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【発明の名称】 液体ヘリウム送給方法及び液体ヘリウム用トランスファーチューブ
【発明者】 【氏名】池内 正充
【住所又は居所】東京都江東区牡丹2丁目13番1号 株式会社前川製作所内

【氏名】町田 明登
【住所又は居所】東京都江東区牡丹2丁目13番1号 株式会社前川製作所内

【要約】 【課題】冷却対象部位に液体ヘリウムを搬送する際に、搬送のための圧力損失を低減し、冷却対象部位には搬送中に生じた気体ヘリウムを分離して液体ヘリウムのみを送入し、分離した気体ヘリウムをトランスファーチューブのシールド板の冷却に利用し、以って液体ヘリウムの冷却能を効率的に利用すること。

【解決手段】液体ヘリウム貯槽(デュワー)からトランスファーチューブによって冷却対象部位に送給される液体ヘリウムが冷却対象部位に送入される前に、トランスファーチューブ内で蒸発したヘリウムガスを分離して液体ヘリウムのみを冷却対象部位に送入し、分離した気体ヘリウムは前記トランスファーチューブのシールド層へ導入してシールド板を冷却することによってトランスファーチューブ内のヘリウムへの熱侵入の低減に利用するようにした。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体ヘリウム貯槽(デュワー)からトランスファーチューブによって冷却対象部位に送給される液体ヘリウムが冷却対象部位に送入される前に、トランスファーチューブ内で蒸発したヘリウムガスを分離して液体ヘリウムのみを冷却対象部位に送入し、分離した気体ヘリウムは前記トランスファーチューブのシールド層へ導入してシールド板を冷却した後に前記トランスファーチューブの前記液体ヘリウム貯槽への接続部から取り出されることを特徴とする液体ヘリウム送給方法。
【請求項2】
前記気体の分離はサイクロン方式でなされることを特徴とする請求項1記載の液体ヘリウム送給方法。
【請求項3】
液体ヘリウム貯槽(デュワー)から液体ヘリウムを冷却対象部位に搬送するトランスファーチューブの出口に気液分離器を設け、該気液分離装置で分離された液体ヘリウムのみが前記冷却対象部位に送入され、分離された気体ヘリウムは前記トランスファーチューブのシールド層に導入され、該導入された気体ヘリウムは前記トランスファーチューブのシールド板を冷却した後に前記トランスファーチューブの前記液体ヘリウム貯槽への接続部から取り出されるように構成したことを特徴とする液体ヘリウム用トランスファーチューブ。
【請求項4】
前記気液分離装置がサイクロン式気液分離器であることを特徴とする請求項3記載の液体ヘリウム用トランスファーチューブ。
【発明の詳細な説明】【技術分野】
【0001】
本発明は、液体ヘリウムの冷却対象部位への送給方法及び液体ヘリウム用トランスファーチューブに関し、液体へリウム搬送流中にトランスファーチューブ内で蒸発した気体ヘリウムを分離して液体ヘリウムのみを冷却対象部位に送入し、分離された気体ヘリウムはトランスファーチューブのシールド層のシールド板の冷却に利用することにより、液体ヘリウムの冷却能を無駄なく効率的に利用できる液体ヘリウムの送給方法及びトランスファーチューブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、冷却用の液体ヘリウムの搬送には真空断熱されたシールド層を有するトランスファーチューブが用いられている。液体ヘリウムは液体ヘリウム貯槽(デュワー)から圧力差により、或は極低温用ポンプを介してトランスファーチューブを通して被冷却部位に送給される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のトランスファーチューブは外側からの熱侵入が1W/m以下という非常に断熱効果の高いチューブであるが、液体ヘリウムを搬送する際には、液体ヘリウムの蒸発潜熱(20.91J/g)が液体窒素の蒸発潜熱の約1/10、水の蒸発潜熱の1/100以下と非常に小さいため、搬送中の熱侵入による蒸発量は無視できない。特に超伝導発電機の冷却において、トランスファーチューブから発電機に液体ヘリウムと共に流入した気体ヘリウムは遠心力場の中で軸中心部にはじきだされ、発電機の冷却にあまり寄与することなく排出される。また、蒸発したガスによりトランスファーチューブ中の液体の流れが乱されて圧力損失の増大を齎す。さらに、搬送中の液が進むにつれて圧力が徐々に低下することにより液体の沸点が徐々に低下して液体ヘリウムが蒸発する減少(フラッシュロス)が無視できない。液体ヘリウム貯槽(デュワー)において圧力0.12MPa(沸点4.42K)の液体ヘリウムが搬送中に圧力0.1MPa(沸点4.2K)に低下すれば、5.3%の液体ヘリウムが蒸発してしまう(超伝導・低温工学ハンドブック)。
【0004】
