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【発明の名称】 臭気ガスの脱臭方法及び装置
【発明者】 【氏名】本藤 和臣
【住所又は居所】神奈川県横須賀市夏島町19番地 住友重機械工業株式会社横須賀製造所内

【要約】 【課題】下水処理施設等から発生する臭気ガスの臭気成分を、その濃度が著しく変動する場合であっても優れた脱臭効果を発揮すると共に、運転コストを低減し得、長期間に亘って優れた処理性能を維持することが可能な臭気ガスの脱臭方法及び装置を提供する。

【解決手段】下水処理設備等から発生する臭気ガスを、予め微生物固定化担体を用いる生物脱臭により硫化水素等を除去し、その生物処理ガスを金属フタロシアニン触媒含有溶液との接触によって脱臭する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
臭気ガスを予め微生物固定化担体を用いて生物脱臭し、その生物脱臭処理ガスを更に、金属フタロシアニン触媒含有溶液と接触させて処理を行うことを特徴とする臭気ガスの脱臭方法。
【請求項2】
使用した前記金属フタロシアニン触媒含有溶液に蓄積するイオウ等の固形物を固液分離により除去して、循環使用することを特徴とする請求項1記載の臭気ガスの脱臭方法。
【請求項3】
臭気ガスを生物処理する微生物固定化担体を充填した生物脱臭塔を前段に設置し、後段に金属フタロシアニン触媒含有溶液を散布する気液接触反応塔を設置し、生物脱臭塔からの処理ガスを金属フタロシアニン触媒溶液を散布する気液接触反応塔に導入する配管を設けたことを特徴とする臭気ガスの脱臭装置。
【請求項4】
前記気液接触反応塔で使用された金属フタロシアニン触媒含有溶液より固形物を取り除く固液分離装置を前記気液接触反応塔に備えることを特徴とする請求項3記載の臭気ガスの脱臭装置。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、下水処理場、し尿処理場及び食品工場や化学工場などから発生するガス中の不快な臭気成分を効率よく除去することができる臭気ガスの脱臭方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下水、し尿などの処理施設及び各種工場などから発生する臭気ガスは生活環境の改善要求が高まり、その対策が求められている。特に下水処理場等で発生する臭気ガスには、臭気成分として、硫化水素が比較的多く含まれ、その他にメチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチルなどの硫黄系臭気成分や、アンモニア等の塩基性ガスが含まれているため、これらの臭気成分を除去する必要がある。
これらの臭気成分を含む臭気ガスの脱臭方法としては、薬液洗浄法、活性炭吸着法、生物脱臭法、オゾン酸化法、プラズマ触媒酸化法など各種のものが知られている。
【0003】
しかし、薬液洗浄法は薬品費が高いことと廃液処理を要するという問題がある。活性炭吸着法では吸着量に限界があり、吸着能が低下した時点で、新しいものに交換するか、厄介な再生を行う必要がある。特に活性炭吸着法では、水分の多いガスを処理する場合、水分の吸着により臭気成分の吸着量が著しく低下する。
オゾン酸化法やプラズマ酸化法でも、低温で処理する場合、処理するガス中の水分によって金属酸化物等の固体触媒の性能が低下するという問題があり、また、オゾンやプラズマの発生装置が高価であり、電力消費も大きいといった問題点を有している。
【0004】
最近では生物脱臭法の一つである充填塔式生物脱臭法が多く用いられている。充填塔式生物脱臭法は、充填塔内に設けられた生物担体充填層(以下、単に充填層と記す)に臭気ガスを通すことにより臭気ガス中の臭気成分を分解除去する方法である。
ところが、充填塔式生物脱臭法は、一般にランニングコストが安く、硫化水素のような易分解性の臭気成分は除去しやすいものの、硫化メチル、二硫化メチルなどの難分解性の臭気成分は除去しにくい。また極端な臭気濃度の変動には追随することができない。このため、充填塔式生物脱臭装置の後段にオゾン共存下で固体触媒を充填した触媒反応器を設ける方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
しかし、この方法では固体触媒に水分が吸着したり、硫黄や硫酸等が付着して触媒が劣化し、性能が低下してしまうという問題を有している。
また、その他の脱臭法として、遷移金属キレート化合物を臭気成分の酸化触媒として使用する方法が知られている。遷移金属キレート化合物としては、遷移金属ポルフィリン誘導体が有効であり、特に金属フタロシアニンが適している。
【0006】
例えば、金属フタロシアニンを化学繊維に担持させた脱臭材や金属フタロシアニンを担持させた不織布と活性炭フィルタ等を併用した消臭フィルタを利用した方法が提案されている(例えば、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。
【0007】
金属フタロシアニンは室温等の低温でも触媒機能を有しているが、触媒活性が小さいため、消臭速度が遅く、消臭効果が十分でないという問題を有している。また、臭気成分の分解や酸化によって生ずる硫黄や硫酸等の付着により活性が低下するという問題を有している。
