なものとなる。
【0008】
さらに従来の溶液撹拌用回転翼は例えば「新増補 混合および撹拌」化学工業社、1989年に記載のようにより遅い回転速度でより効果的な撹拌を実現するための研究開発がなされており、これらの溶液撹拌用回転翼を消泡用回転翼と同じ回転軸に設置し機械的消泡に必要な回転速度で運転すると、大きな動力が必要となる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明においては、消泡用回転翼を反応液水面よりも高い位置に設置し、溶液撹拌用回転翼の構造を撹拌効率の低い形状として消泡用回転翼と同じ回転軸に設置する。このような構造上の特徴を有する撹拌装置を機械的に消泡作用に必要な回転速度で運転し、反応液水面より発生する泡を消泡すると同時に、撹拌効率の低い形状を有する溶液撹拌用回転翼により撹拌が必要以上に激しくならない状態を保ち、泡立ちを抑え、さらに溶液の抵抗を小さくすることで回転のための動力を抑えることを可能とする。さらに本発明の方法により、消泡と撹拌を行う装置が一体化するので、消泡用回転翼と溶液撹拌用回転翼を同時に反応装置の蓋部分に設置することが可能となる。また本発明により消泡用回転翼と溶液撹拌用回転翼を同時に反応装置の底部に設置することも可能であるが、装置作成コストや保守管理の作業性などを考慮すれば、合理的な構造ではない。
【0010】
溶液を撹拌するためには、溶液の抵抗の大きい構造の方が効率的である。逆に撹拌効率の低い形状は溶液の抵抗の少ない構造と同じ意味として考慮することができる。溶液撹拌用回転翼の構造を撹拌効率の低い形状にすることで、溶液の抵抗が減少し、高速回転においても回転のための動力は少なくて済むようになる。
【0011】
撹拌効率の低い形状、つまり溶液の抵抗の少ない構造としては、回転翼の進行方向に対する回転翼断面が流線型、円形あるいは楕円形など形状のものが考えられる。また回転翼断面の形状が同じであれば、面積が小さいほどすなわち回転翼が細いほどあるいは回転翼の長さが短いほど、撹拌効率の低い、溶液の抵抗の少ない構造となる。尚、回転翼の長さとは、実質的に溶液と抵抗を有する構造体の回転軸からの長さである。
【0012】
また溶液撹拌用回転翼は複数であっても構わない。回転翼が同じ形状で同じ長さの場合は、回転翼の本数が減るほど撹拌効率は低くなり、溶液の抵抗は小さくなる。
【0013】
しかし溶液撹拌用回転翼の撹拌効率は決して低いほど望ましいものではない。溶液撹拌用回転翼が設置される撹拌装置には消泡用回転翼も同じ回転軸設置されており、回転軸の回転速度は消泡作用に必要な回転速度となる。従って消泡に必要な回転速度での運転時に充分な撹拌作用を有し、同時に激しすぎる撹拌による泡立ちを抑制するように溶液撹拌用回転翼の形状、長さおよび本数を決定しなくてはならない。
【0014】
充分な撹拌作用とは、反応に必要な溶液を混合する作用、基質を溶解する作用などがあり、基質は固体、液体、気体の単独あるいは任意の組み合わせである。例えば液体のみの反応系において反応基質内の温度を一定条件に保つためには、速やかな液体の混合が必要となる。また微生物の好気的な培養においては、培養液中の溶存酸素濃度が反応の律速になることが多く、この場合には空気中の酸素を培養液に充分に溶解させることが必要となる。酸素を培養液に充分に溶解させるためには、空気や酸素の気泡をなるべく小さくして、気体と液体の界面の面積を大きくすることや気泡が溶液中に留まる時間を長くすることが必要であり、培養液の撹拌条件が重要な因子となる。
【実施例1】
【0015】
以下に本発明の実施例を示す。以下の内容は本発明の効果を具体的に示した例であり、本発明の範囲を制限するものではない。
【0016】
槽径19cmの反応装置を用いて、本発明の撹拌装置の効果を実証した。消泡翼の形状は下付羽根タービンとし、外径は槽径の12.6cm、静止液面から13.3cmの高さに設置した。溶液撹拌用回転翼の形状は棒状とし、対象としてタービン型のものを用いた実験も行った。反応液の液量は5.38L、静止状態で槽底から水面までは19cmとした。反応液は0.15M硫酸ナトリウム溶液を用いて、通気量5L/minで槽底から空気を供給し、撹拌による酸素溶解速度と撹拌に必要な動力を測定した。消泡効果を確認するために、界面活性剤であるTritonX−100を100mg/Lになるように添加した実験を行い、これを発泡系とした。またTritonX−100を添加しない実験を非発泡系とした。
【0017】
棒状の溶液撹拌用回転翼を用いた場合は800rpm以上の回転速度があるとTritonX−100を添加した発泡系において消泡作用が観察された。これに対してタービン型の溶液撹拌用回転翼を用いた場合は回転動力が大きすぎて700rpm以上の回転速度が実現できなかった。このためTritonX−100を添加した発泡系においては消泡作用を観察することができなかった。
【0018】
撹拌と通気に必要な動力と酸素溶解速度の関係を図1に示した。図1の横軸は撹拌と通気に必要な動力の合計値であり、縦軸は酸素溶解速度を示している。
【0019】
タービン型の溶液撹拌用回転翼を用いた場合は実験条件において消泡作用が認められなかったので、TritonX−100を添加しない非発泡系での結果を示した。棒状の溶液撹拌用回転翼において800rpmの撹拌が可能となる動力と同じ動力を投入するとタービン型の溶液撹拌用回転翼においては400rpmの回転しかできなかった。またこの時の酸素溶解速度は棒状の溶液撹拌用回転翼においてタービン型の溶液撹拌用回転翼での値の約5倍となった。これらの結果より、棒状の溶液撹拌用回転翼を用いることで従来のタービン型の溶液撹拌用回転翼に比べてより少ない動力で充分な酸素溶解速度を実現し、さらに消泡作用を発揮することが確認された。
【発明の効果】
【0020】
本発明の撹拌装置を用いることで、機械的消泡に必要な高回転での撹拌を行いながら、溶液の撹拌状態を必要以上に激しくしないで溶液の泡立ちも抑えることができる。この時に消泡剤の添加、pHの変化、温度の変化などの化学的消泡を併用する必要がなく、反応装置内の化学反応や微生物の培養などにおいては反応の阻害や微生物の生育阻害などが起こらない。さらに消泡剤などを添加しないため、コスト削減効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】撹拌と通気に必要な動力と酸素溶解速度の関係を示す図。
【符号の説明】
【0022】
白丸は棒状の溶液撹拌用回転翼を用いた時に測定された撹拌と通気に必要な動力と酸素溶解速度であり、黒丸はタービン型の溶液撹拌用回転翼を用いた時に測定された撹拌と通気に必要な動力と酸素溶解速度を示す。白丸および黒丸の添え字はその時の撹拌翼の回転数である。
【出願人】 【識別番号】503301624
【氏名又は名称】茂野 俊也
【識別番号】503302034
【氏名又は名称】小野寺 正幸
【識別番号】503301635
【氏名又は名称】竹園 恵
【出願日】 平成15年7月17日(2003.7.17)
【代理人】
【公開番号】 特開2005−34820(P2005−34820A)
【公開日】 平成17年2月10日(2005.2.10)
【出願番号】 特願2003−296867(P2003−296867)