したがって、本発明の目的は、液体ヘリウムの搬送中に蒸発したヘリウムガスを取り除いて冷却対象部位に送入し、ヘリウムガスはトランスファーチューブへの熱侵入を低減するために利用することができる液体ヘリウムの送給方法及びトランスファーチューブを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための方法は、液体ヘリウム貯槽(デュワー)からトランスファーチューブによって冷却対象部位に送給される液体ヘリウムが冷却対象部位に送入される前に、トランスファーチューブ内で蒸発したヘリウムガスを分離して液体ヘリウムのみを冷却対象部位に送入し、分離した気体ヘリウムは前記トランスファーチューブのシールド層へ導入してシールド板を冷却した後に前記トランスファーチューブの前記液体ヘリウム貯槽への接続部から取り出されることを特徴とする。
【0006】
超伝導発電機の冷却に液体ヘリウムを用いる場合のように冷却対称部位が遠心力場である場合、蒸発して気体となったヘリウムガスは密度が液体ヘリウムの約1/7.5と小さくなるので中心部にはじき出され、冷却にはあまり寄与することなく排出されてしまう。冷却対称部位に送入された液体ヘリウムは冷却対称部位から奪熱して蒸発してガス化し、さらに奪熱して温度が上昇したガスが排出されてヘリウム液化装置に戻されるわけであるが、冷却対象部位への送入当初から気体ヘリウムが含まれていると、その占める体積の割には上記したように冷却寄与が少ない。本発明によれば、冷却対象部位への送入前に気体ヘリウムを分離して液体ヘリウムのみを冷却対象部位へ送入し、分離された約4.2Kの低温の気体ヘリウムはトランスファーチューブのシールド層に導入してシールド板を冷却することにより、トランスファーチューブの断熱効果を高めることができる。
【0007】
したがって、トランスファーチューブ内での液体ヘリウムの蒸発が抑えられ、これにより搬送の圧力損失が低減し、このことがさらに液体ヘリウムの蒸発を抑える効果を齎すことになる。このようにして、冷却対象部位に気体ヘリウムの状態で送入された場合に冷却にあまり寄与しない気体ヘリウムを取り除いて液体ヘリウムのみを冷却対象部位に送入し、取り除かれた気体ヘリウムはトランスファーチューブのシールド板の冷却に利用することにより、冷却対象部位での冷却にあまり寄与しない気体ヘリウムの冷却能を有効に利用することが可能となる。
【0008】
前記トランスファーチューブのシールド層のシールド板を冷却した気体ヘリウムは該トランスファーチューブが液体ヘリウム貯槽(デュワー)に接続される接続部から取り出されるが、取り出した気体ヘリウムはヘリウム液化装置に戻すか、或は該気体ヘリウムの冷却能に余裕がある場合にはさらに液体ヘリウム貯槽のシールド層のシールド板の冷却に利用してもよい。そうすれば、液体ヘリウム貯槽への熱侵入を低減することができる。そして、前記気液分離はサイクロン方式で行うのがよい。
【0009】
請求項3の発明は本発明の方法を実現するためのトランスファーチューブであり、液体ヘリウム貯槽(デュワー)から液体ヘリウムを冷却対象部位に搬送するトランスファーチューブの出口に気液分離装置を設け、該気液分離装置で分離された液体ヘリウムのみが前記冷却対象部位に送入され、分離された気体ヘリウムは前記トランスファーチューブのシールド層に導入され、該導入された気体ヘリウムは前記トランスファーチューブのシールド板を冷却した後に前記トランスファーチューブの前記液体ヘリウム貯槽への接続部から取り出されるように構成したことを特徴とする。
【0010】
前記トランスファーチューブのシールド板を冷却した気体ヘリウムは該トランスファーチューブの前記液体ヘリウム貯槽(デュワー)への接続部で取り出されるが、取り出した気体ヘリウムはヘリウム液化装置に戻すか、或は該気体ヘリウムの冷却能に余裕がある場合にはさらに該液体ヘリウム貯槽のシールド層に導いてシールド板の冷却に利用してもよい。そうすれば液体ヘリウム貯槽への熱侵入の低減にも利用することができる。そして、前記気液分離装置はサイクロン式気液分離器とするのがよい。
【発明の効果】
【0011】
デュワーから冷却対象部位に搬送される液体ヘリウムが冷却対象部位に送入される前に気液分離して液体ヘリウムのみを冷却対象部位に送入し、分離された気体ヘリウムはトランスファーチューブやデュワーのシールド板の冷却に利用して熱侵入を低減することにより、液体ヘリウムの冷却能を効率的に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特に特定的な記載がない限りはこの発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
【実施例】
【0013】