さらに、従来のこれらの方法では、金属フタロシアニンを繊維等に含浸担持させたものを乾燥させて調整するので、製作に時間とコストがかかるという問題もある。
【0008】
【特許文献1】特開2000−246050号公報
【特許文献2】特開昭62−6985号公報
【特許文献3】特開昭62−6986号公報
【特許文献4】特開平11−9671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、下水処理施設等から発生する臭気ガスの臭気成分を、その濃度が著しく変動する場合であっても優れた脱臭効果を発揮すると共に、運転コストを低減し得、長期間に亘って優れた処理性能を維持することが可能な臭気ガスの脱臭方法及びそのような機能を有する脱臭装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、上述した課題を達成するためになされたもので、以下の手段で解決された。
下水処理設備等から発生する臭気ガスの脱臭方法であって、臭気ガスを予め微生物固定化担体を用いて生物脱臭し、その生物脱臭処理ガスを更に、金属フタロシアニン触媒含有溶液(以下、単に金属フタロシアニン溶液と記す)と接触させて脱臭するようにした。
使用した前記金属フタロシアニン溶液に蓄積するイオウ等の固形物を固液分離により除去して循環使用することも特徴とする。
【0011】
下水処理施設等から発生する臭気ガスを脱臭する装置であって、臭気ガスを生物処理する微生物固定化担体を充填した生物脱臭塔を前段に設置し、その生物脱臭処理ガスを更に処理する金属フタロシアニン溶液を散布する気液接触反応塔(以下、単に反応塔と記す)を後段に設置した。
前記反応塔で使用された金属フタロシアニン溶液より固形物を取り除く固液分離装置を前記反応塔に備えることも特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
予め生物脱臭により硫化水素を除去し、その処理ガス中の未分解の臭気成分を金属フタロシアニン溶液で処理する本発明の脱臭方法及び装置を使用することによって、下水処理施設等から発生するガス中の臭気成分を十分に除去することができる。
また、経済的且つ長期間に亘って効率よく安定して処理することが可能である。特に、臭気濃度が高い場合、また、臭気濃度の変動が大きい場合でも安定した脱臭処理が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は下記の実施の形態になんら限定されるものではなく、適宜変更して実施することが可能なものである。
図1は本発明による臭気ガスの脱臭方法を実施する装置の構成例を示す概略図である。図1に示すように、脱臭装置20は、例えば下水処理設備から発生する臭気ガスを脱臭するものであり、臭気ガスは、臭気成分として、例えば硫化水素、メチルメルカプタン、硫化メチル、二硫化メチル、アンモニア等を含む。
【0014】
脱臭装置20は、その臭気ガスを生物脱臭処理する生物脱臭塔1と、金属フタロシアニン溶液が上部より散布される反応塔2を備えている。生物脱臭塔1の下部から臭気ガスである被処理ガスが配管100を介して供給され、生物脱臭塔1の内部に配置されている充填層3を通り、生物脱臭塔1の上部より配管101を介して排出される。
充填層3には微生物を付着させるセラミックスやプラスチック等の担体が充填されている。
【0015】
充填層3には散水管4によって活性汚泥処理水等が供給され、これによって臭気成分を分解する微生物が増殖するようになっている。被処理ガスはこの充填層3を通されるので、被処理ガス中の臭気成分が微生物によって分解され脱臭される。
この生物脱臭塔1では、通常硫化水素は約99%、メチルメルカプタンは約90%、硫化メチル及び二硫化メチルは約70〜80%、アンモニアは約50%が除去される。中でも硫化水素については効率よく除去することができる。
【0016】
なお、充填層3に散水される活性汚泥処理水等は活性汚泥処理水槽5から、ポンプ6によって散水配管L1を通して散水管4に導かれる。また、生物脱臭塔1の底部は、充填層3から落下する散水を溜める水溜部7となっており、水溜部7の溜水は微生物にとって最適なpHになるように調整され、水溜部7の溜水も充填層3の散水としてポンプ8によって散水配管L2を通して汲み上げられ、散水管4より充填層3に散水される。散水は充填層3の洗浄も兼ねて使用される。
【0017】
なお、生物脱臭塔1において、充填層3を1層のみ使用する形態を説明したが、充填層3を2層以上、あるいは生物脱臭塔1を2塔以上設けることも可能であり、また、各充填層3の上方にそれぞれ散水管4を設けることも可能である。
【0018】
生物脱臭塔1で硫化水素を効率よく取り除かれた処理ガスは、金属フタロシアニン溶液9がポンプ11によって汲み上げられ、配管L3及び散水管10を介して上部より散布される反応塔2の下部に配管101を介して導入される。反応塔2の内部には充填層12が配置されている。充填層12には気液接触を効果的に行うためにセラミックスやプラスチックス製等の充填材が充填されている。
【0019】
充填層12内で、臭気ガスは金属フタロシアニン溶液9との接触により、ガス中の臭気成分は液中の金属フタロシアニンの触媒作用により酸素と反応し、分解あるいは酸化される。
例えば生物脱臭塔1で分解されずに残存する硫化水素は硫黄や硫酸に変換され、溶液中に捕捉される。またメチルメルカプタンは二硫化メチル等の無臭あるいは臭気の低いガスに酸化される。同様に、その他の硫化物も金属フタロシアニンの触媒作用により無臭あるいは臭気の低いガスに酸化される。