図1は本発明の実施例に係る液体ヘリウム用トランスファーチューブの出口部の概略構成図であり、(A)は上面図、(B)は側面図、(C)は正面図である。これらの図は出口に設けられたサイクロン式気液分離器で、搬送中に蒸発した気体ヘリウムを含む液体ヘリウムが気液分離される状況を示す図である。図2はトランスファーチューブの液体ヘリウム貯槽へのバイヨネット接続部の概略構成を示す断面図であり、トランスファーチューブのシールド層のシールド板を冷却した気体ヘリウムがトランスファーチューブから取り出される状況を示す図である。
【0014】
図1において、1はトランスファーチューブ外管、2は液体ヘリウムが通るチューブ内管である。トランスファーチューブ外管1には図示は省略したが前記内管2を断熱構造体が覆っており、断熱構造体にはシールド板を配設したシールド層が形成されている。トランスファーチューブはシールド層は真空にして前記内管への熱進入を防止している。3はサイクロン式気液分離器、4は該気液分離器3からの液体ヘリウムの出口、5は気液分離器3を覆う外壁である。なお、図示は省略したが、該外壁5はトランスファーチューブ外管1と同様に、その外側にも真空断熱部に断熱構造体が覆っており、シールド層が形成されている。
【0015】
6は搬送中に蒸発した気体ヘリウムを含む液体ヘリウムの気液分離器3への入口であり、気液分離器3内で前記液体ヘリウムが旋回するように接線方向に導入されるように設けられている。7は気液分離器3内で旋回しながら気液分離器3の前記出口4に向かう液体ヘリウムの流れを示している。8は気液分離器3内の中心部の上部に設けられた気体ヘリウム出口で、気体ヘリウムは一旦気液分離器3の出口4部に導かれた後、そこから気液分離器外側の断熱層(シールド層)と接し、ここを旋回しながら上昇してトランスファーチューブのシールド層に導かれる。この気体ヘリウムの流れは符号9で示されている。
【0016】
図2において、図1と同じ構成部品には同じ符号が付してある。即ち、1はトランスファーチューブ外管、2はチューブ内管である。10は図示しないデュワーのトランスファーチューブ受け部で、該受け部10に前記トランスファーチューブ外管1がバイヨネット接合されている。11はシール部材である。デュワーから液体ヘリウムが矢印X方向に冷却対象部位へ流され、図1に示したトランスファーチューブ外管1の先端に設けられた気液分離器3で分離された気体ヘリウム9は矢印Yの方向に戻ってきて、トランスファーチューブ外管1のシールド層から外部に通じる小孔12、トランスファーチューブ外管1の外周と前記受け部10の内周に前記シール部材11で形成された空間13、前記受け部10の小孔14を通って外部に導出される。この導出された気体ヘリウムはヘリウム液化装置に戻してもよいし、デュワーのシールド層に戻されてシールド板を冷却後ヘリウム液化装置に戻してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0017】
液体ヘリウムを冷却対象部位に送給するに際し、トランスファーチューブの出口に気液分離器を設けて搬送中の蒸発により生成した気体ヘリウムを分離して液体ヘリウムのみを冷却対象部位に送入し、気体ヘリウムはトランスファーチューブのシールド層を通って搬送される液体ヘリウムとは逆方向に流してトランスファーチューブのデュワーへの接続部で取り出す構成のトランスファーチューブにより、液体ヘリウム搬送の圧力損失を低減し、特に冷却部位が遠心力場である場合に液体ヘリウムの冷却能を効率的に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施例に係る液体ヘリウム用トランスファーチューブの出口部の概略構成図で、(A)は上面図、(B)は側面図、(C)は正面図である。
【図2】トランスファーチューブの液体ヘリウム貯槽へのバイヨネット接続部の概略構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 トランスファーチューブ外管
2 チューブ内管
3 気液分離器
4 液体ヘリウム出口
5 気液分離器の外壁
6 液体ヘリウム入口
7 気液分離器内の液体ヘリウムの流れ
8 気体ヘリウム出口
9 気体ヘリウムの流れ
10 デュワーのトランスファーチューブ受け部
11 シール部材
12、14、 小孔
13 空間
【出願人】 【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
【住所又は居所】東京都江東区牡丹2丁目13番1号
【出願日】 平成16年2月25日(2004.2.25)
【代理人】 【識別番号】100083024
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 昌久

【識別番号】100103986
【弁理士】
【氏名又は名称】花田 久丸

【公開番号】 特開2005−238082(P2005−238082A)
【公開日】 平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願番号】 特願2004−50474(P2004−50474)