反応塔2を通過した処理ガスは配管102を介して大気へ排出される。なお、更に高度な処理を行う場合には、反応塔2の後段に小型の活性炭吸着塔(図示していない)などを設けて処理した後、大気へ放出することもできる。
【0020】
生物脱臭塔1の処理ガスは水分がほぼ飽和状態であり、水分含有量が多く、通常の固体触媒では水分吸着により、触媒活性が大幅に低下するが、金属フタロシアニンは水溶液系の触媒であるため水分の影響を受けない。また、前段の生物脱臭塔1で大部分の硫化水素が予め取り除かれているため反応塔2で生成する硫黄が少ない。そのため金属フタロシアニン溶液9の汚染が抑制されるので、長期間安定した性能を維持することが可能である。
【0021】
長期間の装置の運転によって、硫黄の生成、蓄積が生じた場合には、金属フタロシアニン溶液の汚染による性能の低下や反応塔2内の散水管10等の閉塞問題を防止するために、金属フタロシアニン溶液9をポンプ13及び配管L4を介して沈殿分離、ろ過分離または膜分離などの固液分離装置14に供給して、硫黄を取り除き、配管L5を介して反応塔2へ戻される。
【0022】
固液分離装置14では、被処理ガス中から吸収液に捕り込まれ粉塵等も取り除かれる。
また、硫酸等の生成、吸収によって吸収液が著しく酸性化した場合には、水酸化ナトリウム溶液等のアルカリ剤を金属フタロシアニン溶液9へ添加して適正なpHに調整される。適したpHは使用する金属フタロシアニンの種類によって異なるが、通常pH4〜10程度である。
【0023】
以上の通り、本発明では、生物脱臭塔1において、後段の反応塔2に悪影響を及ぼす硫化水素が予め取り除かれていること、また、生物脱臭処理ガスが高含水であっても、水溶液に安定な触媒を使用しているので、水分や硫酸等の影響が少なく、また、生成する固体硫黄等も容易に取り除くことが可能なため、安定して高い性能を長期間維持することができる。
【0024】
また、後段の反応塔2を設置することにより、臭気成分の効率的な除去が可能になるばかりでなく、前段の生物脱臭塔1を小型化することが可能である。逆に前段に生物脱臭塔1を設置することにより、後段の反応塔2内で使用される高価なフタロシアニン触媒の使用量を低減することが可能である。
ここで、反応塔2の形式としては、反応塔2内にセラミックスやプラスチック等を充填した充填層12を設けることなく、上部の散水管10よりスプレーノズル等で液体を噴霧する形式など各種のものを使用することが可能である。
【0025】
また、反応塔2に使用される金属フタロシアニン触媒は、図2に示されるような構造式をもつもので、構造式中のXは水素または置換基を、Mは配位金属を示す。置換基Xとしては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、アミン塩類、第4級アンモニウム基など各種のものが使用でき、1種類の基には限られず各々別な基が置換されたものでもよい。なかでも、カルボキシル基、アミノ基、第4級アンモニウム基などのアニオン性基あるいはカチオン性基が2〜8程度置換されているものが好ましい。
【0026】
また、配位金属MはFe、Co、Mn、V、Cuなどのものが使用できる。これらの金属フタロシアニンを中性、酸生あるいはアルカリ性の水に溶解させ、または懸濁させた状態で使用する。その濃度は通常、0.1〜10%程度に成るように調整される。例えば、金属フタロシアニンとして、オクタカルボキシフタロシアニン鉄を使用する場合には、水酸化ナトリウムの希アルカリ性溶液に0.5〜5%程度になるように溶解した後、硫酸等の酸でpH8〜10程度に調整して使用することができる。
なお、金属フタロシアニンは安定なので、金属フタロシアニン溶液の酸化力をより高めるために、次亜塩素酸ナトリウム等の酸化剤を添加して使用することもできる。
【0027】
また、本発明では、臭気濃度の低い通常時は生物脱臭塔1の運転のみを行い、その処理ガスを大気へ放出し、汚泥の流入、汚泥の搬送、攪拌時などの臭気の高くなる時にのみ、生物脱臭塔1の処理ガスを更に反応塔2で処理するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係わる脱臭装置の構成例を示す概略図である。
【図2】金属フタロシアニンの構造式を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 生物脱臭塔
2 反応塔
3 充填層
4 散水管
5 活性汚泥処理水槽
6、8、11、13 ポンプ
7 水溜部
9 金属フタロシアニン溶液
10 散水管
12 充填層
14 固液分離装置
【出願人】 【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
【住所又は居所】東京都品川区北品川五丁目9番11号
【出願日】 平成16年2月26日(2004.2.26)
【代理人】 【識別番号】100078905
【弁理士】
【氏名又は名称】羽片 和夫

【公開番号】 特開2005−238112(P2005−238112A)
【公開日】 平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願番号】 特願2004−51692(P2004−51692)